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特開2024-30697ビナフトール構造を有するポリカーボネート樹脂類の分解方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024030697
(43)【公開日】2024-03-07
(54)【発明の名称】ビナフトール構造を有するポリカーボネート樹脂類の分解方法
(51)【国際特許分類】
   C07C 41/18 20060101AFI20240229BHJP
   C07C 43/23 20060101ALI20240229BHJP
【FI】
C07C41/18
C07C43/23 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022133752
(22)【出願日】2022-08-25
(71)【出願人】
【識別番号】000216243
【氏名又は名称】田岡化学工業株式会社
(72)【発明者】
【氏名】中原 茜
(72)【発明者】
【氏名】岩本 祐佳
(72)【発明者】
【氏名】半田 康春
(72)【発明者】
【氏名】畑 優
【テーマコード(参考)】
4H006
【Fターム(参考)】
4H006AA02
4H006AC41
4H006AC91
4H006BB11
4H006BC35
4H006BE10
4H006GP03
4H006GP10
(57)【要約】
【課題】
下記一般式(1)で表されるモノマーの残基及びカーボネート結合を含む、ビナフトール構造を有するポリカーボネート樹脂類を効率よく分解する方法の提供。
【解決手段】
濃度が29重量%以上のアルカリ金属水酸化物水溶液と、芳香族炭化水素類及びエーテル類からなる群から選ばれる少なくとも1種の有機溶媒の存在下、特定条件において、前記ビナフトール構造を有するポリカーボネート樹脂類を効率よく分解でき、前記課題が解決可能であることを見出した。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1):
【化1】
(式中、Ra1及びRa2は同一または異なってアルキレン基を表し、an1及びan2は同一又は異なって0以上の整数を表し、Ra3及びRa4は同一又は異なって水素原子、又はアリール基を表す。)
で表されるモノマーの残基及びカーボネート結合を含むポリマー、濃度が29重量%以上のアルカリ金属水酸化物水溶液、並びに芳香族炭化水素類及びエーテル類からなる群から選ばれる少なくとも1種の有機溶媒を40℃以上で混合する工程を含む、前記ポリマーの分解方法。
【請求項2】
前記ポリマーが、更に下記一般式(2):
【化2】
[上記一般式(2)中、Ar及びArは同一又は異なって、下記一般式(3):
【化3】
(上記一般式(3)中、bn1は0以上の整数を表し、bn2は0~4の整数を表す。Rb1はアルキレン基を示し、Rb2はアルキル基、シクロアルキル基、アルコキシ基又はアリール基を示す。なお、bn2が2以上の場合、それぞれのRb2は同一であっても異なっていてもよい。なお、「*」は結合手を示す。)
又は下記一般式(4):
【化4】
(上記一般式(4)中、cn1は0以上の整数を表し、cn2は0~4の整数を表す。Rc1はアルキレン基を示し、Rc2はアルキル基、シクロアルキル基、アルコキシ基又はアリール基を示す。なお、cn2が2以上の場合、それぞれのRc2は同一であっても異なっていてもよい。また、「*」は結合手を示す。)
で表される芳香族置換基を示す。]
で表されるモノマー残基を含む、請求項1に記載のポリマーの分解方法。
【請求項3】
アルカリ金属水酸化物水溶液に含まれるアルカリ金属水酸化物の量が、ポリマー1重量部に対し0.1重量部以上である、請求項1又は2に記載のポリマーの分解方法。
【請求項4】
芳香族炭化水素類及びエーテル類からなる群から選ばれる少なくとも1種の有機溶媒の使用量がポリマー1重量部に対し0.5重量部以上である、請求項1又は2に記載のポリマーの分解方法。
【請求項5】
芳香族炭化水素類及びエーテル類からなる群から選ばれる少なくとも1種の有機溶媒の使用量がポリマー1重量部に対し0.5重量部以上である、請求項3に記載のポリマーの分解方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ビナフトール構造を有するポリカーボネート樹脂類の分解方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ビナフトール構造を有するポリカーボネート樹脂等の熱可塑性樹脂は、高屈折率性、低複屈折率性、透明性、加工性及び耐熱性に優れるため、近年、光学レンズや光学フィルムなどの光学樹脂材料として好適に使用されている(例えば特許文献1~3)。しかしながら、その使用量の増加に伴い、廃棄される樹脂の量も増加していることから、廃樹脂のリサイクルが求められている。
