IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 京セラ株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-光通信装置 図1
  • 特開-光通信装置 図2
  • 特開-光通信装置 図3
  • 特開-光通信装置 図4
  • 特開-光通信装置 図5
  • 特開-光通信装置 図6
  • 特開-光通信装置 図7
  • 特開-光通信装置 図8
  • 特開-光通信装置 図9
  • 特開-光通信装置 図10
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024030676
(43)【公開日】2024-03-07
(54)【発明の名称】光通信装置
(51)【国際特許分類】
   H04B 10/80 20130101AFI20240229BHJP
【FI】
H04B10/80
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022133719
(22)【出願日】2022-08-25
(71)【出願人】
【識別番号】000006633
【氏名又は名称】京セラ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001106
【氏名又は名称】弁理士法人キュリーズ
(72)【発明者】
【氏名】沓澤 修一
【テーマコード(参考)】
5K102
【Fターム(参考)】
5K102AA21
5K102AA68
5K102AL23
5K102AL28
5K102RD28
(57)【要約】
【課題】結露に起因する光通信の通信品質劣化を抑制可能な光通信装置を提供する。
【課題手段】水中光通信を行う光通信装置1は、透明筐体2と、透明筐体2内に配設され、透明筐体2の内側表面2aを介して外部装置との光通信を行う1つ又は複数の光通信部10と、透明筐体2内に配設された菅体部31aと透明筐体2外から水が流入する開口端部31cとを有する水管31と、を備える。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水中光通信を行う光通信装置であって、
透明筐体と、
前記透明筐体内に配設され、前記透明筐体の内側表面を介して外部装置との光通信を行う1つ又は複数の光通信部と、
前記透明筐体内に配設された菅体部と前記透明筐体外から水が流入する開口端部とを有する水管と、を備える
光通信装置。
【請求項2】
前記開口端部から流入する水によって前記菅体部が冷却されると、前記菅体部の外側表面に結露を生じさせる
請求項1に記載の光通信装置。
【請求項3】
前記透明筐体は、第1部材によって形成され、
前記水管は、前記第1部材よりも熱伝導率が高い第2部材によって形成される
請求項1又は2に記載の光通信装置。
【請求項4】
金属によって形成されたフレームを備え、
前記第2部材が前記金属であって、前記水管は、前記フレームの少なくとも一部を構成する
請求項3に記載の光通信装置。
【請求項5】
前記1つ又は複数の光通信部のそれぞれは、前記透明筐体の内側表面との間に間隙を有する
請求項1に記載の光通信装置。
【請求項6】
前記開口端部は、前記透明筐体の下端側に位置する第1開口端部であり、
前記水管は、前記透明筐体の上端側に露出する第2開口端部をさらに有し、
前記第1開口端部から流入する水は、前記水管内で過熱されて前記第2開口端部に向けて流れる
請求項1に記載の光通信装置。
【請求項7】
前記水管は、前記菅体部の外側表面に形成された凹凸部をさらに有する
請求項1に記載の光通信装置。
【請求項8】
前記水管に配設され、前記菅体部の周囲を囲む1つ又は複数の水受け皿をさらに備える
請求項1に記載の光通信装置。
【請求項9】
金属によって形成されたフレームを備え、
前記1つ又は複数の水受け皿は、前記フレームの一部を構成する
請求項8に記載の光通信装置。
【請求項10】
前記1つ又は複数の水受け皿の少なくとも1つに設けられ、当該水受け皿の上方を覆う蓋部をさらに備える
請求項8に記載の光通信装置。
【請求項11】
前記1つ又は複数の水受け皿は、上下方向に間隔をおいて配設された複数の水受け皿である
請求項8に記載の光通信装置。
【請求項12】
前記1つ又は複数の水受け皿は、金属によって形成され、
