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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024030699
(43)【公開日】2024-03-07
(54)【発明の名称】ヒューズ
(51)【国際特許分類】
   H01H 85/0445 20060101AFI20240229BHJP
   H01H 85/08 20060101ALI20240229BHJP
【FI】
H01H85/0445
H01H85/08
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022133754
(22)【出願日】2022-08-25
(71)【出願人】
【識別番号】000204044
【氏名又は名称】太平洋精工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000659
【氏名又は名称】弁理士法人広江アソシエイツ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 健吾
(72)【発明者】
【氏名】土屋 穣
(72)【発明者】
【氏名】近藤 祐介
【テーマコード(参考)】
5G502
【Fターム(参考)】
5G502AA01
5G502AA03
5G502BA04
5G502BB05
5G502BB07
5G502BB11
5G502BB14
5G502BB15
5G502BC03
5G502BD03
5G502BE01
5G502CC26
(57)【要約】
【課題】
本願発明は、ケーシングの寸法を維持したまま、高電圧高電流に対応なヒューズを提供する。
【解決手段】
ケーシング100と、両側の端子部300と、ケーシング100内に収容されたヒューズエレメント200と、を備えるヒューズ900であって、ヒューズエレメント200は、谷部220と山部230を備えた波形状をしていると共に、溶断部240を有しており、山部230の先端部231では、端部234を切り欠いた切欠部235が設けられていることを特徴とする。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケーシングと、両側の端子部と、
前記ケーシング内に収容されたヒューズエレメントと、を備えるヒューズであって、
前記ヒューズエレメントは、谷部と山部を備えた波形状をしていると共に、溶断部を有しており、
前記山部の先端部では、端部を切り欠いた切欠部が設けられていることを特徴とするヒューズ。
【請求項2】
前記溶断部は、前記ヒューズエレメントの両側の接続端部を結ぶ中心線に沿って整列していることを特徴とする請求項1に記載のヒューズ。
【請求項3】
前記溶断部は、前記ヒューズエレメントの前記谷部に設けられていることを特徴とする請求項1又は2に記載のヒューズ。
【請求項4】
前記山部は、前記ヒューズエレメントの両側の接続端部を結ぶ中心線から片側のみにおいて、突出するように設けられていることを特徴とする請求項1又は2に記載のヒューズ。
【請求項5】
前記山部は、前記ヒューズエレメントの両側の接続端部を結ぶ中心線から片側のみにおいて、突出するように設けられていることを特徴とする請求項3に記載のヒューズ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、主に自動車用電気回路等に用いられるヒューズに関し、特に、ケーシング内にヒューズエレメントを挿入して収容するヒューズに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、ヒューズは、自動車等に搭載されている電気回路や、電気回路に接続されている各種電装品を保護するために用いられてきた。詳しくは、電気回路中に意図しない過電流が流れた場合に、ヒューズに内蔵されたヒューズエレメントの溶断部が過電流による発熱により溶断して、各種電装品に過度な電流が流れないように保護している。
【0003】
