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特開2024-30753クロマト装置の弁の点検方法及びクロマト装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024030753
(43)【公開日】2024-03-07
(54)【発明の名称】クロマト装置の弁の点検方法及びクロマト装置
(51)【国際特許分類】
   G01N 30/26 20060101AFI20240229BHJP
   G01N 30/32 20060101ALI20240229BHJP
   G01N 30/46 20060101ALI20240229BHJP
   G01N 30/86 20060101ALI20240229BHJP
   B01D 15/36 20060101ALI20240229BHJP
【FI】
G01N30/26 M
G01N30/32 A
G01N30/46 E
G01N30/86 V
B01D15/36
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022133850
(22)【出願日】2022-08-25
(71)【出願人】
【識別番号】000004400
【氏名又は名称】オルガノ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100123788
【弁理士】
【氏名又は名称】宮崎 昭夫
(74)【代理人】
【識別番号】100127454
【弁理士】
【氏名又は名称】緒方 雅昭
(72)【発明者】
【氏名】岡田 一夫
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 康平
【テーマコード(参考)】
4D017
【Fターム(参考)】
4D017CA13
4D017DA03
4D017DB01
4D017EB10
(57)【要約】
【課題】クロマト装置の弁を取り外すことなく点検する。
【解決手段】複数の第1の領域形成弁D1~D4,DR,DSと圧力調整手段とによって、液体流通機構の一部に、複数の第1の領域形成弁によって画定され隣接する複数の領域より圧力が高い、閉鎖された第1の領域S1を形成する。そして、圧力計PRDで第1の領域S1の圧力が低下しているか否かを検出することによって、複数の第1の領域形成弁の少なくとも一つが漏れているか否かを検出する。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体流通機構と、前記液体流通機構に設けられ、複数の第1の領域形成弁を含む複数の弁と、を有し、前記液体流通機構は、複数のカラムと、前記複数のカラムを順次連結する循環ラインと、前記循環ラインに接続され、前記複数のカラムに供給される液体が流入し前記複数のカラムで処理された液体が流出する複数の液体ラインと、を有するクロマト装置における前記弁の点検方法であって、
前記複数の第1の領域形成弁と圧力調整手段とによって、前記液体流通機構の一部に、前記複数の第1の領域形成弁によって画定され隣接する複数の領域より圧力が高い、閉鎖された第1の領域を形成することと、
圧力計で前記第1の領域の圧力が低下しているか否かを検出することによって、前記複数の第1の領域形成弁の少なくとも一つが漏れているか否かを検出することと、
を有する、クロマト装置の弁の点検方法。
【請求項2】
前記循環ラインは、互いに隣接する前記カラム同士を接続する複数の接続区間を有し、
前記液体ラインは、原液を供給する原液主供給ラインと、前記原液主供給ラインと各接続区間とを接続する複数の原液サブ供給ラインと、少なくとも一つの溶離液を供給する少なくとも一つの溶離液主供給ラインと、前記少なくとも一つの溶離液主供給ラインと各接続区間とを接続する複数の溶離液サブ供給ラインと、を有し、
前記第1の領域は、前記原液主供給ラインの一部と各原液サブ供給ラインの一部、または前記少なくとも一つの溶離液主供給ラインの一部と各溶離液サブ供給ラインの一部を含む、請求項1に記載のクロマト装置の弁の点検方法。
【請求項3】
前記原液を貯蔵し、前記原液主供給ラインに接続された原液貯蔵タンクと、
前記溶離液を貯蔵し、前記少なくとも一つの溶離液主供給ラインに接続された少なくとも一つの溶離液貯蔵タンクと、
前記原液主供給ラインの、前記原液貯蔵タンクの下流に設けられた原液ポンプと、
前記溶離液主供給ラインの、前記少なくとも一つの溶離液貯蔵タンクの下流に設けられた少なくとも一つの溶離液ポンプと、を有し、
前記複数の領域形成弁のうちの一つは、前記原液ポンプと各原液サブ供給ラインとの間、または前記少なくとも一つの溶離液ポンプと各溶離液サブ供給ラインとの間に設けられている、請求項2に記載のクロマト装置の弁の点検方法。
【請求項4】
液体流通機構と、前記液体流通機構に設けられ、複数の第1の領域形成弁を含む複数の弁と、を有し、前記液体流通機構は、複数のカラムと、前記複数のカラムを順次連結する循環ラインと、前記循環ラインに接続され、前記複数のカラムに供給される液体が流入し前記複数のカラムで処理された液体が流出する複数の液体ラインと、を有するクロマト装置における前記弁の点検方法であって、
