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特開2024-30769放射線照射構造、車両用帯電電荷低減装置並びに放射線発生層形成用組成物及びその使用方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024030769
(43)【公開日】2024-03-07
(54)【発明の名称】放射線照射構造、車両用帯電電荷低減装置並びに放射線発生層形成用組成物及びその使用方法
(51)【国際特許分類】
   H05F 3/06 20060101AFI20240229BHJP
   H05F 3/02 20060101ALI20240229BHJP
   B60R 16/06 20060101ALI20240229BHJP
【FI】
H05F3/06
H05F3/02 E
B60R16/06 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022133881
(22)【出願日】2022-08-25
(71)【出願人】
【識別番号】510176444
【氏名又は名称】株式会社ランドマスター
(74)【代理人】
【識別番号】100173679
【弁理士】
【氏名又は名称】備後 元晴
(72)【発明者】
【氏名】金光 利久
【テーマコード(参考)】
5G067
【Fターム(参考)】
5G067AA18
5G067DA24
(57)【要約】
【課題】車両用帯電電荷低減装置のさらなる小型化あるいは高密度化を実現する。
【解決手段】本発明の放射線照射構造(物質活性化部材10)は、金属層11と、放射線発生層12とによる積層構造である。金属層11は、酸化還元電位が0V以下の金属等を含む板状又は箔状である。放射線発生層12は、放射性物質を含有する天然鉱石と、導電性金属粉末と、放射線透過性樹脂との混合物を含む。導電性金属粉末は、0℃における体積電気抵抗率が5μΩ・cm以下である金属粉末又は合金粉末であり、放射線発生層12が発生する放射線量は、0.02μSv/h以上0.2μSv/h以下である。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属層と、放射線発生層とが積層され、
前記金属層は、酸化還元電位が0V以下の金属、又は酸化還元電位が0V以下の金属の合金であって、前記合金としての酸化還元電位が0V以下である合金を含む板状又は箔状であり、
前記放射線発生層は、
放射性物質を含有する天然鉱石と、
導電性金属粉末と、
放射線透過性樹脂と、
の混合物を含み、
前記導電性金属粉末は、0℃における体積電気抵抗率が5μΩ・cm以下である金属粉末又は合金粉末であり、
前記放射線発生層が発生する放射線量は、0.02μSv/h以上0.2μSv/h以下である、
放射線照射構造。
【請求項2】
請求項1に記載の放射線照射構造を備える輸送機関用帯電電荷低減部材。
【請求項3】
可撓性である、請求項2に記載の輸送機関用帯電電荷低減部材。
【請求項4】
本体を構成する部品のうちの、空気流が前記本体の表面に沿った流れから前記表面から離れた流れに変化し始める特定部位に、請求項2又は3に記載の輸送機関用帯電電荷低減部材が設けられている、輸送機関。
【請求項5】
前記帯電電荷低減部材は、前記輸送機関の外表面とは反対側を流れる空気流に曝された裏面に設けられている、請求項4に記載の輸送機関。
【請求項6】
本体部と、前記本体部から延出する導線部とを備え、
前記本体部は、請求項1に記載の放射線照射構造を有し、
前記導線部は、前記放射線発生層から延出し、車両内に設けられたバッテリーのマイナス端子と、前記バッテリーのプラス端子、及び前記プラス端子と電気的に接続されているプラス接続部以外の車両内の電気的に接続可能な接続部と、の少なくとも1以上と電気的に接続可能である、輸送機関用帯電電荷低減装置。
【請求項7】
前記放射性発生層の表面には、第1磁石が設けられ、
前記金属層の裏面には、第2磁石が設けられ、
前記第1磁石と前記第2磁石とは、同じ極どうしで向かい合っている、請求項6に記載の輸送機関用帯電電荷低減装置。
【請求項8】
前記導線部は、前記マイナス端子と前記接続部とから選択される車両内の1箇所と電気的に接続可能である、請求項6又は7に記載の輸送機関用帯電電荷低減装置。
【請求項9】
放射性物質を含有する天然鉱石と、
導電性金属粉末と、
放射線透過性樹脂とを含み、
前記導電性金属粉末は、0℃における体積電気抵抗率が5μΩ・cm以下である金属粉末又は合金粉末であり、
発生する放射線量が0.02μSv/h以上0.2μSv/h以下である、
放射線発生層形成用組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放射線照射構造、車両用帯電電荷低減装置並びに放射線発生層形成用組成物及びその使用方法に関する。
【背景技術】
【0002】
自動二輪車(オートバイ)、自動四輪車(自動車)等の車両が走行すると、空気流が車両に摩擦接触する状態にて流れることに起因して車両に静電気が発生する。また、車輪の回転に伴ってタイヤの各部が路面に対し繰り返し接触及び剥離を繰り返すこと、エンジン、ブレーキ装置などにおいて構成部品が相対運動することなどによっても、静電気が発生する。
【0003】
車両は導電性が低いタイヤによって大地から実質的に電気絶縁された状態にあるため、車両に静電気が発生すると、電荷(一般的には正の電荷)が車体などに帯電する。
【0004】
車体に正の電荷が帯電すると、第1に、エンジン性能の低下を引き起こす。エンジンがガソリンエンジンや、ディーゼルエンジンである場合、車体に正の電荷が帯電すると、ピストンの稼動の阻害、エンジンの燃焼効率の低下、ラジエーター水やエンジンオイルの流れの阻害等を引き起こす。これにより、ドライバーは、パワー感やトルク感の低下、エンジン振動の増大、燃費の低下等を体感する。
【0005】
また、車両が電気自動車、電動アシスト自転車、電動車いす等、バッテリーを駆動源にする場合、車体に正の電荷が帯電すると、フリクションに影響を及ぼす。これにより、ドライバーは、電力使用量の増大、ひいては、航続距離の低下を体感する。
【0006】
第2に、車両の乗り心地が悪化する。車両の駆動源がガソリンエンジン、ディーゼルエンジン、バッテリーのいずれであっても、車体に正の電荷が帯電すると、サスペンションやギヤ等の稼動を阻害する。これにより、ドライバーは、タイヤ等の振動の増大、運転安定性の低下を感じる。
【0007】
そこで、車両に帯電した電荷を低減する手法が研究され、種々の手法が提案されている。
【0008】
例えば、特許文献1に記載の装置は、車両内のエンジンの吸気管の外面に対して電気的に接続する第1接続部と、車両内のエンジンクーラント流路管の外面に対して電気的に接続する第2接続部と、車両内のエンジンオイル流路管の外面に対して電気的に接続する第3接続部と、第1から第3の接続部と前記車両内に設けられたバッテリーのマイナス端子とを並列に接続する第1から第3の導線と、第1から第3の導線に接続される導電板と、導電板と車両内に設けられたバッテリーのマイナス端子とを接続する第4導線と、を備える。この装置を用いることで、車両内の電気的なバランスを崩すことなく車両の燃費を向上させることができる。
【0009】
また、非特許文献1は、本体内部のコードの長さや巻き方を工夫することで、蓄電機能、コイル機能が得られることを開示する。特に、コイル機能については、不規則な電気を除去し、電気を安定させる(フィルター効果)機能を持つことを開示する。非特許文献1に記載の装置を用いることで、電圧降下の抑制・ノイズカットによる整流効果が生じ、スパークプラグの点火をより大きく、より長くさせることが可能である。これによって、同じガソリン供給量でも点火効率が上がり完全燃焼に近づくため、一酸化炭素の排出を抑えられ、燃費や軸出力アップを期待できる。
【0010】
しかしながら、特許文献1及び非特許文献1に記載の装置は、いずれも、負の電荷の供給源としてバッテリーを用いるものであり、装置それ自体が負の電荷を生み出すものではない。そこで、外部のエネルギーに頼ることがない点で、よりリーズナブルな装置を提供することが求められる。
【0011】
また、非特許文献1に記載の装置は、電圧降下の抑制、ノイズカットによる整流効果により、スパークプラグの点火をより大きく、より長くさせる装置である。そのため、非特許文献1に記載の装置は、スパークプラグを持つガソリンエンジンを駆動源とする車両に対して適用できるにとどまり、スパークプラグを持たないディーゼルエンジンやバッテリーを搭載した車両に対して適用することができない。そこで、駆動源の種類に関わらず、車両に帯電した電荷を低減できる装置を提供することが求められる。
【0012】
また、オートバイをはじめとした二輪車にも適用できるようにするため、装置をより小型化することが好ましい。
【0013】
このような問題に鑑みて、当社は、新たな車両用帯電電荷低減装置を提案し、特許を取得している(特許文献2参照)。この装置は、本体部と、前記本体部から延出する導線部とを備え、前記本体部は、放射性物質を含有する天然鉱石を含む放射線発生層と、酸化還元電位が0V以下の金属、又は酸化還元電位が0V以下の金属の合金を含む第1金属層と、0℃における体積電気抵抗率が4.7μΩ・cm以下である金属、又は前記体積電気抵抗率が5μΩ・cm以下である金属の合金を含む第2金属層と、を有し、前記導線部は、前記第2金属層から延出し、車両内に設けられたバッテリーのマイナス端子と、前記バッテリーのプラス端子、及び前記プラス端子と電気的に接続されているプラス接続部以外の車両内の電気的に接続可能な接続部と、の少なくとも1以上と電気的に接続可能である。
【0014】
