(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024030681
(43)【公開日】2024-03-07
(54)【発明の名称】反射装置及びシステム
(51)【国際特許分類】
H01Q 19/10 20060101AFI20240229BHJP
H01Q 15/14 20060101ALI20240229BHJP
【FI】
H01Q19/10
H01Q15/14
【審査請求】有
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022133725
(22)【出願日】2022-08-25
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2023-06-20
(71)【出願人】
【識別番号】501440684
【氏名又は名称】ソフトバンク株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000877
【氏名又は名称】弁理士法人RYUKA国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】林 合祐
(72)【発明者】
【氏名】久世 竜司
(72)【発明者】
【氏名】福迫 武
【テーマコード(参考)】
5J020
【Fターム(参考)】
5J020AA03
5J020BA01
5J020BA06
5J020BD03
(57)【要約】 (修正有)
【課題】製造コストを低減し、電波の反射角を特定の方向に維持するために電力が不要である反射装置及びシステムを提供する。
【解決手段】反射装置30は、反射波の出射方向に沿って設けられる第1のデバイス110及び第2のデバイス120を備える。第1のデバイス110は、第1の基板210と、複数の第1のユニット311を有する。、第2のデバイス120は、第2の基板220と、複数の第2のユニット321を有する。第1のデバイス110は、第2のデバイス120から離間して設けられ、第2の面に沿う方向において、第1のデバイス110と第2のデバイス120との間の相対的な位置関係が調整可能である。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電波を反射する反射装置であって、
反射波の出射方向に沿って設けられる第1のデバイス及び第2のデバイス
を備え、
前記第1のデバイスは、
前記反射波の出射方向に沿って設けられた第1の面及び第2の面を有する第1の基体部と、
前記第1の面に設けられた第1の素子と、
前記第2の面に、前記反射波の出射方向において、前記第1の素子とは位置をずらして設けられた第2の素子と
をそれぞれ含む複数の第1のユニットを有し、
前記第2のデバイスは、
前記反射波の出射方向に沿って設けられる第3の面及び第4の面を有する第2の基体部と、
前記第3の面に設けられた第3の素子と、
前記第4の面に設けられた第4の素子と
をそれぞれ含む複数の第2のユニットを有し、
前記第1のデバイスは前記第2のデバイスから離間して設けられ、前記第2の面に沿う方向において前記第1のデバイスと前記第2のデバイスとの間の相対的な位置関係が調整可能である
反射装置。
【請求項2】
前記反射波の位相は、
前記第1の素子及び前記第2の素子の面積、
前記第1の素子と前記第2の素子との相対的な位置関係、
前記第1の基体部の厚み、
前記第3の素子及び前記第4の素子の面積、並びに
前記第2の基体部の厚み
によって定められる
請求項1に記載の反射装置。
【請求項3】
前記複数の第1のユニット及び前記複数の第2のユニットは、前記第1の面に沿う特定の方向に沿う複数の位置において、前記反射波の位相が互いに異なるように設けられる
請求項1又は2に記載の反射装置。
【請求項4】
前記複数の第1のユニット及び前記複数の第2のユニットは、前記反射波が特定の方向に伝搬するように設けられる
請求項1又は2に記載の反射装置。
【請求項5】
前記第1のデバイスと前記第2のデバイスとの間の相対的な位置関係を調整する調整装置
をさらに備える
請求項1又は2に記載の反射装置。
【請求項6】
前記反射装置に入射する電波の波長をλとして、前記複数の第1のユニットのそれぞれの1辺の長さは、0.3λ以上0.6λ以下の長さである
請求項1又は2に記載の反射装置。
【請求項7】
前記第1の素子、前記第2の素子、及び前記第3の素子は、多角形の形状、又は、少なくとも一部に曲線形状を有する
請求項1又は2に記載の反射装置。
【請求項8】
前記第1の素子は、特定の直線偏波又は特定の円偏波を透過する
請求項1又は2に記載の反射装置。
【請求項9】
前記第1の基体部及び前記第2の基体部は、多角形の形状、又は、少なくとも一部に曲線形状を有する
請求項1又は2に記載の反射装置。
【請求項10】
