(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024030718
(43)【公開日】2024-03-07
(54)【発明の名称】スピーカカバー、電子楽器、スピーカカバーの製造方法
(51)【国際特許分類】
H04R 1/02 20060101AFI20240229BHJP
B32B 5/26 20060101ALI20240229BHJP
B32B 7/02 20190101ALI20240229BHJP
B32B 3/10 20060101ALI20240229BHJP
G10H 1/32 20060101ALI20240229BHJP
【FI】
H04R1/02 104Z
B32B5/26
B32B7/02
B32B3/10
H04R1/02 102Z
G10H1/32 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022133792
(22)【出願日】2022-08-25
(71)【出願人】
【識別番号】000001443
【氏名又は名称】カシオ計算機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002022
【氏名又は名称】弁理士法人コスモ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中島 麻里
(72)【発明者】
【氏名】大嶋 弘志
(72)【発明者】
【氏名】今村 尚人
(72)【発明者】
【氏名】木村 勝
【テーマコード(参考)】
4F100
5D017
5D478
【Fターム(参考)】
4F100AT00A
4F100AT00B
4F100AT00D
4F100BA04
4F100BA05
4F100BA07
4F100BA10A
4F100BA10D
4F100CB00C
4F100CB00E
4F100DG12B
4F100DG13D
4F100GB41
5D017AE27
5D017AF04
5D017AF08
5D478JJ14
(57)【要約】
【課題】見栄えの良いスピーカカバーと、このスピーカカバーを備える電子楽器及びこのスピーカカバーの製造方法を提供する。
【解決手段】スピーカカバー100は、音孔116を有するスピーカカバー本体110と、スピーカカバー本体110の少なくとも一面を覆う外装部材130と、スピーカカバー本体110と外装部材130との間に配置される中間部材120であって、外装部材130より伸縮性が低い中間部材120と、中間部材120と外装部材130の間に設けられている第1接着層150と、を有する。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
音孔を有するスピーカカバー本体と、
前記スピーカカバー本体の少なくとも一面を覆う外装部材と、
前記スピーカカバー本体と前記外装部材との間に配置される中間部材であって、前記外装部材より伸縮性が低い中間部材と、
前記中間部材と前記外装部材の間に設けられている第1接着層と、
を有するスピーカカバー。
【請求項2】
前記中間部材と前記スピーカカバー本体との間には、第2接着層が設けられている、
請求項1に記載のスピーカカバー。
【請求項3】
前記中間部材は、前記スピーカカバー本体の上面に配置される、
請求項1に記載のスピーカカバー。
【請求項4】
前記スピーカカバー本体は、前記音孔を含む上面領域と、前記上面領域に隣接する側面領域とを含み、
前記中間部材は、前記上面領域に前記上面領域のサイズと略同じ又は以下のサイズで設けられ、前記側面領域には設けれておらず、
前記外装部材は、前記上面領域及び前記側面領域を覆うサイズで設けられている、
請求項1に記載のスピーカカバー。
【請求項5】
前記中間部材と前記スピーカカバー本体との間に設けられる第2接着層は、前記上面領域の全体に亘って設けられる、
請求項4に記載のスピーカカバー。
【請求項6】
前記中間部材は、織物からなり、
前記外装部材は、編物からなる、
請求項1に記載のスピーカカバー。
【請求項7】
前記中間部材の網目の大きさは、前記音孔の大きさよりも小さい、
請求項6に記載のスピーカカバー。
【請求項8】
請求項1乃至請求項7の何れかに記載のスピーカカバーと、
スピーカと、
を備える電子楽器。
【請求項9】
中間部材に第1接着剤を塗布する第1接着剤塗布工程と、