特許文献2に記載の発明によると、駆動源の種類に関わらず、車両に帯電した電荷を低減できるとともに、車両に搭載されたバッテリー等、外部のエネルギーに頼ることがない点で、よりリーズナブルであり、小型化も可能な車両用帯電電荷低減装置を提供することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【特許文献1】特許5671720号公報
【特許文献2】特許6362238号公報
【非特許文献】
【0016】
【非特許文献1】トリックスター名古屋ホームページ、「PPSについて」、http://www.trueblue.co.jp/about/
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
しかしながら、近年、車両用帯電電荷低減装置について、さらなる小型化あるいは高密度化が求められている。
【0018】
本発明は、このような問題に鑑みてなされたものであり、その目的は、車両用帯電電荷低減装置のさらなる小型化あるいは高密度化を実現することである。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本発明者らは、上記課題を解決するため鋭意検討した結果、放射線発生層の構成を見直すことで、放射線発生層、第1金属層、及び第2金属層の3層構造から2層構造に減らすことができるだけでなく、3層構造であった場合に比べて帯電電荷の低減効果が高まるという特異的効果を見出し、本発明を完成するに至った。具体的に、本発明は以下のものを提供する。
【0020】
第1の特徴に係る発明は、金属層と、放射線発生層とが積層され、前記金属層は、酸化還元電位が0V以下の金属、又は酸化還元電位が0V以下の金属の合金であって、前記合金としての酸化還元電位が0V以下である合金を含む板状又は箔状であり、前記放射線発生層は、放射性物質を含有する天然鉱石と、導電性金属粉末と、放射線透過性樹脂と、の混合物を含み、前記導電性金属粉末は、0℃における体積電気抵抗率が5μΩ・cm以下である金属粉末又は合金粉末であり、前記放射線発生層が発生する放射線量は、0.02μSv/h以上0.2μSv/h以下である、放射線照射構造である。
【0021】
第1の特徴に係る発明によると、放射線発生層によって発生される放射線量が0.02μSv/h以上0.2μSv/h以下と、従来に比べて数十万分の一であるため、装置の最表面に、放射線発生層によって発生される放射線を遮蔽する放射線遮蔽層を設けることを必須としない。これにより、放射線照射構造を可撓性にすることができ、活性化させる物質を内在する装置の各々の形状に合わせて、放射線照射構造を複数種類提供することを要しない。
【0022】
第1の特徴に係る発明によると、活性化させる物質を内在する装置の表面が平面であるか、曲面であるかにかかわらず、放射線照射構造の金属層を対象物の表面に密着させることができる。これにより、活性化させる物質を内在する装置の表面には、金属層と、放射線発生層とがこの順に積層される。
【0023】
放射線発生層は、放射性物質を含有する天然鉱石を含み、放射線を発生する。この放射線は、装置に内在する、活性化の対象となる物質をイオン化させる。そして、このイオン化の際に生じた電荷が金属層を構成する金属に帯電し、電界及び磁界を生じさせるとともに、その電界及び磁界が、装置に内在する物質に作用し、その物質を活性化させると考えられる。
【0024】
反対に、放射線照射構造の放射線発生層を装置の表面に密着させてもよい。これにより、活性化させる物質を内在する装置の表面には、放射線発生層と、金属層とがこの順に積層される。
【0025】
この場合、放射線発生層において発生した放射線の一部は、対象物に内在する、活性化の対象となる物質に直接伝わる。また、他の一部は、金属層に向けられ、中でも、一部の放射線は、金属層に対して特定の入射角及び反射角で反射する。特定の入射角及び反射角で反射すると、放射線は、増幅され、増幅された放射線は、放射線透過性樹脂を含む放射線発生層を通過して、装置に内在する、活性化の対象となる物質に伝わる。当該物質は、放射線発生層から直接伝わった放射線、及び金属層での反射を通じて増幅された放射線のいずれも吸収し、当該物質の分子を励起状態にして電子の引き抜きや付加によって遊離基化して、当該物質を活性化するものと考えられる。
【0026】
第1の特徴に係る発明によると、放射線発生層によって発生される放射線量が0.02μSv/h以上0.2μSv/h以下と、従来に比べて数十万分の一であるにも関わらず、対象物を十分に活性化させることができる。
【0027】
また、従来技術に比べ、放射線発生源に相当する天然鉱石の使用量を減らすことができ、鉱物資源の有効利用、コストダウンにもつながる。
【0028】
第2の特徴に係る発明は、第1の特徴に係る発明の放射線照射構造を備える輸送機関用帯電電荷低減部材である。
【0029】
第3の特徴に係る発明は、第2の特徴に係る発明であって、可撓性の輸送機関用帯電電荷低減部材である。
【0030】
第4の特徴に係る発明は、本体を構成する部品のうちの、空気流が前記本体の表面に沿った流れから前記表面から離れた流れに変化し始める特定部位に、第2又は第3の特徴に係る発明の輸送機関用帯電電荷低減部材が設けられている、輸送機関である。
【0031】
第5の特徴に係る発明は、第4の特徴に係る発明であって、前記帯電電荷低減部材は、前記輸送機関の外表面とは反対側を流れる空気流に曝された裏面に設けられている、輸送機関である。
【0032】
第2~第5の特徴に係る発明によると、放射線発生層は、放射性物質を含有する天然鉱石を含み、放射線を発生する。この放射線は、金属層を構成する酸化還元電位が0V以下の金属等をイオン化させる。そして、このイオン化によって生じる負の電荷が、輸送機関の特定部位に帯電した正の電荷を低減する。
【0033】
ここで、特定部位は、走行時に本体の周囲に流れる正に帯電した空気流が、帯電した本体の表面に沿った流れから、表面から離れた流れに変化し始める剥離形状の箇所のうちの、空気流の剥離を抑制することにより輸送機関の操作安定性が向上する少なくともいずれか一つの部位である。
【0034】
これにより、正に帯電した本体の表面と、正に帯電している空気流との間に生じる斥力(反発力)を低下させることができる。そのため、本体の表面近傍から正に帯電した空気流が剥離することを抑制することができる。その結果、本体の表面に作用する空圧が想定を超えて変化したり、それに伴って本体の空力特性が悪化したりすることを抑制することができるので、操縦安定性等の走行性能が低下することを抑制することができる。
【0035】
例えば、本体の幅方向での中央部分の部位の正の電位を低下させることにより、本体のピッチング方向での空力特性が変化もしくは低下することを抑制することができる。そのため、輸送機関が接地面、接水面等に接することによってかかる荷重が変化することを抑制することができるので、加速性能や操縦安定性が低下することを抑制することができる。
【0036】
また、例えば、本体の幅方向の中央部分について左右対称となる部位のうちのいずれか一対の部位の正の電位を低下させることにより、本体のローリング方向あるいはヨー方向での空力特性が変化もしくは低下することを抑制することができる。そのため、操縦安定性等の走行性能が低下することを抑制することができる。
【0037】
また、例えば、輸送機関の移動時に輸送機関の周囲を流れる空気流の流れ方向に沿って、一定間隔を空けた複数の部位の正の電位を低下させることにより、操縦安定性等の性能が低下することをより一層抑制することができる。
【0038】
また、輸送機関用帯電電荷低減部材を輸送機関の外表面とは反対側を流れる空気流に曝された裏面に設けることにより、見栄えを損なうことがない。
【0039】
よって、第2~第5の特徴に係る発明によると、輸送機関に帯電した正の電荷をよりいっそう低減し、ひいては、操縦安定性の向上、加速性能の向上に寄与する輸送機関用帯電電荷低減部材を提供することができる。
【0040】
第6の特徴に係る発明は、本体部と、前記本体部から延出する導線部とを備え、前記本体部は、第1の特徴に係る発明の放射線照射構造を有し、前記導線部は、前記放射線発生層から延出し、車両内に設けられたバッテリーのマイナス端子と、前記バッテリーのプラス端子、及び前記プラス端子と電気的に接続されているプラス接続部以外の車両内の電気的に接続可能な接続部と、の少なくとも1以上と電気的に接続可能である、輸送機関用帯電電荷低減装置である。
【0041】
第7の特徴に係る発明は、第6の特徴に係る発明であって、前記放射性発生層の表面には、第1磁石が設けられ、前記金属層の裏面には、第2磁石が設けられ、前記第1磁石と前記第2磁石とは、同じ極どうしで向かい合っている、輸送機関用帯電電荷低減装置である。
【0042】
第8の特徴に係る発明は、第6又は第7の特徴に係る発明であって、前記導線部は、前記マイナス端子と前記接続部とから選択される車両内の1箇所と電気的に接続可能である、輸送機関用帯電電荷低減装置である。
【0043】
ユーザは、装置の導線部を、車両内に設けられたバッテリーのマイナス端子と、バッテリーのプラス端子等を除いた車両内の電気的に接続可能な接続部との少なくとも1以上と電気的に接続する。
【0044】
放射線発生層は、放射性物質を含有する天然鉱石を含み、放射線を発生する。この放射線は、金属層を構成する酸化還元電位が0V以下の金属等をイオン化させる。そして、このイオン化によって生じる負の電荷が、放射線発生層に含まれる導電性金属粉末、導線部を経由して車両の各部に送られる。自動二輪車(オートバイ)、自動四輪車(自動車)等の車両は、バッテリーと車体とで一つの電気回路を構成しているため、本発明の装置と車両とを少なくとも一箇所で電気的に接続すれば、負の電荷を、車両の各部の様々な箇所に送ることができる。そして、負の電荷が送られることで、車両に帯電した正の電荷が低減される。
【0045】
これにより、エンジンがガソリンエンジンや、ディーゼルエンジンである場合、正の電荷の帯電によって低下していたエンジン性能を回復できる。ドライバーは、パワー感やトルク感の向上、エンジン振動の低減、燃費の向上等を体感できる。
