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特開2024-30643半導体製造装置および半導体装置の製造方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024030643
(43)【公開日】2024-03-07
(54)【発明の名称】半導体製造装置および半導体装置の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/301 20060101AFI20240229BHJP
   H01L 21/683 20060101ALI20240229BHJP
【FI】
H01L21/78 W
H01L21/78 X
H01L21/68 N
【審査請求】未請求
【請求項の数】16
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022133657
(22)【出願日】2022-08-24
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.テフロン
(71)【出願人】
【識別番号】318010018
【氏名又は名称】キオクシア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【弁理士】
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100107582
【弁理士】
【氏名又は名称】関根 毅
(74)【代理人】
【識別番号】100118843
【弁理士】
【氏名又は名称】赤岡 明
(74)【代理人】
【識別番号】100213654
【弁理士】
【氏名又は名称】成瀬 晃樹
(72)【発明者】
【氏名】大村 翔馬
(72)【発明者】
【氏名】大野 天頌
【テーマコード(参考)】
5F063
5F131
【Fターム(参考)】
5F063AA31
5F063AA48
5F063CA01
5F063CA02
5F063CA06
5F063DD59
5F063DD73
5F063DD74
5F063DD75
5F063DE11
5F063DE16
5F063DE35
5F063DG21
5F063EE22
5F063EE43
5F063EE44
5F063EE73
5F131AA04
5F131BA53
5F131BA54
5F131CA18
5F131EC74
5F131EC75
5F131KA11
5F131KA54
5F131KB53
(57)【要約】
【課題】チップの間隔をより適切に拡張することができる半導体製造装置および半導体装置の製造方法を提供する。
【解決手段】本実施形態による半導体製造装置は、複数の挟持部と、制御部と、を備える。複数の挟持部は、それぞれが第1回転体および部材を有し、複数のチップに個片化されたウェハが貼り付けられたシートのうち前記ウェハの外周の複数位置でシートを挟む。制御部は、ウェハとは反対側にシートを繰り出すように、第1回転体の回転を制御する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
それぞれが第1回転体および部材を有し、複数のチップに個片化されたウェハが貼り付けられたシートのうち前記ウェハの外周の複数位置で前記シートを挟む複数の挟持部と、
前記ウェハとは反対側に前記シートを繰り出すように、前記第1回転体の回転を制御する制御部と、
を備える、半導体製造装置。
【請求項2】
複数の前記挟持部は、前記ウェハに対して同心円状に配置される、請求項1に記載の半導体製造装置。
【請求項3】
前記ウェハの外周に沿って隣接する前記挟持部は、前記ウェハとの間の距離が異なるように配置される、請求項1に記載の半導体製造装置。
【請求項4】
前記ウェハの外周に沿って隣接する前記挟持部は、前記ウェハ側から見て重なるように配置される、請求項3に記載の半導体製造装置。
【請求項5】
一部の前記第1回転体は、前記シートの面に平行な第1方向に沿って前記シートを繰り出すように配置され、
他部の前記第1回転体は、前記シートの面に平行、かつ、前記第1方向とは異なる第2方向に沿って前記シートを繰り出すように配置される、請求項1に記載の半導体製造装置。
