IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ トヨタ自動車株式会社の特許一覧 ▶ 株式会社豊田自動織機の特許一覧

<>
  • 特開-バイポーラ電極の製造方法 図1
  • 特開-バイポーラ電極の製造方法 図2
  • 特開-バイポーラ電極の製造方法 図3
  • 特開-バイポーラ電極の製造方法 図4
  • 特開-バイポーラ電極の製造方法 図5
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024030850
(43)【公開日】2024-03-07
(54)【発明の名称】バイポーラ電極の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01M 4/139 20100101AFI20240229BHJP
   H01M 4/04 20060101ALI20240229BHJP
   H01M 4/26 20060101ALI20240229BHJP
   H01G 11/86 20130101ALI20240229BHJP
【FI】
H01M4/139
H01M4/04 A
H01M4/26 Z
H01G11/86
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022134035
(22)【出願日】2022-08-25
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(74)【代理人】
【識別番号】100129838
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 典輝
(74)【代理人】
【識別番号】100101203
【弁理士】
【氏名又は名称】山下 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100104499
【弁理士】
【氏名又は名称】岸本 達人
(72)【発明者】
【氏名】石塚 正浩
(72)【発明者】
【氏名】蛭川 智史
(72)【発明者】
【氏名】増田 祐樹
(72)【発明者】
【氏名】近藤 剛司
(72)【発明者】
【氏名】阿部 友邦
【テーマコード(参考)】
5E078
5H050
【Fターム(参考)】
5E078AB02
5E078BA18
5E078BA27
5E078BA44
5E078BA47
5E078BA53
5E078BB23
5E078BB24
5E078FA02
5E078FA12
5E078FA13
5E078ZA03
5H050AA02
5H050AA07
5H050BA14
5H050BA17
5H050CA01
5H050CA07
5H050CA08
5H050CA09
5H050CB08
5H050CB09
5H050CB11
5H050FA03
5H050GA03
5H050GA26
5H050HA15
(57)【要約】
【課題】負極密度の上昇を抑制しつつ、正極密度を高めることができるバイポーラ電極の製造方法を提供する。
【解決手段】集電体の一方の面に負極層を形成する負極層形成工程と、負極層形成工程後、負極層をロールプレスする第1プレス工程と、第1プレス工程後、集電体の他方の面に正極層を形成する正極層形成工程と、正極層形成工程後、負極層及び正極層を同時にロールプレスする第2プレス工程と、を備え、第2プレス工程におけるプレス線圧は第1プレス工程におけるプレス線圧よりも大きい、バイポーラ電極の製造方法である。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
集電体の一方の面に負極層を形成する負極層形成工程と、
前記負極層形成工程後、前記負極層をロールプレスする第1プレス工程と、
前記第1プレス工程後、前記集電体の他方の面に正極層を形成する正極層形成工程と、
前記正極層形成工程後、前記負極層及び前記正極層を同時にロールプレスする第2プレス工程と、を備え、
前記第2プレス工程におけるプレス線圧は前記第1プレス工程におけるプレス線圧よりも大きい、
バイポーラ電極の製造方法。
【請求項2】
前記第2プレス工程におけるプレス線圧が4kN/cm以上15kN/cm以下である、
請求項1に記載のバイポーラ電極の製造方法。
【請求項3】
