(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024030745
(43)【公開日】2024-03-07
(54)【発明の名称】ヘッドアップディスプレイ装置
(51)【国際特許分類】
B60K 35/23 20240101AFI20240229BHJP
B60W 60/00 20200101ALI20240229BHJP
B60W 50/14 20200101ALI20240229BHJP
【FI】
B60K35/00 A
B60W60/00
B60W50/14
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022133835
(22)【出願日】2022-08-25
(71)【出願人】
【識別番号】000231512
【氏名又は名称】日本精機株式会社
(72)【発明者】
【氏名】江尻 剛士
(72)【発明者】
【氏名】坂本 かおり
【テーマコード(参考)】
3D241
3D344
【Fターム(参考)】
3D241BA60
3D241CA00
3D344AA19
3D344AB01
3D344AC25
(57)【要約】
【課題】 自動運転機能のレベルに応じた最適な表示出力を行うヘッドアップディスプレイ装置を提供する。
【解決手段】 少なくとも一部範囲の運転操作を車両利用者14から代行して行う自動運転機能を備える車両10に搭載され、ウインドシールド13を介して情報画像を車両前方側の虚像Vとして車両10前方側に投影表示するヘッドアップディスプレイ装置12であって、前記自動運転機能による運転操作の範囲の程度を含む車両10の車両情報を入力し、前記情報画像を描画生成する制御部60を備え、制御部60は、前記運転操作の範囲が大きくなった際に、より広い表示領域、かつ前記車両前方側のより遠方にみえる表示領域を用いて、前記情報画像を描画生成する。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも一部範囲の運転操作を車両利用者から代行して行う自動運転機能を備える車両に搭載され、ウインドシールドを介して情報画像を車両前方側の虚像として投影表示するヘッドアップディスプレイ装置であって、
前記自動運転機能による運転操作の範囲の程度を含む前記車両の車両情報を入力し、前記情報画像を描画生成する制御部を備え、
前記制御部は、前記運転操作の範囲が大きくなった際に、より広い表示領域、かつ前記車両前方側のより遠方にみえる表示領域を用いて、前記情報画像を描画生成する
ヘッドアップディスプレイ装置。
【請求項2】
前記制御部によって描画生成された画像を表示し、前記ウインドシールド側へ投影する表示部を備え、
前記表示部は、前記虚像の表示領域において、下部側よりも上部側が、より遠方にみえるように傾いた前記情報画像を出力する
請求項1に記載のヘッドアップディスプレイ装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記情報画像として、
前記車両の状態を表示する1つ又は複数の車両情報画像と、
前記車両の上方または後方から俯瞰したように前記車両を模した表示を行う車両俯瞰画像と、を描画生成し、
前記運転操作の範囲が大きくなった際に、より上方から俯瞰したような前記車両俯瞰画像に切り替えて表示する
請求項1または請求項2に記載のヘッドアップディスプレイ装置。
【請求項4】
前記制御部は、前記運転操作の範囲が大きくなった際に、前記車両情報画像の表示可能な表示種類を増やして描画生成する
請求項3に記載のヘッドアップディスプレイ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動運転機能を備える車両に搭載されるヘッドアップディスプレイ装置に関し、例えば、車両のウインドシールドに表示像を投影するヘッドアップディスプレイ装置に好適である。
【背景技術】
【0002】
従来から、ウインドシールドなどの投射部材に表示光を出射することで虚像を表示するヘッドアップディスプレイ(HUD:Head-Up Display) 装置が知られている。例えば、特許文献1に開示されている。
【0003】
また、近年、人間が運転操作を行わなくとも自動で走行できる自動運転技術が注目されている。例えば、特許文献1に記載のヘッドアップディスプレイ装置が搭載される車両は、自動運転モードと手動運転モードとの間で運転モードを切り替え可能に構成されており、この切り替えに伴ってヘッドアップディスプレイ装置による表示も切り替えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、車両の自動運転機能のレベル(自動運転機能による運転操作の範囲の程度)が段階的に変化する場合、このレベル変化を認識し易くするだけでなく、それぞれのレベルに応じた最適な表示出力がなされるヘッドアップディスプレイが望まれている。