【請求項6】
前記制御部は、前記シートの面に平行な方向に応じて、前記挟持部ごとに前記第1回転体の回転を制御する、請求項1に記載の半導体製造装置。
【請求項7】
前記制御部は、前記チップの形状に応じて、前記挟持部ごとに前記第1回転体の回転を制御する、請求項6に記載の半導体製造装置。
【請求項8】
前記第1回転体の回転による前記シートの繰り出し中に、前記ウェハの外周の前記シートを加熱する加熱部をさらに備える、請求項1に記載の半導体製造装置。
【請求項9】
前記加熱部は、前記ウェハの面の略中心を通過し、かつ、前記ウェハの面に略垂直な軸を回転軸として回転可能である、請求項8に記載の半導体製造装置。
【請求項10】
前記第1回転体の荷重を検出する荷重検出部をさらに有し、
前記制御部は、前記荷重検出部の検出結果に基づいて、前記第1回転体の回転を制御する。請求項1に記載の半導体製造装置。
【請求項11】
前記チップの間隔を検出するチップ間隔検出部をさらに有し、
前記制御部は、前記チップ間隔検出部の検出結果に基づいて、前記第1回転体の回転を制御する。請求項1に記載の半導体製造装置。
【請求項12】
前記第1回転体の材質は、前記部材の材質とは異なる、請求項1に記載の半導体製造装置。
【請求項13】
前記第1回転体の形状または大きさは、前記部材の形状または大きさとは異なる、請求項1に記載の半導体製造装置。
【請求項14】
前記部材は、第2回転体である、請求項1に記載の半導体製造装置。
【請求項15】
前記制御部は、前記第1回転体の回転数、上昇量、および、下降量の少なくとも1つを含むパラメータに基づいて、前記第1回転体を制御する、請求項1に記載の半導体製造装置。
【請求項16】
それぞれが第1回転体および部材を有し、複数のチップに個片化されたウェハが貼り付けられたシートのうち前記ウェハの外周の複数位置で前記シートを挟む複数の挟持部と、前記第1回転体の回転を制御する制御部と、を備える半導体製造装置を用いた半導体装置の製造方法であって、
前記ウェハとは反対側に前記シートを繰り出すように、前記第1回転体を回転させる、
ことを具備する、半導体装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本実施形態は、半導体製造装置および半導体装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体製造の後工程において、個片化されたチップの間隔を拡張するエキスパンド工程が行われる場合がある。エキスパンド工程において、チップの間隔をより適切に拡張することが望まれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2019-71324号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
チップの間隔をより適切に拡張することができる半導体製造装置および半導体装置の製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本実施形態による半導体製造装置は、複数の挟持部と、制御部と、を備える。複数の挟持部は、それぞれが第1回転体および部材を有し、複数のチップに個片化されたウェハが貼り付けられたシートのうち前記ウェハの外周の複数位置でシートを挟む。制御部は、ウェハとは反対側にシートを繰り出すように、第1回転体の回転を制御する。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1】第1実施形態による半導体製造装置の構成の一例を示す図である。
図2】第1実施形態による挟持部の配置の一例を示す図である。
図3】第1実施形態による挟持部およびエキスパンドテープの構成の一例を示す図である。
図4A】第1実施形態による半導体装置の製造方法の一例を示す斜視図である。
図4B図4Aに続く、半導体装置の製造方法の一例を示す斜視図である。
図4C図4Bに続く、半導体装置の製造方法の一例を示す斜視図である。
図4D図4Cに続く、半導体装置の製造方法の一例を示す斜視図である。
図5A】第1実施形態による半導体装置の製造方法の一例を示す図である。
図5B図5Aに続く、半導体装置の製造方法の一例を示す図である。
