(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024030679
(43)【公開日】2024-03-07
(54)【発明の名称】無人走行体の充電システム
(51)【国際特許分類】
H02J 7/00 20060101AFI20240229BHJP
【FI】
H02J7/00 301B
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022133723
(22)【出願日】2022-08-25
(71)【出願人】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(72)【発明者】
【氏名】竹上 功起
【テーマコード(参考)】
5G503
【Fターム(参考)】
5G503AA01
5G503BA01
5G503BB01
5G503FA03
5G503GD02
5G503GD03
5G503GD04
5G503GD06
(57)【要約】
【課題】充電に用いる端子の酸化被膜を除去するための機構を備えることなく、充電する際に充電に用いる端子の酸化被膜の除去を可能とする無人走行体の充電システムの提供にある。
【解決手段】全方向へ走行可能な無人走行体と、バッテリ17への充電を可能とする充電装置12と、を有し、無人走行体は充電用の端子18を備え、充電装置12は充電端子45を備える無人走行体の充電システム10である。無人走行体は、駆動輪を駆動する走行モータ16と、走行モータ16を制御するコントローラと、を備え、コントローラは、充電用の端子18が充電端子45と接触するように走行モータ16を制御し、充電用の端子18が充電端子45に接触した後、無人走行体が充電用の端子18と充電端子45とを互いに摺接する方向へ走行するように走行モータ16を制御し、充電用の端子18が充電端子45と接触した状態で充電を開始する。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
バッテリの電力により全方向へ走行可能な無人走行体と、
前記バッテリへの充電を可能とする充電装置と、を有し、
前記無人走行体は、前記バッテリを充電するための充電用の端子を備え、
前記充電装置は、前記充電用の端子を通じて前記バッテリを充電可能とする充電端子を備える無人走行体の充電システムであって、
前記無人走行体は、
複数の駆動輪と、
前記駆動輪を駆動する走行モータと、
前記走行モータを制御するコントローラと、を備え、
前記コントローラは、
前記充電用の端子が前記充電端子と接触するように前記走行モータを制御し、
前記充電用の端子が前記充電端子に接触した後、前記無人走行体が前記充電用の端子と前記充電端子とを互いに摺接する方向へ変位するように前記走行モータを制御し、
前記充電用の端子が前記充電端子と接触した状態で充電を開始することを特徴とする無人走行体の充電システム。
【請求項2】
前記コントローラは、前記無人走行体が前記充電用の端子と前記充電端子とを互いに摺接する方向へ往復するように前記走行モータを制御し、
摺接された位置で前記充電用の端子と前記充電端子とを互いに接触されることを特徴とする請求項1記載の無人走行体の充電システム。
【請求項3】
前記充電用の端子は、前記充電端子と接触可能な平坦な接触面を有し、
前記充電端子は、前記接触面と接触可能な平坦な端面を有し、側方へ向けて突出する突状部材であることを特徴とする請求項1又は2記載の無人走行体の充電システム。
【請求項4】
前記充電装置は、
前記充電端子を側方へ向けて突出するように進退可能に支持する装置本体と、
前記充電端子を前記装置本体から突出する方向へ付勢する付勢部材と、を有することを特徴とする請求項1又は2記載の無人走行体の充電システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、無人走行体の充電システムに関する。
【背景技術】
【0002】
無人走行体の充電システムに関連する従来技術として、例えば、特許文献1に開示されたロボット用充電ステーションが知られている。特許文献1に開示された充電ステーションは、車輪が乗り上げる上面を有するベースと、ロボットの充電端子に接続する給電端子と、を備える。ベースの上面は、奥側領域に目標位置が設定される一方、入口側の特定位置と目標位置とをつなぐ基準進入ラインが設定され、進入してくる車輪に対して基準進入ライン側への重力成分をもたせる三次元曲面形状の傾斜面を含む。給電端子は、車輪が目標位置に到達した状態で充電端子に接続される。