前記中間部材よりも伸縮性が高い外装部材に前記中間部材を貼り合わせる第1接着工程と、
複数の音孔を備えるスピーカカバー本体の上面に第2接着剤を塗布する第2接着剤塗布工程と、
前記第1接着工程で前記外装部材と貼り合わせた前記中間部材を前記スピーカカバー本体とを貼り合わせる第2接着工程と、
前記外装部材にテンションを掛けて前記スピーカカバー本体と接合する接合工程と、
を有するスピーカカバーの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スピーカカバー、電子楽器、スピーカカバーの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、特許文献1に示すように、スピーカに設けられるスピーカカバーには、サランネット等の外装部材が設けられている。外装部材を備えるスピーカカバーでスピーカを覆うことで、スピーカの破損や汚れが低減されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
スピーカカバーの外装部材は、テンションを掛けてスピーカカバー本体に取り付けられるように、サランネット等の伸縮性の高い素材が用いられる。これにより、皺が生じないようにスピーカカバー本体に外装部材を取り付けることができる。しかしながら、絵や文字、記号等が印刷や貼着等された外装部材をスピーカカバー本体に取り付ける場合には、外装部材にテンションを掛けることで、外装部材に設けられた絵等が歪んでしまい、スピーカカバーの見栄えが悪くなることがあった。
【0005】
本発明は、見栄えの良いスピーカカバーと、このスピーカカバーを備える電子楽器及びこのスピーカカバーの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様のスピーカカバーは、音孔を有するスピーカカバー本体と、前記スピーカカバー本体の少なくとも一面を覆う外装部材と、前記スピーカカバー本体と前記外装部材との間に配置される中間部材であって、前記外装部材より伸縮性が低い中間部材と、前記中間部材と前記外装部材の間に設けられている第1接着層と、を有する。
【0007】
本発明の一態様の電子楽器は、上述のスピーカカバーと、スピーカと、を備える。
【0008】
本発明の一態様のスピーカカバーの製造方法は、中間部材に第1接着剤を塗布する第1接着剤塗布工程と、前記中間部材よりも伸縮性が高い外装部材に前記中間部材を貼り合わせる第1接着工程と、複数の音孔を備えるスピーカカバー本体の上面に第2接着剤を塗布する第2接着剤塗布工程と、前記第1接着工程で前記外装部材と貼り合わせた前記中間部材を前記スピーカカバー本体とを貼り合わせる第2接着工程と、前記外装部材にテンションを掛けて前記スピーカカバー本体と接合する接合工程と、を有する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、見栄えの良いスピーカカバーと、このスピーカカバーを備える電子楽器及びこのスピーカカバーの製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の実施形態に係るスピーカカバーを備える電子楽器(電子鍵盤楽器)の上面図である。
【
図2】本発明の実施形態に係るスピーカカバーを備える電子楽器(電子鍵盤楽器)の分解斜視図である。
【
図3】本発明の実施形態に係るスピーカカバーの
図1のIII-III断面図である。
【
図4】本発明の実施形態に係るスピーカカバーのスピーカカバー本体を上面側から見た斜視図である。
【
図5】本発明の実施形態に係るスピーカカバーのスピーカカバー本体を下面側から見た斜視図である。
【
図6】本発明の実施形態に係るスピーカカバーの製造工程を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態を図に基づいて説明する。
図1に示す、電子楽器としての電子鍵盤楽器10は、61鍵の鍵盤11を備える。なお、以下の電子鍵盤楽器10の説明では、鍵盤11側を前、その反対側を後とし、鍵側の奏者から見た左側を左、右側を右とする。また、
図1の鍵盤11が設けられた上側を上、その反対側を下とする。
【0012】
電子鍵盤楽器10には、左右方向(鍵の配列方向)に長いケース20が設けられている。鍵盤11は、ケース20の前側に設けられている。
