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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024030717
(43)【公開日】2024-03-07
(54)【発明の名称】アクチエータ
(51)【国際特許分類】
   G01L 5/12 20060101AFI20240229BHJP
   A61G 7/018 20060101ALN20240229BHJP
【FI】
G01L5/12
A61G7/018
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022133791
(22)【出願日】2022-08-25
(71)【出願人】
【識別番号】000116666
【氏名又は名称】愛知電機株式会社
(72)【発明者】
【氏名】加藤 領一
(72)【発明者】
【氏名】谷 貴行
(72)【発明者】
【氏名】水野 敏樹
【テーマコード(参考)】
2F051
4C040
【Fターム(参考)】
2F051AA17
2F051AB08
4C040DD05
4C040EE01
(57)【要約】
【課題】ベッド上の人体の挙動や状態などを検出する手段を備えたアクチエータを提供する。
【解決手段】各ボトムを起伏又はフレームを昇降動作させるアクチエータ1に、当該アクチエータ1を構成する駆動ロッド300の軸方向の振動を圧力として検出する圧電素子8を備える。当該圧電素子8の電圧出力の変化から各ボトム又はフレーム上の人体の挙動や状態、各ボトムの起伏動作又はフレームの昇降動作の異常を検出する。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
各ボトムを起伏又はフレームを昇降動作させるアクチエータに、該アクチエータを構成する駆動ロッドの軸方向の振動を圧力として検出する圧電素子を備え、当該圧電素子の電圧出力の変化から各ボトム又はフレーム上の人体の挙動や状態、各ボトムの起伏動作又はフレームの昇降動作の異常を検出することができることを特徴とするアクチエータ。
【請求項2】
前記圧電素子は、圧電素子ホルダに取り付けられ、前記駆動ロッドの軸方向の振動を押圧体を取り付けた押圧体ホルダに伝達し、伝達された振動によって前記押圧体が前記圧電素子に押し付けられることによって、前記駆動ロッドの軸方向の振動を圧力として検出することを特徴とする請求項1記載のアクチエータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動ベッド等の駆動に使用されるアクチエータに、ベッド上の人体の離着床などを検出する手段を備えた技術に関する。
【背景技術】
【0002】
ベッド等を駆動する手段として、回転動作するモータを用いて、直線的な伸縮動作を実現するアクチエータが広く用いられている。当該アクチエータには、直線的かつ十分な力を発生させる手段として、モータの回転動作を送りねじを用いて直線動作に変換する機構がある。
【0003】
送りねじを用いた動力変換機構は、送りねじ機構全体を収納するケースに対して回転可能に保持され、雄ねじを有するシャフトと、シャフトの雄ねじに螺合装着され、シャフト上を直線的に移動する雌ねじ部材で構成される。また、雌ねじ部材は中空円筒に固定されており、シャフトに高速で低トルクの回転力を入力すると、中空円筒は、ケースに対して低速かつ高トルクでシャフトの軸方向に直線的に動く。
【0004】
前記シャフトを電気で駆動するモータを用いて動作させると、簡素で制御性に優れた直線動作装置を構成することができる。
【0005】
前記アクチエータにおいて、モータの回転軸をシャフトの回転軸と一致させて配置することが可能である。また、噛合した平歯車群またははすば歯車群を用いれば、モータの回転軸をシャフトの回転軸と異なり、かつ平行な位置に配置することが可能であり、より小型で高回転型のモータを採用したり、アクチエータの全長を抑制することが可能となる。このとき、噛合した平歯車群又ははすば歯車群における入力側と出力側で噛み合う歯数の比率を変えることで、モータの出力する回転トルクより高い回転トルクを歯車群によるトルク変換の結果としてシャフトに与えることができる。また、噛合した傘歯車を用いれば、モータの回転軸をシャフトの回転軸と直交する方向に配置することができる。また、噛合したウオーム歯車を用いれば、モータの回転軸をシャフトの回転軸と直交する方向で、かつ異なる平面上に配置することができる。