【0003】
ロボット用充電ステーションでは、ロボットに左右に一対の充電端子が突設されている。そして、充電ユニットの充電スペースには、一対の給電端子が配設されている。給電端子は、充電端子により押し付けにより軸線に沿って斜め下方に押し下げられるとともに、軸線の周りに回転する機構を備えている。このため、ロボットの充電端子がロボット用充電ステーションの給電端子に当接し始めてから、両者の接続が完了するまでに、充電端子が回転して給電端子の接続面に対して摺動する。それにより、給電端子の先端面に付着した酸化被膜や汚れを削ぎ落とす。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に開示されたロボット用充電ステーションでは、給電端子を軸線に沿って進退可能とするとともに軸線の周りに回転可能とする機構が必要となる。つまり、充電に用いる端子の酸化被膜を除去するための機構を、充電装置の充電端子および無人走行体の充電用の端子の少なくとも一方に設ける必要があるという問題がある。特に、充電に用いる端子を進退可能かつ回転可能とするための機構は、複雑化を回避できず、端子の設計自由度が大きく制約される。
【0006】
本発明は上記の問題点に鑑みてなされたもので、本発明の目的は、充電に用いる端子の酸化被膜を除去するための機構を備えることなく、充電する際に充電に用いる端子の酸化被膜の除去を可能とする無人走行体の充電システムの提供にある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するために、本発明は、バッテリの電力により全方向へ走行可能な無人走行体と、前記バッテリへの充電を可能とする充電装置と、を有し、前記無人走行体は、前記バッテリを充電するための充電用の端子を備え、前記充電装置は、前記充電用の端子を通じて前記バッテリを充電可能とする充電端子を備える無人走行体の充電システムであって、前記無人走行体は、複数の駆動輪と、前記駆動輪を駆動する走行モータと、前記走行モータを制御するコントローラと、を備え、前記コントローラは、前記充電用の端子が前記充電端子と接触するように前記走行モータを制御し、前記充電用の端子が前記充電端子に接触した後、前記無人走行体が前記充電用の端子と前記充電端子とを互いに摺接する方向へ変位するように前記走行モータを制御し、前記充電用の端子が前記充電端子と接触した状態で充電を開始することを特徴とする。
【0008】
本発明では、無人走行体のバッテリを充電するとき、無人走行体は、充電用の端子が充電端子と接触するように走行する。充電用の端子が充電端子に接触した後、無人走行体が充電用の端子と充電端子とを互いに摺接する方向へ走行するので、充電用の端子および充電端子の表面の酸化被膜を摺接により除去することができる。つまり、充電に用いる端子の酸化被膜を除去するための機構を備えることなく、充電に用いる端子の酸化被膜を除去できる。その結果、充電用の端子が充電端子と接触した状態で充電が開始されるが、充電時では充電用の端子と充電端子との接触抵抗を低減することができる。
【0009】
また、上記の無人走行体の充電システムにおいて、前記コントローラは、前記無人走行体が前記充電用の端子と前記充電端子とを互いに摺接する方向へ往復移動するように前記走行モータを制御し、摺接された位置で前記充電用の端子と前記充電端子とを互いに接触させる構成としてもよい。
この場合、無人走行体の往復移動により充電用の端子と充電端子との摺接が繰り返されるので、充電用の端子および充電端子の表面の酸化被膜がより一層除去される。そして、摺接された位置で充電用の端子と充電端子とを互いに接触させることで、接触抵抗をより小さくして充電を行うことができる。
【0010】
また、上記の無人走行体の充電システムにおいて、前記充電用の端子は、前記充電端子と接触可能な平坦な接触面を有し、前記充電端子は、前記接触面と接触可能な平坦な端面を有し、側方へ向けて突出する突状部材である構成としてもよい。
この場合、充電用の端子の平坦な接触面と充電端子の平坦な端面とが互いに面接触しつつ摺接されるので、接触面および端面にわたって酸化被膜を除去し易い。
【0011】
また、上記の無人走行体の充電システムにおいて、前記充電装置は、前記充電端子を側方へ向けて突出するように進退可能に支持する装置本体と、前記充電端子を前記装置本体から突出する方向へ付勢する付勢部材と、を有する構成としてもよい。