前記第1の素子及び前記第3の素子は、周波数選択表面(FSS)を有する導体である
請求項1又は2に記載の反射装置。
【請求項11】
請求項1又は2に記載の反射装置と、
前記反射装置に入射する電波を放射する電波放射装置と
を備えるシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、反射装置及びシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、電波を反射する反射板として、波長と同程度に小さな多数の素子を平面状に配置したリフレクトアレーについて記載されている。
[先行技術文献]
[特許文献]
[特許文献1]特開2015-46821号公報
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0003】
本発明の一実施態様によれば、反射装置が提供される。前記反射装置は、電波を反射する。前記反射装置は、反射波の出射方向に沿って設けられる第1のデバイス及び第2のデバイスを備える。前記第1のデバイスは、前記反射波の出射方向に沿って設けられた第1の面及び第2の面を有する第1の基体部と、前記第1の面に設けられた第1の素子と、前記第2の面に、前記反射波の出射方向において、前記第1の素子とは位置をずらして設けられた第2の素子とをそれぞれ含む複数の第1のユニットを有する。前記第2のデバイスは、前記反射波の出射方向に沿って設けられる第3の面及び第4の面を有する第2の基体部と、前記第3の面に設けられた第3の素子と、前記第4の面に設けられた第4の素子とをそれぞれ含む複数の第2のユニットを有する。前記第1のデバイスは前記第2のデバイスから離間して設けられ、前記第2の面に沿う方向において前記第1のデバイスと前記第2のデバイスとの間の相対的な位置関係が調整可能である。
【0004】
前記反射装置において、前記反射波の位相は、前記第1の素子及び前記第2の素子の面積、前記第1の素子と前記第2の素子との相対的な位置関係、前記第1の基体部の厚み、
前記第3の素子及び前記第4の素子の面積、並びに前記第2の基体部の厚みによって定められてよい。
【0005】
前記いずれかの反射装置において、前記複数の第1のユニット及び前記複数の第2のユニットは、前記第1の面に沿う特定の方向に沿う複数の位置において、前記反射波の位相が互いに異なるように設けられてよい。
【0006】
前記いずれかの反射装置において、前記複数の第1のユニット及び前記複数の第2のユニットは、前記反射波が特定の方向に伝搬するように設けられてよい。
【0007】
前記いずれかの反射装置は、前記第1のデバイスと前記第2のデバイスとの間の相対的な位置関係を調整する調整装置をさらに備えてよい。
【0008】
前記いずれかの反射装置において、前記反射装置に入射する電波の波長をλとして、前記複数の第1のユニットのそれぞれの1辺の長さは、0.3λ以上0.6λ以下の長さであってよい。
【0009】
前記いずれかの反射装置において、前記第1の素子、前記第2の素子、及び前記第3の素子は、多角形の形状、又は、少なくとも一部に曲線形状を有してよい。
【0010】
前記いずれかの反射装置において、前記第1の素子は、特定の直線偏波又は特定の円偏波を透過してよい。
【0011】
前記いずれかの反射装置において、前記第1の基体部及び前記第2の基体部は、多角形の形状、又は、少なくとも一部に曲線形状を有してよい。
【0012】
前記いずれかの反射装置において、前記第1の素子及び前記第3の素子は、周波数選択表面(FSS)を有する導体であってよい。
【0013】
本発明の一実施態様によれば、システムが提供される。前記システムは、前記いずれかの反射装置を備える。前記システムは、前記反射装置に入射する電波を放射する電波放射装置を備える。
【0014】
なお、上記の発明の概要は、本発明の必要な特徴の全てを列挙したものではない。また、これらの特徴群のサブコンビネーションもまた、発明となりうる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】反射装置30を備えるシステム10の構成の一例を概略的に示す。
【
図3】反射装置30が備える第1のデバイス110と第2のデバイス120の相対位置が整合している場合を示す。
【
図4】
図2のA-Aに沿って反射装置30を切断した場合の断面の一部を示す。
【
図5】第1のユニット311と第2のユニット321とを備えるユニット301の斜視図である。
【
図6】
図5のB-Bに沿ってユニット301を切断した場合の断面を示す。
【
図7】第2のデバイス120に対して第1のデバイス110を変位させることで得られる位相変化量を示すグラフである。
【
図8】比較例1における反射板が備えるユニット800を概略的に示す。
【
図9】比較例1における位相変化量を示すグラフである。
【