図5C図5Bに続く、半導体装置の製造方法の一例を示す図である。
図5D図5Cに続く、半導体装置の製造方法の一例を示す図である。
図6A】比較例による半導体装置の製造方法の一例を示す図である。
図6B図6Aに続く、半導体装置の製造方法の一例を示す図である。
図6C図6Aに続く、半導体装置の製造方法の一例を示す図である。
図7】変形例による半導体チップの形状の一例を示す図である。
図8】第2実施形態による挟持部の配置の一例を示す図である。
図9】第3実施形態による挟持部の配置の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、図面を参照して本発明に係る実施形態を説明する。本実施形態は、本発明を限定するものではない。図面は模式的または概念的なものであり、各部分の比率などは、必ずしも現実のものと同一とは限らない。明細書と図面において、既出の図面に関して前述したものと同様の要素には同一の符号を付して詳細な説明は適宜省略する。
【0008】
図1は、第1実施形態による半導体製造装置1の構成の一例を示す図である。
【0009】
半導体製造装置1は、複数の挟持部10と、加熱部20と、制御部30と、チップ間隔検出部40と、を備える。
【0010】
複数の挟持部10は、複数の半導体チップCHに個片化された半導体ウェハWが貼り付けられたエキスパンドテープTPのうち半導体ウェハWの外周の複数位置でエキスパンドテープTPを挟む(挟持する)。挟持部10は、例えば、回転体対を有する。回転体対は、上部回転体101と、下部回転体102と、を有する。上部回転体101および下部回転体102は、例えば、ローラーである。上部回転体101および下部回転体102は、対向するように設けられ、エキスパンドテープTPを挟む。図1に示す例では、複数の下部回転体102は、1つのテーブルに設けられている。
【0011】
エキスパンドテープTPの中心部は、半導体ウェハWが貼り付けられている。後で説明するように、半導体ウェハWは複数の半導体チップCHに個片化されている。エキスパンドテープTPの外周には、ウェハリングWRが貼り付けられている。エキスパンドテープTPは、シートの一例である。半導体ウェハWは、デバイスが形成された面がエキスパンドテープTPに貼り付けられていてもよいし、デバイスが形成された面の反対側の面がエキスパンドテープTPに貼り付けられていてもよい。
【0012】
図1に示すように、少なくとも2つの挟持部10は、半導体ウェハWの両側に配置される。半導体ウェハWを間に挟むように配置される2つの挟持部10の間で、上部回転体101の回転方向は逆である。半導体ウェハWを間に挟むように配置される2つの挟持部10の間で、下部回転体102の回転方向は逆である。従って、上部回転体101および下部回転体102が回転することにより、エキスパンドテープTPは、回転体対により繰り出され、引っ張られる。この結果、半導体チップCHの間隔を拡張させることができる。
【0013】
加熱部20は、半導体ウェハWの外周のエキスパンドテープTPを加熱する。より詳細には、加熱部20は、上部回転体101および下部回転体102の回転によるエキスパンドテープTPの繰り出し中、または繰り出し後に、半導体ウェハWの外周のエキスパンドテープTPを加熱する。加熱部20は、エキスパンドテープTPの繰り出しにより形成される、エキスパンドテープTPの弛み部分を加熱する(図5Cおよび図5Dを参照)。これにより、弛み部分が熱収縮され、拡張された半導体チップCHの間隔を維持しやすくすることができる。加熱部20は、例えば、ヒートガンまたは赤外ヒータ等の熱源を有する。加熱部20は、例えば、制御部30に制御されてもよい。また、図1に示す例では、加熱部20は2つ設けられているが、加熱部20の数は、1つであってもよく、3つ以上であってもよい。
【0014】
また、半導体ウェハWの面の略中心を通過し、かつ、半導体ウェハWの面に略垂直な中心軸Axを回転軸として、加熱部20は回転可能であってもよい。これは、加熱が行われる弛み部分が、半導体ウェハWの形状に応じて、略円形に形成されるためである。
【0015】
また、上部回転体101、下部回転体102、および、加熱部20は、それぞれ別の駆動力で移動(昇降)可能である。
【0016】