傘歯車またはウオーム歯車を用いた場合も、歯車群における入力側と出力側で噛み合う歯数の比率を変えることで、モータが出力する回転トルクより高い回転トルクを歯車群によるトルク変換の結果としてシャフトに与えることができる。
【0006】
アクチエータの主要な利用方法として、電動ベッドの駆動が挙げられる。このような電動ベッドは、地面に対して動かないメインフレームのほか、アクチエータによりメインフレームに対して相対動作するサブフレームを1つ以上有する。アクチエータの一端はメインフレームに、他端はサブフレームに取り付けられ、アクチエータの駆動ロッドが伸縮動作することにより、サブフレームはメインフレームに対して傾斜、垂直移動、または傾斜と垂直移動の組み合わせ動作する。サブフレーム上にはマットレスが設置され、サブフレームの動作に伴い、頭部、足部などにあたる部分のマットレスの上下動作やリクライニング動作をさせ、ベッド上の利用者の姿勢を変化させる。
【0007】
近年、省力化の観点から、利用者の電動ベッド上での挙動を安価かつ簡易な方法で把握したいとの要望が介護者より挙げられている。また、電動ベッド動作中にフレームに人体や点滴用器具などの異物が挟まれるなどの異常が発生した際に、速やかに把握することが望まれている。これらの要望に対処する方法として、荷重センサを利用して、シャフトにかかる力を測定する方法がある。荷重センサをアクチエータ本体に内蔵し、シャフトの軸方向にかかる力を直接測定することができれば、信頼性と応答性が高い測定を実現できる。
【0008】
軸方向の荷重を検出する荷重検出手段を備えた電動アクチエータの構成を開示した先行文献として、下記特許文献1がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2021-032891号公報
【0010】
図12は、特許文献1に記載されたアクチュエータ950の主要部分の機能を示す構造図である。特許文献1に記載されたアクチュエータ950は、軸体951と、軸体951の直径が部分的に大きくなっている拡径部953により常時予圧荷重が負荷された、第1荷重センサ957および第2荷重センサ955を内蔵する。軸体951に、ボールねじのねじ軸として機能するねじ軸部952、軸体951の直径を部分的に大径とした拡径部953、雄ねじ部959が設けられる。雄ねじ部959には、ロックナット960が螺合される。また、ねじ軸部952には移動可能なナット964がボールを介して螺合する。駆動機構が駆動することにより、ナット964は軸体951の軸方向に移動する。
【0011】
第1荷重センサ957および第2荷重センサ955は、いずれも略円筒形である。 第1荷重センサ957および第2荷重センサ955は、筐体961の内径が部分的に小さくなっている縮径部956を挟み、かつ、軸体951が第1荷重センサ957の中空部分、第2荷重センサ955の中空部分、筐体961の縮径部956の中央を通るように配置される。第1荷重センサ957および第1軸受958は、縮径部956とロックナット960との間に挟み込まれている。第2荷重センサ955および第2軸受954は、縮径部956と拡径部953との間に挟み込まれている。すなわち、軸体951でねじ軸部952と螺合した移動可能なナット964がある側から、拡径部953、第2軸受954、第2荷重センサ955、縮径部956、第1荷重センサ957、第1軸受958、ロックナット960の順に、隣接する部材が接触しつつ並んでいる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
特許文献1に記載された電動アクチュエータにおいては、荷重を精密に測定できる反面、高価な荷重センサを使用する構成であり、製品の原価が高価になる。故に、利用者の電動ベッド上での挙動を安価かつ簡易な方法で把握したいとの介護者の要望に応えられるものではない。
【0013】
