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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024030750
(43)【公開日】2024-03-07
(54)【発明の名称】電力変換装置
(51)【国際特許分類】
   H02M 3/155 20060101AFI20240229BHJP
【FI】
H02M3/155 H
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022133841
(22)【出願日】2022-08-25
(71)【出願人】
【識別番号】000002059
【氏名又は名称】シンフォニアテクノロジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100142022
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 一晃
(72)【発明者】
【氏名】坂本 竜也
(72)【発明者】
【氏名】辻 健太郎
【テーマコード(参考)】
5H730
【Fターム(参考)】
5H730AS04
5H730AS05
5H730BB13
5H730BB14
5H730DD02
5H730EE59
5H730FD01
5H730FD31
(57)【要約】
【課題】出力電圧の応答性を向上しつつ出力電圧の安定性も確保できるような電力変換装置を実現する。
【解決手段】電力変換装置は、出力側に出力側リアクトル22及び出力側コンデンサ21を有し、出力側コンデンサ21の出力電圧Voを調整する。前記電力変換装置は、電圧指令Vrefに応じて出力側コンデンサ21の出力電圧Voを制御するように、出力値Idcl*を出力する電圧制御部31と、電圧制御部31の出力値Idcl*に応じて出力側コンデンサ21の入力電流Icを制御する電流制御部32と、を有する。電流制御部32は、電圧制御部31の出力値Idcl*と出力側コンデンサ21の入力電流Icとが比例関係になるように、出力側リアクトル22のリアクトル推定値及び内部抵抗推定値を用いてフィードフォワード制御を行うフィードフォワード制御部40を有する。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
出力側にリアクトル及びコンデンサを有し、前記コンデンサの出力電圧を調整する電力変換装置であって、
電圧指令に応じて前記コンデンサの出力電圧を制御するように、所定の出力値を出力する電圧制御部と、
前記電圧制御部の出力値に応じて前記コンデンサの入力電流を制御する電流制御部と、
を有し、
前記電流制御部は、
前記電圧制御部の出力値と前記コンデンサの入力電流とが比例関係になるように、前記リアクトルのリアクトル推定値及び内部抵抗推定値を用いてフィードフォワード制御を行うフィードフォワード制御部を有する、
電力変換装置。
【請求項2】
請求項1に記載の電力変換装置において、
前記フィードフォワード制御部は、前記電流制御部の伝達関数が定数になるように、前記リアクトルのリアクトル推定値及び内部抵抗推定値を用いてフィードフォワード制御を行う、
電力変換装置。
【請求項3】
請求項2に記載の電力変換装置において、
前記フィードフォワード制御部は、前記電圧制御部の出力値に電力変換装置の出力電流を加算して得られる電流目標値に基づいて、前記リアクトルの入力電圧に対してフィードフォワード制御を行う、
電力変換装置。
【請求項4】
請求項3に記載の電力変換装置において、
前記電流制御部は、
前記リアクトルを流れる電流を前記電流目標値に対してフィードバックするフィードバック部をさらに有する、
電力変換装置。
【請求項5】
請求項3または4に記載の電力変換装置において、
前記リアクトル及び前記コンデンサは、複数の部品を含む回路によって構成されていて、
前記回路は、
前記コンデンサの出力電圧を前記リアクトルの入力電圧に対して減算するリアクトル電圧算出部を有し、
前記電流制御部は、
前記リアクトル電圧算出部による前記出力電圧の減算をキャンセルするように、前記出力電圧を前記入力電圧に加算する電圧加算部をさらに有する、
電力変換装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンデンサを有し、前記コンデンサの出力電圧を調整する電力変換装置に関する。