【0003】
一方、特に光学樹脂材料として使用される樹脂は高純度で透明性に優れることが求められるため、単に廃樹脂を再溶解等により利用するのではなく、モノマーに分解し、それを再度ポリマー原料として使用する、所謂ケミカルリサイクル法が好ましいとされるが、ビナフトール構造を有するポリカーボネート樹脂類を効率よく分解する方法は知られていなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001-72872号公報
【特許文献2】国際公開2015/166951号パンフレット
【特許文献3】特開2018-002894号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、ビナフトール構造を有するポリカーボネート樹脂類を効率よく分解する方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、前記課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、特定の塩基水溶液及び有機溶媒存在下、特定条件において、ビナフトール構造を有するポリカーボネート樹脂類を効率よく分解可能であることを見出した。具体的には、本発明は以下の発明を含む。
【0007】
〔1〕
下記一般式(1):
【0008】
【化1】
(式中、Ra1及びRa2は同一または異なってアルキレン基を表し、an1及びan2は同一又は異なって0以上の整数を表し、Ra3及びRa4は同一又は異なって水素原子、又はアリール基を表す。)
で表されるモノマーの残基及びカーボネート結合を含むポリマー、濃度が29重量%以上のアルカリ金属水酸化物水溶液、並びに芳香族炭化水素類及びエーテル類からなる群から選ばれる少なくとも1種の有機溶媒を40℃以上で混合する工程を含む、前記ポリマーの分解方法。
【0009】
〔2〕
前記ポリマーが、更に下記一般式(2):
【0010】
【化2】
[上記一般式(2)中、Ar及びArは同一又は異なって、下記一般式(3):
【0011】
【化3】
(上記一般式(3)中、bn1は0以上の整数を表し、bn2は0~4の整数を表す。Rb1はアルキレン基を示し、Rb2はアルキル基、シクロアルキル基、アルコキシ基又はアリール基を示す。なお、bn2が2以上の場合、それぞれのRb2は同一であっても異なっていてもよい。なお、「*」は結合手を示す。)
又は下記一般式(4):
【0012】
【化4】
(上記一般式(4)中、cn1は0以上の整数を表し、cn2は0~4の整数を表す。Rc1はアルキレン基を示し、Rc2はアルキル基、シクロアルキル基、アルコキシ基又はアリール基を示す。なお、cn2が2以上の場合、それぞれのRc2は同一であっても異なっていてもよい。また、「*」は結合手を示す。)
で表される芳香族置換基を示す。]
で表されるモノマー残基を含む、〔1〕に記載のポリマーの分解方法。
【0013】
〔3〕
アルカリ金属水酸化物水溶液に含まれるアルカリ金属水酸化物の量が、ポリマー1重量部に対し0.1重量部以上である、〔1〕又は〔2〕に記載のポリマーの分解方法。
【0014】
〔4〕
芳香族炭化水素類及びエーテル類からなる群から選ばれる少なくとも1種の有機溶媒の使用量がポリマー1重量部に対し0.5重量部以上である、〔1〕又は〔2〕に記載のポリマーの分解方法。
【0015】
〔5〕
芳香族炭化水素類及びエーテル類からなる群から選ばれる少なくとも1種の有機溶媒の使用量がポリマー1重量部に対し0.5重量部以上である、〔3〕に記載のポリマーの分解方法。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、ビナフトール構造を有するポリカーボネート樹脂類を安価な塩基の水溶液および有機溶媒を用いて温和な条件で効率よく分解することができる。
【0017】