【0046】
また、車両が電気自動車、電動アシスト自転車、電動車いす等、バッテリーを駆動源にする場合、フリクション低減によって電力使用量を抑えられる。加えて、アクセルOFFによる減速が緩和されるため、回生ブレーキの回生量を増やすことが可能になる。これによって、車両の航続距離を増やすことが可能になる。加えて、車両がハイブリッド車である場合は、電気エネルギー発生のためのエンジン稼働時間が減少する。
【0047】
また、車両の駆動源がガソリンエンジン、ディーゼルエンジン、バッテリーのいずれであっても、車両の乗り心地を改善できる。ドライバーは、タイヤ等の振動の軽減、路面追従性、運転安定性の向上を体感できる。
【0048】
そして、本発明の装置は、駆動源の種類に関わらず、車両に帯電した電荷を低減できる。また、車両に搭載されたバッテリー等、外部のエネルギーに頼ることがない点で、よりリーズナブルであるだけでなく、従来の装置では放射線発生層、第1金属層、及び第2金属層の3層構造であったのを放射線発生層と金属層との2層構造にしているため、装置のさらなる小型化、あるいは、同じ大きさであれば、2層構造の繰り返し単位を増やすことによる高密度化を実現できる。また、放射線発生層、第1金属層、及び第2金属層の3層構造から2層構造に減らすことができるだけでなく、3層構造であった場合に比べて帯電電荷の低減効果が高まるという特異的効果を奏する。
【0049】
よって、第6~第8の特徴に係る発明によると、汎用性が高く、リーズナブルであるという基本思想を維持しつつ、さらなる小型化あるいは高密度化を実現可能な車両用帯電電荷低減装置を提供できる。
【0050】
第9の特徴に係る発明は、放射性物質を含有する天然鉱石と、導電性金属粉末と、放射線透過性樹脂と、バインダーとを含み、前記導電性金属粉末は、0℃における体積電気抵抗率が5μΩ・cm以下である金属粉末又は合金粉末であり、発生する放射線量が0.02μSv/h以上0.2μSv/h以下である、放射線発生層形成用組成物である。
【発明の効果】
【0051】
本発明によると、汎用性が高く、リーズナブルであるという基本思想を維持しつつ、さらなる小型化あるいは高密度化を実現可能な車両用帯電電荷低減装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0052】
図1】本実施形態の物質活性化部材10を説明するための概略模式図である。
図2】本実施形態の車両用帯電電荷低減装置2を説明するための概略模式図である。
図3】第1の変形例の車両用帯電電荷低減装置2’を説明するための概略模式図である。
図4】第2の変形例の車両用帯電電荷低減装置2’’を説明するための概略模式図である。
図5】第3の変形例の車両用帯電電荷低減装置2’’’を説明するための概略模式図である。
図6】第4の変形例の車両用帯電電荷低減装置2’’’を説明するための概略模式図である。
図7】上記物質活性化部材10を、自動車用エンジンの高分子材料製の空気ダクトDに使用したときの模式図である。
図8】従来の車両用帯電電荷低減装置200を説明するための概略模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0053】
以下、本発明の具体的な実施形態について、詳細に説明するが、本発明は、以下の実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の目的の範囲内において、適宜変更を加えて実施することができる。
【0054】
<放射線照射構造>
図1は、本実施形態の放射線照射構造の一例である物質活性化部材10を説明するための概略模式図である。物質活性化部材10は、少なくとも、金属層11と、放射線発生層12とを備える。
【0055】
〔金属層11〕
金属層11は、酸化還元電位が0V以下の金属、又は酸化還元電位が0V以下の金属の合金であって、合金としての酸化還元電位が0V以下である合金を含んで構成される。金属層11を構成する材料が特定の材料であることから、放射線発生層12によって発生される放射線量が0.02μSv/h以上0.2μSv/h以下と、極めて低いにも関わらず、活性化の対象となる物質(例えば、エンジンが吸入する燃焼用空気や、エンジンが排出する燃焼排気ガス等)のイオン化に伴って生じる電荷が帯電した際に、当該物質を十分に活性化させるに足りるだけの電界及び磁界を生じさせることができると考えられる。
【0056】
酸化還元電位が0V以下の金属として、リチウム(-3.045V)、セシウム(-2.923V)、ルビジウム(-2.924V)、カリウム(-2.925V)、バリウム(-2.92V)、ストロンチウム(-2.89V)、カルシウム(-2.84V)、ナトリウム(-2.714V)、マグネシウム(-2.356V)、トリウム(-1.90V)、ベリリウム(-1.85V)、アルミニウム(-1.676V)、チタン(-1.63V)、ジルコニウム(-1.534V)、マンガン(-1.18V)、タンタル(-0.81V)、亜鉛(-0.7626V)、クロム(-0.74V)、鉄(-0.44V)、カドミウム(-0.4025V)、コバルト(-0.277V)、ニッケル(-0.257V)、スズ(-0.1375V)、鉛(-0.1263V)等が挙げられる。
【0057】
活性化の対象となる物質のよりいっそうの活性化を促すため、金属層11を構成する金属又は合金の酸化還元電位は、-0.4V以下であることが好ましく、-1.0V以下であることがより好ましく、-1.5V以下であることがさらに好ましく、-2.0V以下であることがよりさらに好ましく、-2.5V以下であることが特に好ましい。
【0058】
本実施形態において、金属層11は、板状又は箔状であることが好ましい。板状又は箔状であることから、粉体状に比べて表面積が小さい。その結果、粉体状に比べて金属又は合金が自然発火しづらいため、酸化還元電位が低い金属又は合金であっても、比較的容易に取り扱うことができる。
【0059】
他方、酸化還元電位が0Vを超える金属として、アンチモン(0.1504V)、ビスマス(0.3172V)、銅(0.340V)、水銀(0.7960V)、銀(0.7991V)、パラジウム(0.915V)、イリジウム(1.156V)、白金(1.188V)、金(1.52V)等が挙げられる。これらの金属では、活性化の対象となる物質を十分に活性化させるために、放射線発生層12によって発生される放射線量を100mSv/h程度にする必要があるため、好ましくない。
【0060】
金属層11の厚さの下限は、活性化の対象となる物質(例えば、エンジンが吸入する燃焼用空気や、エンジンが排出する燃焼排気ガス等)のイオン化に伴って生じる電荷が帯電した際に、当該物質を十分に活性化させるに足りるだけの電界及び磁界を生じさせることができ、かつ、折り曲げたり、管体等に巻き付けたりしても、金属層11が破れたり切れたりしない程度であれば、特に限定されない。金属層11の厚さの下限は、0.01mm以上であることが好ましく、0.05mm以上であることがより好ましく、0.1mm以上であることがさらに好ましい。
【0061】
金属層11の厚さの上限は、物質活性化部材10が全体として可撓性を有していれば、特に限定されない。金属層11の厚さの上限は、10mm以下であることが好ましく、5mm以下であることがより好ましく、1mm以下であることが特に好ましい。
【0062】
〔放射線発生層12〕
放射線発生層12は、放射線発生層形成用組成物の硬化物からなる。放射線発生層形成用組成物は、放射性物質を含有する天然鉱石と、導電性金属粉末と、放射線透過性樹脂とを含み、発生する放射線量が0.02μSv/h以上0.2μSv/h以下である。
【0063】
[天然鉱石]
天然鉱石は、放射性物質を含有する材料であれば、特に限定されず、モナザイト(モナズ石)、ラジウム鉱石、リン鉱石、コロンバイト、タンタライト、ストロベライト、パイロクロール、バストネサイト、セリウムコンセントレート、ジルコン、ゴム石、デービド鉱、ブランネル石、センウラン鉱(ピッチブレンド)、ニンギョウ石、リンカイウラン石、カルノー石、ツャムン石、メタチャムン石、チャヤームン鉱、シュレーキンゲル鉱、ジルケル鉱、ゼノタイム、トロゴム石、オーエル石、バクハン石、カツレン石、タングステン鉱、ホウトリウム石、ブロッカイト、ウラノフェン、リンドウウラン石、コフィン石、ウラントール石、ウランホウトリウム鉱、トール石、及びフランセビル石等が挙げられる。
【0064】
天然鉱石の含有量の下限は、装置に内在する、活性化の対象となる物質を活性化させるのに十分な量の放射線を発生させることができれば、特に限定されない。天然鉱石の含有量の下限は、樹脂組成物100質量部に対して、0.01質量部以上であることが好ましく、0.1質量部以上であることがより好ましく、1質量部以上であることが特に好ましい。
【0065】
天然鉱石の含有量の上限は、放射線発生層12によって発生される放射線量を0.2μSv/h以下にすることができれば、特に限定されない。天然鉱石の含有量の上限は、樹脂組成物100質量部に対して、90質量部以下であることが好ましく、85質量部以下であることがより好ましく、80質量部以下であることが特に好ましい。
【0066】
[導電性金属粉末]
導電性金属粉末は、0℃における体積電気抵抗率が5μΩ・cm以下である金属の粉末、又はその金属の合金の粉末を含んで構成される。
【0067】
導電性金属粉末が放射線発生層12に含まれていることで、放射線発生層12で発生した放射線が導電性金属粉末に衝突して乱反射を引き起こし、放射線が金属層11に向けられたときに、金属層11に対して特定の入射角及び反射角で反射する放射線の量が増え、結果として物質のよりいっそうの活性化に繋がり得ると考えられる。
【0068】
