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特開2024-30832排ガス浄化用触媒およびこれを用いた触媒体
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024030832
(43)【公開日】2024-03-07
(54)【発明の名称】排ガス浄化用触媒およびこれを用いた触媒体
(51)【国際特許分類】
   B01J 23/63 20060101AFI20240229BHJP
   B01J 35/57 20240101ALI20240229BHJP
   B01J 35/51 20240101ALI20240229BHJP
   B01D 53/94 20060101ALI20240229BHJP
【FI】
B01J23/63 A
B01J35/04 301L
B01J35/08 Z ZAB
B01D53/94 222
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022134003
(22)【出願日】2022-08-25
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2024-02-13
(71)【出願人】
【識別番号】000104607
【氏名又は名称】株式会社キャタラー
(74)【代理人】
【識別番号】100117606
【弁理士】
【氏名又は名称】安部 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100130605
【弁理士】
【氏名又は名称】天野 浩治
(72)【発明者】
【氏名】谷 斗志生
(72)【発明者】
【氏名】大石 隼輔
(72)【発明者】
【氏名】冨樫 ひろ美
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 正尚
【テーマコード(参考)】
4D148
4G169
【Fターム(参考)】
4D148AA06
4D148AB03
4D148BA03X
4D148BA08X
4D148BA18X
4D148BA19X
4D148BA30Y
4D148BA31Y
4D148BA33X
4D148BB02
4G169AA03
4G169BA01A
4G169BA01B
4G169BA05A
4G169BA05B
4G169BA13B
4G169BB06A
4G169BB06B
4G169BC13B
4G169BC32A
4G169BC33A
4G169BC42A
4G169BC42B
4G169BC69A
4G169BC71A
4G169BC71B
4G169BC72A
4G169BC72B
4G169BC75A
4G169CA03
4G169DA06
4G169EA02Y
4G169EA19
4G169EB12Y
4G169EB14Y
4G169EB15Y
4G169EB18X
4G169EB18Y
4G169EC06Y
4G169EC07Y
4G169EC28
4G169EC29
4G169EE01
4G169EE06
4G169EE09
4G169FB24
(57)【要約】
【課題】高温に長時間晒された場合でも、Rhの浄化活性が高い排ガス浄化用触媒を提供する。
【解決手段】ここに開示される排ガス浄化用触媒は、母材と、前記母材に支持された触媒貴金属と、を含む。前記母材は、La含有アルミナ粒子と、前記アルミナ粒子の表面に配置されたジルコニアの被覆とを含む。前記触媒貴金属は、少なくともRhを含有する。前記母材におけるジルコニアの質量割合は、5質量%以上である。集束イオンビーム走査型電子顕微鏡によって求まる前記ジルコニアの被覆の平均粒径は、100nm未満である。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
母材と、
前記母材に支持された触媒貴金属と、
を含む排ガス浄化用触媒であって、
前記母材は、La含有アルミナ粒子と、前記アルミナ粒子の表面に配置されたジルコニアの被覆とを含み、
前記触媒貴金属は、少なくともRhを含有し、
前記母材におけるジルコニアの質量割合が5質量%以上であり、
集束イオンビーム走査型電子顕微鏡によって求まる前記ジルコニアの被覆の平均粒径が、100nm未満である、
排ガス浄化用触媒。
【請求項2】
前記アルミナ粒子の表面から中心に向かって、電解放出型電子プローブアナライザを用いてZrの定量ライン分析を行って、表面を0%、中心を100%として表面から中心までの深さを表した場合に、0%~20%の範囲内にZr強度のピークトップが存在する、請求項1に記載の排ガス浄化用触媒。
【請求項3】
前記母材におけるジルコニアの前記質量割合が、9質量%以上30質量%以下である、請求項1に記載の排ガス浄化用触媒。
【請求項4】
前記ジルコニアの被覆の平均粒径が、5nm以上80nm以下である、請求項1に記載の排ガス浄化用触媒。
【請求項5】
基材と、前記基材に設けられている触媒層と、を備え、
前記触媒層が、請求項1に記載の排ガス浄化用触媒を含有する、
排ガス浄化用触媒体。
【請求項6】
前記触媒層が、前記基材側に位置する第1部分触媒層と、前記触媒層の表層部側に位置する第2部分触媒層と、を備え、
前記第1部分触媒層が、触媒貴金属がPtおよびPdのうちの少なくとも一方である排ガス浄化用触媒を含有し、
前記第2部分触媒層が、請求項1に記載の排ガス浄化用触媒を含有する、請求項5に記載の排ガス浄化用触媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、排ガス浄化用触媒に関する。本発明はまた、これを用いた排ガス浄化用触媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車エンジン等の内燃機関から排出される排ガスには、炭化水素(HC)、一酸化炭素(CO)、窒素酸化物(NOx)等の有害成分が含まれる。これら有害成分を排ガス中から効率よく反応・除去するために、従来から、アルミナ等の母材に触媒貴金属を担持させた排ガス浄化用触媒が利用されている。NOxの浄化には、NOx還元性能の高いRhが触媒貴金属として主に用いられている。
【0003】
Rhを担持する母材として、ジルコニアの被覆を有するアルミナ粒子を用いる技術が知られている(例えば、特許文献1および2参照)。特許文献1には、母材のアルミナ粒子にジルコニアの被覆を設けた場合には、ジルコニアの被覆によって、Rhがアルミナに固溶するのを抑制でき、排ガス浄化用触媒の耐久性が向上することが記載されている。特許文献2では、母材として用いられるジルコニアの被覆を有するアルミナ粒子は、共沈法によって作製されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005-103410号公報
【特許文献2】特開2007-301530号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明者らがジルコニアの被覆を有するアルミナ粒子にRhを担持させた排ガス浄化用触媒について鋭意検討した結果、上記従来技術においては、高温に長時間晒された際に、Rhの浄化活性が低下するという問題があることを見出した。