前記第1プレス工程におけるプレス線圧が1kN/cm以上4kN/cm未満である、請求項1又は2に記載のバイポーラ電極の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願はバイポーラ電極の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
バイポーラ電極は、通常の電極と異なり、集電体の一方の面に負極が、他方の面に正極が配置されている。そして、このようなバイポーラ電極とセパレータとを交互に積層し、それらの周囲を電解液で満たすことにより、バイポーラ電池が得られる。バイポーラ電池は通常の電池に比べて出力向上が期待されている。
【0003】
特許文献1は、第1金属箔の第1面に負極活物質層を形成し、第2金属箔の第1面が第1金属箔の第2面と対向した状態で負極活物質層をプレスし、第2金属箔の第2面に正極活物質層を形成し、正極活物質層をプレスするバイポーラ電極の製造方法を開示している。また、特許文献1には、正極活物質層をプレスする際、同時に負極活物質層もプレスされることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2021-82504号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
バイポーラ電極において、通常、負極と正極とに要求される密度が異なっている。具体的には、電極性能を損なわない範囲において、負極密度をなるべく低くし、正極密度をなるべく高くすることが要求される。このような要求を満たすことにより、電池性能を高めることができる。
【0006】
しかしながら、集電体の一方の面に負極層が、他方の面に正極層が配置された状態の積層体をロールプレスして、バイポーラ電極を製造することが一般的であるところ、このような製造方法では上記の要求を満たせない場合がある。例えば、負極密度を低くするためには、プレス圧力を低く設定する必要があるが、そうすると正極密度を高くすることが困難になる。一方で、正極密度を高くするためには、プレス圧力を高く設定する必要があるが、そうすると負極密度を低くすることが困難になる。
【0007】
そこで本開示の主な目的は、上記実情を鑑み、負極密度の上昇を抑制しつつ、正極密度を高めることができるバイポーラ電極の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示は上記課題を解決するための一つの態様として、集電体の一方の面に負極層を形成する負極層形成工程と、負極層形成工程後、負極層をロールプレスする第1プレス工程と、第1プレス工程後、集電体の他方の面に正極層を形成する正極層形成工程と、正極層形成工程後、負極層及び正極層を同時にロールプレスする第2プレス工程と、を備え、第2プレス工程におけるプレス線圧は第1プレス工程におけるプレス線圧よりも大きい、バイポーラ電極の製造方法を提供する。
【0009】
上記製造方法において、第2プレス工程におけるプレス線圧が4kN/cm以上15kN/cm以下としてもよい。また、第1プレス工程におけるプレス線圧が1kN/cm以上4kN/cm未満としてもよい。
【発明の効果】
【0010】
本開示のバイポーラ電極の製造方法によれば、負極密度の上昇を抑制しつつ、正極密度を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】一実施形態の製造方法の概略図である。
図2】積層体Eが両面からロールプレスされるときの概念図である。
図3】実施例における1回目のプレス後の負極層の厚みと線圧との関係である。
図4】(a)実施例における2回目のプレス後の正極層の密度と線圧との関係を示した図である。(b)実施例における2回目のプレス後の負極層の密度と線圧との関係を示した図である。
図5】実施例における2回目のプレス後の負極密度及び正極密度の関係を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
[バイポーラ電極の製造方法]
本開示のバイポーラ電極の製造方法について、一実施形態の製造方法を用いて説明する。図1に一実施形態の製造方法の概略図を示した。図1(a)~(e)は時系列に沿って記載されている。
【0013】
一実施形態の製造方法は、集電体10の一方の面11に負極層20を形成する負極層形成工程と、負極層形成工程後、負極層20をロールプレスする第1プレス工程と、第1プレス工程後、集電体10の他方の面12に正極層30を形成する正極層形成工程と、正極層形成工程後、負極層20及び正極層30を同時にロールプレスする第2プレス工程と、を備えている。これにより、バイポーラ電極100を製造することができる。以下、各工程について説明する。
