(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024030896
(43)【公開日】2024-03-07
(54)【発明の名称】エンジンのEGRシステム
(51)【国際特許分類】
F02M 26/54 20160101AFI20240229BHJP
F02M 26/66 20160101ALI20240229BHJP
F02D 29/02 20060101ALI20240229BHJP
F02M 26/68 20160101ALI20240229BHJP
F16K 31/04 20060101ALI20240229BHJP
【FI】
F02M26/54
F02M26/66
F02D29/02 321B
F02D29/02 321C
F02M26/68 311
F16K31/04 A
F16K31/04 K
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022134107
(22)【出願日】2022-08-25
(71)【出願人】
【識別番号】000116574
【氏名又は名称】愛三工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000291
【氏名又は名称】弁理士法人コスモス国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】吉岡 衛
(72)【発明者】
【氏名】河井 伸二
(72)【発明者】
【氏名】中島 一真
【テーマコード(参考)】
3G062
3G093
3H062
【Fターム(参考)】
3G062DA00
3G062EA11
3G062EC01
3G062EC05
3G062GA16
3G093CA01
3G093EC02
3G093FA12
3G093FB03
3H062AA02
3H062AA15
3H062BB04
3H062BB28
3H062CC02
3H062DD01
3H062EE08
3H062GG02
3H062HH02
3H062HH10
(57)【要約】
【課題】EGR弁の全閉突き当て制御時にステップモータの脱調による弁体の微小開弁を抑制すること。
【解決手段】EGRシステムは、EGR通路のEGR弁14を、電子制御装置(ECU)がエンジンの運転状態に応じて制御する。EGR弁は、ハウジング23の流路22に設けられた弁座24、弁座に着座可能に設けられた弁体25、弁体が設けられた弁軸26、弁軸を往復動させるステップモータ27、ステップモータのロータ43と弁軸との間に設けられた雄ねじ30と雌ねじ51、雄ねじと雌ねじとの間のバックラッシ55、及び弁体を弁座から遠ざかる方向へ付勢する弁体スプリング52を備える。ECUは、EGR弁の全閉突き当て制御を実行するときステップモータを通常駆動周波数で駆動させて弁体が弁座に突き当たる全閉付近まで閉弁させた後、低駆動周波数でステップモータを駆動させて弁体を弁座に突き当てる。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンのEGR通路に設けられるEGR弁を、前記エンジンの運転状態に応じて制御手段により制御するように構成したエンジンのEGRシステムであって、
前記EGR弁は、
流路を有するハウジングと、
前記流路に設けられた弁座と、
前記弁座に対して着座可能に設けられた弁体と、
前記弁体が設けられた弁軸と、
前記弁軸は一端部と他端部を含み、前記一端部に前記弁体が固定され、前記他端部に 被動ねじが設けられることと、
前記弁軸をその軸線方向へ往復動させるためのステップモータと、
前記ステップモータは、前記被動ねじに螺合される駆動ねじを有するロータを含むこ とと、
前記流路は、前記弁座を境として前記ロータに近い側と遠い側に分かれ、前記近い側 の前記流路にて前記弁体が前記弁座に着座可能に配置されることと、
前記被動ねじは、前記弁軸の軸線方向において螺旋状に連なる被動ねじ山を有し、前 記被動ねじ山は、前記弁座の方へ向いた第1被動ねじ山面と、その第1被動ねじ山面の 反対側に位置する第2被動ねじ山面を含むことと、
前記駆動ねじは、前記弁軸の軸線方向において螺旋状に連なる駆動ねじ山を有し、前 記駆動ねじ山は、前記弁座の方へ向いた第1駆動ねじ山面と、その第1駆動ねじ山面の 反対側に位置する第2駆動ねじ山面を含むことと、
前記被動ねじと前記駆動ねじとの間には、前記弁軸の軸線方向において所定のバック ラッシが設けられることと、
前記弁体を前記弁軸と共に前記弁座から遠ざかる方向へ付勢するための弁体スプリン グと
を備え、
前記制御手段は、前記弁体の全閉時に、前記弁体スプリングの付勢力に抗して、前記ステップモータにより前記弁軸をストローク運動させて前記弁体を前記弁座に突き当てる全閉突き当て制御を実行するように構成したエンジンのEGRシステムにおいて、
前記制御手段は、前記全閉突き当て制御を実行するとき、前記ステップモータを通常の駆動周波数で駆動させて前記弁体が前記弁座に突き当たる全閉付近まで閉弁させた後、前記通常の駆動周波数よりも低い駆動周波数で前記ステップモータを駆動させて前記弁体を閉弁して前記弁体を前記弁座に突き当てる
ことを特徴とするエンジンのEGRシステム。
【請求項2】
エンジンのEGR通路に設けられるEGR弁を、前記エンジンの運転状態に応じて制御手段により制御するように構成したエンジンのEGRシステムであって、
前記EGR弁は、
流路を有するハウジングと、
前記流路に設けられた弁座と、
前記弁座に対して着座可能に設けられた弁体と、
前記弁体が設けられた弁軸と、
前記弁軸は一端部と他端部を含み、前記一端部に前記弁体が固定され、前記他端部に 被動ねじが設けられることと、
前記弁軸をその軸線方向へ往復動させるためのステップモータと、
前記ステップモータは、前記被動ねじに螺合される駆動ねじを有するロータを含むこ とと、
前記流路は、前記弁座を境として前記ロータに近い側と遠い側に分かれ、前記近い側 の前記流路にて前記弁体が前記弁座に着座可能に配置されることと、
前記被動ねじは、前記弁軸の軸線方向において螺旋状に連なる被動ねじ山を有し、前 記被動ねじ山は、前記弁座の方へ向いた第1被動ねじ山面と、その第1被動ねじ山面の 反対側に位置する第2被動ねじ山面を含むことと、
前記駆動ねじは、前記弁軸の軸線方向において螺旋状に連なる駆動ねじ山を有し、前 記駆動ねじ山は、前記弁座の方へ向いた第1駆動ねじ山面と、その第1駆動ねじ山面の 反対側に位置する第2駆動ねじ山面を含むことと、
前記被動ねじと前記駆動ねじとの間には、前記弁軸の軸線方向において所定のバック ラッシが設けられることと、
前記弁体を前記弁軸と共に前記弁座から遠ざかる方向へ付勢するための弁体スプリン グと
を備え、
前記制御手段は、前記弁体の全閉時に、前記弁体スプリングの付勢力に抗して、前記ステップモータにより前記弁軸をストローク運動させて前記弁体を前記弁座に突き当てる全閉突き当て制御を実行するように構成したエンジンのEGRシステムにおいて、
前記制御手段は、前記全閉突き当て制御を実行するとき、前記ステップモータを通常の駆動周波数で駆動させて前記弁体が前記弁座に突き当たる全閉まで閉弁させた後、前記通常の駆動周波数よりも低い駆動周波数で更に前記全閉突き当て制御を継続させて前記弁体を前記弁座に突き当てる
ことを特徴とするエンジンのEGRシステム。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のエンジンのEGRシステムにおいて、
前記弁座は、前記弁体に当接可能なシート部を有し、前記弁座及び前記弁体の少なくとも一方には、前記弁体の全閉時に、前記弁体が前記シート部に接する以外の領域で、前記弁体と前記弁座との間の隙間を密閉するシール部材が設けられた
ことを特徴とするエンジンのEGRシステム。
【請求項4】
請求項3に記載のエンジンのEGRシステムにおいて、
前記制御手段は、前記全閉突き当て制御を実行した後に、前記弁体が微小開度で開弁するように前記ステップモータを駆動させる微小開度開弁制御を実行する
ことを特徴とするエンジンのEGRシステム。
【請求項5】
請求項1又は2に記載のエンジンのEGRシステムにおいて、
前記ステップモータの非駆動時に、前記弁体が前記弁体スプリングの付勢力により所定の開度開弁するように構成した
ことを特徴とするエンジンのEGRシステム。
【請求項6】
請求項5に記載のエンジンのEGRシステムにおいて、