前記1つ又は複数の水受け皿の少なくとも1つの上面には、反射光の抑制処理が施されている
請求項8に記載の光通信装置。
【請求項13】
前記1つ又は複数の水受け皿の各下面には、反射光の抑制処理が施されておらず、
前記開口端部から流入する水によって前記水受け皿が冷却されると、前記1つ又は複数の水受け皿の少なくとも1つの下面に結露を生じさせる
請求項12に記載の光通信装置。
【請求項14】
前記透明筐体は、上側ドーム部及び下側ドーム部を有し、
前記1つ又は複数の水受け皿は、前記上側ドーム部と前記下側ドーム部との接合部分に周縁部が設けられた水受け皿を含む
請求項8に記載の光通信装置。
【請求項15】
前記1つ又は複数の光通信部は、前記透明筐体の内側表面に沿ってアレイ状に配設された複数の光通信部であり、
前記複数の光通信部は、それぞれ異なる方向に光軸が向けられている
請求項1に記載の光通信装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水中光通信を行う光通信装置に関する。
【背景技術】
【0002】
水中での通信において、伝送媒体として光(特に、可視光)を用いる光通信システムが知られている。光は高い指向性を持つため、従来の光通信システムでは、送信側及び受信側のそれぞれの光通信装置が固定されている前提下で、送信側及び受信側を対向させて通信することが一般的である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平4-103232号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
水中光通信を行う光通信装置の構成として、光通信部を水密性の高い透明筐体内に配設し、光通信部が透明筐体の内側表面を介して外部装置との光通信を行う構成が考えられる。
【0005】
しかしながら、このような構成の光通信装置は水中で冷えることで透明筐体に結露が発生し得る。具体的には、結露によって、透明筐体内の空気中の水蒸気が凝縮し、透明筐体の内側表面に曇りが発生する場合がある。その場合、透明筐体の内側表面の曇りによって、光通信の通信品質が劣化するという問題がある。
【0006】
そこで、本発明は、結露に起因する光通信の通信品質劣化を抑制可能な光通信装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
1つの態様に係る光通信装置は、水中光通信を行う装置である。前記光通信装置は、透明筐体と、前記透明筐体内に配設され、前記透明筐体の内側表面を介して外部装置との光通信を行う1つ又は複数の光通信部と、前記透明筐体内に配設された菅体部と前記透明筐体外から水が流入する開口端部とを有する水管と、を備える。
【発明の効果】
【0008】
本発明の一態様によれば、結露に起因する光通信の通信品質劣化を抑制可能な光通信装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】実施形態に係る光通信装置を含む光通信システムの構成例を示す図である。
図2】実施形態に係る光通信装置の概略断面を示す模式図である。
図3】実施形態に係る光通信装置の機能ブロック構成例を示すブロック図である。
図4】実施形態に係る光通信装置のフレームの構成例を示す斜視図である。
図5】実施形態に係る光通信装置の外観構成例を示す斜視図である。
図6】実施形態に係る光通信装置の内部構成例を示す断面図である。
図7】第1変更例に係る光通信装置のフレームの断面図である。
図8】第2変更例に係る光通信装置の外観構成例を示す斜視図である。
図9】第2変更例に係る光通信装置の内部構成例を示す断面図である。
図10】他の実施形態に係る光通信装置の外観構成例を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
図面を参照しながら、実施形態に係る光通信装置について説明する。図面の記載において、同一又は類似の部分には同一又は類似の符号を付している。
【0011】
図1は、実施形態に係る光通信装置1を含む光通信システムの構成例を示す図である。
【0012】
