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  • 特開-レーダ処理装置およびレーダ処理方法 図1
  • 特開-レーダ処理装置およびレーダ処理方法 図2
  • 特開-レーダ処理装置およびレーダ処理方法 図3
  • 特開-レーダ処理装置およびレーダ処理方法 図4
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024030816
(43)【公開日】2024-03-07
(54)【発明の名称】レーダ処理装置およびレーダ処理方法
(51)【国際特許分類】
   G01S 13/34 20060101AFI20240229BHJP
【FI】
G01S13/34
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022133971
(22)【出願日】2022-08-25
(71)【出願人】
【識別番号】318006365
【氏名又は名称】JRCモビリティ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100126561
【弁理士】
【氏名又は名称】原嶋 成時郎
(72)【発明者】
【氏名】小田 康明
(72)【発明者】
【氏名】時枝 幸伸
【テーマコード(参考)】
5J070
【Fターム(参考)】
5J070AB17
5J070AD02
5J070AH12
5J070AH14
5J070AH35
5J070AK17
5J070AK18
(57)【要約】
【課題】簡易な構成でターゲットを検出可能なレーダ処理装置を提供する。
【解決手段】受信信号からターゲットを検出するレーダ処理装置10であって、受信信号に基づいて距離と受信強度の関係を示すスコープデータを作成するFFT3と、スコープデータにおける受信強度を距離方向に平滑化する移動平均化部4と、平滑化された受信強度に対して所定のオフセット値を加算して閾値を設定するオフセット部5と、スコープデータにおける受信強度のなかから、閾値を超える受信強度の距離にターゲットがあると検出する目標検出部6と、を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
受信信号からターゲットを検出するレーダ処理装置であって、
前記受信信号に基づいて距離と受信強度の関係を示すスコープデータを作成するスコープ作成部と、
前記スコープデータにおける受信強度を距離方向に平滑化する移動平均化部と、
前記平滑化された受信強度に対して所定のオフセット値を加算して閾値を設定する閾値設定部と、
前記スコープデータにおける受信強度のなかから、前記閾値を超える受信強度の距離にターゲットがあると検出する目標検出部と、
を備えることを特徴とするレーダ処理装置。
【請求項2】
受信信号からターゲットを検出するレーダ処理方法であって、
前記受信信号に基づいて距離と受信強度の関係を示すスコープデータを作成するスコープ作成ステップと、
前記スコープデータにおける受信強度を距離方向に平滑化する移動平均化ステップと、
前記平滑化された受信強度に対して所定のオフセット値を加算して閾値を設定する閾値設定ステップと、
前記スコープデータにおける受信強度のなかから、前記閾値を超える受信強度の距離にターゲットがあると検出する目標検出ステップと、
を備えることを特徴とするレーダ処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、レーダ処理装置およびレーダ処理方法に関し、特に、クラッタを除去するCFAR(Constant False Alarm Rate)処理を含むレーダ処理装置およびレーダ処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
レーダ装置は、電波をターゲットに向けて発信し、その反射波を受信することで、ターゲットまでの距離や方向を測定する装置である。その際、反射波のなかには地面や海面などからの不要な信号(クラッタ)も含まれているため、クラッタを除去・抑圧する処理(CFAR処理)が必要となる。このCFAR処理として、クラッタ信号は時間方向に拡がる、という特徴を利用したものが知られている(例えば、特許文献1等参照。)。
【0003】
このCFAR処理は、第1に、受信信号中に含まれるクラッタ等の時間方向に拡がっている信号を抑圧し、第2に、抑圧された受信信号から第1の閾値を越える信号を検出し、第3に、検出された信号のセルを受信信号から除去し、第4に、セルが除去された受信信号の平均化処理を行い、処理前の受信信号を平均化された受信信号で除算する。そして、その受信信号から第2の閾値を越えた信号を目標信号として検出するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006-292597号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、特許文献1に記載のCFAR処理では、多くの処理工程や構成機器を要し、構成が複雑で組み込み機器に実装することが容易ではない。
