IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 東京窯業株式会社の特許一覧

特開2024-30662環流管と浸漬管との連結方法および連結構造
<>
  • 特開-環流管と浸漬管との連結方法および連結構造 図1
  • 特開-環流管と浸漬管との連結方法および連結構造 図2
  • 特開-環流管と浸漬管との連結方法および連結構造 図3
  • 特開-環流管と浸漬管との連結方法および連結構造 図4
  • 特開-環流管と浸漬管との連結方法および連結構造 図5
  • 特開-環流管と浸漬管との連結方法および連結構造 図6
  • 特開-環流管と浸漬管との連結方法および連結構造 図7
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024030662
(43)【公開日】2024-03-07
(54)【発明の名称】環流管と浸漬管との連結方法および連結構造
(51)【国際特許分類】
   C21C 7/10 20060101AFI20240229BHJP
【FI】
C21C7/10 B
C21C7/10 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022133694
(22)【出願日】2022-08-24
(71)【出願人】
【識別番号】000220767
【氏名又は名称】東京窯業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100124419
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 敬也
(74)【代理人】
【識別番号】100162293
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷 久生
(72)【発明者】
【氏名】寺田 庄吾
【テーマコード(参考)】
4K013
【Fターム(参考)】
4K013CE01
4K013CE09
4K013CF19
(57)【要約】
【課題】減圧下での溶鋼処理の初期段階において環流管の内部と浸漬管の内部との隙間から溶湯が入り込んで環流管や浸漬管の耐火物や鉄皮を損傷させる事態を防止可能な環流管と浸漬管との連結方法を提供する。
【解決手段】真空脱ガス装置の環流管1の下端際には、円柱状体5aが設けられており、装着する浸漬管2の上端縁には、円柱状体5aよりも内径の小さな耐火レンガ結合体9が設けられている。そして、環流管1に浸漬管2を連結する場合には、環流管1の円柱状体5aの下面と浸漬管2の耐火レンガ結合体9の上面とを当接させ、浸漬管2の耐火レンガ結合体9を環流管1の円柱状体5aに対して同心円状に配置させた状態で、環流管1と浸漬管2とを接合させ(接合工程)、しかる後に、環流管1の円柱状体5aの内周面に、耐火レンガ結合体9の内周面と面一になるように、不定形耐火物10を積層する(耐火物積層工程)。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
真空脱ガス装置の下端際に設けられた環流管と浸漬管とを連結するための連結方法であって、
環流管が、下端際に円柱状耐火物を設けたものであるとともに、
浸漬管が、環流管の下端際の円柱状耐火物よりも内径の小さな円柱状耐火物を上端際に設けたものであり、
環流管の下端際の円柱状耐火物の下面と浸漬管の上端際の円柱状耐火物の上面とを当接させ、浸漬管の上端際の円柱状耐火物を環流管の下端際の円柱状耐火物に対して同心円状に配置させた状態で、環流管と浸漬管とを接合する接合工程と、
環流管の下端際の円柱状耐火物の内周面に、浸漬管の上端際の円柱状耐火物の内周面と面一になるように、不定形耐火物を積層する耐火物積層工程とを有することを特徴とする環流管と浸漬管との連結方法。