【0006】
そこで本発明の目的は、上述した課題に着目し、自動運転機能のレベルに応じた最適な表示出力を行うヘッドアップディスプレイ装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のヘッドアップディスプレイ装置は、
少なくとも一部範囲の運転操作を車両利用者から代行して行う自動運転機能を備える車両に搭載され、ウインドシールドを介して情報画像を車両前方側の虚像として投影表示するヘッドアップディスプレイ装置であって、
前記自動運転機能による運転操作の範囲の程度を含む前記車両の車両情報を入力し、前記情報画像を描画生成する制御部を備え、
前記制御部は、前記運転操作の範囲が大きくなった際に、より広い表示領域、かつ前記車両前方側のより遠方にみえる表示領域を用いて、前記情報画像を描画生成する。
【0008】
また、前記制御部によって描画生成された画像を表示し、前記ウインドシールド側へ投影する表示部を備え、
前記表示部は、前記虚像の表示領域において、下部側よりも上部側が、より遠方にみえるように傾いた前記情報画像を出力する。
【0009】
また、前記制御部は、前記情報画像として、
前記車両の状態を表示する1つ又は複数の車両情報画像と、
前記車両の上方または後方から俯瞰したように前記車両を模した表示を行う車両俯瞰画像と、を描画生成し、
前記運転操作の範囲が大きくなった際に、より上方から俯瞰したような前記車両俯瞰画像に切り替えて表示する。
【0010】
また、前記制御部は、前記運転操作の範囲が大きくなった際に、前記車両情報画像の表示可能な表示種類を増やして描画生成する。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、自動運転機能のレベルに応じた最適な表示出力を行うヘッドアップディスプレイ装置となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本実施形態の車両に搭載されたヘッドアップディスプレイの概略図。
【
図2】ヘッドアップディスプレイの内部構成を示す要部断面図。
【
図4】第1状態の際の表示例と虚像表示領域の使用箇所を示す図。
【
図5】第2状態の際の表示例と虚像表示領域の使用箇所を示す図。
【
図6】第3状態の際の表示例と虚像表示領域の使用箇所を示す図。
【
図7】第4状態の際の表示例と虚像表示領域の使用箇所を示す図。
【
図8】制御部が状態に応じて描画する際の視点変化を説明する図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に、本発明の実施形態として、車両(自動車)に搭載されるヘッドアップディスプレイ装置に適用したものを例に挙げて、添付図面に基づいて説明する。
【0014】
ヘッドアップディスプレイによる投影表示は、
図1に示すように車両10のインストルメントパネル11内部に設けられた表示ユニットであるヘッドアップディスプレイ装置(表示装置)12が投射する表示光Lを車両10のウインドシールド13で車両10の利用者(ドライバー)14の方向に反射させ、虚像Vを表示するものである。換言すれば、ヘッドアップディスプレイは、後述する液晶表示器20から発せられる表示光(情報画像)Lをウインドシールド13に出射(投射)し、この出射によって得られた表示像(虚像)Vを利用者14に視認させるものである。これにより利用者14は、虚像Vを車両10の前方風景と重畳させて観察できる。
【0015】
この場合、ヘッドアップディスプレイ装置12は、車両10が走行する路面に対して、虚像Vが45度以下(0度~45度)に傾き、虚像Vの上部が下部よりも利用者14から遠方側に傾斜したようにみえる表示光Lを投影している。これにより、利用者14は、車両10の前方側で主に路面に重ねて表示される虚像Vを視認でき、その情報画像のコンテンツが示す、種々の情報を得ることができる。
【0016】
ヘッドアップディスプレイ装置12は、
図2に示すように液晶表示器(表示部)20と、第1反射器30と、第2反射器40と、ハウジング50とから主に構成されている。
【0017】
