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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024030796
(43)【公開日】2024-03-07
(54)【発明の名称】硬貨取扱装置
(51)【国際特許分類】
   G07D 11/14 20190101AFI20240229BHJP
【FI】
G07D11/14
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022133930
(22)【出願日】2022-08-25
(71)【出願人】
【識別番号】000000295
【氏名又は名称】沖電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100140958
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 学
(74)【代理人】
【識別番号】100137888
【弁理士】
【氏名又は名称】大山 夏子
(74)【代理人】
【識別番号】100190942
【弁理士】
【氏名又は名称】風間 竜司
(72)【発明者】
【氏名】菊池 励
(72)【発明者】
【氏名】山岸 悟
(72)【発明者】
【氏名】太田 弘介
【テーマコード(参考)】
3E141
【Fターム(参考)】
3E141AA08
3E141BA13
3E141FA03
3E141GA01
3E141GB05
3E141HA07
3E141JA02
3E141JA14
3E141LA01
3E141LA02
(57)【要約】
【課題】硬貨が詰まる可能性を減らす。
【解決手段】硬貨が投入される投入部と、前記投入部に投入された前記硬貨が挟まる溝部を有する螺旋状に巻かれた構造体と、前記構造体の内側にあり、前記構造体の中心軸と異なる中心軸を有するピン部と、前記構造体および前記ピン部を回転させ、前記溝部に挟まった前記硬貨を上昇させる駆動部と、前記駆動部の駆動力により所定の位置以上に上昇された前記硬貨を受け取るフラッパ部と、を有し、前記ピン部の先端と、前記フラッパ部の端面の間の垂直距離は、前記硬貨の厚さ1枚以上、且つ、前記硬貨の厚さ2枚未満であり、前記投入部に投入された硬貨が滑る斜面と、前記フラッパ部の端面と、の間に前記硬貨が通過可能な隙間を有さない、硬貨取扱装置。
【選択図】図7

【特許請求の範囲】
【請求項1】
硬貨が投入される投入部と、
前記投入部に投入された前記硬貨が挟まる溝部を有する螺旋状に巻かれた構造体と、
前記構造体の内側にあり、前記構造体の中心軸と異なる中心軸を有するピン部と、
前記構造体および前記ピン部を回転させ、前記溝部に挟まった前記硬貨を上昇させる駆動部と、
前記駆動部の駆動力により所定の位置以上に上昇された前記硬貨を受け取るフラッパ部と、
を有し、
前記ピン部の先端と、前記フラッパ部の端面の間の垂直距離は、前記硬貨の厚さ1枚以上、且つ、前記硬貨の厚さ2枚未満であり、
前記投入部に投入された硬貨が滑る斜面と、前記フラッパ部の端面と、の間に前記硬貨が通過可能な隙間を有さない、
硬貨取扱装置。
【請求項2】
前記硬貨は、厚さの異なる少なくとも2以上の硬貨を含み、
前記垂直距離は、前記厚さが最も大きい硬貨の厚さ1枚以上、且つ、前記厚さが最も小さい硬貨の厚さ2枚未満になる距離である、
請求項1に記載の硬貨取扱装置。
【請求項3】
前記ピン部の先端は、前記ピン部の中心軸に最も近い前記溝部の範囲に位置せず、且つ、前記所定の位置以上に上昇された前記硬貨と接触するように配置される、
請求項2に記載の硬貨取扱装置。
【請求項4】
前記投入部は、開閉機構を有し、
前記投入部が開状態または閉状態のいずれであっても、前記投入部に投入された硬貨が滑る斜面と、前記フラッパ部の端面と、の間に前記硬貨が通過可能な隙間を有さない、
請求項3に記載の硬貨取扱装置。
【請求項5】
前記投入部が有する開閉機構と、前記フラッパ部は、分離して構成される、
請求項4に記載の硬貨取扱装置。
【請求項6】
前記投入部に投入された硬貨が滑る斜面と、前記フラッパ部の端面と、は固定される、
請求項5に記載の硬貨取扱装置。
【請求項7】
前記斜面と、前記フラッパ部の端面との固定位置は、
前記硬貨が通過不可能な貫通孔を有する、
請求項6に記載の硬貨取扱装置。