前記制御手段は、前記エンジンの始動が要求された後、前記全閉突き当て制御を実行してから前記エンジンを始動させる
ことを特徴とするエンジンのEGRシステム。
【請求項7】
請求項5に記載のエンジンのEGRシステムにおいて、
前記制御手段は、前記エンジンの停止が要求された後、前記全閉突き当て制御を所定時間実行する
ことを特徴とするエンジンのEGRシステム。
【請求項8】
請求項1又は2に記載のエンジンのEGRシステムにおいて、
前記制御手段は、前記エンジンの停止が要求された後、前記全閉突き当て制御を所定時間実行してから前記弁体を所定の開度開弁する
ことを特徴とするエンジンのEGRシステム。
【請求項9】
請求項3に記載のエンジンのEGRシステムにおいて、
前記制御手段は、前記弁体が微小開度で開弁するように前記ステップモータを駆動させる微小開度開弁制御を実行するように構成され、
前記制御手段は、前記エンジンの停止時に前記弁体が閉弁状態となるときであって、前記EGR弁を所定の低温環境下で駆動する際に、前記全閉突き当て制御と前記微小開度開弁制御のうち一方を先に実行してから他方を実行する
ことを特徴とするエンジンのEGRシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この明細書に開示される技術は、エンジンに設けられ、弁体が弁座のシート部から直角方向に移動する形式のポペット弁構造のEGR弁を備えたEGRシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の技術として、例えば、下記の特許文献1に記載される「EGR弁」が知られている。このEGR弁は、流路を有するハウジングと、流路に設けられた弁座と、弁座に対して着座可能に設けられた弁体と、弁体が設けられた弁軸と、弁軸は一端部と他端部を含み、その一端部に弁体が固定され、他端部に雄ねじが設けられることと、弁軸をその軸線方向へ往復動させるためのステップモータと、ステップモータは、雄ねじに螺合される雌ねじを有するロータを含むことと、流路は、弁座を境としてロータに近い側と遠い側に分かれ、近い側の流路にて弁体が弁座に着座可能に配置されることとを備え、いわゆる内開式の二方ポペット弁の構造が開示されている。このEGR弁において、雄ねじは、弁軸の軸線方向において螺旋状に連なる雄ねじ山を有し、雄ねじ山は、弁座の方へ向いた第1雄ねじ山面と、その第1雄ねじ山面の反対側に位置する第2雄ねじ山面を含み、雌ねじは、弁軸の軸線方向において螺旋状に連なる雌ねじ山を有し、雌ねじ山は、弁座の方へ向いた第1雌ねじ山面と、その第1雌ねじ山面の反対側に位置する第2雌ねじ山面を含む。また、雄ねじと雌ねじとの間には、弁軸の軸線方向において所定のバックラッシが設けられ、弁体を弁軸と共に弁座から遠ざかる方向、すなわち開弁する方向へ付勢するための弁体スプリングが設けられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、特許文献1に記載のEGR弁では、全閉時に、弁体スプリングの付勢力に抗して、ステップモータにより弁軸をストローク運動させて弁体を弁座に突き当てる全閉突き当て制御を行うことがある。このとき、ステップモータでは、脱調が発生するおそれがある。ステップモータで脱調が発生すると、弁体を全閉突き当て制御しても弁体が弁座から微小に離れて開弁してしまい、その隙間でEGRガスに漏れが生じるおそれがある。
【0005】
この開示技術は、上記事情に鑑みてなされたものであって、その目的は、EGR弁の全閉突き当て制御時に突き当ての反発力によるステップモータの脱調量を抑制し、弁体の微小開弁を抑制することを可能としたエンジンのEGRシステムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、請求項1に記載の技術は、エンジンのEGR通路に設けられるEGR弁を、エンジンの運転状態に応じて制御手段により制御するように構成したエンジンのEGRシステムであって、EGR弁は、流路を有するハウジングと、流路に設けられた弁座と、弁座に対して着座可能に設けられた弁体と、弁体が設けられた弁軸と、弁軸は一端部と他端部を含み、一端部に弁体が固定され、他端部に被動ねじが設けられることと、弁軸をその軸線方向へ往復動させるためのステップモータと、ステップモータは、被動ねじに螺合される駆動ねじを有するロータを含むことと、流路は、弁座を境としてロータに近い側と遠い側に分かれ、近い側の流路にて弁体が弁座に着座可能に配置されることと、被動ねじは、弁軸の軸線方向において螺旋状に連なる被動ねじ山を有し、被動ねじ山は、弁座の方へ向いた第1被動ねじ山面と、その第1被動ねじ山面の反対側に位置する第2被動ねじ山面を含むことと、駆動ねじは、弁軸の軸線方向において螺旋状に連なる駆動ねじ山を有し、駆動ねじ山は、弁座の方へ向いた第1駆動ねじ山面と、その第1駆動ねじ山面の反対側に位置する第2駆動ねじ山面を含むことと、被動ねじと駆動ねじとの間には、弁軸の軸線方向において所定のバックラッシが設けられることと、弁体を弁軸と共に弁座から遠ざかる方向へ付勢するための弁体スプリングとを備え、制御手段は、弁体の全閉時に、弁体スプリングの付勢力に抗して、ステップモータにより弁軸をストローク運動させて弁体を弁座に突き当てる全閉突き当て制御を実行するように構成したエンジンのEGRシステムにおいて、制御手段は、全閉突き当て制御を実行するとき、ステップモータを通常の駆動周波数で駆動させて弁体が弁座に突き当たる全閉付近まで閉弁させた後、通常の駆動周波数よりも低い駆動周波数でステップモータを駆動させて弁体を閉弁して弁体を弁座に突き当てることを趣旨とする。
【0007】
上記技術の構成によれば、制御手段は、全閉突き当て制御を実行するとき、ステップモータを通常の駆動周波数で駆動させて弁体が弁座に突き当たる全閉付近まで閉弁させた後、通常の駆動周波数よりも低い駆動周波数でステップモータを駆動させて弁体を閉弁して弁体を弁座に突き当てる。従って、弁体が弁座に突き当たるときは、ステップモータが低い駆動周波数で駆動され、通常の駆動周波数で駆動されるときよりも弁体が緩やかに弁座に突き当たるので、その突き当て時に弁体が弁体スプリングから受ける反発力が弱まる。
【0008】
上記目的を達成するために、請求項2に記載の技術は、エンジンのEGR通路に設けられるEGR弁を、エンジンの運転状態に応じて制御手段により制御するように構成したエンジンのEGRシステムであって、EGR弁は、流路を有するハウジングと、流路に設けられた弁座と、弁座に対して着座可能に設けられた弁体と、弁体が設けられた弁軸と、弁軸は一端部と他端部を含み、一端部に弁体が固定され、他端部に被動ねじが設けられることと、弁軸をその軸線方向へ往復動させるためのステップモータと、ステップモータは、被動ねじに螺合される駆動ねじを有するロータを含むことと、流路は、弁座を境としてロータに近い側と遠い側に分かれ、近い側の流路にて弁体が弁座に着座可能に配置されることと、被動ねじは、弁軸の軸線方向において螺旋状に連なる被動ねじ山を有し、被動ねじ山は、弁座の方へ向いた第1被動ねじ山面と、その第1被動ねじ山面の反対側に位置する第2被動ねじ山面を含むことと、駆動ねじは、弁軸の軸線方向において螺旋状に連なる駆動ねじ山を有し、駆動ねじ山は、弁座の方へ向いた第1駆動ねじ山面と、その第1駆動ねじ山面の反対側に位置する第2駆動ねじ山面を含むことと、被動ねじと駆動ねじとの間には、弁軸の軸線方向において所定のバックラッシが設けられることと、弁体を弁軸と共に弁座から遠ざかる方向へ付勢するための弁体スプリングとを備え、制御手段は、弁体の全閉時に、弁体スプリングの付勢力に抗して、ステップモータにより弁軸をストローク運動させて弁体を弁座に突き当てる全閉突き当て制御を実行するように構成したエンジンのEGRシステムにおいて、制御手段は、全閉突き当て制御を実行するとき、ステップモータを通常の駆動周波数で駆動させて弁体が弁座に突き当たる全閉まで閉弁させた後、通常の駆動周波数よりも低い駆動周波数で更に全閉突き当て制御を継続させて弁体を弁座に突き当てることを趣旨とする。
【0009】
