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特開2024-30866樹脂成形品の射出成形方法及び射出成形装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024030866
(43)【公開日】2024-03-07
(54)【発明の名称】樹脂成形品の射出成形方法及び射出成形装置
(51)【国際特許分類】
   B29C 45/26 20060101AFI20240229BHJP
   B29C 45/16 20060101ALI20240229BHJP
【FI】
B29C45/26
B29C45/16
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022134063
(22)【出願日】2022-08-25
(71)【出願人】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100077665
【弁理士】
【氏名又は名称】千葉 剛宏
(74)【代理人】
【識別番号】100116676
【弁理士】
【氏名又は名称】宮寺 利幸
(74)【代理人】
【識別番号】100191134
【弁理士】
【氏名又は名称】千馬 隆之
(74)【代理人】
【識別番号】100136548
【弁理士】
【氏名又は名称】仲宗根 康晴
(74)【代理人】
【識別番号】100136641
【弁理士】
【氏名又は名称】坂井 志郎
(74)【代理人】
【識別番号】100180448
【弁理士】
【氏名又は名称】関口 亨祐
(72)【発明者】
【氏名】堀内 悠平
【テーマコード(参考)】
4F202
4F206
【Fターム(参考)】
4F202AG08
4F202AH11
4F202CA11
4F202CB01
4F202CB22
4F202CB28
4F202CK19
4F202CK52
4F206AG08
4F206AH11
4F206JA07
4F206JB22
4F206JB28
4F206JL02
4F206JM04
4F206JN12
4F206JQ81
(57)【要約】      (修正有)
【課題】射出成形によって軸方向に沿った型割線が形成されることが防止される、樹脂成形品の射出成形方法および装置を提供する。
【解決手段】樹脂成形品12の射出成形方法は、第1及び第2主型44、46と、第1及び第2主型44、46の軸方向に型閉めされる第1スライド型とによって中間成形体を成形する第1成形工程と、中間成形体40から第1スライド型48a、48bを離脱させる離脱工程と、中間成形体の管端面14a、14bに対して軸方向に沿って型閉めされる第2スライド型64a、64bと、中間成形体に対して軸中心と直交方向に型閉めされる第1及び第2中子型66、68とによって、中間成形体に第2環状壁部18を成形する第2成形工程とを有する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
管状の樹脂成形品を射出成形によって成形する樹脂成形品の射出成形方法であって、
前記樹脂成形品は、
前記樹脂成形品の軸方向に沿って延在し、前記軸方向における少なくとも一端側の端面である管端面を有する円筒部と、
前記円筒部の少なくとも前記一端側において前記円筒部の外周面から径方向外方に突出し、前記軸方向の外側を向く側壁面を有した第1環状壁部と、
前記円筒部の少なくとも前記一端側において前記円筒部の前記外周面から径方向外方に突出し、前記第1環状壁部から前記軸方向の外側に離間して配置される第2環状壁部と、
前記第1環状壁部と前記第2環状壁部との間に形成される環状溝部と、
を有し、
前記円筒部は、前記第1環状壁部の前記側壁面から少なくとも前記円筒部の前記軸方向における中央部までを構成する管本体と、前記側壁面から前記円筒部の前記管端面まで延在し外周面が前記環状溝部の一部を構成する管端部とを有し、
前記射出成形方法は、
前記円筒部の軸中心と直交する方向に型閉めされる第1及び第2主型と、前記円筒部の軸方向に沿って前記第1及び第2主型の少なくとも一端面に対して型閉めされる第1スライド型とによって、前記樹脂成形品における前記管本体と前記第1環状壁部とを備えた中間成形体を成形する第1成形工程と、
前記中間成形体を成形した後に、前記円筒部の前記軸方向に沿って前記中間成形体から前記第1スライド型を離脱させる離脱工程と、
前記中間成形体における前記円筒部の前記管端面に対して前記軸方向に沿って型閉めされる第2スライド型と、前記円筒部の前記軸中心に対して直交する方向に型閉めされ、前記側壁面に隣接して配置される第1及び第2中子型とによって、前記円筒部の前記外周面に前記第2環状壁部を成形する第2成形工程と、
を有する、樹脂成形品の射出成形方法。
【請求項2】
請求項1記載の樹脂成形品の射出成形方法において、
前記第1成形工程において、溶融した樹脂材を、前記第1主型及び前記第2主型の少なくともいずれか一方から前記第1主型、前記第2主型及び前記第1スライド型によって構成される第1キャビティ内へと射出する、樹脂成形品の射出成形方法。
【請求項3】
請求項1又は2記載の樹脂成形品の射出成形方法において、
前記樹脂成形品は、前記円筒部の前記軸方向における前記一端側と他端側の各々に、前記第1環状壁部、前記第2環状壁部及び前記環状溝部を有し、
前記第1成形工程では、前記第1及び第2主型と、前記第1及び第2主型の軸方向の両側に配置される2つの前記第1スライド型とによって、2つの前記第1環状壁部を備えた前記中間成形体を成形し、
前記第2成形工程では、前記第1及び第2主型と、前記円筒部の前記軸方向の両側に配置される2つの前記第2スライド型と、前記円筒部の前記軸方向の両側に配置される前記第1及び第2中子型とによって、前記円筒部の外周面に2つの前記第2環状壁部を成形する、樹脂成形品の射出成形方法。
【請求項4】
管状の樹脂成形品を射出成形によって成形する射出成形装置であって、
前記樹脂成形品は、
前記樹脂成形品の軸方向に沿って延在し、前記軸方向における少なくとも一端側の端面である管端面を有する円筒部と、
前記円筒部の少なくとも前記一端側において前記円筒部の外周面から径方向外方に突出し、前記軸方向の外側を向く側壁面を有した第1環状壁部と、