制御部30は、挟持部10を制御する。制御部30は、上部回転体101の回転、上昇、および、下降を制御する。制御部30は、下部回転体102の回転、上昇、および下降を制御する。制御部30は、半導体ウェハWとは反対側にエキスパンドテープTPを繰り出す(送り出す)ように、上部回転体101および下部回転体102の回転を制御する。すなわち、制御部30は、エキスパンドテープTPを中心部側から外周側に繰り出すように、上部回転体101および下部回転体102を回転させる。これにより、半導体チップCHの間隔をより適切に拡張することができる。
【0017】
制御部30は、パラメータに基づいて、上部回転体101および下部回転体102を制御する。パラメータは、エキスパンドテープTPに対する荷重の調整に関するパラメータである。パラメータは、例えば、上部回転体101および下部回転体102のそれぞれにおける、回転数(回転速度)、上昇量、および、下降量等を含む。回転数は、例えば、エキスパンドテープTPの繰り出し長さに対応する。上昇量および下降量は、例えば、エキスパンドテープTPを挟む力に対応する。
【0018】
パラメータは、挟持部10ごとに個別に設定されてもよい。また、後で記載するフィードバック制御(パラメータの自動調整)が行われる場合、例えば、予め設定されるパラメータは、全ての挟持部10に対して同じであってもよい。
【0019】
チップ間隔検出部40は、半導体チップCHの間隔を検出する。チップ間隔検出部40は、例えば、レーザを用いてスキャンすることにより、半導体チップCHの間隔を検出する。チップ間隔検出部40は、半導体チップCHの間隔の検出結果を制御部30に送る。制御部30は、チップ間隔検出部40の検出結果に基づいて、パラメータを自動調整し、上部回転体101および下部回転体102の回転を制御する。これにより、半導体チップCHの間隔に基づいて、挟持部10ごとにフィードバック制御(パラメータの自動調整)を行うことができる。パラメータの自動調整は、例えば、半導体チップCHの間隔の偏りが小さくなるように行われる。
【0020】
尚、チップ間隔検出部40は、複数の半導体チップCHを撮像する撮像部であってもよい。この場合、制御部30は、例えば、撮像部から送られた画像に基づいて、半導体チップCHの間隔を算出する。
【0021】
次に、挟持部10の詳細について説明する。
【0022】
図2は、第1実施形態による挟持部10の配置の一例を示す図である。
【0023】
図2に示す例では、複数の挟持部10は、半導体ウェハWに対して同心円状に配置されている。また、複数の挟持部10は、半導体ウェハWとウェハリングWRとの間で、半導体ウェハWの外周に沿って一列に配置されている。
【0024】
図2に示す矢印A1は、半導体チップCHの間隔を拡張する方向、すなわち、エキスパンドテープTPを引っ張る方向を示す。
【0025】
制御部30は、エキスパンドテープTPの面に平行な方向に応じて、挟持部10ごとに上部回転体101および下部回転体102の回転を制御する。制御部30は、例えば、上記のパラメータの設定により、挟持部10ごとに独立に上部回転体101および下部回転体102を制御する。これにより、エキスパンドテープTPの面内の方向ごとに異なる回転制御を行うことができる。この結果、エキスパンドテープTPの面内の方向に応じて、エキスパンドテープTPの引っ張る力を変更することができる。
【0026】
図3は、第1実施形態による挟持部10およびエキスパンドテープTPの構成の一例を示す図である。
【0027】
半導体製造装置1は、荷重検出部50をさらに有する。
【0028】
荷重検出部50は、上部回転体101および下部回転体102の荷重を検出する。荷重検出部50は、上部荷重検出部51と、下部荷重検出部52と、を有する。上部荷重検出部51は、上部回転体101の荷重を検出する。下部荷重検出部52は、下部回転体102の荷重を検出する。
【0029】
荷重検出部50は、荷重の検出結果を制御部30に送る。制御部30は、荷重検出部50の検出結果に基づいて、パラメータを自動調整し、上部回転体101および下部回転体102の回転を制御する。制御部30は、上部荷重検出部51の検出結果に基づいて、パラメータを自動調整し、上部回転体101を制御する。制御部30は、下部荷重検出部52の検出結果に基づいて、パラメータを自動調整し、下部回転体102を制御する。これにより、荷重に基づいて、挟持部10ごとにフィードバック制御(パラメータの自動調整)を行うことができる。パラメータの自動調整は、例えば、荷重の偏りが小さくなるように行われる。