この場合、充電用の端子と充電端子との摺接時において、付勢部材が常に充電端子を充電用の端子に押し付けるので、充電用の端子および充電端子の表面の酸化被膜が除去され易い。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、充電に用いる端子の酸化被膜を除去するための機構を備えることなく、充電する際に充電に用いる端子の酸化被膜の除去を可能とする無人走行体の充電システムを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の実施形態に係る無人搬送車の充電システムの概略平面図である。
【
図2】本発明の実施形態に係る無人搬送車の充電システムの概略側面図である。
【
図3】本発明の実施形態に係る無人搬送車の充電システムの概略構成図である。
【
図4】無人搬送車の充電用の端子および充電装置の充電端子を示す斜視図である。
【
図5】(a)は無人搬送車の充電用の端子が充電装置の充電端子と接触する前の状態を示す要部側面図であり、(b)は充電用の端子が充電端子と接触した状態を示す要部側面図であり、(c)は充電用の端子が充電端子を押し込む状態を示す要部側面図である。
【
図6】無人搬送車の充電システムによる酸化被膜除去の手順を示すフロー図である。
【
図7】(a)充電用の端子が充電端子に接触した状態を示す要部平面図であり、(b)は一方への走行により充電用の端子と充電端子とが互いに摺接された状態を示す要部平面図であり、(c)は他方への走行により充電用の端子と充電端子とが互いに摺接された状態を示す要部平面図であり、(d)は酸化被膜が除去された位置で充電用の端子と充電端子とが互いに接触した状態を示す要部平面図である。
【
図8】(a)は別例に係る無人搬送車の充電システムによる一方への回動により充電用の端子と充電端子とが互いに摺接された状態を示す要部平面図であり、(b)は他方への回動により充電用の端子と充電端子とが互いに摺接された状態を示す要部平面図であり、
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態に係る無人走行体の充電システムについて図面を参照して説明する。無人走行体は、電動走行する電動式無人走行体であり、本実施形態では、荷の搬送を可能とする無人走行体としての無人搬送車と、無人搬送車に搭載されたバッテリを充電する充電装置と、を有する充電システムを例示して説明する。
【0015】
図1、
図2に示すように、本実施形態に係る無人走行体の充電システム(以下、単に「充電システム」と表記する)10は、無人走行体としての無人搬送車11と、充電装置12と、を有している。無人搬送車11は、全方向移動が可能であるほか、障害物を回避しつつ自律走行する機能を有する。無人搬送車11が有する円筒形の機台13の上部には、荷Wの載置を可能とする荷台14が備えられている。機台13の下部には、複数の駆動輪15が備えられている。
【0016】
駆動輪15は全方向移動車輪である。全方向移動車輪とは、車軸と一体回転するほか、車軸の軸線X方向への移動を可能とする車輪であり、例えば、オムニホイールである。本実施形態では、機台13には4つの駆動輪15が設けられている。なお、4つの駆動輪15を区別する場合には、第1の駆動輪15A、第2の駆動輪15B、第3の駆動輪15C、第4の駆動輪15Dと表記する。第1の駆動輪15A、第2の駆動輪15Bは機台13における正面側の駆動輪であり、第3の駆動輪15C、第4の駆動輪15Dは機台13における後面側の駆動輪である。
【0017】
図1、
図3に示すように、無人搬送車11は、駆動輪15を回転させるための走行モータ16を備えている。走行モータ16は、駆動輪15毎に設けられる。このため、走行モータ16の数は駆動輪15の数と同じである。4つの走行モータ16を区別する場合には、第1の走行モータ16A、第2の走行モータ16B、第3の走行モータ16C、第4の走行モータ16Dと表記する。
【0018】
機台13には、蓄電装置としてのバッテリ17が搭載されている。バッテリ17は放電可能な二次電池であり、例えば、リチウムイオン電池である。バッテリ17、走行モータ16等の電力を必要とする各部と電力配線(図示せず)により接続されている。したがって、バッテリ17の電力は電力配線を通じて機台13の各部に供給される。また、回生時に生じる電力は、電力配線を通じてバッテリ17に蓄えられる。なお、バッテリ17の状態を監視するバッテリ監視回路(図示せず)が備えられている。