本発明は、上記の問題点に鑑みてなされたものであって、安価な部品を用いた簡素な構造でありながら、電動ベッドなどの利用者の挙動を把握することのできるアクチエータを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明に基づくアクチエータは、駆動機構と、軸体と、前記軸体の回転により前記軸体に対して相対的に軸方向に移動可能なナットと、筐体と、圧電素子ホルダと、圧電素子と、押圧体を備える。また、前記圧電素子ホルダと前記圧電素子と前記押圧体は、前記軸体の回転軸の延長線上に配置される。
【0015】
前記駆動機構は、ねじ軸部を有する前記軸体に回転力を与える機能を有するもので、モータと歯車などで構成される。前記軸体は、軸方向に延在し、前記駆動機構により回転されるもので、一部に雄ねじを有する。
【0016】
移動可能なナットは、前記軸体の前記雄ねじに螺合する雌ねじを有し、前記軸体の回転により、前記軸体の軸方向に相対的に移動可能である。前記筐体は、前記軸体の一部と、前記駆動機構、圧電素子ホルダ、圧電素子、押圧体ホルダ、押圧体を収容する。
【0017】
前記押圧体ホルダは前記筐体に収容されて前記軸体による軸方向の荷重を受ける。前記押圧体は前記軸体と反対側の面に配置される。前記圧電素子は、チタン酸バリウム、チタン酸ジルコン酸鉛、酸化亜鉛、窒化アルミニウムなどの強誘電体による結晶層を板状金属電極で挟んだ構造のもので、薄い円盤状の形状をしている。前記圧電素子は、前記圧電素子ホルダの、前記軸体側の面に配置される。このとき、前記圧電素子は、前記圧電素子ホルダにより直接、または略環状の支持部材により間接的に前記圧電素子ホルダに支持される。
【0018】
前記軸体の延長線上において、前記圧電素子ホルダと前記圧電素子の中央部との間には、前記軸体が前記押圧体ホルダに与える荷重または振動に基づく押圧体の押し付けによる撓みで、前記圧電素子ホルダと前記圧電素子が直接接触しない程度の空隙が設けられる。
【0019】
前記押圧体は、NBR、EPDM、アクリルゴム、フッ素ゴム、天然ゴム、熱可塑性エラストマーなどの弾性体が想定できるが、非弾性体であってもよい。押圧体は押圧体ホルダの押圧体取付部に固定され、他端が前記圧電素子の表面を押し付け可能に配置される。
【発明の効果】
【0020】
請求項1の発明によれば、各ボトムを起伏又はフレームを昇降動作させるアクチエータによって、各ボトムやフレーム上の人体の挙動や状態、各ボトムやフレームによる異物の挟み込み等の動作異常を検出することができる。
【0021】
請求項2の発明によれば、アクチエータの駆動ロッドに加わる荷重が圧電素子に直接加わることがないので、圧電素子の破損を防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明の実施形態1に係るアクチエータの構成を示す断面図である。
図2】本発明の実施形態1に係るアクチエータの圧電素子付近を拡大した部分断面図である。
図3】押圧体の構造の一例を示す図である。
図4】押圧体の構造の他の一例を示す図である。
図5】押圧体の構造の他の一例を示す図である。
図6】押圧体の構造の他の一例を示す図である。
図7】アクチエータのベッド装置への使用例を示す図である。
図8】圧電素子が出力する電圧の時間的変化を測定する回路の例を示す模式図である。
図9】挟み込み時の圧電素子の電圧出力の時間的変化を示すグラフである。
図10】離床/着床時における圧電素子の電圧出力の時間的変化を示すグラフである。
図11】心電図と、心弾動のよる圧電素子の電圧出力の時間的変化を示すグラフである。
図12】アクチュエータにかかる荷重を検出する従来の構成を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施例を説明する。なお、以下に説明する各実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定するものではない。すなわち、本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得ると共に、本発明にはその等価物が含まれることは勿論である。
【0024】
図1は、本発明の実施形態1に係るアクチエータの構成を示す断面図である。図1に示すように、本発明の実施形態1に係るアクチエータ1は、軸体2と、移動可能なナット3と、筐体4と、ベアリングユニット5と、クラッチユニット6と、圧電素子ホルダ7と、圧電素子8と、押圧体9を備える。
