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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024030728
(43)【公開日】2024-03-07
(54)【発明の名称】法面作業車及び法面の工事方法
(51)【国際特許分類】
   E02F 5/00 20060101AFI20240229BHJP
   E02F 3/43 20060101ALI20240229BHJP
   E02F 9/26 20060101ALI20240229BHJP
   E02F 9/20 20060101ALI20240229BHJP
【FI】
E02F5/00 Z
E02F3/43 A
E02F9/26 B
E02F9/20 N
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022133807
(22)【出願日】2022-08-25
(71)【出願人】
【識別番号】390040073
【氏名又は名称】岡本 俊仁
(74)【代理人】
【識別番号】100080838
【弁理士】
【氏名又は名称】三浦 光康
(74)【代理人】
【識別番号】100194261
【弁理士】
【氏名又は名称】栢原 崇行
(72)【発明者】
【氏名】岡本 俊仁
【テーマコード(参考)】
2D003
2D015
【Fターム(参考)】
2D003AA01
2D003AB04
2D003AC06
2D003BA02
2D003BA04
2D003BA06
2D003BB09
2D003BB11
2D003CA02
2D003DA02
2D003DA04
2D003DB04
2D003DB05
2D003FA02
2D015HA03
2D015HB04
2D015HB05
(57)【要約】
【課題】 法面を掘削しすぎることを確実に防止して効率よく作業ができるとともに、作業員の技能を向上させることができる法面作業車を提供することを目的としている。
【解決手段】法面上を走行して作業を行うことができる法面作業車であって、作業車本体と、前記作業車本体に設けられた走行装置と、前記作業車本体に設けられた左右のウインチと、前記作業車本体に旋回可能に設けられ、前記法面を工事する爪を有するバケットを備える油圧ショベルと、前記法面の工事後の仮想法面を設定する仮想法面演算手段と、前記バケットの爪の位置を検知する検知手段と、前記爪が前記仮想法面演算手段で設定した前記工事後の仮想法面よりも山側へ侵入しないように制御する制御装置とで構成され、前記仮想法面演算手段は、法面上部の2点の座標を取得し、この2点の座標に角度及び方向を指定することにより前記工事後の仮想法面を設定することを特徴とする。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
法面上を走行して作業を行うことができる法面作業車であって、
作業車本体と、前記作業車本体に設けられた走行装置と、前記作業車本体に設けられた左右のウインチと、前記作業車本体に旋回可能に設けられ、前記法面を工事するアタッチメントを備える油圧ショベルと、前記法面の工事後の仮想法面を演算する仮想法面演算手段と、前記アタッチメントの先端部の位置を検知する検知手段と、前記アタッチメントの先端部が前記仮想法面演算手段で演算した前記工事後の仮想法面を超えないように制御する制御装置とで構成され、
前記仮想法面演算手段は、前記法面の2点の座標を取得し、この2点の座標に角度及び方向を指定することにより前記工事後の仮想法面を演算する法面作業車。
【請求項2】
前記作業車本体には少なくとも前記油圧ショベルを操縦可能な操縦席が設けられ、前記操縦席には前記工事後の仮想法面が表示されるとともに、前記アタッチメントの先端部の位置が表示される表示装置が設けられていることを特徴とする請求項1に記載の法面作業車。
【請求項3】
前記作業車本体には、外部から操縦信号を送信することでリモートコントロール可能なリモート操縦手段を備えることを特徴とする請求項1に記載の法面作業車。
【請求項4】
前記リモート操縦手段は、前記作業車本体に設けられ、操縦信号を受信可能な受信機と、前記受信機に外部から操縦信号を送信可能な送信機とで構成され、前記送信機又は送信機の近傍には前記工事後の仮想法面が表示されるとともに、前記アタッチメントの先端の位置が表示される表示装置を備えることを特徴とする請求項3に記載の法面作業車。
【請求項5】
前記制御装置は、前記アタッチメントの先端部の位置が前記工事後の仮想法面に所定の距離まで接近すると、アタッチメントの動きが遅くなるように制御することを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の法面作業車。
