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特開2024-30708卵殻膜含有微粉末とカラザ粉末を含む経口組成物
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  • 特開-卵殻膜含有微粉末とカラザ粉末を含む経口組成物 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024030708
(43)【公開日】2024-03-07
(54)【発明の名称】卵殻膜含有微粉末とカラザ粉末を含む経口組成物
(51)【国際特許分類】
   A23L 33/10 20160101AFI20240229BHJP
   A61K 35/57 20150101ALI20240229BHJP
   A61K 9/20 20060101ALI20240229BHJP
   A61K 9/16 20060101ALI20240229BHJP
   A61K 9/48 20060101ALI20240229BHJP
   A61K 9/14 20060101ALI20240229BHJP
   A61P 17/00 20060101ALI20240229BHJP
   A61P 17/14 20060101ALI20240229BHJP
   A61P 37/02 20060101ALI20240229BHJP
   A61K 33/06 20060101ALI20240229BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20240229BHJP
   A61K 31/7012 20060101ALI20240229BHJP
   A23L 33/16 20160101ALI20240229BHJP
   A23L 2/52 20060101ALI20240229BHJP
   A23L 33/17 20160101ALI20240229BHJP
【FI】
A23L33/10
A61K35/57
A61K9/20
A61K9/16
A61K9/48
A61K9/14
A61P17/00
A61P17/14
A61P37/02
A61K33/06
A61P43/00 121
A61K31/7012
A23L33/16
A23L2/00 F
A23L33/17
A23L2/52
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022133772
(22)【出願日】2022-08-25
(71)【出願人】
【識別番号】501303046
【氏名又は名称】株式会社 アルマード
(74)【代理人】
【識別番号】100123984
【弁理士】
【氏名又は名称】須藤 晃伸
(74)【代理人】
【識別番号】100102314
【弁理士】
【氏名又は名称】須藤 阿佐子
(74)【代理人】
【識別番号】100159178
【弁理士】
【氏名又は名称】榛葉 貴宏
(74)【代理人】
【識別番号】100206689
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 恵理子
(72)【発明者】
【氏名】長谷部 由紀夫
【テーマコード(参考)】
4B018
4B117
4C076
4C086
4C087
【Fターム(参考)】
4B018LB08
4B018LB10
4B018LE01
4B018LE02
4B018LE05
4B018MD04
4B018MD07
4B018MD18
4B018MD20
4B018MD23
4B018MD29
4B018MD34
4B018MD37
4B018MD72
4B018MF07
4B018MF08
4B117LC04
4B117LE03
4B117LK01
4B117LK19
4C076AA31
4C076AA36