実施形態に係る光通信システムは、光通信装置1間で水中光通信を行うシステムである。すなわち、各光通信装置1は水中光通信装置である。実施形態では、水中光通信として、主として海中光通信を想定するが、水中光通信は湖や河川での光通信であってもよい。また、実施形態に係る光通信システムは、光の一例として可視光を用いて光通信を行うシステムである。但し、光通信システムは、可視光以外の光、例えば赤外光を用いて光通信を行うシステムであってもよい。
【0013】
図示の例では、一方の光通信装置1(1a)から他方の光通信装置1(1b)に対して光信号を送信する動作を示している。当該一方の光通信装置1(1a)は、光軸を当該他方の光通信装置1(1b)に向けて光通信を送受信する。同様に、当該他方の光通信装置1(1b)は、光軸を当該一方の光通信装置1(1a)に向けて光信号を送受信する。
【0014】
例えば、当該一方の光通信装置1(1a)は端末装置であって、当該他方の光通信装置1(1b)は基地局装置である。基地局装置1bは水面付近にある。例えば、基地局装置1bは、例えばフレームを介してブイに固定されていてもよい。基地局装置1bは、バックホール回線を介してネットワークと接続されてもよい。バックホール回線は、無線回線であってもよいし、有線回線であってもよい。水中において効率よく通信エリアを確保するために、基地局装置1bは、隣接する他の基地局装置から所定の距離だけ離間して設置されてもよい。基地局装置1bは、例えば端末装置1aを用いた水中での調査を行う期間について一時的に設置されてもよい。
【0015】
端末装置1aは、水中を移動可能に構成されていてもよい。端末装置1aは、基地局装置1bとの水中光通信を行う。すなわち、基地局装置1bは、各端末装置1aのサービング基地局である。端末装置1aは、イメージセンサ(カメラを含む)等のセンサを備え、センサデータを生成してもよい。例えば、端末装置1aは、センサデータを含む上りリンクデータを光通信により基地局装置1bに送信してもよい。端末装置1aは、指示データを含む下りリンク(DL)データを光通信により基地局装置1bから受信してもよい。端末装置1aは、当該指示データに基づいて移動及びセンシング動作(撮影等)を行ってもよい。
【0016】
図2は、実施形態に係る光通信装置の概略断面を示す模式図である。
【0017】
光通信装置1は、複数の光通信部10(光通信部10a,10b,・・・)を水密性の高い透明筐体2内に配設し、光通信部10が透明筐体2の内側表面2aを介して外部装置(例えば、他の光通信装置)との光通信を行う構成である。実施形態では、透明筐体2は、球状の形状を有する。但し、詳細については後述するが、透明筐体2は、半球状、棒状、又は多面体の形状であってもよい。透明筐体2は、光透過性の部材、例えば、ガラス又はアクリル樹脂等によって形成される。なお、これらの部材は、金属よりも熱伝導率が低い第1部材に相当する。
【0018】
複数の光通信部10は、透明筐体2の曲面状の内側表面2aに沿ってアレイ状に配設される。複数の光通信部10は、それぞれ異なる方向に光軸が向けられている。実施形態では、各光通信部10の光軸は、透明筐体2の曲面状の外側表面2bの法線方向に向けられている。光は高い指向性を有するが、このような構成によって様々な方向に対する光通信を行うことが可能である。なお、各光通信部10は、透明筐体2の内側表面2aとの間に間隙を有する。すなわち、光通信部10は、透明筐体2とは別体に構成される。そのため、例えば、いずれかの光通信部10が故障等した場合、当該光通信部10を交換等することが容易である。
【0019】
光通信装置1は、水中で冷えることで透明筐体2に結露が発生し得る。具体的には、結露によって、透明筐体2内の空気中の水蒸気が凝縮して透明筐体2の内側表面2aに曇りが発生する場合がある。その場合、透明筐体2の内側表面2aの曇りによって光通信の通信品質が劣化し得る。詳細については後述するが、実施形態では、透明筐体2内に水管を設け、当該水管に結露を発生させ、透明筐体2内の空気中の水蒸気量を低減させる。これにより、透明筐体2の内側表面2aにおける結露の発生を抑制できる。
【0020】
図3は、実施形態に係る光通信装置の機能ブロック構成を示すブロック図である。
【0021】
光通信装置1は、複数の光通信部10(10a,10b,・・・)と、送受信部13と、制御部14とを有する。光通信装置1は、光通信装置1の動作に必要な電力を供給するためのバッテリを有していてもよい。光通信装置1は、光通信以外の通信(例えば、有線通信又は音波通信等)を行う通信手段を有していてもよい。
【0022】