【0019】
本実施形態では、機台13の前部にバッテリ17を充電するための充電用の端子18が備えられている。充電用の端子18は、走行体側電極体としての正極端子19および負極端子20を備えている。正極端子19および負極端子20は、銅により形成されており、機台13の前部に形成された凹部21に配設されている。
図4に示すように、正極端子19および負極端子20が互いに上下となるように、充電用の端子18は機台13に対して固定されている。正極端子19および負極端子20の周囲には、絶縁材により形成された端子保持体22が備えられている。本実施形態では、正極端子19および負極端子20は導電性の金属板である。正極端子19は平坦な接触面19Aを有し、負極端子20は平坦な接触面20Aを有する。接触面19A、20Aは、鉛直方向に沿う方向の面であり、後述する充電装置12の充電端子45の端面47A、48Aと接触可能である。
【0020】
正極端子19および負極端子20は、電力線23、24を介してバッテリ17が備える端子と接続されている(
図3を参照)。充電用の端子18の近傍には充電装置12との光通信による通信を行うための光通信部25を備えている。正極端子19および負極端子20は、凹部21に配設されているので障害物と干渉し難い。
【0021】
機台13には複数のレーザーレンジファインダ(LRF:光波測距儀)を備えている。レーザーレンジファインダ26は、第1のレーザーレンジファインダ(以下、「第1LRF25」と表記)であり、レーザーレンジファインダ27は、第2のレーザーレンジファインダ(以下、「第2LRF26」と表記)である。第1LRF25および第2LRF26は、レーザーを周辺に照射し、レーザーが当たった部分から反射された反射光を受信することで距離を測定する距離計であり、無人搬送車11の周囲に存在する物体の形状に関する情報を周囲物体として取得することができる。
【0022】
本実施形態では、水平方向への照射角度を変更しながらレーザーを照射する二次元のレーザーレンジファインダが用いられている。第1LRF25は機台13の正面に固定され、第2LRF26は機台13の後面に固定されており、水平方向においてレーザーをスキャンして、物体に対し方向と距離を点群として検知することができる。機台13の周囲における一定の領域(図示せず)が第1LRF25、第2LRF26により探索される領域である。
【0023】
機台13には、車載コントローラ28が搭載されている。車載コントローラ28は、CPU29と、RAMおよびROM等からなる記憶部30と、を備えている。車載コントローラ28は、各種処理のうち少なくとも一部の処理を実行する専用のハードウェア、例えば、特定用途向け集積回路(ASIC)を備えていてもよい。車載コントローラ28は、コンピュータプログラムにしたがって動作する1つ以上のプロセッサ、ASIC等の1つ以上の専用のハードウェア回路、あるいは、それらの組み合わせを含む回路として構成し得る。
【0024】
記憶部30は、処理をCPU29に実行させるように構成されたプログラムコードまたは指令を格納している。記憶部30には、無人搬送車11の各部を制御するための種々のプログラムが記憶されている。車載コントローラ28は、例えば、走行モータ16を制御することで、無人搬送車11の進行方向および走行速度を制御することが可能である。
【0025】
記憶部30には、機台13を制御するための種々のプログラムが記憶されているほか、機台13の移動を行なう移動空間に関する環境地図が記憶されている。環境地図は、機台13が移動空間を移動しながら作成する地図である。無人搬送車11の自己位置推定と環境地図の構築を同時に行なう技術は、SLAM(Simultaneous Localization and Mapping)と称される。記憶部30、即ち、コンピュータ可読媒体は、汎用または専用のコンピュータでアクセスできるあらゆるものを含む。
【0026】
本実施形態の無人搬送車11は、入力操作部31と、無線通信部32と、発光部33と、を備えている。入力操作部31は、無人搬送車11へのデータの入力のテンキー34や無人搬送車11の手動による充電を行うための充電実行ボタン35を備えている。充電実行ボタン35は、充電操作部に相当し、車載コントローラ28と接続されている。バッテリ17の充電が可能な状態では、充電実行ボタン35のON操作によって充電装置12による充電が可能である。
【0027】