前記円筒部の少なくとも前記一端側において前記円筒部の前記外周面から径方向外方に突出し、前記第1環状壁部から前記軸方向の外側に離間して配置される第2環状壁部と、
前記第1環状壁部と前記第2環状壁部との間に形成される環状溝部と、
を有し、
前記円筒部は、前記第1環状壁部の前記側壁面から少なくとも前記円筒部の前記軸方向における中央部までを構成する管本体と、前記側壁面から前記円筒部の前記管端面まで延在し外周面が前記環状溝部の一部を構成する管端部とを有し、
前記射出成形装置は、
第1キャビティを内部に有し、前記樹脂成形品の前記円筒部及び前記第1環状壁部を有した中間成形体を成形する一次成形型と、
第2キャビティを内部に有し、前記中間成形体の前記円筒部の前記外周面に前記第2環状壁部を成形する二次成形型と、
を備え、
前記一次成形型は、
前記円筒部の軸中心に対して直交する方向に型閉めされ、前記管本体の外周面と、前記第1環状壁部の外周面と、前記第1環状壁部のうち前記管本体の前記外周面と前記第1環状壁部の前記外周面とを繋ぐ壁面とを成形する第1及び第2主型と、
前記円筒部の軸方向に沿って前記第1及び第2主型の少なくとも一端面に対して型閉めされ、前記第1環状壁部の前記側壁面と、前記管端部とを成形する第1スライド型と、
を備え、
前記二次成形型は、
前記中間成形体における前記円筒部の前記管端面に対して型閉めされ、前記第2環状壁部を成形する第2スライド型と、
前記中間成形体の前記管端部の外周面に前記円筒部の軸中心に対して直交する方向に型閉めされ、前記第1環状壁部の前記側壁面に隣接して配置される第1及び第2中子型と、
を備える、射出成形装置。
【請求項5】
請求項4記載の射出成形装置において、
前記第1主型及び前記第2主型の少なくともいずれか一方には、前記第1主型、前記第2主型及び前記第1スライド型によって構成される第1キャビティ内へ溶融した樹脂材を射出するランナを備える、射出成形装置。
【請求項6】
請求項4又は5記載の射出成形装置において、
前記樹脂成形品は、前記円筒部の前記軸方向における前記一端側と他端側の各々に、前記第1環状壁部、前記第2環状壁部及び前記環状溝部を有し、
前記一次成形型は、前記第1及び第2主型と、前記第1及び第2主型の軸方向の両側に配置される2つの前記第1スライド型とによって、2つの前記第1環状壁部を備えた前記中間成形体を成形し、
前記二次成形型は、前記第1及び第2主型と、前記円筒部の前記軸方向の両側に配置される2つの前記第2スライド型と、前記円筒部の前記軸方向の両側に配置される前記第1及び第2中子型とによって、前記円筒部の外周面に2つの前記第2環状壁部を成形する、射出成形装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂成形品の射出成形方法及び射出成形装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、配管の外周に装着される気密部材の製造方法を開示している。気密部材は、型閉めされた上型及び下型の内部に樹脂材を充填することで射出成形によって円環状に形成される。気密部材の外周部には環状溝部が形成される。ダッシュボードの孔部に気密部材が装着されることで、ダッシュボードの内側と外側との気密を保持する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平1-209113号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
射出成形によって成形された気密部材には、上型と下型との型割部位に型割線が形成される。型割線は、気密部材の外周面に軸方向に沿って直線状に形成される。このような型割線は、環状溝部にも形成される。ダッシュボードの孔部に気密部材を装着したとき、軸方向に沿って環状溝部に形成された型割線によってダッシュボードと気密部材の外周面との間に隙間が発生し、気密性の低下が懸念される。気密性を維持するために、研磨等の追加工によって型割線を外周面から取り除くことが考えられるが、加工作業が煩雑であると共に製造コストが増加するという問題がある。
【0005】
本発明は、上述した課題を解決することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の態様は、管状の樹脂成形品を射出成形によって成形する樹脂成形品の射出成形方法であって、前記樹脂成形品は、前記樹脂成形品の軸方向に沿って延在し、前記軸方向における少なくとも一端側の端面である管端面を有する円筒部と、前記円筒部の少なくとも前記一端側において前記円筒部の外周面から径方向外方に突出し、前記軸方向の外側を向く側壁面を有した第1環状壁部と、前記円筒部の少なくとも前記一端側において前記円筒部の前記外周面から径方向外方に突出し、前記第1環状壁部から前記軸方向の外側に離間して配置される第2環状壁部と、前記第1環状壁部と前記第2環状壁部との間に形成される環状溝部と、を有し、前記円筒部は、前記第1環状壁部の前記側壁面から少なくとも前記円筒部の前記軸方向における中央部までを構成する管本体と、前記側壁面から前記円筒部の前記管端面まで延在し外周面が前記環状溝部の一部を構成する管端部とを有し、前記射出成形方法は、前記円筒部の軸中心と直交する方向に型閉めされる第1及び第2主型と、前記円筒部の軸方向に沿って前記第1及び第2主型の少なくとも一端面に対して型閉めされる第1スライド型とによって、前記樹脂成形品における前記管本体と前記第1環状壁部とを備えた中間成形体を成形する第1成形工程と、前記中間成形体を成形した後に、前記円筒部の前記軸方向に沿って前記中間成形体から前記第1スライド型を離脱させる離脱工程と、前記中間成形体における前記円筒部の前記管端面に対して前記軸方向に沿って型閉めされる第2スライド型と、前記円筒部の前記軸中心に対して直交する方向に型閉めされ、前記側壁面に隣接して配置される第1及び第2中子型とによって、前記円筒部の前記外周面に前記第2環状壁部を成形する第2成形工程と、を有する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、樹脂成形品の射出成形を行う第1成形工程において、円筒部の管本体と第1環状壁部を有した中間成形体を成形した後、第2成形工程において、中間成形体に対して軸方向から第2スライド型を型閉めして円筒部の外周面に対して第2環状壁部を成形することで、第1環状壁部と第2環状壁部との間の環状溝部の外周面に、射出成形によって軸方向に沿った型割線が形成されることが防止される。これにより、樹脂成形品を成形した後に、環状溝部の型割線を追加工によって取り除く必要がなく、製造工数及び製造コストを削減することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、本発明の実施形態に係る樹脂成形品を射出成形する射出成形装置を示す概略構成図である。