図10】比較例2における反射板が備えるユニット1000を概略的に示す。
【
図11】比較例2における位相変化量を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
例えば第5世代移動通信システムでは、比較的に高周波数帯の電波が使用される。高周波数帯の電波は直進性が高いため、建物等の障害物の陰に回り込みにくい。そのため、基地局からの見通し外となるエリアにカバレッジホール(通信ができないエリア)が多く発生し、通信可能エリアが狭くなり得る。したがって、通信可能エリアを拡大するためには、多数の基地局を設置する必要が生じる。これにより、通信エリアを拡大するためのコストが高くなってしまう。
【0017】
建物等の建造物に反射板を設けて、基地局から放射された電波を反射板で反射させることで、障害物の陰となるエリアに電波を到達させるようにすることができる。この目的の反射板として、電波の入射角と反射角とを異ならせることができるメタサーフェス反射板が検討されている。
【0018】
カバレッジホールを効果的に減少させるためには、反射角を調整するために反射波の位相が調整可能であることが望まれる。反射波の位相を調整可能なメタサーフェス反射板としては、誘電率が可変な材料(例えば、液晶等)を用いる構成や、インピーダンスを調整するために複数のバラクタ・ダイオード又はPINダイオードを各セルに配置した構成等が考えられる。しかし、これらの構成では、反射角を特定の方向に維持するために電力が必要となる。ダイオード又はPINダイオードを用いる構成では、セル構造が複雑となり、反射板の製造コストが高くなる。
【0019】
これに対して、本実施形態に係る反射装置30を備えるシステム10においては、反射装置30は、第1のデバイス110と第2のデバイス120とを離間させた構造を有する。これにより、第1のデバイス110及び第2のデバイス120の相対的な面内位置を調整可能にすることで、反射波の位相を調整可能にする。これにより、反射装置30の製造コストを低減しつつ、電波の反射角を特定の方向に維持するために電力が実質的に不要となる。更に、反射装置30においては、第1のデバイス100と第2のデバイス200との間に追加の素子を設けることで、動作周波数帯における反射波の位相変化量を拡大することが可能になる。これにより、基地局を通じた通信可能エリアを拡大することが可能となる。したがって、基地局の数を抑制することができるので、通信可能エリアを拡大するためのコストを削減することができる。
【0020】
以下、発明の実施の形態を通じて本発明を説明するが、以下の実施形態は特許請求の範囲にかかる発明を限定するものではない。また、実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。
【0021】
図1は、反射装置30を備えるシステム10の構成の一例を概略的に示す。システム10は、基地局20と、反射装置30とを備える。本実施形態において、システム10は、移動体通信システムである。基地局20は、移動体通信用の電波を放射する。
【0022】
基地局20が放射する電波は、第5世代移動通信システムで使用され得る周波数帯の電波を含む。具体的には、基地局20が放射する電波は、Sバンドの周波数帯以上の周波数帯の電波を含んでよい。基地局20が放射する電波は、Cバンドの周波数帯以上の周波数帯の電波を含んでよい。基地局20が放射する電波は、準ミリ波帯~ミリ波帯の電波を含んでよい。本実施形態において、基地局20が放射する電波は、一例として5.77GHzの電波を含むとする。
【0023】
例えば、Sバンドの周波数帯以上の電波は、Lバンド以下の周波数帯(例えば、700MHz帯、800MHz帯)の電波に比べて、建物等の障害物の陰に回り込みにくい。エリア80は、基地局20からみて建物90の陰に位置する。そのため、基地局20から放射されてエリア80に直接到達する電波の強度は、非常に弱くなってしまう。
【0024】
反射装置30は、基地局20から放射された電波を反射する。反射装置30は、例えば、基地局20の見通し範囲に位置する建物92の壁面に設けられる。反射装置30は、入射した電波の特定方向に反射する。反射装置30は、反射装置30が電波を反射する方向を調整可能に構成される。反射装置30は、基地局20から放射されて反射装置30に入射した電波が反射装置30で反射してエリア80に向かうように調整されている。反射装置30により、基地局20から放射された電波をエリア80に到達させることができる。これにより、基地局を増設しなくても、基地局20を通じた通信可能エリアを拡大することが可能になる。したがって、通信可能エリアを拡大するためのコストを削減することができる。
【0025】
図2は、反射装置30を概略的に示す斜視図である。
図3及び
図4は、
図2のA-Aに沿って反射装置30を切断した場合の断面の一部を示す。