【背景技術】
【0002】
コンデンサを有し、前記コンデンサの出力電圧を調整する電力変換装置が知られている。このような電力変換装置の一例として、例えば特許文献1には、降圧チョッパ及び昇圧チョッパを備えた直流-直流変換器が開示されている。
【0003】
前記直流-直流変換器では、前記特許文献1の図9に示すように、前記降圧チョッパと前記昇圧チョッパとが、入力電圧を昇圧後、降圧するように接続されている。前記昇圧チョッパは、入力電圧が印加される正極入力端子と負極入力端子との間に接続された入力コンデンサと、前記入力コンデンサに並列に接続されたリアクトル及びスイッチング素子の直列回路と、前記スイッチング素子に並列に接続された還流ダイオード及び中間コンデンサの直列回路とを備える。前記降圧チョッパは、前記中間コンデンサに並列に接続されたスイッチング素子及び還流ダイオードの直列回路と、前記還流ダイオードに並列に接続されたリアクトル及び出力コンデンサの直列回路とを備える。
【0004】
このように、前記図9に示す回路では、直流-直流変換器の出力側である前記降圧チョッパの出力側に、リアクトル及び出力コンデンサが設けられている。このリアクトル及び出力コンデンサによって、前記降圧チョッパの出力電圧を平滑化することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2016-149881号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前記特許文献1の図9に示す回路のように出力側に出力コンデンサを有する構成では、前記出力コンデンサの容量を大きくすることにより、出力電圧の安定性を向上させることができる。
【0007】
ところで、近年、電力変換装置の性能向上が求められており、特に、出力電圧の応答性向上が求められている。前記電力変換装置において出力電圧の応答性を向上するためには、前記出力コンデンサの容量を小さくすることが考えられるが、前記出力コンデンサの容量が小さくなると、出力電圧の安定性が低下する。
【0008】
そのため、出力電圧の応答性を向上しつつ出力電圧の安定性も確保できるような電力変換装置が求められている。
【0009】
本発明の目的は、出力電圧の応答性を向上しつつ出力電圧の安定性も確保できるような電力変換装置を実現することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一実施形態に係る電力変換装置は、出力側にリアクトル及びコンデンサを有し、前記コンデンサの出力電圧を調整する。前記電力変換装置は、電圧指令に応じて前記コンデンサの出力電圧を制御するように、所定の出力値を出力する電圧制御部と、前記電圧制御部の出力値に応じて前記コンデンサの入力電流を制御する電流制御部と、を有する。前記電流制御部は、前記電圧制御部の出力値と前記コンデンサの入力電流とが比例関係になるように、前記リアクトルのリアクトル推定値及び内部抵抗推定値を用いてフィードフォワード制御を行うフィードフォワード制御部を有する(第1の構成)。
【0011】
これにより、電圧制御部の出力値に基づいてコンデンサの入力電流をコントロールできるため、出力電流の影響を受けずに、前記コンデンサの出力電圧を調整できる。よって、前記コンデンサの出力電圧の応答性を向上できる。したがって、負荷変動が生じた場合でも出力電圧の応答性が高い電力変換装置を実現できる。
【0012】
前記第1の構成において、前記フィードフォワード制御部は、前記電流制御部の伝達関数が定数になるように、前記リアクトルのリアクトル推定値及び内部抵抗推定値を用いてフィードフォワード制御を行う(第2の構成)。
【0013】
これにより、電圧制御部の出力値とコンデンサの入力電流とを容易に比例関係にすることができる。よって、第1の構成を容易に実現できる。
【0014】
前記第2の構成において、前記フィードフォワード制御部は、前記電圧制御部の出力値に電力変換装置の出力電流を加算して得られる電流目標値に基づいて、前記リアクトルの入力電圧に対してフィードフォワード制御を行う(第3の構成)。
【0015】
これにより、電力変換装置の出力電流を考慮した電流目標値に基づいてフィードフォワード制御を行って、前記電流制御部の伝達関数を定数にすることができる。よって、第1の構成を実現できる。
