(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024030704
(43)【公開日】2024-03-07
(54)【発明の名称】浅堀掘削溝用土留め装置
(51)【国際特許分類】
E02D 17/08 20060101AFI20240229BHJP
【FI】
E02D17/08 C
【審査請求】有
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022133767
(22)【出願日】2022-08-25
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2023-07-14
(71)【出願人】
【識別番号】591267925
【氏名又は名称】日本スピードショア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100073689
【弁理士】
【氏名又は名称】築山 正由
(72)【発明者】
【氏名】前田英樹
(72)【発明者】
【氏名】笠岡真佐志
(72)【発明者】
【氏名】植松寿人
(72)【発明者】
【氏名】菊田亮一
【テーマコード(参考)】
2D044
【Fターム(参考)】
2D044AA12
(57)【要約】
【課題】 重機等を使用しなくても簡単に設置でき、しかも掘削溝の幅が狭くても設置可能な、浅堀の溝掘削工事に好適な土留め装置を提供すること。
【解決手段】 請求項1に記載の浅堀掘削溝用土留め装置は、掘削溝の上端縁に係止される一対の板状部材と、一対の板状部材間に架設される伸縮自在、且つ着脱自在な梁材と、板状部材の掘削溝側に設けられ、板状部材の長手方向に平行な内板と、板状部材の両端と内板との間に設けられる支持板とにより構成した。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
掘削溝の上端縁に係止される一対の板状部材と、一対の板状部材間に架設される伸縮自在、且つ、着脱自在な梁材と、板状部材の掘削溝側に設けられ、板状部材の長手方向に平行な内板と、板状部材の両端と内板との間に設けられる支持板とにより成る浅堀掘削溝用土留め装置。
【請求項2】
支持板を板状部材より下方まで延長した請求項1に記載の浅堀掘削溝用土留め装置。
【請求項3】
内板と板状部材との間に隔壁板を設けた請求項1又は請求項2に記載の浅堀掘削溝用土留め装置。
【請求項4】
隔壁板を板状部材より下方まで延長した請求項3に記載の浅堀溝用土留め装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、作業性を高めることができる掘削溝の土留め装置に関するものでり、より詳しくは浅堀の溝掘削工事に好適な土留め装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、上下水道やガス輸送管、通信線や電力線などライフラインの地中埋設管を敷設するために掘削される掘削溝には、側壁の崩落を防止するのに支保工が組み立てられて掘削壁の土留めを行っている。
【0003】
より具体的には、掘削溝の両側壁に沿って鋼矢板を配設し、各鋼矢板に沿って腹起し材を水平方向に設置して対向配置せしめ、当該腹起し材同士間に切梁を架設することで、土圧による鋼矢板の倒れ込みを防止しつつ埋設管の設置作業を行うことが可能な掘削溝を構築するものである。
【0004】
また、前記鋼矢板を用いる土留め支保工以外にも、たて込み簡易土留工法と呼ばれる工法も汎用されている。このたて込み簡易土留工法には、スライドレール方式と呼ばれる工法と、縦張りプレート方式と呼ばれる工法がある。
【0005】
スライドレール方式は、
図7に示されるような対向するスライドレール1間に複数の切梁2を架設したガイド部材3を一対掘削溝内にたて込み、それぞれのガイド部材3を構成するスライドレール1間にわたりパネル4を嵌め込んでいくことで掘削壁の土留めを行うものである。スライドレール1はH型鋼等の重量物を使用しているため、前記ガイド部材3を掘削溝内にたて込む作業はバックホウ等の重機行うのが通常である。
【0006】
縦張りプレート方式は、
図8に示すように、互いに平行に鉛直方向に延びる2本の縦梁6と、これらの二本の縦梁6間に設置されるプレート7とから構成される土留めパネル5を形成し、一対の土留めパネル5間に、掘削深さに応じた切梁2を予め取り付けたボックス8を、掘削溝にたて込むものである。この工法もプレート7等が重量物であるため、掘削溝内へのボックス8のたて込み作業はバックホウ等の重機で行うのが通常である。