前記複数の第1の領域形成弁と圧力調整手段とによって、前記液体流通機構の一部に、前記複数の第1の領域形成弁によって画定され閉鎖された第1の領域を形成するとともに、前記複数の第1の領域形成弁のうちの一つである接続弁を介して前記第1の領域に隣接し、前記第1の領域より圧力の低い第2の領域を形成することと、
圧力計で前記第2の領域の圧力が増加しているか否かを検出することによって、前記接続弁が漏れているか否かを検出することと、
を有する、クロマト装置の弁の点検方法。
【請求項5】
原液を貯蔵する原液貯蔵タンクと、少なくとも一つの溶離液を貯蔵する少なくとも一つの溶離液貯蔵タンクと、をさらに有し、
前記循環ラインは、互いに隣接する前記カラム同士を接続する複数の接続区間を有し、
前記液体ラインは、前記原液貯蔵タンクに接続された原液主供給ラインと、前記原液主供給ラインから分岐し各接続区間に接続された複数の原液サブ供給ラインと、前記少なくとも一つの溶離液貯蔵タンクに接続された少なくとも一つの溶離液主供給ラインと、前記少なくとも一つの溶離液主供給ラインから分岐し各接続区間に接続された複数の溶離液サブ供給ラインと、を有し、
前記第1の領域は、前記原液主供給ラインの一部と各原液サブ供給ラインの一部、または前記少なくとも一つの溶離液主供給ラインの一部と各溶離液サブ供給ラインの一部を含む、請求項4に記載のクロマト装置の点検方法。
【請求項6】
前記第2の領域を画定し、前記接続弁を含む複数の第2の領域形成弁を有し、
前記液体流通機構は、2以上の画分の各々について、前記各接続区間から分岐し当該画分を抜き出す複数の抜き取りサブラインと、前記複数の抜き取りサブラインが合流して形成される抜き取り主ラインと、を有し、
前記複数の第2の領域形成弁のうちの前記接続弁を除く少なくとも一つの弁は、少なくとも一つの前記画分の前記主ラインに設けられている、請求項5に記載のクロマト装置の弁の点検方法。
【請求項7】
前記一つの弁は着脱式である、請求項6に記載のクロマト装置の点検方法。
【請求項8】
前記液体流通機構は前記第1の領域の圧力を調整する背圧弁を有する、請求項1から7のいずれか1項に記載のクロマト装置の点検方法。
【請求項9】
複数のカラムと、前記複数のカラムを順次連結する循環ラインと、前記循環ラインに接続され、前記複数のカラムに供給される液体及び処理された液体が出入りする複数の液体ラインと、を有する液体流通機構と、
前記液体流通機構に設けられた複数の弁であって、閉鎖された第1の領域を形成可能な複数の第1の領域形成弁を含む、複数の弁と、
前記第1の領域の圧力を、前記複数の第1の領域形成弁を介して前記第1の領域に隣接する複数の領域に対して高くする圧力調整手段と、
前記第1の領域の圧力を測定する圧力計と、
を有する、クロマト装置。
【請求項10】
複数のカラムと、前記複数のカラムを順次連結する循環ラインと、前記循環ラインに接続され、前記複数のカラムに供給される液体及び処理された液体が出入りする複数の液体ラインと、を有する液体流通機構と、
前記液体流通機構に設けられた複数の弁であって、閉鎖された第1の領域を形成可能な複数の第1の領域形成弁を含み、前記複数の第1の領域形成弁のうちの一つである接続弁を介して前記第1の領域に隣接する第2の領域を形成する、複数の弁と、
前記第2の領域の圧力を前記第1の領域の圧力より低くする圧力調整手段と、
前記第2の領域の圧力を測定する圧力計と、
を有する、クロマト装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クロマト装置の弁の点検方法と、クロマト装置に関する。
【背景技術】
【0002】
原液に含まれる複数の成分を溶離液によって分離するクロマト装置が知られている。クロマト装置は分析と精製に用いられる。特に精製の用途では、複数のカラムを循環ラインで接続し、原液と溶離液の供給位置、分離された複数の成分の引き抜き位置を時間とともに切り替える疑似移動層方式のクロマト装置が使用される(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第4945364号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
疑似移動層方式のクロマト装置では、原液と溶離液の供給位置及び分離された複数の成分の引き抜き位置を時間とともに切り替えるために、多数の弁が設置されている。弁の漏洩は原液、溶離液、分離された複数の成分の混合の原因となり、分離効率の低下をもたらすことがある。弁の漏洩を防止するためには弁の点検を行うことが望ましいが、多数の弁を取り外して点検することは多くの労力を要する。
【0005】
本発明は、弁を取り外すことなく点検ができる、クロマト装置の弁の点検方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、液体流通機構と、液体流通機構に設けられ、複数の第1の領域形成弁を含む複数の弁と、を有し、液体流通機構は、複数のカラムと、複数のカラムを順次連結する循環ラインと、循環ラインに接続され、複数のカラムに供給される液体が流入し複数のカラムで処理された液体が流出する複数の液体ラインと、を有するクロマト装置における弁の点検方法に関する。