図2図2は、図1の射出成形装置によって得られた樹脂成形品の外観平面図である。
図3図3は、図1の射出成形装置の一次成形型を示す概略構成図である。
図4図4は、図3の射出成形装置の第1キャビティに樹脂材が充填された第1成形工程を示す構成図である。
図5図5は、図4のV-V線に沿った断面図である。
図6図6は、第1成形工程で中間成形体を成形した後に、第1スライド型を離脱させる離脱工程を示す構成図である。
図7図7は、第1及び第2主型に対して第1及び第2中子型を装着した第2成形工程の準備状態を示す構成図である。
図8図8は、図7の射出成形装置に対して第2スライド型を装着した二次成形型の型閉め状態を示す構成図である。
図9図9は、第2成形工程が終わり、型開きをして樹脂成形品を取り出した状態を示す構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
図1に示されるように、本実施形態に係る射出成形装置10は、管状の樹脂成形品12を射出成形によって成形する。
【0010】
先ず、射出成形装置10によって射出成形される樹脂成形品12について、図1及び図2を参照しながら説明する。
【0011】
樹脂成形品12は、軸方向(矢印A方向)に沿って直線状に形成された管体である。樹脂成形品12は、円筒部14と、第1環状壁部16と、第2環状壁部18と、環状溝部20とを備える。
【0012】
円筒部14は、軸方向に沿って一定径で円環状に形成される。円筒部14の軸方向における一端側及び他端側には、それぞれ管端面14a、14bを有する。管端面14a、14bは、円筒部14の一端側及び他端側の端面である。円筒部14の内部は、軸方向(矢印A方向)に沿った貫通孔22を備える。貫通孔22は、円筒部14の管端面14a、14bにそれぞれ開口する。
【0013】
円筒部14は、管本体24と、一対の管端部26a、26bとを有する。管本体24は、円筒部14の軸方向中央から後述する第1環状壁部16の側壁面16aまで延在する。管端部26aは、管本体24に対して管端面14a寄りに配置される。管端部26aは、第1環状壁部16の側壁面16aから管本体24の管端面14aまで延在する。管端部26bは、管本体24に対して管端面14b寄りに配置される。管端部26bは、第1環状壁部16の側壁面16aから管本体24の管端面14bまで延在する。管端部26a、26bの外周面28は、環状溝部20の一部を構成する。
【0014】
第1及び第2環状壁部16、18は、円筒部14の軸方向における一端側及び他端側にそれぞれ配置される。第1及び第2環状壁部16、18は、円筒部14の外周面24a、28から径方向外方に突出した環状である。第1環状壁部16と第2環状壁部18とは円筒部14の軸方向(矢印A方向)に互いに離間し、向かい合う。
【0015】
第1環状壁部16は、円筒部14の管端面14a、14bから軸方向中央寄りに配置される。第1環状壁部16は、円筒部14における管本体24の外周面24aに配置される。
【0016】
第1環状壁部16は、円筒部14の軸方向の外側を向く側壁面16aを有する。側壁面16aは、円筒部14の軸線と略直交する平面である。側壁面16aは、第2環状壁部18に向かい合う。第1環状壁部16は、円筒部14の軸方向の中央側を向く壁面16bを有する。側壁面16aと壁面16bとは、円筒部14の軸方向(矢印A方向)に離間して略平行である。
【0017】
第2環状壁部18は、円筒部14における管端部26a、26bの外周面28に配置される。第2環状壁部18は、第1環状壁部16から軸方向の外側に離間して配置される。第2環状壁部18は、内壁面18aを有する。内壁面18aは、第1環状壁部16の側壁面16aと向かい合う。第1環状壁部16と第2環状壁部18とが平行である。円筒部14の外周面24a、28に対する第1環状壁部16の高さと第2環状壁部18の高さとが略同一である。第2環状壁部18は、円筒部14の軸方向の外側を向く軸端面18bを有する。軸端面18bと内壁面18aとが略平行である。
【0018】
環状溝部20は、第1環状壁部16と第2環状壁部18との間に配置される。環状溝部20は、管端部26a、26bの外周面28と、第1環状壁部16の側壁面16aと第2環状壁部18の内壁面18aとに囲まれた空間である。環状溝部20には、例えば、環状のシール部材30(図2参照)が装着可能である。シール部材30は、環状溝部20の底面(管端部26a、26bの外周面28)に接触する。
【0019】
次に、樹脂成形品12の射出成形を行う射出成形装置10について説明する。
【0020】
図1に示すように、射出成形装置10は、第1キャビティC1を内部に有した一次成形型34(図3参照)と、第2キャビティC2を内部に有した二次成形型36と、樹脂材供給装置38とを備える。射出成形装置10は、一次成形型34による一次成形(第1成形工程)によって樹脂成形品12の基となる中間成形体40を成形する。射出成形装置10は、二次成形型36による二次成形(第2成形工程)によって中間成形体40(図4参照)を基にして樹脂成形品12(図1参照)を成形する。
【0021】
図3に示すように、一次成形型34と樹脂材供給装置38とが配管42を介して互いに接続される。樹脂材供給装置38は、加熱して溶融させた樹脂材Rを配管42を通じて一次成形型34へ供給可能である(図4参照)。図1に示すように、二次成形型36と樹脂材供給装置38とが配管42を介して互いに接続される。樹脂材供給装置38は、加熱して溶融させた樹脂材Rを配管42を通じて二次成形型36へ供給可能である。一次成形型34及び二次成形型36のいずれか一方に対して樹脂材供給装置38から樹脂材Rを選択的に供給可能である。
【0022】
図3及び図4に示すように、一次成形型34は、第1及び第2主型44、46と、一対の第1スライド型48a、48bとを備える。
【0023】
