(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024030732
(43)【公開日】2024-03-07
(54)【発明の名称】作業機械の表示端末の支持装置
(51)【国際特許分類】
E01C 19/26 20060101AFI20240229BHJP
F16M 11/04 20060101ALI20240229BHJP
F16M 13/00 20060101ALI20240229BHJP
F16M 13/02 20060101ALI20240229BHJP
【FI】
E01C19/26
F16M11/04 L
F16M13/00 N
F16M13/02 U
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022133814
(22)【出願日】2022-08-25
(71)【出願人】
【識別番号】000005522
【氏名又は名称】日立建機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002664
【氏名又は名称】弁理士法人相原国際知財事務所
(72)【発明者】
【氏名】阿部 祐斗
(72)【発明者】
【氏名】切田 勝之
(72)【発明者】
【氏名】長谷部 貴尚
【テーマコード(参考)】
2D052
【Fターム(参考)】
2D052BB03
2D052BB05
2D052CA03
2D052CA07
(57)【要約】
【課題】作業機械に対して着脱可能な表示端末の安定保持と着脱容易性との双方を実現することができる、作業機械の表示端末の支持装置を提供する。
【解決手段】作業機械の表示端末(20)の支持装置(30)は、作業機械の運転室(8)に取り付けられるブラケット(36)と、表示端末(20)の背面(20b)に取り付けられる保持部材(34)と、からなり、保持部材(34)は、ブラケット(32)に着脱可能に形成された筒状部(42)を有し、ブラケット(32)は、上方から下方に向かって保持部材(34)の筒状部(42)を挿通可能に延設された挿通部(38)を有し、ブラケット(32)の挿通部(38)は、保持部材(34)の筒状部(42)に挿通された状態で、筒状部(42)の内周面(42a)に当接して保持部材(34)を係止し、筒状部(42)が下方に位置するほど、保持部材(34)を係止する力が大きくなる形状に形成されている。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
作業機械の運転室内に設置する表示端末の支持装置であって、
前記支持装置は、
前記運転室に取り付けられるブラケットと、
前記表示端末の表示画面と反対側となる前記表示端末の背面に取り付けられる保持部材と、
からなり、
前記保持部材は、前記ブラケットに着脱可能に形成された筒状部を有し、
前記ブラケットは、上方から下方に向かって前記保持部材の前記筒状部を挿通可能に延設された挿通部を有し、
前記ブラケットの前記挿通部は、前記保持部材の前記筒状部に挿通された状態で、前記筒状部の内周面に当接して前記保持部材を係止し、前記筒状部が下方に位置するほど、前記保持部材を係止する力が大きくなる形状に形成されている、ことを特徴とする作業機械の表示端末の支持装置。
【請求項2】
前記ブラケットの前記挿通部の上部には、前記挿通部が前記保持部材の前記筒状部を係止している状態において、前記表示端末の前記背面と離間する方向に傾斜するストッパ部が設けられている、ことを特徴とする請求項1に記載の作業機械の表示端末の支持装置。
【請求項3】
前記ブラケットの前記挿通部は、前記表示端末の前記表示画面に直交する方向における前記挿通部の幅を下部から上部に亘って徐々に減じた傾斜外縁を有する、ことを特徴とする請求項2に記載の作業機械の表示端末の支持装置。
【請求項4】
前記ブラケットの前記挿通部は、前記挿通部が前記保持部材の前記筒状部を係止している状態において、前記筒状部の前記内周面に向けて突設されるリブを有し、
前記リブの突設方向における端縁は、前記筒状部の前記内周面に当接する前記傾斜外縁である、ことを特徴とする請求項3に記載の作業機械の表示端末の支持装置。
【請求項5】
前記ブラケットは、前記挿通部が前記保持部材の前記筒状部を係止している状態において、前記表示端末の前記背面に対向する対向面を有し、
前記対向面は、水平方向に対して90度未満の傾斜角で形成されている、ことを特徴とする請求項1に記載の作業機械の表示端末の支持装置。
【請求項6】
前記ブラケットは、前記挿通部が前記保持部材の前記筒状部を係止している状態において、前記表示端末の下端部が嵌め込まれることにより前記表示端末を支持する受け部を有し、
前記受け部は、前記表示端末の下端部が嵌め込まれた状態において、前記表示画面と離間する方向に傾斜する傾斜面部を有する、ことを特徴とする請求項1に記載の作業機械の表示端末の支持装置。