【0007】
本発明の一態様によれば、弁の点検方法は、複数の第1の領域形成弁と圧力調整手段とによって、液体流通機構の一部に、複数の第1の領域形成弁によって画定され隣接する複数の領域より圧力が高い、閉鎖された第1の領域を形成することと、圧力計で第1の領域の圧力が低下しているか否かを検出することによって、複数の第1の領域形成弁の少なくとも一つが漏れているか否かを検出することと、を有する。
【0008】
本発明の他の態様によれば、弁の点検方法は、複数の第1の領域形成弁と圧力調整手段とによって、液体流通機構の一部に、複数の第1の領域形成弁によって画定され閉鎖された第1の領域を形成するとともに、複数の第1の領域形成弁のうちの一つである接続弁を介して第1の領域に隣接し、第1の領域より圧力の低い第2の領域を形成することと、圧力計で第2の領域の圧力が増加しているか否かを検出することによって、接続弁が漏れているか否かを検出することと、を有する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、弁を取り外すことなく点検ができる、クロマト装置の弁の点検方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明が適用される疑似移動層方式のクロマト装置の概略構成図である。
図2】本発明の第1の実施形態に係る弁の点検方法の原理を説明する概略図である。
図3】本発明の第1の実施形態が適用される疑似移動層方式のクロマト装置の概略構成図である。
図4】本発明の第1の実施形態(測定モード1-1)の概略説明図である。
図5】本発明の第1の実施形態(測定モード1-2)の概略説明図である。
図6】本発明の第1の実施形態(測定モード1-3)の概略説明図である。
図7】本発明の第1の実施形態(測定モード1-4)の概略説明図である。
図8】本発明の第1の実施形態(測定モード1-5)の概略説明図である。
図9】本発明の第2の実施形態に係る弁の点検方法の原理を説明する概略図である。
図10】本発明の第2の実施形態が適用される疑似移動層方式のクロマト装置の概略構成図である。
図11】本発明の第2の実施形態(測定モード2-1)の概略説明図である。
図12】本発明の第2の実施形態(測定モード2-2)の概略説明図である。
図13】本発明の第2の実施形態(測定モード2-3)の概略説明図である。
図14】本発明の第2の実施形態(測定モード2-4)の概略説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照して本発明のクロマト装置と、クロマト装置の弁の点検方法について説明する。図1は、本発明が適用される疑似移動層方式のクロマト装置1の例示的な概略構成図を示している。本実施形態では、クロマト装置に供給される原液は溶離液によって分離される2つの成分を含んでいる。溶離液は例えば水であってよい。
【0012】
クロマト装置1は、液体流通機構2と、液体流通機構2に設けられた複数の弁と、溶離液を貯蔵する溶離液貯蔵タンクTDと、原液を貯蔵する原液貯蔵タンクTFと、を有している。液体流通機構2は、複数のカラム(第1~第4のカラム11~14)と、複数のカラム11~14を順次連結する循環ラインLRと、循環ラインLRに接続された複数の液体ラインと、を有している。複数のカラム11~14には吸着剤(例えば、特定のイオン交換樹脂)が充填されている。吸着剤は原液に含まれる強吸着成分に対し高い吸着性を有し、原液に含まれる弱吸着成分に対し強吸着成分より低い吸着性を示す。循環ラインLRは、互いに隣接するカラム11~14同士を接続する複数の接続区間LR1~LR4から構成されている。カラムの数は限定されず、少なくとも2つのカラムがあればよい。
【0013】
複数の液体ラインは、複数のカラム11~14に供給される液体(原液及び溶離液)が流入し、処理された液体(画分)が流出するために設けられている。複数の液体ラインは以下のラインを含んでいる。なお、以下の説明では各ラインを符号名で識別する場合がある(例えば、溶離液主供給ラインLDをラインLDと称する)。
-溶離液貯蔵タンクTDに接続され、溶離液を供給する溶離液主供給ラインLD(図1では一部だけを示す)
-溶離液主供給ラインLDと接続区間LR1~LR4とをそれぞれ接続する複数の(本実施形態では4つの)溶離液サブ供給ラインLD1~LD4
-原液貯蔵タンクTFに接続され、原液を供給する原液主供給ラインLF(図1では一部だけを示す)
-原液主供給ラインLFと接続区間LR1~LR4とをそれぞれ接続する複数の(本実施形態では4つの)原液サブ供給ラインLF1~LF4
-各接続区間LR1~LR4から分岐し強吸着成分を抜き出す複数の(本実施形態では4つの)強吸着成分抜き取りサブラインLC1~LC4
-複数の強吸着成分抜き取りサブラインLC1~LC4が合流して形成される強吸着成分抜き取り主ラインLC(図1では一部だけを示す)
-各接続区間LR1~LR4から分岐し弱吸着成分を抜き出す複数の(本実施形態では4つの)弱吸着成分抜き取りサブラインLA1~LA4