【0016】
したがって、負荷が変動した場合でも、出力電流の影響を受けることなく、出力電圧の応答性が高い電力変換装置を実現できる。
【0017】
前記第3の構成において、前記電流制御部は、前記リアクトルを流れる電流を前記電流目標値に対してフィードバックするフィードバック部をさらに有する(第4の構成)。
【0018】
フィードフォワード制御部及び出力電圧に生じる誤差を、リアクトルを流れる電流のフィードバックによって打ち消すことができる。よって、電圧制御部の出力値に基づいてコンデンサの入力電流をより精度良く調整できる。
【0019】
前記第3または第4の構成において、前記負荷部及び前記コンデンサは、複数の部品を含む回路によって構成されている。前記回路は、前記コンデンサの出力電圧を前記リアクトルの入力電圧に対して減算するリアクトル電圧算出部を有する。前記電流制御部は、前記リアクトル電圧算出部による前記出力電圧の減算をキャンセルするように、前記出力電圧を前記入力電圧に加算する電圧加算部をさらに有する(第5の構成)。
【0020】
これにより、電流制御部においてコンデンサの出力電圧の影響を排除できるため、前記電流制御部の制御ブロックを簡略化できる。よって、負荷が変動した場合でも、出力電圧の影響を受けずに、電圧制御部の出力値に基づいて前記コンデンサの出力電圧を調整できる。したがって、出力電圧の応答性をより向上することができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明の一実施形態に係る電力変換装置は、出力側にリアクトル及びコンデンサを有する。また、前記電力変換装置は、前記コンデンサの出力電圧を制御する電圧制御部と、前記電圧制御部の出力値に応じて前記コンデンサの入力電流を制御する電流制御部とを有する。前記電流制御部は、前記電圧制御部の出力値と前記コンデンサの入力電流とが比例関係になるように、前記リアクトルのリアクトル推定値及び内部抵抗推定値を用いてフィードフォワード制御を行うフィードフォワード制御部を有する。
【0022】
これにより、電圧制御部の出力値に基づいてコンデンサの入力電流をコントロールできるため、出力電流の影響を受けずに、前記コンデンサの出力電圧を調整できる。よって、前記コンデンサの出力電圧の応答性を向上できる。したがって、負荷変動が生じた場合に出力電圧の応答性が高い電力変換装置を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1図1は、実施形態に係る電力変換装置の概略構成を示す図である。
図2図2は、従来の制御の概略を示す制御ブロック図である。
図3図3は、本実施形態の制御の概略を示す制御ブロック図である。
図4図4は、本実施形態の制御の等価ブロック図である。
図5図5は、本実施形態の制御における各位置での制御ゲインの変化の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、図面を参照し、本発明の実施の形態を詳しく説明する。図中の同一または相当部分については同一の符号を付してその説明は繰り返さない。
【0025】
(全体構成)
図1は、本発明の実施形態に係る電力変換装置1の概略構成を示す図である。この電力変換装置1は、入力電圧を昇圧した後に降圧して、所定の出力電圧を出力する。電力変換装置1は、例えば、インバータやバッテリの試験を行うためのバッテリ模擬装置(BTS)として用いられる。
【0026】
電力変換装置1は、昇圧チョッパ回路10と、降圧チョッパ回路20と、制御部30とを有する。昇圧チョッパ回路10は、直流電源2に接続されていて、直流電源2から得られる入力電圧を昇圧する。降圧チョッパ回路20は、昇圧チョッパ回路10によって昇圧された電圧を降圧して負荷3に出力する。
【0027】
昇圧チョッパ回路10は、入力側コンデンサ11と、リアクトル12と、一対の昇圧側スイッチング素子13,14と、中間コンデンサ15と、還流ダイオード16,17とを有する。
【0028】
入力側コンデンサ11は、前記直流電源の正極側端子と負極側端子との間を電気的に接続している。一対の昇圧側スイッチング素子13,14は、電気的に直列に接続されている。一対の昇圧側スイッチング素子13,14の中点は、リアクトル12を介して入力側コンデンサ11の正極側に電気的に接続されている。一対の昇圧側スイッチング素子13,14における一方の端点は、入力側コンデンサ11の負極側に電気的に接続されている。