上記技術の構成によれば、制御手段は、全閉突き当て制御を実行するとき、ステップモータを通常の駆動周波数で駆動させて弁体が弁座に突き当たる全閉まで閉弁させた後、通常の駆動周波数よりも低い駆動周波数で更に全閉突き当て制御を継続させて弁体を弁座に突き当てる。従って、全閉突き当て制御において、一度、通常駆動周波数でステップモータを駆動させてEGR弁が閉弁し、弁体が弁座に突き当たるときに弁体が弁体スプリングの反発力を受けて脱調するが、その後、再び低駆動周波数でステップモータを駆動させてEGR弁が閉弁し、再び弁体が弁座に突き当たるときは、その突き当て時の弁体スプリングの反発力が弱まる。
【0010】
上記目的を達成するために、請求項3に記載の技術は、請求項1又は2に技術において、弁座は、弁体に当接可能なシート部を有し、弁座及び弁体の少なくとも一方には、弁体の全閉時に、弁体がシート部に接する以外の領域で、弁体と弁座との間の隙間を密閉するシール部材が設けられたことを趣旨とする。
【0011】
上記技術の構成によれば、請求項1又は2に記載の技術の作用に加え、全閉突き当て制御時に、ステップモータの脱調により弁体がシート部に接する以外の領域に位置し、弁体と弁座との間に隙間が生じても、その隙間がシール部材により密閉される。
【0012】
上記目的を達成するために、請求項4に記載の技術は、請求項3に記載の技術において、制御手段は、全閉突き当て制御を実行した後に、弁体が微小開度で開弁するようにステップモータを駆動させる微小開度開弁制御を実行することを趣旨とする。
【0013】
上記技術の構成によれば、請求項3に記載の技術の作用に加え、全閉突き当て制御を実行した後は、微小開度開弁制御により確実に弁体が微小開度で開弁するので、弁体と弁座との間に隙間が確保される。
【0014】
上記目的を達成するために、請求項5に記載の技術は、請求項1又は2に記載の技術において、ステップモータの非駆動時に、弁体が弁体スプリングの付勢力により所定の開度開弁するように構成したことを趣旨とする。
【0015】
上記技術の構成によれば、請求項1又は2に記載の技術の作用に加え、ステップモータの非駆動時に、弁体が弁体スプリングの付勢力により所定の開度開弁するので、低温環境下でエンジンが停止しても、弁体と弁座との間に水が留まることがない。
【0016】
上記目的を達成するために、請求項6に記載の技術は、請求項5に記載の技術において、制御手段は、エンジンの始動が要求された後、全閉突き当て制御を実行してからエンジンを始動させることを趣旨とする。
【0017】
上記技術の構成によれば、請求項5に記載の技術の作用に加え、制御手段は、エンジンの始動が要求された後、全閉突き当て制御を実行してからエンジンを始動させる。従って、エンジンの始動時には、弁体が微小開弁のない全閉状態となる。
【0018】
上記目的を達成するために、請求項7に記載の技術は、請求項5に記載の技術において、制御手段は、エンジンの停止が要求された後、全閉突き当て制御を所定時間実行することを趣旨とする。
【0019】
上記技術の構成によれば、請求項5に記載の技術の作用に加え、制御手段は、エンジンの停止が要求された後、全閉突き当て制御を所定時間実行する。従って、エンジンの停止が要求されてエンジンが停止した後も、全閉突き当て制御が所定時間実行されるので、その間にEGR弁が全閉の状態に保たれ、EGR通路の中に残留するEGRガスは、時間経過と共に拡散されて濃度が低下することになる。
【0020】
上記目的を達成するために、請求項8に記載の技術は、請求項1又は2に記載の技術において、制御手段は、エンジンの停止が要求された後、全閉突き当て制御を所定時間実行してから弁体を所定の開度開弁することを趣旨とする。
【0021】
上記技術の構成によれば、請求項1又は2に記載の技術の作用に加え、制御手段は、エンジンの停止が要求された後、全閉突き当て制御を所定時間実行してから弁体を所定の開度開弁する。従って、低温環境下でエンジンが停止しても、弁体と弁座との間に水が留まることがない。
【0022】
上記目的を達成するために、請求項9に記載の技術は、請求項3に記載の技術において、制御手段は、弁体が微小開度で開弁するようにステップモータを駆動させる微小開度開弁制御を実行するように構成され、制御手段は、エンジンの停止時に弁体が閉弁状態となるときであって、EGR弁を所定の低温環境下で駆動する際に、全閉突き当て制御と微小開度開弁制御のうち一方を先に実行してから他方を実行することを趣旨とする。
【0023】
上記技術の構成によれば、請求項3に記載の技術の作用に加え、制御手段は、エンジンの停止時に弁体が閉弁状態となるときであって、EGR弁を所定の低温環境下で駆動する際に、全閉突き当て制御と微小開度開弁制御のうち一方を先に実行してから他方を実行する。従って、低温環境下でエンジンを始動するとき、弁体が弁座に対し開閉される。
【発明の効果】
【0024】
請求項1に記載の技術によれば、EGR弁の全閉突き当て制御時に突き当ての反発力によるステップモータの脱調量を抑制することができ、弁体の微小開弁を抑制することができる。この結果、弁体と弁座との間のEGRガスの漏れを抑制することができる。
【0025】
請求項2に記載の技術によれば、EGR弁の全閉突き当て制御時に突き当ての反発力によるステップモータの脱調量を抑制することができ、弁体の微小開弁を抑制することができる。この結果、弁体と弁座との間からのEGRガスの漏れを抑制することができる。
【0026】
請求項3に記載の技術によれば、請求項1又は2に記載の技術の効果に加え、ステップモータの脱調により弁体が微小開弁しても、弁体と弁座との間のEGRガスの漏れを防止することができる。
【0027】
請求項4に記載の技術によれば、請求項3に記載の技術の効果に加え、エンジンの振動等の影響を受けてEGR弁が振動しても、弁体と弁座との間で振動摩耗を抑制することができる。
【0028】
請求項5に記載の技術によれば、請求項1又は2に記載の技術の効果に加え、エンジンの停止時に弁体と弁座とが凍結固着することを防止することができる。
【0029】
請求項6に記載の技術によれば、請求項5に記載の技術の効果に加え、エンジンの始動と同時にEGRガスがEGR通路から吸気通路へ漏れることを防止することができ、エンジンの失火やエンストを防止することができる。
【0030】
請求項7に記載の技術によれば、請求項5に記載の技術の効果に加え、エンジン停止後にEGR弁が開弁し、EGR通路から吸気通路へEGRガスが侵入しても、侵入したEGRガスが低濃度となっているためエンジンの再始動が不良となることを防止することができる。
【0031】
請求項8に記載の技術によれば、請求項1又は2に記載の技術の効果に加え、エンジンの停止時に弁体と弁座とが凍結固着することを防止することができる。
【0032】
請求項9に記載の技術によれば、請求項3に記載の技術の効果に加え、低温環境下でのエンジンの始動時に、弁体又は弁座とシール部材とが凍結固着していても、その凍結固着を解除することができ、弁体の開弁を保証することができる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【
図1】第1実施形態に係り、エンジンシステムを示す概略構成図。
【
図2】第1実施形態に係り、EGR弁の全閉突き当て状態を示す断面図。
【
図3】第1実施形態に係り、EGR弁の全閉時にステップモータが脱調した状態を示す断面図。
【
図4】第1実施形態に係り、EGR弁の全開状態を示す断面図。
【
図5】第1実施形態に係り、EGR弁につき全閉突き当て状態におけるステップモータの一部を示す拡大断面図。
【
図6】第1実施形態に係り、
図5における雄ねじと雌ねじの螺合状態の一部を示す拡大断面図。
【
図7】第1実施形態に係り、EGR弁につき全開状態におけるステップモータの一部を示す拡大断面図。
【
図8】第1実施形態に係り、
図7における雄ねじと雌ねじの螺合状態の一部を示す拡大断面図。
【
図9】第1実施形態に係り、第1のEGR弁制御の内容を示すフローチャート。
【
図10】第1実施形態に係り、第1のEGR弁制御の内容を示すフローチャート。
【
図11】第2実施形態に係り、第2のEGR弁制御の内容を示すフローチャート。
【
図12】第2実施形態に係り、第2のEGR弁制御の内容を示すフローチャート。
【
図13】第3実施形態に係り、第3のEGR弁制御の内容を示すフローチャート。
【
図14】第4実施形態に係り、第4のEGR弁制御の内容を示すフローチャート。
【
図15】第5実施形態に係り、第5のEGR弁制御の内容を示すフローチャート。
【
図16】第6実施形態に係り、第6のEGR弁制御の内容を示すフローチャート。
【
図17】第7実施形態に係り、エンジン始動制御の内容を示すフローチャート。