【0025】
軸体2は、駆動機構により回転動作される。駆動機構は、モータ10と、モータ10の動力を減速しつつ軸体2に伝達する減速機構部11から成る。図1による実施形態1においては、減速機構部11は互いに噛合するウオームギヤとはすば歯車からなり、高速かつ低トルクであるモータ10の回転出力を減速しつつ、モータ10の回転軸と直角(略直角を含む)かつ異なる平面に配置された軸体2に動力を伝達する。
【0026】
モータ10の回転軸と軸体2の回転軸は、平歯車又ははすば歯車、傘歯車、可撓性チューブまたはユニバーサルジョイントを用いることで、モータ10の回転軸と軸体2の回転軸の位置関係を、それぞれ平行、同一平面状での直交、同一又は同一でない平面上での任意角度での交差のいずれの配置とすることも可能である。
【0027】
モータ10が十分な回転トルクを出力することが可能で、減速によるトルク増加を必要としない場合には、モータ10の回転軸を軸体2と一体化させたり、モータ10の回転軸と軸体2を可撓性チューブまたはユニバーサルジョイントで直結することで減速機構部を省略しても、本発明に関して実施形態1と同様の効果が得られる。
【0028】
図2は、本発明の実施形態1に係るアクチエータの圧電素子付近を拡大した部分断面図である。軸体2は、回転軸方向に延在している。軸体2には、前記軸方向の一方側から順に、クラッチ支持部201、ベアリング支持部202、縮径部203、セレーション加工部205、雄ねじ加工部207が設けられている。
【0029】
クラッチ支持部201は、軸体2の一方の端付近に配置され、軸体2の外周に配置されたクラッチユニット6が動作した時に限り、軸体2の回転をクラッチユニット6に伝達する。
【0030】
ベアリング支持部202は、軸体2がベアリングユニット5により筐体4に対して回転可能に支持される部分である。
【0031】
縮径部203は、軸体2のうち他の部分より直径を細く、かつ均一な太さになるように加工された部分である。縮径部203の外周には、縮径部と同軸かつ軸方向に同じ位置に配置された止め輪204が配置される。止め輪204の内周面は、縮径部203の外周面に対して、摩擦により移動不能に固定される。
【0032】
止め輪204の側面は、隣接した位置に配置されたベアリングユニット5を構成する部品である内輪501に接触しており、軸体2外周においてベアリングユニット5が軸体2の軸方向に移動することを抑制する。
【0033】
セレーション加工部205はモータ10からの動力を軸体2に伝達するための歯車206を軸体2に対して回転不能に固定するために、軸体2の表面にセレーション加工を施した部分であり、加工しない場合に比べ軸体2の外周面と歯車206の内周面の間での噛み合いの関係を保っている。軸体2へのセレーション加工後、駆動機構の一部を構成する歯車206は、セレーション加工部205に焼き嵌めまたは圧入されることで取り付けられる。なお、セレーション加工部205は一例であり、スプライン加工部としたり、キー結合としてもよい。
【0034】
雄ねじ加工部207は、塑性加工や切削などにより軸体2に雄ねじを形成させた部分であり、移動可能なナット3に施された雌ねじと螺合して、移動可能なナット3を軸体2の軸方向に移動可能に支持する。
【0035】
移動可能なナット3は、雄ねじ加工部207の雄ねじに螺合して筐体4に対して軸体2の軸方向にのみ直線的に移動可能であるが、使用時は回転しない。
【0036】
図1に示す駆動ロッド300は、移動可能なナット3を一端に固定された中空円筒で、移動可能なナット3が軸体2に軸方向に移動するのに伴い、筐体4の一端に取り付けられた外筒301の内面を軸体2の軸方向に移動しつつ、一部を外筒301の端部より突出させる。駆動ロッド300で移動可能なナット3がない側の先端付近側面には、ロッド側取付孔302が空けられている。ロッド側取付孔302はどのような形状でもよいが、円形や楕円形、多角形などが例示できる。当該ロッド側取付孔302は、外筒301の中心軸に対して対向する2か所に原則として同一寸法で設けられる。
【0037】