そして、このヒューズは用途に応じて様々な種類があり、例えば、特許文献1に記載のヒューズは、筒型のケーシング内部にヒューズエレメントを挿入して保持するタイプのものである。また、近年では、高電圧高電流に対応できるヒューズが求められており、溶断部の数を増やしたり、ヒューズエレメントの全長を長くする場合がある。ただ、溶断部の数を増やしたり、ヒューズエレメントの全長を長くするなど、ヒューズエレメントの構成を複雑にすると、ヒューズエレメントの幅や長さや高さなどが、全体的に大きくなる傾向にある。そして、それに伴い、ヒューズエレメントを収容するケーシングも大きくなるという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2012-43573号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで、本願発明は、上記問題に鑑み、ケーシングの寸法を維持したまま、高電圧高電流に対応なヒューズを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本願発明のヒューズは、ケーシングと、両側の端子部と、前記ケーシング内に収容されたヒューズエレメントと、を備えるヒューズであって、前記ヒューズエレメントは、谷部と山部を備えた波形状をしていると共に、溶断部を有しており、前記山部の先端部では、端部を切り欠いた切欠部が設けられていることを特徴とする。
【0007】
上記特徴によれば、高電圧高電流に対応できるように、ヒューズエレメントの構成を複雑にしても、切欠部が設けられているので、ヒューズエレメントの山部の端部が、ケーシングの開口部や内面に干渉して、ヒューズエレメントの挿入及び収容を妨げることがないのである。その結果、ケーシングを大きくする必要がなく、ケーシングの寸法を維持できるのである。
【0008】
さらに、本願発明のヒューズは、前記溶断部は、前記ヒューズエレメントの両側の接続端部を結ぶ中心線に沿って整列していることを特徴とする。
【0009】
上記特徴によれば、溶断部は、ケーシングの内面から離れた位置に配置されることになるので、溶断部で発生したアークは、ケーシングの内面から離れた場所で、内部の消弧材等により効率的に消弧されるのである。
【0010】
さらに、本願発明のヒューズは、前記溶断部は、前記ヒューズエレメントの前記谷部に設けられていることを特徴とする。
【0011】
上記特徴によれば、溶断部は谷部に設けられているので、ケーシングの内面から離れた位置に配置されることになる。そのため、溶断部で発生したアークは、ケーシングの内面から離れた場所で、内部の消弧材等により効率的に消弧されるのである。
【0012】
さらに、本願発明のヒューズは、前記山部は、前記ヒューズエレメントの両側の接続端部を結ぶ中心線から片側のみにおいて、突出するように設けられていることを特徴とする。
【0013】
上記特徴によれば、ヒューズエレメントをケーシングの開口部から挿入しやすいのである。
【発明の効果】
【0014】
上記のように、本願発明のヒューズによれば、ケーシングの寸法を維持したまま、高電圧高電流に対応できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本願発明のヒューズを分解した全体斜視図である。
図2】(a)は、ヒューズエレメントの平面図、(b)は、ヒューズエレメントの側面図、(c)は、ヒューズエレメントの正面図である。
図3】組み立てられたヒューズの全体斜視図である。
図4】(a)は、ヒューズの側面図、(b)は、ヒューズの平面図である。
図5】(a)は、図4のA―A断面図、(b)は、図4のB―B断面図である。
【符号の説明】
【0016】
100 ケーシング
200 ヒューズエレメント
220 谷部
230 山部
231 先端
234 端部
235 切欠部
240 溶断部
300 端子部
900 ヒューズ

【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に、本願発明の実施形態について、図面を用いて説明する。なお、以下で説明する実施形態におけるヒューズの各部材の形状や材質等は、一例を示すものであって、これらに限定されるものではない。なお、本明細書に記載されている「上下方向」とは、ヒューズエレメントの長尺方向に対して直角方向のことである。
【0018】
まず、 図1に、本願発明のヒューズ900を示す。なお、図1は、ヒューズ900を分解した全体斜視図である。
【0019】
図1に示すように、ヒューズ900は、ケーシング100と、ケーシング100内に収容されるヒューズエレメント200と、ヒューズエレメント200の両端に接続される端子部300とを備える。ケーシング100は、両側の端部110に開口部120を備えた円筒形状をしており、内部の収容空間130にヒューズエレメント200を収容可能に構成されている。なお、ケーシング100は、セラミックや合成樹脂等の様々な材質で製造できる。また、ケーシング100は、断面が円形の円筒形状に限定されず、内部にヒューズエレメント200を挿入可能な開口部120を備えているのであれば、断面が四角形の箱形状など、任意の形状であってもよい。