【
図18】第8実施形態に係り、EGR弁の全閉突き当て状態を示す断面図。
【
図19】第8実施形態に係り、EGR弁の全閉時にステップモータが脱調した状態を示す断面図。
【
図20】第8実施形態に係り、EGR弁の全開状態を示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下、エンジンのEGRシステムをガソリンエンジンシステムに具体化したいくつかの実施形態について説明する。
【0035】
<第1実施形態>
先ず、第1実施形態について図面を参照して詳細に説明する。
【0036】
[エンジンシステムについて]
図1に、この実施形態のガソリンエンジンシステム(以下、単に「エンジンシステム」と言う。)を概略構成図により示す。自動車に搭載されたエンジンシステムは、複数の気筒を有するエンジン1を備える。このエンジン1は、4気筒、4サイクルのレシプロエンジンであり、ピストン及びクランクシャフト等の周知の構成を含む。エンジン1には、各気筒へ吸気を導入するための吸気通路2と、エンジン1の各気筒から排気を導出するための排気通路3が設けられる。吸気通路2には、その上流側からエアクリーナ9、スロットル装置4及び吸気マニホールド5が設けられる。
【0037】
スロットル装置4は、吸気マニホールド5より上流の吸気通路2に配置され、運転者のアクセル操作に応じてバタフライ式のスロットル弁4aを開度可変に開閉駆動させることで、吸気通路2を流れる吸気量を調節するようになっている。吸気マニホールド5は、主として樹脂材より構成され、エンジン1の直上流にて吸気通路2に配置され、吸気が導入される一つのサージタンク5aと、サージタンク5aに導入された吸気をエンジン1の各気筒へ分配するためにサージタンク5aから分岐した複数(4つ)の分岐管5bとを含む。排気通路3には、その上流側から順に排気マニホールド6及び触媒7が設けられる。触媒7には、排気を浄化するために、例えば、三元触媒が内蔵される。
【0038】
エンジン1には、各気筒に対応して燃料を噴射するための燃料噴射装置(図示略)が設けられる。燃料噴射装置は、燃料供給装置(図示略)から供給される燃料をエンジン1の各気筒へ噴射するように構成される。各気筒では、燃料噴射装置から噴射される燃料と吸気マニホールド5から導入される吸気とにより可燃混合気が形成される。
【0039】
エンジン1には、各気筒に対応して点火装置(図示略)が設けられる。点火装置は、各気筒で可燃混合気に点火するように構成される。各気筒内の可燃混合気は、点火装置の点火動作により爆発・燃焼し、燃焼後の排気は、各気筒から排気マニホールド6及び触媒7を経て外部へ排出される。このとき、各気筒でピストン(図示略)が上下運動し、クランクシャフト(図示略)が回転することにより、エンジン1に動力が得られる。
【0040】
[EGRシステムについて]
この実施形態のEGRシステムは、高圧ループタイプの排気還流装置(EGR装置)11と、後述する電子制御装置(ECU)80とを備える。EGR装置11は、エンジン1の各気筒から排気通路3へ排出される排気の一部を排気還流ガス(EGRガス)として吸気通路2へ流すための排気還流通路(EGR通路)12と、EGR通路12を流れるEGRガスを冷却するための排気還流クーラ(EGRクーラ)13と、EGR通路12を流れるEGRガスの流量を調節するためにEGRクーラ13より下流に設けられた排気還流弁(EGR弁)14と、EGR通路12を流れるEGRガスをエンジン1の各気筒へ分配するために、吸気マニホールド5の各分岐管5bへEGRガスを分配する樹脂製の排気還流ガス分配器(EGRガス分配器)15とを備える。EGRガス分配器15は、EGRクーラ13及びEGR弁14より下流のEGR通路12に設けられる。EGR通路12は、入口12aと出口12bを含む。EGR通路12の入口12aは、触媒7より下流の排気通路3に接続され、同通路12の出口12bは、EGRガス分配器15に接続される。この実施形態で、EGRガス分配器15は、EGR通路12の終段を構成している。EGR通路12において、EGR弁14は、EGRクーラ13より下流にてEGRクーラ13に隣接して設けられる。EGR弁14は、後に詳述するが、ステップモータ27を駆動源として弁体25を駆動するように構成される。EGRクーラ13には、エンジンの冷却水が流れるように構成される。EGRクーラ13は、EGR通路12を流れるEGRガスを冷却するために、EGRガスとエンジン1の冷却水との間で熱交換を行うように構成される。ここでは、EGRクーラ13の詳しい構成の説明を省略する。
【0041】
このEGR装置11では、EGR弁14が開弁することにより、排気通路3を流れる排気の一部がEGRガスとしてEGR通路12を流れ、EGRクーラ13、EGR弁14及びEGRガス分配器15を介して吸気マニホールド5の各分岐管5bへ分配され、更にエンジン1の各気筒へ分配されて還流される。
【0042】
この実施形態において、EGRクーラ13には、バイパス通路16が設けられる。バイパス通路16は、EGR通路12において、EGRクーラ13へ流れるEGRガスの一部を迂回させるための通路である。バイパス通路16には、同通路16を開閉するためのバイパス弁17が設けられる。
【0043】
EGRガス分配器15は、主として樹脂材により構成され、全体として横長な形状を有し、その長手方向(
図1の左右方向)において、
図1に示すように、吸気マニホールド5の複数の分岐管5bを横切るように配置される。この実施形態で、EGRガス分配器15は、EGR通路12の出口12bから導入されるEGRガスが集まる一つのガスチャンバ15aと、ガスチャンバ15aから分岐され、ガスチャンバ15aから各分岐管5bへEGRガスを分配する複数(4つ)のガス分配通路15bとを含む。
【0044】
[エンジンシステムの電気的構成について]
次に、エンジンシステムの電気的構成の一例について説明する。
図1において、このエンジンシステムに設けられる各種センサ等69~78は、自動車及びエンジン1の運転状態を検出するための運転状態検出手段を構成する。自動車に設けられる車速センサ69は、自動車の車速SPDを検出し、その検出値に応じた電気信号を出力する。運転席に設けられるイグニションスイッチ(IGスイッチ)70は、エンジン1を始動又は停止させるために運転者によりオン・オフ操作され、その操作に応じた電気信号を出力する。エンジン1に設けられる水温センサ71は、エンジン1の内部を流れる冷却水の温度(冷却水温度)THWを検出し、その検出値に応じた電気信号を出力する。エンジン1に設けられる回転数センサ72は、エンジン1のクランクシャフトの回転角(クランク角度)を検出すると共に、そのクランク角度の変化(クランク角速度)をエンジン1の回転数(エンジン回転数)NEとして検出し、その検出値に応じた電気信号を出力する。エアクリーナ9の近傍に設けられるエアフローメータ73は、エアクリーナ9を流れる吸気量Gaを検出し、その検出値に応じた電気信号を出力する。サージタンク5aに設けられる吸気圧センサ74は、スロットル装置4より下流の吸気通路2(サージタンク5a)における吸気圧力PMを検出し、その検出値に応じた電気信号を出力する。スロットル装置4に設けられるスロットルセンサ75は、スロットル弁4aの開度(スロットル開度)TAを検出し、その検出値に応じた電気信号を出力する。触媒7より上流の排気通路3に設けられる酸素センサ76は、排気中の酸素濃度Oxを検出し、その検出値に応じた電気信号を出力する。エアクリーナ9の入口に設けられる吸気温センサ77は、エアクリーナ9に吸入される外気の温度(吸気温度)THAを検出し、その検出値に応じた電気信号を出力する。運転席のアクセルペダル10に設けられるアクセルセンサ78は、運転者によるアクセルペダル10の踏み込み量をアクセル開度ACCとして検出し、その検出値に応じた電気信号を出力する。
【0045】
このエンジンシステムは、同システムの制御を司る電子制御装置(ECU)80を更に備える。ECU80には、各種センサ等69~78がそれぞれ接続される。また、ECU80には、EGR弁14の他、インジェクタ(図示略)及びイグニションコイル(図示略)が接続される。ECU80は、この開示技術における「制御手段」の一例に相当する。周知のようにECU80は、中央処理装置(CPU)、各種メモリ、外部入力回路及び外部出力回路等を備える。メモリには、各種制御に関する所定の制御プログラムが格納される。CPUは、入力回路を介して入力される各種センサ等69~78の検出信号に基づき、所定の制御プログラムに基づいて燃料噴射制御、点火時期制御及びEGR制御等を実行するようになっている。