外筒301の中心軸に対して対向する2か所に原則として同一寸法で設けられたロッド側取付孔302には、図示しないピンなどを通すことが可能であり、ベッドのサブフレーム等、相対運動させる2つの駆動対象物のうちの片方に取り付けることが可能である。
【0038】
図1に示す筐体4は、モータ10と減速機構部11から成る駆動機構のほか、軸体2、ベアリングユニット5、クラッチユニット6、圧電素子ホルダ7、圧電素子8、押圧体9など、アクチエータ1を構成する部品の大半を収納する。筐体4は金属またはプラスチックで形成されており、軸体2の軸の延長上である一端に筐体側取付孔400が空けられている。
【0039】
筐体4の内面には、図2に示すように押圧体ホルダ901と接触する接触面401がある。外力による圧縮力がアクチエータ1にかけられ、ロッド側取付孔302および筐体側取付孔400を介して軸体2を軸方向に圧縮した際、押圧体ホルダ901にかけられた軸体2の軸方向の力は、接触面401を介して筐体4に伝えられる。
【0040】
図2に示すベアリングユニット5は、内輪501、複数のボールベアリング502、内輪501と同一軸上に配置された外輪503からなる。ベアリングユニット5において、内輪501の外周および外輪503の内周に設けられた溝の中を硬質の球である複数のボールベアリング502が転動することで、内輪501の回転軸に直交する方向に力がかかった状態であっても、極めて少ない摩擦で内輪501と外輪503の間で相対的な高速回転運動をさせることができる。
【0041】
図1および図2に示すタイプのベアリングユニット5は、一般的に回転軸に直交する方向の荷重が大きい用途向きのものであるとされる。しかしながら、図1および図2に示すタイプのベアリングユニット5であっても、軸方向にかかる荷重を軸体2、止め輪204、内輪501、ボールベアリング502、外輪503、クラッチユニット6、押圧体ホルダ901という順に伝達させることで、軸体2の軸方向にかけられた圧縮荷重、すなわちアクチエータ1全体にかけられた圧縮荷重を押圧体ホルダ901まで伝達させることが可能である。
【0042】
図2に示すクラッチユニット6は、軸体2と同一軸上に配置され、ベアリングユニット5を構成する外輪503と接触している。クラッチユニット6のクラッチ600が作動してない場合、軸体2が回転していてもクラッチユニット6を構成するクラッチ600、クラッチホルダ601、クラッチ側摩擦材602は筐体4に対して静止する。
【0043】
一方、クラッチ600が作動する際、クラッチユニット6を構成するクラッチ600、クラッチホルダ601、クラッチ側摩擦材602は軸体2とともに回転する。クラッチ側摩擦材602は、圧電素子ホルダ7に対して移動不能に固定されたブレーキホルダ603に取り付けられたブレーキ側摩擦材604と常時接触している。このため、クラッチ側摩擦材602とブレーキ側摩擦材604が相対的な回転運動を行っているか否かを問わず、クラッチユニット6に軸方向の圧縮荷重がかけられた際に、クラッチ側摩擦材602とブレーキ側摩擦材604を通じて、押圧体ホルダ901に軸方向の圧縮荷重を伝達することができる。
【0044】
押圧体ホルダ901は、略有底中空円筒形状の部材であり、その開口端が筐体4内面の接触面401に接触するように配置される。押圧体ホルダ901は、その外周縁が筐体4内面の接触面401に接触することで支持されるため、押圧体ホルダ901の外周縁は、筐体4に対して実質的に移動不能に固定される。押圧体ホルダ901が軸体2の軸方向の圧縮荷重を受けた際、押圧体ホルダ901や筐体4にひずみが発生する。
【0045】
押圧体ホルダ901のクラッチユニット6と反対側の面の中央には押圧体取付部900があり、押圧体9が取り付けられている。
【0046】
圧電素子ホルダ7の、クラッチユニット6が位置する側の面の中央付近は圧電素子取付面700があり、圧電素子取付面700の更に中央部には窪み701がある。圧電素子取付面700に圧電素子8を接着等で取り付けた場合であっても、窪み701による空隙のため、圧電素子8の中央部は圧電素子ホルダ7に直接接触しない。
【0047】
圧電素子ホルダ7と圧電素子8と押圧体9、押圧体ホルダ901は、軸体2の回転軸の延長線上に配置される。押圧体ホルダ901が軸体2の軸方向の圧縮荷重を受けて押圧体ホルダ901や筐体4にひずみが発生すると、押圧体9が圧電素子8に押し付けられる。