【請求項7】
前記ブラケットの前記受け部の前記傾斜面部には、弾性部材が取り付けられている、ことを特徴とする請求項6に記載の作業機械の表示端末の支持装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、作業機械の表示端末の支持装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、建設現場の生産性向上を目的とし、測量、設計、施工、管理に至るプロセスにおいて、ICT(Information and Communication Technology:情報通信技術)施工情報を活用する取り組みの促進が図られている。例えば、特許文献1においては、転圧機械に備えられた加速度センサ及びGPS受信機などからの情報に基づいて、転圧機械が締固めた場所や、締固め度を表示装置にリアルタイムに表示することにより、施工管理が行われる。
【0003】
また、特許文献2においては、転圧機械に備えられたGNSS(Global Navigation Satellite System)アンテナからの情報に基づいて、転圧機械の走行履歴をマッピングし、転圧機械の転圧箇所や転圧回数が記録、管理される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2021-67037号公報
【特許文献2】特許第6685259号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
転圧機械などの作業機械において、ICT施工情報を表示及び設定するためのタブレット端末などの表示端末が支持装置を介してオペレータが搭乗する運転室内に設置されることがある。表示端末は、運転室内で使用しないときには運転室から持ち出し、現場事務所で保管する。また、表示端末は、運転室から持ち出した状態で作業機械の位置情報の精度を確認する作業などが定期的に行われる。
【0006】
表示端末は、頻繁に運転室から持ち出されるため、表示端末の支持装置は、表示端末を容易に着脱可能な構造が求められている。しかしながら、着脱容易な支持装置で支持された表示端末は、作業機械が悪路を走行し、作業を行うことにより、振動や衝撃を受け、支持状態にガタつきが生じ易く、また、表示端末が支持装置から外れて落下するおそれがある。
【0007】
本発明は、このような課題に鑑みてなされたもので、作業機械に対して着脱可能な表示端末の安定保持と着脱容易性との双方を実現することができる、作業機械の表示端末の支持装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するべく、本発明の作業機械の表示端末の支持装置は、作業機械の運転室内に設置され、運転室に取り付けられるブラケットと、表示端末の表示画面と反対側となる表示端末の背面に取り付けられる保持部材と、からなり、保持部材は、ブラケットに着脱可能に形成された筒状部を有し、ブラケットは、上方から下方に向かって保持部材の筒状部を挿通可能に延設された挿通部を有し、ブラケットの挿通部は、保持部材の筒状部に挿通された状態で、筒状部の内周面に当接して保持部材を係止し、筒状部が下方に位置するほど、保持部材を係止する力が大きくなる形状に形成されている。
【発明の効果】
【0009】
本発明の作業機械の表示端末の支持装置によれば、作業機械に対して着脱可能な表示端末の安定保持と着脱容易性との双方を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図3】支持装置で支持した表示端末をその表示画面から見た斜視図である。
【
図4】支持装置で支持した表示端末をその背面から見た斜視図である。
【
図5】タブレットホルダ及びブラケットの斜視図である。
【
図6】タブレットホルダ及びブラケットを挿通部の背面からから見た斜視図である。
【
図7】タブレットホルダ及びブラケットの側面図である。
【
図9】支持装置で支持した表示端末の側面図である。
【
図10】
図9において表示端末を上方に移動したときの側面図である。
【
図11】
図10において表示端末をさらに上方に移動したときの側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の一実施形態に係る作業機械の表示端末の支持装置について図面を参照して説明する。
図1は作業機械の側面図を示す。作業機械は、機体1に、フロントフレーム2、リアフレーム4、駆動装置6、運転室8、転圧ローラ10及び駆動輪12を備えたアーティキュレート式の転圧機械(土工用振動ローラ)である。機体1は、駆動輪12を駆動することで前後進しつつ、転圧ローラ10を用いて地面を締固めることが可能である。
【0012】