-複数の弱吸着成分抜き取りサブラインLA1~LA4が合流して形成される弱吸着成分抜き取り主ラインLA(図1では一部だけを示す)
【0014】
ラインLDとラインLFにはそれぞれ、安全弁D0,F0を備えた再循環ラインLD0,LF0が設けられている(図3,10参照)。
【0015】
液体流通機構2に設けられた複数の弁は以下の弁を含んでいる。なお、以下の説明では各弁を符号名で識別する場合がある(例えば、溶離液供給切替弁D1を弁D1と称する)。
-溶離液サブ供給ラインLD1~LD4にそれぞれ設けられた溶離液供給切替弁D1~D4
-原液サブ供給ラインLF1~LF4にそれぞれ設けられた原液供給切替弁F1~F4
-強吸着成分抜き取りサブラインLC1~LC4にそれぞれ設けられた強吸着成分抜取り切替弁C1~C4
-弱吸着成分抜き取りサブラインLA1~LA4にそれぞれ設けられた弱吸着成分抜取り切替弁A1~A4
-接続区間LR1~LR4にそれぞれ設けられた隔離弁R1~R4
【0016】
クロマト装置1は以下のように作動する。原液貯蔵タンクTFに貯蔵された原液は、原液主供給ラインLFに設けられた原液ポンプPFによって、ラインLFと、ラインLF1~LF4のいずれかと、を通って、当該LF1~LF4のいずれかに接続された接続区間LR1~LR4のいずれかに供給される。溶離液貯蔵タンクTDに貯蔵された溶離液は、ラインLDに設けられた溶離液ポンプPDによって、ラインLDと、ラインLD1~LD4のいずれかと、を通って、当該ラインLD1~LD4のいずれかに接続された接続区間LR1~LR4のいずれかに供給される。
【0017】
循環ラインLRの液体は循環ラインLRに設けられた循環ポンプPR(図3,10参照)によって一定の方向(図1において、例えば反時計回り)に循環しているので、原液と溶離液は同じ方向に流動する。運転中、隔離弁R1~R4は開いている。原液中の強吸着成分と弱吸着成分の吸着性の違いにより、強吸着成分と弱吸着成分は徐々に分離される。強吸着成分は画分Cとして、原液中の溶媒や溶離液とともにいずれかのサブラインLC1~LC4から抜き取られる。弱吸着成分は画分Aとして、原液中の溶媒や溶離液とともにいずれかのサブラインLA1~LA4から抜き取られる。
【0018】
ラインLD1~LD4、ラインLF1~LF4、サブラインLC1~LC4、サブラインLA1~LA4はそれぞれ、弁D1~D4、弁F1~F4、弁C1~C4、弁A1~A4によって切り替えられる。ラインLD1~LD4のいずれか一つ、ラインLF1~LF4のいずれか一つ、サブラインLC1~LC4のいずれか一つ、サブラインLA1~LA4のいずれか一つ、合計4つのラインをそれぞれ液体が流通する。液体が流通する4つのラインは常に互いに異なる接続区間LR1~LR4のみと接続される。同一種類の弁(例えば弁F1~F4)が同時に2つ以上開くことはなく、同一種類の開いている弁は循環ラインLRに沿って時間とともに移動していく。これらの弁の切り替えは図示しないがシーケンサと呼ばれる制御装置で制御される。これによって、原液と溶離液を供給しながら、分離した強吸着成分と弱吸着成分を別々に取り出すことができる。
【0019】
次に、クロマト装置1の弁の点検方法を実施形態に基づき説明する。以下に説明する弁の点検方法では弁の漏洩の有無を点検する。弁の漏洩とは、閉じた弁の上流側と下流側との間を流体が流通する事象を指し、流体が弁の外部に漏れる事象と区別される。クロマト装置1では、分離した強吸着成分と弱吸着成分の再混合を防止することが重要であるため、前者の漏洩の有無が点検の対象となる。これに対し、後者の漏洩は強吸着成分と弱吸着成分の再混合の直接的な原因となるものではなく、また、外部からの目視により比較的容易に検出できるため、本実施形態では点検の対象外としている。
【0020】
(第1の実施形態)
図2は第1の実施形態による弁の点検方法の原理を説明する概略図である。ここでは説明の便宜上、並列に配置されたラインL1~L4に弁V1~V4が各々設けられ、その上流のラインL5にポンプPが設けられている。本実施形態では、ラインL5の、ラインL1~L4の分岐点BRとポンプPとの間に弁V5を設け、分岐点BRと弁V5との間でラインL5から分岐する分岐ラインL6を設ける。分岐ラインL6の先端は大気開放端16である。分岐ラインL6の大気開放端16と分岐部17との間に背圧弁BV1を、背圧弁BV1と分岐部17との間に弁V6を設ける。
【0021】
まず、図2(a)に示すように、液体流通機構2の一部に予備加圧領域S0を形成する。予備加圧領域S0は後述する第1の領域S1を包含する領域である。具体的には弁V1~V4を閉め、弁V5,V6を開き、ポンプPで液体をラインL1~L6に供給する。背圧弁BV1の作用によって、図2(a)の太線で示した範囲が所定の圧力(検査圧力P1)まで加圧される。
【0022】
次に、図2(b)に示すように、ポンプPを停止し、弁V5,V6を閉じる。これによって、液体流通機構2の一部に弁V1~V6によって閉鎖された第1の領域S1が形成される。弁V1~V6は液体流通機構2に設けられた複数の弁のうち、第1の領域S1を形成可能な複数の弁であり、点検対象の弁でもある。以下の説明においてこれらの弁V1~V6を第1の領域形成弁VS1という。従って、第1の領域S1は、複数の第1の領域形成弁VS1によって画定され、第1の領域S1に隣接する複数の領域S3より圧力が高い、閉鎖された領域である。複数の領域S3は、複数の第1の領域形成弁VS1を介して第1の領域S1に隣接する複数の領域である。点検時には弁V6が閉められるため、背圧弁BV1は第1の領域S1の外部に位置する。