4C076AA53
4C076BB01
4C076CC07
4C076CC18
4C076FF70
4C086AA01
4C086AA10
4C086EA02
4C086HA04
4C086HA16
4C086MA03
4C086MA04
4C086MA16
4C086MA35
4C086MA37
4C086MA41
4C086MA52
4C086NA14
4C086ZA89
4C086ZA92
4C086ZB07
4C086ZC75
4C087AA01
4C087AA10
4C087BB61
4C087MA16
4C087MA35
4C087MA37
4C087MA41
4C087MA52
4C087NA14
4C087ZA89
4C087ZA92
4C087ZB07
4C087ZC75
(57)【要約】
【課題】卵殻膜含有微粉末、カラザ粉末、卵殻カルシウム、および/または加水分解卵殻膜を含み、美肌効果、育毛発毛促進効果、食欲増進、疲労回復等の健康増進効果に優れた経口用組成物を提供する。
【解決手段】レーザー回折法による体積平均粒子径が6μm以下および/または体積最大平均粒子径が20m以下である卵殻膜含有微粉末、好ましくは消化吸収効率が向上する媒体撹拌ミルによる卵殻膜の微粉砕粉末と、カラザ粉末、卵殻カルシウム、および/または加水分解卵殻膜成分を含む経口組成物により、美肌効果と育毛効果等が促進される。
【選択図】図2

【特許請求の範囲】
【請求項1】
卵殻膜含有微粉末、卵殻カルシウム、およびカラザ粉末を含有することを特徴とする経口組成物。
【請求項2】
前記卵殻膜含有微粉末が、レーザー回折法による体積平均粒子径が6μm以下、および/または体積最大粒子径が20μm以下である、請求項1に記載の経口組成物。
【請求項3】
前記卵殻膜含有微粉末が、媒体撹拌ミルによる微粉砕粉末である、請求項2に記載の経口組成物。
【請求項4】
前記媒体撹拌ミルによる微粉砕粉末が、ジェットミルによる微粉砕粉末よりも、小さく揃った粉片が多く均一に分散しやすい、請求項3に記載の経口組成物。
【請求項5】
前記媒体撹拌ミルがボールミルである、請求項3に記載の経口組成物。
【請求項6】
さらに、加水分解卵殻膜成分を含有する、請求項1に記載の経口組成物。
【請求項7】
請求項1ないし6のいずれかに記載の経口組成物を含む、錠剤、顆粒剤、カプセル剤、またはドリンク剤。
【請求項8】
請求項1ないし6のいずれかに記載の経口組成物を含む、飲食品、サプリメント、または医薬品。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、卵殻膜含有微粉末とカラザ粉末を含む経口組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
卵殻膜は、鶏卵などの鳥類の卵の卵殻の内側にある膜で、内外2枚からなり、外卵殻膜は卵殻内面に密着し、内卵殻膜は卵白を包んでおり、抗菌性を有して発生中の胚を感染から保護している。卵殻膜は、I型、V型およびX型コラーゲン等を含む繊維状の蛋白質を主成分とし、これらのタンパク質はシステインを多く含み、強靭な繊維性のタンパク質からなる網目状の構造を有している。卵殻膜には、さらにグルコサミン、デスモシンおよびヒアルロン酸が含まれ、酸、アルカリ、プロテアーゼに対して比較的安定で、水に不溶性である。
【0003】
卵殻膜は、このように網目構造の繊維質を主成分として構成され水に不溶性であるため、人体に消化吸収されにくい。そのため、消化吸収効率の改善が求められており、たとえば、不溶性の卵殻膜を水に可溶性にするため、タンパク質を酸、アルカリまたは酵素で加水分解して加水分解卵殻膜(特許文献1)とする技術が開発されているが、加水分解処理は化学反応を利用するため 、加水分解の過程において卵殻膜中に含まれる各種の有効成分が劣化、変性、または消失するというデメリットも生じやすい。
【0004】