第1及び第2主型44、46は、軸方向(矢印A方向)に沿って延在する。図5に示す第1及び第2主型44、46の軸方向から見て、第1及び第2主型44、46の断面は半円形状である。第1及び第2主型44、46は、中間成形体40及び樹脂成形品12の軸中心を挟んで互いに向かい合う略対称形状である。第1主型44と第2主型46とが、中間成形体40及び樹脂成形品12の軸中心を挟んで対称に配置される。
【0024】
図示しない変位機構によって、第1主型44と第2主型46とが、中間成形体40及び樹脂成形品12を挟んで互いに接近・離間可能に配置される。第1及び第2主型44、46の移動方向は、第1及び第2主型44、46の軸線と直交する方向(矢印B方向)である。第1及び第2主型44、46の移動方向は、矢印A方向と矢印B方向とに直交する方向でもよい。
【0025】
第1主型44の軸方向に沿った両端部は、型端部44a、44bを有する。型端部44a、44bは、第1主型44の軸方向と直交した面を有する。第2主型46の軸方向に沿った両端部は、型端部46a、46bを有する。型端部46a、46bは、第2主型46の軸方向と直交した面を有する。第1及び第2主型44、46の内周面は、第1キャビティC1の一部を構成する。
【0026】
第1及び第2主型44、46の内周面は、筒体成形部50と、一対の第1壁部成形部52とを有する。
【0027】
筒体成形部50は、第1及び第2主型44、46の軸方向に沿って延在する。筒体成形部50によって円筒部14の管本体24の外周面24aが成形される。
【0028】
第1壁部成形部52は、筒体成形部50に軸方向における両端部にそれぞれ配置される。第1壁部成形部52は、筒体成形部50に対して径方向外側に窪む。第1壁部成形部52は、第1主型44の型端部44a、44b及び第2主型46の型端部46a、46bにそれぞれ開口する。第1壁部成形部52の内周面は、筒体成形部50に対して径方向外方に配置される。第1壁部成形部52の内周面は、第1及び第2主型44、46の管端面14a、14bに向けて径方向外方に向けて傾斜した傾斜面である。第1壁部成形部52によって第1環状壁部16の外周面と、第1環状壁部16のうち管本体24の外周面24aと第1環状壁部16の外周面とを繋ぐ壁面16bとが成形される。
【0029】
第1主型44は、溶融した樹脂材Rが供給される第1ランナ54を有する。第1ランナ54は、第1主型44の軸方向中央に配置され、配管42を介して樹脂材供給装置38と接続される。樹脂材供給装置38から溶融した樹脂材Rが第1ランナ54へ供給されることで、樹脂材Rが第1主型44を含む第1キャビティC1の内部に充填される(図4参照)。第1ランナ54は、第2主型46に配置してもよいし、第1ランナ54を第1及び第2主型44、46にそれぞれ配置してもよい。
【0030】
第1スライド型48aは、第1及び第2主型44、46の一方の型端部44a、46aに向かい合う。第1スライド型48aは、中間成形体40の円筒部14の軸方向に沿って第1及び第2主型44、46の型端部44a、46aに対して型閉めされる。第1スライド型48bは、第1及び第2主型44、46の他方の型端部44b、46bに向かい合う。第1スライド型48bは、中間成形体40の円筒部14の軸方向に沿って第1及び第2主型44、46の型端部44b、46bに対して型閉めされる。第1スライド型48a、48bは、中間成形体40における円筒部14の管端部26a、26b、管本体24の内周面及び第1環状壁部16の側壁面16aを成形する。
【0031】
第1スライド型48a、48bは、第1カバー部56と、第1カバー部56から突出した第1軸部58とを備える。第1カバー部56は、円板状である。第1カバー部56は、第1及び第2主型44、46の型端部44a、46a、型端部44b、46bを覆うように配置される。第1カバー部56の直径は、第1及び第2主型44、46を径方向に合わせた直径と略同一である。
【0032】
第1カバー部56は、第1及び第2主型44、46の型端部44a、46a、型端部44b、46bに向かい合う第1カバー端部60を有する。第1カバー端部60は、環状であり第1カバー部56の外縁部を構成する。第1カバー端部60は、第1カバー部56の軸線と直交する平坦面を有する。第1及び第2主型44、46と第1スライド型48a、48bとが型閉めされたとき、第1カバー端部60と第1及び第2主型44、46の型端部44a、46aとの間、第1カバー端部60と型端部44b、46bとの間でそれぞれ第1環状壁部16を成形する。第1カバー端部60は、第1環状壁部16の側壁面16aを成形する。
【0033】
第1軸部58は、第1カバー部56の軸中心に配置される。第1軸部58は、第1カバー端部60から軸線方向に沿って突出する。第1スライド型48a、48bの軸方向から見て、第1軸部58の断面形状は円形状である(図5参照)。第1軸部58の直径は、樹脂成形品12の貫通孔22の直径に対応する。第1軸部58は、中間成形体40における円筒部14の内周面を成形する。
【0034】
第1カバー端部60の内周面と第1軸部58との間には、環状の第1凹部62が形成される。第1凹部62は、第1カバー端部60の端面から軸方向に窪む。一次成形型34によって一次成形が行われるとき、第1凹部62によって円筒部14の管端部26a、26bが成形される。
【0035】
図3に示す一次成形型34によって一次成形が行われるとき、第1及び第2主型44、46における一方の型端部44a、46aに対して一方の第1スライド型48aが組み付けられ、第1及び第2主型44、46における他方の型端部44b、46bに対して他方の第1スライド型48bが組み付けられることで、一次成形型34が型閉めされる。このとき、各第1スライド型48a、48bの第1軸部58は、それぞれ中間成形体40の軸方向中央まで挿入され互いに向かい合う。
【0036】
図1に示すように、二次成形型36は、第1及び第2主型44、46と、一対の第2スライド型64a、64bと、一対の第1及び第2中子型66、68とを備える。二次成形型36の第1及び第2主型44、46は、一次成形型34の第1及び第2主型44、46と共通である。
【0037】
第2スライド型64a、64bは、中間成形体40における円筒部14の管端面14a、14bに対してそれぞれ型閉めされる。第2スライド型64a、64bは、中間成形体40に対して第2環状壁部18を成形する。第2スライド型64aは、第1及び第2主型44、46の一方の型端部44a、46aにそれぞれ向かい合う。第2スライド型64bは、第1及び第2主型44、46の他方の型端部44b、46bに向かい合う。
