(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024030684
(43)【公開日】2024-03-07
(54)【発明の名称】パルスアーク溶接制御方法
(51)【国際特許分類】
B23K 9/095 20060101AFI20240229BHJP
B23K 9/09 20060101ALI20240229BHJP
【FI】
B23K9/095 501A
B23K9/09
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022133730
(22)【出願日】2022-08-25
(71)【出願人】
【識別番号】000000262
【氏名又は名称】株式会社ダイヘン
(72)【発明者】
【氏名】梶原 凱
(72)【発明者】
【氏名】中俣 利昭
【テーマコード(参考)】
4E082
【Fターム(参考)】
4E082AB03
4E082CA01
4E082DA01
4E082EC03
4E082EE01
4E082EE03
4E082EE04
4E082EE07
4E082FA04
(57)【要約】
【課題】パルスアーク溶接において、ピーク期間中に溶滴移行が発生しても、1パルス周期1溶滴移行状態を維持すること。
【解決手段】溶接ワイヤを送給し、ピーク電流Ip及びピーク電圧を出力するピーク期間とベース電流Ib及びベース電圧を出力するベース期間とを繰り返して溶接するパルスアーク溶接制御方法において、ピーク期間中の時刻t32に溶滴移行を判別したときは、ピーク電流Ipの通電路に抵抗を挿入してピーク電流Ipを急下降させる。溶滴移行の判別を、ピーク電圧Vwの振動にもとづいて行う。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶接ワイヤを送給し、ピーク電流及びピーク電圧を出力するピーク期間とベース電流及びベース電圧を出力するベース期間とを繰り返して溶接するパルスアーク溶接制御方法において、
前記ピーク期間中に溶滴移行を判別したときは、前記ピーク電流を下降させる、
ことを特徴とするパルスアーク溶接制御方法。
【請求項2】
前記ピーク期間中に溶滴移行を判別したときは、前記ピーク電流の通電路に抵抗を挿入して前記ピーク電流を下降させる、
ことを特徴とする請求項1に記載のパルスアーク溶接制御方法。
【請求項3】
前記溶滴移行の判別を、前記ピーク電圧の下降にもとづいて行う、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載のパルスアーク溶接制御方法。
【請求項4】
前記溶滴移行の判別を、前記ピーク電圧の振動にもとづいて行う、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載のパルスアーク溶接制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、溶接ワイヤを送給して行うパルスアーク溶接制御方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
消耗電極パルスアーク溶接では、溶接ワイヤを送給し、ピーク電流及びピーク電圧を出力するピーク期間と、ベース電流及びベース電圧を出力するベース期間とを繰り返して溶接が行われる。ピーク電流は臨界電流値以上となる500A程度の大電流値に設定され、溶接ワイヤを溶融して溶滴の形成及び移行が行われる。ベース電流は臨界電流値未満となる50A程度に設定され、溶接ワイヤはほとんど溶融しない。溶接電流値が臨界電流値以上になると、溶滴の移行携帯がスプレー移行状態となる。パルスアーク溶接では、1回のピーク電流の通電によって1つの溶滴を移行させる1パルス周期1溶滴移行の状態を維持することが、スパッタの発生の少ない高品質の溶接ビードを得るために重要である。
【0003】