そのため、物理的に卵殻膜をより細かく粉砕して、卵殻膜粒子の単位体積当たりの表面積を大きくし、単位時間当たりの卵殻膜成分を溶解・溶出させる効率を上げる機械的処理も行われている。たとえば、卵殻膜粉末をジェットミルで粉砕して微粉末化し、体積平均粒子径を6μm以下(特許文献2、3)として、卵殻膜成分の消化吸収効率を高める方法が提案されており、消化吸収率は60%弱である。
【0005】
一方、卵を割ったときに卵白に混じって現れる白い紐状の卵白成分を、カラザという。カラザは、卵黄を卵の中央に固定して衝撃から守る役割を果たし、成分は卵白とほぼ同じであるが、卵白にはないシアル酸が豊富に含まれている。カラザ乾燥粉末には、ウイルス感染防御機能(特許文献4)が報告されており、また、シアル酸製造原料として使用すること(特許文献5)が報告されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第5179847号公報
【特許文献2】特開2013-216652号公報
【特許文献3】特開平2-231426号公報
【特許文献4】特開平5-284935号公報
【特許文献5】特開平2-69492号公報
【特許文献6】特開2018-52854号公報
【特許文献7】特許第3862600号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、卵殻膜成分が本来有する美肌化、皮膚再生、育毛発毛促進、脱毛防止、肩凝りの解消、食欲増進、疲労回復等の日常的な健康増進や免疫力アップ等の効果が、さらに増強された経口組成物を提供することをその課題とする。
また、卵殻膜をより細かく粉砕する実験を重ねるうちに、卵殻膜の消化吸収効率は、粒径に対して単純に比例して増加しないこと、すなわち、特許文献2や3に示されるレベル以下に粒径を小さくするよう卵殻膜を粉砕しても、さらなる消化吸収効率の向上は望めないことがわかった。
本発明は、従来の微粉末よりさらに消化吸収効率が改善された卵殻膜含有微粉末を含むことにより、卵殻膜の本来有する効果が増強された卵殻膜微粉末含有組成物を提供することを、その課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、経口組成物において、卵殻膜成分が本来有する機能をさらに増強できる素材について鋭意研究する中で、卵殻膜と同じく卵に含まれ、液卵製造過程中に発生する残渣として廃棄されているカラザの機能性に着目した。カラザ乾燥粉末中のシアル酸含量を分析すると、1mg中に約0.002mgで約0.2重量%ものシアル酸を含む高含量シアル酸素材であり、この高含量シアル酸素材としてのカラザ粉末を卵殻膜含有微粉末と併用すると、卵殻膜成分が本来有する機能を相乗的に増強させることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0009】
また、従来の卵殻膜含有微粉末を、媒体撹拌ミル、たとえばボールミルで粉砕することにより、全体としての体積平均粒子径は変わらないものの、従来の微粉末に比べて、大きさが小さくて揃っている微粉末分子が得られ、そのために均一に分散してより有効成分が消失されることなく可溶化される卵殻膜含有微粉末が得られることがわかった。
【0010】
本発明は、以下(1)~(6)の経口組成物、(7)の錠剤、顆粒剤、カプセル剤、またはドリンク剤、および(8)の飲食品、サプリメント、または医薬品に関する。
(1)卵殻膜含有微粉末、卵殻カルシウム、およびカラザ粉末を含有することを特徴とする経口組成物。
(2)前記卵殻膜含有微粉末が、レーザー回折法による体積平均粒子径が6μm以下、および/または体積最大粒子径が20μm以下である、上記(1)に記載の経口組成物。
(3)前記卵殻膜含有微粉末が、媒体撹拌ミルによる微粉砕粉末である、上記(3)に記載の卵殻膜含有微粉末。