【請求項2】
浸漬管の上端際の円柱状耐火物の内部に、その円柱状耐火物の内径と略同一の外径を有する金属製で円筒状の連結補助部材を配置させ、その連結補助部材を利用して、環流管の下端際の円柱状耐火物の内周面に不定形耐火物を積層することを特徴とする請求項1に記載の環流管と浸漬管との連結方法。
【請求項3】
不定形耐火物として、マグネシア系あるいはマグネシア-スピネル系の耐火物を用いることを特徴とする請求項1、または2に記載の環流管と浸漬管との連結方法。
【請求項4】
真空脱ガス装置の下端際に設けられた環流管に浸漬管を連結するための連結構造であって、
環流管が、下端際に円柱状耐火物を設けたものであるとともに、
浸漬管が、環流管の下端際の円柱状耐火物よりも内径の小さな円柱状耐火物を上端際に設けたものであり、
環流管の下端際の円柱状耐火物の下面と浸漬管の上端際の円柱状耐火物の上面とを当接させ、浸漬管の上端際の円柱状耐火物を環流管の下端際の円柱状耐火物に対して同心円状に配置させた状態で、環流管と浸漬管とが接合されており、
環流管の下端際の円柱状耐火物の内周面に、浸漬管の内周面と面一になるように、不定形耐火物が積層されていることを特徴とする環流管と浸漬管との連結構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、真空脱ガス装置に用いられる溶鋼処理用の環流管と浸漬管との連結方法および連結構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
溶鋼に脱ガス処理を施す真空脱ガス装置として、金属等の投入口および排気口を備えた上部槽、下部槽、その下部槽の下端際に併設された2本の環流管、および、各環流管に連結(接続)される浸漬管等からなるRH式の真空脱ガス装置が知られている。当該真空脱ガス装置は、取鍋に収納した溶鋼(溶湯)中に2本の浸漬管を浸漬し、上昇管として機能する片方の環流管および浸漬管内にArガスを供給し、そのArガスの上昇気流に付随させて溶鋼を下部槽の真空領域内に導入して脱ガスした後、脱ガス後の溶鋼を、下降管として機能する他方の環流管および浸漬管から取鍋内に排出することによって脱ガス処理を行うようになっている。また、そのような真空脱ガス装置における環流管と浸漬管との連結方法としては、連結作業を容易なものとすべく、浸漬管の上端際に設けられた扁平なドーナッツ板状のフランジを、環流管の下端際に設けられた扁平なドーナッツ板状のフランジに当接させて固着する(螺着する)方法が広く採用されている。
【0003】
かかる真空脱ガス装置の環流管に連結される浸漬管は、脱ガス処理時に溶鋼流によって著しく損傷するため、定期的に新しいものに交換する必要がある。ところが、使用時の熱履歴によって環流管の下端際のフランジが湾曲してしまうことがあり、そのように湾曲した環流管のフランジに浸漬管のフランジを接合させると、図7の如く、環流管51の内部の耐火物(耐火レンガ)55と浸漬管52の内部の耐火物(耐火レンガ)59との間に隙間Gが生じてしまうことがある。そして、そのように、環流管51の内部と浸漬管52の内部との間に隙間Gが形成されると、減圧下での溶鋼処理の初期段階において、当該隙間Gから溶湯が入り込んでしまい、環流管51の耐火物55や浸漬管52の耐火物59あるいは環流管51の外周を覆う鉄皮53や浸漬管52の外周を覆う鉄皮56が損傷してしまうことがある。
【0004】