【0046】
この実施形態で、ECU80は、EGR制御において、エンジン1の運転状態に応じてEGR弁14(そのステップモータ27)を制御するようになっている。具体的には、ECU80は、エンジン1の停止時、アイドル運転時及び減速運転時には、EGR弁14を全閉に制御し、それ以外の運転時には、その運転状態に応じて目標EGR開度を算出し、EGR弁14をその目標EGR開度に制御するようになっている。このときEGR弁14が開弁されることにより、エンジン1から排気通路3へ排出され、その排気の一部が、EGRガスとしてEGR通路12、EGRクーラ13、EGR弁14及びEGRガス分配器15等を介して吸気通路2(吸気マニホールド5)へ流れ、エンジン1の各気筒へ分配され還流される。この実施形態で、ECU80は、エンジン1の始動時において、水温センサ71により検出される冷却水温度THWが「40℃」以上となり、EGR作動条件が成立したときにEGR弁14を開弁し、EGRを開始するようになっている。
【0047】
[EGR弁の構成に]
図2に、この実施形態のEGR弁14の断面図であって、その弁体25を弁座24に突き当てて全閉にする全閉突き当て状態を示す。
図3に、同じくEGR弁14の断面図であって、全閉時にステップモータ27が脱調したときの状態を示す。
図4に、同じくEGR弁14の断面図であって、全開状態を示す。
図2~
図4に示すように、この実施形態のEGR弁14は、流路22を有するハウジング23と、流路22に設けられ、一つの弁座24と、弁座24に対して着座可能に設けられた一つの弁体25と、弁体25が設けられた弁軸26と、弁軸26をその軸線方向へ往復運動(ストローク運動)させるためのステップモータ27とを備える。弁座24は、弁体25に当接可能なシート部24aを有する。この実施形態のEGR弁14は、一つの弁体25が弁座24のシート部24aから直角方向に移動する形式のポペット弁構造を有する二方弁として構成される。
【0048】
弁軸26は、ハウジング23を垂直に貫通して配置される。弁軸26は一端部26a(
図2~
図4の下端部)と他端部26b(
図2~
図4の上端部)を含み、その一端部26aに弁体25が固定され、他端部26bに雄ねじ30が設けられる。弁軸26には、雄ねじ30に隣接した下側にフランジ状のスプリング受け31が設けられる。弁軸26のスプリング受け31より下側には、横断面が略小判形状をなす二面幅部26cが設けられる。この実施形態で、雄ねじ30は、この開示技術の「被動ねじ」の一例に相当する。
【0049】
流路22は、流入口32と流出口33を含む。流路22は、弁座24を境としてステップモータ27に近い側の第1流路部22Aとステップモータ27から遠い側の第2流路部22Bに分かれ、第1流路部22Aに弁体25が弁座24に着座可能に配置される。弁座24は、流路22を構成する弁孔24bを有する。
【0050】
弁体25は、円板状をなしその周縁部に平坦なシール面25aを有し、そのシール面25aが弁座24の平坦なシート部24aに着座可能に設けられる。この実施形態では、
図2~
図4示すように、弁座24のシート部24aは、弁孔24bに沿った円形をなし、そのシート部24aの外側には、シート部24aよりも上方へ突出し、弁体25のシール面25aに接触可能なゴムシート28が設けられる。ゴムシート28は、円環状をなし、シート部24aに形成された周溝24cに嵌め込まれる。このゴムシート28は、この開示技術のシール部材の一例に相当する。弁座24に設けられるゴムシート28は、弁体25の全閉時に、弁体25がシート部24aに接する以外の領域で、弁体25と弁座24との間の隙間を密閉するようになっている。
【0051】
図2に示す全閉突き当て状態では、弁体25のシール面25aが弁座24のシート部24aに突き当たり、ゴムシート28の上端部がシール面25aに押し付けられて弁体25が全閉となっている。この全閉突き当て状態でのゴムシート28の弾性力は、極力小さいことが望ましい。
図3に示す脱調状態では、弁体25が弁座24のシート部24aから上方へわずかに移動し、シール面25aがシート部24aから離れているが、ゴムシート28の上端がシール面25aに接することで、弁体25と弁座24の間がシールされている。ゴムシート28には、この脱調時に弁体25の移動に追従するだけの弾性機能が要求される。一方、
図4に示す全開状態では、弁体25が弁座24から最大限に離間して最大開度になっている。
【0052】
ハウジング23には、弁軸26を軸線方向へストローク運動可能に支持するための、二つのスラスト軸受39,40が設けられる。スラスト軸受39の内周は、横断面が略小判形状をなし、弁軸26の二面幅部26cに係合可能な回転規制部39aとなっている。二面幅部26cと回転規制部39aとが係合することで、弁軸26のストローク運動が案内されると共に、弁軸26の回転が規制される。
【0053】
ステップモータ27は、上下二段のコイル41を有するステータ42と、ステータ42の内側に設けられたマグネットロータ43とを含む。これらの部材41~43等は、樹脂製のケーシング44によりモールドされて覆われる。ケーシング44には、横へ突出したコネクタ45が形成される。コネクタ45には、コイル41から延びる端子46が設けられる。
【0054】
マグネットロータ43は、ロータ本体47と、ロータ本体47の外側に一体的に設けられた円筒状のマグネット48とを含む。ロータ本体47の上端部外周には、ケーシング44との間に第1ラジアル軸受49が設けられる。マグネット48の下端部内周には、スラスト軸受39との間に第2ラジアル軸受50が設けられる。これら第1及び第2のラジアル軸受49,50によりマグネットロータ43がステータ42の内側にて回転可能に支持される。ロータ本体47の中心には、弁軸26の雄ねじ30に螺合される雌ねじ51が設けられる。この実施形態で、雌ねじ51は、この開示技術の「駆動ギヤ」の一例に相当する。
【0055】
図5に、EGR弁14につき、全閉突き当て状態におけるステップモータ27の一部を拡大断面図により示す。
図6に、
図5における雄ねじ30と雌ねじ51の螺合状態の一部を拡大断面図により示す。
図7に、EGR弁14につき、全開状態におけるステップモータ27の一部を拡大断面図により示す。
図8に、
図7における雄ねじ30と雌ねじ51の螺合状態の一部を拡大断面図により示す。
図5~
図8に示すように、雄ねじ30は、弁軸26の軸線方向において螺旋状に連なる雄ねじ山30aを有する。この雄ねじ山30aは、弁座24の方(下方)へ向いた第1雄ねじ山面30aaと、その第1雄ねじ山面30aaの反対側(上側)に位置する第2雄ねじ山面30abを含む。また、雌ねじ51は、弁軸26の軸線方向において螺旋状に連なる雌ねじ山51aを有する。この雌ねじ山51aは、弁座24の方(下方)へ向いた第1雌ねじ山面51aaと、その第1雌ねじ山面51aaの反対側(上側)に位置する第2雌ねじ山面51abを含む。そして、
図6、
図8に示すように、この雄ねじ30と雌ねじ51との間には、弁軸26の軸線方向において所定のバックラッシ55(あそび)が設けられる。
【0056】
ここで、弁軸26のスプリング受け31と下側の第2ラジアル軸受50との間、すなわち、スプリング受け31とハウジング23との間には、弁体25を弁軸26と共に弁座24から遠ざかる方向(
図2~
図8の上方)へ付勢するための弁体スプリング52が設けられる。また、マグネットロータ43(マグネット48)と第2ラジアル軸受50との間には、マグネットロータ43を弁座24から遠ざかる方向へ付勢するためのロータスプリング53が設けられる。
【0057】
ハウジング23と弁軸26との間には、ハウジング23と弁軸26との間をシールするための略円筒形をなすリップシール57が、スラスト軸受40に隣接して設けられる。また、ハウジング23と弁軸26との間には、ハウジング23と弁軸26との間をデポジットからガードするための略円筒形をなすデポガードプラグ58が、リップシール57に隣接して設けられる。
【0058】