【0030】
また、図3に示すように、エキスパンドテープTPは、基材TP1と、粘着層TP2と、を有する。
【0031】
粘着層TP2は、基材TP1上に設けられる。粘着層TP2は、エキスパンドテープTPに半導体ウェハWを貼り付けるために設けられる。
【0032】
上部回転体101は、挟持部10がエキスパンドテープTPを挟む際に、粘着層TP2と接する。下部回転体102は、挟持部10がエキスパンドテープTPを挟む際に、基材TP1と接する。従って、上部回転体101と下部回転体102との間で、材質が異なっていてもよい。
【0033】
上部回転体101は、下部回転体102よりも、糊汚れが付きにくい材質であることが好ましい。上部回転体101の材質は、例えば、テフロン、ポリエチレン、または、シリコンゴム等である。下部回転体102は、上部回転体101よりも、滑りにくい材質であることが好ましい。これにより、エキスパンドテープTPを繰り出し易くすることができる。下部回転体102の材質は、例えば、低密度ポリエチレン、または、塩化ビニル等である。下部回転体102の材質は、金属等であってもよい。下部回転体102は、表面を粗くするなど、滑りにくくなるように表面処理が行われてもよい。
【0034】
次に、半導体装置の製造方法について説明する。
【0035】
図4A図4Dは、第1実施形態による半導体装置の製造方法の一例を示す斜視図である。
【0036】
まず、図4Aに示すように、半導体ウェハWの裏面をグラインダGで研磨する。
【0037】
次に、図4Bに示すように、設置された半導体ウェハWの裏面とウェハリングWRに対して可撓性のエキスパンドテープTPを貼り付ける。
【0038】
次に、図4Cに示すように、レーザ発振器LTを用いて、半導体ウェハWの表面または裏面のダイシングラインに沿ってレーザ光を照射する。レーザダイシングにより、半導体ウェハWは半導体チップCHに個片化される。
【0039】
次に、図4Dに示すように、個片化された半導体チップCHの間隔が拡張(エキスパンド)される。半導体チップCHの間隔を拡張することにより、ピックアップ等の際に半導体チップCH同士が接触することを抑制することができる。半導体チップCHは、実装されるために、エキスパンドテープTPからピックアップされる。
【0040】
尚、図4A図4Cに示す工程は、この順番に限られない。
【0041】
次に、図4Dにおけるエキスパンド工程の詳細について説明する。
【0042】
図5A図5Dは、第1実施形態による半導体装置の製造方法の一例を示す図である。
【0043】
まず、図5Aに示すように、半導体ウェハWを半導体製造装置1に搬入(ロード)する。
【0044】
次に、図5Bに示すように、挟持部10は、回転体対によりエキスパンドテープTPを挟み込む。より詳細には、上部回転体101は下降し、下部回転体102は上昇する。これにより、挟持部10は、半導体ウェハWとウェハリングWRとの間の領域のエキスパンドテープTPを挟む。
【0045】
次に、図5Cに示すように、上部回転体101および下部回転体102は、回転し、エキスパンドテープTPを繰り出す。これにより、エキスパンドテープTPが中心部から外周部に引っ張られ、半導体チップCHの間隔が拡張される。すなわち、制御部30は、半導体ウェハWとは反対側にエキスパンドテープTPを繰り出すように、上部回転体101および下部回転体102を回転させる。また、挟持部10とウェハリングWRとの間の領域のエキスパンドテープTPに、弛み部分TP3が形成される。
【0046】
次に、図5Dに示すように、加熱部20は、挟持部10とウェハリングWRとの間の領域のエキスパンドテープTPの弛み部分TP3を加熱する。これにより、エキスパンドテープTPの弛み部分TP3が熱収縮により抑制される。この結果、図5Cのテープ拡張工程において拡張された半導体チップCHの間隔(テープのエキスパンド状態)が維持されやすくなる。加熱部20は、図5A図5Cでは省略されているが、挟持部10と同じ装置(ユニット)内に設けられる。これにより、半導体チップCHの間隔の拡張中に、エキスパンドテープTPを加熱することができる。