金属又は合金は、金属層11を構成する金属又は合金の導電性よりも高い導電性を有することが好ましい。中でも、金属層11を構成する金属等のイオン化によって生成した負の電荷を車両の各部に好適に送ることができるようにするため、導電性金属粉末の導電性は、高ければ高いほど好ましい。
【0069】
導電性の高さを示す指標として、0℃における体積電気抵抗率が挙げられる。そして、導電性が高い金属として、銀(Ag,体積電気抵抗率:1.5μΩ・cm)、銅(Cu,体積電気抵抗率:1.6μΩ・cm)、金(Au,体積電気抵抗率:2.1μΩ・cm)、アルミニウム(Al,体積電気抵抗率:2.5μΩ・cm)、ベリリウム(Be,体積電気抵抗率:2.8μΩ・cm)、カルシウム(Ca,体積電気抵抗率:3.2μΩ・cm)、マグネシウム(Mg,体積電気抵抗率:3.9μΩ・cm)、ナトリウム(Na,体積電気抵抗率:4.2μΩ・cm)、ロジウム(Rh,体積電気抵抗率:4.3μΩ・cm)、モリブデン(Mo,体積電気抵抗率:4.6μΩ・cm)、イリジウム(Ir,体積電気抵抗率:4.7μΩ・cm)、タングステン(W,体積電気抵抗率:4.8μΩ・cm)、コバルト(Co,体積電気抵抗率:5.1μΩ・cm)、亜鉛(Zn,体積電気抵抗率:5.6μΩ・cm)、ルテニウム(Ru,体積電気抵抗率:6.3μΩ・cm)、オスミウム(Os,体積電気抵抗率:7.4μΩ・cm)、インジウム(In,体積電気抵抗率:7.5μΩ・cm)、鉄(Fe,体積電気抵抗率:8.8μΩ・cm)、白金(Pt,体積電気抵抗率:9.8μΩ・cm)、及びスズ(Sn,体積電気抵抗率:10μΩ・cm)等が挙げられる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。また、導電性金属粉末は、第1の金属粉の表面に第2の金属がコーティングされた態様であってもよい。
【0070】
中でも、より高い導電性を有し、金属層11を構成する金属等のイオン化によって生成した負の電荷を、より好適に車両の各部に送ることができることから、導電性金属粉末の0℃における体積電気抵抗率は、4μΩ・cm以下であることがより好ましく、3μΩ・cm以下であることがさらに好ましく、2.5μΩ・cm以下であることがよりさらに好ましく、2μΩ・cm以下であることが特に好ましい。特に、銀又は銅は、汎用性が優れると共に、これらの金属の中でも特に導電性が優れるので、本発明の効果をより顕著に発揮することができる。
【0071】
導電性金属粉末の形状は、特に限定されない。例えば、顆粒状、ペレット状、フレーク状、球状、針状、スティック状、円盤状等が挙げられる。これらの中でも、形状は、球状であることが好ましい。この場合、流動性が向上するので、放射線発生層形成用組成物(導電性ペースト)をノズルから吹き付けて金属層11に付与する場合であっても、ノズルの目詰まりを抑制できる。
【0072】
導電性金属粉末の一次平均粒子径は、特に限定されないが、放射線発生層12で発生した放射線の乱反射を促すためには、放射線発生層12に含まれる金属又は合金の粉体の粒子径は、できるだけ小さい方が好ましい。そのため、一次平均粒子径は、100μm以下であることが好ましく、10μm以下であることがより好ましく、3μm以下であることがさらに好ましい。
【0073】
一方、粒子径が小さいほど金属又は合金の表面積が大きくなり、結果として、金属又は合金の自然発火を防ぐための対策を要することになる。導電性金属粉末の取扱いを容易にするため、一次平均粒子径は、1nm以上であることが好ましく、0.1μm以上であることがより好ましく、1μm以上であることがさらに好ましい。
【0074】
導電性金属粉末の比表面積は、特に限定されないが、放射線発生層12で発生した放射線の乱反射を促す観点と、導電性金属粉末の取扱いを容易にする観点とのバランスから、比表面積は、3~20m/gの範囲内であることが好ましい。この場合、導電性が向上する。本実施形態において、比表面積は、BET法により測定した値とする。
【0075】
導電性金属粉末の含有量の下限は、放射線発生層12に導電性の機能を持たせることができれば、特に限定されない。導電性金属粉末の含有量の下限は、樹脂組成物100質量部に対して、10質量部以上であることが好ましく、20質量部以上であることがより好ましく、30質量部以上であることが特に好ましい。
【0076】
導電性金属粉末の含有量の上限は、放射線透過性樹脂の機能を損なわず、放射線発生層12が金属層11との密着性を担保できれば、特に限定されない。導電性金属粉末の含有量の上限は、樹脂組成物100質量部に対して、60質量部以下であることが好ましく、50質量部以下であることがより好ましく、40質量部以下であることが特に好ましい。
【0077】
[放射線透過性樹脂]
放射線透過性樹脂は、放射線透過性を有し、放射線発生層形成用組成物(導電性ペースト)のバインダーとして機能するものであれば、特に限定されない。放射線透過性樹脂の例として、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、ブチラール樹脂、熱可塑性イミド樹脂などの熱可塑性樹脂も使用できるが、耐熱性の点からは熱硬化性樹脂を使用することが好ましい。
【0078】
熱硬化性樹脂としては、例えばビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂、1分子中に1個以上のグリシジル基を有する液状エポキシ化合物などのエポキシ樹脂;不飽和ポリエステル樹脂などのポリエステル樹脂;ウレタン樹脂;レゾール型フェノール樹脂、ノボラック型フェノール樹脂などのフェノール樹脂;イミド樹脂などが好適に使用される。
【0079】
放射線透過性樹脂には、これらの熱硬化性樹脂を硬化させる硬化剤が含まれていてもよく、アミン系エポキシ硬化剤、酸無水物系エポキシ硬化剤、イソシアネート系硬化剤、イミダゾール系硬化剤等が挙げられる。これら熱硬化性樹脂、硬化剤はいずれも、1種単独で使用しても2種以上を併用してもよい。
【0080】
[溶媒]
放射線発生層形成用組成物は、未硬化の状態のときは溶媒に分散されている。溶媒として、例えば、トルエン、メチルエチルケトン、ブチルセロソルブアセテート、シクロヘキサノン、及びイソホロン等から選択される1種又は2種以上を混合したものが挙げられる。
【0081】
[添加剤]
放射線発生層12において、本実施形態に記載の発明に影響を及ぼさない範囲で、一般に広く用いられる添加剤が含まれていてもよい。添加剤として、粘度調整剤、加工助剤、安定剤、難燃剤、防災剤、老化防止剤、帯電防止剤、紫外線吸収剤、充填剤、着色剤、発泡剤等が挙げられる。
【0082】
[放射線発生層12の厚さ]
放射線発生層12の厚さの下限は、装置に内在する、活性化の対象となる物質を活性化させるのに十分な量の放射線を発生させることができ、金属層11を構成する金属等のイオン化によって生成した負の電荷を、放射線発生層12等を経由して、より好適に車両の各部に送ることができる程度であれば、特に限定されない。放射線発生層12の厚さの下限は、0.01mm以上であることが好ましく、0.05mm以上であることがより好ましく、0.1mm以上であることが特に好ましい。
【0083】
放射線発生層12の厚さの上限は、特に限定されない。物質活性化部材10が全体として可撓性を有するよう設計するのであれば、放射線発生層12の厚さの上限は、10mm以下であることが好ましく、5mm以下であることがより好ましく、1mm以下であることが特に好ましい。
【0084】
[放射線量]
放射線発生層12によって発生される放射線量の下限は、0.02μSv/h以上であり、0.05μSv/h以上であることがより好ましく、0.1μSv/h以上であることが特に好ましい。天然鉱石に含まれる放射性物質が0.02μSv/h以上の放射線を発生すると、その放射線が、装置に内在する、活性化の対象となる物質をイオン化させる。そして、このイオン化の際に生じた電荷が金属層11を構成する金属に帯電し、電界及び磁界を生じさせるとともに、その電界及び磁界が、装置に内在する物質に作用し、その物質を活性化させると考えられる。
【0085】
放射線発生層12によって発生される放射線量の上限は、0.2μSv/h以下であり、0.15μSv/h以下であることがより好ましく、0.1μSv/h以下であることが特に好ましい。本実施形態の物質活性化部材10によると、放射線発生層12によって発生される放射線量が0.2μSv/h以下と、従来に比べて数十万分の一であるにも関わらず、活性化の対象となる物質(例えば、エンジンが吸入する燃焼用空気や、エンジンが排出する燃焼排気ガス等)を十分に活性化させることができる。
【0086】
また、従来技術に比べ、放射線発生源に相当する天然鉱石の使用量を減らすことができ、鉱物資源の有効利用、コストダウンにもつながる。
【0087】
そして、放射線発生層12によって発生される放射線量が、従来に比べて数十万分の一であるため、装置の最表面に、放射線発生層12によって発生される放射線を遮蔽する放射線遮蔽層を設けることを必須としない。これにより、物質活性化部材10を可撓性にすることができ、活性化させる物質を内在する装置の各々の形状に合わせて、物質活性化装置を複数種類提供することを要しない。
【0088】
なお、本実施形態において、放射線量の値は、NaIシンチレーション式サーベイメータを用いたときのバックグラウンド(放射線発生層12に天然鉱石が含まれていないときの線量)を含む値であるものとする。
【0089】
〔繰り返し構造であってもよいこと〕
物質活性化部材10は、金属層11と、放射線発生層12とが繰り返された構造であってもよい。すなわち、物質活性化部材10は、金属層11、放射線発生層12、金属層11、放射線発生層12、金属層11、放射線発生層12、・・・のように、金属層11と、放射線発生層12とが複数回繰り返された構造であってもよい。
【0090】
<輸送機関用帯電電荷低減部材 その1>