【請求項6】
法面の2点の座標を取得し、この2点の座標に角度及び方向を指定することにより前記工事後の仮想法面を演算する仮想法面演算工程と、法面作業車を所定の作業位置へ移動させる移動工程と、前記法面作業車のアタッチメントの先端部の位置を検知するとともに、前記アタッチメントの先端部が前記仮想法面演算工程で演算した前記工事後の仮想法面よりも山側へ侵入しないように制御しながら前記法面を工事する法面工事工程とで構成され、前記法面作業車は、作業車本体と、前記作業車本体に設けられた走行装置と、前記作業車本体に設けられた左右のウインチと、前記作業車本体に旋回可能に設けられ、前記法面を工事するアタッチメントを備える油圧ショベルと、前記法面の工事後の仮想法面の形状を演算する仮想法面演算手段と、前記アタッチメントの先端部の位置を検知する検知手段と、前記アタッチメントの先端部が前記仮想法面演算手段で演算した前記工事後の仮想法面を超えないように制御する制御装置を備える法面の工事方法。
【請求項7】
法面工事工程では、前記法面作業車を操縦する作業員に対して前記工事後の仮想法面が表示されるとともに、前記アタッチメントの先端部の位置が表示されることを特徴とする請求項6に記載の法面の工事方法。
【請求項8】
前記制御装置は、前記アタッチメントの先端部の位置が前記工事後の仮想法面に所定の距離まで接近すると、前記アタッチメントの動きが遅くなるように制御することを特徴とする請求項6又は請求項7のいずれかに記載の法面の工事方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は法面を移動して削孔等の作業を行う法面作業車及びこの法面作業車を用いた法面の工事方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、法面において、ウインチのワイヤーで牽吊されて法面等を走行し、法面において作業を行う法面作業車としては、「急傾斜地や法面を自走行する走行装置が設置され、かつ水平方向に回動することができるベース板を備える車体と、この車体のベース板の後部寄りの部位に、該ベース板が傾斜状態となっても自重によって水平状態を保つ、あるいは駆動装置で水平状態を保つことができる支持具を介して取付けられたエンジンと、このエンジンの駆動によって駆動される油圧ポンプと、前記ベース板の前方部位に前後方向に回動できるように支持台を介して取付けられた作業台と、この作業台を前後方向に回動させる油圧シリンダーを用いた作業台回動装置と、前記作業台に取付けられた油圧で作動する作業機械と、前記油圧ポンプへ作動油を供給ホースを介して供給する、前記ベース板に取付けられた作動油が収納された作動油タンクと、前記油圧ポンプからの加圧された作動油を前記車体の走行装置、前記作業台回動装置および前記作業機械へ供給する油圧駆動装置とからなることを特徴とする法面作業車」が知られている(特許文献1)。
【0003】
しかし、上記構成の法面作業車を用いた場合、急斜面であっても作業することができるものの、法面を削りすぎてしまうおそれがあった。また、法面を掘削しすぎてしまった場合、平らな面と異なり埋め戻しても法面の強度までは修復できないため、法面を掘削しすぎることを危惧し少しずつ法面を掘削することになり効率的に作業することができなかった。また、どこまで法面を掘削するかは作業員の経験に基づいて行われるため、効率よく技能を向上させることが困難であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2013-119739号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は以上のような従来の欠点に鑑み、法面を掘削しすぎることを確実に防止し、これにより効率よく作業ができるとともに、作業員の技能を向上させることができる法面作業車及びこの法面作業車を用いた法面の工事方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明の請求項1に記載の法面作業車は、法面上を走行して作業を行うことができる法面作業車であって、作業車本体と、前記作業車本体に設けられた走行装置と、前記作業車本体に設けられた左右のウインチと、前記作業車本体に旋回可能に設けられ、前記法面を工事するアタッチメントを備える油圧ショベルと、前記法面の工事後の仮想法面を演算する仮想法面演算手段と、前記アタッチメントの先端部の位置を検知する検知手段と、前記アタッチメントの先端部が前記仮想法面演算手段で演算した前記工事後の仮想法面を超えないように制御する制御装置とで構成され、前記仮想法面演算手段は、前記法面の2点の座標を取得し、この2点の座標に角度及び方向を指定することにより前記工事後の仮想法面を演算することを特徴とする。