更に本発明の分解方法は、ビナフトール構造と共にフルオレン構造を有するポリカーボネート樹脂類であっても同様の条件にて分解可能であることから、昨今、光学特性等の向上を目的として製造される、両構造を有するポリカーボネート樹脂類の分解に際しても好適な方法であるといえる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本明細書において、「含有」は、「含む(comprise)」、「実質的にのみからなる(consist essentially of)」、及び「のみからなる(consist of)」のいずれも包含する概念である。また、本明細書において、数値範囲を「A~B」で示す場合、A以上B以下を意味する。
【0019】
本発明の分解方法に供されるポリマー(ビナフトール構造を有するポリマー)は少なくとも一般式(1)で表されるモノマーの残基(ビナフトール構造を有する残基)及びカーボネート結合を有する。なお、本発明における残基とは、各モノマーの構造から末端水酸基の水素原子を除いた部分をいい、具体的には、一般式(1)で表されるモノマーの残基を例に挙げると、以下一般式(1-1)で表される構造を意味する。
【0020】
【化5】
(式中、Ra1、Ra2、an1、an2、Ra3及びRa4は上述の通りである。)
【0021】
一般式(1)及び(1-1)におけるRa1及びRa2で表されるアルキレン基としては、例えば、分岐を有してもよい炭素数2~6のアルキレン基が挙げられ、好ましくは分岐を有してもよい炭素数2~4のアルキレン基である。これらアルキレン基として具体的には、例えば、エチレン基、プロピレン基、トリメチレン基、テトラメチレン基、ペンタメチレン基、ヘキサメチレン基等が挙げられる。なお、Ra1及びRa2は同一であっても異なってもよいが、同一であることが好ましい。
【0022】
一般式(1)及び(1-1)におけるan1及びan2で表される0以上の整数として具体的には、例えば、0~10であり、好ましくは0~4であり、特に好ましくは0または1である。なお、an1及びan2は同一であっても異なってもよいが、同一であることが好ましい。
【0023】
一般式(1)及び(1-1)におけるRa3及びRa4で表されるアリール基として具体的には、例えば、フェニル基、アルキル(例えば、炭素数1~4のアルキル)置換フェニル基、ナフチル基、アルキル(例えば、炭素数1~4のアルキル)置換ナフチル基を挙げることができ、好ましくはフェニル基又はナフチル基である。なお、Ra3及びRa4は同一であっても異なってもよいが、同一であることが好ましい。
【0024】
本発明の分解方法に供されるポリマーは上述の通り一般式(1)で表されるモノマーの残基を有しているが、該ポリマーに含まれるモノマー残基は、単一の構造であってもよく、必要に応じ異なる構造であってもよい。また、該ポリマーはカーボネート結合の他、必要に応じ他の結合(エステル結合、エーテル結合、ウレア結合等)を有していてもよい。本発明の分解方法に供されるポリマーの好ましい具体例としては、ポリカーボネート、ポリエステルカーボネート等が挙げられる。
【0025】
本発明の分解方法に供されるポリマーは、更に一般式(2)(より詳細には一般式(2)~(4))で表されるモノマー残基(フルオレン構造を有する残基)を有していてもよい。一般式(3)及び(4)における、Rb1及びRc1で表されるアルキレン基としては上記一般式(1)及び(1-1)について詳述したものが採用でき、好ましい態様等についても同様である。
【0026】
一般式(3)及び(4)における、bn1及びcn1で表される0以上の整数として具体的には、例えば、0~10であり、好ましくは0~4であり、特に好ましくは0または1である。なお、bn1及びcn1は同一であっても異なってもよいが、同一であることが好ましい。
【0027】
一般式(3)及び(4)における、Rb2及びRc2で表されるアルキル基として例えば、分岐を有してもよい炭素数1~12のアルキル基が挙げられ、好ましくは分岐を有してもよい炭素数1~6のアルキル基であり、更に好ましくは分岐を有してもよい炭素数1~3のアルキル基である。このようなアルキル基の具体例としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、s-ブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基等が挙げられる。また、シクロアルキル基としては、例えば、炭素数4~16シクロアルキル基またはアルキル置換シクロアルキル基、好ましくは5~8のシクロアルキル基またはアルキル置換シクロアルキル基が挙げられる。このようなシクロアルキル基の具体例としては、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基及びこれらに分岐を有してもよい炭素数1~4のアルキル基が置換したアルキル置換シクロアルキル基等が挙げられる。