【0006】
そこで本発明は、簡易な構成でターゲットを検出可能なレーダ処理装置およびレーダ処理方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために請求項1に記載の発明は、受信信号からターゲットを検出するレーダ処理装置であって、前記受信信号に基づいて距離と受信強度の関係を示すスコープデータを作成するスコープ作成部と、前記スコープデータにおける受信強度を距離方向に平滑化する移動平均化部と、前記平滑化された受信強度に対して所定のオフセット値を加算して閾値を設定する閾値設定部と、前記スコープデータにおける受信強度のなかから、前記閾値を超える受信強度の距離にターゲットがあると検出する目標検出部と、を備えることを特徴とする。
【0008】
請求項2に記載の発明は、受信信号からターゲットを検出するレーダ処理方法であって、
前記受信信号に基づいて距離と受信強度の関係を示すスコープデータを作成するスコープ作成ステップと、前記スコープデータにおける受信強度を距離方向に平滑化する移動平均化ステップと、前記平滑化された受信強度に対して所定のオフセット値を加算して閾値を設定する閾値設定ステップと、前記スコープデータにおける受信強度のなかから、前記閾値を超える受信強度の距離にターゲットがあると検出する目標検出ステップと、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
請求項1および請求項2に記載の発明によれば、距離方向に平滑化された受信強度にオフセット値が加算された閾値に基づいて、ターゲットが検出(クラッタが除去)される。このように、受信強度を平滑化してオフセット値を加算した閾値に基づいて、ターゲットを検出するだけであるため、構成が簡易で、組み込み機器に実装することが容易となる。
【0010】
また、受信強度を距離方向に平滑化するだけであるため、使用するメモリ量が少なくてすみ、しかも、スコープデータを作成するたびにターゲットの検出までを完了できるため、処理負担が小さい。さらに、ターゲットを検出するための閾値が、受信信号を受けてスコープデータを作成するたびに逐次動的に変わるため、周囲環境・クラッタなどの変化に応じて適正にターゲットを検出することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】この発明の実施の形態に係るレーダ処理装置を含むレーダ装置を示す概略構成ブロック図である。
図2図1のレーダ処理装置によるAスコープの一例を示す図である。
図3図1のレーダ処理装置によるAスコープと移動平均値の一例を示す図である。
図4図1のレーダ処理装置によるAスコープと移動平均値と閾値の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、この発明を図示の実施の形態に基づいて説明する。
【0013】
図1図4は、この発明の実施の形態を示し、図1は、この実施の形態に係るレーダ処理装置10を含むレーダ装置1を示す概略構成ブロック図である。このレーダ処理装置10は、受信信号からクラッタを除去してターゲットを検出するCFAR処理を行う装置であり、どのようなレーダ方式・レーダ装置にも適用可能であるが、この実施の形態では、FMCW(Frequency MoDulateD Continuous Wave、周波数変調連続波)レーダの場合を例にして、以下に説明する。
【0014】
レーダ処理装置10を除くレーダ装置1の基本構成は、従来と同等であり、送信アンテナ21は、発振器23で生成された所定の周波数の送信信号を送信し、受信アンテナ22は、物標から反射された受信信号を受信する。ここで、この実施の形態では、送信アンテナ21と受信アンテナ22がともに1つの場合を例にして説明するが、それぞれ複数設けてもよい。そして、送信信号と受信信号は、乗算器24を介してアナログ/デジタル変換回路25に入力され、アナログ/デジタル変換回路25においてビート波形・信号が生成され、レーダ処理装置10に入力される。
【0015】
レーダ処理装置10は、主として、スコープ作成部としてのFFT(Fast Fourier Transform、高速フーリエ変換部)3と、移動平均化部4と、閾値設定部としてのオフセット部5と、目標検出部6と、を備える。
【0016】
FFT3は、受信信号に基づいて距離と受信強度の関係を示すスコープデータを作成する処理部である。この実施の形態では、スコープデータとして、図2に示すように、横軸を距離、縦軸を受信強度・レベルとするAスコープL1を従来と同様にして作成する。すなわち、高速フーリエ変換処理によってビート波形・信号の周波数スペクトルを出力し、周波数分解能に応じた周波数間隔で設定された周波数ビンごとの受信レベルを抽出する。ここで、高速フーリエ変換処理の結果における周波数ビンは、物標までの距離に対応し、周波数ビンを距離ビンとして表記できる。これにより、図2に示すように、物標までの距離に対応する周波数(距離ビン)ごとの受信レベル・強度を示すAスコープL1が作成される。
