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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024030751
(43)【公開日】2024-03-07
(54)【発明の名称】電力変換装置
(51)【国際特許分類】
   H02M 3/155 20060101AFI20240229BHJP
【FI】
H02M3/155 H
H02M3/155 S
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022133842
(22)【出願日】2022-08-25
(71)【出願人】
【識別番号】000002059
【氏名又は名称】シンフォニアテクノロジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100142022
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 一晃
(72)【発明者】
【氏名】坂本 竜也
【テーマコード(参考)】
5H730
【Fターム(参考)】
5H730AA15
5H730AS04
5H730AS05
5H730BB13
5H730BB14
5H730DD02
5H730FD01
5H730FF02
5H730FG05
(57)【要約】
【課題】昇圧部及び降圧部を備え、前記昇圧部の出力側に、前記降圧部に電力を供給する中間コンデンサが位置する電力変換装置において、前記中間コンデンサのコストを低減し且つ電力変換装置の小型化を実現可能な構成を実現する。
【解決手段】電力変換装置1は、昇圧チョッパ回路10と、降圧チョッパ回路20と、昇圧チョッパ回路10の出力側に位置し、降圧チョッパ回路20に電力を供給する中間コンデンサ15と、駆動制御部30とを備えている。駆動制御部30は、中間コンデンサ15の正極側に電気的に接続された昇圧側上アームスイッチング素子13のオン期間と、中間コンデンサ15の正極側に電気的に接続された降圧側上アームスイッチング素子23のオン期間とが重なるように、一対の昇圧側スイッチング素子13,14及び一対の降圧側スイッチング素子23,24の少なくとも一方のスイッチング動作を制御する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
直流電源に電気的に接続され、出力電圧指令に応じて入力電圧を昇圧する昇圧部と、
前記昇圧部の出力側に対して電気的に接続され、前記出力電圧指令に応じて降圧した電圧を出力する降圧部と、
前記昇圧部の出力側に位置し、前記降圧部に電力を供給する中間コンデンサと、
前記昇圧部及び前記降圧部の駆動をそれぞれ制御する駆動制御部と、
を備えた電力変換装置であって、
前記昇圧部は、前記中間コンデンサに対して電気的に並列に接続されていて、互いに電気的に直列に接続された一対の昇圧側スイッチング素子を有し、
前記降圧部は、前記中間コンデンサに対して電気的に並列に接続されていて、互いに電気的に直列に接続された一対の降圧側スイッチング素子を有し、
前記駆動制御部は、前記一対の昇圧側スイッチング素子のうち前記中間コンデンサの正極側に電気的に接続された昇圧側上アームスイッチング素子がオン状態であるオン期間と、前記一対の降圧側スイッチング素子のうち前記中間コンデンサの正極側に電気的に接続された降圧側上アームスイッチング素子がオン状態であるオン期間とが重なるように、前記一対の昇圧側スイッチング素子及び前記一対の降圧側スイッチング素子の少なくとも一方のスイッチング動作を制御する、
電力変換装置。
【請求項2】
請求項1に記載の電力変換装置において、
前記駆動制御部は、前記昇圧側上アームスイッチング素子の前記オン期間の中心と前記降圧側上アームスイッチング素子の前記オン期間の中心とが一致するように、前記一対の昇圧側スイッチング素子及び前記一対の降圧側スイッチング素子の少なくとも一方のスイッチング動作を制御する、
電力変換装置。
【請求項3】
請求項1に記載の電力変換装置において、
前記駆動制御部は、前記昇圧側上アームスイッチング素子の前記オン期間が前記降圧側上アームスイッチング素子の前記オン期間と重なるように、前記一対の昇圧側スイッチング素子のスイッチング動作のタイミングを、前記出力電圧指令に応じて決まるスイッチング動作のタイミングとは異なるタイミングに変更する、
電力変換装置。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか一つに記載の電力変換装置において、
前記駆動制御部は、
前記一対の昇圧側スイッチング素子及び前記一対の降圧側スイッチング素子のうちスイッチング動作のタイミングを変更するスイッチング素子に入力される駆動信号を生成するための指令信号を、キャリア周波数の三角波に対する位相がずれるように変換する指令信号処理部と、
前記変換後の指令信号と前記三角波とを比較する三角波比較部と、
前記三角波比較部による比較結果を用いて、前記駆動信号を生成する駆動信号生成部と、
を有する、
電力変換装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、出力電圧指令に応じて電圧変換を行う昇圧部及び降圧部を有する電力変換装置に関する。
【背景技術】
【0002】
出力電圧指令に応じて電圧変換を行う昇圧部及び降圧部を有する電力変換装置が知られている。このような電力変換装置の一例として、例えば特許文献1には、降圧チョッパ及び昇圧チョッパを備えた直流-直流変換器が開示されている。
【0003】