フロントフレーム2は、機体1の前部に配設された左右一対の骨格部材である。フロントフレーム2には、金属製の円筒状に形成された転圧ローラ10が備えられている。また、フロントフレーム2は、回動支持体14を介してリアフレーム4に回動可能に取付けられている。回動支持体14には、アーティキュレート機構を作動させるステアリングシリンダ16が取り付けられている。
【0013】
駆動装置6には、例えばエンジンやHST(Hydraulic Static Transmission)が備えられており、駆動輪12を駆動することが可能である。また、エンジンの駆動力を利用することで回動支持体14を軸にしてフロントフレーム2を回動させることが可能である。リアフレーム4は、機体1の後部に配設された骨格部材である。リアフレーム4には、上部に駆動装置6及び運転室8が配設されている。また、リアフレーム4には、ゴム製のタイヤを備えた駆動輪12が機体1の左右方向(車幅方向)でリアフレーム4を挟むように配設されている。
【0014】
運転室8は、リアフレーム4の前側上部に配設され、オペレータが搭乗する。機体1には、さらに、GNSSユニット18や、図示しない無線通信機などが備えられている。GNSSユニット18は、GNSSアンテナ18aによって受信する電波からGNSS受信機18bによって位置情報を取得することが可能である。無線通信機は、例えば後述する持ち運びが可能な表示端末20(以下、単に端末20ともいう)などの無線機器と通信することが可能である。
【0015】
図2は、運転室8内を後方から見た図である。運転室8には、運転席22、モニタ24、ステアリング26などが備えられ、オペレータが運転室8に搭乗して運転席22に着座し、モニタ24を確認したり、ステアリング26などを操作したりすることで機体1の走行などを行うことが可能である。また、端末20は、運転室8においてオペレータが視認し易い位置、例えば、運転席22の上部側方に立設された、運転室8の支持フレーム28に、支持装置30を介して取り付けられている。支持フレーム28は、例えば、運転室8を区画するキャビンの骨格をなすピラーのうち、運転席22から見て前方右側に位置するピラーである。
【0016】
図3は、支持装置30で支持した端末20をその表示画面20aから見た斜視図を示す。端末20は、表示画面20aにICT施工情報が表示され、表示画面20aにおけるタッチパネル操作によってICT施工情報の設定を行うことができるタブレット端末である。端末20は、運転室8内で使用しないときには運転室8から持ち出し、現場事務所で保管する。また、端末20は、運転室8から持ち出した状態で作業機械の位置情報の精度を確認する作業などが定期的に行われる。
【0017】
図4は、支持装置30で支持した端末20をその背面20b(表示画面20aと反対側となる面)から見た斜視図を示す。支持装置30は、タブレットホルダ(ブラケット)32、ハンドホルダ(保持部材)34、及び支持ブラケット(ブラケット)36を備えている。タブレットホルダ32は、端末20を支持するとともに、支持ブラケット36を介して運転室8の支持フレーム28に取り付けられる。ハンドホルダ34は、端末20の背面20bに取り付けられるとともに、タブレットホルダ32に上方から挿通することによりタブレットホルダ32に着脱自在に固定される。
【0018】
また、オペレータは、タブレットホルダ32から上方に持ち上げて取り外した端末20をハンドホルダ34において把持する。詳しくは、タブレットホルダ32は、縦方向Y(水平方向に対し後述の傾斜角αで傾斜する方向)に延設された挿通部38を有する。ハンドホルダ34は、端末20の背面20bに固定される固定部40と、オペレータが把持可能な筒状部42とを有する。
【0019】
筒状部42は、タブレットホルダ32の挿通部38に対し着脱可能な筒状に形成される。挿通部38は、上方から下方に向かって筒状部42を挿通可能に延設されている。また、挿通部38は、筒状部42に挿通された状態で、筒状部42の内周面42aに当接してハンドホルダ34を係止し、筒状部42が下方に位置するほど、ハンドホルダ34を係止する力(係止力)が大きくなる形状に形成される。
【0020】
固定部40は、例えば、可撓性のある強靭な2本の繊維テープ40aを略X字形状に交差し、これらを互いに結合することにより形成される。各繊維テープ40aの4つの外端は背面20bにビス44でねじ止めされ、これにより、固定部40が端末20の背面20bに固定される。筒状部42は、例えば、プラスチック材を筒状に加工することにより形成される。各繊維テープ40aの交差部分は、筒状部42の例えば内周面42aに接合され、これにより、固定部40と筒状部42とが一体化したハンドホルダ34が形成される。
【0021】