図3は、反射装置30が備える第1のデバイス110と第2のデバイス120の相対位置が整合している場合を示す。
図4は、第1のデバイス110と第2のデバイス120の相対位置が整合しておらず、第1のデバイス110が第2のデバイス120に対して変位している場合を示す。
【0026】
本実施形態の図面において、反射装置30の構成を説明するために座標軸が示される場合がある。本実施形態の図面において、座標軸は、方向を表すことを目的として示される。座標軸のx軸及びy軸は、反射装置30の主面に平行な面内に設定される。座標軸のz軸の向きは、概ね、反射装置30への入射波の入射する向きを正とし、反射波が出射する方向を負とする。
【0027】
図2から
図4を参照して反射装置30の構成を説明する。反射装置30は、電波を反射する。反射装置30は、反射波の出射方向に沿って設けられる第1のデバイス110及び第2のデバイス120と、調整装置34とを備える。
【0028】
第1のデバイス110は、反射装置30への入射する電波である入射波が直接に入射し得る入射面と、反射波の出射面とを提供する。第2のデバイス120には、第1のデバイス110を通過した電波が入射する。第1のデバイス110は、第2のデバイス120よりz軸マイナス側に位置する。第1のデバイス110は、第2のデバイス120より基地局20に近くに位置するデバイスであってよい。
【0029】
第1のデバイス110は、第1の基板210に、第1の素子111、第1の素子112、第1の素子113、及び第1の素子114を含む複数の素子がマトリクス状に配置された構成を有する。同様に、第2のデバイス120は、第2の基板220に、第1の素子と同様の複数の素子がマトリクス状に配置された構成を有する。
【0030】
第1のデバイス110は、反射波の出射方向に沿って設けられた第1の面101及び第2の面102を有する第1の基体部211と、第1の面101に設けられた第1の素子111と、第2の面102に、反射波の出射方向において、第1の素子111とは位置をずらして設けられた第2の素子121と、を含む第1のユニット311を有する。
【0031】
第2の面102は、第1の面101とは反対側の面である。第1の面101は、第2の面102よりz軸マイナス側に位置する。
【0032】
図2に示されるように、第1のデバイス110は、第1のユニット311と同一又は同様の構成を備える複数の第1のユニットがマトリクス状に配置された構成を備える。
【0033】
具体的には、第1のデバイス110において、x軸に沿う方向に並ぶ第1のユニットは、それぞれのユニットが有する第1の素子の大きさが異なる点を除いて、互いに同一の構成を備える。例えば、
図2及び
図3等に示されるように、第1のユニット311が有する第1の素子111は第1のユニット312が有する第1の素子112より大きく、第1のユニット312が有する第1の素子112は第1のユニット313が有する第1の素子113より大きく、第1のユニット313が有する第1の素子113は第1のユニット314が有する第1の素子114より大きい。一方、y軸に沿う方向に並ぶ第1のユニットは、互いに同一の構成を有する。これにより、反射装置30による反射波の位相は、x軸方向における異なる位置において互いに異なる位相を有することができる。
【0034】
説明の都合上、第1のデバイス110は、複数の第1のユニットが配置された構成を備えるものとして説明されるが、複数の第1のユニットは第1のデバイス110の特定の部位を示すものであり、複数の第1のユニットが複数の別個の部材であることを意味していない。同様に、第1の基体は第1の基板210の特定の部位を示すものであり、第1の基板210は1つの部材で一体に構成され得る。
【0035】
第2のデバイス120は、反射波の出射方向に沿って設けられる第3の面103及び第4の面104を有する第2の基体部221と、第3の面103に設けられた第3の素子131と、第4の面に設けられた第4の素子141と、を含む第2のユニット320を有する。
【0036】
第4の面104は、第3の面103とは反対側の面である。第3の面103は、第4の面104よりz軸マイナス側に位置する。第2の面102及び第2の素子121は、第3の面103及び第3の素子131の少なくとも一部に対向し得る面である。
【0037】
第2のデバイス120は、第1のデバイス110と同様に、第2のユニット321と同一又は同様の構成を備える複数の第2のユニットがマトリクス状に配置された構成を備える。
【0038】
具体的には、第2のデバイス120において、x軸に沿う方向に並ぶ第2のユニットは、それぞれのユニットが有する第3の素子の大きさが異なる点を除いて、互いに同一の構成を備える。例えば、