無線通信部32は、無人搬送車11の運行状態や荷Wを取り扱う作業者Hが携行する携帯型通信機器36との無線通信を可能とする。携帯型通信機器36としては、例えば、タブレットやスマートフォンである。したがって、携帯型通信機器36は、CPU(図示せず)と、RAMおよびROM等からなる記憶部(図示せず)と、通信部(図示せず)と、を備えている。携帯型通信機器36には情報表示が可能なディスプレイ37と内蔵スピーカー(図示せず)が備えられている。ディスプレイ37はタッチ操作可能なタッチパネルである。ディスプレイ37および内蔵スピーカーは、報知機能を有する携帯型通信機器36側の報知体に相当する。携帯型通信機器36は、例えば、無人搬送車11を管理するほか荷Wを扱う作業者Hにより携行される。
【0028】
無人搬送車11は、機台13の外周に8個の発光部33を備えている。8個の発光部33は機台13の外周上部において周方向に等間隔で配置され、8方向に向けて発光する。これらの発光部33は、車載コントローラ28と接続されており、車載コントローラ28により制御される。つまり、発光部33は、機台13側の報知体に相当する。
【0029】
本実施形態の車載コントローラ28は、充電装置12との通信に基づいて充電制御を行う。無人搬送車11が充電装置12と充電可能な状態で接続されたとき、充電装置12に充電指令を出してバッテリ17に対する充電を行う。バッテリ17に対する充電の制御の手順については後述する。
【0030】
次に、充電装置12について説明する。本実施形態の充電装置12は、路面(床面)に設置されている。充電装置12は、装置本体41と、充電回路部42と、充電側コントローラ43と、充電アーム44と、充電端子45と、光通信部46と、を有する。
【0031】
箱状の装置本体41には、充電回路部42および充電側コントローラ43が収容されている。充電回路部42は、外部電源と配線を介して接続されており、充電アーム44と電気的に接続されている。充電側コントローラ43は、充電回路部42を制御する。充電アーム44には、充電端子45が備えられている。充電端子45は、銅により形成された正極端子47および負極端子48を備えている。
【0032】
図4に示すように、正極端子47および負極端子48は、一部が充電アーム44の先端部から突出するように備えられ、充電アーム44に対して進退可能に支持されている。正極端子47および負極端子48は、側方へ向けて突出する突状部材である。
図5(a)~(c)に示すように、充電アーム44の内部には、2個の付勢部材としてのコイルスプリング49が収容されている。一方のコイルスプリング49は、正極端子47を充電アーム44の先端部から突出する方向への付勢力を付与し、他方のコイルスプリング49は、負極端子48を充電アーム44の先端部から突出する方向への付勢力を付与する。
【0033】
正極端子47の突出側の平坦な端面47Aは、充電時に正極端子19の接触面19Aと接触し、負極端子48の突出側の平坦な端面48Aは、充電時に負極端子20の接触面20Aと接触する。端面47A、48Aは鉛直方向に沿う方向の面である。端面47A、48Aの面積は、接触面19A、20Aの面積よりも小さい。正極端子47は電力線50を介して充電回路部42と接続され、負極端子48は電力線51を介して充電回路部42と接続されている(
図3を参照)。
【0034】
充電側コントローラ43は、CPU(図示せず)と、RAMおよびROM等からなる記憶部(図示せず)と、を備えている。充電側コントローラ43は、充電回路部42を制御するほか、光通信部46を制御する。充電アーム44は、装置本体41から側方へ向けて突出している。充電アーム44の先端から正極端子47および負極端子48が露出しており、正極端子47は、無人搬送車11の充電用の端子18における正極端子19に接続可能であり、負極端子48は負極端子20に接続可能である。
【0035】
光通信部46は、無人搬送車11が充電装置12と接続されたとき、無人搬送車11の光通信部25と対峙して光通信が可能である。車載コントローラ28は、光通信部25、46を介した光通信によって、無人搬送車11のバッテリ17の状態(異常の有無等)を確認できる。つまり、車載コントローラ28は、無人搬送車11および充電装置12がバッテリ17に対して充電可能な充電可能状態であることを検出する検出部に相当する。
【0036】
次に、本実施形態の充電システム10における充電の制御について説明する。
