(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024030825
(43)【公開日】2024-03-07
(54)【発明の名称】粘度計装置
(51)【国際特許分類】
G01N 11/14 20060101AFI20240229BHJP
【FI】
G01N11/14 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022133989
(22)【出願日】2022-08-25
(71)【出願人】
【識別番号】391003004
【氏名又は名称】東機産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000198
【氏名又は名称】弁理士法人湘洋特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】石川 貴久
(72)【発明者】
【氏名】山田 直人
(72)【発明者】
【氏名】木村 壮博
(57)【要約】
【課題】 温度制御が簡便な粘度計装置を提供する。
【解決手段】 ロータとサンプルカップとを有する回転式粘度計装置であって、前記ロータと前記ロータより大径の閉鎖部とを有する粘度計と、前記粘度計と別体の温度制御部と、を備え、前記サンプルカップが前記温度制御部に設けられ、前記粘度計の上下動可能なガイドピンが下降しながら、平面移動可能な前記温度制御部の位置決め部を挿通することにより、前記閉鎖部に対して前記サンプルカップが位置決めされる、回転式粘度計装置。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロータとサンプルカップとを有する回転式粘度計装置であって、
前記ロータと前記ロータより大径の閉鎖部とを有する粘度計と、
前記粘度計と別体の温度制御部と、を備え、
前記サンプルカップが前記温度制御部に設けられ、
前記粘度計の上下動可能なガイドピンが下降しながら、平面移動可能な前記温度制御部の位置決め部を挿通することにより、前記閉鎖部に対して前記サンプルカップが位置決めされる
ことを特徴とする、回転式粘度計装置。
【請求項2】
一対の前記ガイドピンと、一対の前記位置決め部を有する
ことを特徴とする、請求項1に記載の回転式粘度計装置。
【請求項3】
前記位置決め部は、平面位置が調整可能である
ことを特徴とする、請求項1に記載の回転式粘度計装置。
【請求項4】
前記粘度計は、前記温度制御部の平面移動範囲を規制するための平面規制部を有する
ことを特徴とする、請求項1に記載の回転式粘度計装置。
【請求項5】
前記粘度計は、本体が上下動するための上下移動部と、前記本体の下降幅を規制するための下降規制部と、を有する
ことを特徴とする、請求項1に記載の回転式粘度計装置。
【請求項6】
前記温度制御部は、前記粘度計の本体と密着するための付勢部を有する
ことを特徴とする、請求項1に記載の回転式粘度計装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粘度計装置に関する。
【背景技術】
【0002】
粘度計装置、とりわけ回転式粘度計装置として、ロータを用いるものがある。
【0003】
一例として、「サンプルカップと、該サンプルカップを着脱自在に支持するアジャストリングと、該アジャストリングを支持する粘度計本体と、該粘度計本体を適切な高さに支持する粘度計スタンドを有してなる円錐-平板粘度計において、前記サンプルカップは、下面中央に細長棒体からなる凸部を設けてなり、前記粘度計スタンドに、前記凸部に嵌合可能な凹部を形成し、前記サンプルカップを水平に保持するようにしたことを特徴とする、円錐-平板粘度計。」が提案されている(特許文献1の請求項1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
粘度計装置による粘度測定は、サンプル(測定対象)が周囲温度の影響を受けないように、温度制御されることが望ましい。
【0006】