液晶表示器20は、配線基板に実装された発光ダイオードからなる光源21と、この光源21からの照明光を透過して表示光Lを形成するように光源21の前方側(真上)に位置するTFT型の液晶表示素子(表示素子)22とから主に構成される。このことは、液晶表示素子22の背後に光源21が設けられ、液晶表示素子22は、光源21から発せられる光により、所定情報を表示することを意味している。
【0018】
また、液晶表示器20は、可視波長域の光からなる表示光Lを出力するもので、例えば、白色を発する光源21を適用でき、この光源21から発する光を液晶表示素子22が透過することで所望の画像を含む表示光Lを出力する。液晶表示素子22は、制御部による描画演算によって生成された表示画像データ(駆動信号)に基づいて所望の情報画像を形成する。なお、制御部は、車両10から通信によって入力する車両情報に基づいて表示するべき情報、例えば、車両10の速度やエネルギー残量、時刻、経路案内画像を、数値やアイコン等の画像データを用いて液晶表示素子22に表示させる。なお、前記表示するべき情報は、車両の速度やエネルギー残量などの車両情報に限らず、あらゆる表示形態を採用できる。
【0019】
第1反射器30は、コールドミラー31を備えている。なお、コールドミラー31は、液晶表示器20の発光波長域を含む可視波長域(450~750nm)の光を高い反射率(例えば80%以上)で反射し、前記可視波長域以外の光を低い反射率で反射するものである。この場合、コールドミラー31は、前記可視波長域以外の特に赤外波長域の光(太陽光など外光の熱線)を低い反射率(例えば15%以下)にて反射するものが適用される。なお、コールドミラー31の反射層にて反射されない光は、コールドミラー31を透過するように構成される。コールドミラー31により、液晶表示素子22が太陽光等によって熱せられて高温化してしまうことを抑止できる。
【0020】
第2反射器40は、コールドミラー31(つまり、液晶表示素子22)からの表示光Lを反射させる凹面鏡41と、この凹面鏡41を保持するミラーホルダ42とを備えている。
【0021】
凹面鏡41は、凹面を有するポリカーボネートからなる樹脂基板に第2の反射層41aを蒸着形成している。かかる凹面鏡41は、その第2の反射層41aがコールドミラー31並びに前記透光性カバーに対向し、前記透光性カバーから臨める位置に傾斜状態にて設けられる。
【0022】
また凹面鏡41は、コールドミラー31からの表示光Lを拡大しつつ、前記透光性カバー(車両10のウインドシールド13)側へ反射(投射)させるものである。このことは、凹面鏡41が、コールドミラー31によって反射された表示光Lを拡大し、この拡大された表示光Lを前記透光性カバーを通じてウインドシールド13に投射することを意味している。なお、凹面鏡41は、ミラーホルダ42に両面粘着部材により接着されている。ミラーホルダ42は、合成樹脂(例えばABS樹脂)からなるものであり、ハウジング50に固定される。
【0023】
ハウジング50は、例えば黒色の遮光性合成樹脂材料からなり、略箱型形状に形成され、その内部空間である空間部51に液晶表示器20や第1反射器30、並びに第2反射器40を保持して収容するものであり、第2反射器40における凹面鏡41の上部(ウインドシールド13側)が開口する開口窓部52を備えてなる。
【0024】
またハウジング50には、開口窓部52を塞ぐように出射部である透光性カバー53が設けられている。かかる透光性カバー53は、透光性の合成樹脂材料(例えばアクリル樹脂)を適用しており、湾曲形状(曲面形状)に形成され、凹面鏡41で反射された表示光Lが透過(通過)する光透過性部材としての機能を有している。つまり、コールドミラー31並びに凹面鏡41によって反射された表示光Lは、ハウジング50に形成された透光性カバー53を通じてウインドシールド13に投影され、これにより虚像Vの表示が行われることになる。
【0025】
上述のヘッドアップディスプレイ装置12が搭載される車両10は、運転操作のうち少なくとも一部の範囲を利用者(ドライバー)14から代行可能な自動運転機能を備えている。
図3に示すように、車両10に搭載された自動運転装置Aにより、自動運転機能が実現されている。自動運転装置Aは、少なくとも1つのプロセッサ、メモリ、入出力インターフェース等が基板上に実装された電子回路を主体として構成されている。プロセッサは、例えばメモリに格納されているコンピュータプログラムを実行することで、各種処理を実施可能となっている。また、自動運転装置Aは、入出力インターフェースを通じて、車両10の周辺を監視し、車両10の周囲を走行する他車両の相対的な位置情報を検出する周辺監視装置B、ヘッドアップディスプレイ装置12などと通信可能となっている。