なお、固定部40及び筒状部42のそれぞれの形状、素材、及び固定手段は、前述した形態に限定されない。但し、固定部40を各繊維テープ40aのような可撓性のある素材で形成することにより、機体1から端末20に伝達される振動や衝撃を固定部40において吸収可能である。
【0022】
図5は、タブレットホルダ32及び支持ブラケット36の斜視図を示す。タブレットホルダ32の挿通部38は、例えば板状をなし、挿通部38がハンドホルダ34の筒状部42を係止している状態において、端末20の背面20bに対向する対向面38aを有する。また、タブレットホルダ32の挿通部38の上部には、挿通部38がハンドホルダ34の筒状部42を係止している状態において、端末20の背面20bと離間する方向に傾斜するストッパ部46が設けられている。ハンドホルダ34の筒状部42は、ストッパ部46から挿通部38に挿通可能である。
【0023】
また、タブレットホルダ32は、挿通部38がハンドホルダ34の筒状部42を係止している状態において、端末20の下端部が嵌め込まれることにより端末20を支持する1つ以上の、例えば2つの受け部48を有する。各受け部48は、端末20の下端部が嵌め込まれた状態において、端末20の表示画面20aと離間する方向に傾斜する傾斜面部50を有する。タブレットホルダ32の各受け部48の各傾斜面部50には、例えばゴムなどの弾性部材52が取り付けられている。
【0024】
図6は、タブレットホルダ32及び支持ブラケット36を挿通部38の背面38b(対向面38aと反対側となる面)から見た斜視図を示す。タブレットホルダ32の挿通部38は、ハンドホルダ34の筒状部42が挿通された状態の筒状部42の内周面42aに向けて突設される板状のリブ54を有する。リブ54は、挿通部38の背面38bの縦方向Yに亘って延設されてストッパ部46の一部を構成する。
【0025】
また、リブ54は、背面38bの幅方向X(縦方向Yと直交する方向であり、タブレットホルダ32の挿通部38にハンドホルダ34の筒状部42が挿通された状態における端末20の表示画面20aの長手方向)における略中央に立設される。また、リブ54は、挿通部38の背面38bから端末20の表示画面20aに対して反対側に向かって延設される。
【0026】
図7は、タブレットホルダ32及び支持ブラケット36の側面図を示す。挿通部38の対向面38aは、水平方向Zに対して90度未満の傾斜角αで傾斜されている。傾斜角αは、例えば85度程度である。また、挿通部38には、後で詳述するが、当接部56と傾斜外縁58とが形成されている。本実施形態の場合、当接部56及び傾斜外縁58は、リブ54の突設方向における端縁54aに形成される。
【0027】
図8は、支持装置30の分解斜視図を示す。支持ブラケット36は、板材を略L字形状に折り曲げて形成され、固定部60と取付部62とを備えている。固定部60には、ボルト64(例えば六角ボルト)を挿通するための2つのボルト挿通孔66が形成される。支持フレーム28には、支持ブラケット36の固定部60が当接して位置付けられる取付面68が形成される。取付面68には2つのボルト孔70が形成され、各ボルト挿通孔66に挿通したボルト64を各ボルト孔70に締結することにより、支持ブラケット36が支持フレーム28に固定される。
【0028】
一方、取付部62には、2つのボルト挿通孔72が形成される。リブ54の下部は、リブ54の上部に比して高い突設高さで形成され、この部位には、取付部62が当接して位置付けられるとともに、2つのボルト挿通孔74が形成されている。各ボルト挿通孔72と各ボルト挿通孔74とに、それぞれワッシャ76を介してボルト78(例えば六角穴付きボルト)が挿通される。
【0029】
各ボルト78の先端にはナット80(例えば六角ナット)が螺合され、各ボルト78及び各ナット80の締結により、タブレットホルダ32が支持ブラケット36に固定される。なお、支持フレーム28、支持ブラケット36、及びタブレットホルダ32の固定に用いる各ボルト64、78の数、或いは固定手段自体は、前述した形態に限定されない。また、2つのボルト挿通孔72は、例えば楕円状に形成されていても良い。これにより、支持ブラケット36に対するタブレットホルダ32の傾きが調整可能となるため、端末20の表示画面20aをオペレータが視認しやすい角度に調整することができる。
【0030】
以下、
図9から
図11を参照して、支持装置30における端末20の支持状態と、タブレットホルダ32からの端末20の取り外し方とについて説明する。なお、
図9から
図11において、筒状部42は縦断面で示している。
図9は、支持装置30で支持した端末20の側面図を示す。挿通部38に筒状部42が挿通された状態において、筒状部42の内周面42aに挿通部38のリブ54の端縁54aが当接することにより、端縁54aには当接部56が形成される。
【0031】