一例として、上記粘度計装置は、サンプルカップが粘度計のアジャストリングに着脱自在に支持され、このサンプルカップに、所定温度の水を循環させる機器からゴムホースを用いてその内部の通路内に所定温度の水を循環させることにより、サンプルの液温を一定に設定している(特許文献1の明細書段落[0009]を参照)。
【0007】
しかし、上記粘度計装置は、水等を循環させる機器(循環恒温槽)とサンプルカップとをゴムホースを用いて接続しなければならない等不便である。また、循環恒温槽が大型であるため場所をとる。また、循環恒温槽を用いる温度制御は、設定温度に到達するのに時間がかかる。
【0008】
本発明は、上記課題の少なくとも一つを解決するためのものであり、温度制御が簡便な粘度計装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題の少なくとも一つを解決する本発明の一態様は、ロータとサンプルカップとを有する回転式粘度計装置であって、前記ロータと前記ロータより大径の閉鎖部とを有する粘度計と、前記粘度計と別体の温度制御部と、を備え、前記サンプルカップが前記温度制御部に設けられ、前記粘度計の上下動可能なガイドピンが下降しながら、平面移動可能な前記温度制御部の位置決め部を挿通することにより、前記閉鎖部に対して前記サンプルカップが位置決めされる。
【0010】
好ましくは、上記回転式粘度計装置において、一対の前記ガイドピンと、一対の前記位置決め部を有する。
【0011】
好ましくは、上記回転式粘度計装置において、前記位置決め部は、平面位置が調整可能である。
【0012】
好ましくは、上記回転式粘度計装置において、前記粘度計は、前記温度制御部の平面移動範囲を規制するための平面規制部を有する。
【0013】
好ましくは、上記回転式粘度計装置において、前記粘度計は、本体が上下動するための上下移動部と、前記本体の下降幅を規制するための下降規制部と、を有する。
【0014】
好ましくは、上記回転式粘度計装置において、前記温度制御部は、前記粘度計の本体と密着するための付勢部を有する。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、温度制御が簡便な粘度計装置を提供することができる。
【0016】
上記した以外の課題、構成、及び効果は、以下の実施形態の説明により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明の一実施形態に係る粘度計装置の一例を示す斜視図である。
【
図2】
図1の粘度計装置の使用状態の一例を示す斜視図である。
【
図5】温度制御部の一例を説明するための図である。
【
図8】ガイドピン及び篏合部の一例を説明するための図である。
【
図9】平面規制部及び平面移動部の一例を説明するための図である。
【
図10】
図1の粘度計装置の動作の一例を説明するための図である。
【
図11】
図1の粘度計装置の動作の一例を説明するための図である。
【
図12】
図1の粘度計装置の動作の一例を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態の例について、図面を参照して説明する。なお、下記実施形態(及び変形例)において共通する構成要素については、前出の符号と同様な符号を付し説明を省略することがある。また、構成要素等の形状、位置関係等に言及する場合は、特に明示した場合及び原理的に明らかにそうでないと考えられる場合等を除き、実質的にその形状等に近似または類似するもの等を含むものとする。
【0019】
図1は本発明の一実施形態に係る粘度計装置の一例を示す斜視図で、
図2はその使用状態の一例を示す斜視図である。なお、以下では、
図1における粘度計装置の状態を初期状態と称し、
図2における粘度計装置の状態を閉鎖状態と称する。各図において、Xは左右方向(水平方向)、Yは上下方向(鉛直方向)、Zは前後方向(奥行方向)を示す(以下各図において同じ)。
【0020】
本実施形態の粘度計装置1は、一例として、回転式粘度計装置、例えば、ロータとサンプルカップとを用いるタイプのものである。粘度計装置1は、粘度計2と、粘度計2と別体の温度制御部3とを備える。