【0047】
尚、弛み部分TP3の加熱は、エキスパンドテープTPの繰り出し後に行われてもよい。この場合でも、エキスパンドテープTPの繰り出しから弛み部分TP3の加熱までに、半導体ウェハWの搬送は行われない。
【0048】
その後、半導体ウェハWは搬出(アンロード)される。搬出された半導体ウェハWは、別装置において半導体チップCHがピックアップされる。半導体製造装置1において、半導体チップCHをピックアップしてもよい。このとき、エキスパンドテープTPの基材TP1側からUV(Ultraviolet)光を照射しエキスパンドテープTPの粘着層TP2を硬化させ半導体チップCHをピックアップしやすくしてもよい。また、粘着層TP2を硬化させるためにエキスパンドテープTPを冷却してもよい。
【0049】
以上のように、第1実施形態によれば、挟持部10は、上部回転体101および下部回転体102を有する。複数の挟持部10は、複数の半導体チップCHに個片化された半導体ウェハWが貼り付けられたエキスパンドテープTPのうち、半導体ウェハWの外周のエキスパンドテープTPを挟む。制御部30は、半導体ウェハWとは反対側にエキスパンドテープTPを繰り出すように、上部回転体101および下部回転体102の回転を制御する。これにより、半導体チップCHの間隔をより適切に拡張することができる。
【0050】
また、挟持部10は、半導体ウェハWとウェハリングWRとの間に配置される。半導体ウェハWとウェハリングWRとの間の空間が狭く、エキスパンドテープTPのXY面内での引っ張り制御が難しい場合であっても、回転体を用いたエキスパンドテープTPの水平繰り出しにより、半導体チップCHの間隔の拡張をより適切に制御することができる。
【0051】
尚、第1実施形態では、制御部30は、上部回転体101および下部回転体102の両方の回転駆動を制御する。しかし、制御部30は、上部回転体101および下部回転体102のいずれか一方の回転駆動を制御してもよい。尚、他方の回転体は、一方の回転体の回転駆動に応じて、回転可能である。
【0052】
また、第1実施形態では、挟持部10は、回転体対を有する。しかし、挟持部10の一方が回転体であり、他方が回転体ではない部材であってもよい。例えば、図3において、粘着層TP2側の上部回転体101は、下部回転体102に対向するように設けられる、回転しない部材であってもよい。
【0053】
また、第1実施形態では、上部回転体101および下部回転体102の形状は、略円形である。しかし、上部回転体101と下部回転体102との間で、形状が異なっていてもよい。上部回転体101の形状は、例えば、複数凸部を有する星形等であってもよい。また、上部回転体101と下部回転体102との間で、大きさが異なっていてもよい。回転体の大きさによって、例えば、駆動力が変化する。
【0054】
また、加熱部20は、挟持部10に設けられ、または、挟持部10と一体であってもよい。この場合、例えば、ヒータによって加熱された上部回転体101または下部回転体102がエキスパンドテープTPと接触することにより、エキスパンドテープTPの加熱が行われる。
【0055】
また、第1実施形態では、チップ間隔検出部40および荷重検出部50の両方が設けられる。制御部30は、両方の検出結果に基づいて、フィードバック制御を行ってもよく、チップ間隔検出部40および荷重検出部50のいずれか一方の検出結果に基づいて、フィードバック制御を行ってもよい。また、制御部30は、フィードバック制御を行わなくてもよい。フィードバック制御に用いられないチップ間隔検出部40および荷重検出部50は、半導体製造装置1に設けられなくてもよい。
【0056】
また、荷重検出部50は、上部回転体101および下部回転体102にかかる荷重に代えて、エキスパンドテープTPにかかる荷重を検出してもよい。
【0057】
(比較例)
図6A図6Cは、比較例による半導体装置の製造方法の一例を示す図である。比較例は、下からエキスパンドテープTPを突き上げることにより、半導体チップCHの間隔を拡張させる点で、第1実施形態とは異なっている。
【0058】
まず、図6Aに示すように、半導体ウェハWを半導体製造装置1に搬入(ロード)する。
