(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024030815
(43)【公開日】2024-03-07
(54)【発明の名称】PFOS及び/又はPFOAを除去する装置
(51)【国際特許分類】
C02F 1/28 20230101AFI20240229BHJP
C02F 1/78 20230101ALI20240229BHJP
【FI】
C02F1/28 L
C02F1/28 D
C02F1/78
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022133970
(22)【出願日】2022-08-25
(71)【出願人】
【識別番号】522339190
【氏名又は名称】沖縄環境エンジニアリング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100074273
【弁理士】
【氏名又は名称】藤本 英夫
(74)【代理人】
【識別番号】100173222
【弁理士】
【氏名又は名称】藤本 英二
(74)【代理人】
【識別番号】100151149
【弁理士】
【氏名又は名称】西村 幸城
(72)【発明者】
【氏名】松永 勲芳
(72)【発明者】
【氏名】松永 貴史
(72)【発明者】
【氏名】安次富 学
【テーマコード(参考)】
4D050
4D624
【Fターム(参考)】
4D050AA13
4D050AB19
4D050BB02
4D050BD04
4D050BD08
4D050CA06
4D050CA08
4D050CA15
4D624AA04
4D624AB11
4D624BA02
4D624BA17
4D624CA01
4D624CA04
4D624DA03
4D624DB03
4D624DB19
4D624DB24
(57)【要約】
【課題】PFOS及び/又はPFOAの除去状態あるいは除去効果を即時に確認しながら、複数流路を確保することにより処理装置の運転を停止することなく連続的に、PFOS及び/又はPFOAを除去する装置を提供すること。
【解決手段】
PFOS及び/又はPFOAを含む液体が導入されるタンク1と、このタンクから供給された液体中のPFOS及び/又はPFOAを吸着するための活性炭と、さらに前記供給された液体中にオゾンを供給するオゾン水生成装置2とを含む。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
PFOS及び/又はPFOAを含む液体が導入されるタンクと、
このタンクから供給された液体中のPFOS及び/又はPFOAを吸着するための活性炭と、
さらに前記供給された液体中にオゾンを供給するオゾン水生成装置とを含むPFOS及び/又はPFOAを除去する装置。
【請求項2】
前記タンクの下流側に前記オゾン水生成装置を設け、
さらにその下流側に複数の流路を設けてその流路中に活性炭を設け、
さらにこれら流路の下流側を前記タンクとオゾン水生成装置との間の流路に接続してある請求項1記載のPFOS及び/又はPFOAを除去する装置。
【請求項3】
前記タンクの下流側に複数の流路を設け、
それぞれの流路中に前記活性炭及び前記オゾン水生成装置を設けた請求項1記載のPFOS及び/又はPFOAを除去する装置。
【請求項4】
前記オゾン水生成装置内のオゾンを測定するオゾン濃度計を設けてある請求項1~3のいずれかに記載のPFOS及び/又はPFOAを除去する装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機フッ素化合物であるPFOS(パーフルオロオクタンスルホン酸あるいはペルフルオロオクタンスルホン酸)やPFOA(パーフルオロオクタン酸あるいはペルフルオロオクタン酸)を廃液や湧水等の液体中から除去し、又、その除去状態を確認する装置に関する。
【背景技術】
【0002】
PFOS及びPFOAといった有機フッ素化合物は、耐熱性、耐薬品性など非常に優れた安定性を持つことから、界面活性剤、半導体製造や金属メッキの薬剤、泡消火剤、フッ素樹脂製造の助剤などに用いられてきた。
【0003】