パルスアーク溶接において、ピーク電流、ピーク期間等のパルス波形パラメータを適正値に設定すると、ピーク期間中に溶接ワイヤの先端が溶融されて溶滴が形成され、ピーク期間の終了直後のベース期間中に溶滴が溶融池へと移行する状態となり、1パルス周期1溶滴移行の安定した溶接状態となる。パルス波形パラメータの適正値は、送給速度、溶接ワイヤの成分、直径、溶接速度、溶接姿勢等の種々の溶接条件に応じて変化する。そこで、特許文献1の発明では、溶滴移行を短絡の発生によって判別し、溶滴移行タイミングがピーク期間の終了直後のベース期間中に発生するようにすることによって、パルス波形パラメータを適正値に自動設定している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
パルス波形パラメータが適正値に設定されていても、溶滴の形成状態のばらつきによって、ピーク期間中に溶滴移行が発生する場合がある。ピーク期間の途中に溶滴移行が発生すると、残りのピーク電流の通電によって再び溶滴が形成されることになる。この再形成された溶滴がベース期間中又は次のピーク期間中に移行することになり、1パルス周期1溶滴移行状態から外れて一時的にスパッタが発生する不安定な溶接状態となる。
【0006】
そこで、本発明では、ピーク期間中に溶滴移行が発生しても、1パルス周期1溶滴移行状態を維持して、安定した溶接状態を継続することができるパルスアーク溶接制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決するために、請求項1の発明は、
溶接ワイヤを送給し、ピーク電流及びピーク電圧を出力するピーク期間とベース電流及びベース電圧を出力するベース期間とを繰り返して溶接するパルスアーク溶接制御方法において、
前記ピーク期間中に溶滴移行を判別したときは、前記ピーク電流を下降させる、
ことを特徴とするパルスアーク溶接制御方法である。
【0008】
請求項2の発明は、
前記ピーク期間中に溶滴移行を判別したときは、前記ピーク電流の通電路に抵抗を挿入して前記ピーク電流を下降させる、
ことを特徴とする請求項1に記載のパルスアーク溶接制御方法である。
【0009】
請求項3の発明は、
前記溶滴移行の判別を、前記ピーク電圧の下降にもとづいて行う、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載のパルスアーク溶接制御方法である。
【0010】
請求項4の発明は、
前記溶滴移行の判別を、前記ピーク電圧の振動にもとづいて行う、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載のパルスアーク溶接制御方法である。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係るパルスアーク溶接制御方法によれば、ピーク期間中に溶滴移行が発生しても、1パルス周期1溶滴移行状態を維持して、安定した溶接状態を継続することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の実施の形態に係るパルスアーク溶接制御方法を実施するための溶接電源のブロック図である。
【
図2】本発明の実施の形態に係るパルスアーク溶接制御方法を示す
図1の溶接電源における各信号のタイミングチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。
【0014】
図1は、本発明の実施の形態に係るパルスアーク溶接制御方法を実施するための溶接電源のブロック図である。以下、同図を参照して各ブロックについて説明する。
【0015】
電源主回路MCは、3相200V等の商用電源(図示は省略)を入力として、後述する電流誤差増幅信号Eiに従ってインバータ制御等の出力制御を行い、溶接に適した出力電圧を出力する。
【0016】
リアクトルWLは、電源主回路MCの出力を平滑する。
【0017】
溶接ワイヤ1は、ワイヤ送給モータ(図示は省略)に結合された送給ロール5の回転によって溶接トーチ4内を通って送給され、母材2との間にアーク3が発生する。溶接トーチ4内の給電チップ(図示は省略)と母材2との間には溶接電圧Vwが印加し、溶接電流Iwが通電する。
【0018】
電圧検出回路VDは、上記の溶接電圧Vwを検出して、電圧検出信号Vdを出力する。電圧平均化回路VAVは、上記の電圧検出信号Vdを平均化して、電圧平均信号Vavを出力する。電圧設定回路VRは、予め定めた電圧設定信号Vrを出力する。