【0023】
背圧弁BV1と弁V6の少なくともいずれかは着脱式とすることもできる。この際、図示しないが、背圧弁BVと弁V6の設置されていたところには配管を設置する。背圧弁BV1と弁V6はクロマト装置1の作動に無関係な分岐ラインL6に設けられているので、クロマト装置1の運転中に取り外すことで、背圧弁BV1や弁V6の不具合によるクロマト装置1への影響を抑えることができる。背圧弁BV1と弁V6を個別に着脱式とする代わりに、分岐ラインL6ごと着脱式として分岐部にキャップを設置してもよい。
【0024】
次に、圧力計PR1で第1の領域S1の圧力が低下しているか否かを検出する。もし第1の領域S1の圧力が所定の圧力(以下、判定圧力P2という)より低下すれば、複数の第1の領域形成弁VS1の少なくとも一つが漏れている可能性があると判断される。第1の領域S1の圧力低下は弁の漏洩以外の原因でも生じ得るが、多くの場合は弁の漏洩が原因であると考えられる。従って、必要に応じて第1の領域形成弁VS1の分解検査を行うことで、漏洩している弁をさらに絞り込むことができる。第1の領域S1の圧力が判定圧力P2を下回らなかった場合は、いずれの点検対象弁も漏洩が生じていないと判断することができる。一般に弁の漏洩が生じる頻度はそれほど高くないため、点検を行った際にすべての弁が正常である可能性が高い。第1の実施形態は複数の弁を同時に検査できるので、特に弁に漏洩が生じていない場合の検査効率が高い。
【0025】
背圧弁BV1は設定圧以下の背圧(背圧は弁の上流側圧力であり、ここでは弁V6側の圧力)がかかっているときは閉じ、設定圧を超える背圧がかかっているときに開く。背圧弁BV1は安全弁としての機能も有するが、より重要なのは第1の領域S1の圧力を一定に維持する機能である。背圧弁BV1はポンプPとともに、第1の領域S1の圧力を第1の領域S1に隣接する複数の領域S3に対して高くする圧力調整手段を構成する。背圧弁BV1は設定圧以下の背圧では閉じているので、第1の領域S1が効率よく加圧される。背圧が設定圧力を超えると背圧弁BV1が開く。それによって第1の領域S1の圧力が低下すると、再び背圧弁BV1が閉じて第1の領域S1が加圧される。背圧が再び設定圧力を超えると背圧弁BV1が再び開く。従って、第1の領域S1の圧力が背圧弁BV1の設定圧力に一旦達すると、第1の領域S1がほぼ設定圧力に加圧された状態が維持されることになる。背圧弁BV1の設定圧は第1の領域S1の検査圧力P1に等しいので、背圧弁BV1の設定圧を調整することで、第1の領域S1の検査圧力P1を調整することができる。
【0026】
図3は本実施形態のクロマト装置1の構成をより詳細に示している。本実施形態は、点検対象弁あるいは第1の領域S1に応じて複数の測定モードに分かれる。以下、図3に示す装置構成に基づき、弁の点検方法を測定モード毎に説明する。
【0027】
(測定モード1-1)
表1に測定手順を示す。測定モード1-1では、第1の領域S1を形成するために、第1の領域S1を包含する予備加圧領域S0を形成し(ステップS1-4~S1-6)、その一部を締め切ることで第1の領域S1を形成している(ステップS1-8)。図4(a)に予備加圧領域S0を、図4(b)に第1の領域S1をそれぞれ太線で示している。第1の領域S1は、ラインLDの一部と各ラインLD1~LD4の一部を含んでいる。
【0028】
【表1】
【0029】
図4(b)から分かるように、点検対象弁、すなわち第1の領域形成弁VS1は弁D1~D4とラインLDに設けられた弁DRと弁DSである。弁DSは、ラインLD上の、溶離液ポンプPDとラインLD1~LD4の各々との間の間である限り、どこに設けられてもよい。つまり、弁DSは、ラインLD1~LD4の分岐部のうち、溶離液の供給方向に関し最上流の分岐部と溶離液ポンプPDとの間のどこに設けられてもよい。
【0030】
第1の領域S1の圧力は流体の温度等によって変化することがある。従って、漏洩の検出精度を確保し、誤検出を防止するためには、検査圧力P1と判定圧力P2との差分をある程度確保することが好ましい。そのためには、第1の領域形成弁VS1のいずれかが漏洩したときの第1の領域S1の圧力低下ができるだけ大きいことが好ましい。例えば、弁D1が漏洩している場合に、弁D1から漏洩した流体が隣接領域に流入すると、第1の領域S1と隣接領域の圧力差が小さくなり、弁D1からの漏洩量が低下し、第1の領域S1の圧力低下が抑制される。そこで、本実施形態では、ステップS1-8で弁A1~A4を開いている。弁D1~D4,A1~A4,C1~C4で囲まれる隣接領域はステップS1-2で大気圧にしているので、弁A1~A4は閉じたままでもよいが、弁A1~A4を開くことによって、隣接領域を確実に大気圧に維持することができる。弁D1から漏洩した流体によって隣接領域が加圧されることが防止されるので、弁D1から漏洩した流体が隣接領域に流入しやすくなり、第1の領域S1の圧力低下が促進される。