【請求項8】
前記投入部の開閉に応じて、前記フラッパ部を移動させる連結部、
を更に有する、請求項4に記載の硬貨取扱装置。
【請求項9】
前記フラッパ部の端面の高さは、前記投入部の開閉に応じて可変である、
請求項8に記載の硬貨取扱装置。
【請求項10】
前記フラッパ部の高さは、前記投入部が閉状態である際に上昇され、前記投入部が開状態である際に下降される、
請求項9に記載の硬貨取扱装置。
【請求項11】
前記斜面は、
前記投入部が開状態である際に、前記隙間を埋めるパネル部が貼り付けられる、
請求項10に記載の硬貨取扱装置。
【請求項12】
前記硬貨の残留を検出するセンサが前記斜面内に設置され、
前記パネル部は、
前記斜面内に設置された前記センサ上に貼り付けられない、
請求項11に記載の硬貨取扱装置。
【請求項13】
前記投入部が開状態である際に、前記斜面と、前記フラッパ部の端面と、の間に厚さが最も小さい硬貨の1枚未満の隙間を有する、
請求項12に記載の硬貨取扱装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、硬貨取扱装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、自動券売機や自動販売機等に搭載される、一括投入された複数枚の硬貨を1枚ずつ分離する技術が開発されている。例えば、特許文献1では、投入口に投入された硬貨が回転する円盤により、1枚ずつ分離される技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000-298749号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1に記載した技術では、投入された硬貨を分離させるための円盤を設けるため、分離ユニットの大型化や、複雑化する可能性があった。また、大型化または複雑化した分離ユニットは、分離に際して硬貨が分離ユニット内で詰まる確率が増加し得る。
【0005】
そこで、本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、本発明の目的とするところは、硬貨が詰まる可能性を減らすことが可能な、新規かつ改良された硬貨取扱装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明のある観点によれば、硬貨が投入される投入部と、前記投入部に投入された前記硬貨が挟まる溝部を有する螺旋状に巻かれた構造体と、前記構造体の内側にあり、前記構造体の中心軸と異なる中心軸を有するピン部と、前記構造体および前記ピン部を回転させ、前記溝部に挟まった前記硬貨を上昇させる駆動部と、前記駆動部の駆動力により所定の位置以上に上昇された前記硬貨を受け取るフラッパ部と、を有し、前記ピン部の先端と、前記フラッパ部の端面の間の垂直距離は、前記硬貨の厚さ1枚以上、且つ、前記硬貨の厚さ2枚未満であり、前記投入部に投入された硬貨が滑る斜面と、前記フラッパ部の端面と、の間に前記硬貨が通過可能な隙間を有さない、硬貨取扱装置が提供される。
【0007】
前記硬貨は、厚さの異なる少なくとも2以上の硬貨を含み、前記垂直距離は、前記厚さが最も大きい硬貨の厚さ1枚以上、且つ、前記厚さが最も小さい硬貨の厚さ2枚未満になる距離であってもよい。
【0008】
前記ピン部の先端は、前記ピン部の中心軸に最も近い前記溝部の範囲に位置せず、且つ、前記所定の位置以上に上昇された前記硬貨と接触するように配置されてもよい。
【0009】
前記投入部は、開閉機構を有し、前記投入部が開状態または閉状態のいずれであっても、前記投入部に投入された硬貨が滑る斜面と、前記フラッパ部の端面と、の間に前記硬貨が通過可能な隙間を有さなくてもよい。
【0010】
前記投入部が有する開閉機構と、前記フラッパ部は、分離して構成されてもよい。
【0011】
前記投入部に投入された硬貨が滑る斜面と、前記フラッパ部の端面と、は固定されてもよい。
【0012】
前記斜面と、前記フラッパ部の端面との固定位置は、前記硬貨が通過不可能な貫通孔を有していてもよい。
【0013】
前記投入部の開閉に応じて、前記フラッパ部を移動させる連結部、を更に有していてもよい。
【0014】
前記フラッパ部の端面の高さは、前記投入部の開閉に応じて可変であってもよい。
【0015】