以下、輸送機関用帯電電荷低減部材としての第1の使用例を説明する。輸送機関用帯電電荷低減部材1は、先に説明した物質活性化部材10を備える。
【0091】
帯電電荷低減部材1は、可撓性であることが好ましい。可撓性であると、帯電電荷低減部材1を装着する箇所の表面が曲面であっても、帯電電荷低減部材を装着する箇所の表面に密着するように帯電電荷低減部材を取り付けることができる。
【0092】
本実施形態の輸送機関用帯電電荷低減部材1は、設置面に対して絶縁状態に保持されている本体(輸送機関本体)が、移動することを含む外部要因による静電気で正に帯電する輸送機関に対して好適に用いられる。
【0093】
本実施形態において、輸送機関とは、車両(自動車、自動二輪、鉄道車両等、全ての車両を包含する)、航空機、船舶等、人荷を輸送する全ての手段を含む包括概念をいう。以下、一例として、輸送機関が自動車である場合を例にして説明するが、これに限定されるものではない。
【0094】
輸送機関用帯電電荷低減部材1を、本体を構成する部品のうちの、空気流が本体の表面に沿った流れから表面から離れた流れに変化し始める特定部位に取り付ける。取り付けの際、金属層11が本体の表面に接するように取り付けてもよいし、放射線発生層12が本体の表面に接するように取り付けてもよい。
【0095】
放射線発生層12は、放射性物質を含有する天然鉱石を含み、放射線を発生する。この放射線は、金属層11を構成する酸化還元電位が0V以下の金属等をイオン化させる。そして、このイオン化によって生じる負の電荷が、輸送機関の特定部位に帯電した正の電荷を低減する。当該負の電荷は、金属層11を構成する金属等をイオン化させることによって生じる負の電荷であり、負の空気イオンではない。それゆえ、本実施形態における負の電荷による正の電荷の低減は、「正の電位を、正の電位に応じて負の空気イオンを生じさせる自己放電により中和除電して低下させる」こととは異なる。
【0096】
また、上述したとおり、放射線発生層12は、上記天然鉱石と、樹脂との混合物である樹脂組成物であることが好ましい。そして、樹脂は、非導電性であるため、金属層11を構成する金属等をイオン化させることによって生じる負の電荷を放電することはない。そのことからも、本実施形態における負の電荷による正の電荷の低減が、「正の電位を、正の電位に応じて負の空気イオンを生じさせる自己放電により中和除電して低下させる」こととは異なることが裏付けられる。
【0097】
本実施形態において、特定部位とは、走行時に本体の周囲に流れる正に帯電した空気流が、帯電した本体の表面に沿った流れから、表面から離れた流れに変化し始める剥離形状の箇所のうちの、空気流の剥離を抑制することにより輸送機関の操作安定性が向上する少なくともいずれか一つの部位をいう。
【0098】
これにより、正に帯電した本体の表面と、正に帯電している空気流との間に生じる斥力(反発力)を低下させることができる。そのため、本体の表面近傍から正に帯電した空気流が剥離することを抑制することができる。その結果、本体の表面に作用する空圧が想定を超えて変化したり、それに伴って本体の空力特性が悪化したりすることを抑制することができるので、操縦安定性等の走行性能が低下することを抑制することができる。
【0099】
例えば、本体の幅方向での中央部分の部位の正の電位を低下させることにより、本体のピッチング方向での空力特性が変化もしくは低下することを抑制することができる。そのため、輸送機関と設置面との接地荷重が変化することを抑制することができるので、加速性能や操縦安定性が低下することを抑制することができる。
【0100】
また、例えば、本体の幅方向の中央部分について左右対称となる部位のうちのいずれか一対の部位の正の電位を低下させることにより、本体のローリング方向あるいはヨー方向での空力特性が変化もしくは低下することを抑制することができる。そのため、操縦安定性等の走行性能が低下することを抑制することができる。
【0101】
また、例えば、輸送機関の移動時に本体の周囲を流れる空気流の流れ方向に沿って、一定間隔を空けた複数の部位の正の電位を低下させることにより、操縦安定性等の走行性能が低下することをより一層抑制することができる。
【0102】
なお、「空気流が剥離する」とは、本体の表面に沿った空気の流れが、本体の表面から離れた空気の流れに変化することであり、本体を前方から見た場合に、本体の外面が本体の内側に屈曲する箇所で空気流の剥離が主に生じる。より具体的には、本体の左右両側では、車幅が狭くなるように屈曲する箇所であり、またボンネットやルーフでは高さが低くなるように屈曲する箇所であり、さらにアンダーカバー等の本体下面に露出している部分では、車高が輸送機関後方に向けて次第に低くなっている箇所から水平に変化するように屈曲する箇所、あるいは輸送機関後方に向けて水平であった箇所から車高が次第に高くなるように屈曲する箇所等である。さらに、本体の外部に部分的に突出している箇所や段差のある箇所等が、空気流の剥離が生じる特定部位に相当する。
【0103】
輸送機関の外装部品等は、輸送機関周りの空気流や、タイヤの外周面等が、繰り返し路面等の設置面に接触しかつ離隔する等の内的要因や、外部から電荷を受ける外的要因等により正の電荷を帯び易い部位である。例えば、輸送機関前側のバンパカバー、ドアミラー、ヘッドランプ、ドアノブ、テールランプ、アンテナフィン、樹脂製サイドドア、樹脂製バックドア等である。これらの外装部品は、静電気によって正に帯電し易く、その結果正の電位が高くなる樹脂部品である。これらの樹脂外装部品の上記特定部位に、本実施形態の輸送機関用帯電電荷低減部材1を設けることが効果的である。
【0104】
また、輸送機関用帯電電荷低減部材1は、外装部品の輸送機関内側だけでなく、輸送機関外側に設けられてもよい。
【0105】
例として、輸送機関が自動車である場合、車体のコーティングの外表面、エンジンフードの前端部、エンジンフードの後端部、フロントガラスの下端部、フロントガラスの上端部、天井の前端部、天井の前部、天井の後部、ルーフスポイラー、エンジンフードの下面、リアスポイラー、リアバックドアガラス、フロントバンパーの下端部の前縁、車体の床下に配置されたリア燃料タンク、車体の床下のリアトランクの下部、リアバンパーの下端部、フロントバンパー、フロントフェンダーから選択される1以上が挙げられる。
【0106】
また、輸送機関用帯電電荷低減部材1は、輸送機関の外表面とは反対側を流れる空気流に曝された裏面に設けられていることが好ましい。これにより、輸送機関用帯電電荷低減部材を取り付けることによって見栄えを損なうことを解消できる。
【0107】
<輸送機関用帯電電荷低減部材 その2>
以下、図2を参照しながら輸送機関用帯電電荷低減部材としての第2の使用例を説明する。輸送機関用帯電電荷低減部材2は、本体部20と、この本体部20から延出する導線部30とを備える。
【0108】
〔本体部20〕
本体部20は、先に説明した物質活性化部材10を含んで構成される。
【0109】
必須ではないが、放射線発生層12の表面(一方の面)には、第1磁石21Aが設けられ、金属層11の裏面(他方の面)には、第2磁石21Bが設けられることが好ましい。これらの部材(金属層11、放射線発生層12、第1磁石21A、第2磁石21B)は、いずれも収容体22に収容されている。
【0110】
[第1磁石21A及び第2磁石21B]
第1磁石21Aと第2磁石21Bとは、同じ極どうしで向かい合っている。第1磁石21Aと第2磁石21Bとは、同じ極どうしで向かい合っていることから、磁力反発作用が生じる。この磁力反発作用により、本体部20の内部にある静電気の除去能力をより高めることができる。
【0111】
第1磁石21A及び第2磁石21Bの種類は特に限定されないが、メンテナンスフリーであることから、第1磁石21A及び第2磁石21Bは、いずれも永久磁石であることが好ましい。
【0112】
なお、図2では、第1磁石21Aと第2磁石21BとがN極どうしで向かい合っているが、これに限られるものではない。第1磁石21Aと第2磁石21Bとは、同じ極どうしで向かい合っていれば足りるが、磁力線がN極からS極に向かって流れていることから、より効率よく磁力を利用するためには、N極どうしで向かい合っているほうがより好ましい。
【0113】
[収容体22]
金属層11、放射線発生層12、第1磁石21A、第2磁石21Bは、いずれも収容体22に収容されている。収容体の材質は、特に限定されない。
【0114】
〔導線部30〕
導線部30は、放射線発生層12から延出する。そして、導線部30の先端30Aは、車両内に設けられたバッテリーのマイナス端子等、車両内の電気的に接続可能な所定の接続部の少なくとも1以上と電気的に接続可能に構成される。
【0115】
上記所定の接続部は、バッテリーのプラス端子、及び当該プラス端子と電気的に接続されているプラス接続部以外であれば、特に限定されない。例えば、導線部30の先端30Aは、車両内に設けられたバッテリーのマイナス端子、車両内のエンジンの吸気管の外面、車両内のエンジンクーラント流路管の外面、車両内のエンジンオイル流路管の外面等に接続可能である。
【0116】
また、導線部30の先端30Aは、シャシーやフレーム、排気装置、動力伝達装置、点火装置、吸気管、発電装置、エアコン、冷却装置、懸架装置、緩衝装置、エンジン、変速装置、燃料タンク、燃料噴射装置、油圧装置、過給器、操舵装置、外板等のうち、プラス端子と直接接続されていない金属部分等にも接続可能である。
【0117】
他方、導線部30の先端30Aを接続できない箇所として、バッテリーのプラス端子が挙げられる。また、導線部30の先端30Aは、プラス端子と直接接続されている金属部分にも接続できない。
【0118】
本実施形態において、ユーザは、車両用帯電電荷低減装置1の導線部30の先端30Aを、車両内に設けられたバッテリーのマイナス端子と、バッテリーのプラス端子等を除いた車両内の電気的に接続可能な接続部との少なくとも1以上と電気的に接続する。
【0119】