図6のフロー図に示す一連のステップ(S001~S007)について説明する。作業者Hが携帯型通信機器36により無人搬送車11のバッテリ17に対する充電を行うために充電指令を出すと、車載コントローラ28は充電指令を受信する(ステップS001)。車載コントローラ28は、充電指令を受けると、無人搬送車11が充電装置12へ向けて走行するように走行モータ16を制御する。このため、無人搬送車11は充電装置12へ向けて走行する(ステップS002)。
【0037】
次に、車載コントローラ28は、充電用の端子18が充電端子45と接触したか否かを判別する(ステップS003)。車載コントローラ28は、充電用の端子18が充電端子45と接触したと判別すると、無人搬送車11を停止させる(ステップS004)。充電用の端子18が充電端子45と接触しないと判別すると、無人搬送車11は走行を継続する。なお、充電用の端子18と充電端子45との接触の有無は、光通信部25、46の通信により確認することができる。
【0038】
無人搬送車11の停止後、車載コントローラ28は、充電用の端子18と充電端子45とが互いに接触したまま摺接する方向へ無人搬送車11を変位として往復移動させる(ステップS005)。無人搬送車11が往復移動する方向は、正極端子19(負極端子20)の接触面19A(接触面20A)が正極端子47(負極端子48)の端面47A(端面48A)と摺接する方向、すなわち、接触面19A、20Aおよび端面47A、48Aに沿う方向である。接触面19A、20Aおよび端面47A、48Aの酸化被膜を摺接により除去するため、無人搬送車11の往復移動は繰り返される。また、本実施形態では、往復移動の設定距離は、接触面19A(20A)が端面47A(48A)から離脱しない距離に予め設定されている。つまり、無人搬送車11の往復移動の設定距離は、接触面19A(20A)の幅寸法に端面47A(48A)の幅寸法を加えた距離を超えない距離に設定され、車載コントローラ28に記憶されている。
【0039】
充電用の端子18と充電端子45との摺接が無人搬送車11の往復移動により繰り返されると、車載コントローラ28は、無人搬送車11の往復移動を停止させる(ステップS006)。このとき、無人搬送車11は、充電用の端子18と充電端子45とが互いに接触した状態で停止する。無人搬送車11が停止すると、車載コントローラ28はバッテリ17に対する充電を開始する指令を出し、充電が開始される(ステップS007)。バッテリ17への充電が開始されることで一連のフローは終了する。
【0040】
次に、本実施形態の無人搬送車11の充電システム10による充電前の充電用の端子18および充電端子45における酸化被膜の除去について説明する。自律走行中の無人搬送車11のバッテリ17を充電する必要がある場合、作業者Hは携帯型通信機器36を操作し、無人搬送車11を充電装置12へ向けて走行させる指令を無人搬送車11へ伝達する。指令を受けた無人搬送車11は、充電装置12を目指して自律走行する。充電装置12の位置は、予め車載コントローラ28に記憶されている地図に登録されており、この登録されている位置情報に基づいて無人搬送車11は充電装置12へ目指す。
【0041】
無人搬送車11が充電装置12の近傍に達すると、無人搬送車11は、充電用の端子18を充電装置12の充電端子45に接触させるように移動する。具体的には、
図5(a)に示すように、無人搬送車11は、正極端子19(負極端子20)の接触面19A(接触面20A)を正極端子47(負極端子48)の端面47A(端面48A)に対向させ、充電装置12へ接近する。
図5(b)に示すように、正極端子19(負極端子20)の接触面19A(接触面20A)は正極端子47(負極端子48)の端面47A(端面48A)に接触する。そして、
図5(c)に示すように、無人搬送車11は、さらに充電装置12へ接近し、正極端子47(負極端子48)を押し込んでから停止する。押し込まれた正極端子47(負極端子48)は、コイルスプリング49の付勢力を受けるので、無人搬送車11が停止しても、正極端子19(負極端子20)と接触する。
【0042】
次に、
図7(a)に示すように、無人搬送車11は、正極端子19(負極端子20)の接触面19A(接触面20A)が正極端子47(負極端子48)の端面47A(端面48A)に接触する状態で、接触面19A(接触面20A)に沿う方向へ往復移動する。例えば、
図7(b)に示すように、無人搬送車11は一方へ向かって移動し、