【0006】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、高温に長時間晒された場合でも、Rhの浄化活性が高い排ガス浄化用触媒を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らが鋭意検討した結果、母材であるジルコニアの被覆を有するアルミナの製造をスプレードライ法によって行うことにより、ジルコニアの被覆を微細化することに成功した。そして、微細化されたジルコニアの被覆を有するアルミナ母材にRhを担持させた場合には、高温に長時間晒された場合でも、Rhの浄化活性が十分に高くなることを見出した。
【0008】
すなわち、ここに開示される排ガス浄化用触媒[1]は、母材と、前記母材に支持された触媒貴金属と、を含む。前記母材は、La含有アルミナ粒子と、前記アルミナ粒子の表面に配置されたジルコニアの被覆とを含む。前記触媒貴金属は、少なくともRhを含有する。前記母材におけるジルコニアの質量割合は、5質量%以上である。集束イオンビーム走査型電子顕微鏡によって求まる前記ジルコニアの被覆の平均粒径は、100nm未満である。
【0009】
本発明者らの知見によれば、上記従来の排ガス浄化用触媒では、母材のジルコニアの被覆の平均粒径は、数百nmあるいはそれ以上であり、そのため、高温に長期晒された際に起こる、Rhのアルミナへの固溶の抑制が不十分である。そのため、高温に長時間晒された際に、Rhの浄化活性の低下が起こる。しかしながら、ここに開示される排ガス浄化用触媒[1]は、ジルコニアを所定量含み、かつジルコニアの被覆の平均粒径が小さい。よって、ここに開示される排ガス浄化用触媒[1]においては、ジルコニアの被覆がアルミナ粒子の表面に高度に分散している。そのため、ジルコニアの被覆上または近傍に存在しているRhの割合が高くなり、高温に長時間晒された際のRhの母材のアルミナへの固溶を、ジルコニアの被覆によって従来よりも高度に抑制することができる。よって、ここに開示される排ガス浄化用触媒[1]では、高温に長時間晒された場合でも、Rhの浄化活性が高くなる。
【0010】
ここに開示される排ガス浄化用触媒[2]は、上記排ガス浄化用触媒[1]において、前記アルミナ粒子の表面から中心に向かって、電解放出型電子プローブアナライザを用いてZrの定量ライン分析を行って、表面を0%、中心を100%として表面から中心までの深さを表した場合に、0%~20%の範囲内にZr強度のピークトップが存在する。
【0011】
このような構成によれば、ジルコニアの被覆上または近傍に存在しているRhの割合がより高くなり、高温に長期晒された際のRhの母材のアルミナへの固溶をさらに高度に抑制することができる。よって、高温に長時間晒された場合でも、Rhの浄化活性がより高くなる。
【0012】
ここに開示される排ガス浄化用触媒[3]は、上記排ガス浄化用触媒[1]または[2]において、前記母材におけるジルコニアの前記質量割合が、9質量%以上30質量%以下である。このとき、高温に長時間晒された場合のRhの浄化活性が特に高くなる。
【0013】
ここに開示される排ガス浄化用触媒[4]は、上記排ガス浄化用触媒[1]~[3]のいずれかにおいて、前記ジルコニアの被覆の平均粒径が、5nm以上80nm以下である。このとき、高温に長時間晒された場合のRhの浄化活性が特に高くなる。
【0014】
ここに開示される排ガス浄化用触媒体[5]は、基材と、前記基材に設けられている触媒層と、を備える。前記触媒層が、上記排ガス浄化用触媒[1]~[4]のいずれかを含有する。
【0015】
このような構成によれば、高温に長時間晒された場合でも、Rhの浄化活性が高い排ガス浄化用触媒体を提供することができる。
【0016】
ここに開示される排ガス浄化用触媒体[6]は、上記排ガス浄化用触媒体[5]において、前記触媒層が、前記基材側に位置する第1部分触媒層と、前記触媒層の表層部側に位置する第2部分触媒層と、を備える。前記第1部分触媒層が、触媒貴金属がPtおよびPdのうちの少なくとも一方である排ガス浄化用触媒を含有する。前記第2部分触媒層が、上記排ガス浄化用触媒[1]~[4]のいずれかを含有する。
【0017】
このような構成によれば、排ガスに含まれるNOxの浄化性能が特に高いだけでなく、HCおよびCOの浄化性能も特に高い排ガス浄化用触媒体を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本実施形態に係る排ガス浄化用触媒を模式的に示す断面図である。
図2】本実施形態に係る排ガス浄化システムを示す模式図である。
図3図2の排ガス浄化用触媒体を模式的に示す斜視図である。
図4図3の排ガス浄化用触媒体を筒軸方向に切断した部分断面図である。
図5図4の排ガス浄化用触媒体の変形例の構成を示す部分断面図である。
図6】測定倍率300,000倍で観察した実施例4の排ガス浄化用触媒のFIB-SEM画像である。
図7】測定倍率3,000倍で観察した比較例4の排ガス浄化用触媒のFIB-SEM画像である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面を参照しつつ本発明の好適な実施形態を説明する。なお、本明細書において特に言及している事項以外の事柄であって本発明の実施に必要な事柄は、当該分野における従来技術に基づく当業者の設計事項として把握され得る。本発明は、本明細書に開示されている内容と当該分野における技術常識とに基づいて実施することができる。また、以下の図面において、同じ作用を奏する部材・部位には同じ符号を付し、重複する説明は省略又は簡略化することがある。各図における寸法関係(長さ、幅、厚み等)は、実際の寸法関係を必ずしも反映するものではない。また、本明細書において範囲を示す「A~B」(A,Bは任意の数値)の表記は、A以上B以下の意と共に、「好ましくはAより大きい」および「好ましくはBより小さい」の意を包含する。
【0020】
≪排ガス浄化用触媒≫
図1は、ここに開示される排ガス浄化用触媒の一例の排ガス浄化用触媒100の模式断面図である。排ガス浄化用触媒100は、図1に示すように、母材30と、触媒貴金属40と、を含む。
【0021】
触媒貴金属40は、少なくともRhを含有する。触媒貴金属40がRhを含有することにより、排ガス中のNOxを効率よく浄化することができる。触媒貴金属40は、Rh以外の貴金属(すなわち、金(Au)、銀(Ag)、白金(Pt)、パラジウム(Pd)、イリジウム(Ir)、ルテニウム(Ru)、オスミウム(Os))を含有していてもよい。触媒貴金属40に占めるRhの量は、好ましくは80質量%であり、より好ましくは90質量%であり、さらに好ましくは95質量%であり、最も好ましくは100質量%(すなわち、触媒貴金属40はRhのみ)である。
【0022】
触媒貴金属40は、典型的には、粒子状である。触媒貴金属40の平均粒径は、特に限定されない。排ガスとの接触面積を高める観点から、触媒貴金属40は、十分に小さい粒径の微粒子であることが好ましい。触媒貴金属40の平均粒径は、例えば15nm以下であり、好ましくは10nm以下であり、より好ましくは5nm以下である。触媒貴金属40の平均粒径の下限は特に限定されず、触媒貴金属40の平均粒径は、例えば1nm以上であってよい。なお、触媒貴金属40の平均粒径は、透過電子顕微鏡(TEM)観察により求められる、50個以上の触媒金属の粒径の平均値として求めることができる。