【0020】
また、端子部300は金属製であり、ケーシング100の端部110に外側から嵌合するキャップ部310と、外部の電気回路に接続される平坦な接続部320とを備える。キャップ部310がケーシング100の端部110に嵌められた状態で、キャップ部310の側面311はケーシング100の開口部120を塞ぐことが出来る。
【0021】
次に、図2を参照して、ヒューズエレメント200の構成について詳しく説明する。なお、図2(a)は、ヒューズエレメント200の平面図、図2(b)は、ヒューズエレメント200の側面図、図2(c)は、ヒューズエレメント200の正面図である。
【0022】
図2に示すように、ヒューズエレメント200は、一枚の薄板状の金属板から長尺状に成形されており、一対の平坦な接続端部210と、当該接続端部210の間に谷部220と山部230とを備え、谷部220と山部230により波形状をしている。この谷部220と山部230は、一枚の薄板状の金属板を波状に屈曲させて形成されている。そして、谷部220は、平坦面となっており、両側の接続端部210を結ぶ中心線Pと平行になっている。また、各谷部220には溶断部240が設けられており、この溶断部240は複数の小孔221をあけて形成されている。そして、各溶断部240は、両側の接続端部210を結ぶ中心線Pに沿って整列している。
【0023】
また、谷部220の間には、側面視で、谷部220から略U字状に突出した山部230が設けられている。この山部230は、先端部231と、先端部231から両側に延出して谷部220に接続されている側面232とを備える。そして、山部230は、図2(b)に示すように、側面視で、両側の接続端部210を結ぶ中心線Pの片側(図面上では、上側)のみに突出している。
【0024】
さらに、山部230の先端部231では、先端部231の端部234が切り欠かれた切欠部235が設けられている。具体的には、図2(a)に示すように、平面視で、山部230の端部234は、中心線Pの両側に位置しており、さらに、端部234は、中心線P側、つまり内側に向けて略U字状に切り欠かれ、その切り欠かれた部分が切欠部235となっている。
【0025】
なお、図2に示すように、溶断部240は、谷部220のみに設けられ、山部230には設けられていない。また、山部230は、図2(b)に示すように、側面視で、両側の接続端部210を結ぶ中心線Pの片側(図面上では、上側)のみに突出しているが、これに限定されず、山部230は、中心線Pの両側(図面上では、上側及び下側)に突出してもよい。また、図2(a)に示すように、山部230の先端部231の両側の端部234に、切欠部235が設けられているが、これに限定されず、先端部231の片側の端部234のみに、切欠部235を設けてもよい。
【0026】
また、図2に示すように、ヒューズエレメント200は、複数の溶断部240を備えている。さらに、ヒューズエレメント200は波形状となっているので、全長が長くなる、言い換えると、ヒューズエレメント200を流れる電流の経路の全長が長くなっている。そのため、本願発明のヒューズ900は、高電圧高電流に対応可能となっているのである。なお、ヒューズエレメント200の溶断部240の数や、谷部220と山部230からなる波の数は、図2に示す以外にも、任意の数であってもよい。
【0027】
そして、図1に示すように、ヒューズ900を組み立てる際は、ケーシング100の一方の開口部120から、ヒューズエレメント200をケーシング100内部に挿入して収容する。次に、ケーシング100の両側の端部110に端子部300を取り付けて、開口部120を塞げば、図3から図5に示すように、ヒューズ900の組み立てが完成するのである。なお、図3は、ヒューズ900の全体斜視図、図4(a)は、ヒューズ900の側面図、図4(b)は、ヒューズ900の平面図、図5(a)は、図4のA―A断面図、図5(b)は、図4のB―B断面図である。
【0028】