【0019】
電圧誤差増幅回路EVは、上記の電圧設定信号Vrと上記の電圧平均信号Vavとの誤差を増幅して、電圧誤差増幅信号Evを出力する。
【0020】
V/FコンバータVFは、上記の電圧誤差増幅信号Evに応じた周期を有するパルス周期信号Tfを出力する。このパルス周期信号Tfは、ピーク期間とベース期間との1周期を決定する信号である。
【0021】
ピーク期間設定回路TPRは、予め定めたピーク期間設定信号Tprを出力する。
【0022】
ベース電流設定回路IBRは、予め定めたベース電流設定信号Ibrを出力する。ピーク電流設定回路IPRは、予め定めたピーク電流設定信号Iprを出力する。ピーク電流設定信号Iprは、溶接ワイヤの直径、材質、送給速度等に応じて、400~600A程度に設定される。
【0023】
降下電流設定回路ILRは、予め定めた降下電流設定信号Ilrを出力する。ここで、Ibr≧Ilr<Iprに設定される。
【0024】
ピーク期間回路STPは、上記のパルス周期信号Tf及び上記のピーク期間設定信号Tprを入力として、パルス周期信号Tfが短時間Highレベルに変化した時点からピーク期間設定信号Tprによって定まるピーク期間Tp中はHighレベルとなり、その後に再びパルス周期信号Tfが短時間Highレベルに変化するまでのベース期間Tb中はLowレベルとなるピーク期間信号Stpを出力する。
【0025】
溶滴移行判別回路DDは、上記のピーク期間信号Stp及び上記の電圧検出信号Vdを入力として、ピーク期間信号StpがHighレベルであるピーク期間Tp中に、以下の1)又は2)のいずれかの方法で溶滴の移行を判別したときは、短時間Highレベルとなる溶滴移行判別信号Ddを出力する。
1)電圧検出信号Vdの下降率が基準値以上となったことによって溶滴移行を判別する。
2)電圧検出信号Vdが基準値以上に下降しその後に基準値以上に上昇する振動が発生したことによって溶滴移行を判別する。
【0026】
電流設定回路IRは、上記のベース電流設定信号Ibr、上記のピーク電流設定信号Ipr、上記の降下電流設定信号Ilr、上記のピーク期間信号Stp及び上記の溶滴移行判別信号Ddを入力として、以下の処理を行い、電流設定信号Irを出力する。
1)ピーク期間信号StpがHighレベルのときはピーク電流設定信号Iprの値となる電流設定信号Irを出力する。
2)ピーク期間信号StpがHighレベルであるときに、溶滴移行判別信号Ddが短時間Highレベルとなると、降下電流設定信号Ilrの値となる電流設定信号Irを出力する。
3)ピーク期間信号StpがLowレベルのときはベース電流設定信号Ibrの値となる電流設定信号Irを出力する。
【0027】
減流抵抗器Rは、上記のリアクトルWLと溶接トーチ4との間に挿入される。この減流抵抗器Rの値は、短絡負荷(0.01~0.03Ω程度)の50倍以上大きな値(0.5~3Ω程度)に設定される。この減流抵抗器Rが通電路に挿入されると、リアクトルWL及び外部ケーブルのリアクトルに蓄積されたエネルギーが急放電される。
【0028】
トランジスタTRは、上記の減流抵抗器Rと並列に接続されて、後述する駆動信号Drに従ってオン又はオフ制御される。
【0029】
電流比較回路CMは、上記の降下電流設定信号Ilr及び上記の電流検出信号Idを入力として、Id≦IlrのときはHighレベルになり、Id>IlrのときはLowレベルになる電流比較信号Cmを出力する。
【0030】
駆動回路DRは、上記の電流比較信号Cm及び上記の溶滴移行判別信号Ddを入力として、溶滴移行判別信号Ddが短時間Highレベルに変化するとLowレベルに変化し、その後に電流比較信号CmがHighレベルに変化するとHighレベルに変化する駆動信号Drを上記のトランジスタTRのベース端子に出力する。したがって、この駆動信号Drは、溶滴移行が判別されるとLowレベルになり、トランジスタTRがオフ状態になり通電路に減流抵抗器Rが挿入されるので、溶接電流Iwは急減する。そして、急減した溶接電流Iwの値が降下電流設定信号Ilrの値まで下降すると、駆動信号DrはHighレベルになり、トランジスタTRがオン状態になるので、減流抵抗器Rは短絡されて通常の状態に戻る。