【0023】
触媒貴金属40の担持量は、特に限定されず、排ガス浄化用触媒100を用いた排ガス浄化用触媒体の設計に応じて適宜決定することができる。触媒貴金属40の担持量は、母材30の質量に対し、例えば0.01質量%以上、好ましくは0.05質量%以上、より好ましくは0.1質量%以上である。また、触媒貴金属40の担持量は、母材30の質量に対し、例えば10質量%以下、好ましくは5質量%以下、より好ましくは3質量%以下である。
【0024】
母材30は、図示されるように、La含有アルミナ粒子32(単に「アルミナ粒子32」とも称する)と、アルミナ粒子32の表面に配置されたジルコニアの被覆34とを含む。言い換えると、排ガス浄化用触媒100の母材30は、ジルコニアの被覆34を有するLa含有アルミナ粒子32である。
【0025】
母材30の平均粒径は特に限定されない。母材30の平均粒径は、例えば0.5μm以上であり、好ましくは1μm以上であり、より好ましくは3μm以上である。母材30の平均粒径は、例えば200μm以下であり、好ましくは100μm以下であり、より好ましくは60μm以下である。なお、母材30の平均粒径は、レーザ回折・散乱法に基づく測定によってメジアン径(D50:体積基準)として求めることができる。
【0026】
アルミナ粒子32はLaを含有する。よって、アルミナ粒子32は、ランタン-アルミナ複合酸化物の粒子である。アルミナ粒子32がLaを含有することで、排ガス浄化用触媒100の耐熱性が向上する。また、アルミナ粒子32がLaを含有することも、高温に長時間晒された際のRhのアルミナへの固溶抑制に寄与する。La含有アルミナ粒子32の構成は、三元触媒の担体として用いられる公知のLa含有アルミナ粒子と同じまたは類似であってよい。アルミナ粒子32におけるLaの含有量は、特に限定されず、La換算で、例えば0.1質量%以上であり、好ましくは0.5質量%以上であり、より好ましくは1質量%以上である。また、アルミナ粒子32におけるLaの含有量は、La換算で、例えば30質量%以下であり、好ましくは20質量%以下であり、より好ましくは10質量%以下である。アルミナ粒子32におけるLaの含有量は、蛍光X線分析装置(XRF)を用いた測定によって求めることができる。
【0027】
アルミナ粒子32は、本発明の効果を顕著に阻害しない範囲内(例えば、10質量%以下)で、AlおよびLa以外の成分(例、Pr、Nd、Y等のLa以外の希土類元素の酸化物、好ましくはY)をさらに含有していてもよい。
【0028】
アルミナ粒子32の形状は特に限定されず、略球状、略楕円球状、不定形等であってよい。アルミナ粒子32は、通常、一次粒子が凝集した二次粒子である。アルミナ粒子32が二次粒子である場合には、大きな比表面積を確保することができる。しかしながら、アルミナ粒子32は、一次粒子であってもよいし、一次粒子と二次粒子の混合物であってもよい。
【0029】
ジルコニア(ZrO)の被覆34は、微細な粒状であり、アルミナ粒子32の表面上に点在している。なお、ジルコニアの被覆34の形状、個数は、図示されたものに限られない。
【0030】
被覆34の大きさに関し、集束イオンビーム走査型電子顕微鏡(FIB-SEM)によって求まる平均粒径が、100nm未満である。この平均粒径は、SEM画像から任意に選ばれる6個以上の被覆の円相当径(言い換えると、ヘイウッド径)を測定し、その平均値として求めることができる。なお、平均粒径を求めるためには、少なくとも300,000倍の測定倍率で、SEM観察を行うことが好ましい。円相当径および平均値の算出には、画像解析ソフト(例、ImageJなど)を使用してよい。
【0031】
また、排ガス浄化用触媒100において、母材30における(すなわち、母材30の質量(アルミナ粒子32と被覆34の合計質量)に対する)ジルコニア(ZrO)の質量割合が5質量%以上である。ジルコニアの被覆34が、平均粒径が100nm未満であって、かつジルコニアが母材30において5質量%以上の質量割合で存在することにより、ジルコニアの被覆34が、アルミナ粒子32の表面上に高度に分散し、多くのRhが、ジルコニアの被覆34に接してまたは近傍に存在できるようになる。その結果、排ガス浄化用触媒100が高温に長時間晒された際に、ジルコニアの被覆34によって、Rhがアルミナに固溶することを高度に抑制することができる。その結果、高温に長時間晒された場合でも、Rhの浄化活性を高く保つことができる。
【0032】
ジルコニアの被覆34の分散度がより高くなり、上記のRhの浄化活性がより高くなることから、ジルコニアの被覆34の平均粒径は、好ましくは80nm以下であり、より好ましくは70nm以下であり、さらに好ましくは60nm以下であり、特に好ましくは50nm以下である。ジルコニアの被覆34の平均粒径の下限は、技術的限界によって定まり、例えば、5nm、10nm、15nm、または20nmであり得る。
【0033】
また、ジルコニアの被覆34の分散度がより高くなり、上記のRhの浄化活性がより高くなることから、排ガス浄化用触媒100において、母材30におけるジルコニア(ZrO)の質量割合は、好ましくは9質量%以上であり、より好ましくは14質量%以上であり、さらに好ましくは18質量%以上であり、最も好ましくは20質量%以上である。一方、母材30におけるジルコニアの質量割合は、好ましくは30質量%以下であり、より好ましくは28質量%以下であり、さらに好ましくは25質量%以下であり、最も好ましくは22質量%以下である。なお、母材30におけるジルコニアの質量割合は、蛍光X線分析装置(XRF)を用いた測定によって求めることができる。
【0034】
ジルコニアの被覆34は、本発明の効果を顕著に阻害しない範囲内(例えば、10質量%以下)で、ZrO以外の成分を含有していてもよい。
【0035】
排ガス浄化用触媒100においては、典型的には、ジルコニアは、アルミナ粒子32の表面に被覆34として存在する。しかしながら、本発明の効果を阻害しない範囲内で、La含有アルミナ粒子32の内部にジルコニアが存在していてもよい。例えば、後述の方法によって排ガス浄化用触媒100を製造する場合、アルミナ粒子32が二次粒子状である場合には、一次粒子間に隙間があるため、後述のジルコニア前駆体が当該隙間より入り込んで、アルミナ粒子32の内部にジルコニアが生成し得る。
【0036】
排ガス浄化用触媒100においては、Rhのアルミナへの固溶をより高度に抑制する観点から、ジルコニアは、アルミナ粒子32の表面のみ、または表面およびその近傍に多く分布していることが好ましい。したがって、アルミナ粒子32の表面から中心に向かって、電解放出型電子プローブアナライザ(FE-EPMA)を用いてZrの定量ライン分析を行って、表面を0%、中心を100%として表面から中心までの深さを表した場合に、0%~20%(好ましくは0%~15%、より好ましくは0%~12%)の範囲内にZr強度のピークトップが存在することが好ましい。
【0037】
排ガス浄化用触媒100の製造方法には特に制限はない。排ガス浄化用触媒100は、例えば、次のようにして作製することができる。
【0038】