当接部56が形成されることにより、端末20がタブレットホルダ32に対しガタつかない程度に、且つ着脱容易に支持される。また、挿通部38には、リブ54の端縁54aの位置に、端末20の表示画面20aに直交する方向における挿通部38の幅を下部から上部に亘って徐々に減じた傾斜外縁58が形成される。これにより、リブ54の突設高さを含む挿通部38の厚み方向における厚みt(挿通部38の背面38bから端末20の表示画面20aに対して反対側に向かって延設される長さ)も当接部56からストッパ部46の上端に亘って徐々に減じられる。傾斜外縁58は、端末20の重さを利用して、筒状部42の内周面42aに、当接部56を緩やかに喰い込ませる、いわばクサビ効果による係止力を作用させる。
【0032】
また、挿通部38の対向面38aは、挿通部38に筒状部42を挿通した状態において、水平方向Zに対して90度未満の傾斜角αで形成されている。これにより、端末20は、斜め下側に倒れ込むような若干傾いた姿勢でリブ54を含む挿通部38、ひいてはタブレットホルダ32に支持される。また、ストッパ部46の下端は、挿通部38に筒状部42を挿通した状態において、筒状部42の上端に近接して位置付けられる。
【0033】
詳しくは、リブ54はストッパ部46の一部を構成することから、ストッパ部46の下端は、ストッパ部46に向けてリブ54の傾斜が開始される傾斜始点54bに位置付けられる。傾斜始点54bに筒状部42の上端が近接することにより、端末20の上方移動が好適に規制される。また、端末20の下端部は、各受け部48に嵌め込まれている。
【0034】
図10は、
図9において端末20を上方に移動したときの側面図を示す。端末20をタブレットホルダ32から取り外す際には、先ず、前述したクサビ効果による係止力に抗して端末20を上方に持ち上げることにより、当接部56における当接が解除される。そして、当接部56における当接が解除されたままの状態(端末20を上方に持ち上げたままの状態)で、端末20をストッパ部46に沿って、表示画面20aの反対側へ若干傾斜させながら、さらに上方に持ち上げる。この際、各受け部48に傾斜面部50が形成されていることにより、端末20の下端部の傾斜が各傾斜面部50において許容され、端末20がストッパ部36に沿って若干傾斜しながら、上方へ移動することが可能となる。
【0035】
図11は、
図10において端末20をさらに上方に移動したときの側面図を示す。端末20をストッパ部46に沿ってさらに表示画面20aの反対側へ傾斜させながら、ストッパ部46に沿って上方に持ち上げることにより、
図11に破線で示すように、端末20を傾斜外縁58に沿ってタブレットホルダ32の挿通部38から容易に取り外すことができる。
【0036】
このように、オペレータは、端末20をタブレットホルダ32から取り外す意図で行う前述の作業によって、ストッパ部46が存在しても、端末20をタブレットホルダ32から容易に取り外すことができる。一方で、作業機械が悪路を走行したり、作業を行ったりすることによって、端末20が単なる上下方向の振動や衝撃を受けたとしても、端末の移動がストッパ部46で制限されるため、端末20がタブレットホルダ32の挿通部38から外れて落下することが抑制される。
【0037】
以上のように本実施形態の作業機械の端末20の支持装置30は、前述したタブレットホルダ32、ハンドホルダ34、及び支持ブラケット36を備える。ハンドホルダ34は、タブレットホルダ32に上方から挿通することにより端末20をタブレットホルダ32に着脱自在に固定して支持する機能と、タブレットホルダ32から上方に持ち上げて取り外した端末20をオペレータが把持するための機能とを有する。
【0038】
そして、タブレットホルダ32の挿通部38は、ハンドホルダ34の筒状部42が挿通された状態において、筒状部42の内周面42aに当接してハンドホルダ34を係止し、筒状部42が下方に位置するほど、ハンドホルダ34を係止する力が大きくなる形状に形成されている。これにより、タブレットホルダ32の挿通部38に対してハンドホルダ34の筒状部42を係止し、且つ当該係止の解除が容易な前述した当接部56が形成され、当接部56において、端末20がタブレットホルダ32に対しガタつかない程度に、且つ着脱容易に支持されるため、端末20の支持剛性向上と着脱容易性との双方を実現することができる。
【0039】
また、タブレットホルダ32の挿通部38の上部には、挿通部38がハンドホルダ34の筒状部42を係止している状態において、端末20の背面20bと離間する方向に傾斜するストッパ部46が設けられている。ストッパ部46を形成したことにより、端末20が激しい振動や衝撃を受けて上方に移動し、挿通部38から外れて落下することを防止することができる。従って、端末20がさらに効果的に安定保持される。
【0040】