そのように環流管の内部と浸漬管の内部との隙間から溶湯が入り込む事態を防止するために、特許文献1の如く、環流管の耐火物の下端面の位置をフランジよりも上方に位置させるとともに、浸漬管の耐火物の上端面の位置をフランジよりも上方に位置させた環流管と浸漬管との連結構造が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2015-229800号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記特許文献1の如き環流管と浸漬管との連結構造は、環流管の耐火物と浸漬管の耐火物との隙間から入り込んだ溶湯が鉄皮まで至る事態が生じにくいため、環流管および浸漬管の鉄皮の損傷を防止することが可能であるものの、環流管の耐火物の下端面の位置をフランジよりも上方に位置させる必要があるため、環流管の下端際の耐火物の組み付け作業に手間が掛かる、という不具合がある。また、特許文献1の如き環流管と浸漬管との連結構造においては、浸漬管のフランジより上方に突出した耐火物と、連結後の環流管の鉄皮との間に予期せぬ隙間が形成されてしまうことがあり、その隙間から、溶湯が入り込んで、環流管や浸漬管の耐火物あるいは環流管や浸漬管の鉄皮を損傷させてしまう事態も起こり得る。
【0007】
本発明の目的は、上記従来の環流管と浸漬管との連結方法・連結構造が有する問題点を解消し、減圧下での溶鋼処理の初期段階において環流管の内部と浸漬管の内部との隙間から溶湯が入り込んで環流管や浸漬管の耐火物あるいは鉄皮を損傷させてしまう事態を高い精度で防止可能な環流管と浸漬管との連結方法・連結構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の内、請求項1に記載された発明は、真空脱ガス装置の下端際に設けられた環流管に浸漬管を連結するための連結方法であって、環流管が、下端際に円柱状耐火物を設けたものであるとともに、浸漬管が、環流管の下端際の円柱状耐火物よりも内径の小さな円柱状耐火物を上端際に設けたものであり、環流管の下端際の円柱状耐火物の下面と浸漬管の上端際の円柱状耐火物の上面とを当接させ、浸漬管の上端際の円柱状耐火物を環流管の下端際の円柱状耐火物に対して同心円状に配置させた状態で、環流管と浸漬管とを接合する接合工程と、環流管の下端際の円柱状耐火物の内周面に、浸漬管の上端際の円柱状耐火物の内周面と面一になるように、不定形耐火物を積層する耐火物積層工程とを有することを特徴とするものである。
【0009】
請求項2に記載された発明は、請求項1に記載された発明において、浸漬管の上端際の円柱状耐火物の内部に、その円柱状耐火物の内径と略同一の外径を有する金属製で円筒状の連結補助部材を配置させ、その連結補助部材を利用して、環流管の下端際の円柱状耐火物の内周面に不定形耐火物を積層することを特徴とするものである。
【0010】
請求項3に記載された発明は、請求項1、または2に記載された発明において、不定形耐火物として、マグネシア系あるいはマグネシア-スピネル系の耐火物を用いることを特徴とするものである。
【0011】
請求項4に記載された発明は、真空脱ガス装置の下端際に設けられた環流管に浸漬管を連結するための連結構造であって、環流管が、下端際に円柱状耐火物を設けたものであるとともに、浸漬管が、環流管の下端際の円柱状耐火物よりも内径の小さな円柱状耐火物を上端際に設けたものであり、環流管の下端際の円柱状耐火物の下面と浸漬管の上端際の円柱状耐火物の上面とを当接させ、浸漬管の上端際の円柱状耐火物を環流管の下端際の円柱状耐火物に対して同心円状に配置させた状態で、環流管と浸漬管とが接合されており、環流管の下端際の円柱状耐火物の内周面に、浸漬管の内周面と面一になるように、不定形耐火物が積層されていることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0012】
請求項1に記載の環流管と浸漬管との連結方法によれば、使用により環流管のフランジが歪んでしまっている場合でも、環流管の内部と浸漬管の内部との隙間が不定形耐火物によって塞がれるので、減圧下での溶鋼処理の初期段階において当該隙間から溶湯が入り込むことに起因した耐火物や鉄皮の損傷を効果的に防止することができる。
【0013】