他方で、PFOS及びPFOAは、化学的に極めて安定性が高く、水溶性かつ不揮発性の物質であることから、環境中に放出された場合には河川等に移行しやすい。また、その難分解性と生体蓄積性のため、環境に残留しやすいとされ、生態系への影響が懸念されている。
【0004】
PFOS及びPFOAは化学的に非常に安定しており、自然界では分解しない。また、熱分解するためには約1000℃以上の高温が必要となる。
【0005】
PFOS及び/又はPFOA含有水の処理法としては、燃焼処理方式や高圧の超臨界方式といった方法があげられる。しかし、上記処理方式は大規模な設備投資が必要であり、建設費のコストが増大するという問題点が存在する。また、上記処理方式はPFOS及び/又はPFOA含有水が高濃度で少量の場合に適し、PFOS及び/又はPFOA含有水が低濃度で多量の場合には適さないという課題がある。
【0006】
一方で、廃液中に含まれる有機物をオゾンマイクロバブルにより処理する装置が提案されている(特許文献1)。この方法は、マイクロバブル発生装置にオゾン発生装置より生成されたオゾンガスと処理層の下部から抜き出された廃液を加圧ポンプを介して供給し、
生成されたオゾンマイクロバブルをガス吹き出しパイプの開口部より処理層内の廃液に通気するものである。
【0007】
また、有機フッ素化合物等の難分解性の化合物を処理する水処理装置および水処理方法が提案されている(特許文献2)。この方法は、ナノバブルの酸化力を利用して2段階のナノバブル処理により有機フッ素化合物を分解し分解物をガス化し、活性炭で吸着除去するというものである。加えて、上記有機フッ素化合物をナノバブルの酸化力を利用して分解した分解物としてのガスをファンにより送風することによって水面から常時除去することにより上記分解を効率的に行うものである。
【0008】
【特許文献1】特開2004-321959号公報
【特許文献2】特開2010-22961号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、上記のような処理装置では、PFOS及び/又はPFOAを除去することができるものの、PFOS及び/又はPFOAを定量的あるいは定性的に測定する手段が講じられていないために、その除去状態あるいは除去効果を即時に確認することができないという問題点が存在している。
【0010】
また、上記の発明のような処理装置は流路が単一経路のため、仮にPFOS及び/又はPFOAを継続的に除去したことにより活性炭の吸着処理能力が低下した場合には、その活性炭の交換のために処理装置を長期間停止せざるを得ず、PFOS及び/又はPFOAの除去効率が低下してしまうという不都合が生じる。
【0011】
本発明は上述の事柄に留意してなされたものであり、その目的は、PFOS及び/又はPFOAの除去状態あるいは除去効果を即時に確認しながら、複数流路を確保することにより、例えば30~60トンなど大量の液体を処理でき、あるいは、処理装置の運転を停止することなく連続的に、PFOS及び/又はPFOAを除去する装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するため、本発明に係るPFOS及び/又はPFOAを除去する装置は、PFOS及び/又はPFOAを含む液体が導入されるタンクと、このタンクから供給された液体中のPFOS及び/又はPFOAを吸着するための活性炭と、さらに前記供給された液体中にオゾンを供給するオゾン水生成装置を含む(請求項1)。
【0013】
一方、上記課題を解決するために、本発明に係るPFOS及び/又はPFOAを除去する装置は、前記タンクの下流側に前記オゾン水生成装置を設け、さらにその下流側に複数の流路を設けてその流路中に活性炭を設け、さらにこれら流路の下流側を前記タンクとオゾン水生成装置との間の流路に接続する(請求項2)。
【0014】
上記課題を解決するために、本発明に係るPFOS及び/又はPFOAを除去する装置は、前記タンクの下流側に複数の流路を設け、それぞれの流路中に前記活性炭及び前記オゾン水生成装置を設ける(請求項3)。
【0015】