また、タブレットホルダ32の挿通部38は、端末20の表示画面20aに直交する方向における挿通部38の幅を下部から上部に亘って徐々に減じた傾斜外縁58を有する。これにより、端末20の重さを利用して、筒状部42の内周面42aに、当接部56を緩やかに喰い込ませる、クサビ効果による係止力を作用させることができる。
【0041】
この係止力の作用により、リブ54を含む挿通部38を筒状部42の内周面42aに、確実に嵌め込んで係止することができる。また、挿通部38に傾斜外縁58を形成することにより、挿通部38に対して端末20を容易に着脱することができる。従って、端末20の安定保持及び着脱容易性をさらに効果的に実現することができる。
【0042】
また、タブレットホルダ32の挿通部38は、挿通部38がハンドホルダ34の筒状部42を係止している状態において、筒状部42の内周面42aに向けて突設されるリブ54を有する。また、リブ54の突設方向における端縁54aは、筒状部42の内周面42aに当接する傾斜外縁58である。これにより、リブ54の突設形状を調整するだけの簡単な加工により、タブレットホルダ32の挿通部38を前述した当接状態とクサビ効果による係止力とが発生する最適な形状とすることができる。
【0043】
また、タブレットホルダ32の挿通部38のリブ54に傾斜外縁58が形成されることにより、端末20を傾斜外縁58に沿って挿通部38から容易に取り外すことができる。従って、傾斜外縁58の形成に伴うクサビ効果による係止力発生によって端末20を安定保持しつつ、端末20の着脱容易性をさらに向上することができる。
【0044】
また、タブレットホルダ32の挿通部38の対向面38aは、水平方向Zに対して90度未満の傾斜角αで形成されている。これにより、端末20は、斜め下側に倒れ込むような若干傾いた姿勢でリブ54を含む挿通部38、ひいてはタブレットホルダ32に支持される。端末20がこのような傾斜姿勢で支持されることにより、端末20が倒れ込む際の荷重が当接部56に好適に付与され、また、傾斜外縁58のクサビ効果による係止力をさらに効果的に発生させることができる。従って、端末20がさらに効果的に安定保持される。
【0045】
また、タブレットホルダ32は、挿通部38がハンドホルダ34の筒状部42を係止している状態において、端末20の下端部が嵌め込まれることにより端末20を支持する受け部48を有する。また、受け部48は、端末20の下端部が嵌め込まれた状態において、端末20の表示画面20aと離間する方向に傾斜する傾斜面部50を有する。これにより、当接部56のみならず、受け部48においても、端末20のガタつきを抑制することができるため、端末20がさらに効果的に安定保持される。
【0046】
また、傾斜面部50を形成したことにより、受け部48に対する端末20の下端部の嵌め込みを容易に解除することができるため、端末20の着脱容易性をさらに向上することができる。また、タブレットホルダ32の受け部48の傾斜面部50には、弾性部材52が取り付けられている。これにより、機体1から端末20に伝達される振動や衝撃を弾性部材52において吸収することができるため、端末20がさらに効果的に安定保持される。
【0047】
以上で本発明の一実施形態についての説明を終えるが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の変更ができるものである。例えば、上記実施形態の場合、挿通部38は板状をなすとともに、挿通部38にリブ54が立設される。これにより、タブレットホルダ32、ひいては支持装置30の軽量化を図ることができて好適である。
【0048】
しかし、挿通部38に、当接部56及び傾斜外縁58と同様の部位が形成されるのであれば、挿通部38の形状は板状に限定されないし、リブ54の形成は必須ではない。また、当接部56及び傾斜外縁58の形成によって端末20の安定保持が十分に実現可能な場合、受け部48を設けなくとも良い。また、当接部56のみの形成によって端末20の安定保持を十分に実現可能な場合、傾斜外縁58を設けなくとも良い。
【0049】
また、上記実施形態の場合、支持装置30は、別部材としてタブレットホルダ32と支持ブラケット36とを含むが、タブレットホルダ32は支持ブラケット36に一体形成しても良い。さらに、本発明は、オペレータが搭乗する運転室8にICT施工情報を表示及び設定するための端末20を設置した作業機械であれば、前述した転圧機械に限らず、種々の作業機械に適用可能である。
【符号の説明】
【0050】
8 運転室
20 表示端末
20a 表示画面
20b 背面
30 支持装置
32 タブレットホルダ(ブラケット)
34 ハンドホルダ(保持部材)
36 支持ブラケット(ブラケット)
38 挿通部
38a 対向面
42 筒状部
42a 内周面
46 ストッパ部
48 受け部
50 傾斜面部
52 弾性部材
54 リブ
54a 端縁
58 傾斜外縁
α 傾斜角