前記直流-直流変換器では、前記特許文献1の図9に示すように、前記降圧チョッパと前記昇圧チョッパとが、入力電圧を昇圧後、降圧するように接続されている。前記昇圧チョッパは、入力電圧が印加される正極入力端子と負極入力端子との間に接続された入力コンデンサと、前記入力コンデンサに並列に接続されたリアクトル及びスイッチング素子の直列回路と、前記スイッチング素子に並列に接続された還流ダイオード及び中間コンデンサの直列回路とを備える。前記降圧チョッパは、前記中間コンデンサに並列に接続されたスイッチング素子及び還流ダイオードの直列回路と、前記還流ダイオードに並列に接続されたリアクトル及び出力コンデンサの直列回路とを備える。
【0004】
すなわち、前記図9に示す回路では、前記昇圧チョッパと前記降圧チョッパとが、中間コンデンサを介して接続されている。前記昇圧チョッパのスイッチング素子を駆動させることにより、中間コンデンサに充電して入力電圧を昇圧させる。一方、前記降圧チョッパのスイッチング素子を駆動させることにより、昇圧させた入力電圧を降圧させて、出力する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2016-149881号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、前記特許文献1の図9に示す回路のように昇圧チョッパと降圧チョッパとが中間コンデンサを介して接続されている構成では、前記中間コンデンサに流れる電流が大きく変動する。そのため、前記中間コンデンサの容量を、或る程度、確保する必要がある。
【0007】
よって、上述のような回路構成では、前記中間コンデンサとして、比較的大型のコンデンサを用いる必要がある。したがって、前記中間コンデンサとして高価なコンデンサを用いる必要があるとともに、前記中間コンデンサを搭載した電力変換装置が大型化する。
【0008】
本発明の目的は、昇圧部及び降圧部を備え、前記昇圧部の出力側に、前記降圧部に電力を供給する中間コンデンサが位置する電力変換装置において、前記中間コンデンサのコストを低減し且つ電力変換装置の小型化を実現可能な構成を実現することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一実施形態に係る電力変換装置は、直流電源に電気的に接続され、出力電圧指令に応じて入力電圧を昇圧する昇圧部と、前記昇圧回路の出力側に対して直列に接続され、前記出力電圧指令に応じて入力電圧を降圧する降圧部と、前記昇圧部の出力側に位置し、前記降圧部に電力を供給する中間コンデンサと、前記昇圧部及び前記降圧部の駆動をそれぞれ制御する駆動制御部と、を備えた電力変換装置である。前記昇圧部は、前記中間コンデンサに対して電気的に並列に接続されていて、互いに電気的に直列に接続された一対の昇圧側スイッチング素子を有する。前記降圧部は、前記中間コンデンサに対して電気的に並列に接続されていて、互いに電気的に直列に接続された一対の降圧側スイッチング素子を有する。前記駆動制御部は、前記一対の昇圧側スイッチング素子のうち前記中間コンデンサの正極側に電気的に接続された昇圧側上アームスイッチング素子がオン状態であるオン期間と、前記一対の降圧側スイッチング素子のうち前記中間コンデンサの正極側に電気的に接続された降圧側上アームスイッチング素子がオン状態であるオン期間とが重なるように、前記一対の昇圧側スイッチング素子及び前記一対の降圧側スイッチング素子の少なくとも一方のスイッチング動作を制御する(第1の構成)。
【0010】
このように昇圧部の出力側に位置し且つ降圧部に電力を供給する中間コンデンサに対して、一対の昇圧側スイッチング素子及び一対の降圧側スイッチング素子がそれぞれ電気的に並列に接続されている回路構成では、前記昇圧部によって入力電圧を昇圧する際に、前記中間コンデンサに電流が流れる一方、前記降圧部によって降圧する際に、前記中間コンデンサから電流が流れる。よって、前記昇圧部及び前記降圧部の動作によって、前記中間コンデンサに流れる電流が大きく変動する。
【0011】
これに対し、駆動制御部によって、昇圧側上アームスイッチング素子がオン状態であるオン期間と降圧側上アームスイッチング素子がオン状態であるオン期間とが重なるように、前記一対の昇圧側スイッチング素子及び前記一対の降圧側スイッチング素子の少なくとも一方のスイッチング動作を制御することにより、前記昇圧部から前記降圧部に電流を直接流す期間を設けることができる。よって、前記昇圧部及び前記降圧部の動作によって前記中間コンデンサに流れる電流の変動を抑制することができる。
【0012】
したがって、前記中間コンデンサの容量を小さくできるため、前記中間コンデンサのコストを低減し且つ電力変換装置の小型化を図れる。
【0013】
前記駆動制御部は、前記昇圧側上アームスイッチング素子の前記オン期間の中心と前記降圧側上アームスイッチング素子の前記オン期間の中心とが一致するように、前記一対の昇圧側スイッチング素子及び前記一対の降圧側スイッチング素子の少なくとも一方のスイッチング動作を制御する(第2の構成)。
【0014】
これにより、昇圧部及び降圧部を動作させる際に、昇圧側上アームスイッチング素子のオン期間と降圧側上アームスイッチング素子のオン期間とをより確実に且つより広い範囲で重ねることができる。そのため、前記昇圧部及び前記降圧部の動作時に、前記昇圧部から前記降圧部に電流を直接流す期間をより長くすることができる。よって、前記昇圧部及び前記降圧部の動作によって中間コンデンサに流れる電流の変動を抑制することができる。
【0015】
したがって、前記中間コンデンサの容量をより小さくできるため、前記中間コンデンサのコストをより低減し且つ電力変換装置のより小型化を図れる。
【0016】
前記第1の構成において、前記駆動制御部は、前記昇圧側上アームスイッチング素子の前記オン期間が前記降圧側上アームスイッチング素子の前記オン期間と重なるように、前記一対の昇圧側スイッチング素子のスイッチング動作のタイミングを、前記出力電圧指令に応じて決まるスイッチング動作のタイミングとは異なるタイミングに変更する(第3の構成)。