(4)前記媒体撹拌ミルによる微粉砕粉末が、ジェットミルによる微粉砕粉末よりも、小さく揃った粉片が多く均一に分散しやすい、上記(3)に記載の経口組成物。
(5)前記媒体撹拌ミルがボールミルである、上記(3)に記載の経口組成物。
(6)さらに、加水分解卵殻膜成分を含有する、上記(1)に記載の経口組成物。
(7)上記(1)ないし(6)のいずれかに記載の経口組成物を含む、錠剤、顆粒剤、カプセル剤、またはドリンク剤。
(8)上記(1)ないし(6)のいずれかに記載の経口組成物を含む、飲食品、サプリメント、または医薬品。
【発明の効果】
【0011】
卵殻膜または加水分解卵殻膜は、経口摂取により美肌化、皮膚再生、育毛発毛促進、脱毛防止などの作用の他に、肩凝りの解消、食欲増進、疲労回復等の日常的な健康増進、健康維持に有効であることが知られている(特許文献6、7)。これら卵殻膜成分に、シアル酸の豊富なカラザ粉末や卵殻カルシウム等の卵由来成分を併用することにより、卵殻膜含有微粉末が本来有する効果がより増強される組成物が得られる。
【0012】
また、卵殻膜微粉末では、粒径をより小さくしても消化吸収効率はほとんど改善されないことから、卵殻膜が粉砕される過程で生じた破断面・粉砕面などの一部分が、消化液に対して溶解しやすくなったにすぎず、卵殻膜粒子自体の強固な網目構造は維持されているため、消化液に対する難溶状態が維持されているものと考えられた。
これに対して、本発明で用いる媒体撹拌ミルにより微粉砕された卵殻膜含有微粉末は、ジェットミル等で粉砕された従来の卵殻膜微粉末と比べて、消化吸収効率が向上する。このような消化吸収効率の改善効果は、従来の微粉末の体積平均粒子径と同程度であることから、単に粒径が小さくなったことに起因するものではなく、卵殻膜粉末を媒体撹拌ミルで微粉化する過程において、卵殻膜に固有の繊維状の強固な網目状の構造が破壊され、繊維状タンパク質がほぐれて柔らかくなり、卵殻膜微粒子全体が消化液に対して、より溶解しやすくなったためと推測される。
【0013】
レーザー顕微鏡で観察すると、ジェットミルで粉砕した微粉末は、小さい粉片は多いものの、断片の長軸の長さ(長片)がかなり大きい粉片が多数存在して、長さのばらつきが大きい。一方、ボールミルで粉砕した微粉末は、長片が小さく揃った比較的小さい粉片が多く、かつ大きい粉片へとなだらかに少なくなり、小さく揃った粉片が多いために均一に分散しやすく、そのためにより有効成分が消失されることなく可溶化されると考えられる。
このように、本発明の消化吸収しやすい卵殻膜含有微粉末を含む経口組成物中に、シアル酸の豊富なカラザ粉末、加水分解卵殻膜成分、卵殻カルシウムを併用すると、特に、美肌効果や育毛発毛促進効果がさらに向上し、飲食品、サプリメント、医薬品として様々な形態で安全に利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】実施例2で製造したボールミルで12時間粉砕した卵殻膜含有微粉末の、レーザー回折法による粒度分布曲線と測定結果。
図2】実施例1と実施例2で製造した各卵殻膜含有微粉末のレーザー顕微鏡写真。
図3図2の2つのレーザー顕微鏡画像を、それぞれImageJ(v.1.53c)で2値化し、2点間最大距離(Feret‘t Diameter)で計測(粉片の長軸方向の長さを計測)した結果を示す図。縦軸は個数で、横軸は粉片の大きさ(長さμm)
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の卵殻膜含有微粉末の原料である卵殻膜は、陸生の卵生動物すべての卵、特に鳥類の卵の卵殻の内側にある膜であればいずれも使用できる。特に鶏卵の卵殻膜が、入手の容易性、コストの点から好ましい。本発明で使用される卵殻膜含有粉末は、少なくとも卵殻膜を含む粉末であり、剥離された卵殻膜等の卵殻膜含有原料を、公知のブレンダー、ミキサー、ミル、粉砕機で粉末化したものや、または市販の卵殻膜含有粉末であってもよい。