放射線発生層11は、放射性物質を含有する天然鉱石を含み、放射線を発生する。この放射線は、金属層11を構成する酸化還元電位が0V以下の金属等をイオン化させる。そして、このイオン化によって生じる負の電荷が、放射線発生層12、導線部30を経由して車両の各部に送られる。自動二輪車(オートバイ)、自動四輪車(自動車)等の車両は、バッテリーと車体とで一つの電気回路を構成しているため、本実施形態の車両用帯電電荷低減装置1と車両とを少なくとも一箇所で電気的に接続すれば、負の電荷を、車両の各部の様々な箇所に送ることができる。そして、負の電荷が送られることで、車両に帯電した正の電荷が低減される。
【0120】
これにより、エンジンがガソリンエンジンや、ディーゼルエンジンである場合、正の電荷の帯電によって低下していたエンジン性能を回復できる。ドライバーは、パワー感やトルク感の向上、エンジン振動の低減、燃費の向上等を体感できる。
【0121】
また、車両が電気自動車、電動アシスト自転車、電動車いす等、バッテリーを駆動源にする場合、フリクション低減によって電力使用量を抑えられる。加えて、アクセルOFFによる減速が緩和されるため、回生ブレーキの回生量を増やすことが可能になる。これによって、車両の航続距離を増やすことが可能になる。加えて、車両がハイブリッド車である場合は、電気エネルギー発生のためのエンジン稼働時間が減少する。
【0122】
また、車両の駆動源がガソリンエンジン、ディーゼルエンジン、バッテリーのいずれであっても、車両の乗り心地を改善できる。ドライバーは、タイヤ等の振動の軽減、路面追従性、運転安定性の向上を体感できる。
【0123】
そして、車両用帯電電荷低減装置2は、駆動源の種類に関わらず、車両に帯電した電荷を低減できる。また、車両に搭載されたバッテリー等、外部のエネルギーに頼ることがない点で、よりリーズナブルであるだけでなく、従来の装置では放射線発生層、第1金属層、及び第2金属層の3層構造であったのを放射線発生層12と金属層11との2層構造にしているため、装置のさらなる小型化、あるいは、同じ大きさであれば、2層構造の繰り返し単位を増やすことによる高密度化を実現できる。また、放射線発生層、第1金属層、及び第2金属層の3層構造から2層構造に減らすことができるだけでなく、3層構造であった場合に比べて帯電電荷の低減効果が高まるという特異的効果を奏する。
【0124】
〔変形例〕
ところで、本実施形態では、導線部30は、マイナス端子と上記接続部(バッテリーのプラス端子、及びプラス端子と電気的に接続されているプラス接続部以外の車両内の電気的に接続可能な接続部)とから選択される車両内の1箇所と電気的に接続可能である。既存の装置では、マイナス端子を含む複数個所で電気的に接続することを要していたが、本実施形態の車両用帯電電荷低減装置1は、接続箇所が1箇所で足りるので、初心者でも簡便に利用可能である。
【0125】
他方で、図3に示すように、導線部30を、車両内の複数箇所と電気的に接続可能にしてもよい。そうすることで、車両用帯電電荷低減装置1で発生した電子を、車両内の複数箇所に直接送りこむことができ、帯電電荷のより高い低減効果を期待できる。
【0126】
また、図4及び図5に示すように、金属層11と、放射線発生層12との組合せを、収容体22の内部に複数収容させてもよい。そうすることで、車両用帯電電荷低減装置1で発生する電子の量を増やすことができ、結果として、帯電電荷のより高い低減効果を期待できる。
【0127】
また、図2から図5において、各部の順序は、一方の面から、放射線発生層12、金属層11の順に配置されていたが、これに限るものではない。図6に示すように、放射線発生層12と金属層11との順序が逆で、一方の面から、金属層11、放射線発生層12の順に配置されていてもよい。
【0128】
本実施形態に記載の装置は、放射線発生層11に含まれる放射性物質と、金属層11を構成する金属又は合金との組み合わせでエネルギーを出し、放射線発生層12を構成する金属又は合金を活性化させ、電子を車両内に送りこむものであり、エネルギーに指向性があるわけではない。そのため、放射線発生層12と金属層11との順序は、特に限定されない。
【0129】
<他の使用例>
以下、本実施形態の物質活性化部材10の他の使用例について、必要に応じて図面を参照しながら説明する。これらの使用例は、いずれも、活性化の対象となる物質が内在する装置に、物質活性化部材10を金属層11、放射線発生層12の順で取り付け、物質活性化部材10の取付構造を形成したときの例である。
【0130】
[第1の使用例:自動車用エンジンの空気ダクトDへの使用]
図7は、物質活性化部材10を、自動車用エンジンの空気ダクトDに使用したときの模式図である。
【0131】
物質活性化部材10は、可撓性であるため、空気ダクトDの表面が曲面であっても、物質活性化部材10の金属層11をダクトDの表面に密着するように巻きつけることができる。これにより、ダクトDの表面には、金属層11と、放射線発生層12とがこの順に積層される。
【0132】
物質活性化部材10を巻きつけた後、物質活性化部材10を固定するため、周囲をホースバンドBで留めればよい。
【0133】
図7は、物質活性化部材10を巻きつけた後に周囲をホースバンドBで留めるものとしているが、これに限るものではない。例えば、物質活性化部材10がホースバンドBに内包されていてもよい。この場合、ホースバンドBを、物質活性化部材10の金属層11がダクトDの表面に密着するように巻きつけるだけで、空気ダクトDに物質活性化部材10を取り付けることができる。
【0134】
放射線発生層12は、放射性物質を含有する天然鉱石を含み、0.02μSv/h以上0.2Sv/h以下の放射線を発生する。この放射線は、ダクトDの内部を流れる吸入空気に作用してこれをイオン化させる。そして、このイオン化の際に生じた電荷が金属層11を構成する金属に帯電し、電界及び磁界を生じさせるとともに、その電界及び磁界が、上記した流入空気に作用し、吸入空気の活性化を大幅に促進させると考えられる。
【0135】
そして、このように活性化された吸入空気が、自動車エンジンのシリンダ(図示せず)の内部に供給されると、シリンダ内に噴射された燃料と活性化された吸入空気とが充分に混合されるので、シリンダ内における燃料の燃焼効率が大幅に高まり、燃料消費率の低減及び排気ガスの清浄化を促進することができる。
【0136】
すなわち、本実施形態の物質活性化部材10を自動車用エンジンのダクトDの外側に、金属層11が内側、放射線発生層12が外側になるように巻き付けることで、自動車用エンジンのダクトDの外側に、鉄、チタン、マグネシウム、リチウム、及びそれらの金属の合金による金属層11と、放射性物質層12とを同時に形成することができる。そして、その取り付けは、ダクトDに巻き付けるだけであるため、ダクトDの形状に左右されることなく、その取付作業を極めて容易に行うことができる。物質活性化部材10は、ダクトDの外側に取り付けられるので、エンジンが空気を吸入する際の抵抗となることがない。
【0137】
[第2の使用例:自動車の排気管への使用]
物質活性化部材10を、自動車の排気管に使用することもできる。物質活性化部材10を、自動車の排気管の外側に、金属層11が内側、放射線発生層12が外側になるように巻き付ける。
【0138】
放射線発生層12は、放射性物質を含有する天然鉱石を含み、0.02μSv/h以上0.2Sv/h以下の放射線を発生する。この放射線は、排気ガスにに含まれる一酸化炭素や二酸化炭素、窒素酸化物等の化合物に作用してこれをイオン化させる。そして、このイオン化の際に生じた電荷が金属層11を構成する金属に帯電し、電界及び磁界を生じさせるとともに、その電界及び磁界が、上記した一酸化炭素や二酸化炭素、窒素酸化物等の化合物に作用し、これらの化合物の活性化を大幅に促進させると考えられる。
【0139】
そして、これらの化合物は、放射線によってイオン化され大幅に活性化された状態で触媒装置に送られ、きわめて効率よく清浄化される。
【0140】
また、第2の使用例は、自動車の排気管EPの外側に物質活性化部材10を巻きつけるものであるから、放射性発生層12が高温の排気ガスの影響を受けて損傷することは、ない。
【0141】
なお、第2の使用例では、物質活性化部材10を自動車の排気管に使用したが、自動車の吸気管にも使用できることは、言うまでもない。
【0142】
[第3の使用例:自動車のシリンダブロックへの使用]
物質活性化部材10を、自動車のシリンダブロックに使用することもできる。物質活性化部材10を、自動車のシリンダブロックの外側に、金属層11が内側、放射線発生層12が外側になるように巻き付ける。
【0143】
放射線発生層12は、放射性物質を含有する天然鉱石を含み、0.02μSv/h以上0.2Sv/h以下の放射線を発生する。この放射線は、シリンダブロックの内部を流れる自動車エンジンの吸入空気又は排気ガスに作用してこれをイオン化させる。そして、このイオン化の際に生じた電荷が金属層11を構成する金属に帯電し、電界及び磁界を生じさせるとともに、その電界及び磁界が、上記した吸入空気又は排気ガスに作用し、吸入空気又は排気ガスの活性化を大幅に促進させると考えられる。
【0144】
そして、これらの化合物は、放射線によってイオン化され大幅に活性化された状態で触媒装置に送られ、きわめて効率よく清浄化される。
【0145】
[第4の使用例:潤滑装置への使用]
第1~第3の使用例は、いずれも、エンジンの燃焼用空気及び燃焼排気ガスを活性化することを目的にしていた。しかしながら、本実施形態の物質活性化部材10は、エンジンの燃焼用空気及び燃焼排気ガスに限らず、様々な物質の活性化に用いることができる。そこで、第4実施形態以降では、種々の例について説明する。
【0146】
物質活性化部材10を、機械の摺動部分を潤滑油で潤滑する潤滑装置に使用することもできる。
【0147】