ここで、この実施形態では、上記のように構成したEGR弁14につき、その全閉時に、弁体スプリング52の付勢力に抗して、ステップモータ27により弁軸26をストローク運動させて弁体25を弁座24に突き当てる全閉突き当て制御を実行するようになっている。しかしながら、このEGR弁14では、ゴムシート28の公差ばらつきによっては、同シート28の反発力(弁体25を開弁させる方向に作用する弾性力)が強くなると、全閉突き当て制御を実行したときに、ステップモータ27で脱調が発生することがある。このとき、弁体25には、弁体スプリング52の付勢力とゴムシート28の反発力との和が作用することになり、ステップモータ27の脱調ステップ数は最大で「4step」以上になることが懸念される。脱調ステップ数が「4step」以上になると、弁体25がゴムシート28から離れてしまうおそれがあり、弁座24と弁体25との間でEGRガスに漏れが生じるおそれがある。そこで、この実施形態では、全閉突き当て制御の実行時に、最大の脱調ステップ数が「4step」未満に抑えるために、次のような「第1のEGR弁制御」を実行するようになっている。
【0059】
[第1のEGR弁制御について]
図9、
図10に、その「第1のEGR弁制御」の内容をフローチャートにより示す。処理がこのフローチャートのルーチンへ移行すると、ECU80は、ステップ100で、イグニション(IG)がオンか否か、すなわちIGスイッチ70がオン操作されたか否かを判断する。ECU80は、この判断結果が肯定の場合は、ECU80が起動し、エンジン1が始動したことから処理をステップ110へ移行し、この判断結果が否定の場合は、ECU80が未起動で、エンジン1が始動していないことから処理をステップ270へ移行する。
【0060】
ステップ110では、ECU80は、本制御の初期設定が完了したことを示す初期設定完了フラグXISCが「1」か否かを判断する。ECU80は、この判断結果が肯定の場合は、初期設定が完了したものとして処理をステップ120へ移行し、この判断結果が否定の場合は、初期設定が未完了として処理をステップ190へ移行する。
【0061】
ステップ120では、ECU80は、EGR弁14の全閉要求があるか否か、すなわちエンジン1がEGRカットすべきか否かを判断する。ECU80は、各種センサ等71~78の検出信号から得られるエンジン1の運転状態に基づきこの判断を行う。ECU80は、この判断結果が肯定の場合は処理をステップ130へ移行し、この判断結果が否定の場合は処理をステップ230へ移行する。
【0062】
ステップ130では、ECU80は、EGR弁14が通常より低い低駆動周波数(例えば、125pps)で全閉突き当て完了後、微小開弁制御完了状態であることを示す全閉制御完了フラグXCLが「0」か否かを判断する。ECU80は、この判断結果が肯定の場合は、全閉制御未完了であるとして処理をステップ140へ移行し、この判断結果が否定の場合は、全閉制御状態であるとして処理をステップ180へ移行する。
【0063】
ステップ140では、ECU80は、通常駆動周波数(例えば、250pps)でEGR弁14(ステップモータ27)を「100step」閉弁制御する。
【0064】
次に、ステップ150で、ECU80は、全閉突き当て制御を実行する。すなわち、ECU80は、低駆動周波数でEGR弁14(ステップモータ27)を更に「10step」閉弁制御し、全閉突き当てを完了する。
【0065】
次に、ステップ160で、ECU80は、全閉突き当て完了後、EGR弁14(ステップモータ27)を「3step」開弁制御する。
【0066】
次に、ステップ170で、ECU80は、全閉制御完了フラグXCLを「1」に設定する。
【0067】
そして、ステップ180で、ECU80は、現時点のEGR弁14(ステップモータ27)の制御位置、すなわち弁体25の制御位置を保持する。その後、ECU80は、処理をステップ100へ戻す。
【0068】
一方、ステップ110から移行してステップ190では、ECU80は、全閉突き当て制御を実行する。すなわち、ECU80は、低駆動周波数でEGR弁14(ステップモータ27)を「110step」閉弁制御し、全閉突き当てを完了する。ここで、全閉時に弁体25と弁座24を機械的に突き当てる「全閉突き当て」と、全開時に雄ねじ30と雌ねじ51を機械的に突き当てる「全開突き当て」との間の部品公差に関するステップモータ27の最大ステップ数を、例えば「100step」とする。この場合、仮にEGR弁14を全閉側に「110step」閉弁制御すれば、弁体25が初期にどの位置にあっても弁座24に対し全閉突き当てすることができる。また、全閉突き当て状態から弁体25を「110step」開弁すれば、確実に「全開突き当て」にすることができる。
【0069】
次に、ステップ200で、ECU80は、全閉突き当て完了後、EGR弁14(ステップモータ27)を「3step」開弁制御する。
【0070】
次に、ステップ210で、ECU80は、初期設定完了フラグXISCを「1」に設定する。
【0071】
次に、ステップ220で、ECU80は、全閉制御完了フラグXCLを「1」に設定し、処理をステップ180へ移行する。
【0072】
一方、ステップ120から移行してステップ230では、ECU80は、EGR弁14の全開要求があるか否か判断する。ECU80は、この判断結果が肯定の場合は処理をステップ240へ移行し、この判断結果が否定の場合は処理をステップ180へ移行する。
【0073】
ステップ240では、ECU80は、通常駆動周波数でEGR弁14(ステップモータ27)を「97step」開弁制御する。
【0074】
次に、ステップ250で、ECU80は、全開突き当て制御を実行する。すなわち、ECU80は、低駆動周波数でEGR弁14(ステップモータ27)を更に「10step」開弁制御し、全開突き当てを完了する。
【0075】
次に、ステップ260で、ECU80は、全閉制御完了フラグXCLを「0」に設定し、処理をステップ180へ移行する。
【0076】
一方、ステップ100から移行して270では、ECU80は、全閉制御完了フラグXCLが「0」か否かを判断する。ECU80は、この判断結果が肯定の場合は、全閉制御以外の状態であるとして処理をステップ280へ移行し、この判断結果が否定の場合は、全閉制御状態であるとして処理をステップ330へ移行する。
【0077】
ステップ280では、ECU80は、通常駆動周波数でEGR弁14(ステップモータ27)を「100step」閉弁制御する。
【0078】
次に、ステップ290では、ECU80は、全閉突き当て制御を実行する。すなわち、ECU80は、低駆動周波数でEGR弁14(ステップモータ27)を更に「10step」閉弁制御し、全閉突き当てを完了する。
【0079】
次に、ステップ300で、ECU80は、全閉突き当て完了後、EGR弁14(ステップモータ27)を「3step」開弁制御する。
【0080】
次に、ステップ310で、ECU80は、初期設定完了フラグXISCを「0」に設定する。
【0081】
そして、ステップ320では、ECU80は、ECUを停止し、その後の処理を終了する。
【0082】
一方、ステップ270から移行してステップ330では、ECU80は、全閉制御完了フラグXCLを「0」に設定し、処理をステップ310へ移行する。
【0083】
上記した「第1のEGR弁制御」によれば、ECU80は、全閉突き当て制御を実行するとき、ステップモータ27を通常駆動周波数で駆動させて(ステップ140又はステップ280)弁体25が弁座24に突き当たる全閉付近まで閉弁させた後、通常駆動周波数よりも低い低駆動周波数でステップモータ27を駆動させて(ステップ150又はステップ290)弁体25を閉弁して弁体25を弁座24に突き当てるようになっている。すなわち、ECU80は、全閉突き当て制御を実行するとき、ステップモータ27を通常駆動周波数から低駆動周波数で制御し、弁体25の閉じ速度を遅くすることで、ステップモータ27の脱調を確実に「4step」以下に抑えるようにしている。
【0084】
上記した「第1のEGR弁制御」によれば、ECU80は、全閉突き当て制御を実行した(ステップ150又はステップ290)後に、弁体25が微小開度で開弁するようにステップモータ27を駆動させる、すなわちEGR弁14(ステップモータ27)を「3step」開弁制御する、「微小開度開弁制御」を実行する(ステップ160又はステップ300)ようになっている。
【0085】
[EGR弁の動作について]
このEGR弁14は、ステップモータ27を駆動させてマグネットロータ43を回転させることにより、その回転運動を雌ねじ51と雄ねじ30を介して弁軸26と弁体25のストローク運動に変換し、弁座24に対する弁体25の位置を調節するようになっている。