図7(c)に示すように、無人搬送車11は他方へ向かって移動する。充電用の端子18が充電端子45から外れることなく充電端子45と常に摺接する状態を保つように往復移動する。このため、正極端子19(負極端子20)の接触面19A(接触面20A)が正極端子47(負極端子48)の端面47A(端面48A)に対して面接触で摺接し、この面接触による摺接が繰り返される。接触面19A(20A)と端面47A(48A)が摺接するので、接触面19A(20A)および端面47A(48A)に形成されている酸化被膜が除去される。摺接のための無人搬送車11の往復移動の回数は1回でよいが複数回であってもよい。
【0043】
酸化被膜除去のための無人搬送車11の往復移動が終了すると、
図7(d)に示すように、酸化被膜が除去された位置で、正極端子19(負極端子20)の接触面19A(接触面20A)が正極端子47(負極端子48)の端面47A(端面48A)に接触するように停止する。無人搬送車11の停止後に、車載コントローラ28はバッテリ17の充電を開始する指令を充電装置12へ伝達する。車載コントローラ28の指令を受けた充電装置12では、充電側コントローラ43が充電回路部42を制御してバッテリ17に対する充電を開始する。
【0044】
バッテリ17に対する充電では、接触面19A(20A)および端面47A(48A)に形成されている酸化被膜が除去されているので、酸化被膜により接触抵抗は抑制され、効率的な充電が行われる。バッテリ17の充電が完了すると、作業者Hに充電完了が通知され、作業者Hは、無人搬送車11を荷役作業のための自律走行に復帰させるように、携帯型通信機器36を操作して、無人搬送車11へ指令を送信する。
【0045】
本実施形態の無人搬送車11の充電システム10は以下の効果を奏する。
(1)無人搬送車11のバッテリ17を充電するとき、無人搬送車11は、充電用の端子18が充電装置12の充電端子45と接触するように走行する。充電用の端子18が充電端子45に接触した後、無人搬送車11が充電用の端子18と充電端子45とを互いに摺接する方向へ走行するので、充電用の端子18および充電端子45の表面の酸化被膜を摺接により除去することができる。つまり、充電に用いる端子18、45の酸化被膜を除去するための機構を備えることなく、充電に用いる端子18、45の酸化被膜を除去できる。その結果、充電用の端子18が充電端子45と接触した状態で充電が開始されるが、充電時では充電用の端子18と充電端子45との接触抵抗を低減することができる。
【0046】
(2)車載コントローラ28は、無人搬送車11が充電用の端子18と充電端子45とを互いに摺接する方向へ往復移動するように走行モータ16を制御し、摺接された位置で充電用の端子18と充電端子45とを互いに接触させる。このため、無人搬送車11の往復移動により充電用の端子18と充電端子45との摺接が繰り返されるので、充電用の端子18および充電端子45の摺接面における酸化被膜がより一層除去される。そして、摺接された位置で充電用の端子18と充電端子45とを互いに接触させることで、接触抵抗をより小さくして充電を行うことができる。
【0047】
(3)充電用の端子18は、充電端子45と接触可能な平坦な接触面19A(20A)を有する。充電端子45は、接触面19A(20A)と接触可能な平坦な端面47A(48A)を有し、側方へ向けて突出する突状部材である。この場合、充電用の端子18の平坦な接触面19A(20A)と充電端子45の平坦な端面47A(48A)とが互いに面接触しつつ摺接されるので、摺接面である接触面19A(20A)および端面47A(48A)にわたって酸化被膜を除去し易い。
【0048】
(4)充電装置12は、充電端子45を側方へ向けて突出するように進退可能に支持する装置本体41と、充電端子45を装置本体41から突出する方向へ付勢するコイルスプリング49と、を有する。このため、充電用の端子18と充電端子45との摺接時において、コイルスプリング49が常に充電端子45を充電用の端子18に押し付けるので、充電用の端子18および充電端子45の表面の酸化被膜が除去され易い。
【0049】
(5)無人搬送車11の往復移動の設定距離は、充電用の端子18の幅寸法に充電端子45の幅寸法を加えた距離を超えない距離に設定され、車載コントローラ28に記憶されている。無人搬送車11は、充電用の端子18が充電端子45から外れることなく充電端子45と常に摺接する状態を保つように往復移動することができる。
【0050】
(別例)
次に、別例に係る無人搬送車の充電システムについて説明する。本別例では、充電用の端子と充電端子とを互いに摺接するために機台の中心を回転中心として機台を回動する。
【0051】