前記フラッパ部の高さは、前記投入部が閉状態である際に上昇され、前記投入部が開状態である際に下降されてもよい。
【0016】
前記斜面は、前記投入部が開状態である際に、前記隙間を埋めるパネル部が貼り付けられてもよい。
【0017】
前記硬貨の残留を検出するセンサが前記斜面内に設置され、前記パネル部は、前記斜面内に設置された前記センサ上に貼り付けられなくてもよい。
【0018】
前記投入部が開状態である際に、前記斜面と、前記フラッパ部の端面と、の間に厚さが最も小さい硬貨の1枚未満の隙間を有してもよい。
【発明の効果】
【0019】
以上説明したように本発明によれば、硬貨が詰まる可能性を減らすことが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本実施形態に係る一括投入ユニット1の概要を説明するための説明図である。
図2】本実施形態に係るユニット本体5の正面概略図を示す図である。
図3】ばねユニット20の構成の一例を説明するための説明図である。
図4図2に示したA-A線でユニット本体5を切断して得られるユニット本体5の断面概略図である。
図5】ユニット本体5により硬貨Cが1枚ずつ分離される流れの一例を説明するための説明図である。
図6】フラッパ部30の端面31Bの位置の調整に係る具体例を説明するための説明図である。
図7】第1の実施例に係る本体ユニット5Aの一例を説明するための説明図である。
図8】第2の実施例に係る本体ユニット5Bの一例を説明するための説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【0022】
<<1.一括投入ユニット1の概要>>
本発明の一実施形態は、硬貨が詰まる可能性を減らすことを可能とする硬貨取扱装置に関する。まず、図1を参照し、本実施形態に係る一括投入ユニットの概要を説明する。
【0023】
図1は、本実施形態に係る一括投入ユニット1の概要を説明するための説明図である。本実施形態に係る一括投入ユニット1は、硬貨取扱装置の一例であり、利用者により複数の硬貨が投入された際に、硬貨を一枚ずつ分離して排出する装置である。図1では、一括投入ユニット1を正面から図示している。
【0024】
例えば、一括投入ユニット1から排出された硬貨Cは、図示しない硬貨選別部(コインメック)に排出される。そして、硬貨選別部(コインメック)は、一括投入ユニット1から排出された硬貨の総数をカウントする処理を実行する。
【0025】
また、一括投入ユニット1は、例えば、自動券売機または自動販売機などの各種現金処理装置に搭載されてもよい。
【0026】
また、一括投入ユニット1は、図1に示すように、硬貨投入皿3と、ユニット本体5と、を有する。
【0027】
<硬貨投入皿3>
本実施形態に係る硬貨投入皿3は、利用者により複数の硬貨Cが投入され、一時的に滞留させるための受け皿である。例えば、硬貨投入皿3には、利用者により複数の硬貨Cが投入される。また、硬貨投入皿3には、利用者により異なる金種の複数の硬貨Cが投入され得る。
【0028】
ここで、異なる金種の硬貨は、例えば、100円硬貨、1円硬貨、5円硬貨、10円硬貨、50円硬貨、または500円硬貨などの日本国内で流通する各種硬貨を含む。また、異なる金種の硬貨は、1セント硬貨等の他の国(即ち、日本国外)で流通する各種硬貨を含んでもよい。
【0029】
<ユニット本体5>
本実施形態に係るユニット本体5は、硬貨投入皿3に投入された複数の硬貨Cを1枚ずつ分離して排出する本体部である。
【0030】
以上、本実施形態に係る一括投入ユニット1の概要を説明した。続いて、ユニット本体5の構成と、ユニット本体5により1枚ずつ分離される硬貨の流れを説明する。
【0031】
<<2.ユニット本体5の構成>>
図2は、本実施形態に係るユニット本体5の正面概略図を示す図である。図2におけるユニット本体の正面概略図とは、ユニット本体5に投入された硬貨Cが通過する経路Lの周辺断面の概略図である。なお、図2に示す硬貨Cの大きさは、説明の便宜上、実際の硬貨の大きさより大きく図示されている。
【0032】
本実施形態に係るユニット本体5は、投入口10と、ばねユニット20と、フラッパ部30と、歯車40と、傾斜部50と、を有する。
【0033】
<投入口10>