【0017】
これにより、昇圧部及び降圧部を動作させる際に、一対の昇圧側スイッチング素子の駆動を制御して、昇圧側上アームスイッチング素子のオン期間と降圧側上アームスイッチング素子のオン期間とを容易に重ねることができる。よって、請求項1の構成を容易に実現できる。
【0018】
前記第1から第3の構成のうちいずれか一つの構成において、前記駆動制御部は、前記一対の昇圧側スイッチング素子及び前記一対の降圧側スイッチング素子のうちスイッチング動作のタイミングを変更するスイッチング素子に入力される駆動信号を生成するための指令信号を、キャリア周波数の三角波に対する位相がずれるように変換する指令信号処理部と、前記変換後の指令信号と前記三角波とを比較する三角波比較部と、前記三角波比較部による比較結果を用いて、前記駆動信号を生成する駆動信号生成部と、を有する(第4の構成)。
【0019】
これにより、指令信号を変換して、前記第1の構成を実現できる。よって、スイッチング素子に入力される駆動信号を作成する際に用いられるキャリア周波数を変える場合に比べて、前記第1の構成を容易に実現できる。
【発明の効果】
【0020】
本発明の一実施形態に係る電力変換装置は、昇圧部と、降圧部と、前記昇圧部の出力側に位置し且つ前記降圧部に電力を供給する中間コンデンサと、前記昇圧部及び前記降圧部の駆動をそれぞれ制御する駆動制御部とを備える。前記駆動制御部は、前記昇圧部の昇圧側上アームスイッチング素子のオン期間と前記降圧部の降圧側上アームスイッチング素子のオン期間とが重なるように、一対の昇圧側スイッチング素子及び一対の降圧側スイッチング素子の少なくとも一方のスイッチング動作を制御する。
【0021】
これにより、前記昇圧部及び前記降圧部の動作時に、前記昇圧部から前記降圧部に電流を直接流す期間を設けることができる。よって、前記昇圧部及び前記降圧部の動作によって前記中間コンデンサに流れる電流の変動を抑制することができる。したがって、前記中間コンデンサの容量を小さくできるため、前記中間コンデンサのコストを低減し且つ電力変換装置の小型化を図れる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1図1は、実施形態1に係る電力変換装置の概略構成を示す図である。
図2図2は、昇圧チョッパ駆動制御部の概略構成を示す機能ブロック図である。
図3図3は、昇圧チョッパ駆動制御部において指令信号処理部によって生成された信号と三角波との比較の様子を模式的に示す図である。
図4図4は、降圧チョッパ駆動制御部の概略構成を示す機能ブロック図である。
図5図5は、電力変換装置の昇圧チョッパ回路及び降圧チョッパ回路内を流れる電流の向きの一例を示す図である。
図6図6は、昇圧側上アームスイッチング素子のオン期間と降圧側上アームスイッチング素子のオン期間とが重なっていない場合において、電力変換装置の昇圧チョッパ回路及び降圧チョッパ回路の各位置を流れる電流の変化の一例を示す図である。
図7図7は、昇圧側上アームスイッチング素子のオン期間の中心と降圧側上アームスイッチング素子のオン期間の中心とを一致させた場合において、電力変換装置の昇圧チョッパ回路及び降圧チョッパ回路の各位置を流れる電流の変化の一例を示す図である。
図8図8は、実施形態2に係る電力変換装置の昇圧チョッパ駆動制御部の概略構成の一例を示す機能ブロック図である。
図9図9は、昇圧チョッパ駆動制御部において指令信号処理部によって生成された信号と位相が180度ずれた三角波との比較の様子を模式的に示す図である。
図10図10は、昇圧側上アームスイッチング素子のデューティ比が降圧側上アームスイッチング素子のデューティ比よりも大きい場合のスイッチング動作の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、図面を参照し、本発明の実施の形態を詳しく説明する。図中の同一または相当部分については同一の符号を付してその説明は繰り返さない。
【0024】
[実施形態1]
(全体構成)
図1は、本発明の実施形態1に係る電力変換装置1の概略構成を示す図である。この電力変換装置1は、入力電圧を昇圧した後に降圧して、所定の出力電圧を出力する。電力変換装置1は、例えば、インバータやバッテリの試験を行うためのバッテリ模擬装置(BTS)として用いられる。
【0025】
電力変換装置1は、昇圧チョッパ回路10(昇圧部)と、降圧チョッパ回路20(降圧部)と、駆動制御部30とを有する。昇圧チョッパ回路10は、図示しない直流電源に接続されていて、前記直流電源から得られる入力電圧を昇圧する。降圧チョッパ回路20は、昇圧チョッパ回路10によって昇圧された電圧を降圧する。
【0026】
昇圧チョッパ回路10は、入力側コンデンサ11と、リアクトル12と、一対の昇圧側スイッチング素子13,14と、中間コンデンサ15と、還流ダイオード16,17とを有する。
【0027】
入力側コンデンサ11は、前記直流電源の正極側端子と負極側端子との間を電気的に接続している。一対の昇圧側スイッチング素子13,14は、電気的に直列に接続されている。一対の昇圧側スイッチング素子13,14の中点は、リアクトル12を介して入力側コンデンサ11の正極側に電気的に接続されている。一対の昇圧側スイッチング素子13,14における一方の端点は、入力側コンデンサ11の負極側に電気的に接続されている。
【0028】
一対の昇圧側スイッチング素子13,14のうち入力側コンデンサ11に対して電気的に並列に接続されているスイッチング素子14が、昇圧側下アームスイッチング素子である。一対の昇圧側スイッチング素子13,14のうち他方のスイッチング素子13が、昇圧側上アームスイッチング素子である。
【0029】
還流ダイオード16は、昇圧側上アームスイッチング素子13に対して電気的に並列に接続されている。還流ダイオード17は、昇圧側下アームスイッチング素子14に対して電気的に並列に接続されている。還流ダイオード16,17は、一対の昇圧側スイッチング素子13,14に耐圧を超えるような逆電位がかかった場合に電流が流れるように設けられている。