【0017】
移動平均化部4は、スコープデータにおける受信強度を距離方向に平滑化する処理部・フィルタである。すなわち、FFT3で作成されたAスコープL1に対して、その距離方向の全長にわたって、図3に示すように、所定の距離Dごとに(距離Dを移動させながら)順次受信強度を平滑化・平均化して、移動平均値(平滑化強度)L2を作成する。ここで、所定の距離Dは、ターゲットの距離幅やクラッタの出現状況(強度、出方等)などに応じて、後述する目標検出部6において適正にターゲットが検出されるように設定される。また、図3に示すように、所定の距離Dが重なるように順次受信強度を平滑化してもよい。
【0018】
オフセット部5は、移動平均化部4で平滑化された受信強度、つまり、移動平均値L2における各距離ビンの受信強度に、所定のオフセット値OSを加算して閾値曲線(閾値)L3を設定する処理部である。すなわち、図4に示すように、移動平均値L2をオフセット値OSだけ強度加算方向に平行移動して閾値曲線L3を設定、作成する。ここで、オフセット値OSは、クラッタの出現状況などに応じて、後述する目標検出部6において適正にターゲットが検出されるように設定される。
【0019】
目標検出部6は、AスコープL1における受信強度のなかから、閾値曲線L3を超える受信強度の距離にターゲットがあると検出する処理部である。すなわち、図4に示すように、AスコープL1の受信強度のピーク値(山頂部)のなかから、閾値曲線L3を超えるピーク値P1、P2に対応する距離P11、P12に、ターゲットがあると検出する。換言すると、AスコープL1のピーク値のなかで、閾値曲線L3を超えないピーク値(P3、P4など)に対応する距離・物標は、地面や海面などからのクラッタであるとして除去する。
【0020】
次に、このような構成のレーダ装置1およびレーダ処理装置10によるレーダ処理方法について説明する。
【0021】
まず、発振器23で生成された所定の周波数の送信信号を送信アンテナ21から送信して、物標から反射された受信信号を受信アンテナ22で受信し、送信信号と受信信号に基づいてアナログ/デジタル変換回路25でビート波形・信号を生成する。次に、FFT3で距離と受信強度の関係を示すAスコープL1を作成し(スコープ作成ステップ)、移動平均化部4でAスコープL1における受信強度を距離方向に平滑化して移動平均値L2を作成する(移動平均化ステップ)。
【0022】
続いて、オフセット部5で移動平均値L2に対して所定のオフセット値OSを加算して閾値曲線L3を設定し(閾値設定ステップ)、AスコープL1のピーク値のなかから、閾値曲線L3を超えるピーク値の距離にターゲットがあると検出する(目標検出ステップ)。そして、このようなCFAR処理を、受信信号を受信してAスコープL1を作成するたびに繰り返す。すなわち、移動平均化ステップ、閾値設定ステップおよび目標検出ステップを、スコープ作成ステップでAスコープL1を作成するたびに繰り返すものである。
【0023】
以上のように、このレーダ処理装置10およびレーダ処理方法によれば、距離方向に平滑化された受信強度(移動平均値L2)にオフセット値OSが加算された閾値曲線L3に基づいて、ターゲットが検出(クラッタが除去)される。つまり、受信強度を平滑化してオフセット値OSを加算した閾値曲線L3に基づいて、ターゲットを検出するだけであるため、構成が簡易で、組み込み機器に実装することが容易となる。
【0024】
また、AスコープL1における受信強度を所定の距離Dごとに順次平滑化・平均化するだけであるため、使用するメモリ量が少なくてすみ、しかも、AスコープL1を作成するたびにターゲットの検出までを完了できるため、処理負担が小さい。さらに、ターゲットを検出するための閾値曲線L3が、受信信号を受けてAスコープL1を作成するたびに逐次動的に変わるため、周囲環境・クラッタなどの変化に応じて適正にターゲットを検出することが可能となる。
【0025】
以上、この発明の実施の形態について説明したが、具体的な構成は、上記の実施の形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更等があっても、この発明に含まれる。例えば、上記の実施の形態では、移動平均化部4において平滑化する単位である距離Dや、オフセット部5におけるオフセット値OSを固定値としているが、周囲環境・クラッタなどに応じて自動的に可変・調整したり、外部から可変設定したりできるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0026】
1 レーダ装置
10 レーダ処理装置
3 FFT(スコープ作成部)
4 移動平均化部
5 オフセット部(閾値設定部)
6 目標検出部
L1 Aスコープ(スコープデータ)
L2 移動平均値
L3 閾値曲線(閾値)
OS オフセット値
図1
図2
図3
図4