【0016】
本願明細書において、卵殻膜含有粉末または微粉末の「体積平均粒子径」および「体積最大粒子径」は、レーザー回折式粒度分布測定装置を用いて測定した値を意味する。粒子径の測定に際しては、微粉末等を界面活性剤を用いて水に分散させた測定試料を用いる。また、「体積平均粒子径」とは、体積基準粒度分布における小粒径側からの体積累積値が50%になる粒子径を意味する。
【0017】
卵殻膜含有微粉末の原料となる卵殻膜含有粉末としては、体積平均粒子径または体積最大粒子径が40μm以下のものが、粉砕時間が短縮できることから好ましく、また、熱変性が抑えられるため、卵殻膜含有原料をガス中で相互に衝突させるジェットミルを用いて粉砕されたものが好ましい。
ジェットミルを用いる粉砕方法は、従来の回転刃などの硬質の破砕部材を原料と衝突させて粉砕する粉砕方法と比べて、粉砕時に破砕部材と原料との接触・衝突などに起因する摩擦熱がほとんど発生しない。このため、卵殻膜中に含まれるアミノ酸や蛋白質などの熱により変性・劣化・分解しやすい成分へのダメージが少なく、粉砕工程で卵殻膜中の有効成分が失われにくくなる。
【0018】
卵殻膜含有粉末の製造において、ジェットミルにより卵殻膜含有原料の体積平均粒子径が40μm以下となるまで粉砕することが好ましく、20μm以下となるまで粉砕することがより好ましく、10μm以下となるまで粉砕することがさらに好ましい。また、ジェットミルにより粉砕された後の卵殻膜含有粉末が、粒径40μmを超える粗大粒子を含む場合には、目開き40μm以下の篩で分級して粗大粒子を除去してもよい。
【0019】
ジェットミルにより粉砕された後の卵殻膜含有粉末は、体積最大粒子径が20μm以下、および/または、体積平均粒子径が6μm以下であれば、これをそのまま本発明の卵殻膜含有微粉末として使用できる。一方、粒度分布において粒径20μmを超える粗大粒子を含む場合、微粉砕工程を経た後に、目開き20μm以下の篩で分級して粗大粒子を除去する分級工程をさらに実施してもよい。
【0020】
本発明の卵殻膜含有微粉末としては、卵殻膜含有粉末または卵殻膜含有微粉末を、媒体攪拌ミルでさらに微粉砕したものが好ましく使用される。
媒体攪拌ミルは、媒体を充填した容器に原料を投入し、撹拌装置を用いて一緒に撹拌することで粉砕や分散を行う粉砕機であり、撹拌によって媒体に運動が与えられると、せん断作用や摩擦作用が生じて粉砕・分散が行われる。媒体には、「ボール」「ぺブル」「ビーズ」などの種類が存在する。粉砕操作を気体中で行う場合を「乾式粉砕」、液体中で行う場合を「湿式粉砕」という。
【0021】
乾式微粉砕機としては、乾式ビーズミル、ボールミル(転動式、振動式など)が汎用されている。ビーズは直径2mm以下で、ボールは直径10~50mmである媒体であり、ボールミルよりもビーズミルの方が100倍~500倍もの非常に強いエネルギーをもっており、卵殻膜含有粉末の微粉砕にはボールミルを使用するのが好ましい。
【0022】
卵殻膜含有粉末または卵殻膜含有微粉末をボールミルで、体積平均粒子径が6μmまたは体積最大粒子径が20μm以下になるまで微粉砕する。微粉砕にかかる時間は、ボールミルの種類や卵殻膜含有粉末の大きさによって異なるが、たとえば、ボールミル(BM-100 株式会社大島鉄工所製)を用いて、1~12時間である。「体積平均粒子径」、「体積最大粒子径」は、レーザー回折式粒度分布測定装置(LMS-30、株式会社セイシン製)を用いて、随時測定する。
【0023】
このようにして微粉砕された卵殻膜含有微粉末は、経口用の錠剤、顆粒剤、カプセル剤、またはドリンク剤の製造、各種の飲食品、サプリメント、または医薬品の製造、疾病予防・治療・美容等の目的で皮膚に塗布するための液剤・乳液・クリームの製造、マスカラやトリートメント液などのように毛髪・眉毛・睫毛等に塗布するための液剤・乳液・クリームの製造に用いることができる。