【0014】
<負極層形成工程>
負極層形成工程では、集電体10の一方の面11に負極層20を形成する。図1(a)に負極層形成工程の概略図を示した。
【0015】
(集電体10)
集電体10は、バイポーラ電極の集電体として機能するシート状の部材であれば特に限定されない。例えば、集電体10はステンレス、銅、アルミニウム、チタン、ニッケル等の金属からなる金属箔であってもよい。金属箔はこれらの金属を2種以上含む合金からなっていてもよい。また、金属箔はメッキ等の表面処理が施されていてもよい。集電体10は、2枚以上の金属箔からなっていてもよい。この場合、金属箔は接着剤等で接合されてもよく、プレス等によって接合されてもよい。集電体10の厚みは特に限定されないが、例えば5μm以上70μm以下である。
【0016】
(負極層20)
負極層20は負極活物質を含む。負極活物質は特に限定されず、目的の電池性能に応じて公知の材料の中から適宜選択してよい。例えば、黒鉛、人造黒鉛、高配向性グラファイト、メソカーボンマイクロビーズ、ハードカーボン、ソフトカーボン等のカーボン、金属化合物、リチウムと合金化可能な元素もしくはその化合物、ホウ素添加炭素等が挙げられる。リチウムと合金化可能な元素の例としては、シリコン(ケイ素)及びスズが挙げられる。
【0017】
負極層20は任意に導電助剤を含んでいてもよい。導電助剤は特に限定されず、目的の電池性能に応じて公知の材料の中から適宜選択してよい。例えば、アセチレンブラック、カーボンブラック、グラファイト等が挙げられる。
【0018】
負極層20は任意に結着剤を含んでいてもよい。結着剤は特に限定されず、目的の電池性能に応じて公知の材料の中から適宜選択してよい。例えば、ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン、フッ素ゴム等の含フッ素樹脂、ポリプロピレン、ポリエチレン等の熱可塑性樹脂、ポリイミド、ポリアミドイミド等のイミド系樹脂、アルコキシシリル基含有樹脂、ポリ(メタ)アクリル酸等のアクリル系樹脂、スチレン-ブタジエンゴム(SBR)、カルボキシメチルセルロース、アルギン酸ナトリウム、アルギン酸アンモニウム等のアルギン酸塩、水溶性セルロースエステル架橋体、デンプン-アクリル酸グラフト重合体等が挙げられる。
【0019】
負極層20は層状部材であればよく、その厚みは特に限定されない。例えば、1μm~1mmの範囲である。負極層20の面積は、出力向上の観点から、正極層30よりも大きくしてよい。負極層20における各材料の含有量は特に限定されず、目的の電池性能に応じて適宜設定してよい。なお、負極層20は上記した材料以外の材料を含んでもよい。
【0020】
(負極層20の形成方法)
集電体10の一方の面11に負極層20を形成する方法は特に限定されず、公知の方法を適宜採用してよい。例えば、負極層20を構成する材料を乳鉢等で混合し、プレスすることで負極層20を得ることができる。そして、得られた負極層20を集電体10の一方の面に配置すればよい。あるいは、負極層20を構成する材料を溶媒とともに混合してスラリーを得た後、当該スラリーを集電体10の一方の面11に塗布・乾燥してもよい。
【0021】
<第1プレス工程>
第1プレス工程は、負極層形成工程後に実施され、負極層20をロールプレスする。図1(b)に第1プレス工程の概略図を示した。図1(b)に示した通り、負極層20は対向するロールXによって両面からプレスされる。第1プレス工程におけるプレス線圧P1については後述する。
【0022】
<正極層形成工程>
正極層形成工程は、第1プレス工程後に実施され、集電体10の他方の面12に正極層30を形成する。図1(c)に正極層形成工程の概略図を示した。
【0023】
(正極層30)
正極層30は正極活物質を含む。正極活物質は特に限定されず、目的の電池性能に応じて公知の材料の中から適宜選択してよい。例えば、複合酸化物、金属リチウム、及び硫黄等が挙げられる。複合酸化物の組成には、例えば、鉄、マンガン、チタン、ニッケル、コバルト、及びアルミニウムの少なくとも1つと、リチウムとが含まれる。複合酸化物の例には、オリビン型リン酸鉄リチウム(LiFePO)が挙げられる。
【0024】