請求項2に記載の環流管と浸漬管との連結方法によれば、浸漬管の上端際の円柱状耐火物の内部に配置させた連結補助部材を利用して、環流管の下端際の円柱状耐火物の内周面に不定形耐火物が積層されるため、環流管と浸漬管とを連結する際の施工を非常に容易なものとすることができる。
【0014】
請求項3に記載の環流管と浸漬管との連結方法によれば、環流管の内部と浸漬管の内部との隙間が、耐熱性の高いマグネシア系の耐火物やマグネシア-スピネル系の耐火物によって塞がれるので、減圧下での溶鋼処理の初期段階において当該隙間から溶湯が入り込む事態を、より高い精度で防止することが可能となる。
【0015】
請求項4に記載の環流管と浸漬管との連結構造によれば、使用により環流管のフランジが歪んでしまっている場合でも、環流管の内部と浸漬管の内部との隙間が不定形耐火物によって塞がれているので、減圧下での溶鋼処理の初期段階において当該隙間から溶湯が入り込むことに起因した耐火物や鉄皮の損傷を効果的に防止することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】真空脱ガス装置を示す説明図(鉛直断面図)である。
図2】環流管を示す説明図である(aは鉛直断面図であり、bはaにおけるA-A線断面図である)。
図3】浸漬管を示す説明図である(aは鉛直断面図であり、bはaにおけるB-B線断面図である)。
図4】環流管に浸漬管を連結する様子を示す説明図(鉛直断面図)である。
図5】連結補助部材を示す説明図である(aは鉛直断面図であり、bは平面図である)。
図6】環流管と浸漬管との連結構造を示す説明図である(aは鉛直断面図であり、bはaにおけるC部分の拡大図であり、cはaにおけるD-D線断面図である)。
図7】従来の環流管と浸漬管との連結構造を示す説明図(鉛直断面図)である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明に係る環流管と浸漬管との連結方法および連結構造の一実施形態について、図面に基づいて詳細に説明する。
【0018】
<環流管の構造>
図1は、溶鋼中のガス成分を除去するための真空脱ガス装置を示したものであり、当該真空脱ガス装置Mの下部槽の下端際には、環流管1,1が、2つ並べた状態で鉛直状に設置されている。図2は、環流管1を示したものであり、環流管1は、多数の耐火レンガを組み付けてなる円筒状の耐火レンガ積層体5、その耐火レンガ積層体5の外周を覆う鉄皮3、耐火レンガ積層体5と鉄皮3との隙間に充填された不定形耐火物等によって構成されている。耐火レンガ積層体5は、図2(b)の如く、多数の耐火レンガ11,11・・をドーナッツ状に組み付けてなる(不定形耐火物によって接着してなる)扁平な円柱状体5a,5b,5c・・を、同心円状に上下に積層することによって形成されている。また、鉄皮3は下端際の部分が扁平な円筒状に形成されており、下端縁に、ドーナッツ板状のフランジ4が一体的に設けられている。
【0019】
<環流管の構造>
図3は、上記した環流管1に連結して装着する浸漬管2を示したものである。浸漬管2は、多数の耐火レンガ11,11・・を一体的に組み付けてなる耐火レンガ結合体9、その耐火レンガ結合体9の外周を覆う円筒状の鉄皮6、耐火レンガ結合体9と鉄皮6との隙間を満たすとともに、鉄皮6の外周および耐火レンガ結合体9の下側を覆うように形成された不定形耐火物8等によって構成されている。耐火レンガ結合体9は、図3(b)の如く、縦長な略直方体状の多数の耐火レンガ11,11・・を組み付ける(不定形耐火物によって接着する)ことによって肉厚な円筒状に形成されている。一方、鉄皮6の上端縁には、ドーナッツ板状のフランジ7が一体的に設けられている。
【0020】
<環流管と浸漬管との連結方法>