【0007】
特許文献1には上記 縦張りプレート方式の土留め支保工を、順次連結していく土留め装置及び土留め工法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上記各種土留め工法は、掘削溝内での作業者の安全のためには必須のものであるが、掘削溝の深さが1.5メートル程度の浅堀の場合、危険性が軽視され土留めが施されない場合がある。
【0010】
また、上記たて込み簡易土留工法と呼ばれる工法であっても、土留め支保工の設置にはバックホウ等の重機を使用して行う必要があり、作業が大がかりになりがちである。
【0011】
更には掘削深さが浅く、しかも埋設管が小径であれば自ずと掘削溝の幅も狭くなり、土留め支保工を設置するスペースが掘削溝内に確保できない場合もある。
【0012】
そこで本発明は重機等を使用しなくても簡単に設置でき、しかも掘削溝の幅が狭くても設置可能な、浅堀の溝掘削工事に好適な土留め装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記の目的を達成する本発明の構成は以下の通りである。
【0014】
(1) 請求項1に記載の浅堀掘削溝用土留め装置は、掘削溝の上端縁に係止される一対の板状部材と、一対の板状部材間に架設される伸縮自在、且つ着脱自在な梁材と、板状部材の掘削溝側に設けられ、板状部材の長手方向に平行な内板と、板状部材の両端と内板との間に設けられる支持板とにより構成した。
【0015】
(2) 請求項2に記載の浅堀掘削溝用土留め装置は、請求項1記載の発明において、支持板を板状部材より下方まで延長して構成した。
【0016】
(3) 請求項3に記載の浅堀掘削溝用土留め装置は、請求項1又は請求項2に記載の発明において、内板と板状部材との間に隔壁板を設けて構成した。
【0017】
(4) 請求項4に記載の浅堀掘削溝用土留め装置は、請求項3記載の発明において、隔壁板を板状部材より下方まで延長して構成した。
【発明の効果】
【0018】
上記のように構成される本発明が、如何に作用して課題を解決するかを図面を参照しながら概説する。なお、各図におけるUとは上方を、Dは下方を、Rは右方向を、Lは左方向を意味するものである。
【0019】
本発明に係る浅堀掘削溝用土留め装置100は、
図2や
図3に示すように、一対の板状部材10と、板状部材10間に架設される伸縮自在、且つ、着脱自在な梁材20と、板状部材20の掘削溝1側に設けられ、板状部材20の長手方向に平行な内板30と、板状部材の両端と内板との間に設けられる支持板40と、内板30と板状部材10との間に設けられた隔壁板50を主な構成要素とする。
【0020】
浅堀掘削溝用土留め装置100の掘削溝1への設置方法を、図面を用いて概説する。
図2に示すように、まず、一対の板状部材20を掘削溝1近傍の地面Gに置く。その後、対向する板状部材20間にわたり梁材20を取り付け固定する。最後に、
図1や
図4に示すように、内板30と板状部材10との間の空間に、矢板2をはめ込み、支保工たる浅堀掘削溝用土留め装置100を完成させるものである。
【0021】
このように、各部材を個別に設置固定していくものであることから、重量もさほど大きくなく、故にバックホウ等によらずに人力で容易に設置可能なものである。
【0022】
また
図3に示すように、地上で浅堀掘削溝用土留め装置100を組み立ててから、掘削溝に設置する場合もあるが、この場合でも矢板等は浅堀掘削溝用土留め装置100を設置後、嵌め込んでいくものであることから、つまり設置行為時には矢板の重量は付加されないことから、人力での設置が可能なものである。
【0023】
また、前記鋼矢板を用いる土留め支保工のように、鋼矢板を配設し各鋼矢板に沿って腹起し材を設置するといった作業が不要となり、作業効率が高まるという利点もある。すなわち、本発明によれば板状部材10と内板30が腹起しと同様の働きをなすため、わざわざ腹起しを設置して矢板等を支持する必要が無いのである。
【0024】
更には、腹起しと同様の効果を奏する板状部材10が地面に設置され、矢板等の掘削溝側に存するものでは無いことから、つまりは従来例のように掘削溝側に腹起しが張り出していることはないので、作業スペースが広く取れることになり、掘削溝の幅が狭くても設置可能となるのである。