【0029】
還流ダイオード16,17は、昇圧側スイッチング素子13,14に対して電気的に並列に接続されている。還流ダイオード16,17は、一対の昇圧側スイッチング素子13,14に耐圧を超えるような逆電位がかかった場合に電流が流れるように設けられている。
【0030】
中間コンデンサ15は、一対の昇圧側スイッチング素子13,14に対して電気的に並列に接続されている。
【0031】
上述の構成を有する昇圧チョッパ回路10は、一対の昇圧側スイッチング素子13,14を駆動させることにより、直流電源2から入力される電流を中間コンデンサ15に流して、直流電源2から入力される電圧を昇圧させる。
【0032】
降圧チョッパ回路20は、出力側コンデンサ21と、出力側リアクトル22と、一対の降圧側スイッチング素子23,24と、還流ダイオード26,27とを有する。
【0033】
一対の降圧側スイッチング素子23,24は、電気的に直列に接続されているとともに、昇圧チョッパ回路10の中間コンデンサ15に対して電気的に並列に接続されている。一対の降圧側スイッチング素子23,24の中点は、出力側リアクトル22を介して出力側コンデンサ21の正極側に電気的に接続されている。一対の降圧側スイッチング素子23,24における一方の端点が、出力側コンデンサ21の負極側に電気的に接続されている。
【0034】
還流ダイオード26,27は、降圧側スイッチング素子23,24に対して電気的に並列に接続されている。還流ダイオード26,27は、一対の降圧側スイッチング素子23,24に耐圧を超えるような逆電位がかかった場合に電流が流れるように設けられている。
【0035】
上述の構成を有する降圧チョッパ回路20は、一対の降圧側スイッチング素子23,24を駆動させることにより、昇圧チョッパ回路10から出力側リアクトル22に電流を流して、昇圧チョッパ回路10の出力側の電圧を降圧させる。昇圧チョッパ回路10は、出力側リアクトル22及び出力側コンデンサ21によって電圧を平滑化して、負荷3に出力する。
【0036】
制御部30は、電圧指令Vrefに応じて、昇圧チョッパ回路10における一対の昇圧側スイッチング素子13,14及び降圧チョッパ回路20における一対の降圧側スイッチング素子23,24の駆動をそれぞれ制御する。制御部30は、一対の昇圧側スイッチング素子13,14及び一対の降圧側スイッチング素子23,24の駆動を制御することにより、降圧チョッパ回路20から負荷3に所定の出力電圧を出力させる。制御部30は、例えば、デジタルシグナルプロセッサなどによって実現されてもよいし、ソフトウェア等によって実現されてもよい。
【0037】
まず、従来の制御部(以下、制御部130という)を備えた電力変換装置について、図2に示す制御ブロック図を用いて説明する。具体的には、制御部130は、電圧指令Vrefに応じて降圧チョッパ回路20から前記所定の出力電圧が出力されるように、一対の昇圧側スイッチング素子13,14及び一対の降圧側スイッチング素子23,24に対し、電圧制御及び電流制御を行う。
【0038】
詳しくは、制御部130は、電圧制御部31と、電流制御部32と、電圧偏差演算部33と、電流加算部34と、電流偏差演算部35とを有する。なお、特に図示しないが、降圧側チョッパ回路において、出力側リアクトル22及び出力側コンデンサ21は、一対の降圧側スイッチング素子23,24とともに回路基板上に回路Bの一部として設けられている。回路Bは、リアクトル電圧算出部36及びコンデンサ電流算出部37を含む。
【0039】
電圧偏差演算部33は、電圧指令Vrefと降圧チョッパ回路20の出力電圧Vo(出力側コンデンサ21の出力電圧)との差を求める。電圧制御部31は、部電圧偏差演算部33によって求められた前記差に基づいて、出力電圧Voを制御するための出力値Idcl*を生成して出力する。なお、出力値Idcl*は、本発明における所定の出力値である。
【0040】
出力値Idcl*には、電流加算部34によって降圧チョッパ回路20の出力電流Io(出力側コンデンサ21の出力電流)が加算され、電流偏差演算部35によって降圧チョッパ回路20の出力側リアクトル22の出力電流Idclが減算される。減算後に得られた信号は、電流制御部32に入力される。これにより、電流制御部32によって、出力側コンデンサ21の出力電流Io及び出力側リアクトル22の出力電流Idclを考慮した電流制御が可能になる。