図4は、上記の如く真空脱ガス装置Mの下端際に設置されている環流管1に、新たな浸漬管2を連結する(装着する)様子を示したものである。環流管1と浸漬管2とを連結する際には、まず、図4(a)の如く、環流管1の鉄皮3の内側に積層された耐火レンガからなる耐火レンガ積層体5の内の最も下側に位置した円柱状体5aの内壁を一定の厚み分だけ研削(研磨)する。そして、その最下位置の円柱状体5aの内径を、上側の円柱状体5bの内径よりも、所定の長さ(概ね20~200mm)だけ大きくする。なお、ここでは、先に耐火レンガ積層体5を形成した後に、当該耐火レンガ積層体5の内の最も下側に位置した円柱状体5aの内壁を一定の厚み分だけ研削する方法を採用しているが、予め上側の円柱状体5b,5cの内径よりも内径の大きな円柱状体5a(すなわち、円柱状体5b,5cよりも肉薄な円柱状体5a)を成形し、その内径の大きな円柱状体5をaセットする方法を採用することも可能である。
【0021】
上記の如く、環流管1の内部の最下位置の円柱状体5aの内壁を研削した後には、その環流管1の下側に、浸漬管2を同心円状に接合させる(接合工程)。すなわち、環流管1のフランジ4の下面と、浸漬管2のフランジ7とを当接させて、それらのフランジ4,7同士を固着させる(たとえば、ボルト・ナットで螺着する)。そのように環流管1の下側に浸漬管2を接合させることによって、環流管1および浸漬管2の内部に円柱状の空洞部Cが形成される。
【0022】
しかる後、上記した空洞部Cの内部に、連結補助部材21を挿入する。図5は、連結補助部材21を示したものであり、連結補助部材21は金属(鉄等)によって円筒状に一体的に形成されている。連結補助部材21の下側の部分(筒状部分22)は、外径が浸漬管2の内径と略同一になっており、上側の部分は、下方から上方にかけて次第に小径になるように円錐台状に形成されている。そして、その円錐台状部分23の外面が、鉛直面に対して約30°傾斜した状態になっている。かかる連結補助部材21を空洞部Cの内部に挿入する場合には、図4(b)の如く、連結補助部材21の筒状部分22と円錐台状部分23との境界線Bが、環流管1の最下位置の円柱状体5aの内側に位置するように、連結補助部材21を配置させる。しかる後に、当該連結補助部材21を浸漬管2に固定する(接着する)。
【0023】
そして、上記の如く、環流管1および浸漬管2の空洞部Cに連結補助部材21を挿入した後には、図4(c)の如く、環流管1の最下位置の円柱状体5aの内壁と連結補助部材21の円錐台状部分23との隙間に、不定形耐火物(マグネシア系あるいはマグネシア-スピネル系の耐火物(キャスタブル))10を流し込む(不定形耐火物積層工程)。しかる後に、その不定形耐火物10を十分に硬化させることによって連結作業を完了する。なお、上記の如く、環流管1の最下位置の円柱状体5aの内壁と連結補助部材21の円錐台状部分23との隙間に不定形耐火物10を流し込む際には、合成樹脂製のチューブ等を好適に用いることができる。
【0024】
図6は、環流管1と浸漬管2とが連結された状態を示したものである。使用により環流管1のフランジ4に歪みが生じており、当該フランジ4と、浸漬管2のフランジ7との間に隙間が生じており、そのことに起因して、環流管1の最下位置の円柱状体5aの下面と浸漬管2の耐火レンガ結合体9の上面との間にも隙間Gが形成されているが、その隙間Gが、環流管1の最下位置の円柱状体5aの内壁と連結補助部材21の円錐台状部分23との隙間に流し込まれた不定形耐火物10によって塞がれた状態になっている。なお、不定形耐火物10は、図6(b)の如く、環流管1の最下位置の円柱状体5aの下面と浸漬管2の耐火レンガ結合体9の上面との隙間G内にまで侵入した状態になっている。
【0025】
<真空脱ガス装置の作用>