図2に示すように、ケース20は、上ケース20aと下ケース20bとを含む。上ケース20aは、後述する左袖ケース22L、右袖ケース22Rや後壁23を含み、略長矩形板状の下ケース20bとねじ部材等で組み合わされて固定されている。
【0013】
図1及び
図2に示すように、ケース20は、鍵盤11の後側に設けられるパネル21を備える。パネル21の上面には、回転ノブ31や、電源ボタン等の複数のボタン32を備える操作装置30が設けられている。パネル21の上面は、後方から前方に向けて下るよう傾斜して設けられている。
【0014】
また、ケース20の左側及び右側に設けられる左袖ケース22L、右袖ケース22Rは、ケース20の前後に亘って設けられている。左袖ケース22L、右袖ケース22Rの上面は、パネル21の上面と同様に、後方から前方に向けて下るよう傾斜して設けられている。
【0015】
左袖ケース22L及び右袖ケース22Rの後端は、薄い壁状の後壁23により接続されている。なお、後壁23の後面は、ケース20の背面の一部とされている。
【0016】
パネル21の左端部分の
図1のB部拡大囲み図に示すように、パネル21の左端及び右端(パネル21の右端部分もB部拡大図と同様)は、左袖ケース22L、右袖ケース22Rと若干の隙間S1を介して接続している。
【0017】
パネル21の後側におけるケース20の上面には、スピーカカバー100が設けられている。スピーカカバー100は、ケース20の後方上面に設けられる凹状のスピーカ配置領域25に設けられている。
【0018】
図2に示すように、スピーカ配置領域25は、パネル21と、左袖ケース22Lと、右袖ケース22Rと、後壁23とで画成される左右方向に長い長矩形状の凹部とされている。換言すれば、スピーカ配置領域25は、凹部とされるスピーカ配置領域25の各内側の面、すなわち、パネル21の後縁から垂下する壁面21aと、左袖ケース22Lの右側面22Laと、後壁23の前側の面である壁面23aと、右袖ケース22Rの左側面22Raと、で囲まれている。
【0019】
そして、パネル21、左袖ケース22L、右袖ケース22R、後壁23の各内側の面(壁面21a、右側面22La、壁面21a、左側面22Ra)は、スピーカカバー100の側面101と対向する対向面25a(外周壁面)とされている。対向面25aは、左右方向に長い略長矩形状の枠状となる。
図2のA部及びB部の各拡大囲み図に示すように、対向面25aとスピーカカバー100の側面101との間には、隙間S2が設けられている。
【0020】
スピーカ配置領域25の左側及び右側には、左スピーカ15L、右スピーカ15R(スピーカ15)が夫々配置されている。また、スピーカ配置領域25には、ケース20の内部から挿通される複数のねじ部材6によりスピーカカバー100を固定する複数のねじ孔26が設けられている。
【0021】
図3に示すように、スピーカカバー100は、スピーカカバー本体110と、中間部材120と、外装部材130とを含む。詳細は後述するが、外装部材130は、編物等の布製からなり、格子状の模様131(
図1及び
図2参照)を含み、スピーカカバー本体110の少なくとも一面を覆う形で設けられている。中間部材120は、スピーカカバー本体110と外装部材130との間に配置され、外装部材130よりも伸縮性が低い織物からなる部材である。本実施例では便宜上、外装部材130に表示される模様は格子状の模様131として説明するが、これに限定されず、絵や写真、文字等の記号であってもよい。
【0022】
図4及び
図5に示すように、スピーカカバー本体110は、中間部材120が配置される上面111a(上面領域)を備える上面板111と、上面板111の後及び左右の縁から下方に短く延びる縁壁112とを含む。縁壁112には、
図5のD部を拡大した囲み図に示すように、段部112bが設けられている(
図3も参照)。
【0023】
スピーカカバー本体110の上面板111は、略平坦面として左右方向に長い略長矩形板状に設けられている。上面111aは、左袖ケース22L、右袖ケース22Rの上面やパネル21の上面と同様に、後方から前方に向けて下るよう傾斜して設けられている。
【0024】
上面板111の上面111aには、後述する複数の音孔116が配置されている。また、スピーカカバー本体110の上面板111の前縁には、回転ノブ31との干渉を回避するため、回転ノブ31に対応する半円状の切欠き111eが設けられている。
【0025】
図5及び