【0086】
すなわち、このEGR弁14は、マグネットロータ43を一方向へ回転させて弁軸26を弁体25と共に弁体スプリング52の付勢力に抗してストローク運動させることにより、弁体25がステップモータ27から遠ざかる方向へ移動し、
図2に示す全閉状態となる。このとき、弁体25が弁座24に突き当たるようにステップモータ27を全閉突き当て制御することにより、弁体25のシール面25aが弁座24のシート部24aに突き当たると共に、ゴムシート28の先端がシール面25aに押し当たり変形する。この突き当て状態では、弁座24が弁体25の閉弁ストッパとして機能することになり、ロータ本体47の回転が規制されると共に、弁軸26及び弁体25のストローク運動が規制される。このときの弁軸26の位置を初期位置として規定することができる。
【0087】
ここで、全閉突き当て制御の状態で、ステップモータ27が脱調すると、弁体スプリング52の付勢力により、
図3に示すように弁体25がステップモータ27へ近付く方向へ微小に移動し、弁体25が微小に開弁することになる。しかし、弁座24には、ゴムシート28が設けられるので、弁体25が微小に開弁しても、ゴムシート28の先端が弾性を伴って弁体25のシール面25aに接するので、弁座24と弁体25との間の隙間をゴムシート28によりシールすることができる。
【0088】
このとき、弁体スプリング52の付勢力により、
図6に示すように、雌ねじ51の第1雌ねじ山面51aaに雄ねじ30の第2雄ねじ山面30abが係合した状態となる。この係合状態では、弁軸26が弁体スプリング52の付勢力F1(黒矢印で示す)によりステップモータ27に近付く方向(
図6の上方向)へ付勢されるので、バックラッシ55を介することなく雄ねじ山30aが雌ねじ山51aに当接し、弁軸26の上方向への移動が阻止される。従って、ステップモータ27に近付く方向へ弁体25を引き上げたり、押し上げたりするようにEGRガスの圧力が作用しても、その弁体25の移動が阻止される。このため、ステップモータ27を特に高出力化及び大型化することなく、弁体25を全閉状態に保持することができる。
【0089】
一方、この全閉状態から、マグネットロータ43を反対方向へ回転させて弁軸26を弁体25と共に弁体スプリング52の付勢力との協働によりストローク運動させることにより、弁体25がステップモータ27に近付く方向へ移動し、
図4に示す全開状態となる。このとき、全開突き当て制御によりステップモータ27が脱調すると、
図7、
図8に示すように、弁体スプリング52の付勢力F1により弁軸26と弁体25がステップモータ27へ近付く方向へ付勢され、第2雄ねじ山面30abが第1雌ねじ山面51aaに当接した状態となり、全開状態を維持することができる。
【0090】
[エンジンのEGRシステムの作用及び効果について]
以上説明したこの実施形態のEGRシステムの構成によれば、ECU80は、全閉突き当て制御を実行するとき、ステップモータ27を通常駆動周波数で駆動させて弁体25が弁座24に突き当たる全閉付近まで閉弁させた後、通常駆動周波数よりも低い低駆動周波数でステップモータ27を駆動させて弁体25を閉弁して弁体25を弁座24に突き当てる。従って、弁体25が弁座24に突き当たるときは、ステップモータ27が低駆動周波数で駆動され、通常駆動周波数で駆動されるときよりも弁体25が緩やかに弁座24に突き当たるので、その突き当て時に弁体25が弁体スプリング52及びゴムシート28から受ける反発力が弱まる。このため、EGR弁14の全閉突き当て制御時に突き当ての反発力によるステップモータ27の脱調量を抑制することができ、弁体25の微小開弁を抑制することができる。この結果、弁体25と弁座24との間のEGRガスの漏れを抑制することができる。
【0091】
この実施形態の構成によれば、ECU80は、全閉突き当て制御を実行した後に、弁体25が微小開度で開弁するようにステップモータ27を「3step」駆動させる微小開度開弁制御を実行する。従って、全閉突き当て制御を実行した後は、微小開度開弁制御により確実に弁体25が微小開度で開弁するので、弁体25と弁座24との間に隙間が確保される。このため、エンジン1の振動等の影響を受けてEGR弁14が振動しても、弁体25と弁座24との間で振動摩耗を抑制することができる。
【0092】
この実施形態の構成によれば、全閉突き当て制御によるステップモータ27の脱調を前提として、全閉突き当て後に、例えば、ステップモータ27の「3step」の開弁位置を全閉制御位置とする。このため、弁体25と弁座24との間の接地摩耗を抑制することができる。ここで、ステップモータ27の脱調が最小値である「1step」となった場合、弁体25と弁座24との間の隙間が「0.05mm」たらずとなり、エンジン1の振動に伴い弁体25と弁座24との間に接触摩耗が生じる懸念がある。この実施形態では、全閉突き当て後に、弁体25と弁座24との間に、0.15mm(「0+3step」相当)~0.35mm(「4+3step」相当)の隙間を確保することで、弁体25と弁座24との間の上記振動摩耗を抑制できるのである。
【0093】
この実施形態では、温度等の影響を受けない全閉突き当て制御によりステップモータ27に脱調が発生するので、ステップモータ27での脱調位置が安定し、弁体25の基準全閉位置を「0~4step」の狭い範囲に定めることができる。従って、ステップモータ27を「3step」駆動させる微小開度開弁制御を実行することにより、弁体25の全閉位置を「3~7step」に制御することができる。そのため、例えば、「10step」でゴムシート28が弁体25と接地する構成にすることで、弁体25と弁座24との間の振動摩耗の抑制とEGRガスのシール漏れ抑制の両立を図ることができる。
【0094】
この実施形態の構成によれば、全閉突き当て制御時に、ステップモータ27の脱調により弁体25がシート部24aに接する以外の領域に位置し、弁体25と弁座24との間に隙間が生じても、その隙間がゴムシート(シール部材)により密閉される。このため、ステップモータ27の脱調により弁体25が微小開弁しても、弁体25と弁座24との間のEGRガスの漏れを防止することができる。
【0095】
<第2実施形態>
次に、第2実施形態について図面を参照して詳細に説明する。なお、以下の説明において、第1実施形態と同等の構成要素については同一の符号を付し、異なった点を中心に説明する。
【0096】
[第2のEGR弁制御について]
この実施形態では、「第2のEGR弁制御」の内容の点で第1実施形態と構成が異なる。ここで、全閉突き当て制御による全閉位置は、正確に判定することができない。第1実施形態の「第1のEGR弁制御」では、全閉突き当て制御において、弁体25を弁座24に突き当てる前に、その閉じ速度を低駆動周波数で遅くしていたが、製品公差を考慮すると、全閉突き当てより「約10step」前から弁体25の閉じ速度を遅くする必要がある。しかし、閉じ速度を遅くしたのでは、全閉応答遅れが懸念される。そこで、この実施形態では、全閉応答遅れなくステップモータ27の脱調を最大「4step」以内に抑えるために、次のような「第2のEGR弁制御」を実行するようにした。
【0097】
図11、
図12に、この実施形態の「第2のEGR弁制御」の内容をフローチャートにより示す。
図11、
図12に示すように、このフローチャートでは、ステップ140、ステップ240、ステップ260,ステップ280及びステップ310の処理を削除した点で
図9、
図10のフローチャートと内容が異なる。また、
図11、
図12に示すように、このフローチャートでは、ステップ130とステップ150との間にステップ400が、ステップ110とステップ190との間にステップ410が、ステップ410と「リターン」との間にステップ420及びステップ430が、ステップ230とステップ250との間にステップ440が、ステップ250と「リターン」との間にステップ450が、ステップ400と「リターン」との間にステップ460及びステップ470が、ステップ270とステップ290との間にステップ480が、ステップ480と「リターン」との間にステップ490及びステップ500が、ステップ300とステップ320との間にステップ510がそれぞれ設けられる点で
図9、
図10のフローチャートと異なる。
【0098】
処理が