【0030】
中間コンデンサ15は、一対の昇圧側スイッチング素子13,14に対して電気的に並列に接続されている。昇圧側上アームスイッチング素子13は、中間コンデンサ15の正極側に電気的に接続されている。昇圧側下アームスイッチング素子14は、中間コンデンサ15の負極側に電気的に接続されている。
【0031】
上述の構成を有する昇圧チョッパ回路10は、一対の昇圧側スイッチング素子13,14を駆動させることにより、図示しない直流電源から入力される電流を中間コンデンサ15に流して、前記直流電源から入力される電圧を昇圧させる。
【0032】
なお、一対の昇圧側スイッチング素子13,14は、一方の昇圧側スイッチング素子のみがオン状態になるように駆動制御される。
【0033】
降圧チョッパ回路20は、出力側コンデンサ21と、リアクトル22と、一対の降圧側スイッチング素子23,24と、還流ダイオード26,27とを有する。
【0034】
一対の降圧側スイッチング素子23,24は、電気的に直列に接続されているとともに、昇圧チョッパ回路10の中間コンデンサ15に対して電気的に並列に接続されている。一対の降圧側スイッチング素子23,24の中点は、リアクトル22を介して出力側コンデンサ21の正極側に電気的に接続されている。一対の降圧側スイッチング素子23,24における一方の端点が、出力側コンデンサ21の負極側に電気的に接続されている。
【0035】
一対の降圧側スイッチング素子23,24のうち出力側コンデンサ21に対して電気的に並列に接続されているスイッチング素子24が、降圧側下アームスイッチング素子である。一対の降圧側スイッチング素子23,24のうち他方のスイッチング素子23が、降圧側上アームスイッチング素子である。
【0036】
還流ダイオード26は、降圧側上アームスイッチング素子23に対して電気的に並列に接続されている。還流ダイオード27は、降圧側下アームスイッチング素子24に対して電気的に並列に接続されている。還流ダイオード26,27は、一対の降圧側スイッチング素子23,24に耐圧を超えるような逆電位がかかった場合に電流が流れるように設けられている。
【0037】
上述の構成を有する降圧チョッパ回路20は、一対の降圧側スイッチング素子23,24を駆動させることにより、昇圧チョッパ回路10からリアクトル22に電流を流して、昇圧チョッパ回路10の出力側の電圧を降圧させる。
【0038】
駆動制御部30は、昇圧チョッパ回路10における一対の昇圧側スイッチング素子13,14及び降圧チョッパ回路20における一対の降圧側スイッチング素子23,24の駆動をそれぞれ制御する。詳しくは、駆動制御部30は、昇圧チョッパ駆動制御部31と、降圧チョッパ駆動制御部36とを有する。
【0039】
昇圧チョッパ駆動制御部31は、図示しないコントローラから入力される昇圧電圧指令に基づいて、一対の昇圧側スイッチング素子13,14を駆動することにより、昇圧チョッパ回路10の出力側の電圧を前記昇圧電圧指令に応じた電圧に昇圧する。すなわち、昇圧チョッパ駆動制御部31は、前記昇圧電圧指令に基づいて、一対の昇圧側スイッチング素子13,14に対する駆動信号を生成する。なお、前記昇圧電圧指令は、図示しないコントローラにおいて後述する出力電圧指令に応じて生成される。
【0040】
また、昇圧チョッパ駆動制御部31は、降圧チョッパ回路20の降圧側上アームスイッチング素子23がオン状態になる期間(以下、オン期間という)と昇圧チョッパ回路10の昇圧側上アームスイッチング素子13のオン期間とが重なるように、一対の昇圧側スイッチング素子13,14の駆動を制御する駆動信号を生成する。
【0041】
昇圧チョッパ駆動制御部31の詳しい構成は後述する。
【0042】
降圧チョッパ駆動制御部36は、図示しないコントローラから入力される出力電圧指令に基づいて、一対の降圧側スイッチング素子23,24を駆動することにより、降圧チョッパ回路20の出力電圧を前記出力電圧指令に応じた電圧に降圧する。すなわち、降圧チョッパ駆動制御部36は、前記出力電圧指令に基づいて、一対の降圧側スイッチング素子23,24に対する駆動信号を生成する。
【0043】
降圧チョッパ駆動制御部36の詳しい構成は後述する。
【0044】
(駆動制御部)
次に、駆動制御部30の構成について、図2から図4を用いて詳細に説明する。図2は、昇圧チョッパ駆動制御部31の概略構成を示す機能ブロック図である。図3は、昇圧チョッパ駆動制御部31において指令信号処理部32によって生成された信号と三角波との比較の様子を模式的に示す図である。図4は、降圧チョッパ駆動制御部36の概略構成を示すブロック図である。上述のとおり、駆動制御部30は、昇圧チョッパ駆動制御部31と、降圧チョッパ駆動制御部36とを有する。
【0045】
図2に示すように、昇圧チョッパ駆動制御部31は、指令信号処理部32と、三角波比較部33と、駆動信号生成部34とを有する。
【0046】
指令信号処理部32は、昇圧チョッパ駆動制御部31に入力される昇圧電圧指令を、後述する三角波比較部33でキャリア周波数の三角波と比較可能な指令信号に変換する処理を行う。具体的には、指令信号処理部32は、減算器32aと、PI演算部32bと、リミッタ32cと、信号反転部32dと、スケール変換部32eとを有する。
【0047】
減算器32aは、前記昇圧電圧指令と昇圧チョッパ回路10の出力側の電圧との差を求める。PI演算部32bは、減算器32aによって求められた差に対し、PI演算を行う。リミッタ32cは、PI演算部32bの演算結果において、所定値以上の値をカットする。信号反転部32dは、信号の正負を反転させる。スケール変換部32eは、反転した信号が正の範囲になるように前記信号のスケール変換を行う。これにより、後述する三角波比較部33に入力される指令信号が生成される。