図5のE部を拡大した囲み図に示すように、上面板111の下面111bの前縁には、下面111bの前縁に沿って、下面111bの前縁近傍に段部111cが設けられている(
図3も参照)。段部111cは、上面板111の下面111bの左端近くから右端近くに亘って設けられている。段部111cの後側には、段部111cと隣接して、段部111cに沿って凹溝111dが設けられている(
図3も参照)。
【0026】
図3及び
図4,5に示すように、スピーカカバー本体110の側面110a(側面領域)は、縁壁112の側面112aと、スピーカカバー本体110の前面110bとを含み、スピーカカバー100の側面101に対応する。側面110aは、上面111aに隣接する。具体的には、側面110aは、上面111aの縁から略垂直に設けられている。ここで、スピーカカバー本体110の前面110bは、
図4のF部を拡大した囲み図に示すように、連続して設けられる上面板111と縁壁112の各前面を含む。
【0027】
図5に示すように、上面板111の下面111bには、複数のボス113が設けられている。各ボス113には、雌ねじが設けられている。
図2に示すように、スピーカカバー100は、スピーカ配置領域25に設けられる複数のねじ孔26に下側から挿通される各ねじ部材6が各ボス113の雌ねじに螺合することでケース20に固定される。
【0028】
また、
図5に示すように、上面板111の下面111bには、ボス113間を渡すように格子状にリブ114が設けられ、左右に長いスピーカカバー本体110が補強されている。
【0029】
図3に示すように、上面板111の上面111aと縁壁112の側面112aの接続部分R1は、R面取され、角R状とされている。なお、
図3は前後方向の断面を示すが、左右に設けられる縁壁112においても同様に、上面111aと側面112aの接続部分はR面取りされ、角R状とされている。また、上面板111の上面111aと前面110bの接続部分R2は、R面取され、角R状とされている。
【0030】
図4、
図5に示すように、スピーカカバー本体110の左右には、複数の音孔116を備える音孔領域115L,115R(音孔領域115)が設けられている。本実施形態においては、音孔116は、略六角形状とされて、複数の音孔116は格子状の音孔フレーム117によりハニカム状に設けられている。
【0031】
音孔領域115L,115Rは、左右方向に長い楕円形状とされている。各音孔領域115L,115Rは、夫々、スピーカカバー100がスピーカ配置領域25に配置された際にスピーカ15(左スピーカ15L、右スピーカ15R)に対応する位置となるようスピーカカバー本体110に配置されている。
【0032】
また、音孔領域115L,115Rには、複数の音孔116を囲繞するように、上面板111の下面111bから立設するようにして、左右方向に長い略楕円形状の音孔壁118が設けられている。音孔壁118の突端は、スピーカ15(左スピーカ15L、右スピーカ15R)に近接し、スピーカ15(左スピーカ15L、右スピーカ15R)からの音を複数の音孔116に導出する。
図3に白抜きの矢印で示すように、導出されたスピーカ15からの音は、各音孔116から中間部材120、外装部材130を介して放音される。
【0033】
図6(a)に示すように、中間部材120は、左右方向に長い略長矩形板状とされ、細かい網目を備えるポリエステル等の樹脂材料からなる織物を用いて製作されるものである。中間部材120の網目の大きさは、音孔116よりも十分に小さい。中間部材120は、外装部材130よりも伸縮性が低い。中間部材120は、スピーカカバー本体110の上面板111の上面111aのサイズと略同じ又は以下のサイズであって、本実施形態においては、上面111aよりも若干小さいサイズとされている。より詳細には、
図3も参照して、中間部材120の縁は、上面板111(上面111a)の外周縁の接続部分R1,R2における角Rの手前(いわゆるRエンド)に配置されている。中間部材120は、側面110aには設けられていない。
【0034】
外装部材130は、スピーカカバー本体110の上面111a及び側面110aを覆うサイズで設けられている。外装部材130は、前述の通り、表面側となる面に格子状の模様131が印刷されたサランネットからなる部材である。本実施形態においては、模様131は、昇華印刷により外装部材130に印刷されている。なお、外装部材130は、サランネット以外の他の布製(より具体的には編物)からなるものとしてもよい。また、模様131は、格子状の模様131(絵)の他、種々の絵(図柄)や文字、記号等を、印刷の他、刺しゅうや貼り付け等により外装部材130に設けることができる。