図3から図5に示すように、組み立てられた状態のヒューズ900では、ヒューズエレメント200の両側の接続端部210は、端子部300にそれぞれ電気的に接続されている。また、ヒューズ900は、端子部300の接続部320を電気回路に電気的に接続して、実装されている。そして、電気回路に流れる電流は、一方の端子部300からヒューズエレメント200を介して他方の端子部300へと流れる。電気回路等に意図しない過電流が流れた際は、ケーシング100内に収容されたヒューズエレメント200の溶断部240が発熱して溶断し、過電流を遮断するのである。なお、ケーシング100内部には粒状の消弧材が封入されており、ヒューズエレメント200の周囲は消弧材で充填された状態となっている。そのため、溶断部240が溶断した際に発生するアークは、周囲の消弧材で素早く消弧されるのである。
【0029】
また、図5に示すように、円筒形状のケーシング100の縦断面形状は円形をしている。そして、ヒューズエレメント200の山部230が、ケーシング100の円形の内面101に接触するか、極めて近接するように、ヒューズエレメント200がケーシング100の収容空間130内に収容されている。このように、ヒューズエレメント200の山部230を、ケーシング100の内面101に接触する、又は極めて近接するまで屈曲させることで、山部230を限界まで上方へ大きく曲げることができ、その結果、ヒューズエレメント200の全長をより長くすることが出来るのである。
【0030】
そして、ヒューズエレメント200の山部230を、ケーシング100の内面101に接触する、又は極めて近接するまで屈曲させても、山部230の先端部231の端部234には切欠部235が設けられているので、ヒューズエレメント200をケーシング100の開口部120から内部に挿入して収容する際に、山部230の端部234が、ケーシング100の開口部120や内面101に干渉して、ヒューズエレメント200の挿入及び収容を妨げることがないのである。このように、本願発明のヒューズ900によれば、高電圧高電流に対応できるように、ヒューズエレメントの構成を複雑にしても、ケーシング100との干渉を防止でき、その結果、ケーシング100を大きくする必要がなく、ケーシング100の寸法を維持できるのである。
【0031】
また、図5(b)に示すように、溶断部240は谷部220に設けられているので、ケーシング100の内面101から離れた位置に配置されることになる。そのため、溶断部240で発生したアークは、ケーシング100の内面101から離れた場所で、内部の消弧材等により効率的に消弧されるのである。
【0032】
さらに、各溶断部240は、両側の接続端部210を結ぶ中心線Pに沿って整列しているので、各溶断部240は、ケーシング100の内面101から離れた位置に効果的に配置される。そのため、溶断部240で発生したアークは、ケーシング100の内面101から離れた場所で、内部の消弧材等により効率的に消弧されるのである。なお、各溶断部240は、両側の接続端部210を結ぶ中心線Pに沿って平行に整列しているが、これに限定されず、各溶断部240は、任意の位置で任意の姿勢で配置されてもよい。また、溶断部240は、谷部220のみに設けられ、山部230には設けられていないが、これに限定されず、溶断部240は、谷部220や山部230など、ヒューズエレメント200の任意の箇所に設けてもよい。
【0033】
また、図5(b)に示すように、山部230は、両側の接続端部210を結ぶ中心線Pの片側(図面上では、上側)のみに突出しているので、ヒューズエレメント200をケーシング100の開口部120から挿入しやすいのである。
【0034】
また、ヒューズエレメント200は、一枚の薄板状の金属板から構成されているが、これに限定されず、複数の金属板から構成されてもよい。また、ヒューズ900は、一つのヒューズエレメント200を備えているが、これに限定されず、複数のヒューズエレメント200を備えてもよい。また、ヒューズエレメント200に複数の小孔を設けて、溶断部240を形成していたが、これに限定されることはなく、例えば、谷部220の厚さを局所的に薄くして溶断部を形成したり、谷部220の狭小部に、錫、鉛、銀、ニッケル、又はこれらの合金等からなる低融点金属をデポジットして、溶断部を形成してもよい。また、山部230の裏面側のU字状に曲がった部分に、シリコン等の素材を取り付けてもよい。
【0035】
また、本願発明のヒューズは、上記の実施例に限定されず、特許請求の範囲に記載された範囲、実施形態の範囲で、種々の変形例、組み合わせが可能であり、これらの変形例、組み合わせもその権利範囲に含むものである。
図1
図2
図3
図4
図5