本実施形態に係る投入口10は、硬貨Cが投入される投入部の一例である。例えば、硬貨Cは、硬貨投入皿3を介して投入口10に投入される。投入口10に投入された硬貨Cは、当該硬貨Cの自重により、図2に示す傾斜部50の斜面に沿って滑り落ち、ばねユニット20の位置まで移動する。
【0034】
また、投入口10は、図2に示すように、シャッタ110を有する。本実施形態に係るシャッタ110は、投入口10を開状態または閉状態のいずれかの状態に可変である開閉機構の一例である。例えば、シャッタ110が閉っている状態では、複数の硬貨Cは、シャッタ110により傾斜部50に進むことが阻害され、硬貨投入皿3に滞留する。そして、シャッタ110が開くと、硬貨投入皿3に滞留する複数の硬貨Cは、当該硬貨の自重で傾斜部50に進み、当該傾斜部50の斜面に沿って滑り落ちる。
【0035】
<ばねユニット20>
本実施形態に係るばねユニット20は、硬貨Cをフラッパ部30の端面31の高さ以上に上昇させるユニットである。
【0036】
ばねユニット20は、投入口10に投入された硬貨Cが滑る方向に対応した方向に傾けて配置されてもよい。例えば、ばねユニット20は、図2に示すように、投入口10に投入された硬貨Cの滑る方向に対し、ばねユニット20が有するばね部に形成される溝部が略平行になるように配置されてもよい。これにより、ユニット本体5の内部を滑る硬貨Cは、ばね部の溝部に対して、より容易に挟まり得る。ここで、図3を参照し、本実施形態に係るばねユニット20の構成の一例を説明する。
【0037】
図3は、ばねユニット20の構成の一例を説明するための説明図である。図3に示すように、ばねユニット20は、ばね部21と、ギア部23と、ピン部25と、を備える。
【0038】
(ばね部21)
本実施形態に係るばね部21は、投入口10に投入された硬貨が挟まる溝部21Aを有する螺旋状に巻かれた構造体の一例である。なお、本発明に係る構造体は、ばねのような弾性体に限定されない。例えば、本発明に係る構造体は、非弾性体から形成されてもよい。
【0039】
(ギア部23)
本実施形態に係るギア部23は、ばね部21および後述するピン部25を回転させる駆動部の一例である。
【0040】
また、ギア部23は、ばね部21およびピン部25を回転させることでばね部21が有する溝部21Aに挟まった硬貨Cを上昇させる。
【0041】
即ち、ギア部23は、硬貨Cを上昇させる方向にばね部21およびピン部25を回転させる。例えば、図3に示すようなばね部21の巻方向である場合、ギア部23は、ばね部21およびピン部25を時計周りに回転させてもよい。但し、硬貨Cを上昇させる方向は、時計周りに限定されない。ギア部23は、ばね部21の巻方向に応じて、ばね部21およびピン部25を回転させる方向を変更してもよい。
【0042】
(ピン部25)
本実施形態に係るピン部25は、ギア部23に取り付けられるピンである。例えば、ピン部25は、ピン部25の外径よりも小さい径であるギア部23の孔に挿入されることで、ギア部23に取り付けられてもよい。
【0043】
また、ピン部25は、図3に示すように、ばね部21の内側にあり、ばね部21の中心軸と異なる中心軸を有する。
【0044】
また、ピン部25は、例えばスプリングピンであってもよい。但し、ピン部25は、スプリングピンに限定されない。ピン部25は、ギア部23に取り付け可能な任意のピンであってもよい。
【0045】
以上、ばねユニット20の構成の一例を説明した。再び、図2を参照し、ユニット本体5の構成の続きを説明する。
【0046】
<フラッパ部30>
本実施形態に係るフラッパ部30は、ギア部23の駆動力により所定の位置以上に上昇された硬貨Cを受け取る。例えば、所定の位置は、フラッパ部30の端面31の高さであってもよい。なお、フラッパ部30の端面31とは、フラッパ部30の傾斜部50側の側面である。
【0047】
また、フラッパ部30は、投入口10に投入された硬貨Cが滑る方向に対応した方向に傾けて配置されてもよい。例えば、フラッパ部30は、図2に示すように、投入口10に投入された硬貨Cの滑る方向(即ち、傾斜部50の斜面に沿う方向)に対し、フラッパ部30の傾斜が略平行になるように配置されてもよい。
【0048】
<歯車40>
本実施形態に係る歯車40は、少なくとも1以上の突起を有し、回転する回転体である。本明細書では、歯車40が4つの突起を有する例を主に説明する。
【0049】