正極層30は任意に導電助剤を含んでいてもよい。導電助剤は特に限定されず、目的の電池性能に応じて公知の材料の中から適宜選択してよい。例えば、負極層20に適用可能な導電助剤の中から適宜選択してよい。
【0025】
正極層30は任意に結着剤を含んでいてもよい。結着剤は特に限定されず、目的の電池性能に応じて公知の材料の中から適宜選択してよい。例えば、負極層20に適用可能な結着剤の中から適宜選択してよい。
【0026】
正極層30は層状部材であればよく、その厚みは特に限定されない。例えば、1μm~1mmの範囲である。正極層30の面積は、負極層20よりも小さくしてよい。正極層30における各材料の含有量は特に限定されず、目的の電池性能に応じて適宜設定してよい。なお、正極層30は上記した材料以外の材料を含んでもよい。
【0027】
(正極層30の形成方法)
集電体10の他方の面12に正極層30を形成する方法は特に限定されず、公知の方法を適宜採用してよい。例えば、負極層20の形成方法と同様の方法を採用してもよい。
【0028】
<第2プレス工程>
第2プレス工程は、正極層形成工程後に実施され、負極層20及び正極層30を同時にロールプレスする。図1(d)に第2プレス工程の概略図を示した。図1(d)に示した通り、負極層20及び正極層30は対向するロールXによって両面からプレスされる。第2プレス工程におけるプレス線圧P2については後述する。
【0029】
<バイポーラ電極100>
図1(e)に製造されたバイポーラ電極100を示した。一実施形態により製造することができるバイポーラ電極100の種類は特に限定されない。例えば、ニッケル水素二次電池、リチウムイオン二次電池等の化学電池用電極でもよく、電気二重層キャパシタ等の物理電池用電極でもよい。ただし、ニッケル水素二次電池は正極層及び負極層の密度による影響が小さいが、リチウムイオン二次電池は当該影響が大きい。そのため、一実施形態はリチウムイオン二次電池用バイポーラ電極の製造に適している。
【0030】
<正極層30の圧縮特性向上>
一実施形態の製造方法では、負極層20をロールプレスする第1プレス工程と、負極層20及び正極層30を同時にプレスする第2プレス工程とからなる2段階のロールプレスを実施している。まず、第1プレス工程において、負極層20をロールプレスすることにより、負極層20の厚みは低減されるため、第2プレス工程における積層体の総厚みも低減される。そして、第2プレス工程において、厚みが低減された積層体をロールプレスすることにより、正極層30の圧縮特性を向上させることができる。すなわち、積層体を低い線圧でロールプレスしたとしても、高い密度の正極層30を得ることができる。また、正極層30の圧縮特性が向上したことにより、低い線圧での目的の密度を有する正極層30を得られるため、負極層20の密度向上を抑制することができる。
【0031】
正極層30の圧縮特性向上効果について、下記式(1)を用いて説明する。まず、下記式(1)について、図2を用いて説明する。図2は積層体E(正極層、集電体層、負極層がこの順で積層されたもの)が両面からロールプレスされるときの概念図である。ここで、プレス面圧をP、ロールXによる荷重をF、積層体Eに配置された電極層(正極層又は負極層)の幅(図2の奥行きの長さ)をW(不図示)、ロール半径をR、ロールXによって電極層が圧縮されたときのつぶし代をΔhとしたとき、下記式(1)が成り立つ。当該式(1)は、集電体の一方の面に電極層が積層された積層体においても成り立つ。ここで、√RΔhはロールと電極層との接触弧長を表す。
【0032】
【数1】
【0033】
上述したとおり、第1プレス工程により、第2プレス工程時の積層体の総厚みが低減される。すなわち、つぶし代Δhが小さくなっている。そうすると、接触弧長√RΔhが小さくなり、全体としてプレス面圧Pが増大する。従って、一実施形態の製造方法によれば、2段階のロールプレスにより、積層体を低い線圧でロールプレスしたとしても、高い密度の正極層30を得ることができる。
【0034】
ここで、一実施形態では、第2プレス工程におけるプレス線圧P2を第1プレス工程におけるプレス線圧P1よりも大きく設定する(P1<P2)。これにより、正極を目的の密度まで調整しつつ、負極層20の密度向上を抑制することができる。例えば、第1プレス工程におけるプレス線圧P1を第2プレス工程におけるプレス線圧P2以上に設定した場合(P1≧P2)、正極層30を目的の密度まで調整しようとすると、P1が過大になり、負極層20の密度向上を抑制することが困難になる虞がある。