【0021】
粘度計装置による粘度測定は、サンプルが周囲温度の影響を受けないように、温度制御されることが望ましい。従来のサンプルカップを用いる粘度計装置は、循環恒温槽からゴムホースを用いて、粘度計に保持されたサンプルカップの内部通路に所定温度の水を循環させる循環恒温槽による温度制御が用いられている(特許文献1を参照)。
【0022】
このような循環恒温槽による温度制御は、ゴムホースを用いてサンプルカップと接続しなければならない等不便である。また、循環恒温槽が大型であるため場所をとる。また、循環恒温槽を用いる温度制御は、設定温度に到達するのに時間がかかる。また、循環恒温槽はフロンを冷媒とするものが多く、環境保護の面で好ましくない。
【0023】
本実施形態の粘度計装置1は、ロータ21が粘度計2に設けられ、サンプルカップ31が温度制御部3に一体に設けられる。粘度計装置1は、サンプルカップ31が一体化したサンプルカップ形状の温度制御部3を備えることで、ゴムホースを用いなくても温度制御ができるようになる。また、温度制御部3を粘度計2の本体20の下方に置ける程度に小型化することにより、余分な場所を取らなく済む。温度制御部3が内蔵する温度制御ユニットは、小型化できるものであれば、特に限定されないが、例えば、ペルチェ素子を用いることにより、応答の早い温度制御ができるようになる。このような温度制御は、フロンを使用しなく済むため、環境にもやさしい。
【0024】
一方で、サンプルカップ31を温度制御部3に一体化するには課題もある。すなわち、サンプルカップを用いる閉鎖型の粘度計装置は、周囲の影響を受けないようにサンプルカップを閉鎖する必要がある。従来の粘度計装置は、サンプルカップ単体を手で持って粘度計に取り付けるため、簡単に閉鎖できる。これに対して、本実施形態では、サンプルカップ31が温度制御部3と一体化しているため、サンプルカップ31を閉鎖するには、まず、粘度計2と温度制御部3の平面位置を合わせなければならない。
【0025】
この一体化の前提となる課題を解決するため、本実施形態の粘度計装置1は、位置合わせ機構として、粘度計2に上下動可能なガイドピン23を備え、温度制御部3にこれと対応する篏合部33を備えるとともに温度制御部3を平面移動可能な構成とする。これにより、粘度計装置1は、温度制御部3を粘度計2の閉鎖部22の下方に置き、ガイドピン23を下降させながら篏合部33に挿通させるだけで、閉鎖部22に対するサンプルカップ31の平面位置を合わせられるようになる。
【0026】
このように構成することで、粘度計装置1は、サンプルカップ31を温度制御部3に一体化するための課題を解決し、サンプルカップ31の温度制御をより簡便に実現できる。以下、一例を詳細に説明する。
【0027】
図3は、
図1の粘度計を示す斜視図である。ここでは、粘度計2について、より具体的に説明する。
【0028】
粘度計2は、本体20と、本体20を支持する支持部24と、支持部24を支持するベース部25とを備える。
【0029】
本体20は、ロータ21と、フレームの下端よりも下方に突出するように配置される閉鎖部22及び一対のガイドピン23とを備える。
【0030】
ロータ21は、一例として、円錐ロータ(コーン形ロータ)である。ロータ21は、閉鎖部22よりも下方に突出するように配置される。ロータ21は、好ましくは、ロータ軸に着脱可能に固定される。本体20のロータ21以外の粘度検出機構は、従来技術を適宜用いることができ、ここでは詳細な説明を省略する。
【0031】
閉鎖部22は、下端部がロータ21よりも上方に配置され、ロータ21よりも大径である。閉鎖部22は、サンプルカップ31を閉鎖可能なものであれば、特に限定されない。閉鎖部22は、使用状態では、下端部が温度制御部3の閉鎖受部と当接し、サンプルカップ31を周囲の影響を受けないように閉鎖する。閉鎖部22は、一例として、収容部221と、ギャップ調整部222とを有する。なお、閉鎖部22は、収容部221及びギャップ調整部222のうちの一方のみを有してもよいし、これに代えて又は更に他の構成を有してもよい。