上記の如く環流管1,1の下側に浸漬管2,2が連結された真空脱ガス装置Mにおいては、浸漬管2,2の下端際の部分を、取鍋(図示せず)内の溶湯(溶鋼)に浸漬させた状態で使用され、片方の環流管1が浸漬管2とともに上昇管として機能し、他方の環流管1が浸漬管2とともに下降管として機能する。そして、内部を真空状態にし、配管(図示せず)を介して上昇管(片方の環流管1および浸漬管2)にアルゴンガス等の不活性ガスを吹き込むと、取鍋内の溶湯が、下部槽側に引き込まれて上昇管の内部を上昇し、その後、下降管(他方の環流管1および浸漬管2)の内部を下降して取鍋に戻って環流する。かかる環流の過程において、溶湯の脱ガスが行われ、当該ガスが外部に排出される。
【0026】
上記した環流管1と浸漬管2との連結構造においては、環流管1の内部と浸漬管2の内部との隙間(環流管1の耐火レンガ積層体5の下面と浸漬管の耐火レンガ結合体9の上面との隙間)Gが不定形耐火物10によって塞がれているため、上記の如く真空脱ガス装置Mが使用される際に、当該隙間Gに溶湯が入り込む事態が生じない。なお、上記した環流管1と浸漬管2との連結構造における連結補助部材21は、真空脱ガス装置Mの使用中に、非常に短時間の内に溶湯内に溶け込んで消失するため、連結補助部材21によって上昇管および下降管の内部を流動する溶湯の流れが阻害される事態は生じない。
【0027】
<環流管と浸漬管との連結方法・連結構造の効果>
上記した環流管1と浸漬管2との連結方法は、環流管1が下端際に円柱状耐火物(耐火レンガ積層体5)を設けたものであるとともに、浸漬管2が環流管1の下端際の円柱状耐火物(円柱状体5a)よりも内径の小さな円柱状耐火物(耐火レンガ結合体9)を上端際に設けたものである。そして、上記した環流管1と浸漬管2との連結方法は、環流管1の下端際の円柱状体5aの下面と浸漬管2の上端際の耐火レンガ結合体9の上面とを当接させ、浸漬管2の上端際の耐火レンガ結合体9を環流管1の下端際の円柱状体5aに対して同心円状に配置させた状態で、環流管1と浸漬管2とを接合する接合工程と、環流管1の下端際の円柱状体5aの内周面に、浸漬管2の上端際の耐火レンガ結合体9の内周面と面一になるように、不定形耐火物10を積層する耐火物積層工程とを有している。
【0028】
したがって、当該連結方法によれば、使用により環流管1のフランジ4が歪んでしまっている場合でも、環流管1の内部と浸漬管2の内部との隙間Gが不定形耐火物10によって塞がれるので、減圧下での溶鋼処理の初期段階において当該隙間Gから溶湯が入り込むことに起因した耐火物(耐火レンガ積層体5および耐火レンガ結合体9等)や環流管1の鉄皮3や浸漬管2の鉄皮6の損傷を効果的に防止することができる。
【0029】
また、上記した環流管1と浸漬管2との連結方法は、浸漬管2の上端際の耐火レンガ結合体9の内部に、その耐火レンガ結合体9の内径と略同一の外径を有する金属製で円筒状の連結補助部材21を配置させ、その連結補助部材21を利用して、環流管1の下端際の円柱状体5aの内周面(内壁面)に不定形耐火物10を積層するものであるため、環流管1と浸漬管2とを連結する際の施工が非常に容易である。
【0030】
さらに、上記した環流管1と浸漬管2との連結方法は、不定形耐火物10として、マグネシア系あるいはマグネシア-スピネル系の耐火物(キャスタブル)を用いるものであるため、環流管1の内部と浸漬管2の内部との隙間(環流管1の耐火レンガ積層体5の下面と浸漬管2の耐火レンガ結合体9の上面との隙間)Gが、耐熱性の高いマグネシア系の耐火物やマグネシア-スピネル系の耐火物によって塞がれるので、減圧下での溶鋼処理の初期段階において環流管1の内部と浸漬管2の内部との隙間Gから溶湯が入り込む事態を、より高い精度で防止することができる。
【0031】
加えて、上記した環流管1と浸漬管2との連結方法は、筒状部分22の上側に円錐台状部分23を連設した形状を有する連結補助部材21を用いたものであるので、環流管1の最下位置の円柱状体5aの内壁と連結補助部材21の円錐台状部分23との隙間Sに非常に容易に不定形耐火物10を流し込むことができる。