【0031】
電流検出回路IDは、上記の溶接電流Iwを検出して、電流検出信号Idを出力する。
【0032】
電流誤差増幅回路EIは、上記の電流設定信号Irと上記の電流検出信号Idとの誤差を増幅して、電流誤差増幅信号Eiを出力する。
【0033】
図2は、本発明の実施の形態に係るパルスアーク溶接制御方法を示す
図1の溶接電源における各信号のタイミングチャートである。同図(A)は溶接電流Iwの時間変化を示し、同図(B)は溶接電圧Vwの時間変化を示し、同図(C)は溶滴移行判別信号Ddの時間変化を示し、同図(D)は駆動信号Drの時間変化を示す。以下、同図を参照して各信号の動作について説明する。
【0034】
同図は、2周期の波形を示しており、第1周期はピーク期間の終了直後のベース期間中に溶滴が移行し、溶滴移行に伴い微小短絡が発生した場合である。したがって、第1周期は1パルス周期1溶滴移行の安定した溶接状態となる。第2周期は、ピーク期間中に溶滴が移行した場合である。この場合には、本実施の形態による1パルス周期1溶滴移行状態を維持するための制御が行われる。図示は省略するが、溶接ワイヤは一定の速度で送給されている。
【0035】
(1)第1周期の動作説明
同図(A)に示すように、溶接電流Iwは時刻t1~t2のピーク期間中は、ベース電流Ibから傾斜を有して上昇してピーク電流Ipが通電する。時刻t2~t3のベース期間中は、ピーク電流Ipから傾斜を有して下降してベース電流Ibが通電する。上記の上昇時及び下降時の傾斜は、溶接電流Iwの通電路のインダクタンス値及び抵抗値によって定まり、0.5~1ms程度である。この傾斜を所定値に制御する場合もある。上記のベース電流Ibは
図1のベース電流設定信号Ibrによって設定され、上記のピーク電流Ipは
図1のピーク電流設定信号Iprによって設定され、上記のピーク期間は
図1のピーク期間設定信号Tprによって設定される。同図(B)に示すように、溶接電圧Vwは、アーク長に比例した電圧値となり、電流波形と相似した波形となる。溶接電圧Vwの平均値が
図1の電圧設定信号Vrの値と等しくなるように時刻t1~t3のパルス周期がフィードバック制御されて、アーク長が制御される。例えば、ピーク電流Ipは500Aに設定され、ピーク期間は1.7msに設定され、ベース電流Ibは50Aに設定される。パルス周期は、フィードバック制御されるので所定値ではないが、5ms程度となる。
【0036】
第1周期では、ベース期間中の時刻t21~t22の期間に微小短絡が発生している。微小短絡は、0.5ms以下の短絡となり、0.1ms程度の短絡が多く発生する。微小短絡は、ピーク電流Ipの通電によって形成された溶滴がベース期間中にスプレー状態で移行する過程で、溶滴の先端が溶融池に微小時間の間接触することで発生する。したがって、微小短絡では溶滴は短絡移行せずにあくまでもスプレー移行する。このために、同図(A)に示すように、溶接電流Iwは微小短絡期間中もベース電流Ibに制御される。同図(B)に示すように、溶接電圧Vwは数Vの短絡電圧値となる。また、同図(C)に示すように、溶滴移行判別信号DdはLowレベルのままである。同図(D)に示すように、駆動信号DrはHighレベルのままであるので、
図1のトランジスタTRはオン状態となり、
図1の減流抵抗器Rは短絡された状態となっている。
【0037】
(2)第2周期の動作説明
第1周期とは異なる点について説明する。時刻t3からのピーク期間の途中の時刻t31において溶滴移行の前兆状態となり、時刻t32において、溶滴が移行したことを判別すると、同図(C)に示すように、溶滴移行判別信号が短時間Highレベルとなる。溶滴移行の判別は、
図1の溶滴移行判別回路DDにおいて、以下の1)又は2)の方法によって行われる。
1)ピーク電圧の下降率が基準値以上となったことによって溶滴移行を判別する。溶滴が移行する場合には、形成された溶滴が長く伸びた形状となり、アーク長が短くなる。この結果、ピーク電圧が下降する状態となる。したがって、このピーク電圧の下降率が基準値以上であることによって溶滴の移行を判別することができる。