【0031】
予備加圧領域S0の境界は、作動停止後に圧力境界として機能しなくなる部位(溶離液ポンプPD)や、圧力変動によって開放される可能性のある部位(背圧弁BRD)を含んでいる。第1の領域S1の液体が流通可能な部位は締切弁のみで構成するため、第1の領域S1の密閉性が向上する。このため、点検対象弁の漏洩をより確実に検出することができる。
【0032】
(測定モード1-2)
表2に測定手順を示す。図5(a)に予備加圧領域S0を、図5(b)に第1の領域S1をそれぞれ太線で示している。第1の領域S1は、ラインLFの一部と各ラインLF1~LF4の一部を含んでいる。図5(b)から分かるように、点検対象弁、すなわち第1の領域形成弁VS1は、弁F1~F4とラインLFに設けられた弁FRと弁FSである。弁FSは、ラインLF上の、原液ポンプPFとラインLF1~LF4の各々との間の間である限り、どこに設けられてもよい。本測定モードは測定モード1-1における第1の領域形成弁VS1(点検対象弁)である弁D1~D4,DR,DSをそれぞれ、弁F1~F4,FR,FSに置き換えたものであり、この点を除けば測定モード1-1と同様である。
【0033】
【表2】
【0034】
(測定モード1-3)
表3に測定手順を示す。図6(a)に予備加圧領域S0を、図6(b)に第1の領域S1をそれぞれ太線で示している。図6(b)から分かるように、点検対象弁、すなわち第1の領域形成弁VS1は、弁C1~C4と、弁A1~A4と、ラインLDに設けられた弁DRと弁DSと、ラインLFに設けられた弁FRと弁FSである。弁D1~D4と弁F1~F4は開いている。本測定モードでは弁C1~C4と弁A1~A4をまとめて点検できるため、これらの弁に漏洩がない場合、弁の点検を効率的に行うことができる。ここでは溶離液ポンプPDを用いて予備加圧領域S0を形成しているが、原液ポンプPFを用いて予備加圧領域S0を形成してもよい。この場合、図6(a)において弁DR,DSの代わりに弁FR,FSを開く。
【0035】
【表3】
【0036】
(測定モード1-4)
本測定モードでは第2のカラム12を予め取り外し、接続区間LR1の第2のカラム12との接続部をキャップ18で塞いでいる。弁D2は開けられている。これによって、測定モード1-1で第1の領域S1を画定していた弁D2が隔離弁R1と弁F2に変更される。表4に測定手順を示す。図7(a)に予備加圧領域S0を、図7(b)に第1の領域S1をそれぞれ太線で示している。図7(b)から分かるように、点検対象弁、すなわち第1の領域形成弁VS1は、弁D1,F2,D3,D4と、隔離弁R1と、ラインLDに設けられた弁DRと弁DSである。
【0037】
測定モード1-1と測定モード1-4では第1の領域形成弁VS1のほとんどは共通している。しかし、測定モード1-1では弁D2が第1の領域形成弁VS1となっていたのに対し、測定モード1-4では隔離弁R1と弁F2が第1の領域形成弁VS1となっている。従って、測定モード1-1と測定モード1-4の結果を比較することで、弁D2と弁F2と隔離弁R1の漏洩の有無を評価することができる。すなわち、測定モード1-1で漏洩が検出され、測定モード1-4で漏洩が検出されない場合、測定モード1-1のみで第1の領域形成弁VS1とされている弁D2が漏洩している可能性が高いと評価することができる。逆に、測定モード1-1で漏洩が検出されず、測定モード1-4で漏洩が検出された場合、測定モード1-4のみで第1の領域形成弁VS1とされている隔離弁R1または弁F2が漏洩している可能性が高いと評価することができる。ただし、隔離弁R1と弁F2のどちらが漏洩しているかを区別することはできない。
【0038】
図示は省略するが、第2のカラム12の代わりに第1、第3、第4のカラム11,13,14を取り外すことで、隔離弁R1/弁F3、隔離弁R3/弁F4,隔離弁R4/弁F1がそれぞれ第1の領域形成弁VS1となる。また、本実施形態においても、測定モード1-2のように、弁F1~F4を第1の領域形成弁VS1とすることができる。従って、測定モード1-1~1-3を組み合わせることで、隔離弁R1~R4と弁D1~D4と弁F1~F4のうち、漏洩している可能性のある弁を絞り込むことができる。なお、図7(b)に示すように、各カラム11~14は第1の領域S1の外部にあるため、第2のカラム12だけでなく他の一部またはすべてのカラムを取り外し、キャップ18を付けることも可能である。カラム11~14を取り外すことは点検中にカラム11~14を保護する観点からも好ましい。
【0039】
【表4】
【0040】
(測定モード1-5)
本測定モードでは第1及び第2のカラム11,12を予め取り外し、接続区間LR1,LR2の第1及び第2のカラム11,12との接続部をキャップ18で塞いでいる。これによって、測定モード1-1で第1の領域S1を画定していた弁D2が弁F2,C1,A1に変更される。表5に測定手順を示す。図8(a)に予備加圧領域S0を、図8(b)に第1の領域S1をそれぞれ太線で示している。
【0041】
【表5】
【0042】