【0007】
請求項2に記載の法面作業車の前記作業車本体には少なくとも前記油圧ショベルを操縦可能な操縦席が設けられ、前記操縦席には前記工事後の仮想法面が仮想平面として表示されるとともに、前記アタッチメントの先端部の位置が表示される表示装置が設けられていることを特徴とする。
【0008】
請求項3に記載の法面作業車の前記作業車本体には、外部から操縦信号を送信することでリモートコントロール可能なリモート操縦手段を備えることを特徴とする。
請求項4に記載の法面作業車の前記リモート操縦手段は、前記作業車本体に設けられ、操縦信号を受信可能な受信機と、前記受信機に外部から操縦信号を送信可能な送信機とで構成され、前記送信機又は送信機の近傍には前記工事後の法面が仮想平面として表示されるとともに、前記アタッチメントの先端の位置が表示される表示装置を備えることを特徴とする。
【0009】
請求項5に記載の法面作業車の前記制御装置は、前記アタッチメントの先端部の位置が前記工事後の仮想法面に所定の距離まで接近すると、アタッチメントの動きが遅くなるように制御することを特徴とする。
【0010】
請求項6に記載の法面の工事方法は、法面の2点の座標を取得し、この2点の座標に角度及び方向を指定することにより前記工事後の仮想法面を演算する仮想法面演算工程と、法面作業車を所定の作業位置へ移動させる移動工程と、前記法面作業車のアタッチメントの先端部の位置を検知するとともに、前記アタッチメントの先端部が前記仮想法面演算工程で演算した前記工事後の仮想法面よりも山側へ侵入しないように制御しながら前記法面を工事する法面工事工程とで構成され、前記法面作業車は、作業車本体と、前記作業車本体に設けられた走行装置と、前記作業車本体に設けられた左右のウインチと、前記作業車本体に旋回可能に設けられ、前記法面を工事するアタッチメントを備える油圧ショベルと、前記法面の工事後の仮想法面の形状を演算する仮想法面演算手段と、前記アタッチメントの先端部の位置を検知する検知手段と、前記アタッチメントの先端部が前記仮想法面演算手段で演算した前記工事後の仮想法面を超えないように制御する制御装置を備えることを特徴とする。
【0011】
請求項7に記載の法面の工事方法の法面工事工程では、前記法面作業車を操縦する作業員に対して前記工事後の法面が仮想平面として表示されるとともに、前記アタッチメントの先端部の位置が表示されることを特徴とする。
請求項8に記載の法面の工事方法の前記制御装置は、前記アタッチメントの先端部の位置が前記工事後の仮想法面に所定の距離まで接近すると、前記アタッチメントの動きが遅くなるように制御することを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
以上の説明から明らかなように、本発明にあっては次に列挙する効果が得られる。
(1)請求項1及び請求項6に記載の各発明においては、仮想法面を演算によって設定し、その仮想法面を超えないように制御装置で制御するので、法面を削りすぎることを確実に防止することができる。
(2)制御装置が仮想法面を超えないようにアタッチメント等を制御するため、作業員が失敗することなく工事することができるとともに、作業員の能力向上をサポートすることができる。
(3)また、制御装置が仮想法面を超えないようにアタッチメント等を制御することにより、仮想法面付近まで一気に掘削作業等を行うことができるので、効率的に作業することができる。
(4)請求項2、請求項4及び請求項7に記載の各発明においては、前記(1)~(3)と同様な効果が得られるとともに、作業員が仮想法面とアタッチメントの位置関係を表示装置で確認しながら作業することができる。したがって、より効率よく、かつ確実に法面での工事(作業)を行うことができる。
(5)請求項3に記載の発明においては、前記(1)~(4)と同様な効果が得られるとともに、リモートで作業を行うので、作業員が法面作業車に乗って作業を行うことが困難な場所においても工事等をすることができる。
(6)請求項5及び請求項8に記載の各発明においては、前記(1)~(5)と同様な効果が得られるとともに、アタッチメントの先端部の位置が前記工事後の仮想法面に所定の距離まで接近すると、前記アタッチメントの動きが遅くなるように制御することで、操縦している作業員に仮想法面とアタッチメントの先端部の位置関係を体感的に学習させることができるため、作業員の技能向上をよりサポートすることができる
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1乃至図6は本発明の第1の実施形態を示す説明図である。
図7乃至図10は本発明の第2の実施形態示す説明図である。
図1】第1の実施形態の法面作業車の側面図。