機械の金属同士が摺動する部分の摩擦を少なくするために、潤滑油が用いられている。このような潤滑油は、熱や、摩耗した金属粉等の影響を受け、その潤滑能力や熱交換能力が次第に低下する。また、オイルフィルタに金属磨耗粉が滞積すると、潤滑油の通過能力が低下し、潤滑性能が更に低下する。
【0148】
そこで、物質活性化部材10を、機械の摺動部分を潤滑する潤滑油を収納する容器、あるいは潤滑油が流れる管の外側に、金属層11が内側、放射線発生層12が外側になるように巻き付ける。
【0149】
放射線発生層12は、放射性物質を含有する天然鉱石を含み、0.02μSv/h以上0.2Sv/h以下の放射線を発生する。この放射線は、潤滑装置の内部を流れる潤滑油に作用し、潤滑油をイオン化させる。そして、モリブデン等の金属のイオン化の際に生じた電荷が金属層11を構成する金属に帯電し、電界及び磁界を生じさせるとともに、その電界及び磁界が、上記した潤滑油に作用し、潤滑油の活性化を大幅に促進させると考えられる。
【0150】
また、イオン化した潤滑油は、オイルフィルタ上に滞積した金属磨耗粉等の間を滑らかに流れることができるので、オイルフィルタの性能を維持しつつ潤滑性能を向上できるばかりでなく、オイルポンプヘの負担を軽減して動力損失を低減することができる。
【0151】
[第5の使用例:冷却装置への使用]
物質活性化部材10を、冷却液を用いて機械の発熱部分を冷却する冷却装置に使用することもできる。
【0152】
例えば、エンジン等においては、燃焼によって生じた熱をシリンダブロックから効率的に取り除くために、冷却液を加圧して循環させている。しかしながら、冷却液を加圧して循環させるとポンプに負担がかかるばかりでなく、パイプ等の接続部から漏れが発生したりホースの破損が生じたりする。
【0153】
そこで、物質活性化部材10を、機械の発熱部分を冷却する冷却液を収納する容器、あるいはその内部を冷却液が流れる管の外側に、金属層11が内側、放射線発生層12が外側になるように巻き付ける。
【0154】
放射線発生層12は、放射性物質を含有する天然鉱石を含み、0.02μSv/h以上0.2Sv/h以下の放射線を発生する。この放射線は、冷却装置の内部を流れる冷却液に作用し、冷却液をイオン化させる。そのイオン化の際に生じた電荷が金属層11を構成する金属に帯電し、電界及び磁界を生じさせるとともに、その電界及び磁界が、上記した冷却液に作用し、冷却液の活性化を大幅に促進させると考えられる。
【0155】
その結果、冷却液循環系統の内壁面に被膜を形成することができ、熱伝達率を向上させて冷却効率を向上できるばかりでなく、冷却液が層流化して滑らかに流れるようになって冷却液の循環抵抗が減少する。これにより、冷却液の循環圧力を低下させることができるから、ポンプの負担を減少させて動力損失を低減できるばかりでなく、パイプ等の接続部からの漏れやホースの破損等をも防止することができる。さらに、イオンした冷却液の層は冷却液循環系統の腐食を防止するとともに、ゴムホース等の劣化を防止する効果をも有する。
【0156】
[第6の使用例:燃料供給装置への使用]
物質活性化部材10を、エンジン等の燃焼機関に液体または気体燃料を供給する燃料供給装置に使用することもできる。
【0157】
一般的な燃焼においては、気化させた液体燃料又は気体燃料と、酸素とを燃焼室内で結合させて熱エネルギーを取り出している。液体燃料又は気体燃料から効率良くそのエネルギーを取り出すためには、燃料と空気を充分に混合させなければならない。
【0158】
そこで、物質活性化部材10を、燃焼機関に供給する液体燃料又は気体燃料を収容する容器、あるいはこれらの燃料が内部を流れる管路の外側に、金属層11が内側、放射線発生層12が外側になるように巻き付ける。
【0159】
放射線発生層12は、放射性物質を含有する天然鉱石を含み、0.02μSv/h以上0.2Sv/h以下の放射線を発生する。この放射線は、燃料供給装置の内部を流れる、ガソリンや軽油等の液体燃料や、プロパンガス等の気体燃料に作用し、これらの燃料をイオン化させる。そのイオン化の際に生じた電荷が金属層11を構成する金属に帯電し、電界及び磁界を生じさせるとともに、その電界及び磁界が、上記した燃料に作用し、燃料の活性化を大幅に促進させると考えられる。
【0160】
その結果、燃料噴射弁から噴射して燃料を霧化させる際の燃料の粒径を、通常の場合に比較して遥かに微細化することができる。これにより、燃焼室内において燃料と空気とを充分に混合させ、燃料が持つ熱エネルギーを十分に取り出すことができる。
【0161】
[第7の使用例:タービンを構成する動翼への使用]
物質活性化部材10を、タービンを構成する動翼に使用することもできる。
【0162】
水力発電においては水、火力発電においては水蒸気、自動車の自動変速機においてはオイル等の作動流体を、それぞれタービン翼に作用させることによって回転駆動力を得ている。しかしながら、流体とタービン翼とが接触する際、タービン翼に生じる抵抗は、流体の速度が増すにつれて大きくなるため、流体の速度を大きくしすぎると、流体からタービン翼へのエネルギー伝達能力を低下させることに繋がる。
【0163】
そこで、物質活性化部材10を、タービン翼の外側、あるいは内部にタービン翼を収容するケーシングの外側に、金属層11が内側、放射線発生層12が外側になるように巻き付ける。
【0164】
放射線発生層12は、放射性物質を含有する天然鉱石を含み、0.02μSv/h以上0.2Sv/h以下の放射線を発生する。この放射線は、タービン翼に接触する流体に作用し、その流体をイオン化させる。そのイオン化の際に生じた電荷が金属層11を構成する金属に帯電し、電界及び磁界を生じさせるとともに、その電界及び磁界が、上記した流体に作用し、流体の活性化を大幅に促進させると考えられる。
【0165】
その結果、タービンの動翼の表面に層流を形成し、流体がタービン翼の間を滑らかに流れるようになるため、タービン翼に生じる抵抗を減少させ、高い効率で回転駆動力を得ることができるようになる。
【0166】
[第8の使用例:エアコン等の冷却装置への使用]
物質活性化部材10を、エアコン等の冷却装置に使用することもできる。
【0167】
エアコンや冷蔵庫の冷却装置は、エバポレータ内で冷媒を気化させて居室内や冷蔵庫内の空気から熱を奪い取った後、コンデンサで冷媒を圧縮しラジエターを介して外部に放熱する。したがって、冷蔵庫やエアコンの冷却性能を向上させるためには、エバポレータにおける冷媒の熱交換効率を向上させる必要がある。
【0168】
そこで、物質活性化部材10を、冷却装置に用いる冷媒の通路であるエバポレータ、又はその内部を冷媒が流れる管路に、金属層11が内側、放射線発生層12が外側になるように巻き付ける。
【0169】
放射線発生層12は、放射性物質を含有する天然鉱石を含み、0.02μSv/h以上0.2Sv/h以下の放射線を発生する。この放射線は、冷却装置の内部を流れる冷媒に作用し、その冷媒をイオン化させる。そのイオン化の際に生じた電荷が金属層11を構成する金属に帯電し、電界及び磁界を生じさせるとともに、その電界及び磁界が、上記した冷媒に作用し、流体の活性化を大幅に促進させると考えられる。
【0170】
その結果、エバポレータや管路の金属内壁面に、イオン化した冷媒の膜が密着するので、エバポレータや管路の金属内壁面と冷媒との間の熱交換効率を大幅に向上させることができる。
【0171】
[第9の使用例:洗浄水収納容器への使用]
物質活性化部材10を、洗浄水収納容器に使用することもできる。
【0172】
一般家庭等では、食器等を洗浄する洗剤の溶媒として水道水を利用する。洗浄力を高めるためには温水を利用せざるを得ず、光熱費がかかる難点がある。
【0173】
そこで、物質活性化部材10を、洗浄水収納容器、又は若しくはその内部を洗浄水が流れる管路に、金属層11が内側、放射線発生層12が外側になるように巻き付ける。
【0174】
放射線発生層12は、放射性物質を含有する天然鉱石を含み、0.02μSv/h以上0.2Sv/h以下の放射線を発生する。この放射線は、洗浄水に作用し、その洗浄水をイオン化させる。そのイオン化の際に生じた電荷が金属層11を構成する金属に帯電し、電界及び磁界を生じさせるとともに、その電界及び磁界が、上記した洗浄水に作用し、洗浄水の活性化を大幅に促進させると考えられる。
【0175】
イオン化させた水道水を溶媒にすると、常温であったとしても、洗剤の界面活性剤が効率的に活性作用を呈する。その結果、食器や洗濯物等を洗浄する能力を大幅に向上させることができる。また、イオン化した水道水は、水道管内部の腐食を防止する効果も有する。
【0176】
[第10の使用例:植物の生育用途への使用]
物質活性化部材10を、植物の生育用途に使用することもできる。
【0177】
植物の生育には、太陽光や大気中の二酸化炭素の他に栄養分を含んだ水が必要である。そして、植物の生育を促進させるためには、植物の根から吸収される水の量を増加させることが好ましい。
【0178】
しかしながら、従来の技術では、水の温度を高めることによってその吸収量をある程度増加させることができる程度にとどまっている。
【0179】
別の観点で植物の根から吸収される水の量を増やすため、物質活性化部材10を、植物に供給する栄養分を含んだ水の供給水収納容器、又はその内部を供給水が流れる管路に、金属層11が内側、放射線発生層12が外側になるように巻き付ける。
【0180】
放射線発生層12は、放射性物質を含有する天然鉱石を含み、0.02μSv/h以上0.2Sv/h以下の放射線を発生する。この放射線は、供給水及び供給水に含まれる栄養分に作用し、これら供給水等をイオン化させる。そのイオン化の際に生じた電荷が金属層11を構成する金属に帯電し、電界及び磁界を生じさせるとともに、その電界及び磁界が、上記した供給水等に作用し、供給水等の活性化を大幅に促進させると考えられる。
【0181】