図8(a)、
図8(b)に示すように、別例に係る無人搬送車11の充電システム60は無人搬送車11および充電装置12を有する。無人搬送車11は、バッテリ17の充電のために充電装置12と接続したとき、機台13の中心Pを回転中心として回動する。具体的には、
図8(a)に示すように、無人搬送車11は、接触面19A(接触面20A)が正極端子47(負極端子48)の端面47A(端面48A)に接触する状態で、無人搬送車11は機台13の中心Pを回転中心として一方へ向けて回動する。次に、
図8(b)に示すように、無人搬送車11は、接触面19A(接触面20A)が正極端子47(負極端子48)の端面47A(端面48A)に接触する状態で、無人搬送車11は機台13の中心Pを回転中心として他方へ向けて回動する。
図8における矢印は、無人搬送車11が回動する方向を示す。無人搬送車11の回動は、充電用の端子18と充電端子45とを互いに摺接する方向への変位に相当する。
【0052】
正極端子47(負極端子48)は、正極端子19(負極端子20)により押し込まれているものの、コイルスプリング49の付勢力を受けるので、無人搬送車11が回動しても、正極端子19(負極端子20)と接触する。このため、機台13の回動時には、正極端子19(負極端子20)の接触面19A(接触面20A)が正極端子47(負極端子48)の端面47A(端面48A)に対して面接触で摺接する。この面接触による摺接は機台13の回動により繰り返される。接触面19A(20A)と端面47A(48A)が摺接するので、接触面19A(20A)および端面47A(48A)に形成されている酸化被膜が除去される。摺接のための無人搬送車11の回動の回数は1回でよいが複数回であってもよい。
【0053】
酸化被膜除去のための機台13の中心Pを回転中心とする無人搬送車11の回動が終了すると、酸化被膜が除去された位置で、正極端子19(負極端子20)の接触面19A(接触面20A)が正極端子47(負極端子48)の端面47A(端面48A)に接触するように停止する。無人搬送車11の停止後に、充電側コントローラ43が充電回路部42を制御してバッテリ17に対する充電を開始する。別例に係る無人搬送車11の充電システム60によれば、実施形態と同等の効果を奏する。
【0054】
本発明は、上記の実施形態(別例を含む)に限定されるものではなく発明の趣旨の範囲内で種々の変更が可能であり、例えば、次のように変更してもよい。
【0055】
○ 上記の実施形態(別例を含む)では、充電システムが携帯型通信機器を備えるとしたがこれに限らない。充電システムは、例えば、携帯型通信機器を備えない充電システムであってもよい。この場合、作業者は、無人走行体に設けた報知体による報知を受けて未充電であることを認識することができ、無人走行体に設けた入力操作部を操作することにより充電のために充電装置へ向けて無人走行体を走行させることができる。
○ 上記の実施形態(別例を含む)では、充電装置の充電端子が付勢部材により付勢されるとしたが、この限りではない。例えば、実施形態の例では、充電用の端子と充電端子が摺接時に面接触することができれば、必ずしも付勢部材は必須ではない。なお、別例では付勢部材を必要とすることが望ましい。また、付勢部材は、充電端子だけでなく充電用の端子を付勢するように備えられてもよい。
○ 上記の実施形態(別例を含む)では、充電装置の充電端子が装置本体から側方へ突出する充電アームに備えられ、無人走行体の充電用の端子が走行体本体の凹部に備えられたが、この限りではない。無人走行体の充電用の端子が充電アームのように走行体本体の側方へ突出し、充電装置の充電端子が装置本体から側方へ突出しない構成でもよい。
○ 上記の実施形態(別例を含む)では、無人走行体としての無人搬送車を例示して説明したが、これに限らない。無人走行体は、例えば、自律走行可能な警備ロボットでもよく、電動式の無人走行体であって充電可能なバッテリを搭載する走行体であればよい。
【符号の説明】
【0056】
10、60 充電システム
11 無人搬送車(無人走行体)
12 充電装置
13 機台
15(15A、15B、15C、15D) 駆動輪
16(16A、16B、16C、16D) 走行モータ
17 バッテリ
18 充電用の端子
19 正極端子
19A 接触面
20 負極端子
20A 接触面
28 車載コントローラ
36 携帯型通信機器
45 充電端子
47 正極端子
47A 端面
48 負極端子
48A 端面
49 コイルスプリング(付勢部材)
W 荷
X 軸線