各光通信部10は、光信号送信に用いる少なくとも1つの発光素子11と、光信号受信に用いる少なくとも1つの受光素子12とを含む。図示の例では、光通信部10aは発光素子11a及び受光素子12aを含み、光通信部10bは発光素子11b及び受光素子12bを含み、光通信部10cは発光素子11c及び受光素子12cを含む。
【0023】
各発光素子11は、レーザダイオード(LD)又は発光ダイオード(LED)であってもよい。各発光素子11は、送受信部13が光通信用に出力する電気信号(送信信号)を光信号に変換し、光信号を送信する。複数の発光素子11は、それぞれ光軸の向きが異なる。すなわち、複数の発光素子11は、それぞれ異なる方向に指向性(送信指向性)を有する。
【0024】
各受光素子12は、フォトダイオード(PD)であってもよい。各受光素子12は、光信号を受信し、受信した光信号を電気信号(受信信号)に変換し、受信信号を送受信部13に出力する。実施形態では、受光素子12は、発光素子11とセットで設けられる。具体的には、受光素子12は、対応する発光素子11と同じ方向に指向性(受信指向性)を有する。すなわち、発光素子11及び受光素子12の複数のセット(すなわち、複数の光通信部10)は、それぞれ異なる方向に光信号を送信し、それぞれ異なる方向から光信号を受信する。
【0025】
送受信部13は、FPGA(Field Programmable Gate Array)及び/又はSoC(System-on-a-chip)により構成されてもよい。送受信部13は、制御部14が出力する送信信号に対する信号処理を行い、信号処理後の信号を変換して、光通信に用いる発光素子11に出力する。また、送受信部13は、受光素子12が出力する受信信号を変換し、変換後の受信信号に対する信号処理を行って制御部14に出力する。送受信部13は、複数の光通信部10に分散して設けられていてもよい。
【0026】
制御部14は、光通信装置1の全体的な動作を制御する。例えば、制御部14は、送受信部13を介して複数の光通信部10を制御する。制御部14は、少なくとも1つのプロセッサ14a及び少なくとも1つのメモリ14bを含む。メモリ14bは、プロセッサ14aにより実行されるプログラム、及びプロセッサ14aによる処理に用いられる情報を記憶する。プロセッサ14aは、デジタル信号プロセッサと、CPUとを含んでもよい。デジタル信号プロセッサは、デジタル信号の変調・復調及び符号化・復号等を行う。CPUは、メモリ14bに記憶されたプログラムを実行して各種の処理を行う。
【0027】
図4は、実施形態に係る光通信装置1のフレーム3の構成例を示す斜視図(具体的には、斜め上方からフレーム3を観た斜視図)である。実施形態では、フレーム3は、金属、例えば、アルミニウム又はステンレスによって形成される。これらの部材は、透明筐体2を形成する第1部材よりも熱伝導率が高い第2部材に相当する。フレーム3には、光通信装置1における部品及び/又は基板が取り付けられてもよい。
【0028】
フレーム3は、水管31と、複数の水受け皿32(32a乃至32d)と、凹凸部33とを有する。水管31、水受け皿32、及び凹凸部33は、金属によって一体に構成されていてもよい。実施形態では、フレーム3が4つの水受け皿32a乃至32dを有する一例について説明するが、水受け皿32の数は4つに限定されず、水受け皿32は1つのみ(例えば、下端の水受け皿32dのみ)であってもよい。また、フレーム3は、凹凸部33を有していなくてもよい。
【0029】
水管31は、円筒形状を有し、上下方向に延在する。但し、水管31は、円筒形状に限定されず、矩形状の断面形状を有していてもよい。水管31は、菅体部31aと、上端側の開口端部31bと、下端側の開口端部31c(図3において不図示。図6参照)と、を有する。
【0030】
複数の水受け皿32は、上下方向に間隔をおいて水管31に配設される。各水受け皿32は、菅体部31aの周囲を囲む。各水受け皿32は、透明筐体2の形状に合わせて、略円盤状の形状を有する。図示の例では、水受け皿32a乃至32dのうち最も上側の水受け皿32aは、他の水受け皿32b乃至32dよりも径が小さい。各水受け皿32は、円盤状の底部321と、底部321から上方に起立する周縁部322とを有する。
【0031】
凹凸部33は、菅体部31aの外側表面に形成される。凹凸部33は、上下方向に筋状に形成される。凹凸部33により、菅体部31aの外側表面の表面積が大きくなるため、菅体部31aに結露を生じさせやすくなる。