【0026】
自動運転装置Aは、このような電子回路により構築されている機能ブロックとして、レベル設定部A1及び自動運転制御部A2を備えている。
【0027】
レベル設定部A1は、自動運転装置Aが車両10の運転者から代行して運転操作を行なう代行範囲を設定する機能ブロックである。より詳細に、レベル設定部A1は、例えば周辺監視装置Bから取得した他車両の位置情報、車両10の周囲の道路形状の情報、及び設定スイッチ7からの入力信号等に基づいて、上述の運転操作を代行する代行範囲を設定する。レベル設定部A1は、第1状態としての手動運転モードと、第1状態よりも代行範囲が広い第2状態としての自動運転モードとを、周辺監視装置Bからの情報などに基づく所定条件に応じて切り替えるようになっている。
【0028】
第1状態の手動運転モードは、車両10の運転操作のうちの殆どの運転操作の権限が運転者に移譲された状態となり、運転者が主体的に運転操作を行うモードである。
【0029】
第2状態の自動運転モードは、定速走行または先行車に追従した走行を行うべく車両10のアクセル/ブレーキ制御や走行路から逸脱しないように防止するため一部の操舵制御の権限を自動運転装置Aが移譲された状態となる(所謂、自動運転レベル2の状態)。
【0030】
また、自動運転モードは、第2状態よりも代行範囲が広い第3状態へ切り替え可能としており、第2状態から更に操舵制御の権限も自動運転装置Aが移譲された第3状態が用意されている。第3状態では、所謂ハンズフリー運転となり、利用者は車両の周辺を注意しながらも運転操作を車両10側に移譲する状態を想定している(所謂、自動運転レベル2の高機能化した状態)。車両10は、第2、第3状態において、自動運転制御部A2の制御によって、車両10の一部の駆動操作がなされることになる。
【0031】
更に自動運転モードは、第3状態よりも代行範囲が広い第4状態に切り替え可能としている。この第4状態の場合、所定条件化において、車両10が走行するのに必要な運転操作のうち殆どの運転操作の権限が利用者14側から車両10側に移譲された状態となり、自動運転制御部A2が主体的に運転操作を行なう(所謂、自動運転レベル3の状態)。
【0032】
レベル設定部A1によって自動運転モードが設定された場合にあっても自動運転制御部A2による自動運転が困難又は不可能な状況もある。こうした状況下では、レベル設定部A1は、例外的に代行範囲を手動運転モードに対応した範囲に設定する。
【0033】
したがって、自動運転モードのとき、利用者14は、自動運転制御部A2による自動運転が突発的に不可能となる上述の状況に備えて待機する必要がある。このため、利用者14にとっては、予定する車両10の挙動や周辺車両との関係など確認する情報が役立つ。そこで、ヘッドアップディスプレイ装置12は、こうした自動運転装置Aと連携して、表示を行なうことが可能となっている。
【0034】
図3に示すように、ヘッドアップディスプレイ装置12は、自動運転装置Aや周辺監視装置B、その他の車載ECU(電子制御ユニット)Cと通信線を介して接続し、それぞれからの各種信号を入力し、液晶表示器20の出力内容を演算により生成する制御部60を実装する図示しない回路基板を備えている。この場合、該回路基板はヘッドアップディスプレイ装置12のハウジング50に保持される。
【0035】
制御部60は、図示しない車載バッテリから供給される電力を用いて駆動し、所定プログラムや各種データの格納、演算時の記憶領域などに用いる図示しないROMやRAM等のデータ格納部と、前記所定プログラムにしたがって演算処理するプロセッサと、入出力インターフェース等を設けたコンピュータを適用できる。
【0036】
なお、制御部60は、各種車載ECUとの間でネットワーク接続されており、ナビゲーションシステム装置から経路案内情報を入力したり、各種センサに基づいて計測された車両情報を入力できる。また制御部60は、液晶表示素子22に接続され、入力した経路案内情報や車両情報に基づいて、液晶表示素子22に表示するための画像を生成する描画処理部を備えている。制御部60は、描画処理部によって生成された画像が表示されるように促す駆動信号を液晶表示素子22に出力する。また、制御部60は、液晶表示素子22を透過照明する光源21にも接続されている。光源21は、制御部60からの駆動信号に基づいて点灯/消灯の作動切り替えがなされる。制御部60は、パルス幅変調制御などの輝度調整や図示しない照度センサによる照度データに基づいて、外部環境に適した表示輝度の表示光Lが出力されるように、光源21を制御できる。