【0048】
なお、指令信号処理部32の構成は、前記昇圧電圧指令と昇圧チョッパ回路10の出力側の電圧との差を、キャリア周波数の三角波と比較可能な信号に変換可能な構成であれば、どのような構成であってもよい。
【0049】
上述のように指令信号処理部32が信号処理を行うことにより、図3(a)に示すように、三角波比較部33に入力される指令信号を、破線から実線に変換することができる。すなわち、指令信号処理部32は、スイッチング動作のタイミングを変更するスイッチング素子に入力される駆動信号を生成するための指令信号を、キャリア周波数の三角波に対する位相がずれるように変換する。
【0050】
三角波比較部33は、指令信号処理部32から出力された指令信号と、キャリア周波数の三角波とを比較し、両者の交点を立ち下がりまたは立ち上がりとする矩形波信号を生成する。図3(b)に、三角波比較部33によって生成される矩形波信号の一例を示す。上述のように指令信号処理部32において信号変換を行うことにより、図3(b)に示すように、三角波比較部33によって得られる矩形波信号の位相がずれる(図の例では180度)。
【0051】
駆動信号生成部34は、三角波比較部33から出力された矩形波信号を用いて、一対の昇圧側スイッチング素子13,14に対する駆動信号を生成する。具体的には、駆動信号生成部34は、前記矩形波信号を、昇圧側上アームスイッチング素子13の駆動信号とする。駆動信号生成部34は、前記矩形波信号に対してオンオフを反転させた信号を生成して、昇圧側下アームスイッチング素子14の駆動信号とする。
【0052】
以上のような昇圧チョッパ駆動制御部31の構成により、昇圧電圧指令に基づいて生成される駆動信号とは異なる位相の駆動信号を生成することができる。すなわち、昇圧チョッパ駆動制御部31は、一対の昇圧側スイッチング素子13,14のスイッチング動作のタイミングを、前記昇圧電圧指令の基になる出力電圧指令に応じて決まるスイッチング動作のタイミングとは異なるタイミングに変更する。これにより、詳しくは後述するように、昇圧チョッパ回路10及び降圧チョッパ回路20の動作時に、昇圧側上アームスイッチング素子13及び降圧側上アームスイッチング素子23の両方がオン状態になる期間を設けることができる。
【0053】
図4に示すように、降圧チョッパ駆動制御部36は、指令信号処理部37と、三角波比較部38と、駆動信号生成部39とを有する。
【0054】
指令信号処理部37は、降圧チョッパ駆動制御部36に入力される出力電圧指令を、後述する三角波比較部38でキャリア周波数の三角波と比較可能な信号に変換する処理を行う。具体的には、指令信号処理部37は、減算器37aと、PI演算部37bと、リミッタ37cとを有する。
【0055】
減算器37aは、前記出力電圧指令と降圧チョッパ回路20の出力電圧との差を求める。PI演算部37bは、減算器37aによって求められた差に対し、PI演算を行う。リミッタ37cは、PI演算部37bの演算結果において、所定値以上の値をカットする。
【0056】
三角波比較部38は、指令信号処理部37から出力された信号と、キャリア周波数の三角波とを比較し、両者の交点を立ち下がりまたは立ち上がりとする矩形波信号を生成する。
【0057】
駆動信号生成部39は、三角波比較部38から出力された矩形波信号を用いて、一対の降圧側スイッチング素子23,24に対する駆動信号を生成する。具体的には、駆動信号生成部39は、前記矩形波信号を、降圧側上アームスイッチング素子23の駆動信号とする。駆動信号生成部39は、前記矩形波信号に対してオンオフを反転させた信号を生成して、降圧側下アームスイッチング素子24の駆動信号とする。
【0058】
(電力変換装置の動作)
次に、上述の構成を有する電力変換装置1の動作について、図5から図7を用いて説明する。図5は、電力変換装置1の昇圧チョッパ回路10及び降圧チョッパ回路20内を流れる電流の向きの一例を示す図である。図6は、昇圧側上アームスイッチング素子13のオン期間と降圧側上アームスイッチング素子23のオン期間とが重なっていない場合において、電力変換装置1の昇圧チョッパ回路10及び降圧チョッパ回路20の各位置を流れる電流の変化の一例を示す図である。図7は、昇圧側上アームスイッチング素子13のオン期間の中心と降圧側上アームスイッチング素子23のオン期間の中心とを一致させた場合において、電力変換装置1の昇圧チョッパ回路10及び降圧チョッパ回路20の各位置を流れる電流の変化の一例を示す図である。
【0059】
電力変換装置1の昇圧チョッパ回路10では、昇圧側上アームスイッチング素子13がオン状態になると、図5に実線矢印A,Bで示すように、電流が入力側コンデンサ11からリアクトル12及び昇圧側上アームスイッチング素子13を介して中間コンデンサ15に流れる。これにより、入力電圧が昇圧される。このとき、昇圧側下アームスイッチング素子14は、オフ状態である。
【0060】
一方、昇圧側上アームスイッチング素子13がオフ状態になると、昇圧側下アームスイッチング素子14がオン状態になり、電流はリアクトル12から昇圧側下アームスイッチング素子14に流れて、入力側コンデンサ11に流れる。
【0061】
電力変換装置1の降圧チョッパ回路20では、降圧側上アームスイッチング素子23がオン状態になると、図5に実線矢印C,Dで示すように、電流が中間コンデンサ15から降圧側上アームスイッチング素子23を介してリアクトル22に流れる。これにより、昇圧チョッパ回路10の出力側の電圧を降圧することができる。このとき、降圧側下アームスイッチング素子24は、オフ状態である。
【0062】
なお、リアクトル22に流れた電流は、出力側コンデンサ21に流れる。リアクトル22及び出力側コンデンサ21によって、出力電流は平滑化される。出力電流の流れる向きを、図5では実線矢印Fで示す。