【0025】
また、請求項2、請求項4に記載の発明では、
図2や
図3に示すように支持板40や隔壁板50を、板状部材10より下方まで延長して設けてある。係る構造とすることで支持板40や隔壁板50が切梁20により、掘削溝の壁面に押圧されることになり、浅堀掘削溝用土留め装置100の掘削溝100への設置固定が、より強固なものとなるのである。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、好ましい発明の実施形態につき、図面を参照しながら概説する。 なお、本発明構成要素の実施形態は、下記の実施形態に何ら限定されることはなく、本発明の技術的範囲に属する限り、種々の形態を採りうる。
【0028】
図3に示すように本発明に係る浅堀掘削溝用土留め装置100は、一対の板状部材10と、一対の板状部材10間に架設される伸縮自在、且つ着脱自在な梁材20と、板状部材10の掘削溝側に設けられ、板状部材10の長手方向に平行な内板30と、板状部材10の両端と内板30との間に設けられる支持板40とにより構成され、更には請求項3及び請求4に記載の発明では、内板30と板状部材10との間に隔壁板50が設けられている。
【0029】
内板30と板状部材10との間に存する間隙60には、矢板やパネル等の土留材が嵌め込まれるものである。
【0030】
図5に示されるように、板状部材10は平板状の立板11の上下端部近傍にL型に屈曲した板材12を設けて形成されるものである。立板11と板材12は鋼材で形成し溶接しても構わないが、軽量化を図るためにアルミ材を押し出し成型で成形しても構わない。
【0031】
立板11の長手方向両端には、上下方向に一対のブラケット13が設けてある。ブラケット13は、梁材20を固定するための部材であり、ブラケット13に設けた孔13aと、後述の梁材20に設けられた孔21a、22aとを重ねたうえで、ピン23を差し込み梁材20を固定する構造となっている。すなわち、梁材20は板状部材10に対して着脱自在となるものである。
【0032】
板状部材10の掘削溝側、つまり
図2に示される浅堀掘削溝用土留め装置100を掘削溝101に設置した際の掘削溝101側には、板状部材10の長手方向に平行に内板30が設けてある。
【0033】
この内板30と板状部材10とは、板状部材10の両端と内板30との間に設けられる支持板40とにより、間隙60を有する形態で固定されている。一対の支持板40間に隔壁板50を設けなければ、間隙60に幅広のパネル材を嵌め込むことが可能となり、逆に請求項3や請求4に記載の発明のように隔壁板50を複数設ければ、幅狭な矢板を複数枚嵌め込むことが可能となる。
【0034】
支持板40及び隔壁板50は、中空の角型パイプ材を用いて形成してある。請求項2や請求項4に記載の発明では、
図2や
図3に示すように、支持板40や隔壁板50を板状部材10下方まで延長して設けてある。
【0035】
図6に示すように、梁材20は大きさの異なる二本の角型パイプ材から成り、大きなパイプ材21の中に小さなパイプ材22が収容可能な構造となっている。係る構造故に、梁材20は伸縮自在となるのである。また、パイプ材21、パイプ材22にはそれぞれ孔21a、孔22aが複数設けられている。孔21aと孔22aを重ねたうえで、ピン23を差し込むことで、梁材20を任意長さで固定することが可能となるのである。
【符号の説明】
【0036】
10・・板状部材
11・・立板
12・・板材
13・・ブラケット
13a・・孔
20・・梁材
21・・パイプ材
22・・パイプ材
23・・ピン
30・・内板
40・・支持板
50・・隔壁板
60・・空隙
【手続補正書】
【提出日】2023-05-29
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
掘削溝の上端縁に係止される一対の板状部材と、一対の板状部材間に架設される伸縮自在、且つ、着脱自在な梁材と、板状部材の掘削溝側に設けられ、板状部材の長手方向に平行な内板と、板状部材の両端と内板との間に設けられると共に板状部材より下方まで延長された支持板とにより成る浅堀掘削溝用土留め装置。
【請求項2】
内板と板状部材との間に隔壁板を設けた請求項1に記載の浅堀掘削溝用土留め装置。
【請求項3】
隔壁板を板状部材より下方まで延長した請求項1又は請求項2に記載の浅堀溝用土留め装置。