【0035】
より効果を高める観点から、第2プレス工程におけるプレス線圧P2を4kN/cm以上としてもよく、9kN/cm以上。ただし、プレス線圧P2が高すぎると、負極層30の密度が高くなりすぎる虞があるため、プレス線圧P2は15kN/cm以下としてもよい。また、負極層30の密度をより低減させる観点から、第1プレス工程におけるプレス線圧P1を8kN/cm以下としてもよく、6kN/cm以下としてもよく、4kN/cm以下としてもよく、4kN/cm未満としてもよい。P1が低くなるほど、負極層30の密度を低減することができる。ただし、P2が低すぎると、正極層30の圧縮特性向上効果が低くなるため、例えばP1は1kN/cm以上としてもよく、2kN/cm以上としてもよい。
【0036】
以上、一実施形態を用いて、本開示のバイポーラ電極の製造方法を説明した。本開示のバイポーラ電極の製造方法によれば、負極密度の上昇を抑制しつつ、正極密度を高めることができる。すなわち、本開示のバイポーラ電極の製造方法によれば、バイポーラ電極における負極密度及び正極密度の要求を簡易な方法で満たすことができる。
【実施例0037】
以下の手順に沿って、負極層及び正極層の圧縮特性について検討した。
【0038】
まず、集電体の一方の面に、ダイを用いて負極層を塗工し、乾燥させた。そして、得られた積層体をロールプレスした。このとき、プレス線圧を8kN/cm(線圧大)、6kN/cm(線圧中)、4kN/cm(線圧小)のいずれかに設定した。このときの負極層の厚みと線圧との関係を図3に示した。ここで、プレスしていない負極層の結果をRefとして示した。
【0039】
次に、プレスされた積層体を用いて、集電体の他方の面に正極層を形成した後、さらに積層体をプレスした。プレス線圧はさまざまである。結果を図4(a)、(b)に示した。図4(a)は正極層の密度と線圧との関係(正極層の圧縮特性)を示したものである。図4(b)は負極層の密度と線圧との関係(負極層の圧縮特性)を示したものである。Refは1回目のプレスを行っていない積層体を用いて、2回目のプレスを行った場合の結果である。また、図4(a)図4(b)において、それぞれの結果に近似曲線を付与している。さらに、図5に、図4(a)、(b)に基づいて作成された負極密度及び正極密度の関係を示した。
【0040】
まず、正極層の圧縮特性について検討した。図4(a)より、2回目のプレス後の正極層は、Refの近似曲線に比べて、圧縮特性が向上し、低い線圧でロールプレスしたとしても高い密度を有していた。このことから、2段階のプレスにより正極層の圧縮特性が向上することが確認された。特に線圧が9kN/cm以上の場合、1回目のロールプレスの線圧によらず、圧縮特性の向上が顕著であった。また、正極層の圧縮特性が向上したことにより、低い線圧でのロールプレスが可能になるため、負極層の密度向上も抑制することができることが分かった。
【0041】
一方で、図4(b)より、線圧が15kN/cmを超えると負極層の密度が高くなりすぎるため好ましくないことが確認された。従って、2回目のロールプレスの線圧は9kN/cm以上15kN/cm以下の範囲としてもよいと考えられる。
【0042】
また、図4(b)によれば、線圧が15kN/cm以下の場合、2回目のプレス後の負極層は、Refの近似曲線に比べて、圧縮特性が向上していた。そのため、負極の密度向上抑制効果が低減されるようにみえる。しかしながら、9kN/cm以上15kN/cm以下の範囲であれば、負極の圧縮特性向上効果は、正極の圧縮特性向上効果に比べて小さいため、総合的に考えると、正極層の圧縮特性向上効果の享受できると考えられる。従って、2回目のロールプレスの線圧を9kN/cm以上15kN/cm以下とすることにより、負極密度の上昇を抑制しつつ、正極密度を高めることができる。ただし、電極層の構成により、2回目のロールプレスの線圧がより低い線圧(例えば、4kN/cm以上)でも正極層の圧縮特性向上効果を享受できることが分かっている。
【0043】
さらに、1回目のロールプレスの線圧がいずれの場合であっても正極層の圧縮特性は顕著に向上していたが、負極層の圧縮特性は1回目のロールプレスの線圧が低いほど抑制されていた。従って、1回目のロールプレスの線圧は低いほど良いと考えられる。
【符号の説明】
【0044】
10 集電体
11、12 面
20 負極層
30 正極層
100 バイポーラ電極
X ロール
E 積層体
図1
図2
図3
図4
図5