本発明に係るPFOS及び/又はPFOAを除去する装置において、前記オゾン水生成装置内のオゾンを測定するオゾン濃度計を設けてもよい(請求項4)。
【発明の効果】
【0016】
本発明は、オゾン及び活性炭によりPFOS及び/又はPFOAを効率的に除去することができる。
【0017】
また、オゾン濃度計を設けた場合には、その場で即時にPFOS及び/又はPFOAの除去状態あるいは除去効果を確認することが可能となる。
【0018】
さらに本発明では大量の廃液や湧水等の液体を処理でき、また、複数流路を設けた場合には、一つの流路のPFOS及び/又はPFOA除去効果が低下した場合にも残りの流路に切り替えて連続運転することも可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】PFOS及び/又はPFOAを除去する装置の実施の形態を示す説明図である。
【
図2】PFOS及び/又はPFOAを除去する装置の別の実施形態を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明の実施の形態を
図1に基づいて説明する。この実施形態の装置はタンク1、オゾン水生成装置2、吸着装置3、三方切替弁4、4´、オゾン発生器5、オゾン濃度計6及び移送ライン7~10を備える。
【0021】
PFOS及び/又はPFOAを含む液体はタンク1に貯留される。タンク1に貯留されたPFOS及び/又はPFOAを含む液体は三方切替弁4を備えた移送ライン7を介してオゾン水生成装置2に移送される。オゾン発生器5においてオゾンが生成され、そのオゾンがオゾン水生成装置2に供給される。オゾン水生成装置2ではPFOS及び/又はPFOAを含む液体とオゾン発生器5より供給されたオゾンが化学反応し、PFOS及び/又はPFOAは酸化分解される。このように処理されたPFOS及び/又はPFOAを含む液体は移送ライン8を介して吸着装置3に移送される。吸着装置3はやしがら活性炭等の活性炭を用いて構成されており、その活性炭がオゾン水生成装置2で酸化分解されず残存したPFOS及び/又はPFOAを吸着する。
【0022】
吸着装置3の活性炭は交換可能なカートリッジ式にすることができ、活性炭の吸着効果が低下した場合には適宜交換することができる。
【0023】
また、移送ライン8及び吸着装置3は単一流路だけではなく
図1に示すように複数流路で構成することも可能である。複数流路で構成した場合には、一つの流路が故障あるいは活性炭の交換で利用できない場合にも、他の流路で稼働を継続することができる。
【0024】
吸着装置3で処理された液体は移送ライン9を介して排水される。移送ライン9には三方切替弁4´が設置されている。活性炭3で処理された液体は、移送ライン10を介して移送ライン7にフィードバックさせて上記に示した同一工程を循環させることが可能である。このようにフィードバックさせることにより、PFOS及び/又はPFOAの濃度をより低減させることができる。
【0025】
オゾン水生成装置2にオゾン濃度計6を設置することも可能である。オゾン濃度計6でオゾン水生成装置2内部のオゾン濃度を測定することによりPFOS及び/又はPFOAの除去状態や吸着装置3の活性炭の交換時期を把握することができる。
【0026】
吸着装置3では、活性炭に加えてさらにイオン交換樹脂及び/又は不織布を追加してもよい。
【0027】
別の実施形態を
図2に基づいて説明する。本発明の装置は圧送ポンプ11、糸巻フィルター12、タンク13、加圧ポンプ14、三方切替弁15、制御盤16、吸着装置17、オゾン水生成装置18、オゾン発生器19、オゾン濃度計20及び移送ライン21~25を備える。
【0028】
PFOS及び/又はPFOAを含む液体が圧送ポンプ11により移送ライン21を介して糸巻フィルター12に移送される。糸巻フィルター12によりPFOS及び/又はPFOAを含む液体中の浮遊物等を取り除くことができる。PFOS及び/又はPFOAを含む液体は糸巻フィルター12から移送ライン22を介してタンク13に移送される。タンク13でPFOS及び/又はPFOAを含む液体を貯留する。タンク13に一定量以上の液体が注入されると圧送ポンプ11は停止する。他方で、タンク13の液体が一定量以下になると圧送ポンプ11は作動する。