【0059】
次に、図6Bに示すように、エキスパンドテープTPを下方から押上部材(突き上げテーブル)60で押し上げることによって、エキスパンドテープTPを引っ張る。これにより、エキスパンドテープTPとともに半導体ウェハWが外方向へ引っ張られる。
【0060】
ここで、押上部材60を大きく突き上げるほど、半導体チップCHの間隔を広くすることができる。しかし、押上部材を突き上げすぎると、例えば、押上部材60の端部(角部)60eと接触する部分で応力が集中して、エキスパンドテープTPに穴が空いてしまう可能性がある。このエキスパンドテープTPの穴は、搬送エラーにつながる可能性がある。また、押上部材60によってエキスパンドテープTPにかかる力は、通常、面内で略等方的である。この場合、エキスパンドテープTPの伸びやすさの異方性に従って、エキスパンドテープTPが伸びてしまう。すなわち、エキスパンドテープTPの伸びに偏りが生じ、半導体ウェハWの面内で半導体チップCHの間隔に偏りが生じてしまう可能性がある。
【0061】
次に、図6Cに示すように、半導体ウェハWとウェハリングWRとの間の領域におけるエキスパンドテープTPの弛み部分TP3を加熱する。比較例による半導体製造装置では、押上部材60と加熱部とは、別の装置(ユニット)内に設けられる。従って、図6Bのテープ拡張工程で半導体チップCHの間隔を拡張した後、半導体ウェハWを別のユニットに搬送し、エキスパンドテープTPの加熱を行う必要がある。この場合、半導体チップCHの間隔を拡張してから、エキスパンドテープTPを加熱するまでに時間がかかってしまう。この結果、拡張した半導体チップCHの間隔が一部戻ってしまう可能性がある。
【0062】
これに対して、第1実施形態では、上部回転体101および下部回転体102の回転によってエキスパンドテープTPが繰り出される。従って、エキスパンドテープTP上で応力が作用する位置が移動することにより、応力集中を抑制することができる。また、第1実施形態では、挟持部10(回転体対)ごとに、すなわち、XY面内の方向に応じて、上部回転体101および下部回転体102の回転の制御を行うことができる。これにより、エキスパンドテープTPの伸びやすさの異方性による半導体チップCHの間隔の偏りを抑制することができる。また、第1実施形態では、半導体チップCHの間隔を拡張しながらエキスパンドテープTPを加熱することができる。これにより、拡張した半導体チップCHの間隔が戻ってしまうことを抑制することができる。
【0063】
(変形例)
図7は、変形例による半導体チップCHの形状の一例を示す図である。変形例では、第1実施形態と比較して、半導体チップCHの形状が異なっている。
【0064】
図7に示す例では、半導体チップCHの形状は、略矩形状である。半導体チップCHのX方向の辺は、半導体チップCHのY方向の辺よりも長い。この場合、半導体チップCHの間隔を拡張させるラインLの数も、X方向とY方向との間で異なっている。ラインLは、例えば、ダイシングラインに対応する。
【0065】
図7に示す矢印A2は、半導体チップCHの間隔を拡張する方向、すなわち、エキスパンドテープTPを引っ張る方向を示す。
【0066】
制御部30は、半導体チップCHの形状に応じて、挟持部10ごとに上部回転体101および下部回転体102の回転を制御する。制御部30は、X方向とY方向との間で、上部回転体101および下部回転体102の回転駆動の条件を変える。これにより、X方向とY方向との間で、エキスパンドテープTPを引っ張る力を変えることができる。この結果、半導体チップCHの形状、または、ラインLの数に応じて、半導体チップCHの間隔をより適切に拡張することができる。図7に示す例では、X方向に延伸するラインLの数が、Y方向に延伸するラインLの数よりも多い。X方向に延伸するラインLは、Y方向に引っ張る力によって拡張される。従って、X方向よりもY方向に、強い力で引っ張る必要がある。
【0067】
変形例のように、半導体チップCHの形状が変更されてもよい。変形例による半導体製造装置1は、第1実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0068】
(第2実施形態)