【0063】
一方、降圧側上アームスイッチング素子23がオフ状態になると、降圧側下アームスイッチング素子24がオン状態になり、降圧チョッパ回路20には電流が流れない。
【0064】
以上のような昇圧チョッパ回路10及び降圧チョッパ回路20内での各位置の電流の変化を、図6に示す。図6は、図5における実線矢印A~Eの電流の変化の一例を示す図である。なお、実線矢印Eは、中間コンデンサ15に流れる電流である。図6では、図5に示す実線矢印の方向に電流が流れる場合を正の電流として示している。図6において、13は、昇圧側上アームスイッチング素子13のスイッチング動作を示し、23は、降圧側上アームスイッチング素子23のスイッチング動作を示す。なお、図6に示す場合では、一対の昇圧側スイッチング素子13,14及び一対の降圧側スイッチング素子23,24がそれぞれデューティ比50%で駆動している。
【0065】
図6に示すように、昇圧側上アームスイッチング素子13がオフ状態のときには、実線矢印Aで示す電流は増大して実線矢印Bで示す電流は流れない一方、昇圧側上アームスイッチング素子13がオン状態のときには、実線矢印Aで示す電流は減少して実線矢印Bで示す電流は流れるが徐々に減少する。
【0066】
降圧側上アームスイッチング素子23がオン状態のときには、実線矢印Dで示す電流は増大して実線矢印Cで示す電流が徐々に増える一方、降圧側上アームスイッチング素子23がオフ状態のときには、実線矢印Dで示す電流は減少して実線矢印Cで示す電流は流れない。
【0067】
昇圧側上アームスイッチング素子13のオン期間の中心が、降圧側上アームスイッチング素子23のオン期間の中心に対して180度位相がずれている場合、図6に示すように、実線矢印Eで示す電流は、中間コンデンサ15の放電時に流れる実線矢印Cで示す電流に、中間コンデンサ15の充電時に流れる電流(実線矢印Bで示す電流とは逆方向に流れる)を加えた値である。すなわち、実線矢印Eで示す電流は、中間コンデンサ15に充放電の際に流れる電流である。なお、オン期間の中心とは、前記オン期間における始期と終期の中間の時点である。
【0068】
このように、昇圧側上アームスイッチング素子13のオン期間と降圧側上アームスイッチング素子23のオン期間とが重なっていない場合、中間コンデンサ15には、図6に示すように、実線矢印Eで示す電流が流れる。中間コンデンサ15に流れる電流の変動が大きいため、中間コンデンサ15はその電流の変動に耐えられるような静電容量を有する必要がある。
【0069】
これに対し、本実施形態では、昇圧チョッパ駆動制御部31は、昇圧側上アームスイッチング素子13のオン期間と降圧側上アームスイッチング素子23のオン期間とが重なるように、一対の昇圧側スイッチング素子13,14の駆動を制御する。具体的には、昇圧チョッパ駆動制御部31は、既述のとおり、指令信号処理部32によって得られる指令信号を用いて駆動信号を生成することにより、昇圧電圧指令に基づいて生成される駆動信号とは異なる位相の駆動信号を生成することができる。
【0070】
例えば、昇圧チョッパ駆動制御部31は、一対の昇圧側スイッチング素子13,14及び一対の降圧側スイッチング素子23,24がそれぞれデューティ比50%で駆動している場合に、一対の昇圧側スイッチング素子13,14の駆動信号の位相を180度ずらして、昇圧側上アームスイッチング素子13のオン期間の中心と降圧側上アームスイッチング素子23のオン期間の中心とを一致させることができる。これにより、昇圧側上アームスイッチング素子13のオン期間と降圧側上アームスイッチング素子23のオン期間とが重なる。
【0071】
上述のように一対の昇圧側スイッチング素子13,14の駆動信号の位相を180度ずらして、昇圧側上アームスイッチング素子13のオン期間の中心と降圧側上アームスイッチング素子23のオン期間の中心とを一致させた場合、昇圧チョッパ回路10及び降圧チョッパ回路20の各位置には、図7に示すように電流が流れる。すなわち、実線矢印A及び実線矢印Bで示す電流の位相は、それぞれ、図6において実線矢印A及び実線矢印Bで示す電流の位相に対して180度ずれている。
【0072】
これにより、実線矢印Eで示す電流、すなわち中間コンデンサ15に流れる電流は、図7に示すように、打ち消し合って、低減される。すなわち、上述のような一対の昇圧側スイッチング素子13,14の駆動制御によって、昇圧チョッパ回路10から降圧チョッパ回路20に直接電流が流れる期間を設けることができ、中間コンデンサ15に流れる電流の変動を抑制できる。
【0073】
したがって、中間コンデンサ15に充放電の際に流れる電流の変動を抑制することができる。よって、中間コンデンサ15の容量を小さくすることができ、中間コンデンサ15のコスト低減及び電力変化装置の小型化を図れる。
【0074】
本実施形態に係る電力変換装置1は、直流電源に電気的に接続され、出力電圧指令に応じて入力電圧を昇圧する昇圧チョッパ回路10と、昇圧チョッパ回路10の出力側に対して電気的に接続され、前記出力電圧指令に応じて前記出力電圧指令に応じて降圧した電圧を出力する降圧チョッパ回路20と、昇圧チョッパ回路10の出力側に位置し、降圧チョッパ回路20に電力を供給する中間コンデンサ15と、昇圧チョッパ回路10及び降圧チョッパ回路20の駆動をそれぞれ制御する駆動制御部30と、を備えている。昇圧チョッパ回路10は、中間コンデンサ15に対して電気的に並列に接続されていて、互いに電気的に直列に接続された一対の昇圧側スイッチング素子13,14を有する。降圧チョッパ回路20は、中間コンデンサ15に対して電気的に並列に接続されていて、互いに電気的に直列に接続された一対の降圧側スイッチング素子23,24を有する。駆動制御部30は、一対の昇圧側スイッチング素子13,14のうち中間コンデンサ15の正極側に電気的に接続された昇圧側上アームスイッチング素子13がオン状態であるオン期間と、一対の降圧側スイッチング素子23,24のうち中間コンデンサ15の正極側に電気的に接続された降圧側上アームスイッチング素子23がオン状態であるオン期間とが重なるように、一対の昇圧側スイッチング素子13,14及び一対の降圧側スイッチング素子23,24の少なくとも一方のスイッチング動作を制御する。