【0038】
第2スライド型64a、64bは、第2カバー部70と、第2カバー部70から突出した第2軸部72と、第2凹部74とを備える。第2カバー部70は、円板状である。第2カバー部70は、第1及び第2主型44、46の型端部44a、46a、型端部44b、46bを覆うように配置される。第2カバー部70の直径は、第1スライド型48a、48bの第1カバー部56の直径と略同一である。
【0039】
第2カバー部70は、第1主型44の型端部44a、44b、第2主型46の型端部46a、46bに向かい合う第2カバー端部76を有する。第2カバー端部76は、環状であり第2カバー部70の外縁部を構成する。第2カバー端部76は、第2カバー部70の軸線と直交する平坦面を有する。二次成形において、第1及び第2主型44、46と第2スライド型64a、64bとが型閉めされたとき、第2カバー端部76と第1及び第2主型44、46の型端部44a、46aとが軸方向に離間し、第2カバー端部76と型端部44b、46bとが軸方向に離間する。第2カバー端部76の側面が、後述する第1及び第2中子型66、68に当接する。
【0040】
各第2カバー部70は、溶融した樹脂材Rが供給される第2ランナ78を有する。第2ランナ78は、第2カバー部70を軸方向に貫通する。配管42を介して第2ランナ78と樹脂材供給装置38とが接続される。樹脂材供給装置38から溶融した樹脂材Rが第2ランナ78へ供給されることで、樹脂材Rが第2キャビティC2を構成する第2凹部74内に供給される。
【0041】
第2軸部72は、第2カバー部70の軸中心に配置される。第2軸部72は、第2カバー端部76から軸線方向に沿って突出する。第2軸部72の断面形状は円形状である。第2軸部72の直径は、第1スライド型48a、48bの第1軸部58の直径と略同一である。二次成形時において第1及び第2主型44、46と第2スライド型64a、64bとが型閉めされたとき、第2軸部72は、中間成形体40の貫通孔22に挿入される。このとき、第2軸部72は、中間成形体40の軸方向中央まで挿入される。
【0042】
第2凹部74は、第2カバー端部76の内周面と第2軸部72との間に配置される環状である。第2凹部74は、第2カバー端部76の端面から軸方向に窪む。第2凹部74は、端部挿入部80と、第2壁部成形部82とを有する。端部挿入部80は、環状であり第2軸部72の径方向外方に配置される。二次成形型36によって二次成形が行われるとき、中間成形体40の管端部26a、26bが端部挿入部80に挿入される。
【0043】
第2壁部成形部82は、環状であり端部挿入部80の径方向外方に配置される。第2壁部成形部82の内周面は、第2カバー端部76の側壁面16aから離間する方向に向けて径方向内方へと傾斜した傾斜面である。第2壁部成形部82によって第2環状壁部18が成形される。
【0044】
第1及び第2中子型66、68は、中間成形体40及び樹脂成形品12の軸中心を挟んで略対称形状である。第1中子型66と第2中子型68とが、中間成形体40の軸中心を挟んで対称に配置される。第1中子型66は、第1主型44に近接して配置される。第2中子型68は、第2主型46に近接して配置される。
【0045】
図示しない変位機構によって、第1中子型66と第2中子型68とが、第1及び第2主型44、46(円筒部14)に対して第1及び第2主型44、46の軸線と直交方向(矢印B方向)に接近・離間可能に配置される。第1中子型66と第2中子型68とが、中間成形体40を挟んで互いに接近・離間可能に配置される。第1及び第2中子型66、68の移動方向は、第1及び第2主型44、46及び中間成形体40の軸線と直交する方向である。
【0046】
第1及び第2中子型66、68は、それぞれ一対の中子体84a、84bを有する。中子体84a、84bは、円環体を半分にした半割体である。一方の中子体84aと他方の中子体84bとが、第1及び第2中子型66、68の軸方向(矢印A方向)に離間する。一対の中子体84a、84bは、第1及び第2中子型66、68の軸線と直交して互いに平行である。一方の中子体84aと他方の中子体84bとがフレーム86によって互いに連結される。
【0047】
二次成形型36によって二次成形を行うとき、第1中子型66が第1主型44の外周から装着され、第2中子型68が第2主型46の外周から装着される。第1中子型66の中子体84a、84bは、第1主型44の型端部44a、44bと第2スライド型64a、64bの第2カバー端部76との間に挿入される。第1中子型66の中子体84a、84bは、中間成形体40の第1環状壁部16の側壁面16aに隣接して配置される。
【0048】
第2中子型68の中子体84a、84bは、第2主型46の型端部46a、46bと第2スライド型64a、64bの第2カバー端部76との間に挿入される。第2中子型68の中子体84a、84bは、中間成形体40における第1環状壁部16の側壁面16aに向かい合い隣接して配置される。
【0049】
次に、射出成形装置10によって樹脂成形品12を射出成形する場合について説明する。
【0050】
先ず、一次成形型34によって樹脂成形品12の基となる中間成形体40を成形する一次成形(第1成形工程)を行う。図3に示す第1成形工程において、一次成形型34を構成する第1及び第2主型44、46を図示しない変位機構によって軸中心と直交する方向(矢印B方向)に型閉めする。一対の第1スライド型48a、48bを、第1及び第2主型44、46の軸方向に沿って互いに接近させる方向に型閉めする。一対の第1スライド型48a、48bによって第1主型44の型端部44a、44b及び第2主型46の型端部46a、46bが覆われる。第1及び第2主型44、46、第1スライド型48a、48bによって覆われた第1キャビティC1が一次成形型34の内部に形成される。
【0051】
図4に示すように、溶融した樹脂材Rを配管42を通じて樹脂材供給装置38から第1ランナ54に供給する。樹脂材Rは、第1ランナ54から第1主型44の内部を経て第1キャビティC1に充填される。第1キャビティC1内で樹脂材Rが冷却されて固化することで、第1キャビティC1内で中間成形体40が成形される。中間成形体40は、管本体24及び管端部26a、26bを有した円筒部14と、円筒部14の外周面24aに形成される第1環状壁部16とを有する。