【0032】
収容部221は筒状の部材で、ロータ軸等を収容する部分である。収容部221は、ロータ軸等を間接的に収容する外筒部材で、その内側にロータ軸等を収容するハウジングが収容されてもよい。
【0033】
ギャップ調整部222は、ロータ21とサンプルカップ31の底部の内底面とのギャップを調整する部分である。ギャップ調整部222は、例えば、略筒状の部材で内周面に雌ねじ溝を有する。ギャップ調整部222は、例えば、収容部221の下端部外周面に有する雄ねじ溝と螺合して、収容部221の下端部に取り付けられる。
【0034】
一対のガイドピン23は、一例として、本体20のフレームの後端側に、左右両端寄りの位置に左右対称に設けられる。ガイドピン23は、先細りの先端部231を有する棒状の部材で、一例として横断面が円形で、上下に垂直に延びるように基端部が本体20に固定される。ガイドピン23は、先端部231がロータ21よりも下方に位置する。先端部231は、好ましくは、先端が丸みを有する形状である。
【0035】
支持部24は、本体20を上下動可能に支持する部分である。支持部24は、一例として、支柱241と、上下移動部242と、下降規制部243とを有する。
【0036】
支柱241は、一例として、横断面が略矩形の角棒状部材である。支柱241は、上下に垂直に延びるように、下端がベース部25に固定される。
【0037】
上下移動部242は、本体20を一体に上下動させるための部分である。上下移動部242は、一例として、水平面(XZ面)上で延びる取付板2421と、取付板2421の下端面に設けられる移動部2422と、摘み部2423とを有する。本体20は、取付板2421に取り付けられ、摘み部2423を回すと、移動部2422により支柱241に沿って上下移動するようになっている。移動部2422の構成は、特に限定されず、移動部2422が有するローラが支柱241の支柱面を転動するものでもよいし、移動部2422が有するピニオンが支柱241に取り付けられたラックと噛み合うものでもよいし、他の構成でもよい。上下移動部242により、一対のガイドピン23は、ロータ21及び閉鎖部22とともに上下動できる。
【0038】
下降規制部243は、本体20の下降幅を規制する部分である。下降規制部243は、支柱241に取り付けられ、上下移動部242が下降する最下端を規定する。下降規制部243は、一例として、支柱241の右(又は左)側面から右(又は左)方に延びるように配置され、移動部2422の下端と当接して下降を制止する(ストッパともいう)。
【0039】
ベース部25は、一例として、ベース枠251と、載置部252と、平面規制部253とを有する。ベース部25は、ベース枠251の下端に着地部254を有してもよい。
【0040】
ベース枠251は、例えば、前方側が開口し、後方側が閉じている、略U字形状の部材である。ベース枠251は、両端部及び中央部後方側に着地部254を有してもよい。ベース枠251の例えば中央部前方側に支柱241が固定される。
【0041】
載置部252は、平板状の部材で、ベース枠251の内周と対応した形状ないし大きさを有する。載置部252は、ベース枠251の内周を下方から覆って恰もその底部を成すように設けられる。温度制御部3は、好ましくは、載置部252の上面に置かれる。なお、粘度計2は、載置部252を有せず、温度制御部3が、粘度計2が置かれる面にそのままベース枠251内に置かれてもよい。
【0042】
平面規制部253は、温度制御部3の平面移動範囲を規制する部分である。平面規制部253は、一例として、角丸の矩形の枠状部材である。平面規制部253は、所定の厚み(高さ)を有し、温度制御部3の通常の平面移動では乗り越えられないようになっている。平面規制部253は、ネジやボルト等の締結部材で載置部252に固定される。平面規制部253は、粘度計2が載置部252を有しない場合は、設けなくてもよいし、粘度計2の載置面に着脱可能に設けられてもよい。
【0043】
図4は
図1の温度制御部を示す斜視図で、