図8は、第2実施形態による挟持部10の配置の一例を示す図である。第2実施形態では、第1実施形態と比較して、挟持部10の配置が変更されている。
【0069】
半導体ウェハWの外周に沿って隣接する挟持部10は、半導体ウェハWとの間の距離が異なるように配置される。挟持部10は、挟持部10aと、挟持部10bと、を含む。半導体ウェハWと挟持部10aとの間の距離は、半導体ウェハWと挟持部10bとの間の距離よりも短い。挟持部10a、10bは、半導体ウェハWの外周に沿って、交互に配置される。また、複数の挟持部10aは、半導体ウェハWに対して同心円状に配置されている。複数の挟持部10bは、半導体ウェハWに対して同心円状に配置されている。
【0070】
また、半導体ウェハWの外周に沿って隣接する挟持部10は、半導体ウェハW側から見て重なるように配置される。すなわち、複数の挟持部10は、挟持部10a、10b同士の隙間を埋めるように配置される。これにより、例えば、挟持部10a、10b間の隙間でエキスパンドテープTPがよれて穴が空いてしまうことを抑制することができる。この結果、半導体チップCHの間隔をより適切に拡張することができる。
【0071】
第2実施形態のように、挟持部10の配置が変更されてもよい。第2実施形態による半導体製造装置1は、第1実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0072】
(第3実施形態)
図9は、第3実施形態による挟持部10の配置の一例を示す図である。第3実施形態では、第1実施形態と比較して、挟持部10の配置が変更されている。
【0073】
挟持部10は、挟持部10xと、挟持部10yと、を有する。挟持部10xおよび挟持部10yは、上部回転体101および下部回転体102の回転方向が互いに異なるように配置されている。
【0074】
複数の挟持部10xは、X方向に沿って、半導体ウェハWの両側に配置される。複数の挟持部10yは、Y方向に沿って、半導体ウェハWの両側に配置される。
【0075】
挟持部10xの上部回転体101および下部回転体102は、エキスパンドテープTPの面に平行なX方向に沿ってエキスパンドテープTPを繰り出すように配置される。X方向は、第1方向の例である。挟持部10xの上部回転体101および下部回転体102は、Y方向に略平行な軸を回転軸として回転する。これにより、挟持部10xは、エキスパンドテープTPをX方向に引っ張る。
【0076】
挟持部10yの上部回転体101および下部回転体102は、エキスパンドテープTPの面に平行、かつ、X方向とは異なるY方向に沿ってエキスパンドテープTPを繰り出すように配置される。Y方向は、第2方向の例である。挟持部10yの上部回転体101および下部回転体102は、X方向に略平行な軸を回転軸として回転する。これにより、挟持部10yは、エキスパンドテープTPをY方向に引っ張る。
【0077】
挟持部10xと挟持部10yとの間で、上部回転体101および下部回転体102の異なるパラメータが設定される。挟持部10xの上部回転体101および下部回転体102のパラメータとして、パラメータXが設定される。挟持部10yの上部回転体101および下部回転体102のパラメータとして、パラメータXとは異なるパラメータYが設定される。尚、例えば、チップ間隔検出部40または荷重検出部50等を用いたフィードバック制御(パラメータの自動調整)が行われてもよい。
【0078】
第3実施形態のように、挟持部10の配置が変更されてもよい。回転体の回転方向を変更することにより、エキスパンドテープTPを引っ張る方向を変更することができる。第3実施形態による半導体製造装置1は、第1実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0079】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0080】
1 半導体製造装置、10 挟持部、101 上部回転体、102 下部回転体、20 加熱部、30 制御部、40 チップ間隔検出部、50 荷重検出部、Ax 中心軸、CH 半導体チップ、TP エキスパンドテープ、W 半導体ウェハ、WR ウェハリング
図1
図2
図3
図4A
図4B
図4C
図4D
図5A
図5B
図5C
図5D
図6A
図6B
図6C
図7
図8
図9