【0075】
このように昇圧チョッパ回路10の出力側に位置し且つ降圧チョッパ回路20に電力を供給する中間コンデンサ15に対して、一対の昇圧側スイッチング素子13,14及び一対の降圧側スイッチング素子23,24がそれぞれ電気的に並列に接続されている回路構成では、昇圧チョッパ回路10によって入力電圧を昇圧する際に、中間コンデンサ15に電流が流れる一方、降圧チョッパ回路20によって降圧する際に、中間コンデンサ15から電流が流れる。よって、昇圧チョッパ回路10及び降圧チョッパ回路20の動作によって、中間コンデンサ15に流れる電流が大きく変動する。
【0076】
これに対し、駆動制御部30によって、昇圧側上アームスイッチング素子13のオン期間と降圧側上アームスイッチング素子23のオン期間とが重なるように、一対の昇圧側スイッチング素子13,14及び一対の降圧側スイッチング素子23,24の少なくとも一方のスイッチング動作を制御することにより、昇圧チョッパ回路10から降圧チョッパ回路20に電流を直接流す期間を設けることができる。よって、昇圧チョッパ回路10及び降圧チョッパ回路20の動作によって中間コンデンサ15に流れる電流の変動を抑制することができる。
【0077】
したがって、中間コンデンサ15の容量を小さくできるため、中間コンデンサ15のコスト低減及び電力変換装置1の小型化を図れる。
【0078】
また、本実施形態では、駆動制御部30は、昇圧側上アームスイッチング素子13の前記オン期間の中心と降圧側上アームスイッチング素子23の前記オン期間の中心とが一致するように、一対の昇圧側スイッチング素子13,14及び一対の降圧側スイッチング素子23,24の少なくとも一方のスイッチング動作を制御する。
【0079】
これにより、昇圧チョッパ回路10及び降圧チョッパ回路20を動作させる際に、昇圧側上アームスイッチング素子13のオン期間と降圧側上アームスイッチング素子23のオン期間とをより確実に且つより広い範囲で重ねることができる。そのため、昇圧チョッパ回路10及び降圧チョッパ回路20の動作時に、昇圧チョッパ回路10から降圧チョッパ回路20に電流を直接流す期間をより長くすることができる。よって、昇圧チョッパ回路10及び降圧チョッパ回路20の動作によって中間コンデンサ15に流れる電流の変動を抑制することができる。
【0080】
したがって、中間コンデンサ15の容量をより小さくできるため、中間コンデンサ15のコストをより低減できるとともに電力変換装置1をより小型化できる。
【0081】
また、本実施形態では、駆動制御部30は、昇圧側上アームスイッチング素子13の前記オン期間が降圧側上アームスイッチング素子23の前記オン期間と重なるように、一対の昇圧側スイッチング素子13,14のスイッチング動作のタイミングを、出力電圧指令に応じて決まるスイッチング動作のタイミングとは異なるタイミングに変更する。
【0082】
これにより、昇圧チョッパ回路10及び降圧チョッパ回路20を動作させる際に、一対の昇圧側スイッチング素子13,14の駆動を制御して、昇圧側上アームスイッチング素子13のオン期間と降圧側上アームスイッチング素子23のオン期間とを容易に重ねることができる。したがって、本実施形態の構成を容易に実現できる。
【0083】
また、本実施形態では、駆動制御部30は、一対の昇圧側スイッチング素子13,14に入力される駆動信号を生成するための指令信号を、キャリア周波数の三角波に対する位相がずれるように変換する指令信号処理部32と、前記変換後の指令信号と前記三角波とを比較する三角波比較部33と、三角波比較部33による比較結果を用いて、前記駆動信号を生成する駆動信号生成部34と、を有する。
【0084】
これにより、指令信号を変換して、本実施形態の構成を実現できる。よって、スイッチング素子に入力される駆動信号を生成する際に用いるキャリア周波数を変える場合に比べて、本実施形態の構成を容易に実現できる。
【0085】
[実施形態2]
図8は、実施形態2に係る電力変換装置の昇圧チョッパ駆動制御部131の概略構成の一例を示す機能ブロック図である。本実施形態では、昇圧チョッパ駆動制御部131は、キャリア周波数の三角波の位相を変更して位相がずれた信号を生成する点で、実施形態1の構成とは異なる。以下では、実施形態1と同様の構成には同一の符号を付して説明を省略し、実施形態1と異なる構成についてのみ説明する。
【0086】
図8に示すように、駆動制御部130は、昇圧チョッパ駆動制御部131と降圧チョッパ駆動制御部36とを有する。昇圧チョッパ駆動制御部131は、降圧チョッパ駆動制御部36と同様の構成を有する。すなわち、昇圧チョッパ駆動制御部131は、指令信号処理部132と、三角波比較部33と、駆動信号生成部34とを有する。
【0087】
指令信号処理部132は、降圧チョッパ駆動制御部36の指令信号処理部37と同様、減算器132aと、PI演算部132bと、リミッタ132cとを有する。減算器132aは、実施形態1の減算器32aと同様の機能を有する。PI演算部132bは、実施形態1のPI演算部32bと同様の機能を有する。リミッタ132cは、実施形態1のリミッタ32cと同様の機能を有する。よって、指令信号処理部132の構成に関する詳しい説明は省略する。
【0088】
指令信号処理部132によって生成された指令信号は、三角波比較部33に入力される。三角波比較部33に入力される三角波の信号は、降圧チョッパ駆動制御部36の三角波比較部38に入力される三角波の信号に対して位相が180度ずれた信号である。位相が180度ずれた三角波の信号は、位相変換部140によって生成される。すなわち、駆動制御部130は、位相変換部140を有する。