【0037】
制御部60によって生成される表示光(画像)Lの例について、
図4乃至
図7を用いて説明する。制御部60は、第1乃至第4状態である運転操作の範囲の程度に基づいた表示形態で切り替えて表示するように制御している。
【0038】
図4は、第1状態(手動運転モード)の際のヘッドアップディスプレイ装置12による表示例を示し、右側が利用者14からみえる表示例で、左側は虚像Vの表示に利用される表示領域のうち、どの部分が表示利用されているかを示す図である。
【0039】
制御部60は、第1状態であるか否かを自動運転装置Aからの信号に基づいて判断し、これに基づいて、虚像Vにおいて下側の表示領域に対応する箇所の液晶表示素子22の画像領域を用いた表示制御を行う。従って、
図4に示すように、利用者14からはヘッドアップディスプレイ装置12によって表示として使用される表示領域のうち下端から高さh1までの領域で情報表示がなされる。また、虚像Vとしては、ヘッドアップディスプレイ装置12によって表示として使用される表示領域のうち下側で車両10の手前側から該高さh1対応する奥行d1の表示領域が使用される。制御部60は、第1状態での表示内容として、車速表示v1の他に、道路の標識情報v2などの運転支援情報や路面が模した車線の幅を示す線(区画線)v3を模した表示を促す。
【0040】
従って、ヘッドアップディスプレイ装置12による表示は、第1状態(手動運転モード)の際に、ヘッドアップディスプレイ装置12によって表示として使用される表示領域のうち下側の一部でかつ車両10の手前側の表示領域が使用される。利用者14にとっては、車両前方を視界良く確認でき、運転操作の妨げにならない範囲での運転支援の情報を表示できる。なお、ヘッドアップディスプレイ装置12は、必要に応じて警報などの表示を、これに加えて割り込み表示させることもでき、手動運転モードに適した運転支援情報を出力できる。
【0041】
図5は、第2状態(自動運転モード)へ移行した後の表示例を示す。利用者14からはヘッドアップディスプレイ装置12によって表示として使用される表示領域のうち下端から(高さh1よりも高い)高さh2までの領域で情報表示がなされる。また、虚像Vとしては、ヘッドアップディスプレイ装置12によって表示として使用される表示領域のうち下側で車両10の手前側から該高さh2対応する奥行d2の表示領域が使用される。制御部60は、第2状態での表示内容として、第1状態での表示に加え、定速走行状態を示すアイコンv4や、車両10を模した自車画像v5を表示させる。また、制御部60は、第1状態で示す区画線v3よりも上方で且つ遠方から鳥瞰したような区画線v6を自車画像v5とともに表示させるように促す。また、制御部60は、周辺監視装置Bが検出する周辺車両の有無や自車両に対する相対的な位置なども追加表示させることができる。
【0042】
従って、ヘッドアップディスプレイ装置12による表示は、第2状態(自動運転モード)の際に、ヘッドアップディスプレイ装置12によって表示として使用される表示領域のうち第1状態の際よりも、広い面積でかつ車両10の手前側から奥行方向により広い表示領域を使用される。利用者14は、車両10の挙動や周辺情報などを確認しながら、一部運転操作を車両10側に委ねることができる。
【0043】
図6は、第3状態(自動運転モード)へ移行した後の表示例を示す。利用者14からはヘッドアップディスプレイ装置12によって表示として使用される表示領域のうち下端から(高さh2よりも高い)高さh3までの領域で情報表示がなされる。また、虚像Vとしては、ヘッドアップディスプレイ装置12によって表示として使用される表示領域のうち下側で車両10の手前側から該高さh3対応する奥行d3の表示領域が使用される。奥行d3は、奥行d2よりも距離が大きく、より遠方の表示領域を用いて表示している。制御部60は、第3状態での表示内容として、第2状態での表示に加え、車両10のステアリングを模したアイコンv7を表示させて、操舵制御が自動運転制御部A2によって操作されていることを示す。また、制御部60は、第2状態で示す自車画像v5や区画線v6よりも上方で且つ遠方から鳥瞰したような自車画像v8や区画線v9を表示させるように促す。
【0044】
なお、制御部60は、
図8に示すように、第1状態を示す際に視点BV1からみた路面Rを模した区画線v3の表示(
図4)、第2状態を示す際に(視点BV1よりも上方で遠方な)視点BV2からみた路面Rと車両10aを模した区画線v6や自車画像v5を示す表示(