【0032】
一方、上記した環流管1と浸漬管2との連結構造は、環流管1が、下端際に円柱状体5aを設けたものであるとともに、浸漬管2が、環流管1の下端際の円柱状体5aよりも内径の小さな耐火レンガ結合体9を上端際に設けたものであり、環流管1の下端際の円柱状体5aの下面と浸漬管2の上端際の耐火レンガ結合体9の上面とを当接させ、浸漬管2の上端際の耐火レンガ結合体9を環流管1の下端際の円柱状体5aに対して同心円状に配置させた状態で、環流管1と浸漬管2とが接合されており、環流管1の下端際の円柱状体5aの内周面に、浸漬管2の内周面と面一になるように、不定形耐火物10を積層したものである。
【0033】
したがって、当該連結構造によれば、使用により環流管1のフランジ4が歪んでしまい、環流管1の内部と浸漬管2の内部との間に隙間Gが形成されているにも拘わらず、当該隙間Gが不定形耐火物10によって塞がれているので、減圧下での溶鋼処理の初期段階において隙間Gから溶湯が入り込むことに起因した耐火物(耐火レンガ積層体5および耐火レンガ結合体9)および環流管1の鉄皮3や浸漬管2の鉄皮6の損傷を効果的に防止することができる。
【0034】
<浸漬管の変更例>
本発明に係る浸漬管は、上記した実施形態の態様に何ら限定されるものではなく、環流管(鉄皮、耐火レンガ積層体、フランジ)、浸漬管(鉄皮、耐火レンガ結合体、不定形耐火物)の材質、形状、構造、大きさ等の構成を、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、必要に応じて適宜変更することができる。
【0035】
たとえば、本発明に係る連結方法・連結構造に用いる浸漬管は、上記実施形態の如く、略直方体状の多数の耐火レンガを組み付けることによって肉厚な円筒状に形成された耐火レンガ結合体を有するものに限定されず、肉厚な円筒状に一体的に形成された耐火レンガ結合体を有するもの等でも良い。また、浸漬管は、上記実施形態の如く、一段の耐火レンガ結合体を有するものに限定されず、多段に積層された耐火レンガ結合体を有するものでも良い。
【0036】
さらに、本発明に係る環流管と浸漬管との連結方法・連結構造は、上記実施形態の如く、環流管の最下位置の円柱状体の内壁と連結補助部材の上側の円錐台状部分との隙間に充填する不定形耐火物として、マグネシア系あるいはマグネシア-スピネル系の耐火物(キャスタブル)を用いるものに限定されず、当該不定形耐火物として、アルミナ系やマグネシア-クロム系の耐火物(キャスタブル等)等を用いることも可能である。
【0037】
また、本発明に係る環流管と浸漬管との連結方法・連結構造は、上記実施形態の如く、筒状部分の上側に円錐台状部分を連設してなる連結補助部材を用いたものに限定されず、単純な円柱状の連結補助部材を用いたもの等でも良い。加えて、本発明に係る環流管と浸漬管との連結方法は、上記実施形態の如く、環流管と接合した浸漬管の内部に連結補助部材を挿入するものに限定されず、予め内部に連結補助部材を挿入させた浸漬管を環流管と接合させるもの等でも良い。
【産業上の利用可能性】
【0038】
本発明に係る環流管と浸漬管との連結方法・連結構造は、上記の如く優れた効果を奏するものであるので、真空脱ガス装置において一定の期間に亘って使用された後の浸漬管を新しいものと取り替える際等における環流管と浸漬管との連結方法・連結構造として、好適に利用することができる。
【符号の説明】
【0039】
1・・環流管
2・・浸漬管
4・・フランジ
5・・耐火レンガ積層体
5a,5b,5c・・円柱状体
7・・フランジ
8・・不定形耐火物
9・・耐火レンガ結合体
11・・耐火レンガ
21・・連結補助部材
22・・筒状部分
23・・円錐台状部分
M・・真空脱ガス装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7