【0041】
電流制御部32は、入力された信号に基づいて、出力側リアクトル22に所定の電流Idclが流れるように、出力側リアクトル22に対する入力電圧Vinを生成する。この入力電圧Vinに対し、リアクトル電圧算出部36によって出力側コンデンサ21の出力電圧Voが減算される。減算後に得られた信号は、出力側リアクトル22に入力される。
【0042】
出力側リアクトル22の出力電流Idclに対し、コンデンサ電流算出部37によって出力側コンデンサ21の出力電流Ioが減算される。減算後に得られた信号は、入力電流Icとして出力側コンデンサ21に入力される。
【0043】
電流制御部32及び出力側リアクトル22の伝達関数をP1とし、電圧制御部31の伝達関数をGcとし、出力側コンデンサ21の伝達関数をP2とすると、上述の制御部130を備えた電力変化装置の出力電圧Voは、下式によって、表される。なお、出力側リアクトル22の伝達関数には、出力側リアクトル22等の内部抵抗の成分も含まれている。
【数1】
【0044】
上式において、P1は時間経過とともに1になるため、定常状態では、第2項はゼロである。しかし、過渡的には、第2項はゼロにならないため、出力電圧Voは、出力電流Ioの影響を受ける。よって、負荷変動時の出力電流Ioの変化によって、出力電圧Voは安定しない可能性がある。
【0045】
これに対し、本実施形態の電力変換装置1は、上述の制御部130の代わりに、図3に示す制御ブロック図で表される制御を実現可能な制御部30を有する。制御部30は、上述のような出力電圧Voに対する出力電流Ioの影響を排除するために、従来の制御部130の構成に加えて、フィードフォワード制御部40と、電圧加算部50とを有する。
【0046】
電圧加算部50は、出力側リアクトル22の入力電圧Vinに対して出力側コンデンサ21の出力電圧Voを加算する。また、電圧加算部50において、入力電圧Vinには、後述するフィードフォワード制御部40の指令値も加算される。
【0047】
上述のように電圧加算部50で出力側リアクトル22の入力電圧Vinに対して出力側コンデンサ21の出力電圧Voを加算することにより、出力側リアクトル22の出力電流Idclと入力電圧Vinとの関係は、下式によって表される。
【数2】
【0048】
したがって、電力変換装置1の制御ブロックにおいて出力電圧Voの成分を排除できるため、前記制御ブロックを簡略化できる。すなわち、出力側リアクトル22の入力電圧Vinに対する出力電圧Voの減算をキャンセルすることにより、出力側リアクトル22の出力電流Idclにおける出力電圧Voの影響を排除できる。
【0049】
フィードフォワード制御部40は、電圧加算部50で、出力側リアクトル22の入力電圧Vinに対して、指令値L・(s+r/L)(Idcl*+Io)を足す。前記指令値には、出力側リアクトル22のリアクトル推定値(L)及び内部抵抗推定値(r)の成分が含まれている。内部抵抗推定値は、電力変換装置1の出力側における内部抵抗の推定値である。
【0050】
フィードフォワード制御部40は、指令値生成部41を有し、指令値生成部41で生成された前記指令値を、電圧加算部50によって、出力側リアクトル22の入力電圧Vinに加算する。上述のようにフィードフォワード制御部40によって入力電圧Vinに対して前記指令値を加算することにより、[数2]から下式が導かれる。
【数3】
【0051】
よって、出力側コンデンサ21の入力電流Icは、以下のように表される。
Ic=Idcl-Io
=(Idcl*+Io)-Io
=Idcl*
【0052】
これにより、出力側コンデンサ21の出力電流Ioは、電圧制御部31から出力される出力値Idcl*と等しくなる。よって、図3に示す制御ブロック図は、図4に示すような等価ブロック図で表される。
【0053】
したがって、電力変換装置1が本実施形態のような制御部30を有することにより、出力電圧Voが出力電流Ioの影響を受けない制御系を実現できる。よって、負荷変動時でも安定した出力電圧Voが得られる。
【0054】