【0024】
卵殻膜含有微粉末には刺激性がないために、本発明の経口組成物を製造するための他の成分や製造法は、飲食品、サプリメント、医薬品における錠剤、顆粒剤、カプセル剤、ドリンク剤の製造分野で公知の成分や製造法から適宜選択することができる。
【0025】
一方、本発明の組成物に使用するカラザ粉末は乾燥粉末が好ましく、使用するカラザは、たとえば液卵製造過程中に発生する残渣を原料とすることができる。カラザの採取は産卵後3日以内のものが好ましい。卵液の殺菌工程前のフィター濾過時に発生する残渣には、主にカラザが含まれ、卵黄膜、卵殻、卵殻膜が少量混在する。回収した残渣を流水で洗浄してカラザを回収し、これに精製水を加えてにホモジナイザーで分散させてから乾燥処理し、適宜粉砕処理するとカラザ乾燥粉末が得られる。乾燥処理には、温風乾燥、スプレイドライ、減圧乾燥、凍結乾燥等が使用でき、洗浄後のカラザ1重量に対して、約1/5重量の乾燥カラザが回収できる。
【0026】
このように、産卵後3日以内に採取されたカラザの乾燥粉末中のシアル酸含量を分析すると、1mg中に約0.002mgで約0.2重量%のシアル酸を含む。カラザ乾燥粉末中のシアル酸含量は、ローヤルゼリーの約4倍で、つばめの巣の約1/50という高シアル酸食品素材である。
本発明の経口組成物は、カラザ粉末を含有することを特徴とする。シアル酸の健康効果としては、免疫力を高める効果や美肌効果が知られている。また、育毛剤に使用することもあり、これらの効果はいずれも卵殻膜成分の本来有する効果と一致することから、両者の効果が相俟って、美肌および育毛促進効果が向上すると考えられる。
【0027】
また、本発明の組成物に使用する卵殻カルシウムは、鶏卵などの鳥類の卵の殻を粉砕・乾燥してなる微粉末であり、人が摂取可能な卵殻カルシウムであればいずれも使用できる。卵殻カルシウムとしては、例えば、市販されているキューピー株式会社製「カルホープ」、太陽化学株式会社製の卵殻カルシウムなどをそのまま用いることができる。卵殻カルシウムは、カルシウム補強剤としてだけでなく、卵殻膜粉末を含有する錠剤中に賦形剤と卵殻カルシウムを配合することにより、錠剤の硬度が高くなり変形、崩壊、傷つきが生じなくなり、取り扱い性および摂取性が向上する(特許文献7)というメリットがある。
【0028】
さらに、本発明の経口組成物には、加水分解卵殻膜成を含有させることが好ましい。
加水分解卵殻膜成分は、卵殻膜あるいは前述した卵殻膜含有粉末を、酸水溶液、アルカリ水溶液、アルカリ性有機溶媒溶液、およびタンパク質分解酵素含有液などのタンパク質の分解作用を有する液中で加水分解することによって得られ、本発明の経口組成物で使用される加水分解卵殻膜成分は、アルカリ加水分解が好ましい。
加水分解卵殻膜成分はほぼ100%が消化吸収され、血液中に取り込まれた卵殻膜成分により、皮膚におけるIII型コラーゲンの生成を促進するだけでなく、血管でもIII型コラーゲンの生成を促進して血管全体の弾性を増すことができる。
【0029】
本発明の経口組成物には、錠剤、顆粒剤、カプセル剤、またはドリンク剤を形成するための各種の公知の添加剤を添加することができ、賦形剤、結合剤、崩壊剤、滑沢剤、その他の栄養素等を添加することができる。
賦形剤としては、公知の賦形剤が適宜使用できるが、化工澱粉および乳糖の少なくとも1種を、賦形性の観点から卵殻膜成分の重量に対して0.3~3倍用いることが好ましく、1~2.5倍であることがより好ましい。化工澱粉としては、焙焼デキストリンなどのデキストリン、酸化澱粉、低粘性変性澱粉などの1種または2種以上を用いることができる。賦形剤として化工澱粉と乳糖を併用する場合は、使用割合(重量比)が、1:5~5:1であることが好ましい。
結合剤としては、公知の結合剤が適宜使用できるが、たとえば、デンプン糊、アラビアゴム糊、ヒドロキシプロピルセルロースなどが挙げられる。