【0048】
押圧体9の形状は円錐形(図3参照)、頂点が切断された略円錐形(図4参照)、略半球(図5参照)、円柱形(図6参照)が例示できる。
【0049】
図4に示す略円錐形の頂点が円錐形の軸に直交する面で切断された面を有する押圧体9Bは、前記円錐形の軸に直交する面で切断された面903が図2に示す圧電素子8に押し付けられるので、圧電素子8が破損しにくい。
【0050】
また、押圧体9Bで前記円錐形の軸に直交する面で切断された面903が圧電素子8を押すとき、前記円錐形の軸に直交する面で切断された面903の面積は、前記円錐形の底面積より小さい。このため、アクチエータ1の軸体2にかかる力が小さくても、押圧体9Bが圧電素子8を押す際の接触面の圧力を十分に大きくさせることができ、圧電素子8に十分な出力を発生させることが可能となる。
【0051】
アクチエータ1を図示しない駆動対象物に取り付ける際、図1に示す筐体4の筐体側取付孔400と、駆動ロッド300の一端に設けられたロッド側取付孔302にそれぞれ通された図示しないピンなどを用いて、相対運動させる2つの図示しない駆動対象物に各1箇所ずつ取り付ける。筐体側取付孔400とロッド側取付孔302にそれぞれピンなどを通して支持することで、2つの駆動対象物のいずれに対しても取付け後にアクチエータ1を変角自在に動作させることができる。
【0052】
図示しない駆動対象物にアクチエータ1を取り付ける際、アクチエータ1を構成する部品の重量の大半を筐体側取付孔400で受けるため、2つの図示しない駆動対象物のうち動きが少ない側に筐体4の筐体側取付孔400を、動きが多い側にロッド側取付孔302をそれぞれ取り付けることが好ましい。例えば、電動ベッドの駆動であればベッドのメインフレームに筐体4の筐体側取付孔400を、ベッドのサブフレームにロッド側取付孔302をそれぞれ取り付けることが好ましい。また、逆であっても良い。なお、前記サブフレームが駆動対象物であり、本発明の各ボトムやフレームに当たる。
【0053】
図7は本発明のアクチエータをベッド装置に取り付けた場合を示す模式図である。アクチエータ1を構成する筐体4の筐体側取付孔400をベッド12のメインフレーム13にピン14を用いて取り付け、駆動ロッド300の一端に設けられたロッド側取付孔302をベッド12のサブフレーム15にピン16を用いて取り付ける。本発明を構成する主要な部品である圧電素子8および押圧体9はいずれも筐体4に収納されているため、本発明による荷重検出手段を付加しても、アクチエータ1の外形寸法を大型化することはない。
【0054】
図8は、圧電素子の電圧出力の時間的変化を測定する回路の例を示す模式図である。 圧電素子8は、円板形で強誘電性セラミックなどで構成された圧電体800の表面に円板形電極801を、裏面に円板形電極802を接触させて配置したものであり、全体として薄い円板形をしている。圧電素子8を圧電素子ホルダ7に取り付ける方法としては、圧電素子外周側に接着剤を塗布して圧電素子取付面700の外周側に接着する方法が考えられる。
【0055】
圧電素子8が押圧体9による反発力で圧縮されると、圧縮力の時間微分値に応じて圧電体800内部で分極が起こり、圧電体800の表面と裏面の間で電位差が発生する。すなわち圧電体800に接触して表面に配置された円板形電極801と、圧電体800に接触して裏面に配置された円板形電極802の間に電位差が生じる。このため、円板形電極801と円板形電極802の間に図8のように導体803、導体804、電気抵抗805を接続して、電気抵抗805の両端に生ずる電位差を電圧測定器806で経時的に測定すると、圧電素子8が押圧体9から受けた圧縮力の時間微分値の大小を把握することができる。
【0056】
一方、圧電素子8が押圧体9から受けた圧縮力が開放される際にも、圧縮した際と符号が逆である電圧を生じる。この場合も、図8の電気回路において電気抵抗805の両端に生ずる電位差を電圧測定器806で経時的に測定することで検出可能である。なお、圧電素子には極性があり、圧電素子にかかる荷重変化の向きに応じて出力電圧が+側若しくは-側に出力される。
【0057】
図2に示すように、ロッド側取付孔302を通じて軸体2に軸方向の圧縮力が伝えられると、その圧縮力は止め輪204、ベアリングユニット5、クラッチユニット6の各部品を介して押圧体ホルダ901に伝達される。