図5)、第3状態を示す際に(視点BV2よりも上方で遠方な)視点BV3からみた路面R及び車両10aを模した区画線v9や自車画像v8を示す表示(
図6)、となるように表示切替させ、動画を介して視点が変化するように表示遷移させる。これにより、表示の位置関係が変化する場合であっても、分かり易い表示となる。
【0045】
図7は、第4状態(自動運転モード)へ移行した後の表示例を示す。利用者14からはヘッドアップディスプレイ装置12によって表示として使用される表示領域のうち下端から(高さh3よりも高い)高さh4までの領域で情報表示がなされる。また、虚像Vとしては、ヘッドアップディスプレイ装置12によって表示として使用される表示領域のうち下側で車両10の手前側から該高さh4対応する奥行d4の表示領域が使用される。奥行d4は、奥行d3よりも距離が大きく、より遠方の表示領域を用いて表示している。制御部60は、第4状態での表示内容として、第3状態での表示に加え、表示領域の上部かつ遠方に拡大した箇所に、車両10の運行予定を示す表示v10を行う。例えば、運行予定としては、車線変更や右左折などの次の予定(イベント案内)を示すことができる。ヘッドアップディスプレイ装置12は、遠方に表示させることで、直近の運行予定でないことを利用者14に予想させることができる。
【0046】
斯かるヘッドアップディスプレイ装置12は、少なくとも一部範囲の運転操作を車両利用者14から代行して行う自動運転機能を備える車両10に搭載され、ウインドシールド13を介して情報画像を車両前方側の虚像Vとして投影表示するヘッドアップディスプレイ装置12であって、前記自動運転機能による運転操作の範囲の程度を含む車両10の車両情報を入力し、前記情報画像を描画生成する制御部60を備え、制御部60は、前記運転操作の範囲が大きくなった際に、より広い表示領域、かつ前記車両前方側のより遠方にみえる表示領域を用いて、前記情報画像を描画生成する。
【0047】
従って、自動運転機能のレベル(第1~第4状態)に応じた最適な表示出力を行うヘッドアップディスプレイ装置となる。
【0048】
また、制御部60によって描画生成された画像を表示し、ウインドシールド13に投影する液晶表示器20を備え、液晶表示器20は、虚像Vの表示領域において、下部側よりも上部側が、より遠方にみえるように傾いた情報画像を出力することによって、車両10の近傍と遠方側の表示領域とで自動運転機能のレベルに応じた使い分けを行うことができる。
【0049】
制御部60は、前記情報画像として、車両10の状態を表示する1つ又は複数の車両情報画像と、車両10の上方または後方から俯瞰したように車両10を模した表示を行う自車画像(車両俯瞰画像)v5と、を描画生成し、前記運転操作の範囲が大きくなった際に、より上方から俯瞰したような自車画像v8に切り替えて表示することによって、自動運転機能のレベル(第1~第4状態)に応じた最適な表示出力を行うヘッドアップディスプレイ装置となる。
【0050】
制御部60は、前記運転操作の範囲が大きくなった際に、前記車両情報画像の表示可能な表示種類を増やして描画生成することで、利用者14の運転負荷に応じた情報提供を行うことができる。
【0051】
なお、本発明のヘッドアップディスプレイを上述した実施形態の構成にて例に挙げて説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、他の構成においても、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々の改良、並びに表示の変更が可能なことは勿論である。例えば、上述実施形態にあっては、表示部として液晶表示器20を適用したものを示したが、表示部としてDMD(デジタルミラーデバイス)や、電磁駆動式のレーザ光走査型MEMSミラーを用いるなどして、画像を含む表示光を生成するものであればよく、上述した実施形態と同様の効果を得ることができる。また、ウインドシールドではなく、専用のコンバイナに投影して表示する構成であっても適用できる。
【0052】
本発明は、ヘッドアップディスプレイ装置に関して、例えば、自動車やオートバイ、あるいは農業機械や建設機械を備えた移動体に搭載され、車両情報やターンバイターン表示、路線案内表示等の経路案内、道路情報などを投影表示する表示装置として好適である。
【符号の説明】
【0053】
10 車両
11 インストルメントパネル
12 ヘッドアップディスプレイ装置
13 ウインドシールド
14 利用者(ドライバー)
20 液晶表示器(表示部)
60 制御部
V 虚像