ジルコニアの被覆34の原料として、焼成によってジルコニアに変換され、かつ溶媒に可溶なジルコニア前駆体を使用する。溶媒として水を使用できることから、ジルコニア前駆体として好ましくは、オキシ硝酸ジルコニウムである。
【0039】
La含有アルミナ粒子32と、ジルコニア前駆体と、溶媒とを混合し、La含有アルミナ粒子32が分散し、ジルコニア前駆体が溶解した懸濁液を調製する工程と、この懸濁液を、噴霧乾燥装置を用いてスプレードライする工程とを実施する。スプレードライの条件は、スプレードライ法によって粒子を溶液の固形分で被覆するのに採用される公知の条件を参考にして決定してよい。これにより、アルミナ粒子32の表面にジルコニア前駆体を高度な分散状態で付着させることができる。溶媒を十分に除去するために、さらに乾燥を行ってもよい。お、懸濁液中のLa含有アルミナ粒子32およびジルコニア前駆体の濃度を変化させることにより、母材30におけるジルコニアの質量割合を調整することができる。また、スプレードライによれば、ジルコニアの被覆の粒径を100nm未満にすることができるが、スプレードライの条件を変化させることにより、ジルコニアの被覆の粒径をさらに調整することができる。
【0040】
次に、得られた粉体を焼成する工程を行う。この焼成により、ジルコニア前駆体をジルコニアの被覆34に変換する。焼成条件は、ジルコニア前駆体の種類に応じて適宜決定してよい。これにより、ジルコニアの被覆34を有するLa含有アルミナ粒子32(すなわち、母材30)を得ることができる。
【0041】
次に、Rhを含む触媒貴金属源(例えば、Rhをイオンとして含む溶液)と、母材30とを、分散媒中で混合し、得られた混合液を乾燥する工程と、得られた乾燥物を、焼成する工程を実施する。これにより、触媒貴金属40を、母材30に担持させることができる。すなわち、排ガス浄化用触媒100を得ることができる。
【0042】
排ガス浄化用触媒100は、高温に長時間晒された場合でも、Rhの浄化活性に優れている。したがって、排ガス浄化用触媒100は、高温に長時間晒された場合でも、NOxの浄化性能に優れている。そこで、排ガス浄化用触媒100を用いた排ガス浄化用触媒体の例、およびそれを含む排ガス浄化システムの例について以下説明する。
【0043】
≪排ガス浄化システム≫
図2は、排ガス浄化システム1の模式図である。排ガス浄化システム1は、内燃機関(エンジン)2と、排ガス浄化装置3と、エンジンコントロールユニット(Engine Control Unit:ECU)7と、を備えている。排ガス浄化システム1は、内燃機関2から排出される排ガスに含まれる有害成分、例えば、HC、CO、NOx等を、排ガス浄化装置3で浄化するように構成されている。なお、図2の矢印は排ガスの流動方向を示している。また、以下の説明では、排ガスの流れに沿って内燃機関2に近い側を上流側、内燃機関2から遠い側を下流側という。
【0044】
内燃機関2は、ここではガソリン車両のガソリンエンジンを主体として構成されている。ただし、内燃機関2は、ガソリン以外のエンジン、例えばディーゼルエンジンやハイブリッド車に搭載されるエンジン等であってもよい。内燃機関2は、燃焼室(図示せず)を備えている。燃焼室は、燃料タンク(図示せず)に接続されている。燃料タンクには、ここではガソリンが貯留されている。ただし、燃料タンクに貯留される燃料は、ディーゼル燃料(軽油)等であってもよい。燃焼室では、燃料タンクから供給された燃料が酸素と混合され、燃焼される。これにより、燃焼エネルギーが力学的エネルギーへと変換される。燃焼室は、排気ポート2aに連通している。排気ポート2aは、排ガス浄化装置3に連通している。燃焼された燃料ガスは、排ガスとなって排ガス浄化装置3に排出される。
【0045】
排ガス浄化装置3は、内燃機関2と連通する排気経路4と、圧力センサ8と、第1触媒体9と、第2触媒体10と、を備えている。排気経路4は、排ガスが流動する排ガス流路である。排気経路4は、ここではエキゾーストマニホールド5と排気管6とを備えている。エキゾーストマニホールド5の上流側の端部は、内燃機関2の排気ポート2aに連結されている。エキゾーストマニホールド5の下流側の端部は、排気管6に連結されている。排気管6の途中には、上流側から順に、第1触媒体9と第2触媒体10とが配置されている。ただし、第1触媒体9と第2触媒体10との配置は任意に可変であってよい。また、第1触媒体9と第2触媒体10との個数は特に限定されず、それぞれ複数個が設けられてもよい。また、第2触媒体10の下流側には、さらに第3触媒体が配置されていてもよい。
【0046】
第1触媒体9については従来と同様でよく、特に限定されない。第1触媒体9は、例えば、排ガスに含まれるPMを除去するディーゼルパティキュレートフィルタ(DPF:Diesel Particulate Filter);排ガスに含まれるHCやCOを浄化するディーゼル酸化触媒(DOC:Diesel Oxidation Catalyst);排ガスに含まれるHC、CO、NOxを同時に浄化する三元触媒;通常運転時に(リーン条件下で)NOxを吸蔵し、燃料を多めに噴射した時に(リッチ条件下で)HC、COを還元剤としてNOxを浄化するNOx吸着還元(NSR:NOx Storage-Reduction)触媒;等であってもよい。第1触媒体9は、例えば第2触媒体10に流入する排ガスの温度を上昇させる機能を有していてもよい。なお、第1触媒体9は必須の構成ではなく、他の実施形態において省略することもできる。
【0047】
第2触媒体10は、上述の排ガス浄化用触媒100を用いた排ガス浄化用触媒体の一例である。よって、第2触媒体10は、上述の排ガス浄化用触媒100を含んでおり、排ガス中の有害成分(特にNOx)を浄化する機能を有する。なお、以下では、第2触媒体10を「排ガス浄化用触媒体」ということがある。第2触媒体(排ガス浄化用触媒体)10の構成については、後に詳述する。
【0048】
ECU7は、内燃機関2と排ガス浄化装置3とを制御する。ECU7は、内燃機関2と、排ガス浄化装置3の各部位に設置されているセンサ(例えば、圧力センサ8や、温度センサ、酸素センサ等)とに、電気的に接続されている。なお、ECU7の構成については従来と同様でよく、特に限定されない。ECU7は、例えばプロセッサや集積回路である。ECU7は、入力ポート(図示せず)と出力ポート(図示せず)とを備えている。ECU7は、例えば、車両の運転状態や、内燃機関2から排出される排ガスの量、温度、圧力等の情報を受信する。ECU7は、センサで検知された情報(例えば、圧力センサ8で計測された圧力)を、入力ポートを介して受信する。ECU7は、例えば受信した情報に基づいて、出力ポートを介して制御信号を送信する。ECU7は、例えば内燃機関2の燃料噴射制御や点火制御、吸入空気量調節制御等の運転を制御する。ECU7は、例えば内燃機関2の運転状態や内燃機関2から排出される排ガスの量等に基づいて、排ガス浄化装置3の駆動と停止とを制御する。
【0049】
≪排ガス浄化用触媒体≫