図5はその一例を示す断面図である。ここでは、温度制御部3についてより具体的に説明する。温度制御部3は、粘度計2のベース枠251、ないし平面規制部253内に収まる程度の大きさに構成される。
【0044】
温度制御部3は、一例として、本体30と、サンプルカップ31と、上板部32と、一対の篏合部33と、平面移動部34と、付勢部35と、一対の取手36と、を有する。
【0045】
本体30は、フレーム内に温度制御ユニット39を内蔵している。温度制御ユニット39は、小型化できるものであれば、特に限定されない。一例として、温度制御ユニット39は、ペルチェ素子を用いて温度制御を行うものである。温度制御に用いるペルチェ素子は、直流電流を流すと一方の面から反対面に熱が移動し、片面は発熱して温度が上がり、反対面は吸熱して温度が下がる。ペルチェ素子を用いる温度制御は、流す電流の方向や強さを切り替えることで、加熱・冷却の両方の温度制御が可能で、応答が早い。本体30は、さらに、制御部、放熱用のファンやヒートシンク等を内蔵している。本体30は、有線(USB等)または無線(赤外線等)で、粘度計2の本体20の制御部や制御ソフトがインストールされたPC等のコンピュータと通信するようになっている。
【0046】
サンプルカップ31は、有底の筒状部材で、縁部311以外の部分は、本体30内に埋没している。サンプルカップ31は、一例として、埋没部分全体が温度制御され、所定温度に迅速に達するようになっている。サンプルカップ31は、一例として、底部のみが温度制御されてもよい。サンプルカップ31は、本体30に着脱不能に取り付けられる。サンプルカップ31は、温度制御やその他の機能、効果に支障がなければ、着脱可能に取り付けられてもよい。
【0047】
上板部32は、本体30の上面を覆う板状部材である。上板部32は、中央にサンプルカップ31の外周より大径の孔部321を有し、孔部321からサンプルカップ31の縁部311が露出している。好ましくは、サンプルカップ31の取付面の縁部311の周りの部分も孔部321の内周から露出している。この縁部311の周りの取付面部分は、縁部311及び上板部32のいずれよりも低く、段差が形成され、環状の有底の溝部301が形成される。
【0048】
温度制御部3は、一例として、溝部301が閉鎖部22の下端と当接して閉鎖受部となる。一例として、サンプルカップ31の縁部311が閉鎖部22と当接して閉鎖受部となってもよい。一例として、上板部32、より具体的には孔部321の周縁部が閉鎖部22と当接して閉鎖受部となってもよい。言い換えれば、温度制御部3の閉鎖受部は、溝部301、縁部311及び孔部321の周縁部のうちの一または二以上で構成される。
【0049】
好ましくは、閉鎖部22のギャップ調整部222の下端が溝部301と当接し、収容部221の下端がサンプルカップ31の縁部311と当接する。これにより、ギャップ調整部222によるロータ21とサンプルカップ31の内底面とのギャップの調整が容易となる。
【0050】
一対の篏合部33は、一例として、温度制御部3のフレームの後方に左右対称に設けられる。篏合部33は、粘度計2のガイドピン23が下降しながら挿通できるものであればよく、構成は特に限定されない。篏合部33の具体例は、後述する。
【0051】
平面移動部34は、温度制御部3を一体に平面移動させるための部分である。平面移動部34は、二次元的な(X・Z方向)移動、言い換えれば水平面においてスライド可能であればよく、構成は特に限定されない。平面移動部34は、温度制御部3の下端面が摺動可能に構成され、この下端面により構成されてもよい。平面移動部34は、温度制御部3の下端に取り付けられた摺動可能なプレートやローラにより構成されてもよい。平面移動部34は、好ましくは、図示のように、温度制御部3の下端に取り付けられた4つのボールキャスタにより構成される。ボールキャスタは、載置面において平行移動できればよく、3つでもよいし、5以上でもよい。
【0052】
付勢部35は、温度制御部3を粘度計2の本体20に密着させる部分である。