【0035】
図3のC部を拡大した囲み図に示すように、中間部材120と外装部材130の間には、第1接着層150が設けられている。また、中間部材120とスピーカカバー本体110の間には、第2接着層160が設けられている。第1接着層150及び第2接着層160は、夫々、スピーカカバー100の製造工程において塗布される接着剤が固まってなる層であり、第1接着層150は、中間部材120と外装部材130同士を接着して固定し、第2接着層160は、中間部材120とスピーカカバー本体110同士を接着して固定する。
【0036】
スピーカカバー100の製造方法は、以下の工程を有している。
第1接着剤塗布工程;
図6(a)に示すように、中間部材120の一方面の全面に第1接着剤を塗布する。なお、ここで塗布された第1接着剤は、次工程にて外装部材130と中間部材120が接着されることにより、第1接着層150となる。
【0037】
第1接着工程;
図6(b)に示すように、中間部材120よりも伸縮性が高い外装部材130の裏面(模様131が設けられていない面)に中間部材120を貼り合わせて接着する。なお、外装部材130には、予め模様131が印刷等により設けられている。図では、表側に設けられる模様131を破線で示している。中間部材120と外装部材130の接着は、具体的には、中間部材120よりも十分に大きい大きさに切り出しておいた外装部材130に、第1接着剤塗布工程で第1接着剤を塗布した中間部材120の一方面と、外装部材130の一方面(模様131が配置されていない面、すなわち裏面)とが対向して接するように中間部材120を外装部材130上に載置して、所定の圧力を掛ける等して中間部材120と外装部材130とを接着する。
【0038】
また、第1接着工程は、接着剤の種類に応じて、所定温度で所定時間の接着剤の乾燥工程(第1接着剤乾燥工程)を含めることができる。
【0039】
第2接着剤塗布工程;第1接着工程で外装部材130と中間部材120を接着した後、複数の音孔116を備えるスピーカカバー本体110の上面111a(
図4参照)の全体に第2接着剤を塗布する。第2接着剤の塗布は、音孔領域115の上面(すなわち、音孔フレーム117の上面)を含む上面111aの全体に行う。なお、音孔領域115(音孔フレーム117の上面)は、複数の音孔116が設けられ接着強度が低下し易いため、他の個所(上面111aの平坦な部分)よりも多く(複数回)塗布すると好ましい。第2接着剤塗布工程で塗布された第2接着剤は、次の第2接着工程にて中間部材120とスピーカカバー本体110が接着されることにより、第2接着層160となる。
【0040】
第2接着工程;
図6(c)に示すように、第1接着工程で外装部材130と貼り合わせた中間部材120を、第2接着剤を塗布したスピーカカバー本体110の上面111aと貼り合わせて接着する。この貼り合わせは、中間部材120が、上面板111における所定位置、すなわち、中間部材120の縁が、上面板111の縁の角Rを越えない位置となるよう中間部材120を接着する。スピーカカバー本体110に対して中間部材120を精度よく貼り合わせるため、治具を用いることもできる。
【0041】
第2接着工程においても、接着剤の種類に応じて、所定温度で所定時間の接着剤の乾燥工程(第2接着剤乾燥工程)を含めることができる。
【0042】
接合工程;外装部材130にテンションを掛けてスピーカカバー本体110と外装部材130を接合して、
図6(d)に示すように、スピーカカバー100を完成させる。外装部材130にテンションを掛けることで、外装部材130にシワ等が発生することが低減される。外装部材130とスピーカカバー本体110の接合は、具体的には、外装部材130の縁部近傍を引っ張り、外装部材130にテンションを掛けた状態で、外装部材130の縁部近傍を、スピーカカバー本体110に溶着して接合する。より詳細には、
図3に示す段部111c,112bに外装部材130を配置した状態で、溶着装置(例えば、超音波溶着であれば振動子、熱溶着であれば熱板等)を押し当てて、段部111c,112bに外装部材130を接合する。外装部材130の余分な端は、段部112bの内側の凹状部分や凹溝111dを利用してナイフ等で切断することができる。
【0043】