図3は、排ガス浄化用触媒体10を模式的に示す斜視図である。排ガス浄化用触媒体10は、上述の排ガス浄化用触媒100を含む第2触媒体10である。なお、図3の矢印は、排ガスの流れを示している。図3では、相対的に内燃機関2に近い排気経路4の上流側が左側に表され、相対的に内燃機関2から遠い排気経路の下流側が右側に表されている。また、図3において、符号Xは、排ガス浄化用触媒体10の筒軸方向を表している。排ガス浄化用触媒体10は、筒軸方向Xが排ガスの流動方向に沿うように排気経路4に設置されている。筒軸方向Xは、排ガスの流動方向である。以下では、筒軸方向Xのうち、一の方向X1を上流側(排ガス流入側、フロント側ともいう。)といい、他の方向X2を下流側(排ガス流出側、リア側ともいう。)ということがある。ただし、これは説明の便宜上の方向に過ぎず、排ガス浄化用触媒体10の設置形態を何ら限定するものではない。
【0050】
排ガス浄化用触媒体10は、ストレートフロー構造の基材11と、触媒層20(図4参照)と、を備えている。排ガス浄化用触媒体10の一の方向X1の端部は排ガスの流入口10aであり、他の方向X2の端部は排ガスの流出口10bである。排ガス浄化用触媒体10の外形は、ここでは円筒形状である。ただし、排ガス浄化用触媒体10の外形は特に限定されず、例えば、楕円筒形状、多角筒形状、パイプ状、フォーム状、ペレット形状、繊維状等であってもよい。
【0051】
排ガス浄化用触媒体10は、基材11および触媒層20以外の部材を備えていてもよい。例えば、排ガス浄化用触媒体10は、触媒層20以外の層をさらに有していてもよい。
【0052】
基材11は、排ガス浄化用触媒体10の骨組みを構成するものである。基材11としては特に限定されず、従来のこの種の用途に用いられる種々の素材および形態のものが使用可能である。基材11は、例えば、コージェライト、チタン酸アルミニウム、炭化ケイ素等のセラミックスで構成されるセラミックス担体であってもよいし、ステンレス鋼(SUS)、Fe-Cr-Al系合金、Ni-Cr-Al系合金等で構成されるメタル担体であってもよい。図2に示すように、基材11は、ここではハニカム構造を有している。基材11は、筒軸方向Xに規則的に配列された複数のセル(空洞)12と、複数のセル12を仕切る隔壁(リブ)14と、を備えている。特に限定されるものではないが、基材11の体積(セル12の容積を含んだ見掛けの体積)は、概ね0.1~10L、例えば0.5~5Lであってもよい。また、基材11の筒軸方向Xに沿う平均長さ(全長)Lは、概ね10~500mm、例えば50~300mmであってもよい。
【0053】
セル12は、排ガスの流路となる。セル12は、筒軸方向Xに延びている。セル12は、基材11を筒軸方向Xに貫通する貫通孔である。セル12の形状、大きさ、数等は、例えば、排ガス浄化用触媒体10を流動する排ガスの流量や成分等を考慮して設計すればよい。セル12の筒軸方向Xに直交する断面の形状は特に限定されない。セル12の断面形状は、例えば、正方形、平行四辺形、長方形、台形等の四角形や、その他の多角形(例えば、三角形、六角形、八角形)、波形、円形等種々の幾何学形状であってよい。隔壁14は、セル12に面し、隣り合うセル12の間を区切っている。特に限定されるものではないが、隔壁14の平均厚み(表面に直交する方向の寸法。以下同じ。)は、機械的強度を向上する観点や圧損を低減する観点等から、概ね0.1~10mil(1milは、約25.4μm)、例えば0.2~5milであってもよい。隔壁14は、排ガスが通過可能なように多孔質であってもよい。
【0054】
触媒層20は、排ガス中の有害成分を浄化する反応場である。触媒層20は、多数の細孔(空隙)を有する多孔質体である。排ガス浄化用触媒体10に流入した排ガスは、排ガス浄化用触媒体10の流路内(セル12)を流動している間に触媒層20と接触する。これによって、排ガス中の有害成分が浄化される。
【0055】
図4は、排ガス浄化用触媒体10を筒軸方向Xに沿って切断した断面の一部を模式的に示す部分断面図である。触媒層20は、ここでは基材11の上、具体的には隔壁14の表面に設けられている。ただし、触媒層20は、その一部または全部が、隔壁14の内部に浸透していてもよい。
【0056】
触媒層20は、上述の排ガス浄化用触媒100を含有する。排ガス浄化用触媒100は、貴金属触媒40としてRhを含んでいるため、排ガス浄化用触媒体10は、排ガスに含まれるNOxを還元して、窒素に変換することができ、これにより排ガスを浄化することができる。特に、排ガス浄化用触媒体10は、高温に長時間晒された場合でも、NOxの浄化性能が高い。
【0057】
触媒層20は、排ガス浄化用触媒100以外の成分(以下、「任意成分」ともいう)を含有していてもよい。以下、任意成分について説明する。
【0058】
任意成分として、触媒層20は、セリアを含む複合酸化物等の酸素貯蔵能を有する材料(OSC材)を含有していてもよい。触媒層20がOSC材を含有する場合、車両の走行条件などによって排ガスの空燃比が変動したときでも、排ガス浄化用触媒体10は、安定して優れた浄化性能を発揮することができる。
【0059】
OSC材に関し、セリアを含む複合酸化物としては、セリアとジルコニアとを含む複合酸化物(セリア-ジルコニア複合酸化物(いわゆる、CZ複合酸化物またはZC複合酸化物))などが挙げられる。OSC材に酸化ジルコニウムが含有されている場合には、酸化セリウムの熱劣化を抑制できることから、OSC材としては、セリア-ジルコニア複合酸化物が好ましい。
【0060】
OSC材が酸化セリウムを含む複合酸化物である場合、その酸素吸蔵能を十分に発揮させる観点から、酸化セリウムの含有率は、好ましくは15質量%以上であり、より好ましくは20質量%以上である。一方、酸化セリウムの含有率が高過ぎると、OSC材の塩基性が高くなり過ぎるおそれがある。そのため、酸化セリウムの含有率は、好ましくは40質量%以下であり、より好ましくは30質量%以下である。
【0061】
OSC材は、特性(特に耐熱性と酸素吸放出特性等)の向上を目的として、希土類元素の酸化物を含んでいても良い。希土類元素の例としては、Sc、Y、La、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Luなどが挙げられる。希土類元素の酸化物としては、好適にはPr、Nd、La、およびYである。
【0062】
基材11の体積1L当たりのOSC材の量は、特に限定されないが、例えば、10g/L以上、25g/L以上、または50g/L以上であってよく、また、例えば、150g/L以下、100g/L以下、または80g/L以下であってよい。
【0063】
なお、本明細書において「基材の体積1L当たり」とは、基材の純体積にセル通路の容積も含めた全体の嵩容積1L当たりをいう。以下の説明において(g/L)と記載しているものについては、基材の体積1Lに含まれる量を示すものである。
【0064】
任意成分として、触媒層20は、酸化アルミニウム(Al、アルミナ)、酸化チタン(TiO、チタニア)、酸化ジルコニウム(ZrO、ジルコニア)、酸化ケイ素(SiO、シリカ)等の酸素貯蔵能を有しない材料(非OSC材)を含有していてもよい。
【0065】
非OSC材として用いられる酸化物には、耐熱性等を向上させるために、Pr、Nd、La、Y等の希土類元素の酸化物が、少量(例えば、1質量%以上10質量%以下)添加されていてもよい。耐熱性および耐久性に特に優れることから、非OSC材は、Alが好ましく、Laが複合化されたAl(La-Al複合酸化物;LA複合酸化物)であることがより好ましい。
【0066】