崩壊剤としては、公知の崩壊剤が適宜使用できるが、たとえば、セルロース類などを用いることができる。
滑沢剤としては、公知の滑沢剤が適宜使用できるが、たとえば、ステアリン酸マグネシウム、ショ糖脂肪酸エステル、ワックス類、タルク、ビタミンCなどが挙げられる。
【0030】
また、錠剤の硬度を高くして、変形や傷つきを防止し、取扱性を向上させるため、硬度向上剤として卵殻カルシウムを含有することが好ましく、錠剤に含まれる卵殻カルシウムの含有量は、好ましくは0.1~20重量%、より好ましくは0.5~15重量%である。
さらに、錠剤中に含まれる成分の変質や分解を防止し、かつ、錠剤表面の耐傷つき性を向上させるため、コーティング皮膜で覆うことが好ましい。コーティング皮膜は、公知のコーティング皮膜が適宜使用できるが、たとえば、商品名「セラック」(岐阜セラック株式会社製)を用いることができ、本発明の錠剤は、糖衣で覆われていてもよく、着色してもよく、着色後に艶出し処理を施してもよい。
【0031】
本発明の錠剤の大きさは特に制限されないが、一般には直径が約7~10mm程度の円形や楕円形とするのが、取扱性、服用のし易さから好ましい。錠剤の1個の重さは、約350~600mg程度であり、有効成分が好ましくは約10~240mg、より好ましは約20~150mg含まれるようにする。
本発明の錠剤は、卵殻膜含有微粉末、カラザ粉末、および卵殻カルシウム、および/または加水分解卵殻膜成分を含む打錠用原料を用いて、公知の錠剤製造方法により製造することができる。たとえば、打錠用原料を打錠して裸錠を形成する打錠工程を経て、必要に応じて、造粒工程、保護コーティング工程、糖衣コーティング工程等を行い、さらに着色、艶出しを行ってもよい。
【0032】
また、本発明の経口組成物は、菓子類、飲料、健康食品、保存食品、加工食品などの食品添加剤とすることができる。ここで、「医薬品」および「飲食品」の対象はヒトに限定されるのもではなく、ペットや家畜のような哺乳動物用の医薬品および飼料も包含する。また、「飲食品」の概念には、通常の飲食品の他、経腸栄養食品、栄養機能食品、機能性表示食品、特定保健用食品などが包含される。
【0033】
以下に、本発明を実施例に基づいて詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。
【実施例0034】
[実施例1]
[卵殻膜含有微粉末の製造(その1)]
原料の卵殻膜含有粉末として、商品名「EMパウダー300」(キユーピー株式会社製)を用いた。
ジェットミルとして、シングルトラックジェットミル(株式会社セイシン製、FS-4)を用いて、風量:1.2m/min、動力:11kwにて、体積最大粒子径が800メッシュ(目開きで約20μm)程度となるまで微粉砕を実施した。レーザー回折式粒度分布測定装置(株式会社セイシン製、LMS-30)を用いて粉砕後の粒径を測定したところ、体積最大粒子径は19.6μm、体積平均粒子径は5.8μm(以下、「800メッシュ微粉末」という。)であった。
【0035】
[実施例2]
[卵殻膜含有微粉末の製造(その2)]
原料の卵殻膜含有微粉末として、実施例1で製造した卵殻膜含有微粉末を用いた。
ボールミル(BM-100 株式会社大島鉄工所製)を用いて、卵殻膜含有微粉末を12時間の粉砕時間による微粉砕を実施した。レーザー回折式粒度分布測定装置(株式会社セイシン製、LMS-30)を用いて粉砕後の粒径を測定したところ、体積最大粒子径は10μm、体積平均粒子径は3.6μm(以下、「ボールミル微粉末」という。)であった。
測定した粒度分布曲線と測定結果を図1に示す。
【0036】
図2に、実施例1と実施例2のそれぞれで製造した卵殻膜含有微粉末のレーザー顕微鏡写真を示す。左側のボールミル微粉末(0.5%純水中)は、右側の800メッシュ微粉末(1.0%純水中)に比べ、粉末が小さくて揃っており、均一に分散しやすいことが見て取れる。