【0032】
図5は、実施形態に係る光通信装置の外観構成例を示す斜視図である。
【0033】
透明筐体2は、複数の光通信部10と、送受信部13と、制御部14とを収容する。複数の光通信部10は、透明筐体2の曲面状の内側表面2aに沿ってアレイ状に配設される。
【0034】
透明筐体2は、上側ドーム部21と下側ドーム部22とを有する。上側ドーム部21の開口端部(フランジ部21a)及び下側ドーム部22の開口端部(フランジ部22a)を接合することで、球状の透明筐体2が構成される。透明筐体2(上側ドーム部21)の上端部には、フレーム3(具体的には、水管31)の上端部が挿通及び接合される開口(孔)が形成されている。また、透明筐体2(下側ドーム部22)の下端部には、フレーム3(具体的には、水受け皿32dの周縁部322)と接合される開口が形成されている。
【0035】
図6は、実施形態に係る光通信装置の内部構成例を示す断面図である。
【0036】
水管31は、透明筐体2内に配設された菅体部31aと、透明筐体2外から水が流入する開口端部31cとを有する。開口端部31cから流入する水によって菅体部31aが冷却されると、菅体部31aの外側表面(凹凸部33)に結露を生じさせる。これにより、透明筐体2内の空気中の水蒸気量を減らすことができるため、透明筐体2の内側表面2aに結露が生じることを抑制できる。その結果、透明筐体2の内側表面2aの曇りが生じ難くなり、光通信の通信品質の劣化を抑制できる。
【0037】
透明筐体2は、第1部材(例えば、透明樹脂)によって形成される。一方、水管31は、第1部材よりも熱伝導率が高い第2部材(実施形態では、金属)によって形成される。これにより、光通信装置1が水中にあるとき、透明筐体2よりも先に水管31が冷えるため、透明筐体2の内側表面2aに結露(すなわち、曇り)が生じる前に、水管31を急激に冷却して結露を生じさせることができる。
【0038】
実施形態では、水管31は、金属によって形成されたフレーム3(図4参照)の一部を構成する。これにより、光通信装置1のフレーム3を利用し、透明筐体2の内側表面2aに曇りが生じることを抑制可能である。また、フレーム3を構成する水管31によって、光通信装置1の強度、特に、垂直方向(上下方向)における強度を向上させることができる。
【0039】
水管31の開口端部31bは、透明筐体2の上端側に位置し、透明筐体2の下方に露出する。水管31の開口端部31cは、透明筐体2の下端側に位置し、透明筐体2の上方に露出する。下側の開口端部31cから流入する水が水管31内で過熱されて上側の開口端部31bに向けて流れ、下から上への水の流れが生じる。これにより、水管31内の水の流れが促進され、水管31の冷却効果を高めることができる。
【0040】
実施形態では、水管31は、菅体部31aの外側表面(外周)に形成された凹凸部33を有する。これにより、水管31の菅体部31aの表面積が増加するため、菅体部31aに結露を発生させ易くすることができる。
【0041】
フレーム3は、水管31に配設され、菅体部31aの周囲を囲む水受け皿32を有する。これにより、結露によって菅体部31aに付着した水(水滴)を水受け皿32に溜めることができる。また、水受け皿32も金属で構成されるため、水管31を流れる水により水受け皿32も冷やされる。そのため、水管31だけではなく、水受け皿32にも結露を生じさせることができる。
【0042】
図示の例では、上から2番目の水受け皿32bには、水受け皿32bの上方を覆う蓋部34が設けられている。蓋部34は、ドーナツ状の形状を有し、その中心の孔を菅体部31aが通る。蓋部34は、水受け皿32bと同じ径を有する。蓋部34の孔の径は、凹凸部33を含む菅体部31aの径よりも大きい。蓋部34は、金属によって形成されてもよいし、金属とは異なる部材(例えば、樹脂)により形成されていてもよい。蓋部34の上面には電子部品及び/又は基板35が配設される。この電子部品及び/又は基板35は、上側ドーム部21の内側の各光通信部10と電気的に接続されていてもよい。このような蓋部34により、水受け皿32bに溜められた水が水受け皿32b外へこぼれ出ることを防止できる。また、蓋部34により、電子部品及び/又は基板35に水が付着しない状態で、電子部品及び/又は基板35を配設することが容易になる。