アルコキシ基としては、例えば、分岐を有してもよい炭素数1~6のアルコキシ基、好ましくは分岐を有してもよい炭素数1~3のアルコキシ基が挙げられる。このようなアルコキシ基の具体例として、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基等が挙げられる。アリール基としては上記一般式(1)及び(1-1)について詳述したものが採用でき、好ましい態様等についても同様である。なお、Rb2及び/又はRc2が複数(bn2及び/又はcn2が2以上)ある場合、これらは同一であっても異なっていてもよい。
【0028】
一般式(3)及び(4)における、bn2及びcn2で表される0~4の整数は、好ましくは0~2であり、より好ましくは0または1である。
【0029】
本発明の分解方法に供されるポリマーは一般式(1)及び一般式(2)で表されるモノマー残基以外のモノマー残基を含んでいてもよい。また、通常、一般式(1)で表されるモノマー残基を50モル%以上含む。更には、各種添加剤(例えば酸化防止剤、離型剤、紫外線吸収剤、流動性改善剤、強化剤、染料、帯電防止剤、抗菌剤等)を含んでいてもよい。
【0030】
続いて、本発明の分解方法にて用いられるアルカリ金属水酸化物水溶液及び有機溶媒について詳述する。
【0031】
本発明の分解方法においては、水と塩基とを含む水溶液が用いられ、前記水溶液に含まれる塩基としてアルカリ金属水酸化物が必要である。アルカリ金属水酸化物が含まれない場合、分解が全く生じないか、分解速度が非常に遅く、工業的実施が非常に困難となる。アルカリ金属水酸化物として具体的には、例えば、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化ルビジウム、水酸化セシウム等が挙げられ、安価であることから水酸化ナトリウムまたは水酸化カリウムが好ましい。これらアルカリ金属水酸化物は1種、あるいは必要に応じ2種以上併用してもよい。また、アルカリ金属水酸化物水溶液の濃度は、29重量%以上である必要があり、好ましくは29~50重量%である。なお、アルカリ金属水酸化物水溶液は、別途前記濃度となるように調製した水溶液を用いてもよく、また、分解方法を実施する際、水とアルカリ金属水酸化物とを、前記濃度となるよう反応容器に添加することにより調製してもよい。また、アルカリ金属水酸化物以外の他の塩基を併用してもよいが、本発明実施後の後処理の簡便性等の観点から他の塩基を併用しない方が好ましい。他の塩基を併用する場合、アルカリ金属水酸化物1重量部に対し通常0.7重量部以下、好ましくは0.05重量部以下である。
【0032】
アルカリ金属水酸化物水溶液に含まれるアルカリ金属水酸化物の量は、例えば、ポリマー1重量部に対し通常0.1重量部以上であり、好ましくは0.5~1.5重量部である。アルカリ金属水酸化物の使用量を0.1重量部以上とすることにより、より速くポリマーを分解することが可能となり、使用量を1.5重量部より多く使用しても本発明の実施には支障がないものの、1.5重量部以下とすることにより、本発明実施後の後処理がより簡便となる。
【0033】
本発明の分解方法にて用いられる有機溶媒は、芳香族炭化水素類及びエーテル類からなる群から選ばれる少なくとも1種の有機溶媒である必要がある。芳香族炭化水素類として例えば、トルエン、キシレン、メシチレン、モノクロロベンゼン、ジクロロベンゼン等が挙げられ、エーテル類として例えば、テトラヒドロフラン、メチル-tert-ブチルエーテル、シクロペンチルメチルエーテル、4-メチルテトラヒドロピラン、モノグライム、ジグライム等が挙げられる。これら有機溶媒の中でも、トルエン、キシレン、シクロペンチルメチルエーテル及び4-メチルテトラヒドロピランが好ましい。これら有機溶媒は1種、あるいは必要に応じ2種以上併用してもよい。また、芳香族炭化水素類及びエーテル類以外の他の有機溶媒を併用してもよいが、併用しない方が好ましい。併用する場合、その使用量は全有機溶媒の使用量に対し10重量%以下、好ましくは5重量%以下とする。
【0034】
これら有機溶媒の使用量は例えば、ポリマー1重量部に対し通常0.5重量部以上であり、より好ましくは1.5~10重量部である。0.5重量部以上使用することにより、より速くポリマーを分解することが可能となり、使用量を10重量部より多く使用しても本発明の実施には支障がないものの、10重量部以下とすることにより、容積効率が向上すると共に、本発明実施後の後処理が簡便となる。