なお、フィードフォワード制御部40から入力される前記指令値と出力電圧Voの検出値とには誤差があるが、電流偏差演算部35によるIdclのフィードバックによって、前記誤差を定常的に打ち消すことができる。電流偏差演算部35によるIdclのフィードバックを行うのが、本発明のフィードバック部60である。
【0055】
図5(a)から(d)に、上述のような構成を有する制御部30において、出力側コンデンサ21の出力電流Ioの変化と、図3に示す(a)から(d)の各位置における制御ゲインの変化との関係を示す。
【0056】
従来の制御部130では、電流制御部32によって生成される入力電圧Vinを出力側リアクトル22に入力していため、例えば図5(a)に示す制御ゲインによって制御が行われていた。
【0057】
これに対し、本実施形態の制御部30では、電圧加算部50によって、入力電圧Vinに出力電圧Voを加算するため、例えば図5(b)に示す制御ゲインが図5(a)に示す制御ゲインに加算される。また、制御部30では、フィードフォワード制御部40及び電圧加算部50によって、入力電圧Vinに指令値を加算するため、例えば図5(c)に示す制御ゲインが図5(a)に示す制御ゲインにさらに加算される。これにより、電圧加算部50によって加算された後の制御ゲインは、図5(d)に示す制御ゲインとなる。図5(d)に示す制御ゲインは、出力電流の変化に対して追従している。したがって、電力変換装置1は、負荷3に変動が生じた場合でも出力電圧Voの応答性の向上を図ることができる。
【0058】
本実施形態に係る電力変換装置1は、出力側に出力側リアクトル22及び出力側コンデンサ21を有し、出力側コンデンサ21の出力電圧Voを調整する。電力変換装置1は、電圧指令Vrefに応じて出力側コンデンサ21の出力電圧Voを制御するように、出力値Idcl*を出力する電圧制御部31と、電圧制御部31の出力値Idcl*に応じて出力側コンデンサ21の入力電流Icを制御する電流制御部32と、を有する。電流制御部32は、電圧制御部31の出力値Idcl*と出力側コンデンサ21の入力電流Icとが比例関係になるように、出力側リアクトル22のリアクトル推定値及び内部抵抗推定値を用いてフィードフォワード制御を行うフィードフォワード制御部40を有する。
【0059】
これにより、電圧制御部31の出力値Idclに基づいて出力側コンデンサ21の入力電流Icをコントロールできる。そのため、出力電流Ioの影響を受けずに、出力側コンデンサ21の出力電圧Voを調整できる。よって、出力側コンデンサ21の出力電圧Voの応答性を向上できる。したがって、負荷3に変動が生じた場合でも出力電圧Voの応答性が高い電力変換装置1を実現できる。
【0060】
また、本実施形態では、フィードフォワード制御部40は、電流制御部32の伝達関数が定数になるように、出力側リアクトル22のリアクトル推定値及び内部抵抗推定値を用いてフィードフォワード制御を行う。
【0061】
これにより、電圧制御部31の出力値Idcl*と出力側コンデンサ21の入力電流Icとを容易に比例関係にすることができる。よって、本実施形態の構成を容易に実現できる。
【0062】
また、本実施形態では、フィードフォワード制御部40は、電圧制御部31の出力値Idcl*に電力変換装置の出力電流Ioを加算して得られる電流目標値に基づいて、出力側リアクトル22の入力電圧Vinに対してフィードフォワード制御を行う。
【0063】
これにより、電力変換装置1の出力電流Ioを考慮した電流目標値に基づいてフィードフォワード制御を行って、電流制御部32の伝達関数を定数にすることができる。よって、本実施形態の構成を実現できる。
【0064】
したがって、負荷が変動した場合でも、出力電流Ioの影響を受けることなく、出力電圧Voの応答性が高い電力変換装置1を実現できる。
【0065】
また、本実施形態では、電流制御部32は、出力側リアクトル22を流れる電流Idclを前記電流目標値に対してフィードバックするフィードバック部60をさらに有する。
【0066】
フィードフォワード制御部40及び出力電圧Voに生じる誤差を、出力側リアクトル22の出力電流Idclのフィードバックによって打ち消すことができる。よって、電圧制御部31の出力値Idcl*に基づいて出力側コンデンサ21の入力電流Icをより精度良く調整できる。
【0067】