図8(b)から分かるように、点検対象弁、すなわち第1の領域形成弁VS1は、弁D1,F2,D3,D4と、弁C1,弁A1と、ラインLDに設けられた弁DRと弁DSである。弁D2と隔離弁R1は開いている。本測定モードは、測定モード1-4で隔離弁R1,弁F2を第1の領域形成弁VS1としていたのを、弁C1,A1,F2を第1の領域形成弁VS1としたものであり、この点を除けば測定モード1-4と同様である。従って、本測定モードでも測定モード1-1,1-2,1-5を組み合わせることで、各弁C1~C4と各弁A1~A4と各弁D1~D4と各弁F1~F4のうち、漏洩している可能性のある弁を絞り込むことができる。但し、弁F2/C1/A1、弁F3/C2/A2、弁F4/C3/A3、弁F1/C4/A4はそれぞれセットとして扱われるため、どれが漏洩しているかを区別することはできない。
【0043】
上述した各測定モードにおいて、弁DSを、ラインLDの、再循環ラインLD0のラインLDからの分岐部と溶離液ポンプPDとの間の位置(例えば、図3のA部)に設けることもできる。この場合、安全弁D0が第1の領域S1に含まれるので、安全弁D0を検査対象とすることができる。同様に、弁FSを、ラインLFの、再循環ラインLF0のラインFDからの分岐部と原液ポンプFDとの間の位置(例えば、図3のB部)に設けることもできる。この場合、安全弁F0が第1の領域S1に含まれるので、安全弁F0を検査対象とすることができる。
【0044】
(第2の実施形態)
図9は第2の実施形態による弁の点検方法の原理を説明する概略図である。図2と同様、並列に配置されたラインL1~L4に弁V1~V4が各々設けられ、その上流のラインL5にポンプPが設けられている。本実施形態では、ラインL1の弁V1の下流に弁V7を設け、弁V1と弁V7との間でラインL1から分岐する分岐ラインL7を設ける。分岐ラインL7の先端は大気開放端19である。分岐ラインL7の大気開放端19と分岐部20との間に背圧弁BV2を、背圧弁BV2と分岐部20との間に弁V8を設ける。
【0045】
まず、図9(a)に示すように、液体流通機構2の一部に予備加圧領域S0を形成する。予備加圧領域S0は後述する第1の領域S1を包含する領域である。具体的には弁V2~V4、V7を閉め、弁V1,V5,V8を開き、ポンプPで液体をラインL1,L5,L7に供給する。背圧弁BV2の作用によって、図9(a)の太線で示した範囲が所定の圧力まで加圧される。次に、図9(b)に示すように、ポンプPを停止し、弁V1,V5,V8を閉じる。これによって、液体流通機構2の一部に閉鎖された第1の領域S1が形成される。その後、図9(c)に示すように、弁V7を開け、弁1の下流側の区間を大気圧まで減圧する。次に、図9(d)に示すように、弁V7を閉じる。これによって、液体流通機構2の一部に閉鎖された第2の領域S2が形成される。第2の領域S2の検査圧力P1は大気圧である。
【0046】
第1の領域S1は、複数の第1の領域形成弁VS1によって画定され、閉鎖された領域である。第2の領域は、複数の第2の領域形成弁VS2によって画定され、閉鎖された領域である。第1の領域形成弁VS1は弁V1~V5であり、第2の領域形成弁VS2は弁V1,V7,V8である。第2の領域は接続弁VS3を介して第1の領域S1に隣接している。接続弁VS3は複数の第1の領域形成弁VS1のうちの一つで且つ複数の第2の領域形成弁VS2のうちの一つの弁、すなわち第1の領域形成弁VS1と第2の領域形成弁VS2に共通する一つの弁V1である。点検対象弁は接続弁VS3である。背圧弁BV2とポンプPと弁V1,V7は、第1の領域S1の圧力を第1の領域S1に隣接する第2の領域S2に対して高くする圧力調整手段を構成する。点検時には弁V8が閉められるため、背圧弁BV2は第1の領域S1の外部に位置する。
【0047】
次に、圧力計PR2で第2の領域S2の圧力が増加しているか否かを検出する。接続弁VS3以外の第2の領域形成弁VS2の漏洩が第2の領域S2の圧力の増加をもたらすことはないため、もし第2の領域S2の圧力が所定の圧力(以下、判定圧力P2という)を上回れば、接続弁VS3が漏れている可能性があると判断される。接続弁VS3は一つしかないので、本実施形態では特定の弁(接続弁VS3)の漏洩の有無を検出することができる。第1の実施形態と同様、背圧弁BV2と弁V8は着脱式とすることができる。
【0048】
図10は本実施形態のクロマト装置1の構成をより詳細に示している。圧力計PRA,PRCは上記の圧力計PR2に対応し、弁CS,ASは上記の弁V7に対応し、弁CR,ARは上記の弁V8に対応し、背圧弁BRC,BRAは上記の背圧弁BV2に対応する。本実施形態では、通常の運転には必ずしも必要でない圧力計PRA、弁AS、AR,背圧弁BRA、および、圧力計PRC、弁CS、CR,背圧弁BRCの少なくとも一つを着脱式とすることができる。すなわち、圧力計PRAの上流および圧力計PRCの上流からこれらの設備を切り離すことができる。本実施形態でも、点検対象弁あるいは第1及び第2の領域S1,S2に応じて複数の測定モードに分かれる。以下、測定モード毎に説明する。
【0049】
(測定モード2-1)