【0043】
同様に、上から3番目の水受け皿32cには、水受け皿32cの上方を覆う蓋部34が設けられている。蓋部34の上面には電子部品及び/又は基板35が配設される。この電子部品及び/又は基板35は、下側ドーム部22の内側の各光通信部10と電気的に接続されていてもよい。
【0044】
実施形態では、複数の水受け皿32が、上下方向に間隔をおいて配設される。これにより、結露によって1つの水受け皿32の下面に付着した水は、水管31(菅体部31a)の外側表面を下方に流れ、下方の別の水受け皿32に溜めることができる。
【0045】
以上説明したように、実施形態に係る光通信装置1は、透明筐体2と、透明筐体2内に配設され、透明筐体2の内側表面2aを介して外部装置との光通信を行う複数の光通信部10と、透明筐体2内に配設された菅体部31aと透明筐体2外から水が流入する開口端部31cとを有する水管31と、を有する。これにより、フレーム3を冷却して先に結露させることで、透明筐体2の内側表面2aに曇りが発生することを低減できる。よって、光通信の通信品質の劣化を抑制できる。
【0046】
(第1変更例)
次に、第1変更例に係る光通信装置1について、上述の実施形態に係る光通信装置1との相違点を主として説明する。
【0047】
上述のように、水受け皿32を含むフレーム3は、金属によって形成される。これにより、フレーム3の熱伝導率を高め、フレーム3表面の冷却効果、すなわち、透明筐体2の内側表面2aの曇りを抑制する効果を高めている。しかしながら、金属製のフレーム3は光沢を有し、光を反射しやすい。そのため、水受け皿32の上面において日光等の反射が発生し、光通信にノイズの影響を与える可能性がある。
【0048】
図7は、第1変更例に係る光通信装置1のフレーム3の断面図である。
【0049】
本変更例では、フレーム3の素材は金属等の高熱伝導率の素材を用いたまま、各水受け皿32の上面321aに反射抑制処理を施す。これにより、日光等の反射に起因する光通信の通信品質の劣化を抑制する。具体的には、各水受け皿32の底部321は、上面321a及び下面321bを有しており、当該上面321aに反射抑制処理を施す。図示の例では、上方に起立する周縁部322の内側表面にも反射抑制処理が施されている。
【0050】
一方、各水受け皿32の底部321の下面321bには、反射抑制処理が施されていない。開口端部31cから流入する水によって各水受け皿32が冷却されると、水受け皿32d以外の各水受け皿32の下面321bに結露を生じさせる。これにより、フレーム3(水受け皿32)における反射抑制範囲及び結露範囲を分けることができ、反射抑制及び曇り抑制を両立できる。
【0051】
なお、各水受け皿32の底部321の上面321aに施される反射抑制処理は、マット仕上げ(つや消し加工)であってもよい。反射抑制処理は、各水受け皿32の底部321の上面321aに濃色塗装を施すものであってもよい。
【0052】
但し、上述の実施形態のように蓋部34を設ける場合、蓋部34が設けられる水受け皿32(例えば、水受け皿32b及び水受け皿32c)については、上面321aに施される反射抑制処理を不要としてもよい。
【0053】
(第2変更例)
次に、第2変更例に係る光通信装置1について、上述の実施形態に係る光通信装置1との相違点を主として説明する。本変更例は、上述の第1変更例と組み合わせて実施してもよい。
【0054】
図8は、第2変更例に係る光通信装置1の外観構成例を示す斜視図(具体的には、斜め上方から光通信装置1を観た斜視図)である。
【0055】
上述のように、透明筐体2は、上側ドーム部21及び下側ドーム部22を有する。本変更例では、フレーム3は、上側ドーム部21と下側ドーム部22との接合部分に周縁部322が設けられた大型の水受け皿32eをさらに有する。すなわち、ドーム接合部(すなわち、透明筐体2の赤道部)に、装置外形と同等サイズの円盤部(水受け皿32e)を設ける。
【0056】
図9は、第2変更例に係る光通信装置1の内部構成例を示す断面図である。
【0057】
上側ドーム部21のフランジ部21aは水受け皿32e(周縁部322)の上面に取り付けられ、下側ドーム部22のフランジ部22aは水受け皿32e(周縁部322)の下面に取り付けられる。このような大型の水受け皿32eを設けることにより、上方からの光を防ぐと同時に、フレーム3の表面積が増加するため、フレーム3内の水管31による冷却によって、透明筐体2の内側表面2aの曇り防止や装置内部の温度上昇の抑制効果が向上する。大きな大型の水受け皿32e(円盤部)に上側ドーム部21及び下側ドーム部22を取り付けることで、強度、特に水平方向の強度も向上する。