例えば、歯車40は、投入口10に投入された硬貨Cのうち、ばねユニット20の手前で、フラッパ部30の端面31の高さ以上にある硬貨に突起が接触するように配置される。これにより、投入口10に投入された硬貨Cが、ばねユニット20を介さずにフラッパ部30の端面31を通過してしまう可能性を低減し得る。
【0050】
また、歯車40は、ギア部23およびピン部25の回転方向と反対方向に向けて回転してもよい。例えば、ギア部23がばね部21およびピン部25を時計回りに回転させていた場合、歯車40は、反時計回りに回転してもよい。これにより、歯車40は、ばねユニット20の手前にある硬貨C、またはばねユニット20の近辺にあるものの溝部21Aに挟まっていない硬貨Cをより高い精度で弾き返し得る。
【0051】
以上、ユニット本体5の正面概略図を説明した。続いて、図4を参照し、図2に示したA-A線でユニット本体5を切断して得られるユニット本体5の断面概略図を用いて、硬貨Cが投入されてから排出されるまでの流れを説明する。
【0052】
図4は、図2に示したA-A線でユニット本体5を切断して得られるユニット本体5の断面概略図である。図4に示す経路Lは、硬貨Cが投入口10に投入されてから硬貨選別部(コインメック)に排出されるまでの動線の一例である。
【0053】
まず、利用者は、硬貨Cを投入口10に投入する。この際に、利用者は、複数の硬貨を投入口10に投入してもよい。
【0054】
続いて、硬貨Cは、当該硬貨Cの自重によりユニット本体5の傾斜部50の斜面に沿ってばねユニット20の位置まで滑り落ちる。
【0055】
そして、ばねユニット20の位置まで滑り落ちた硬貨Cは、ばねユニット20が備えるばね部21の溝部21Aに挟まる。
【0056】
溝部21Aに挟まった硬貨Cは、ギア部23の駆動力により所定の位置(例えば、フラッパ部30の端面31の高さ)以上に上昇され、フラッパ部30の端面31を跨ぎ、フラッパ部30の上に落下する。なお、硬貨Cが所定の位置(フラッパ部30の端面31の高さ)を超えるまで、当該硬貨Cは、自重によりフラッパ部30の端面に押し付けられる。
【0057】
そして、フラッパ部30に落下した硬貨Cは、当該硬貨Cの自重により、フラッパ部30の傾斜に沿って再び滑り落ち、硬貨選別部(コインメック)に排出される。
【0058】
続いて、図5を参照し、本実施形態に係るユニット本体5の内部構造により、硬貨Cが1枚ずつ分離される流れを説明する。なお、図5に示すユニット本体5の内部構造は、硬貨Cが投入される投入口10からユニット本体5が有する各構成(例えば、ばねユニット20および歯車40等)を見た際の方向である。
【0059】
図5は、ユニット本体5により硬貨Cが1枚ずつ分離される流れの一例を説明するための説明図である。まず、投入口10に投入され、ばね部21が有する溝部21Aに挟まった硬貨C1は、上述したように、ギア部23の駆動力によりばね部21が回転することにより、上昇する。
【0060】
そして、フラッパ部30の端面31の高さまで上昇した硬貨Cは、当該硬貨Cの自重により、フラッパ部30の端面31を跨ぎ、フラッパ部30に落下する。
【0061】
なお、フラッパ部30の端面31Aの高さを超えても、溝部21Aに挟まっている状態または周辺環境に応じて、自重により落下しない硬貨Cも存在し得る。このような硬貨Cは、端面31の高さを超え、ピン部25の先端25Aの位置まで上昇した後、ピン部25に接触することでフラッパ部30に落下する。
【0062】
なお、ピン部25は、上述したように、ばね部21の内側にあり、ばね部21の中心軸A1と異なる中心軸A2を有する。
【0063】
ここで、ピン部25の先端25Aが当該ピン部25の中心軸A2に最も近いばね部21が有する溝部21Aの範囲に位置する場合、硬貨Cのサイズまたは硬貨Cが投入された角度によっては、当該硬貨Cは、ピン部25の先端25Aとばね部21の間に引っ掛かる恐れがある。
【0064】
また、ピン部25の先端25Aとばね部21に引っ掛かった硬貨Cは、ピン部25の先端25Aに引っ掛かった位置の反対側が持ち上がり、更に歯車40に引っ掛かる恐れがある。この結果、硬貨Cは、フラッパ部30に落下せずに、ユニット本体5の内部で詰まる可能性がある。
【0065】
そこで、本実施形態に係る一括投入ユニット1は、このような硬貨Cがピン部25の先端25Aと歯車40に引っ掛かることによりユニット本体5内で詰まる原因を解消する構造を有していてもよい。