【0052】
詳細には、第1及び第2主型44、46の第1壁部成形部52と第1スライド型48a、48bの第1軸部58との間で、中間成形体40における円筒部14の管本体24が成形される。第1及び第2主型44、46の第1壁部成形部52と第1スライド型48a、48bの第1カバー端部60との間で、中間成形体40の第1環状壁部16の外周面及び壁面16bが成形される。第1カバー端部60、第1凹部62と第1軸部58との間で、中間成形体40の管端部26a、26bが成形される。第1スライド型48a、48bの第1カバー端部60によって、中間成形体40の第1環状壁部16の側壁面16aが成形される。
【0053】
図4に示す第1成形工程において中間成形体40の成形が終了した後、図6に示すように、第1スライド型48a、48bを型開きして離脱させる離脱工程を行う。
【0054】
具体的には、第1及び第2主型44、46から離間する方向に向けて一対の第1スライド型48a、48bを移動させる。第1スライド型48a、48bの第1カバー部56が、第1及び第2主型44、46からそれぞれ離間する。第1スライド型48a、48bの第1軸部58が、中間成形体40の貫通孔22から脱抜する。このとき、第1及び第2主型44、46は、次の第2成形工程で用いられる二次成形型36の一部を構成するため、第1及び第2主型44、46を、中間成形体40の管本体24及び第1環状壁部16の径方向外方に装着したままとする。
【0055】
一対の第1スライド型48a、48bを軸方向に離脱させると、中間成形体40の管端部26a、26b及び第1環状壁部16の側壁面16aが外部に露呈する。このとき、貫通孔22の内周面には、一方の第1スライド型48aの第1軸部58と、他方の第1スライド型48bの第1軸部58との間に、第1成形工程に伴って第1型割線L1が形成される。第1型割線L1は、貫通孔22の内周面に沿った環状である。
【0056】
第1環状壁部16の外周部には、第2型割線L2が形成される。第2型割線L2は、第1環状壁部16の外周面と側壁面16aとの境界に形成される。第2型割線L2は、第1成形工程において第1主型44の型端部44a及び第2主型46の型端部46aと第1スライド型48aの第1カバー端部60との境界部位に形成される線である。第2型割線L2は、第1成形工程において第1主型44の型端部44b及び第2主型46の型端部46bと第1スライド型48bの第1カバー端部60との境界部位に形成される線である。第2型割線L2は、第1環状壁部16の外周面に沿った環状である。
【0057】
次に、二次成形型36によって中間成形体40を基にして樹脂成形品12を成形する二次成形(第2成形工程)を行う。図7に示す第2成形工程の準備工程において、第1及び第2中子型66、68を、第1及び第2主型44、46に対して装着して型閉めを行う。第1中子型66と第2中子型68とが型開きされた状態から、図示しない変位機構によって第1中子型66と第2中子型68とが互いに接近するように中間成形体40に向けて移動させる。第1及び第2中子型66、68の移動方向は、中間成形体40の軸中心と直交する方向(矢印B方向)である。中間成形体40の第1環状壁部16の軸方向の外側に、第1及び第2中子型66、68の中子体84a、84bを径方向外方から挿入する。各中子体84a、84bは、第1環状壁部16の側壁面16aに隣接して配置される。
【0058】
次に、図8に示すように、第2スライド型64aを第1主型44の型端部44a及び第2主型46の型端部46aに装着し、第2スライド型64bを第1主型44の型端部44b及び第2主型46の型端部46bに装着して型閉めを行う。このとき、第2スライド型64a、64bの第2軸部72は、中間成形体40の貫通孔22に挿入されて貫通孔22に保持される。これにより、第2スライド型64a、64bは、中間成形体40と同軸に位置決めされる。
【0059】
第2スライド型64a、64bは、中間成形体40における管端部26a、26bに当接することで、中間成形体40に対して軸方向に位置決めされる。このとき、第2カバー端部76が、第1及び第2中子型66、68の中子体84a、84bに向かい合って当接する。第1及び第2主型44、46の型端部44a、44b、46a、46bと第2カバー端部76とが、中子体84a、84bを間にして中間成形体40の軸方向に離間する。第2凹部74が、中間成形体40の第1環状壁部16の側壁面16aに向かい合う。中間成形体40の管端部26a、26bが、第2凹部74の端部挿入部80に挿入される。
【0060】
これにより、第2スライド型64a、64bの第2カバー端部76と第1及び第2中子型66、68の中子体84a、84bとの間には、第2凹部74の第2壁部成形部82から環状の第2キャビティC2が形成される。第2キャビティC2は、中間成形体40の管端部26a、26bの径方向外方に配置される。
【0061】
図1に示すように、溶融した樹脂材Rを樹脂材供給装置38から配管42を通じて各第2スライド型64a、64bの第2ランナ78へそれぞれ供給する。樹脂材Rは、第2ランナ78から第2キャビティC2である第2凹部74の第2壁部成形部82内に充填される。第2キャビティC2内で樹脂材Rが冷却されて固化することで、第2キャビティC2内で管端部26a、26bの外周に環状の第2環状壁部18が成形される。第2環状壁部18は、管端部26a、26bの外周面28に接続されて一体となる。第2環状壁部18は、管端部26a、26bの外周面28から径方向外方に突出した環状に形成される。第2環状壁部18は、中子体84a、84bによって第1環状壁部16の側壁面16aから軸方向(矢印A方向)の外側に離間した位置に成形される。
【0062】
これにより、第1環状壁部16と第2環状壁部18との間には、管端部26a、26bの外周面28から径方向外方に環状溝部20が形成される。第2成形工程において、中間成形体40の管端部26a、26bに対して一対の第2環状壁部18が成形されることで樹脂成形品12となる。
【0063】
図9に示すように、二次成形型36から樹脂成形品12を取り出すための型開きを行う。
【0064】