【0035】
本発明の分解方法は、前述したポリマー、濃度29重量%以上のアルカリ金属水酸化物水溶液並びに芳香族炭化水素類及びエーテル類からなる群から選ばれる少なくとも1種の有機溶媒を40℃以上で混合することによって実施される。混合温度は40℃以上、好ましくは45℃以上である必要がある。40℃より低いと、分解が全く生じないか、分解速度が非常に遅く、工業的実施が困難となる。上限温度は分解に供する装置によっても異なるが、通常、有機溶媒及びアルカリ金属水溶液の沸点以下であり、好ましくは100℃以下、特に好ましくは90℃以下である。混合方法は特に限定されないが、例えば、撹拌機を備えた反応容器に前述した各物質を投入し、撹拌機にて撹拌する方法が挙げられる。
【0036】
本発明の分解方法を実施した後得られるビナフトール構造を有するモノマーを含む混合物に対し、例えば、該混合物を酸を用いて中和し、水層と有機層とを分離し、必要に応じて有機層に対し水洗等を実施した後、有機層に対して晶析等の一般的な回収方法を実施することにより、ビナフトール構造を有するモノマーを効率よく回収することができる。そのため、本発明の分解方法はビナフトール構造を有するモノマーの回収方法としても好適な方法であるといえる。
【実施例0037】
以下に実施例等を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに何ら限定されるものではない。例中、各種測定は下記の方法で実施した。
【0038】
(1)GPCの測定条件
装置:東ソー株式会社製、HLC-8320
カラム:(ガードカラム)TSKgel guardcolumn Super HZ-L×1本、(分析カラム)TSKgel Super HZ×3本
溶媒:テトラヒドロフラン
注入量:10μL
溶媒流速;0.35mL/min
測定温度:40℃
検出器:RI
標準物質:ポリスチレン
【0039】
(2)分解に供した樹脂
樹脂1:化合物I、化合物II及び化合物III(構成比(モル比) 化合物I:化合物II:化合物III=50:25:25)で構成されるポリカーボネート樹脂
【0040】
樹脂2:化合物I及び化合物II(構成比(モル比) 化合物I:化合物II=70:30)で構成されるポリカーボネート樹脂
【0041】
樹脂3:化合物I及び化合物IV(構成比(モル比) 化合物I:化合物IV=70:30)で構成されるポリカーボネート樹脂
【0042】
樹脂4:化合物I及び化合物V(構成比(モル比) 化合物I:化合物V=70:30)で構成されるポリカーボネート樹脂
【0043】
樹脂5:化合物II及び化合物III(構成比(モル比) 化合物II:化合物III=30:70)で構成されるポリカーボネート樹脂
【0044】
樹脂6:化合物III及び化合物IV(構成比(モル比) 化合物III:化合物IV=70:30)で構成されるポリカーボネート樹脂
【0045】
樹脂7:化合物III及び化合物V(構成比(モル比) 化合物III:化合物V=70:30)で構成されるポリカーボネート樹脂
【0046】
<化合物I>
【0047】
【化6】
【0048】
<化合物II>
【0049】
【化7】
【0050】
<化合物III>
【0051】
【化8】
【0052】
<化合物IV>
【0053】
【化9】
【0054】
<化合物V>
【0055】
【化10】
【0056】
(実施例1)
還流撹拌が可能なガラス製試験管に、樹脂1 1.0重量部、48重量%水酸化ナトリウム水溶液0.7重量部、トルエン3.5重量部を仕込み、85℃で加熱攪拌し2時間混合させた。混合前は樹脂状物が目視で確認されたが、混合後は樹脂状物の残存は確認されなかった。また、該液をGPCで分析したところ、高分子量物が消失していた。
【0057】
(実施例2~16)
アルカリ金属水酸化物水溶液の量、濃度及び種類、有機溶媒種及び量、混合温度、混合時間並びに樹脂の種類を表1に示す通り変更した以外は実施例1と同様に実施した。結果を表1に示す。
【0058】
(比較例1)
48重量%水酸化ナトリウム水溶液の代わりに48%重量水酸化カルシウム水溶液を樹脂1 1.0重量部に対し1.2重量部使用する以外は実施例1と同様に実施した。結果を表2に示す。
【0059】
(比較例2~12)
水溶液に含まれる塩基の量、濃度及び種類、有機溶媒種及び量、混合温度、混合時間並びに樹脂の種類を表2に示す通り変更した以外は実施例1と同様に実施した。結果を表2に示す。
【0060】
【表1】
【0061】
【表2】