【0066】
例えば、本実施形態に係るピン部25の先端25Aは、図5に示すようにピン部25の中心軸A2に最も近いばね部21が有する溝部21Aの範囲に位置しないように配置されてもよい。換言すると、ピン部25の先端25Aは、図5に示すばね部21の実体部分に隠れるように配置されてもよい。
【0067】
例えば、ピン部25の長さが変更、又はピン部25が挿入されるギア部23の孔の深さが変更されることで、ピン部25の先端25Aは、溝部21Aの範囲に位置しないように調整されてもよい。
【0068】
これにより、硬貨Cがピン部25の先端25Aとばね部21の間に引っ掛かる確率が低減され得る。そして、本実施形態に係るユニット本体5は、硬貨Cがユニット本体5内で詰まる原因を解消することで、硬貨Cの分離に係る機能性を向上し得る。
【0069】
また、硬貨Cの分離に係る機能性を更に向上するため、ユニット本体5の構造に更なる創意工夫がなされる。
【0070】
例えば、フラッパ部30の端面31の位置(高さ)を調整することで、硬貨Cの分離に係る機能性を更に向上することが可能である。フラッパ部30の端面31の高さを超えても、自重により落下しない硬貨Cは、上述したように、端面31の高さを超え、ピン部25の先端25Aの位置まで上昇した後、当該ピン部25に接触することでフラッパ部30に落下する。
【0071】
そのため、例えば図5に示す端面31Aのように、ピン部25の先端25Aと、フラッパ部30の端面31Aとの間の垂直距離が硬貨の厚さの2枚以上である場合、同じタイミングで二枚の硬貨Cがフラッパ部30に落下する恐れがある。
【0072】
そこで、図5に示す端面31Bのように、ピン部25の先端25Aと、フラッパ部30の端面31Bの間の垂直距離が硬貨Cの厚さ1枚以上、且つ、硬貨Cの厚さ2枚未満になるように、フラッパ部30の端面31Bの位置が調整されてもよい。
【0073】
また、硬貨Cには、上述したように複数の金種が含まれ得る。そして、金種が異なる硬貨は、厚さが異なる場合がある。具体的には、500円硬貨の厚さは、1円硬貨の厚さと比較して大きい。
【0074】
このような金種による硬貨Cの厚さの違いを考慮し、ピン部25の先端25Aと、フラッパ部30の端面31Bの間の垂直距離が、厚さが最も大きい硬貨Cの厚さ1枚以上、且つ、厚さが最も小さい硬貨Cの厚さ2枚未満になるように、フラッパ部30の端面31Bの位置は調整されてもよい。なお、以下では、厚さが最も大きい硬貨Cを「最も厚い硬貨」と表現し、厚さが最も小さい硬貨を「最も薄い硬貨」と表現する場合がある。
【0075】
続いて、図6を参照し、フラッパ部30の端面31Bの位置を調整する方法の一例を説明する。
【0076】
図6は、フラッパ部30の端面31の位置の調整に係る具体例を説明するための説明図である。以下の説明では、シャッタ110が開いている際の投入口10の状態を開状態と称し、シャッタ110が閉じている際の投入口10の状態を閉状態と称する。
【0077】
ユニット本体5は、投入口10の開閉に応じてフラッパ部30を移動させるクランク部11を更に備えていてもよい。なお、クランク部11は、連結部の一例である。
【0078】
そして、フラッパ部30の端面31は、投入口10の開閉に応じて可変であってもよい。
【0079】
より具体的には、クランク部11は、図6に示すように、開口部12を有する。そして、開口部12にはフラッパ部30を移動させる支点14と連結する軸13が挿入されている。例えば、投入口10の開閉に応じて軸13が開口部12に沿って移動する。そして、軸13が開口部12に沿って移動することで、軸13とフラッパ部30を繋ぐ支点14を介して、フラッパ部30の端面31の高さが移動される。
【0080】
例えば、フラッパ部30の端面31は、投入口10が開状態であった際に最も下降している。また、フラッパ部30の端面31は、投入口10が閉状態であった際に最も上昇している。
【0081】
これにより、例えば、投入口10が閉状態であった際に、ユニット本体5の内部に存在する物体(ほこり又は水滴等)は、当該物体の自重によりフラッパ部30の下部にある排出口から排出されることが可能である。
【0082】
このような、シャッタ110とフラッパ部30の連結機構によれば、開口部12の幅を狭めることで、フラッパ部30の端面31Bの位置を調整することが可能である。より具体的には、ピン部25の先端25Aと、フラッパ部30の端面31Bの間の垂直距離が、最も厚い硬貨Cの厚さ1枚以上、且つ、最も薄い硬貨Cの厚さ2枚未満の距離になるように、開口部12の幅が狭められてもよい。