このことは、図2の2つのレーザー顕微鏡画像を、それぞれImageJ(v.1.53c)で2値化し、2点間最大距離(Feret‘t Diameter)で計測(粉片の長軸方向の長さを計測)した粒度分布である図3にも示されている。
【0037】
図3の縦軸は個数で、横軸は粉片の大きさ(μm)であり、大きさが2-4μm、4-6μm、・・・にある個数を示す。粉片の大きさとは、その画像から測定した長軸方向の長さである。
ボールミル微粉末は、比較的小さい粉片が多く、大きさの程度が小さい範囲で満遍なく存在するのに対して、800メッシュ微粉末は、小さい粉片が多いものの、一方とても大きな粉片も存在する。このようにボールミル微粉末は、粉末が小さくて揃っており、均一に分散しやすく、そのためにより有効成分が消失されることなく可溶化されると考えられる。
【0038】
[実施例3]
[消化テスト]
200倍に希釈したボールミル微粉末の懸濁液0.8mlを入れた試験管4本を準備した。次に、各々の試験管に消化酵素(豚膵臓由来のパクレアチン)を加えて37℃でそれぞれ0分、30分、60分および180分加温した。その後、100℃で5分間加熱し、反応停止後、1500rpmで10分間遠心分離処理を行った後、上澄の可溶性タンパク質をBradford法により測定した。測定結果は、牛血清アルブミンを標準にして換算した。なお、ブランクとして、懸濁液の代わりに0.1Mのリン酸緩衝液を用いた。また、同様のテストを、800メッシュ微粉末についても実施した。
【0039】
[実施例4]
[錠剤の製造]
実施例2で製造した卵殻膜ボールミル微粉末と市販の加水分解卵殻膜粉末、商品名「ESMプロテイン」(アルマード社製)とカラザ粉末を、それぞれ20.0重量部、商品名「ワキシa」(日食株式会社製)10.0重量部、商品名「パインファイバー」(松谷化学株式会社製)20.0重量部、乳糖(メグレ社製)25.9重量部、卵殻カルシウム 商品名「カルホープ」(キユーピー株式会社製)10.0重量部、β-カロチン5.0重量部、ビタミンB2 0.05重量部、ビタミンE0.05重量部、およびナイアシン2.0重量部を、V型混合機を用いて混合することにより、原料混合物を調製した。この原料混合物93重量部に対して、エチルアルコール15重量部を混合し、得られた混合物を湿式造粒装置を用いて造粒してから、温度50℃で約16時間乾燥して、打錠用の顆粒を製造した。
【0040】
打錠用の顆粒100重量部に対して、ビタミンCを9重量部およびショ糖脂肪酸エステルを1重量部の割合で混合し、得られた混合物を打錠装置を使用して、1粒が200mgの裸錠を製造した。裸錠の表面に、コーティング装置を使用して商品名「セラック」(岐阜セラック株式会社製)の水溶液を塗布し、温度40℃で2時間乾燥して保護コーティングされた錠剤を得た。十分に乾燥させた保護コーティングされた錠剤の表面に、糖衣被覆装置を使用して、糖衣用ペーストA(グラニュー糖70重量部、アラビアガム3重量部、ゼラチン4重量部、卵殻カルシウム3重量部および水65重量部を混合したペースト)を被覆した後、温度40℃で約4時間乾燥した。その後、糖衣用ペーストAを水で希釈した糖衣用ペーストBを糖衣被覆装置を使用して被覆した後、温度40℃で4時間乾燥し、糖衣コーティング錠を得た。
【0041】
糖衣コーティング錠の表面に、商品名「SRレッドK3」(三栄源社製)を含む着色料を塗布した後、40~50℃で乾燥して、赤色に着色した錠剤を製造し、その表面にカルナウバロウを用いて艶出しを行った。これにより得られた錠剤1個の重量は400mgであり、錠剤1個当たり卵殻膜成分を約80mgの割合で含有していた。艶出し処理を行った錠剤を選別して不良品を除き、製品検査後に計量し、乾燥剤を同封した二重袋で包装した。錠剤は十分な硬度および形状保形性を有しており、選別、検査、包装時に変形したり、崩壊するとはなく、取扱性に優れていた。










図1
図2
図3