図5に示すように、付勢部35は、一例として、本体30のフレームの上面を上方に付勢する複数のバネを含んで構成される。温度制御部3は、一例として、本体30のフレームの上面と下面を接続する複数の足部37を有し、足部37の下方寄りの部分に付勢部35が組み込まれ、付勢部35が足部37の筒状部を介してフレームの上面を弾発的に上方に押し付けられるようになっている。
【0053】
図6は、篏合部の一例を説明するための図で、(a)
図4の一部拡大図、(b)分解して上方から観察した図である。ここでは、篏合部33についてより具体的に説明する。一例として、篏合部33は、二段構造に構成され、調整部331と、調整部331に重なるT字状のブッシュ332とを有する。ブッシュ332は、締結部材(例えば、ボルト及びナット、またはねじ等)により調整部331に調整可能に固定される。
【0054】
調整部331は、一例として、温度制御部3のフレームの上面の後端の、左右両端寄りの部分に、後方に延出するように左右対称に設けられる。調整部331は、
図6(b)に示すように、フレームの上面と一体に形成されてもよいし、別体に形成されて取り付けられてもよい。説明の便宜上、以下では、別体に図示し説明する。
【0055】
図7は、篏合部の一例を説明するための図で、(a)上方から観察した全体、(b)上方から観察した調整部、(c)上方から観察したブッシュ、(d)側方から観察した全体、(e)分解状態の縦断面(YZ断面)、を示す図である。
【0056】
調整部331は、平板状で、ブッシュ332を挿通させるための孔部3311と、ブッシュ332を締結するための一対の孔部3312とを有する。孔部3311及び孔部3312は、いずれも、貫通孔で、内径がブッシュ332の対応部分よりも大径に形成され、ブッシュ332の平面(X・Z方向の)位置を調整できるようになっている。
【0057】
ブッシュ332は、平板状の接続部3321と、接続部3321から下方に垂直に突出する筒部3322と、接続部3321と筒部3322とを貫通する位置決め部3323とを有する。ブッシュ332は、筒部3322が調整部331の孔部3311を挿通し、接続部3321が調整部331の上面に留まって上段として重なる。
【0058】
接続部3321は、位置決め部3323の両側に、調整部331に締結するための一対の孔部3324を有する。孔部3324は、貫通孔で、内径が調整部331の孔部3312の内径より小さい。孔部3324は、好ましくは、ボルトやネジの頭部が出っ張らないザグリ孔である。
【0059】
筒部3322は、
図7(e)に示すように、外径(d2)が調整部331の孔部3311の内径(d1)より小さい。このように構成することで、孔部3311の内径d1内で筒部3322の位置を調整し、これにより位置決め部3323の平面(X・Z方向の)位置が調整できるようになる。
【0060】
位置決め部3323は、粘度計2の本体20に対する温度制御部3のX・Z方向の位置を決めるためのものである。位置決め部3323は、一例として、ガイドピン23と同様に横断面が円形である。位置決め部3323の直径は、ガイドピン23の本体(先端部231を除く部分)の直径とほぼ一致し、ガイドピン23が挿入された状態で両者の中心はほぼ一致する。
【0061】
位置決め部3323は、入口となる誘導面3325が傾斜面(断面視テーパ状)である。
図7(c)に示すように、誘導面3325は、上端半径と下端半径との差を横幅Pとする環状の傾斜面である。誘導面3325は、高さが、例えば接続部3321の高さの1/3程度から同等程度である。誘導面3325は、好ましくは、ガイドピン23が挿入しやすいように、上端及び下端の角部分に丸みを有する。
【0062】
<温度制御部の呼込み(平面位置合わせ)>
粘度計装置1は、篏合部33の位置決め部3323に、粘度計2に実装されたガイドピン23を挿入することにより、温度制御部3をスライドさせて定位置に呼び込む。言い換えれば、上下動可能なガイドピン23が下降しながら、平面移動可能な温度制御部3の位置決め部3323を挿通することにより、閉鎖部22に対してサンプルカップ31が位置決めされる。
【0063】
図8は、ガイドピン及び篏合部の一例を説明するための図である。
【0064】