基材11の体積1L当たりの非OSC材の量は、特に限定されないが、例えば、10g/L以上、25g/L以上、または50g/L以上であってよく、また、例えば、150g/L以下、100g/L以下、または80g/L以下であってよい。
【0067】
任意成分として、触媒層20は、Rh以外の触媒貴金属を含む排ガス浄化用触媒(以下、「任意の排ガス浄化用触媒」ともいう)を含んでいてもよい。よって、触媒層20では、上述の排ガス浄化用触媒100と、Rh以外の触媒貴金属を含む排ガス浄化用触媒とが併用されていてもよい。特に、触媒層20において、上述の排ガス浄化用触媒100と、PtおよびPdのうちの少なくとも一方を含む排ガス浄化用触媒とを併用した場合には、排ガス浄化用触媒体10は、排ガスに含まれるNOxの浄化性能だけでなく、HCおよびCOの浄化性能にも優れる。
【0068】
任意の排ガス浄化用触媒において、Rh以外の触媒貴金属は、典型的には、担体に担持される。担体の例としては、上記非OSC材およびOSC材が挙げられる。担体は、上述の排ガス浄化用触媒100に用いられる母材30であってもよい。
【0069】
任意の排ガス浄化用触媒において、Rh以外の触媒貴金属は、排ガスとの接触面積を高める観点から、十分に小さい粒径の微粒子として使用されることが好ましい。触媒金属の平均粒径(具体的には、透過電子顕微鏡(TEM)観察により求められる、50個以上の触媒金属の粒径の平均値)は、概ね1~15nm、例えば10nm以下、さらには5nm以下であるとよい。
【0070】
排ガス浄化用触媒体10における触媒貴金属の量(Rh以外の触媒貴金属を含む場合は合計量)は、特に限定されず、触媒貴金属の種類等に応じて適宜決定することができる。基材11の体積1L当たりの触媒貴金属の量として、特に高い排ガス浄化性能の観点からは、例えば、0.01g/L以上、0.03g/L以上、0.05g/L以上、0.08g/L以上、または0.10g/L以上であってよい。排ガス浄化性能とコストとのバランスの観点からは、例えば、15.00g/L以下、10.00g/L以下、5.00g/L以下、3.00g/L以下、1.50g/L以下、1.00g/L以下、0.80g/L以下、または0.50g/L以下であってよい。
【0071】
任意成分として、触媒層20は、カルシウム(Ca)、バリウム(Ba)等のアルカリ土類元素を含んでいてもよい。アルカリ土類元素によって、触媒金属(特に酸化触媒)の被毒を抑制することができる。また、アルカリ土類元素によって、触媒金属の分散性が高められ、触媒金属の粒成長に伴うシンタリングを抑制することができる。また、触媒層20が、OSC材と共にアルカリ土類元素を含む場合には、理論空燃比よりも燃料が薄いリーン雰囲気(酸素過剰雰囲気)において、OSC材への酸素吸収量をさらに向上させることができる。アルカリ土類元素は、酸化物、水酸化物、炭酸塩、硝酸塩、硫酸塩、リン酸塩、酢酸塩、ギ酸塩、シュウ酸塩、ハロゲン化物等の形態で含有され得る。
【0072】
任意成分として、触媒層20は、NOx吸蔵能を有するNOx吸着材や、安定化剤等を含んでいてもよい。安定化剤としては、例えば、イットリウム(Y)、ランタン(La)、ネオジウム(Nd)等の希土類元素が挙げられる。なお、希土類元素は、酸化物の形態で触媒層20に存在しうる。
【0073】
任意成分として、触媒層20は、アルミナゾル、シリカゾル等のバインダ、各種添加剤などを含有していてもよい。
【0074】
特に限定されるものではないが、触媒層20のコート量(成形量)は、排ガス浄化用触媒体10の体積(基材11の体積)1Lあたり、概ね30g/L以上、典型的には50g/L以上、好ましくは70g/L以上、例えば100g/L以上であってよく、概ね500g/L以下、典型的には400g/L以下、例えば、300g/L以下であってもよい。上記範囲を満たすことにより、浄化性能の向上と圧損の低減とを高いレベルで兼ね備えることができる。なお、本明細書において「コート量」とは、排ガス浄化用触媒体10の単位体積あたりに含まれる固形分の質量をいう。
【0075】
触媒層20の長さや厚みは、例えば、基材11のセル12の大きさや排ガス浄化用触媒体10に流通する排ガスの流量等を考慮して適宜設計することができる。触媒層20は、基材11の隔壁14に連続的に設けられていてもよく、断続的に設けられていてもよい。触媒層20は、例えば、排ガスの流入口10aから筒軸方向Xに沿って設けられていてもよいし、排ガスの流出口10bから筒軸方向Xに沿って設けられていてもよい。
【0076】
特に限定されるものではないが、触媒層20の筒軸方向Xの全体のコート幅(平均長さ)は、基材11の全長Lの概ね20%以上、好ましくは50%以上、典型的には80%以上、例えば90%以上であるとよく、基材11の全長Lと同じ長さであってもよい。特に限定されるものではないが、触媒層20のコート厚み(平均厚み)は、概ね1~300μm、典型的には5~200μm、例えば10~100μmである。これにより、浄化性能の向上と圧損の低減とを高いレベルで兼ね備えることができる。
【0077】
触媒層20の一部の領域のみに、排ガス浄化用触媒100を含有させてもよい。例えば、触媒層20が、筒軸方向Xの上流側X1部分(フロント部)と下流側X2部分(リア部)とを有し、上流側X1部分(フロント部)と下流側X2部分(リア部)のうちの一方が、排ガス浄化用触媒100を含有し、他方が、上記任意の排ガス浄化用触媒(特に、触媒貴金属がPtおよびPdのうちの少なくとも一方である排ガス浄化用触媒)を含有していてもよい。
【0078】
あるいは、触媒層20を二層以上の層を含む積層構造として構成し、一つの層が排ガス浄化用触媒100を含有し、他の層が、上記任意の排ガス浄化用触媒(特に、触媒貴金属がPtおよびPdのうちの少なくとも一方である排ガス浄化用触媒)を含有していてもよい。以下、変形例として、触媒層20が複層構造の場合の好適例について説明する。
【0079】
≪排ガス浄化用触媒体10の変形例≫
図5は、排ガス浄化用触媒体10の変形例である排ガス浄化用触媒体10’を筒軸方向Xに沿って切断した断面の一部を模式的に示す部分断面図である。排ガス浄化用触媒体10’は、基材11と、基材11に設けられた複層構造の触媒層20’と、を備えている。触媒層20’が複層構造であることにより、排ガス浄化性能をさらに高めることができる。
【0080】
基材11については上記と同様である。触媒層20’は、図4に示す例とは異なり、複層構造を有している。具体的には、触媒層20’は、第1部分触媒層(下層)21と第2部分触媒層(上層)22とが、厚み方向に積層された積層構造を有している。したがって、基材11の表面に接するように下層21が設けられ、下層21の上面に接するように上層22が設けられている。図示例では触媒層20’は、2層構造を有しているが、触媒層20’は、3層以上の積層構造を有していてもよい。例えば、触媒層20’は、下層21と上層22との間に中間層を有していてもよいし、触媒層20’は、上層22の上にさらに別の層を有していてもよい。
【0081】
下層21は、触媒貴金属がPtおよびPdのうちの少なくとも一方である排ガス浄化用触媒を含有している。上層22は、貴金属触媒がRhを含む排ガス浄化用触媒100を含有する。この場合、排ガス浄化用触媒体10’は、排ガス浄化性能に特に優れる。なお、下層21の排ガス浄化用触媒の触媒貴金属におけるPtおよびPdの量(両方含む場合は合計量)は、好ましくは80質量%であり、より好ましくは90質量%であり、さらに好ましくは95質量%であり、最も好ましくは100質量%である。