その結果、植物に供給する水とそれに含まれる栄養分とをイオン化させることができる。そして、このようにイオン化された水及び栄養分は、植物の毛根によって容易に吸収されるので、植物の生育を促進させることができる。また、植物が必要とする窒素化合物は、細菌と酵素が腐葉土を分解する際に生成されるが、高度に活性化された水を供給すると、腐葉土の分解が促進されて窒素化合物の生成が増加する。これにより、このような窒素化合物を十分に溶存したイオン化水によって植物の生育を大幅に促進することができる。
【0182】
[第11の使用例:動物の生育用途への使用]
物質活性化部材10を、動物の生育用途に使用することもできる。
【0183】
動物の生育には、その体の大部分を構成するための水が必要である。動物園等で飼育される動物は、飲料水を水道水から得ている。しかしながら、飲料水を供給水タンク内に収容している間に、飲料水の酸化、劣化が進行する。
【0184】
そこで、物質活性化部材10を、供給水タンク、又はその内部を供給水が流れる管路に、金属層11が内側、放射線発生層12が外側になるように巻き付ける。
【0185】
放射線発生層12は、放射性物質を含有する天然鉱石を含み、0.02μSv/h以上0.2Sv/h以下の放射線を発生する。この放射線は、供給水に作用し、その供給水をイオン化させる。そのイオン化の際に生じた電荷が金属層11を構成する金属に帯電し、電界及び磁界を生じさせるとともに、その電界及び磁界が、上記した供給水に作用し、供給水等の活性化を大幅に促進させると考えられる。
【0186】
そして、イオン化された水は、動物の体内に容易に吸収される。また、酸化還元電位を抑えるために抗酸化作用があり、さらに免疫機能を高め、成長促進に効果がある。
【0187】
[第12の使用例:魚介類の生育用途への使用]
物質活性化部材10を、魚介類の生育用途に使用することもできる。
【0188】
魚介類の生活環境は、水中であるため、水の品質は、極めて重要である。魚介類を飼育する際、生息している水と同じ水槽内に老廃物を排出するため、常に浄化しなければ、水質が悪化する。
【0189】
そこで、物質活性化部材10を、魚介類に供給する水の供給水収納容器、循環浄化装置、又はその内部を供給水が流れる管路に、金属層11が内側、放射線発生層12が外側になるように巻き付ける。
【0190】
放射線発生層12は、放射性物質を含有する天然鉱石を含み、0.02μSv/h以上0.2Sv/h以下の放射線を発生する。この放射線は、供給水に作用し、その供給水をイオン化させる。そのイオン化の際に生じた電荷が金属層11を構成する金属に帯電し、電界及び磁界を生じさせるとともに、その電界及び磁界が、上記した供給水に作用し、供給水等の活性化を大幅に促進させると考えられる。
【0191】
そして、イオン化された水は、魚介類の体内に容易に吸収される。また、酸化還元電位を抑えるために抗酸化作用があり、さらに免疫機能を高め、成長促進に効果がある。
【0192】
[第13の使用例:浄化槽への使用]
物質活性化部材10を、汚水を処理する浄化槽に使用することもできる。
【0193】
一般家庭から排出されるし尿を処理する浄化槽においては、好気性細菌が空気中の酸素を取り入れつつ有機物質を酸化し分解している。したがって、このような好気性細菌を増殖させることにより、し尿を効率的に処理することが可能となる。
【0194】
そこで、物質活性化部材10を、エアレーション用空気供給用ポンプ、又はその内部をエアレーション用空気が流れる管路に、金属層11が内側、放射線発生層12が外側になるように巻き付ける。
【0195】
放射線発生層12は、放射性物質を含有する天然鉱石を含み、0.02μSv/h以上0.2Sv/h以下の放射線を発生する。この放射線は、ポンプを通過する空気、あるいは、管路を流れる空気に作用し、その空気をイオン化させる。そのイオン化の際に生じた電荷が金属層11を構成する金属に帯電し、電界及び磁界を生じさせるとともに、その電界及び磁界が、上記した空気に作用し、空気の活性化を大幅に促進させると考えられる。
【0196】
その結果、イオン化された空気を浄化槽に供給することができるので、し尿を分解する好気性細菌を活性化させ、より高い効率で汚水を処理することができる。
【0197】
[第14の使用例:スプレー塗装装置への使用]
物質活性化部材10を、スプレー塗装装置に使用することもできる。
【0198】
自動車のボディを塗装する際には、より均質で高品質な塗装面を形成するために、霧状に分散させる塗料の粒径をより小さくする必要がある。しかしながら、従来のスプレー塗装装置は、空気をそのまま用いて塗料を霧状に分散させる構造となっているため、分散させた塗料の粒径をさらに小さくすることが難しい。
【0199】
そこで、物質活性化部材10を、塗料を噴射して霧化させるために用いる圧縮空気供給ポンプ、又はその内部を圧縮空気が流れる管路に、金属層11が内側、放射線発生層12が外側になるように巻き付ける。
【0200】
イオン化させた圧縮空気を用いて塗料を噴射し霧化させることで、空気と塗料との混合が促進され、霧化させる塗料の粒径をより一層小さなものとすることができる。したがって、より均質で高品質な塗装面を形成することができる。
【0201】
〔他の使用例〕
上記の使用例は、いずれも、活性化の対象となる物質が内在する装置に、物質活性化部材10を金属層11、放射線発生層12の順で取り付け、物質活性化部材10の取付構造を形成したときの例である。しかしながら、上記の使用例に限定されるものでない。具体的には、上記の使用例とは反対に、活性化の対象となる物質が内在する装置に、物質活性化部材10を放射線発生層12、金属層11の順で取り付け、物質活性化部材10の取付構造を形成してもよい。
【0202】
この場合、放射線発生層12において発生した放射線の一部は、装置に内在する、活性化の対象となる物質に直接伝わる。また、他の一部は、金属層11に向けられ、中でも、一部の放射線は、金属層11に対して特定の入射角及び反射角で反射する。特定の入射角及び反射角で反射すると、放射線は、増幅され、増幅された放射線は、放射線透過性樹脂を含む放射線発生層12を通過して、装置に内在する、活性化の対象となる物質に伝わる。当該物質は、放射線発生層12から直接伝わった放射線、及び金属層11での反射を通じて増幅された放射線のいずれも吸収し、当該物質の分子を励起状態にして電子の引き抜きや付加によって遊離基化して、当該物質を活性化するものと考えられる。
【実施例0203】
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるもので
はない。
【0204】
<実施例>
図2に記載の車両用帯電電荷低減装置2の導線部30の先端30Aを、車両内に設けられたバッテリーのマイナス端子と電気的に接続した。そして、クルーズコントロール機能を使用して時速を80km/hに設定し、比較的一定速度で走れる深夜の自動車専用道路(横浜横須賀道路、日野インター・佐原インター間、往復約40km)を走行した。走行テストの車両として、マツダ社のCX-8(新車登録:2022年3月、エンジンタイプ:水冷直列4気筒直噴DOHC16バルブ直噴ディーゼルターボ、総排気量:2.188L、最高出力(EEC):147kW(200ps)/4,500rpm、最大トルク(EEC):450N・m(45.9kgm)/2,000rpm)を使用した。燃料は、軽油である。
【0205】
<比較例1>
図2に記載の車両用帯電電荷低減装置1を用いる代わりに、従来構成の3層構造の車両用帯電電荷低減装置200(特許文献2:特許6362238号公報の実施例1-1で用いた装置と同じ)を使用した。図8に記載の車両用帯電電荷低減装置200の導線部30の先端30Aを、車両内に設けられたバッテリーのマイナス端子と電気的に接続した。それ以外は、実施例1-1と同様の手法にて、走行試験を行った。なお、実施例の金属層11を構成する金属は、比較例1の第1金属層11を構成する金属と同じであり、実施例の放射線発生層12に含まれる導電性金属粉末を構成する導電性金属は、比較例1の第2金属層13を構成する導電性金属と同じであった。
【0206】
<比較例2>
車両用帯電電荷低減装置を用いなかったこと以外は、実施例1-1と同様の手法にて、走行試験を行った。
【0207】
<燃費の評価>
この走行で消費した燃料の量から、上記走行における燃費を算出した。結果、実施例1での燃費は、26.13km/Lであるのに対し、比較例1の燃費は、24.43km/L、比較例2の燃費は、20.75km/Lであることが確認された。
【0208】
結果、図2に記載の車両用帯電電荷低減装置2を用いた場合(実施例)、車両用帯電電荷低減装置を全く用いない場合(比較例2)に比べ、25.9%の燃費改善効果がみられることが確認された。そして、驚くべきことに、当社がこれまで生産、販売してきた車両用帯電電荷低減装置を用いた場合(比較例1)に比べても、7.0%の燃費改善効果がみられることが確認された。
【0209】
車両用帯電電荷低減装置2は、駆動源の種類に関わらず、車両に帯電した電荷を低減できる。また、車両に搭載されたバッテリー等、外部のエネルギーに頼ることがない点で、よりリーズナブルであるだけでなく、従来の装置では放射線発生層、第1金属層、及び第2金属層の3層構造であったのを放射線発生層12と金属層11との2層構造にしているため、装置のさらなる小型化、あるいは、同じ大きさであれば、2層構造の繰り返し単位を増やすことによる高密度化を実現できる。また、放射線発生層、第1金属層、及び第2金属層の3層構造から2層構造に減らすことができるだけでなく、3層構造であった場合に比べて帯電電荷の低減効果が高まるという特異的効果を奏する。
【符号の説明】
【0210】
1,2 車両用帯電電荷低減装置
10 物質活性化部材
11 金属層
12 放射線発生層
20 本体部
21A 第1磁石
21B 第2磁石
22 収容体
30 導線部

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8