【0058】
前記押圧体ホルダ901が前記軸体2の軸方向の圧縮荷重を受けると、押圧体ホルダ901は筐体4の接触面401を押し付け、筐体4や押圧体ホルダ901にひずみが生じる。このひずみの発生によって、押圧体ホルダ901に取り付けられた押圧体9が押圧体ホルダ901の微動または変形の量に応じた強さで、圧電素子8に押し付けられる。
【0059】
一般的に、圧電素子で荷重を検出する手法は、「荷重センサ」と呼ばれる、荷重の大きさに対して直線的な電気的出力を発生させるセンサを用いる手法に比べ、荷重検出の分解能や測定安定性の面で、不利であるとされている。また、圧電素子は、過度の圧縮、過度の荷重集中、表面を硬い物質でこする、などの動作で破損しやすい。
【0060】
本発明では、軸体2による荷重を金属等剛性が高い材質で製作された押圧体ホルダ901で受けることで、圧電素子8に直接軸体2による圧縮荷重がかからないよう工夫した。押圧体ホルダ901(又は筐体4)の変形を圧電素子8で検出することで、圧電素子8の破損を防ぎつつ、圧電素子8からの十分な電圧出力を得ることが可能である。
【0061】
以上のように構成した本発明のアクチエータは、圧電素子8の電圧出力の時間的変化によってベッド上の利用者挙動またはベッドの動作異常の判定が可能となる。図9に圧電素子8の電圧出力の時間的変化の一例を示す。図9(a)に示すように、ベッドの下降運転中に挟み込み障害(動作異常)が発生した場合、一時的に圧電素子8による出力電圧が上昇する。
【0062】
また、図10に示すように、ベッドが動作していない時に利用者が着床すると、一時的に圧電素子8による出力電圧が下降し、ベッドが動作していない時に利用者が離床すると、一時的に圧電素子8による出力電圧が上昇する。
【0063】
また、図11に示すように、ベッドが動作していない時に利用者が在床していると、ベッド上の利用者の心弾動に周期的な圧電素子8による出力電圧が発生する。なお、図11において、上段の波形は心電図による波形であり、下段の波形が圧電素子8による出力電圧の波形である。
【0064】
このように、本発明のアクチエータによれば、圧電素子8の電圧出力からベッド上の利用者挙動又はベッドの動作異常を判定することができる。
【産業上の利用可能性】
【0065】
本発明は、送りねじを用いた動力変換機構において、送りねじ軸にかかる動荷重を安価かつ簡素な構造で検出すること関して適用可能である。
【符号の説明】
【0066】
1 アクチエータ
2 軸体
3 移動可能なナット
4 筐体
5 ベアリングユニット
6 クラッチユニット
7 圧電素子ホルダ
8 圧電素子
9、9A、9B、9C、9D 押圧体
10 モータ
11 減速機構部
12 ベッド
13 メインフレーム
14 ピン
15 サブフレーム
16 ピン
201 クラッチ支持部
202 ベアリング支持部
203 縮径部
204 止め輪
205 セレーション加工部
206 歯車
207 雄ねじ加工部
300 駆動ロッド
301 外筒
302 ロッド側取付孔
400 筐体側取付孔
401 接触面
501 内輪
502 ボールベアリング
503 外輪
600 クラッチ
601 クラッチホルダ
602 クラッチ側摩擦材
603 ブレーキワシャ
604 ブレーキ側摩擦材
700 圧電素子取付面
701 窪み
800 圧電体
801、802 円板形電極
803、804 導体
805 電気抵抗
806 電圧測定器
900 押圧体取付部
901 プレート
902 円錐形の頂点
903 円錐形の軸に直交する面で切断された面
904 曲面
905 円筒形の端面
950 特許文献1に記載されたアクチュエータ
951 軸体
952 ねじ軸部
953 拡径部
954 第2軸受
955 第2荷重センサ
956 縮径部
957 第1荷重センサ
958 第1軸受
959 雄ねじ部
960 ロックナット
961 筐体
図1
図2
図3
図4
図5
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図10
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図12