【0082】
下層21および上層22は、上記した触媒層20と同様の任意成分を含有していてもよく、好ましくは、下層21および上層22はそれぞれ、OSC材を含有する。
【0083】
このように構成される排ガス浄化用触媒体10’は、排ガスに含まれるNOxの浄化性能が特に高いだけでなく、HCおよびCOの浄化性能も特に高い。
【0084】
≪排ガス浄化用触媒体10の製造方法≫
排ガス浄化用触媒体10は、例えば以下のような方法で製造することができる。まず、基材11と、触媒層20を形成するための触媒層形成用スラリーとを用意する。触媒層形成用スラリーは、排ガス浄化用触媒100と、その他の任意成分(例えば、非OSC材、OSC材、バインダ、各種添加剤等)とを、分散媒中で混合することにより、調製することができる。分散媒としては、例えば、水、水と水溶性有機溶媒の混合物等を使用し得る。スラリーの性状(例えば、粘度、固形分率等)は、使用する基材11のサイズや、セル12(隔壁14)の形態、触媒層20への要求特性等によって適宜決定することができる。
【0085】
次に、触媒層形成用スラリーを用いて、基材11に触媒層20を形成する。触媒層20の形成は、従来公知の方法(例えば、含浸法、ウォッシュコート法等)により行うことができる。具体的に例えば、調製した触媒層形成用スラリーを基材11の端部からセル12に流入させ、筒軸方向Xに沿って所定の長さまで供給する。スラリーは、流入口10aと流出口10bのいずれから流入させてもよい。このとき、余分なスラリーは反対側の端部から吸引してもよい。また、反対側の端部から送風を行う等して、余分なスラリーをセル12から排出させてもよい。次に、スラリーを供給した基材11を所定の温度および時間で乾燥する。これにより、排ガス浄化用触媒100を含む触媒層20が形成される。以上のようにして、排ガス浄化用触媒体10を得ることができる。
【0086】
あるいは、別の方法として、Rhを含む触媒金属源(例えば、Rhをイオンとして含む溶液)と、ジルコニアの被覆34を有するLa含有アルミナ粒子32(すなわち、母材30)と、その他の任意成分(例えば、非OSC材、OSC材、バインダ、各種添加剤等)とを、分散媒中で混合することにより、第2の触媒層形成用スラリーを調製する。
【0087】
次に、第2の触媒層形成用スラリーを用いて、基材11に触媒層20を形成する。具体的には、上記と同様にして基材11に第2の触媒層形成用スラリーを供給する。次に、スラリーを供給した基材11を所定の温度および時間で焼成する。焼成の方法は従来と同様であってよい。また、焼成の前に乾燥を行って、分散媒を除去してもよい。これにより、排ガス浄化用触媒100が生成して、基材上に排ガス浄化用触媒100を含む多孔質な触媒層20が形成される。以上のようにして、排ガス浄化用触媒体10を得ることができる。
【0088】
≪排ガス浄化用触媒体10の用途≫
排ガス浄化用触媒体10は、自動車やトラック等の車両や、自動二輪車や原動機付き自転車をはじめとして、船舶、タンカー、水上バイク、パーソナルウォータークラフト、船外機等のマリン用製品、草刈機、チェーンソー、トリマー等のガーデニング用製品、ゴルフカート、四輪バギー等のレジャー用製品、コージェネレーションシステム等の発電設備、ゴミ焼却炉等の内燃機関から排出される排ガスの浄化に好適に用いることができる。なかでも、自動車等の車両に対して好適に用いることができ、特に、ガソリンエンジンを備える車両に対して好適に用いることができる。
【0089】
以下、本発明に関する試験例を説明するが、本発明を以下の試験例に示すものに限定することを意図したものではない。
【0090】
〔実施例1~4〕
オキシ硝酸ジルコニウムおよびLa含有アルミナ粉末を容器に入れ、純水を加えながら撹拌して、オキシ硝酸ジルコニウムが溶解し、La含有アルミナ粉末が分散した懸濁液を調製した。なお、実施例1および2では、La含有アルミナ粉末として、粒径(D50)範囲が10~20μm、細孔容積が0.59~0.86ml/gの粉末を用い、実施例3および4では、粒径(D50)範囲が27~43μm、細孔容積が0.3~0.55ml/gの粉末を用いた。また、実施例2および4ではそれぞれ、オキシ硝酸ジルコニウムおよびLa含有アルミナ粉末の混合比率を実施例1および3から変更し、実施例1および3よりもジルコニア含有率を低くした。
【0091】
この懸濁液に対して、ノズル型スプレードライ装置(大川原化工機製ODT-8)を用いてスプレードライを行い、La含有アルミナ粉末の表面にオキシ硝酸ジルコニウムを付着させた。スプレードライの条件は、入ガス温度200℃、出ガス温度110℃、ポンプ流量20ccmとした。
【0092】
得られた粉末を、電気炉にて120℃で8時間乾燥した後、500℃で2時間焼成した。これにより、La含有アルミナ粉末の表面にジルコニアの被覆を有する母材を得た。
【0093】
この母材に、所定量の硝酸Rh水溶液を含浸させ、蒸発乾固を行った。得られた粉末を、500℃で2時間焼成することにより、母材にRhを担持させた。なお、Rhの担持量は、0.5質量%とした。このようにして、実施例1~4の排ガス浄化用触媒を得た。
【0094】
〔比較例1〕
粒径(D50)範囲が27~43μm、細孔容積が0.3~0.55ml/gのLa含有アルミナ粉末に、所定量の硝酸Rh水溶液を含浸させ、蒸発乾固を行った。得られた粉末を、500℃で2時間焼成することにより、La含有アルミナ粉末にRhを担持させた。お、Rhの担持量は、0.5質量%とした。このようにして、比較例1の排ガス浄化用触媒を得た。よって、比較例1の排ガス浄化用触媒では、母材は、ジルコニアの被覆を有していない。
【0095】
〔比較例2~4〕
オキシ硝酸ジルコニウムおよびLa含有アルミナ粉末を容器に入れ、純水を加えながら撹拌して、オキシ硝酸ジルコニウムが溶解し、La含有アルミナ粉末が分散した懸濁液を調製した。なお、比較例2~4では、オキシ硝酸ジルコニウムおよびLa含有アルミナ粉末の混合比率を変更し、ジルコニア含有率を変更した。
【0096】
調製した懸濁液に対して、アンモニア水を、懸濁液がアルカリ性になるように添加して、共沈を行った。沈殿物を回収し、電気炉で200℃で2時間乾燥させた。得られた粉末を、500℃で2時間焼成した。これにより、La含有アルミナ粉末の表面にジルコニアの被覆を有する母材を得た。
【0097】
この母材に、所定量の硝酸Rh水溶液を含浸させ、蒸発乾固を行った。得られた粉末を、500℃で2時間焼成することにより、母材にRhを担持させた。なお、Rhの担持量は、0.5質量%とした。このようにして、比較例2~4の排ガス浄化用触媒を得た。
【0098】
〔比較例5および6〕
比較例5では、オキシ硝酸ジルコニウムおよび粒径(D50)範囲が10~20μm、細孔容積が0.59~0.86ml/gのLa含有アルミナ粉末を容器に入れ、純水を加えながら撹拌して、オキシ硝酸ジルコニウムが溶解し、La含有アルミナ粉末が分散した懸濁液を調製した。比較例6では、ジルコニアゾルおよび粒径(D50)範囲が27~43μm、細孔容積が0.3~0.55ml/gのLa含有アルミナ粉末を容器に入れ、純水を加えながら撹拌して、ジルコニアゾルおよびLa含有アルミナ粉末が分散した懸濁液を調製した。