【0029】
タンク13に貯留されているPFOS及び/又はPFOAを含む液体は、加圧ポンプ14により移送ライン23を介して三方切替弁15に移送される。三方切替弁15を切替することにより移送ライン23から移送ライン24又は移送ライン25にPFOS及び/又はPFOAを含む液体を移送することが可能となる。制御盤16は本発明の装置のシステム(三方切替弁15の開閉、ポンプ11や加圧ポンプ14の作動等)を制御するものである。移送ライン24及び移送ライン25には、活性炭からなる吸着装置17と、オゾン発生器19が備え付けられているオゾン水生成装置18とが設置されている。移送ライン24及び/又は移送ライン25に移送されたPFOS及び/又はPFOAを含む液体は、吸着装置17の活性炭の作用によりPFOS及び/又はPFOAが吸着される。PFOS及び/又はPFOAを含む液体は吸着装置17通過後はオゾン水生成装置18に移送される。
【0030】
オゾン発生器19においてオゾンが生成され、そのオゾンがオゾン水生成装置18に供給される。オゾン水生成装置18ではPFOS及び/又はPFOAを含む液体とオゾン発生器19により供給されたオゾンが化学反応し、PFOS及び/又はPFOAは酸化分解される。オゾン水生成装置18を通過し、低濃度となったPFOS及び/又はPFOAを含む液体は排出される。
【0031】
図2に示すように、活性炭からなる吸着装置17と、オゾン発生器19が備え付けられているオゾン水生成装置18とは複数設置してもよい。
【0032】
吸着装置17の活性炭は交換可能なカートリッジ式にすることができ、活性炭の吸着効果が低下した場合には適宜交換することができる。
【0033】
移送ライン24の流路が故障あるいは吸着装置17の活性炭の交換で利用できない場合
は他の流路である移送ライン25を利用することにより稼働を継続することができる。この場合には、三方切替弁15により移送ライン24から移送ライン25への切替を行う。流路はさらに数を増やして設けてもよい。尚、三方切替弁15は設けなくてもよい。
【0034】
オゾン水生成装置18にオゾン濃度計20を設置することも可能である。オゾン濃度計20でオゾン水生成装置18内部のオゾン濃度を測定することにより吸着装置17の活性炭の交換時期を把握することができる。
以下説明する。
オゾン発生器19においてオゾンをオゾン濃度0.02PPMで発生するよう設定しておく。仮にオゾン濃度計20によって測定されたオゾン濃度が0.01PPMを下回った場合には、オゾン発生器19から発生したオゾンがPFOS及び/又はPFOAの酸化分解に消費されていることになる。このような場合には吸着装置17の活性炭の吸着能が低下していることが示唆されるから、吸着装置17の活性炭が汚れていることが推定される。
【0035】
吸着装置17では、活性炭に加えてさらにイオン交換樹脂及び/又は不織布を追加してもよい。
【0036】
(試験結果)
PFOS及び/又はPFOAを含む液体を本発明の装置を用いて処理することに関して表1及び表2に示す試験結果が得られた。
表1はPFOS及び/又はPFOAを含む液体を本発明の装置で処理する前のPFOS及び/又はPFOAの計量値である。
表2はPFOS及び/又はPFOAを含む液体を本発明の装置で処理した後のPFOS及び/又はPFOAの計量値である。
【表1】
【表2】
表2からも明らかなように、PFOS及び/又はPFOAを含む液体を本発明の装置で処理した後の液体中のPFOS、PFOA、PFOS及びPFOAの計量値はいずれも1.0(ng/L)未満となった。
以上の試験結果から、本発明の装置が液体中のPFOS及び/又はPFOAの除去に極めて有効であることが示唆された。
【符号の説明】
【0037】
1 タンク
2 オゾン水生成装置
3 吸着装置
4 三方切替弁
5 オゾン発生器
6 オゾン濃度計
7~10 移送ライン
11 圧送ポンプ
12 糸巻フィルター
13 タンク
14 加圧ポンプ
15 三方切替弁
16 制御盤
17 吸着装置
18 オゾン水生成装置
19 オゾン発生器
20 オゾン濃度計
21~25 移送ライン