2)ピーク電圧が基準値以上に下降しその後に基準値以上に上昇する振動が発生したことによって溶滴移行を判別する。溶滴の移行時において、ピーク電圧が上述したように下降し、その後に溶滴が溶接ワイヤから離脱するとアーク長が瞬時的に長くなる。この結果、ピーク電圧は急上昇するので、ピーク電圧は振動することになる。ピーク電圧は、溶滴移行が発生していない状態でも、溶融池の振動、溶滴の形成状態等に影響されて少し変動している。したがって、この変動と溶滴移行とを正確に識別するためには、2)の方法がより好ましい。
【0038】
時刻t32において、同図(C)に示すように、溶滴移行判別信号Ddが短時間Highレベルになると、同図(D)に示すように、駆動信号DrがLowレベルに変化する。これに応動して、
図1のトランジスタTRはオフ状態となり、
図1の減流抵抗器Rが通電路に挿入される。この結果、同図(A)に示すように、溶接電流Iwは、ピーク電流Ipから急下降する。時刻t33において、溶接電流Iwが降下電流値Ilまで下降すると、同図(D)に示すように、駆動信号DrはHighレベルに戻る。これに応動して、
図1のトランジスタTRがオン状態となり、減流抵抗器Rは再び短絡される。下降電流値Ilは、時刻t4のベース期間の開始時点まで継続する。下降電流値Ilは、
図1の下降電流設定信号Ilrによって設定される。下降電流値Ilは、臨界電流値未満の溶接ワイヤが溶融しない値に設定されるので、ピーク電流Ip未満でベース電流Ib以上の値に設定される。ベース電流Ibと等しい値に設定しても良い。例えば、50~100A程度に設定される。時刻t4~t5のベース期間中はベース電流Ibが通電する。同図(B)に示すように、溶接電圧Vwは、時刻t31の前兆状態において下降ないし振動し、時刻t33から下降し、時刻t4からはベース電圧値となる。
【0039】
パルス波形パラメータが適正値に設定されていても、溶滴の形成状態のばらつきによって、ピーク期間中に溶滴移行が発生する場合がある。従来技術においては、ピーク期間の途中に溶滴移行が発生すると、残りのピーク電流の通電によって再び溶滴が形成されることになる。この再形成された溶滴がベース期間中又は次のピーク期間中に移行することになり、1パルス周期1溶滴移行状態から外れて一時的にスパッタが発生する不安定な溶接状態となる。これに対して、本実施の形態では、ピーク期間中に溶滴移行を判別したときは、ピーク電流を下降電流値まで下降させる。下降電流値Ilは、溶接ワイヤが溶融しない値に設定されるので、溶滴が再形成されることはない。このために、ピーク期間中に溶滴が移行しても、1パルス周期1溶滴移行状態を維持することができるので、安定した溶接状態を継続することができる。
【0040】
さらに、本実施の形態では、ピーク期間中に溶滴移行を判別したときは、ピーク電流の通電路に抵抗を挿入してピーク電流を下降電流値まで下降させる。このようにすると、ピーク電流の下降速度が速くなるので、下降速度が遅い場合に比べて溶接ワイヤの溶融をより確実に抑制することができる。この結果、溶滴の再形成をより完全に阻止することができる。
【符号の説明】
【0041】
1 溶接ワイヤ
2 母材
3 アーク
4 溶接トーチ
5 送給ロール
CM 電流比較回路
Cm 電流比較信号
DD 溶滴移行判別回路
Dd 溶滴移行判別信号
DR 駆動回路
Dr 駆動信号
EI 電流誤差増幅回路
Ei 電流誤差増幅信号
EV 電圧誤差増幅回路
Ev 電圧誤差増幅信号
Ib ベース電流
IBR ベース電流設定回路
Ibr ベース電流設定信号
ID 電流検出回路
Id 電流検出信号
ILR 下降電流設定回路
Ilr 下降電流設定信号
Ip ピーク電流
IPR ピーク電流設定回路
Ipr ピーク電流設定信号
IR 電流設定回路
Ir 電流設定信号
Iw 溶接電流
MC 電源主回路
R 減流抵抗器
Tf パルス周期信号
STP ピーク期間回路
Stp ピーク期間信号
TPR ピーク期間設定回路
Tpr ピーク期間設定信号
TR トランジスタ
VAV 電圧平均化回路
Vav 電圧平均信号
VD 電圧検出回路
Vd 電圧検出信号
VF V/Fコンバータ
VR 電圧設定回路
Vr 電圧設定信号
Vw 溶接電圧
WL リアクトル