【0099】
調製した懸濁液を、電気炉にて120℃で8時間、蒸発乾固させた。得られた粉末を、500℃で2時間焼成した。これにより、La含有アルミナ粉末の表面にジルコニアの被覆を有する母材を得た。
【0100】
この母材に、所定量の硝酸Rh水溶液を含浸させ、蒸発乾固を行った。得られた粉末を、500℃で2時間焼成することにより、母材にRhを担持させた。なお、Rhの担持量は、0.5質量%とした。このようにして、比較例5および6の排ガス浄化用触媒を得た。
【0101】
[XRFによる元素分析]
上記作製した実施例1~4および比較例1~6の排ガス浄化用触媒に対し、蛍光X線分析装置(XRF:スペクトリス社製(MalvernPANalytical) Axios)を用いて、ZrO、AlおよびLaの酸化物での存在割合を質量%で求めた。なお、測定条件は、X線出力:2.4kW、加速電圧:30kV、電流値:80mAとし、FP法により存在割合を求めた。結果を表1に示す。
【0102】
[FIB-SEM観察]
上記作製した実施例1~4および比較例2~6の排ガス浄化用触媒を、集束イオンビーム走査型電子顕微鏡(FIB-SEM:JEOL製JXA-8530F)を用いて観察した。測定条件は、加速電圧:7kVまたは3kV、電流値:0.4nA、WD:4mmとした。実施例1~4では、測定倍率300,000倍で観察した場合に、粒子の表面に微細なジルコニアの被覆が形成されているのが確認できた。参考として、測定倍率300,000倍で観察した実施例4の排ガス浄化用触媒のSEM画像を図6に示す。測定倍率300,000倍のSEM画像において、任意に6個以上のジルコニアの被覆を選択し、その円相当径(すなわち、ヘイウッド径)を求め、平均値を算出した。その値(すなわち、ジルコニアの被覆の平均粒径の値)を表1に示す。
【0103】
比較例2~5では、測定倍率3,000倍において、粒子の表面に粗大なジルコニアの被覆が形成されているのが確認できた。一方、測定倍率を300,000倍に上げても、微細なジルコニアの被覆は見られなかった。参考として、測定倍率3,000倍で観察した比較例4の排ガス浄化用触媒のSEM画像を図7に示す。測定倍率3,000倍のSEM画像において、任意に6個以上のジルコニアの被覆を選択し、その円相当径を求め、平均値を算出した。その値(すなわち、ジルコニアの被覆の平均粒径の値)を表1に示す。
【0104】
[FE-EPMAによるライン分析]
上記作製した実施例1~4および比較例2~6の排ガス浄化用触媒に対して、電解放出型電子プローブアナライザ(FE-EPMA:FEI製HeliosG4UX)を用いてZrの定量ライン分析を行った。
【0105】
具体的には、まず、排ガス浄化用触媒の粒子の断面が露出した測定試料を作製した。これに対して、FE-EPMAを用いて、Al LevelのIntensityの上限を3000に設定して、Alのマッピング像を取得し、AlのIntensityが500以上の領域を排ガス浄化用触媒の粒子が存在する領域とした。
【0106】
次にZr LevelのIntensityの上限を300に設定し、ZrのIntensityが30以上を検出範囲に設定した。排ガス浄化用触媒の粒子が存在する領域に対し、表面の位置から中心の位置までZrの定量ライン分析を行い、表面を0%、中心を100%としてZr強度のスペクトルを測定した。そして、Zr強度のピークトップの位置を求めた。結果を表1に示す。
【0107】
[耐久処理]
各実施例および各比較例の排ガス浄化用触媒を、常法に従ってペレット化した。ペレットをチャンバー型電気炉内に置き、大気雰囲気下で1000℃で10時間熱処理した。
【0108】
[モデルガス評価]
上記耐久処理を行ったペレットを、堀場製作所製の触媒評価装置にセットした。前処理として、500℃で5分間、水素ガスを流して、還元処理を行った。本試験として、装置内にCO、O、NO、CO、およびCを含む混合ガスを流しながら、80℃まで昇温した。混合ガスにHOを加え、80℃で3分30秒間流した。その後600℃まで20℃/分の昇温速度で昇温し、600℃で30秒間保持した。このとき、NOの浄化率が50%に到達する温度(NOx50%浄化温度:T50-NOx)を求めた。評価結果を表1に示す。
【0109】
【表1】
【0110】
表1の結果より、Zrの被覆の平均粒径が2ケタのオーダーまで小さいことによって、高温耐久後において、より低い温度でNOxを除去できていることがわかる。よって、ここに開示される排ガス浄化用触媒によれば、高温に長時間晒された場合でも、Rhの浄化活性が高いことがわかる。
【0111】
[車両評価による確認実験]
基材として、コージェライト製のハニカム基材(容積:1.075L、基材の全長:100mm、セル数:600セル、セル形状:四角形、隔壁の厚み:2mm)を用意した。
【0112】
硝酸Pd水溶液、Al、CeO-ZrO系複合酸化物、硫酸バリウム、Al系バインダ、および純水を混合して、下層形成用スラリーを調製した。この下層形成用スラリーを、ウォッシュコート法により基材表面上に塗布した。次いで、電気炉内で500℃で2時間焼成した。このようにして、基材上にPd触媒を含有する下層を形成した。
【0113】
次に、硝酸Rh水溶液、実施例1、実施例3、および比較例1に用いた母材、CeO-ZrO系複合酸化物、Al系バインダ、および純水を混合して、上層形成用スラリーを調製した。この上層形成用スラリーをウォッシュコート法により、基材表面に形成された下層上に塗布した。次いで、電気炉内で500℃で2時間焼成した。この焼成によって、上記母材にRhが担持された排ガス浄化用触媒を生成させた。このようにして、下層上に、Rhが担持された排ガス浄化用触媒を含有する上層を形成し、実施例1、実施例3および比較例1の排ガス浄化用触媒体を得た。
【0114】
これらの排ガス浄化用触媒体を用いて駆動台上試験を行い、NOxのエミッション量を評価した。走行モードは、低温域での評価ができるように、WLTP(Worldwide harmonized Light dutydriving Test Procedure)Phase1とした。NOxのエミッション量は、実施例1で0.004ppm未満、実施例3で0.0045ppm未満であったのに対し、比較例1では、0.0065ppm超であった。このことから、排ガス浄化用触媒を用いて、排ガス浄化用触媒体を構成し、車両に搭載した場合に、NOxを大幅に低減できることが確認できた。
【0115】
以上、本発明のいくつかの実施形態について説明したが、上記実施形態は一例に過ぎない。本発明は、他にも種々の形態にて実施することができる。本発明は、本明細書に開示されている内容と当該分野における技術常識とに基づいて実施することができる。請求の範囲に記載の技術には、上記に例示した実施形態を様々に変形、変更したものが含まれる。
【符号の説明】
【0116】
1 排ガス浄化システム
2 内燃機関
3 排ガス浄化装置
10 第2触媒体(排ガス浄化用触媒体)
11 基材
20 触媒層
30 母材
32 La含有アルミナ粒子
34 ジルコニアの被覆
40 触媒貴金属
100 排ガス浄化用触媒
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7