図3等に示されるように、第2のユニット321が有する第3の素子131は第2のユニット322が有する第3の素子132より大きく、第2のユニット322が有する第3の素子132は第2のユニット323が有する第3の素子133より大きく、第2のユニット324が有する第3の素子133は第2のユニット324が有する第1の素子134より大きい。一方、y軸に沿う方向に並ぶ第2のユニットは、互いに同一の構成を有する。
【0039】
説明の都合上、第2のデバイス120は、複数の第2のユニットが配置された構成を備えるものとして説明されるが、複数の第2のユニットは第2のデバイス120の特定の部位を示すものであり、複数の第2のユニットが複数の別個の部材であることを意味していない。同様に、第2の基体は第2の基板220の特定の部位を示すものであり、第2の基板220は1つの部材で一体に構成され得る。
【0040】
第1の素子111、第2の素子121、第3の素子131及び第4の素子141は、導体である。一例として、第1の素子111及び第3の素子131は、周波数選択表面(FSS)を有する導体である。第4の素子141は、グランド導体であり、電波の反射面を提供する。反射装置30に入射した電波は、第1のデバイス110を通過して第2のデバイス120に入射し、第4の素子で反射し、第2のデバイス120及び第1のデバイス110を通過して反射波として外部に出射する。反射装置30に入射した電波には、第1のデバイス110を構成する部材及び第2のデバイス120を構成する部材によって位相差が生じ、反射装置30からの反射波として第1のデバイス110から反射装置30外に出射する。
【0041】
第1のデバイス110は、第2のデバイス120から離間して設けられる。第2の面102に沿う方向において第1のデバイス110と第2のデバイス120との間の相対的な位置関係が調整可能である。具体的には、第2のデバイス120は固定され、第1のデバイス110は、x軸に沿う方向に、第2のデバイス120に対して相対的に変位することができる。
【0042】
調整装置34は、第1のデバイス110と第2のデバイス120との間の相対的な位置関係を調整する。例えば、調整装置34は、第1のデバイス110に取り付けられ、x軸に沿う方向に第1のデバイス110を変位させる。調整装置34は、第1のデバイス110に固定された移動部材を、ネジ等の調整部材によって変位させる変位機構を備えてよい。
【0043】
反射波の位相は、第1の素子111及び第2の素子121の面積、第1の素子111と第2の素子121との相対的な位置関係、第1の基体部211の厚み、第3の素子131及び第4の素子141の面積、並びに、第2の基体部221の厚みによって定められる。反射波の位相は、さらに第1の基板210と第2の基板220との間の間隔、第2の基板210の誘電率、及び第2の基板220の誘電率によって定められる。このように、反射波の位相は、電気的に定められるのではなく、反射装置30の機械的な構造によって定められる。
【0044】
第1のデバイス110が備える複数の第1のユニット及び第2のデバイス120が備える複数の第2のユニットは、第1の面101に沿う特定の方向に沿う複数の位置において、反射波の位相が互いに異なるように設けられる。具体的には、複数の第1のユニット及び複数の第2のユニットは、反射波が特定の方向に伝搬するように設けられる。
【0045】
第1のデバイス110が備える複数の第1のユニット及び第2のデバイス120が備える複数の第2のデバイス120は、例えば、x軸方向において、第1のデバイス110が備える複数の第1のユニットの間で反射波の位相差が一定量ずつ異なるように設けられる。この場合、反射装置30による反射波は特定の方向に伝搬することになる。
【0046】
x軸方向に沿って第2のデバイス120に対する第1のデバイス110の相対位置を変えることで、第1のデバイス110が有する複数の第1の素子及び複数の第2の素子121、並びに第2のデバイス120が有する複数の第3の素子131の配列が変わるため、x方向における反射波の位相差が変わる。これにより、反射装置30による反射波が伝搬する方向を変えることができる。したがって、x軸方向に沿って第2のデバイス120に対する第1のデバイス110の相対位置を調整することで、反射装置30による反射波が伝搬する方向を調整することができる。これにより、反射装置30を建物90に設置する場合に、基地局20のカバレッジホールを解消するように、反射装置30による反射波が伝搬する方向を調整することができる。
【0047】
図5及び
図6を参照して、第1のユニット311及び第2のユニット321の具体的な構造の一例を説明する。
図5は、第1のユニット311と第2のユニット321とを備えるユニット301の斜視図である。
図6は、
図5のB-Bに沿ってユニット301を切断した場合の断面を示す。
図5及び
図6は、第1のデバイス110と第2のデバイス120の位置が整合している場合の図である。
【0048】