図2】法面作業車の平面図。
図3】法面作業車の概要ブロック図。
図4】第1の実施形態の法面の工事方法の工程図
図5】法面上の作業位置に位置した状態の平面図。
図6】法面上の作業位置に位置した状態の側面図。
図7】第2の実施形態の法面作業車の側面図。
図8】法面作業車の平面図。
図9】法面作業車の概要ブロック図。
図10】第2の実施形態の法面の工事方法の工程図
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面に示す本発明を実施するための形態により、本発明を詳細に説明する。なお、左右方向とは図2(平面視)における左右方向であり、また前後方向とは図2(平面視)における上下方向(上方が前、下方が後)、をいう。
【0015】
図1乃至図6に示す本発明を実施するための第1の形態において、1は主に少なくとも40度以上の急斜面状の法面2で作業可能な法面作業車である。
【0016】
具体的には、法面作業車1は、例えば図2に示すように、作業車本体3と、前記作業車本体3に設けられた左右一対の走行装置4と、前記作業車本体3の後側に設けられた左右一対のウインチ5と、前記作業車本体3に前記ウインチよりも前方側に旋回可能に設けられ、先端部側に前記法面2を工事するアタッチメント6を備える油圧ショベル7と、前記法面2の工事後の仮想法面2aを演算する仮想法面演算手段8と、前記アタッチメント6の先端部6aの位置を検知する検知手段9と、前記アタッチメント6の先端部6aが前記仮想法面演算手段8で演算した前記工事後の仮想法面2aよりも山側へ侵入しないように制御する制御装置10とで構成されている。
【0017】
作業車本体3は、図1で示すように、その底部に走行装置4を備えており、本実施形態では、図2で示すように、走行装置4には、例えば左右一対の無限軌道4が用いられている。なお、前記無限軌道4に代えてタイヤを走行装置4として用いてもよい。
【0018】
図2を基準にすると、作業車本体3の左右方向の側部には、それぞれ前記左右のウインチ5及び左右のワイヤーフェアリーダー11が設けられている。ワイヤーフェアリーダー11のワイヤー誘導口11aは、作業車本体3の前方部に設けられており、左右一対のウインチ5を介してワイヤーフェアリーダー11の後方側からそれぞれ導入したワイヤー12を作業車本体3の前方側へワイヤー誘導口11aから誘導する。このワイヤー誘導口11aから誘導されたワイヤー12を法面2の上部の主アンカー13に固定してウインチ5を巻き上げることにより、平坦面や緩斜面だけでなく急角度の法面2であっても走行することができる。
【0019】
本発明では急角度の法面としては傾斜が40度以上の急斜面状の法面を想定しているが、例えば略垂直の壁面のような法面2であっても2つのウインチ5に接続されたワイヤー12で支持することにより作業車本体3を法面2の任意の位置に位置させ、作業することができる。
【0020】
油圧ショベル7は、作業車本体3の上部に設けられており、本実施形態では、法面においても前記油圧ショベル7を略水平にすることができる角度調節手段14を介して前記作業車本体に設けられている。角度調節手段14は、作業車本体3の支持台15に一端部が枢支ピン16を介して、他端部が上下方向に回動可能に取付けられたベース板17と、前記ベース板17の後部側に設けられベース板17を、枢支ピン16を支点に上下方向に回動させる油圧シリンダー18及びパンタグラフ19とで構成されている。
【0021】
油圧ショベル7は、このベース板17上に旋回機構20を介して略水平方向に旋回可能に設けられた操縦席21と、この操縦席21の前端部に取付けられた駆動アーム22と、この駆動アーム22の先端部に着脱可能に取付けられた作業アタッチメント6としてのバケットやブレーカー等を備えている。なお、アタッチメントの先端部とは、バケットを用いる場合にはバケットの爪をいい、ブレーカーを用いる場合にはブレーカーの先端部(下端部)をいう。すなわち、法面2を直接加工する部位をアタッチメント6の先端部6aとしている。本実施形態ではアタッチメント6としてバケット6を用いている。
【0022】
ところで、走行装置4、ウインチ5、油圧ショベル7等はそれぞれ油圧ポンプ23により駆動している。この油圧ポンプ23等を作動させるためのエンジン24は、作業車本体3の後方に回転可能に設けられている。このようにエンジン24を設けることにより、法面2を移動する場合であっても、エンジン24は重力によって常時略水平状態を維持することができ、エンジン24の焼付き等を防止することができる。
【0023】
油圧ショベル7の駆動アーム22やバケット6は、油圧ポンプ23に接続された油圧ショベル用の油圧アクチュエータ25と、この油圧アクチュエータ25を制御する制御装置10とでその動きが制御されている。