第1及び第2主型44、46を、それぞれ樹脂成形品12から離間する方向に向けて移動させる。第1及び第2主型44、46に対して一対の第2スライド型64a、64bを離脱させる。第2スライド型64a、64bの第2カバー部70が、第1及び第2主型44、46から離間する。第2スライド型64a、64bの第2軸部72が、樹脂成形品12の貫通孔22から脱抜する。
【0065】
樹脂成形品12の軸中心と直交する方向に向けて、第1中子型66と第2中子型68とを互いに離間させる方向へ移動させる。第1及び第2中子型66、68の中子体84a、84bが環状溝部20から径方向外側へ離脱する。樹脂成形品12の軸中心と直交する方向に向けて、第1主型44と第2主型46とを互いに離間させる方向へ移動させる。第1及び第2主型44、46が樹脂成形品12の円筒部14及び第1環状壁部16に対して径方向外側へ離脱する。これにより、二次成形型36から樹脂成形品12が取り出される。
【0066】
図2に示すように、樹脂成形品12には、第1主型44と第2主型46との型割部位に第3型割線L3が形成される。第3型割線L3は、円筒部14における管本体24及び第1環状壁部16の側壁面16aまで軸方向に沿って外周面に直線状に延在する。第3型割線L3は、樹脂成形品12の軸中心に対して対称位置に2本形成される。
【0067】
第2環状壁部18の外周部には、第4型割線L4が形成される。第4型割線L4は、第2環状壁部18の外周面と管本体24の方向となる第2環状壁部18の壁面との境界に形成される。第4型割線L4は、第2成形工程において中子体84a、84bと第2スライド型64a、64bの第2カバー端部76との境界部位に形成される線である。第4型割線L4は、第2環状壁部18の外周面に沿った環状である。
【0068】
第2環状壁部18の内周部には、第5型割線L5が形成される。第5型割線L5は、第1環状壁部16に向かい合う第2環状壁部18の内壁面18aと管端部26a、26bの外周面28との境界に形成される。第5型割線L5は、第2成形工程において第1及び第2中子型66、68の中子体84a、84bの内周面と第2スライド型64a、64bの第2壁部成形部82との境界部位に形成される環状の線である。
【0069】
第2環状壁部18の軸端面18bには、第6型割線L6が形成される。第6型割線L6は、管端部26a、26bの外周面28と第2スライド型64a、64bの第2壁部成形部82との境界部位に形成される。第6型割線L6は、管端部26a、26bの外周面28と第2環状壁部18との境界部位に形成される環状の線である。
【0070】
樹脂成形品12の環状溝部20には、軸方向に延在する型割線は形成されない。中間成形体40を成形する第1成形工程において、第1スライド型48a、48bの第1カバー端部60が環状であるため、環状溝部20を構成する管端部26a、26bの外周面28には軸方向に延在する型割線が形成されない。樹脂成形品12を成形する第2成形工程において、第1環状壁部16の側壁面16aに隣接して第1及び第2中子型66、68の中子体84a、84bが配置されているため、樹脂材Rの流入が防止され、環状溝部20には軸方向に延在する型割線が形成されない。環状溝部20には、第5型割線L5が形成されるが、第5型割線L5は環状であり環状溝部20の軸方向には延在しない。第5型割線L5は、第2環状壁部18の内壁面18aに隣接する環状溝部20の角部に形成される。すなわち、樹脂成形品12では、第1及び第2環状壁部16、18に囲まれた環状溝部20を有し、環状溝部20の底面となる管端部26a、26bの外周面28に軸方向に沿った型割線が形成されない。
【0071】
樹脂成形品12は、円筒部14の軸方向に沿った一端側及び他端側にそれぞれ第1及び第2環状壁部16、18(環状溝部20)を備える場合に限定されない。円筒部14の一端側及び他端側のいずれか一方のみに第1及び第2環状壁部16、18(環状溝部20)を備える樹脂成形品12であってもよい。このとき、一次成形において、第1及び第2主型44、46の一端側又は他端側に1つの第1スライド型48a(48b)を型閉めして1つの第1及び第2環状壁部16、18を有した中間成形体40を成形し、二次成形において、第1及び第2主型44、46の一端側又は他端側に1つの第2スライド型64a(64b)を型閉めして1つの環状溝部20を成形することで、第1及び第2環状壁部16、18(環状溝部20)を1つずつ備えた樹脂成形品12を成形してもよい。
【0072】
以上のように、本発明の実施形態では、管状の樹脂成形品12の射出成形を行うとき、円筒部14の管本体24と第1環状壁部16を有した中間成形体40を第1成形工程で成形した後、第2成形工程において、中間成形体40に対して軸方向から第2スライド型64a、64bを型閉めして円筒部14の外周面28に対して第2環状壁部18を成形する。これにより、樹脂成形品12において、第1環状壁部16と第2環状壁部18との間の環状溝部20に、成形によって軸方向に延在する型割線が形成されることが防止される。これにより、樹脂成形品12を成形した後に、環状溝部20の型割線を追加工によって取り除く必要がなく、製造工数及び製造コストを削減することができる。
【0073】
中間成形体40を成形する第1成形工程において、第1及び第2主型44、46のうちの第1主型44の第1ランナ54から樹脂材Rを第1キャビティC1内へと供給することで、第1キャビティC1内に樹脂材Rを充填させて中間成形体40を成形することができる。
【0074】
樹脂成形品12の成形を行うための射出成形装置10において、一次成形型34によって円筒部14の管本体24と第1環状壁部16を有した中間成形体40を成形する際、第2スライド型64a、64bを中間成形体40に対して軸方向に型開きし、且つ、二次成形型36の第2スライド型64a、64bによって円筒部14に第2環状壁部18を成形することで、第1環状壁部16と第2環状壁部18との間の環状溝部20(管端部26a、26bの外周面28)が径方向に型割されず、しかも、第1及び第2中子型66、68によって環状溝部20への樹脂材Rの供給を防止できる。そのため、樹脂成形品12の環状溝部20の外周面に型割線が生じることを防止することができる。
【0075】
上記の実施形態をまとめると、以下のようになる。
【0076】
上記の実施形態は、管状の樹脂成形品(12)を射出成形によって成形する樹脂成形品の射出成形方法であって、
前記樹脂成形品は、