図6に示されるように、ユニット301において、第2の素子121は、第2の面102において、x軸プラス側の端部及びx軸マイナス側の端部に位置する。第2の素子121は、第2の面102においてy軸方向の中央部に位置する。
【0049】
このように、第2の素子121は、第1の素子111からずれた位置に設けられる。例えば、第1の素子111及び第2の素子121をxy面に投影した場合に、xy面において第1の素子111が占める範囲と第2の素子121が占める範囲が一致しない。つまり、z軸方向に見た場合に、第2の素子121が第1の素子111と重ならない領域が存在する、及び/又は、第1の素子111が第2の素子121と重ならない領域が存在するように、第1の素子111及び第2の素子121が設けられている。
【0050】
本実施形態において、z軸方向に見た場合、第1の基体部211及び第2の基体部221の形状は、正方形である。z軸方向に見た場合、第1の素子111、第2の素子121、及び第3の素子131の形状は、正方形である。
【0051】
反射装置30に入射する電波の波長をλとして、第1のユニット311の1辺の長さは、0.38λであり、第2のユニット321の1辺の長さは、0.38λである。具体的には、第1の基体部211の1辺の長さは0.38λであり、第2の基体部221の1辺の長さは0.38λである。
【0052】
第1の基体部211の厚みd1は0.03λであり、第1の基体部211の誘電率は2.16である。第2の基体部221の厚みd2は0.06λであり、第2の基体部221の誘電率は2.56である。第1の基体部211と第2の基体部221との間の間隔Dは、0.038λである。
【0053】
第1の素子111の1辺の長さL1は0.346λである。第2の素子121の1辺の長さL2は0.11λである。第2の素子121は、隣接する第1のユニットと共通に設けられるため、第2の素子121が第2のユニットにおいて占める部分については、第2の素子121のx軸方向の長さはL2/2となる。第1の素子111の厚み、及び第2の素子121の厚みは、0.000346λである。
【0054】
第3の素子131の1辺の長さL3は、0.346λである。第4の素子141が第2のユニット321において占める部分の1辺の長さは0.38λである。第3の素子131の厚み及び第4の素子の厚みは0.000346λである。
【0055】
図7を参照して、第2のデバイス120に対して第1のデバイス110を変位させた場合に得られる反射波の位相差を説明する。ここでは、対象とする電波の周波数は5.77GHzであるとする。
【0056】
図7は、第2のデバイス120に対して第1のデバイス110を変位させることで得られる位相変化量を示すグラフである。線700は、第1のデバイス110の位置と第2のデバイス120の位置とが整合している場合の反射波の位相を示す。
【0057】
第2のデバイス120に対して第1のデバイス110を変位させていくと、線700が示す位相との差(位相変化量)が生じ得る。ここでは、線700における5.77GHzに対応する位相との間の位相差のことを、「位相変化量」と呼ぶこととする。線710は、第2のデバイス120に対して第1のデバイス110を変位させていった場合において、位相変化量が最大となる位置に第2のデバイス120を固定したときの反射波の位相を示す。
【0058】
図7に示されるように、本実施形態では、位相変化量は最大312.7°となる。つまり、本実施形態では、312.7°の範囲内で位相を調整することが可能である。つまり、第2のデバイス120に対して第1のデバイス110を変位させることで、反射波の反射角を比較的に大きくすることが可能になる。
【0059】
図8は、比較例1における反射板が備えるユニット800を概略的に示す。ユニット800は、
図6に示すユニット301に対応するユニットである。ユニット800は、第2の素子121を有さず、第1の基体部211が第2の基体部221から実質的に離間していない点で、ユニット301とは異なる。比較例1では、第2の基体部221に対する第1の基体部211の位置を製造後に変位させることができない。
【0060】
図9は、比較例1における位相変化量を示すグラフである。線900は、
図8に示されるように第1の基体部211の位置と第2の基体部221の位置とが整合している場合の反射波の位相を示す。線910は、5.77GHzにおいて位相変化量が最大になるように第2の基体部221に対して第1の基体部211の位置を設定した場合の反射波の位相を示す。
図9に示されるように、比較例1の構成によれば、位相変化量は315.9°となる。
【0061】
図10は、比較例2における反射板が備えるユニット1000を概略的に示す。ユニット1000は、
図6に示すユニット301に対応するユニットである。ユニット1000は、第2の素子121を有しない点で、ユニット301とは異なる。比較例2によれば、比較例1とは異なり、第2の基体部221に対する第1の基体部211の位置を製造後に変位させることができる。