【0024】
仮想法面演算手段8は、図3で示すように、作業車本体3に搭載された又は作業車本体3と有線もしくは無線で接続された演算端末26と、前記演算端末26に設けられた演算装置や演算ソフトウェア等の演算部27とで構成されている。この演算部27は法面上の2点(2箇所)の座標、面の角度及び方向を入力することで工事後の仮想法面2aの形状を演算し、演算端末26と有線又は無線で接続された表示装置28に演算結果である仮想法面2aの情報を送信し、前記表示装置28に演算結果を表示する。例えば演算端末が作業車本体3の外部に設けられている場合には、演算端末26の演算部27で演算した結果は、インターネットを含むネットワーク、短距離無線通信等の通信手段を利用して表示装置28に送信される。なお、前記演算結果は、作業車本体3に設けた記憶部や作業員が所持する携帯端末を含む記憶媒体に記憶させることができるが、通信手段としてネットワークを利用した場合には前記演算結果をクラウドに記憶させることもできる。
【0025】
この演算端末26が仮想法面2aを演算する方法としては、例えば、法面2上部の主アンカー13付近に所定間隔を隔てて2点の座標をGPSやトータルステーション、測量等により取得し、この2点の座標を結ぶ線に対して方向と角度(下向45度、下向き70度の角度等)を指定することで前記工事後の仮想法面2aを演算する。
【0026】
本実施形態では、前記操縦席21に工事後の仮想法面2aが仮想平面として表示されるとともに、前記アタッチメント6の先端部6aの位置が表示される表示装置28や走行装置4やウインチ5を操作する走行装置操作手段4a、ウインチ操作手段5a及び油圧ショベル7の駆動アーム22やアタッチメント6を操作する油圧ショベル操作手段7aが設けられている。この表示装置28は仮想法面演算手段8で演算された工事後の仮想法面2aの情報を演算端末26から受信し、その情報に基づいて仮想法面2aを仮想平面として表示する。
【0027】
また、この仮想法面2aの情報は制御装置10にも伝達され、制御装置10はトータルステーションやGPS等の検知手段9により取得したアタッチメント6の先端部6a(バケット6の爪6a)の位置も取得し、このアタッチメント6の先端部6aが前記仮想法面2aよりも山側へ移動しないように制御する。このようにアタッチメント6の先端部6aの位置が仮想法面2aを超えない(仮想法面2aよりも山側へ移動しない)ように制御することで、法面2を削りすぎることを確実に防止することができる。
【0028】
ところで、本実施形態では、仮想法面2aとは、地山掘削等により法面2の油圧ショベル7による工事が完了した後の法面2を想定した形状(地形)をいうが、例えば、これ以上山側に法面2を掘削してはいけないというリミットとして仮想法面2aを演算してもよい。
【0029】
この制御装置10は、仮想法面2aにアタッチメント6の先端部6aが接近した際に急停止するようにアタッチメント6を制御しても良いが、本実施形態では、アタッチメントの先端部の位置が前記工事後の仮想法面に所定の距離まで接近すると、油圧アクチュエータ25へ流入するオイルの量を調整してアタッチメントの動きが遅くなるように制御することが望ましい。このように制御することで、操縦している作業員に仮想法面2aとアタッチメント6の先端部6aの位置関係を体感的に学習させることができるため、作業員の技能向上もサポートすることができる。
【0030】
このような法面作業車1を用いた法面の工事方法29としては、法面2の2点の座標を取得し、この2点の座標に角度及び方向を指定することにより前記工事後の仮想法面2aを演算する仮想法面演算工程30と、法面作業車1を所定の作業位置へ移動させる移動工程31と、前記法面作業車1のアタッチメント6の先端部6aの位置を検知するとともに、前記アタッチメント6の先端部6aが前記仮想法面演算工程30で演算した前記工事後の仮想法面2aよりも山側へ侵入しないように制御しながら前記法面2を工事する法面工事工程32とで構成されている。
【0031】
仮想法面演算工程30では、演算端末26に設けられた演算部27に法面上の2点の座標、面の角度及び方向を入力することで工事後の仮想法面2aを演算し、演算端末26と有線又は無線で接続された表示装置28に演算結果である仮想法面2aの情報を送信する。
【0032】
移動工程31は、作業員が操縦席21に乗り込み、ウインチ操作手段5a及び走行装置操作手段4aを操作してウインチ5や走行装置4を稼働させ、所定の作業位置に法面作業車1を移動する。ワイヤー12を略逆ハ字状に主アンカー13に取り付けることにより、走行装置4が使用できないような急斜面であっても、左右のウインチ5を操作することで、適宜、任意の位置に移動させることができる。なお、仮想法面演算工程30と移動工程31はどちらを先に行っても良い。