前記樹脂成形品の軸方向に沿って延在し、前記軸方向における少なくとも一端側の端面である管端面(14a、14b)を有する円筒部(14)と、
前記円筒部の少なくとも前記一端側において前記円筒部の外周面(24a)から径方向外方に突出し、前記軸方向の外側を向く側壁面(16a)を有した第1環状壁部(16)と、
前記円筒部の少なくとも前記一端側において前記円筒部の前記外周面から径方向外方に突出し、前記第1環状壁部から前記軸方向の外側に離間して配置される第2環状壁部(18)と、
前記第1環状壁部と前記第2環状壁部との間に形成される環状溝部(20)と、
を有し、
前記円筒部は、前記第1環状壁部の前記側壁面から少なくとも前記円筒部の前記軸方向における中央部までを構成する管本体(24)と、前記側壁面から前記円筒部の前記管端面まで延在し外周面が前記環状溝部の一部を構成する管端部(26a、26b)とを有し、
前記射出成形方法は、
前記円筒部の軸中心と直交する方向に型閉めされる第1及び第2主型(44、46)と、前記円筒部の軸方向に沿って前記第1及び第2主型の少なくとも一端面に対して型閉めされる第1スライド型(48a、48b)とによって、前記樹脂成形品における前記管本体と前記第1環状壁部とを備えた中間成形体(40)を成形する第1成形工程と、
前記中間成形体を成形した後に、前記円筒部の前記軸方向に沿って前記中間成形体から前記第1スライド型を離脱させる離脱工程と、
前記中間成形体における前記円筒部の前記管端面に対して前記軸方向に沿って型閉めされる第2スライド型(64a、64b)と、前記円筒部の前記軸中心に対して直交する方向に型閉めされ、前記側壁面に隣接して配置される第1及び第2中子型(66、68)とによって、前記円筒部の前記外周面に前記第2環状壁部を成形する第2成形工程と、
を有する。
【0077】
前記第1成形工程において、溶融した樹脂材(R)を、前記第1主型及び前記第2主型の少なくともいずれか一方から前記第1主型、前記第2主型及び前記第1スライド型によって構成される第1キャビティ(C1)内へと射出する。
【0078】
前記樹脂成形品は、前記円筒部の前記軸方向における前記一端側と他端側の各々に、前記第1環状壁部、前記第2環状壁部及び前記環状溝部を有し、
前記第1成形工程では、前記第1及び第2主型と、前記第1及び第2主型の軸方向の両側に配置される2つの前記第1スライド型とによって、2つの前記第1環状壁部を備えた前記中間成形体を成形し、
前記第2成形工程では、前記第1及び第2主型と、前記円筒部の前記軸方向の両側に配置される2つの前記第2スライド型と、前記円筒部の前記軸方向の両側に配置される前記第1及び第2中子型とによって、前記円筒部の外周面に2つの前記第2環状壁部を成形する。
【0079】
管状の樹脂成形品を射出成形によって成形する射出成形装置であって、
前記樹脂成形品は、
前記樹脂成形品の軸方向に沿って延在し、前記軸方向における少なくとも一端側の端面である管端面を有する円筒部と、
前記円筒部の少なくとも前記一端側において前記円筒部の外周面から径方向外方に突出し、前記軸方向の外側を向く側壁面を有した第1環状壁部と、
前記円筒部の少なくとも前記一端側において前記円筒部の前記外周面から径方向外方に突出し、前記第1環状壁部から前記軸方向の外側に離間して配置される第2環状壁部と、
前記第1環状壁部と前記第2環状壁部との間に形成される環状溝部と、
を有し、
前記円筒部は、前記第1環状壁部の前記側壁面から少なくとも前記円筒部の前記軸方向における中央部までを構成する管本体と、前記側壁面から前記円筒部の前記管端面まで延在し外周面が前記環状溝部の一部を構成する管端部とを有し、
前記射出成形装置は、
第1キャビティを内部に有し、前記樹脂成形品の前記円筒部及び前記第1環状壁部を有した中間成形体を成形する一次成形型(34)と、
第2キャビティ(C2)を内部に有し、前記中間成形体の前記円筒部の前記外周面に前記第2環状壁部を成形する二次成形型(36)と、
を備え、
前記一次成形型は、
前記円筒部の軸中心に対して直交する方向に型閉めされ、前記管本体の外周面と、前記第1環状壁部の外周面と、前記第1環状壁部のうち前記管本体の前記外周面と前記第1環状壁部の前記外周面とを繋ぐ壁面(16b)とを成形する第1及び第2主型と、
前記円筒部の軸方向に沿って前記第1及び第2主型の少なくとも一端面に対して型閉めされ、前記第1環状壁部の前記側壁面と、前記管端部とを成形する第1スライド型と、
を備え、
前記二次成形型は、
前記中間成形体における前記円筒部の前記管端面に対して型閉めされ、前記第2環状壁部を成形する第2スライド型と、
前記中間成形体の前記管端部の外周面に前記円筒部の軸中心に対して直交する方向に型閉めされ、前記第1環状壁部の前記側壁面に隣接して配置される第1及び第2中子型と、
を備える。
【0080】
前記第1主型及び前記第2主型の少なくともいずれか一方には、前記第1主型、前記第2主型及び前記第1スライド型によって構成される第1キャビティ内へ溶融した樹脂材を射出するランナ(54)を備える。
【0081】
前記樹脂成形品は、前記円筒部の前記軸方向における前記一端側と他端側の各々に、前記第1環状壁部、前記第2環状壁部及び前記環状溝部を有し、
前記一次成形型は、前記第1及び第2主型と、前記第1及び第2主型の軸方向の両側に配置される2つの前記第1スライド型とによって、2つの前記第1環状壁部を備えた前記中間成形体を成形し、
前記二次成形型は、前記第1及び第2主型と、前記円筒部の前記軸方向の両側に配置される2つの前記第2スライド型と、前記円筒部の前記軸方向の両側に配置される前記第1及び第2中子型とによって、前記円筒部の外周面に2つの前記第2環状壁部を成形する。
【0082】
なお、本発明は、上述した開示に限らず、本発明の要旨を逸脱することなく、種々の構成を採り得る。
【符号の説明】
【0083】
10…射出成形装置 12…樹脂成形品
14…円筒部 14a、14b…管端面
16…第1環状壁部 16a…側壁面
18…第2環状壁部 20…環状溝部
24…管本体 26a、26b…管端部
40…中間成形体 44…第1主型
46…第2主型 48a、48b…第1スライド型
64a、64b…第2スライド型 66…第1中子型
68…第2中子型
図1
図2
図3
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図9