また、本実施形態では、出力側リアクトル22及び出力側コンデンサ21は、複数の部品を含む回路Bによって構成されている。回路Bは、出力側コンデンサ21の出力電圧Voを出力側リアクトル22の入力電圧Vinに対して減算するリアクトル電圧算出部36を有する。電流制御部32は、リアクトル電圧算出部36による出力電圧Voの減算をキャンセルするように、出力電圧Voを入力電圧Vinに加算する電圧加算部50をさらに有する。
【0068】
これにより、電流制御部32において出力側コンデンサ21の出力電圧Voの影響を排除できるため、電流制御部32の制御ブロックを簡略化できる。よって、負荷が変動した場合でも、出力電圧Voの影響を受けずに、電圧制御部31の出力値Idcl*に基づいて出力側コンデンサ21の出力電圧Voを調整できる。したがって、出力電圧Voの応答性をより向上することができる。
【0069】
(その他の実施形態)
以上、本発明の実施の形態を説明したが、上述した実施の形態は本発明を実施するための例示に過ぎない。よって、上述した実施の形態に限定されることなく、その趣旨を逸脱しない範囲内で上述した実施の形態を適宜変形して実施することが可能である。
【0070】
前記実施形態では、電力変換装置1は、昇圧チョッパ回路10と、降圧チョッパ回路20と、制御部30とを有する。しかしながら、電力変換装置は、昇圧チョッパ回路を含む装置であってもよいし、降圧チョッパ回路を含む装置であってもよい。また、電力変換装置は、昇圧チョッパ回路及び降圧チョッパ回路以外の構成を含んでいてもよい。電力変換装置は、昇圧チョッパ回路及び降圧チョッパ回路を含んでいなくてもよい。電力変換装置は、出力側にリアクトル及びコンデンサを有していれば、どのような構成を有する電力変換装置であってもよい。
【0071】
前記実施形態では、制御部30は、出力側コンデンサ21の出力電流Ioが電圧制御部31から出力される出力値Idcl*と等しくなるように構成されている。しかしながら、制御部は、出力側コンデンサの出力電流と電圧制御部から出力される出力値とが比例関係になるように構成されていてもよい。すなわち、出力側コンデンサの出力電流と電圧制御部から出力される出力値との関係が、1対1の関係でなくてもよい。
【0072】
前記実施形態では、フィードフォワード制御部40は、電圧加算部50で、出力側リアクトル22の入力電圧Vinに対して、指令値L・(s+r/L)(Idcl*+Io)を足す。しかしながら、フィードフォワード制御部は、電圧制御部の出力値と出力側コンデンサの入力電流とが比例関係になるように出力側リアクトルのリアクトル推定値及び内部抵抗推定値を用いてフィードフォワード制御を行う構成であれば、どのような構成を有していてもよい。
【0073】
前記実施形態では、電流制御部32は、電圧制御部31の出力値Idcl*に出力電流Ioが加算されて得られる電流目標値に対し、出力側リアクトル22を流れる電流Idclを、電流偏差演算部35によってフィードバックするフィードバック部60を有する。しかしながら、電流制御部は、フィードバック部を有していなくてもよい。
【0074】
前記実施形態では、回路Bは、出力側リアクトル22、出力側コンデンサ21、リアクトル電圧算出部36及びコンデンサ電流算出部37を有する。しかしながら、回路は、出力側リアクトル、出力側コンデンサ、リアクトル電圧算出部及びコンデンサ電流算出部の少なくとも一つを含んでいなくてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0075】
本発明は、出力側にリアクトル及びコンデンサを有し、前記コンデンサの出力電圧を調整する電力変換装置に利用可能である。
【符号の説明】
【0076】
1 電力変換装置
2 直流電源
3 負荷
10 昇圧チョッパ回路
11 入力側コンデンサ
12 リアクトル
13、14 昇圧側スイッチング素子
15 中間コンデンサ
16、17 還流ダイオード
20 降圧チョッパ回路
21 出力側コンデンサ(コンデンサ)
22 出力側リアクトル(リアクトル)
23、24 降圧側スイッチング素子
26、27 還流ダイオード
30、130 制御部
31 電圧制御部
32 電流制御部
33 電圧偏差演算部
34 電流加算部
35 電流偏差演算部
36 リアクトル電圧算出部
37 コンデンサ電流算出部
40 フィードフォワード制御部
41 指令値生成部
50 電圧加算部
60 フィードバック部
B 回路
図1
図2
図3
図4
図5