以上の製造工程は、事前に模様131が設けられた外装部材130を使用したが、例えば、第1接着工程と第2接着剤塗布工程との間に下記に示す昇華印刷工程を設けることができる。
昇華印刷工程;第1接着工程で中間部材120と貼り合わせた外装部材130の印刷面(表面、中間部材120が設けられていない面)に昇華印刷を行う。昇華印刷は、転写シートを印刷面に載せて圧力及び熱を掛けて行われる。従って、第1接着工程で中間部材120と貼り合わせた外装部材130に昇華印刷を行うことで、圧力及び熱を掛けた際に外装部材130がズレにくく、よって外装部材130への印刷を好適に行うことができる。
【0044】
なお、第1接着剤塗布工程で塗布する接着剤と、第2接着材塗布工程で塗布する接着剤は、同じ接着剤を用いることができる。例えば、水溶性ボンドの接着剤であるLIGNOインドネシア製の型式;LIGNO PG 6802 B-2 EVA Baseを用いることができる。
【0045】
このように製造されるスピーカカバー100は、第1接着工程にて外装部材130と中間部材120とを接着したものをスピーカカバー本体110に貼り付けるので、接合工程において外装部材130にテンションを掛けても、伸縮性の低い中間部材120と接着された外装部材130は伸び難く、よって外装部材130に印刷した模様131が歪んでしまうことが低減されている。
【0046】
換言すれば、少なくとも外装部材130と中間部材120との間に第1接着層150が設けられていれば、外装部材130にテンションを掛けた際に、模様131が歪む等してしまうことを低減することができる。また、外装部材130に設けられる絵、文字、記号等がワンポイント等である場合には、中間部材120は、少なくとも外装部材130に設けられる絵や文字、記号等に対応した大きさであれば、上記の接合工程における絵等の歪みを低減することができる。ただしこの場合、中間部材120により外装部材130の表面に段差が生じてしまうので、中間部材120は、本実施形態のように、スピーカカバー本体110の上面111aである上面領域に対応した大きさとすると好適である。
【0047】
また、音孔領域115に対応する外装部材130は、テンションが殆ど掛からない状態であるが、中間部材120により、音孔116への落ち込み(窪み)が規制されている。すなわち、外装部材130は、テンションが掛けられていない状態においては、例えば中間部材120が無いと、音孔116に指で押し込むと窪んでしまい、元に戻らなくなってしまう。しかしながら、本実施形態におけるスピーカカバー100は、網目が音孔116よりも十分に小さい中間部材120により、指等で音孔116に外装部材130を押し込んでしまうことが規制されている。
【0048】
なお、電子鍵盤楽器10においては、スピーカカバー100が配置されるスピーカ配置領域25が、対向面25aにより略囲繞されており、対向面25aはスピーカカバー100の側面101と隙間S2を介して対向している(
図1のA部及びB部の拡大囲み図参照)。外装部材130は、一方面の略全面に模様131が設けられるため、スピーカカバー100の側面101にも模様131が設けられている。このため、スピーカカバー100の側面101は、隙間S2から僅かに見えるが、この僅かに見える部分にも格子模様が視認できるので、ユーザに違和感を与えず、良好な意匠を呈することができる。
【0049】
以上、本発明の実施形態によれば、スピーカカバー100は、音孔116を有するスピーカカバー本体110と、スピーカカバー本体110の少なくとも一面を覆う外装部材130と、スピーカカバー本体110と外装部材130との間に配置される中間部材120であって、外装部材130より伸縮性が低い中間部材120と、中間部材120と外装部材130の間に設けられている第1接着層150と、を有する。
【0050】
これにより、外装部材130をスピーカカバー本体110に固定する際に外装部材130にテンションを掛けても、模様131が歪んでしまうことが低減され、見栄えの良いスピーカカバー100を提供することができる。
【0051】
また、中間部材120とスピーカカバー本体110との間には、第2接着層160が設けられている。これにより、スピーカカバー本体110と中間部材120とが強固に固定されるので、中間部材120とスピーカカバー本体110がズレることが低減され、模様131を適正な状態で維持することができる。
【0052】