【0083】
一例として、ピン部25の先端25Aと、フラッパ部30の端面31の間の垂直距離が硬貨Cの1枚分の距離になるように、フラッパ部30の端面31の位置を調整する方法を説明する。
【0084】
例えば、投入口10が開状態であった際に、フラッパ部30の端面31の高さは、図5に示した端面31Aの位置にあるとする。このような場合、上述したように、同じタイミングで二枚の硬貨Cがフラッパ部30に落下する恐れがある。
【0085】
そこで、ピン部25の先端25Aと、フラッパ部30の端面31の間の垂直距離が硬貨Cの1枚分の距離になるように(即ち、図5に示したフラッパ部30の端面31Aの位置が端面31Bの位置になるように)、図6に示した開口部12の幅を狭める調整方法がある。
【0086】
より具体的には、投入口10が開状態であった際にフラッパ部30の端面31の高さは最も下がるため、フラッパ部30の端面31の高さが下がり幅を減らすように開口部12の幅を狭める調整方法がある。換言すると、投入口10が開状態である際のシャッタ110の開き度合が下がるように開口部12の幅を狭めることで、フラッパ部30の端面31の高さの下がり幅も減らすことが可能になる。これにより、フラッパ部30の端面31Aの位置を図5に示した端面31Bの位置になるように調整することが可能になる。
【0087】
しかし、このような開口部12の幅を狭めることによる端面31の位置の調整方法を用いると、フラッパ部30の端面31の高さを端面31Aから31Bに上げる効果が得られる一方、投入口10に投入された硬貨Cが滑る傾斜部50の斜面、およびフラッパ部30の端面31(即ち、フラッパ部30の傾斜部50側の側面)の間に硬貨Cが通過可能な隙間Gが生じてしまう恐れがある。
【0088】
このような隙間Gが生じると、当該隙間Gに硬貨Cが挟まる場合があり、当該隙間Gに硬貨Cが挟まることでフラッパ部30の端面31は押し上げられ得る。その結果、ピン部25の先端25Aと、フラッパ部30の端面31の間の垂直距離が硬貨Cの1枚未満の距離になり、硬貨Cがフラッパ部30の端面31を通過できなることで硬貨詰まりが生じ得る。
【0089】
そこで、本実施形態に係るユニット本体5は、ピン部25の先端25Aと、フラッパ部30の端面31の間の垂直距離が、硬貨Cの厚さ1枚以上、且つ、硬貨Cの厚さ2枚未満の距離になるように調整した際に生じ得る、硬貨詰まりを解消する構造を有する。
【0090】
具体的には、本実施形態に係るユニット本体5は、投入口10が開状態または閉状態のいずれであっても、投入口10に投入された硬貨Cが滑る傾斜部50の斜面と、フラッパ部30の端面31と、の間に硬貨Cが通過可能な隙間Gを有さない構造を有することを更なる特徴とする。
【0091】
以下では、硬貨Cが通過可能な隙間Gを有さない構造の具体例を順次説明する。
【0092】
<<3.実施例>>
<3.1.第1の実施例>
図7は、第1の実施例に係る本体ユニット5Aの一例を説明するための説明図である。えば、第1の実施例に係る本体ユニット5Aは、投入口10に投入された硬貨Cが滑る傾斜部50の上にパネルPが貼り付けられてもよい。なお、パネルPは、パネル部の一例である。
【0093】
例えば、パネルPは、両面テープ(以下、単にテープと表現する。)または接着材等により傾斜部50の上に貼り付けられてもよい。この際に、パネルPは、フラッパ部30の端面31に近い領域T(即ち、隙間Gの付近)においては、当該領域Tとは異なる他の領域と比較してより厚さの大きいテープで貼り付けられてもよい。
【0094】
但し、パネルPは、必ずしも厚さが異なる複数のテープで傾斜部50の上に貼り付けられなくてもよい。例えば、隙間Gを埋めることが可能な一種類の厚さのテープでパネルPの外枠または、全面が貼り付けられてもよい。また、テープの厚さではなく、パネルの厚さが変更されてもよい。
【0095】
また、図7では、パネルPが傾斜部50の形状に沿ってテープにより貼り付けられている一例を示しているが、例えば、パネルPは、傾斜部50からはみ出る形状を有していてもよい。具体的には、パネルPは、フラッパ部30の端面31の下部に入り込むような形状を有していてもよい。これにより、パネルPは、フラッパ部30に硬貨Cが落下した際に生じ得るフラッパ部30の端面31が下がることを抑制し、また、端面31が下がった際に複数の硬貨Cがフラッパ部30に落下する可能性を減らし得る。