表6に測定手順を示す。第1及び第2の領域S1,S2を形成するために、第1及び第2の領域S1,S2を包含する予備加圧領域S0を形成し(ステップS6-4~S6-6)、その一部を締め切ることで第1の領域S1を形成している(ステップS6-8)。その後、予備加圧領域S0の残部(第1の領域S1を除く予備加圧領域S0)を一旦大気開放して減圧し、当該残部の一部を再び締め切って、第1の領域S1より圧力の低い、閉鎖された第2の領域S2を形成する(ステップS6-9~S6-11)。
【0050】
【表6】
【0051】
図11(a)に予備加圧領域S0を、図11(b)に第1の領域S1を、それぞれ太線で示している。また、図11(c)には、第1の領域S1を太線で、第2の領域S2を破線で示している。図11(c)から分かるように、点検対象弁は弁D1である。第1及び第2の領域S1,S2の液体が流通可能な部位は締切弁のみで構成するため、第1及び第2の領域S1,S2の密閉性が向上する。このため、点検対象弁の漏洩をより確実に検出することができる。弁D2~D4についても同様の工程で点検が可能である。
【0052】
(測定モード2-2)
表7に測定手順を示す。図12(a)に予備加圧領域S0を、図12(b)に第1の領域S1をそれぞれ太線で示している。また、図12(c)には、第1の領域S1を太線で、第2の領域S2を破線で示している。図12(c)から分かるように、点検対象弁は弁F1である。本測定モードは測定モード2-1の弁D1を弁F1に置き換えたものであり、この点を除けば測定モード2-1と同様である。
【0053】
【表7】
【0054】
(測定モード2-3)
本測定モードでは第1及び第2のカラム11,12を予め取り外し、接続区間LR1,LR2の第1及び第2のカラム11,12との接続部をキャップ18で塞いでいる。表8に測定手順を示す。図13(a)に予備加圧領域S0を、図13(b)に第1の領域S1を、それぞれ太線で示している。また、図13(c)には、第1の領域S1を太線で、第2の領域S2を破線で示している。図13(c)から分かるように、点検対象弁は隔離弁R1である。隔離弁R2~R4についても同様の工程で点検が可能である。
【0055】
【表8】
【0056】
(測定モード2-4)
表9に測定手順を示す。図14(a)に予備加圧領域S0を、図14(b)に第1の領域S1を、それぞれ太線で示している。また、図14(c)には、第1の領域S1を太線で、第2の領域S2を破線で示している。図14(c)から分かるように、点検対象弁は弁A1である。弁A2~A4及び弁C1~C4についても同様の工程で点検が可能である。
【0057】
【表9】
【0058】
以上、本発明のいくつかの実施形態について説明したが、本発明のこれらの実施形態に限定されない。各実施形態では、原液1種類、溶離液1種類、画分2種類の場合について説明した。しかし、分野によっては原液1種類、溶離液2種類以上、画分3種類以上が求められることがある。本実施形態はこのような場合に拡張することができる。本発明は、クロマト装置に1種類の原液と(M―1)種類の溶離液とが供給され、N種類の成分(画分)が分離抽出される(M、Nは2以上の整数)態様を含む。具体的には、本発明のクロマト装置は、少なくとも一つの溶離液貯蔵タンクと、少なくとも一つの溶離液主供給ラインを備えることができる。液体流通機構は、2以上の画分の各々について、各接続区間から分岐し当該画分を抜き出す複数の抜き取りサブラインと、複数の抜き取りサブラインが合流して形成される抜き取り主ラインと、を有する。
【0059】
本発明はロータリーバルブを備えたクロマト装置にも適用できる。ロータリーバルブは複数の弁D1~D4、複数の弁F1~F4、複数の弁C1~C4及び複数の弁A1~A4をそれぞれ一つのロータリーバルブとしてまとめたものである。このようなクロマト装置においては上述した一つの弁がロータリーバルブの一つのポートに対応する。従って、上述した方法で第1の領域S1(及び第2の領域S2)を構成することで、各ポートでの漏洩を点検することができる。
【0060】
また、本発明は、バルブブロック形式のバルブを備えたクロマト装置にも適用できる。例えば特表2017-538083号公報に開示されている疑似移動層方式のクロマト装置で用いられるバルブは、バルブブロック形式と呼ばれる、複数の弁をまとめたものであるが、上述した方法で第1の領域S1(及び第2の領域S2)を構成することで、各ポートでの漏洩を点検することができる。また、特許第4945364号公報に開示されているクロマト装置は、本発明の隔離弁R1~R4を必須構成とするものであるが、本発明を同様に適用することができる。
【符号の説明】
【0061】
1 クロマト装置
2 液体流通機構
11~14 カラム
BRD,BRF 背圧弁
LA,LC 主ライン
LA1~LA4,LC1~LC4 サブライン
LR 循環ライン
LR1~LR4 接続区間
LD,LD1~LD4,LF, LF1~LF4 ライン
PRD,PRF 圧力計
S1 第1の領域
S2 第2の領域
TD 溶離液貯蔵タンク
TF 原液貯蔵タンク
VS1 第1の領域形成弁
VS2 第2の領域形成弁
VS3 接続弁
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14