【0058】
なお、図示の例では、上から2番目の水受け皿32bの下面には、電子部品及び/又は基板35が配設されている。同様に、上から3番目の水受け皿32cの下面には、電子部品及び/又は基板35が配設されている。
【0059】
(他の実施形態)
上述の実施形態において、光通信装置1が複数の光通信部10を有する一例について説明した。しかしながら、送信側及び受信側のそれぞれの光通信装置1が固定されている前提下で送信側及び受信側を対向させて通信するようなシステムでは、光通信装置1が有する光通信部10は1つのみであってもよい。
【0060】
上述の実施形態において、水管31が直線状(I字状)に延在する一例について説明した。しかしながら、水管31は、分岐を有する形状、例えばY字状又は逆Y字状に形成されていてもよい。水管31は、少なくとも一部が湾曲していてもよい。また、光通信装置1に複数の水管31を設けてもよい。
【0061】
上述の実施形態において、フレーム3が金属により形成されている一例について説明した。しかしながら、フレーム3は透明筐体2に比べて熱伝導率が高い部材であればよく、金属に限定されない。
【0062】
上述の実施形態において、透明筐体2が球状の形状を有する一例について説明した。しかしながら、球状の形状は完全な球体に限定されない。図10は、他の実施形態に係る光通信装置1の外観構成例を示す斜視図(具体的には、斜め下方から光通信装置1を観た斜視図)である。図10に示すように、透明筐体2は、多面体であってもよい。当該多面体の各面には、光通信部10が設けられている。このような多面体も球状の透明筐体2に包含される。或いは、透明筐体2は、棒状の形状、例えば円柱状の形状であってもよい。当該円柱の曲線状の内側表面に沿って複数の光通信部10がアレイ状に配設されていてもよい。或いは、透明筐体2は、角柱形状であってもよい。この場合、当該角柱の各側面に光通信部10が設けられる。
【0063】
光通信装置1が行う各処理をコンピュータに実行させるプログラムが提供されてもよい。プログラムは、コンピュータ読取り可能媒体に記録されていてもよい。コンピュータ読取り可能媒体を用いれば、コンピュータにプログラムをインストールすることが可能である。ここで、プログラムが記録されたコンピュータ読取り可能媒体は、非一過性の記録媒体であってもよい。非一過性の記録媒体は、特に限定されるものではないが、例えば、CD-ROMやDVD-ROM等の記録媒体であってもよい。
【0064】
本開示で使用されている「に基づいて(based on)」、「に応じて(depending on/in response to)」という記載は、別段に明記されていない限り、「のみに基づいて」、「のみに応じて」を意味しない。「に基づいて」という記載は、「のみに基づいて」及び「に少なくとも部分的に基づいて」の両方を意味する。同様に、「に応じて」という記載は、「のみに応じて」及び「に少なくとも部分的に応じて」の両方を意味する。「含む(include)」、「備える(comprise)」、及びそれらの変形の用語は、列挙する項目のみを含むことを意味せず、列挙する項目のみを含んでもよいし、列挙する項目に加えてさらなる項目を含んでもよいことを意味する。また、本開示において使用されている用語「又は(or)」は、排他的論理和ではないことが意図される。さらに、本開示で使用されている「第1」、「第2」などの呼称を使用した要素へのいかなる参照も、それらの要素の量又は順序を全般的に限定するものではない。これらの呼称は、2つ以上の要素間を区別する便利な方法として本明細書で使用され得る。したがって、第1及び第2の要素への参照は、2つの要素のみがそこで採用され得ること、又は何らかの形で第1の要素が第2の要素に先行しなければならないことを意味しない。本開示において、例えば、英語でのa,an,及びtheのように、翻訳により冠詞が追加された場合、これらの冠詞は、文脈から明らかにそうではないことが示されていなければ、複数のものを含むものとする。
【0065】