【0062】
図11は、比較例2における位相変化量を示すグラフである。線1100は、
図10に示されるように第1の基体部211の位置と第2の基体部221の位置とが整合している場合の反射波の位相を示す。線1110は、5.77GHzにおいて位相変化量が最大になるように第2の基体部221に対して第1の基体部211の位置を変位させた場合の反射波の位相を示す。
図11に示されるように、比較例2の構成によれば、位相変化量は208.5°となる。
【0063】
比較例2と比較例1との比較から分かるように、第1の基体部211と第2の基体部221とを離間させることで、第2の基体部221に対して第1の基体部211の位置を変位させることができる。しかし、位相変化量は315.9°から208.5°に低下してしまう。つまり、設定可能な反射角の範囲が狭くなる。
【0064】
比較例2と上述した反射装置30との比較から分かるように、第2の素子121を設けることによって、位相変化量を312.7°まで大幅に拡大することができる。つまり、上述した反射装置30によれば、第1のデバイス110と第2のデバイス120とを離間させて第2のデバイス120に対して第1のデバイス110を変位可能にすることによって反射波の位相を調整可能にしつつ、比較例1によって得られる位相変化量315.9°と同等の位相変化量を得ることができる。
【0065】
続いて、上述した反射装置30の変形例を説明する。上述した反射装置30において、第1のデバイス110が有する複数の第1のユニットの1辺の長さは、反射装置30に入射する電波の波長をλとして、0.38λである。しかし、第1のユニットの1辺の長さはこの値に限らず、反射装置30に入射する電波の波長をλとして、第1のデバイス110が有する複数の第1のユニットのそれぞれの1辺の長さは、0.3λ以上0.6λ以下の長さの任意の値を適用できる。
【0066】
上述した反射装置30において、第1の素子111を含む複数の第1の素子、第2の素子122を含む複数の第2の素子、及び、第3の素子131を含む複数の第3の素子の形状は、正方形である。しかし、第1の素子、第2の素子、及び第3の素子の形状は、正方形に限られない。第1の素子、第2の素子、及び第3の素子は、多角形の形状、又は、少なくとも一部に曲線形状を有してよい。
【0067】
上述した反射装置30において、第1の基体部211を含む複数の第1の基体部及び第2の基体部221を含む複数の第2の基体部は、正方形である。しかし、第1の基体部及び第2の基体部の形状は、正方形に限られない。第1の基体部及び第2の基体部は、多角形の形状、又は、少なくとも一部に曲線形状を有してよい。
【0068】
上述した反射装置30において、第1の素子111を含む複数の第1の素子は、特定の直線偏波又は特定の円偏波を透過してよい。第2の素子122を含む複数の第2の素子は、特定の直線偏波又は特定の円偏波を透過してよい。
【0069】
上述したシステム10において、基地局20は、反射装置30に入射する電波を放射する電波放射装置の一例である。反射装置30が備える構成の反射装置は、上述した移動体通信用の基地局20以外の電波放射装置から放射された電波を反射する反射装置として適用可能である。
【0070】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されない。上記実施の形態に、多様な変更又は改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。その様な変更又は改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【0071】
特許請求の範囲、明細書、及び図面中において示した装置、システム、プログラム、及び方法における動作、手順、ステップ、及び段階などの各処理の実行順序は、特段「より前に」、「先立って」などと明示しておらず、また、前の処理の出力を後の処理で用いるのでない限り、任意の順序で実現しうることに留意すべきである。特許請求の範囲、明細書、及び図面中の動作フローに関して、便宜上「まず、」、「次に、」などを用いて説明したとしても、この順で実施することが必須であることを意味するものではない。
【符号の説明】
【0072】
10 システム、20 基地局、30 反射装置、34 調整装置、101 第1の面、102 第2の面、103 第3の面、104 第4の面、110 第1のデバイス、120 第2のデバイス、111、112、113、114 第1の素子、121 第2の素子、131 第3の素子、141 第4の素子、101 第1の面、102 第2の面、103 第3の面、104 第4の面、211 第1の基体部、221 第2の基体部、311 第1のユニット、321 第2のユニット