粘度計装置1を使用する際は、測定者によって温度制御部3を粘度計2の本体20の下方に載置するが、目測により、篏合部33をガイドピン23の真下の定位置(平面位置が一致)に置くことは容易ではない。
【0065】
篏合部33の誘導面3325は、この位置合わせを容易にするためのものである。図示のように、下降するガイドピン23は、先端部231が誘導面3325に接すれば、温度制御部3を定位置に寄せながら誘導面3325に沿って下方に滑り込むことができるので、目測の位置が定位置からずれても定位置に呼び込むことができる。
【0066】
図9は、平面規制部及び平面移動部の一例を説明するための図である。
【0067】
温度制御部3を定位置に呼び込むには、温度制御部3がスライド容易であることが望ましい。一方で、ガイドピン23が挿入されていない状態では、温度制御部3は、簡単に移動してしまうため、ガイドピン23が篏合部33に挿入できない場合もある。
【0068】
平面規制部253は、温度制御部3の平面移動範囲を規制して、呼込みを容易にする。図示のように、好ましくは、平面規制部253の内周2531は、横幅及び奥行のいずれも、平面移動部34より幅Q分だけ幅広である。幅Qは、誘導面3325に対応して設定され、ガイドピン23が誘導面3325に接することが可能な範囲に設定される。
【0069】
粘度計装置1は、温度制御部3を平面規制部253の内周2531内に置けば、下降するガイドピン23が常に篏合部33を挿通し、常に温度制御部3を定位置に呼び込むことができる。
【0070】
粘度計装置1は、経年使用によりずれや変形等が発生することも考えられるが、篏合部33における位置決め部3323の位置が調整可能であるため、このような場合も対応できる。
【0071】
【0072】
図10に示すように、粘度計装置1を使用する際は、まず、温度制御部3をベース部25のベース枠251内、より具体的には、載置部252上の平面規制部253内に置く。
【0073】
図11に示すように、粘度計2の上下移動部242によりロータ21及び閉鎖部22とともにガイドピン23を下降させると、ガイドピン23が篏合部33を挿通しながら、温度制御部3を定位置に呼込む。
【0074】
図12に示すように、閉鎖部22が温度制御部3の閉鎖受部と当接し、サンプルカップ31を周囲の影響を受けないように閉鎖する。
【0075】
<温度制御部と粘度計の密着>
粘度計とサンプルカップの密着度は、測定粘度値に影響するため、サンプルカップと粘度計は、毎回同一状態に密着させることが望ましい。
【0076】
図12に示すように、粘度計装置1は、粘度計2を下降規制部243まで下降させることで、下降幅を常に一定にすることができる。また、温度制御部3が付勢部35を備え、粘度計2の本体20を押し返すことにより、粘度計2の本体20と温度制御部3の閉鎖受部とを密着させることができる。これにより、粘度計装置1は、ロータ21の沈み込む量が常に一定になり、閉鎖部22と閉鎖受部が常に同じ力で密着するようになる。
【0077】
なお、以上では、ロータとサンプルカップとを有する回転式粘度計装置を例に説明したが、本願発明はそれ以外の粘度計装置に適用されてもよい。本願発明は、上記構成の一部のみを含む粘度計装置として構成されてもよい。
【0078】
以上、本発明の実施形態の例を説明したが、これらは本発明の一例に過ぎず、本発明はこれらに限定されない。本発明には、以上の各実施形態やその変形例を組み合わせた形態や、さらに様々な変形例が含まれる。請求の範囲に規定された内容及びその均等物から導き出される本発明の概念的な思想と趣旨を逸脱しない範囲で種々の追加、変更及び部分的削除が可能である。
【符号の説明】
【0079】
1…粘度計装置、2…粘度計、20…本体、21…ロータ、22…閉鎖部、23…ガイドピン、24…支持部、241…支柱、242…上下移動部、243…下降規制部、25…ベース部、251…ベース枠、252…載置部、253…平面規制部、3…温度制御部、30…本体、31…サンプルカップ、32…上板部、33…篏合部、331…調整部、332…ブッシュ、3323…位置決め部、34…平面移動部、35…付勢部。