以上、図面を参照して実施形態について詳しく説明したが、具体的な構成は上述のものに限られることはなく、要旨を逸脱しない範囲内において様々な設計変更等をすることが可能である。
【0066】
(付記)
上述の実施形態に係る特徴に関して付記する。
【0067】
(付記1)
水中光通信を行う光通信装置であって、
透明筐体と、
前記透明筐体内に配設され、前記透明筐体の内側表面を介して外部装置との光通信を行う1つ又は複数の光通信部と、
前記透明筐体内に配設された菅体部と前記透明筐体外から水が流入する開口端部とを有する水管と、を備える
光通信装置。
【0068】
(付記2)
前記開口端部から流入する水によって前記菅体部が冷却されると、前記菅体部の外側表面に結露を生じさせる
付記1に記載の光通信装置。
【0069】
(付記3)
前記透明筐体は、第1部材によって形成され、
前記水管は、前記第1部材よりも熱伝導率が高い第2部材によって形成される
付記1又は2に記載の光通信装置。
【0070】
(付記4)
金属によって形成されたフレームを備え、
前記第2部材が前記金属であって、前記水管は、前記フレームの少なくとも一部を構成する
付記3に記載の光通信装置。
【0071】
(付記5)
前記1つ又は複数の光通信部のそれぞれは、前記透明筐体の内側表面との間に間隙を有する
付記1乃至4のいずれかに記載の光通信装置。
【0072】
(付記6)
前記開口端部は、前記透明筐体の下端側に位置する第1開口端部であり、
前記水管は、前記透明筐体の上端側に露出する第2開口端部をさらに有し、
前記第1開口端部から流入する水は、前記水管内で過熱されて前記第2開口端部に向けて流れる
付記1乃至5のいずれかに記載の光通信装置。
【0073】
(付記7)
前記水管は、前記菅体部の外側表面に形成された凹凸部をさらに有する
付記1乃至6のいずれかに記載の光通信装置。
【0074】
(付記8)
前記水管に配設され、前記菅体部の周囲を囲む1つ又は複数の水受け皿をさらに備える
付記1乃至7のいずれかに記載の光通信装置。
【0075】
(付記9)
金属によって形成されたフレームを備え、
前記1つ又は複数の水受け皿は、前記フレームの一部を構成する
付記8に記載の光通信装置。
【0076】
(付記10)
前記1つ又は複数の水受け皿の少なくとも1つに設けられ、当該水受け皿の上方を覆う蓋部をさらに備える
付記8又は9に記載の光通信装置。
【0077】
(付記11)
前記1つ又は複数の水受け皿は、上下方向に間隔をおいて配設された複数の水受け皿である
付記8乃至10のいずれかに記載の光通信装置。
【0078】
(付記12)
前記1つ又は複数の水受け皿は、金属によって形成され、
前記1つ又は複数の水受け皿の少なくとも1つの上面には、反射光の抑制処理が施されている
付記8乃至11のいずれかに記載の光通信装置。
【0079】
(付記13)
前記1つ又は複数の水受け皿の各下面には、反射光の抑制処理が施されておらず、
前記開口端部から流入する水によって前記水受け皿が冷却されると、前記1つ又は複数の水受け皿の少なくとも1つの下面に結露を生じさせる
付記12に記載の光通信装置。
【0080】
(付記14)
前記透明筐体は、上側ドーム部及び下側ドーム部を有し、
前記1つ又は複数の水受け皿は、前記上側ドーム部と前記下側ドーム部との接合部分に周縁部が設けられた水受け皿を含む
付記8乃至13のいずれかに記載の光通信装置。
【0081】
(付記15)
前記1つ又は複数の光通信部は、前記透明筐体の内側表面に沿ってアレイ状に配設された複数の光通信部であり、
前記複数の光通信部は、それぞれ異なる方向に光軸が向けられている
付記1乃至14のいずれかに記載の光通信装置。
【符号の説明】
【0082】
1 :光通信装置
1a :端末装置
1b :基地局装置
2 :透明筐体
2a :内側表面
2b :外側表面
3 :フレーム
10 :光通信部
11 :発光素子
12 :受光素子
13 :送受信部
14 :制御部
14a :プロセッサ
14b :メモリ
21 :上側ドーム部
21a :フランジ部
22 :下側ドーム部
22a :フランジ部
31 :水管
31a :菅体部
31b :開口端部
31c :開口端部
32 :水受け皿
33 :凹凸部
34 :蓋部
35 :部品及び/又は基板
321 :底部
321a :上面
321b :下面
322 :周縁部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10