【0033】
法面工事工程32では、法面上で油圧ショベル操作手段7aを操作して油圧ショベル7の駆動アーム22やアタッチメント6を稼働させて作業を行う。この時、作業員に対しては操縦席21に設けられた表示装置28に実際の地形、仮想法面2aトータルステーションやGPS等により測定されたアタッチメント6の先端部6aが表示され、作業員はその表示を確認しながら掘削工事等の作業を行う。すなわち、いわゆる一般的なマシンガイダンスで表示される情報に加え、更に仮想法面2aを作業員に対して表示装置28にて表示して作業を行う。
【0034】
作業員がアタッチメント6の先端部6aが仮想法面2aを超えるような操作を行い、アタッチメント6が仮想法面2aに所定の距離まで接近した場合には、アタッチメント6の動きが遅くなるように制御装置10によりアタッチメント6が制御され、仮想法面2aをアタッチメント6の先端部が超えないようにアタッチメントを停止させる。
【0035】
[発明を実施するための異なる形態]
次に、図7乃至図10に示す本発明を実施するための異なる形態につき説明する。なお、この異なる実施形態の説明に当って、前記第1の実施形態と同一構成部分には同一符号を付して重複する説明を省略する。
【0036】
図7乃至図10に示す本発明を実施するための第2の形態において、前記本発明を実施するための第1の形態と主に異なる点は、操縦席21を有しない作業車本体3Aとするとともに、外部から操縦信号を送信することでリモートコントロール可能なリモート操縦手段33を備える法面作業車1Aにし、このような法面作業車1Aを用いて移動工程31Aや法面工事工程32Aを行う法面の工事方法29Aにした点で、このような法面作業車1Aや法面の工事方法29Aにしても、前記本発明を実施するための第1の形態と同様な作用効果が得られるとともに、リモートコントロールにより操作できるため、安全上作業員が乗り込むことができないような危険な場所であっても、工事を行うことができる。
【0037】
リモート操縦手段33は、作業車本体3Aに設けられ、操縦信号を受信可能な受信機34と、前記受信機34に外部から操縦信号を送信可能な送信機35とで構成されている。
【0038】
本実施形態の移動工程31Aでは、法面作業車1Aの外部から送信機35の走行装置操作手段4a、ウインチ操作手段5aを操作してウインチ5や走行装置4を操作し、法面作業車1Aを所定の位置へ移動させる。
【0039】
その後、送信機35の油圧ショベル操作手段7aを操作して駆動アーム22やアタッチメント6を操作し、法面工事工程32Aを行う。
【0040】
ところで、本実施形態では、この送信機35に表示装置28が設けられており、この表示装置28の表示を用いて法面作業車1Aを操縦する作業員に対して仮想法面2aやアタッチメント6の先端部6aの位置を表示し、作業員はその表示を確認しながら外部から作業員が送信機35を操作する。なお、送信機35ではなく送信機35の近傍、例えば送信機35を操作する作業員が視認できる場所に設置したモニター等の表示装置28を設けて仮想法面2a等を表示しても良い。
【0041】
なお、本発明の実施形態では表示装置を備えるものについて説明したが、アタッチメントの先端部が仮想法面を超えないように制御できればよく、必ずしも表示装置を備えなくてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0042】
本発明はウインチのワイヤーで牽吊されて法面等の急斜面の傾斜地で各種の作業を行なう場合に使用される法面作業車を製造する産業で利用される。
【符号の説明】
【0043】
1、1A:法面作業車、 2:法面、
3:作業車本体、 4:走行装置、
5:ウインチ、 6:アタッチメント、
7:油圧ショベル、 8:仮想法面演算手段、
9:検知手段、 10:制御装置、
11:ワイヤーフェアリーダー、 12:ワイヤー、
13:主アンカー、 14:角度調節手段、
15:支持台、 16:枢支ピン、
17:ベース板、 18:油圧シリンダー、
19:パンタグラフ、 20:旋回機構、
21:操縦席、 22:駆動アーム、
23:油圧ポンプ排土板、 24:エンジン、
25:油圧アクチュエータ、 26:演算端末、
27:演算装置、 28:表示装置、
29、29A:法面の工事方法、 30:仮想法面演算工程、
31、31A:移動工程、 32、32A:法面工事工程
33:リモート操縦手段、 34:受信機、
35:送信機。
図1
図2
図3
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図8
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図10