また、中間部材120は、スピーカカバー本体110の上面111aに配置される。これにより、中間部材120とスピーカカバー本体110の上面111aとを直接接着することができる。
【0053】
また、中間部材120は、少なくとも複数の音孔116を覆うサイズで設けられる。これにより、音孔116への外装部材130の落ち込みを低減することができる。
【0054】
また、スピーカカバー本体110は、音孔116を含む上面領域である上面111aと、上面領域である上面111aに隣接する側面領域である側面110aとを含み、中間部材120は、上面領域に上面領域のサイズと同じ又は以下のサイズで設けられ、側面領域には設けられておらず、外装部材130は、上面領域及び側面領域を覆うサイズで設けられる。これにより、ユーザが最も目にするスピーカカバー100の上面について、模様131が適正に配置されると共に、スピーカカバー100の側面101が僅かに見える場合でも、模様131を配置して違和感を与えないスピーカカバー100とすることができる。
【0055】
また、中間部材120とスピーカカバー本体110との間に設けられる第2接着層160は、上面111aの全面に設けられる。これにより、スピーカカバー本体110と中間部材120との固定を更に確実とすることができる。
【0056】
また、中間部材120は、織物からなり、外装部材130は、編物からなる。これにより、中間部材120、外装部材130を容易に作成することができる。
【0057】
また、中間部材120の網目の大きさは、音孔116の大きさよりも小さい。これにより、音孔116に外装部材130が入り込み、窪みが生じてしまうことを低減することができる。なお、当然のことながら、スピーカ15が発した音は、
図3の白抜きの矢印に示すように、中間部材120及び外装部材130を介して良好に外部に放音される。
【0058】
また、スピーカカバー100は、電子楽器としての電子鍵盤楽器10のスピーカ配置領域25に設けられている。スピーカ配置領域25には、スピーカ15が設けられている。これにより、スピーカカバー100に模様131等を適正に設けた見栄えの良い電子鍵盤楽器10を提供することができる。なお、本実施形態では電子鍵盤楽器10を例として示したが、他の電子楽器に本発明に係るスピーカカバーを用いても良い。
【0059】
また、スピーカカバー100の製造方法は、中間部材120に第1接着剤を塗布する第1接着剤塗布工程と、外装部材130に中間部材120を貼り合わせる第1接着工程と、スピーカカバー本体110の上面111aに第2接着剤を塗布する第2接着剤塗布工程と、外装部材130に貼り付けた中間部材120をスピーカカバー本体110に貼り合わせる第2接着工程と、外装部材130にテンションを掛けてスピーカカバー本体110と外装部材130を接合する接合工程と、を有する。これにより、外装部材130にテンションを掛けても、模様131の歪み等が低減された、見栄えの良いスピーカカバー100の製造方法を提供することができる。
【0060】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これらの新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これらの実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0061】
6 ねじ部材 10 電子鍵盤楽器
11 鍵盤 15 スピーカ
15L 左スピーカ 15R 右スピーカ
20 ケース 20a 上ケース
20b 下ケース 21 パネル
21a 壁面 22L 左袖ケース
22La 右側面 22R 右袖ケース
22Ra 左側面 23 後壁
23a 壁面 25 スピーカ配置領域
25a 対向面 26 ねじ孔
30 操作装置 31 回転ノブ
32 ボタン 100 スピーカカバー
101 側面 110 スピーカカバー本体
110a 側面 110b 前面
111 上面板 111a 上面
111b 下面 111c 段部
111d 凹溝 111e 切欠き
112 縁壁 112a 側面
112b 段部 113 ボス
114 リブ 115 音孔領域
115L 音孔領域 115R 音孔領域
116 音孔 117 音孔フレーム
118 音孔壁 120 中間部材
130 外装部材 131 模様
150 第1接着層 160 第2接着層
R1,R2 接続部分
S1,S2 隙間