【0089】
図9は、昇圧チョッパ駆動制御部131において指令信号処理部132によって生成された指令信号と位相が180度ずれた三角波との比較の様子を模式的に示す図である。三角波比較部33には、図9(a)に実線で示すように、破線で示す三角波の信号(降圧チョッパ駆動制御部36の三角波比較部33に入力される信号)に対して位相が180度ずれた信号が入力される。
【0090】
駆動信号生成部34は、三角波比較部33による比較結果に基づいて、一対の昇圧側スイッチング素子13,14に対する駆動信号を生成する。生成される駆動信号(図9(b)において実線)は、図9(b)に示すように、位相が180度ずれる前の三角波の信号を用いて生成される駆動信号(図9(b)において破線)に対して、位相が180度ずれている。
【0091】
本実施形態では、昇圧チョッパ駆動制御部131は、降圧チョッパ駆動制御部36によって生成される駆動信号に対して位相が180度ずれた駆動信号を生成することができる。
【0092】
(その他の実施形態)
以上、本発明の実施の形態を説明したが、上述した実施の形態は本発明を実施するための例示に過ぎない。よって、上述した実施の形態に限定されることなく、その趣旨を逸脱しない範囲内で上述した実施の形態を適宜変形して実施することが可能である。
【0093】
前記各実施形態では、一対の昇圧側スイッチング素子13,14及び一対の降圧側スイッチング素子23,24がデューティ比50%で駆動する場合のスイッチング動作について説明した。しかしながら、一対の昇圧側スイッチング素子及び一対の降圧側スイッチング素子は、デューティ比50%以外でスイッチング動作してもよい。このように、一対の昇圧側スイッチング素子及び一対の降圧側スイッチング素子がデューティ比50%以外でスイッチング動作する場合でも、昇圧チョッパ駆動制御部は、昇圧側上アームスイッチング素子のオン期間と降圧側上アームスイッチング素子のオン期間とが重なるように、一対の昇圧側スイッチング素子を駆動制御すればよい。
【0094】
例えば、図10に示すように、昇圧チョッパ駆動制御部は、昇圧側上アームスイッチング素子13のデューティ比を降圧側上アームスイッチング素子23のデューティ比よりも大きくして、昇圧側上アームスイッチング素子13のオン期間と降圧側上アームスイッチング素子23のオン期間とが重なるように、一対の昇圧側スイッチング素子を駆動制御してもよい。なお、図10において、破線は、昇圧側上アームスイッチング素子13及び降圧側上アームスイッチング素子23のオン期間の中心である。
【0095】
前記各実施形態では、昇圧チョッパ駆動制御部31,131は、昇圧側上アームスイッチング素子13のオン期間の中心と降圧側上アームスイッチング素子23のオン期間の中心とが一致するように、一対の昇圧側スイッチング素子13,14に対する駆動信号を生成している。しかしながら、昇圧チョッパ駆動制御部は、昇圧側上アームスイッチング素子のオン期間と降圧側上アームスイッチング素子のオン期間とが重なっていれば、それらのオン期間の中心が一致するように一対の昇圧側スイッチング素子に対する駆動信号を生成しなくてもよい。すなわち、前記各実施形態のように、指令信号またはキャリア周波数の三角波の位相を180度ずらす構成に限らず、指令信号またはキャリア周波数の三角波の位相を180度以外の角度でずらしてもよい。
【0096】
前記各実施形態では、昇圧チョッパ駆動制御部31,131が、昇圧側上アームスイッチング素子13のオン期間と降圧側上アームスイッチング素子23のオン期間とが重なるように、一対の昇圧側スイッチング素子13,14に対する駆動信号を生成している。しかしながら、降圧チョッパ駆動制御部が、昇圧側上アームスイッチング素子のオン期間と降圧側上アームスイッチング素子のオン期間とが重なるように、一対の降圧側スイッチング素子に対する駆動信号を生成してもよい。この場合には、降圧チョッパ駆動制御部が、前記各実施形態の昇圧チョッパ駆動制御部31,131のように指令信号またはキャリア周波数の三角波の位相をずらす構成を有していればよい。また、昇圧チョッパ駆動制御部及び降圧チョッパ駆動制御部が、昇圧側上アームスイッチング素子のオン期間と降圧側上アームスイッチング素子のオン期間とが重なるように、一対の昇圧側スイッチング素子及び一対の降圧側スイッチング素子に対する駆動信号を生成してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0097】
本発明は、昇圧チョッパ回路と降圧チョッパ回路とを備え、前記昇圧チョッパ回路の出力側に、前記降圧チョッパ回路に電力を供給する中間コンデンサが位置する電力変換装置に利用可能である。
【符号の説明】
【0098】
1 電力変換装置
10 昇圧チョッパ回路(昇圧部)
11 入力側コンデンサ
12、22 リアクトル
13 昇圧側上アームスイッチング素子(昇圧側スイッチング素子)
14 昇圧側下アームスイッチング素子(昇圧側スイッチング素子)
15 中間コンデンサ
16、17、26、27 還流ダイオード
20 降圧チョッパ回路(降圧部)
21 出力側コンデンサ
23 降圧側上アームスイッチング素子(降圧側スイッチング素子)
24 降圧側下アームスイッチング素子(降圧側スイッチング素子)
30、130 駆動制御部
31、131 昇圧チョッパ駆動制御部
32、37、132 指令信号処理部
32a、37a、132a 減算器
32b、37b、132b PI演算部
32c、37c、132c リミッタ
32d 信号反転部
32e スケール変換部
33、38 三角波比較部
34、39 駆動信号生成部
36 降圧チョッパ駆動制御部
140 位相変換部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10