【0096】
また、本体ユニット5Aの傾斜部50の斜面内には、硬貨Cの残留を検出するセンサSが設置されている場合がある。このような場合、パネルPは、当該傾斜部50の斜面内に設置されたセンサS上には貼り付けられなくてもよい。これにより、センサSによる硬貨Cの残留検出精度を維持しつつ、硬貨Cが隙間Gに挟まる可能性を減らすことが可能なり得る。
【0097】
また、本体ユニット5Aは、投入口10が開状態である際に、傾斜部50の斜面と、フラッパ部30の端面31と、の間に厚さが最も薄い硬貨の1枚未満の隙間を有していてもよい。これにより、硬貨Cが当該隙間に挟まる可能性を低減しつつ、且つ、本体ユニット5A内(より具体的には、傾斜部50上)に存在する水滴または埃等の物体は、フラッパ部30の下部に存在する隙間を通り、排出口から排出され得る。なお、物体は、残留物の一例である。
【0098】
<3.2.第2の実施例>
図8は、第2の実施例に係る本体ユニット5Bの一例を説明するための説明図である。第2の実施例に係る本体ユニット5Bは、投入口10が有するシャッタ110と、フラッパ部30が分離した構造を有してもよい。換言すると、本体ユニット5Bは、クランク部11をフラッパ部30に連結させなくてもよい。これにより、シャッタ110が開閉しても、フラッパ部30の位置は移動しない。
【0099】
そのため、傾斜部50の斜面と、フラッパ部30の端面31との間に硬貨Cが通過可能な隙間を有さないように予めフラッパ部30の位置を調整することで、硬貨Cが隙間に挟まる可能性を減らし得る。
【0100】
また、傾斜部50の斜面およびフラッパ部30の端面31とは固定されてもよい。例えば、傾斜部50の斜面およびフラッパ部30の端面31との隙間を埋める固定材を当該隙間に挿入することで、傾斜部50の斜面およびフラッパ部30の端面31とは固定されてもよい。または、傾斜部50およびフラッパ部30は、分離した構成ではなく一体化していてもよい。なお、固定材には、任意の材質からなる物体または接着剤等の各種固形物が含まれ得る。
【0101】
固定材が隙間を埋めること、または傾斜部50およびフラッパ部30が一体化していることで、当該隙間により生じていた硬貨Cが挟まる不具合を解消し得る。
【0102】
また、複数枚の硬貨Cが投入されると、フラッパ部30に振動が伝わる場合があり、フラッパ部30の端面31の高さが下がる事象が生じ得る。この場合、同じタイミングで複数の硬貨Cがフラッパ部30の端面31を通過し、フラッパ部30に落下する不具合が生じ得た。第2の実施例によれば、フラッパ部30と傾斜部50とが固定材により固定されるため、このような振動によりフラッパ部30が下がる恐れを解消し得る。
【0103】
また、フラッパ部30の端面31と、傾斜部50の斜面の固定位置は、硬貨Cが通過不可能な貫通孔を有していてもよい。貫通孔は固定位置から排出口を繋ぐ孔であり、例えば、円柱状、または角柱状等の任意の形状であってもよいし、直線上の孔でも曲線状の孔であってもよい。このような貫通孔を固定位置が有することにより、硬貨Cが隙間に挟まる恐れを低減しつつ、且つ、本体ユニット5B内(より具体的には、傾斜部50上)に存在する水滴または埃等の物体は、フラッパ部30の下部に存在する隙間を通り、排出口から排出され得る。
【0104】
<<4.補足>>
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について詳細に説明したが、本発明はかかる例に限定されない。本発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、これらについても、当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【符号の説明】
【0105】
1 一括投入ユニット
3 硬貨投入皿
5 ユニット本体
10 投入口
110 シャッタ
20 ばねユニット
21 ばね部
23 ギア部
25 ピン部
30 フラッパ部
31 端面
40 歯車
50 傾斜部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8