図11、
図12のフローチャートのルーチンへ移行すると、ECU80は、ステップ100~ステップ130の処理を実行し、ステップ130の判断結果が肯定になると、ステップ400で、EGR弁14が通常駆動周波数で全閉制御状態であることを示す全閉制御完了フラグXclが「1」か否かを判断する。ECU80は、この判断結果が肯定の場合は、EGR弁14が通常駆動周波数で全閉制御が完了した状態であるとして処理をステップ150へ移行し、この判断結果が否定の場合は、全閉制御以外の状態であるとして処理をステップ460へ移行する。
【0099】
ステップ460では、ECU80は、通常駆動周波数でEGR弁14(ステップモータ27)を「110step」閉弁制御する。
【0100】
次に、ステップ470で、ECU80は、EGR弁14が通常駆動周波数で全開制御状態であることを示す全開制御フラグXopを「0」に、また、EGR弁14が通常駆動周波数での全閉制御完了フラグXclを「1」に、それぞれ設定した後、処理をステップ100へ戻す。
【0101】
一方、ステップ110から移行してステップ410では、ECU80は、通常駆動周波数での全閉制御完了フラグXclが「1」か否かを判断する。ECU80は、この判断結果が肯定の場合は、全閉制御状態であるとして処理をステップ190へ移行し、この判断結果が否定の場合は、全閉制御以外の状態であるとして処理をステップ420へ移行する。
【0102】
ステップ420では、ECU80は、通常駆動周波数でEGR弁14(ステップモータ27)を「110step」閉弁制御する。
【0103】
次に、ステップ430で、ECU80は、通常駆動周波数での全開制御フラグXopを「0」に、また、通常駆動周波数での全閉制御完了フラグXclを「1」に、それぞれ設定した後、処理をステップ100へ戻す。
【0104】
一方、ECU80は、ステップ230での判断結果が肯定となる場合は、ステップ440で、通常駆動周波数での全開制御フラグXopが「1」か否かを判断する。ECU80は、この判断結果が肯定の場合は処理をステップ250へ移行し、この判断結果が否定となる場合は処理をステップ180へ移行する。
【0105】
そして、ECU80は、ステップ250の処理を実行した後、ステップ450で、低駆動周波数での全閉制御完了フラグXCLを「0」に設定した後、処理をステップ180へ移行する。
【0106】
一方、ECU80は、ステップ270の判断結果が肯定の場合、ステップ480で、通常駆動周波数での全閉制御完了フラグXclが「1」か否かを判断する。ECU80は、この判断結果が肯定の場合は処理をステップ290へ移行し、ステップ290とステップ300の処理を実行し、処理をステップ510へ移行する。
【0107】
そして、ステップ510では、ECU80は、初期設定完了フラグXISCを「0」に、通常駆動周波数での全開制御フラグXop及び全閉制御完了フラグXclを「0」に、それぞれ設定し、処理をステップ320へ移行する。
【0108】
上記した「第2のEGR弁制御」によれば、ECU80は、全閉突き当て制御を実行するとき、ステップモータ27を通常駆動周波数で駆動させて(ステップ420、ステップ460又はステップ490)弁体25が弁座24に突き当たる全閉まで閉弁させた後、通常駆動周波数よりも低い低駆動周波数で更に全閉突き当て制御を継続させて(ステップ190、ステップ150又はステップ290)弁体25を弁座24に突き当てるようになっている。
【0109】
上記した「第2のEGR弁制御」によれば、ECU80は、全閉突き当て制御を実行した(ステップ190、ステップ150又はステップ290)後に、弁体25が微小開度で開弁するようにステップモータ27を駆動させる微小開度開弁制御を実行する(ステップ200、ステップ160又はステップ300)ようになっている。
【0110】
[エンジンのEGRシステムの作用及び効果について]
以上説明したこの実施形態のEGRシステムの構成によれば、ECU80は、全閉突き当て制御を実行するとき、ステップモータ27を通常駆動周波数で駆動させて弁体25が弁座24に突き当たる全閉まで閉弁させた後、通常駆動周波数よりも低い低駆動周波数で更に全閉突き当て制御を継続させて弁体25を弁座24に突き当てる。従って、全閉突き当て制御において、一度、通常駆動周波数でステップモータ27を駆動させてEGR弁14が閉弁し、弁体25が弁座24に突き当たるときに弁体25が弁体スプリング52とゴムシート28の反発力を受けて脱調するが、その後、再び低駆動周波数でステップモータ27を駆動させてEGR弁14が閉弁し、再び弁体25が弁座24に突き当たるときは、その突き当て時の弁体スプリング52とゴムシート28の反発力が弱まる。このため、EGR弁14の全閉突き当て制御時に突き当ての反発力によるステップモータ27の脱調量を抑制することができ、弁体25の微小開弁を抑制することができる。この結果、弁体25と弁座24との間のEGRガスの漏れを抑制することができる。また、この実施形態では、全閉突き当て制御を実行するときに、ステップモータ27を通常駆動周波数で駆動させて弁体25を弁座24に突き当てた後、低駆動周波数で再度弁体25を弁座24に突き当ててEGR弁14を全閉にするので、第1実施形態と比較すると全閉応答遅れを生じさせることなくステップモータ27の脱調量を抑制することができる。
【0111】
この実施形態の構成によれば、ECU80は、全閉突き当て制御を実行した後に、弁体25が微小開度で開弁するようにステップモータ27を駆動させる微小開度開弁制御を実行する。従って、全閉突き当て制御を実行した後は、微小開度開弁制御により確実に弁体25が微小開度で開弁するので、弁体25と弁座24との間に隙間が確保される。このため、エンジン1の振動等の影響を受けてEGR弁14が振動しても、弁体25と弁座24との間で振動摩耗を抑制することができる。
【0112】
この実施形態の構成によれば、全閉突き当て制御時に、ステップモータ27の脱調により弁体25がシート部24aに接する以外の領域に位置し、弁体25と弁座24との間に隙間が生じても、その隙間がゴムシート(シール部材)により密閉される。このため、ステップモータ27の脱調により弁体25が微小開弁しても、弁体25と弁座24との間のEGRガスの漏れを防止することができる。
【0113】
この実施形態において、第1実施形態と同等の構成により得られる作用及び効果は、第1実施形態のそれと同じである。
【0114】
<第3実施形態>
次に、第3実施形態について図面を参照して詳細に説明する。
【0115】
[第3のEGR弁制御について]
この実施形態では、「第3のEGR弁制御」の内容の点で前記各実施形態と構成が異なる。ここで、全閉突き当て制御によりステップモータ27に脱調が発生することを前提とすると、その脱調が最小の「1step」になると、弁体25と弁座24との間の隙間が「0.05mm」となり、エンジン1の振動によりEGR弁14が振動すると、弁体25と弁座24との間で接触摩耗が懸念される。そこで、この実施形態では、次のような「第3のEGR弁制御」を実行するようにした。
【0116】
図13に、その「第3のEGR弁制御」の内容をフローチャートにより示す。
図13に示すように、このフローチャートでは、ステップ110、ステップ140、ステップ150、ステップ190~ステップ220、ステップ240、ステップ250、ステップ280、ステップ290及びステップ310の処理を削除した点で
図9、
図10のフローチャートと内容が異なる。また、
図13に示すように、このフローチャートでは、ステップ130とステップ160との間にステップ600が、ステップ230とステップ260との間にステップ610が、ステップ270とステップ300との間にステップ620がそれぞれ設けられる点で
図9、
図10のフローチャートと異なる。
【0117】
処理がこの実施形態のフローチャートのルーチンへ移行すると、ECU80は、ステップ100、ステップ120及びステップ130の処理を実行し、ステップ130の判断結果が肯定となる場合には、ステップ600で、全閉突き当て制御を実行する。すなわち、ECU80は、通常駆動周波数でEGR弁14(ステップモータ27)を「110step」閉弁制御し、全閉突き当てを完了する。
【0118】
次に、ステップ160で、ECU80は、全閉突き当て完了後、EGR弁14(ステップモータ27)を「3step」開弁制御する。ステップ600の後のステップ160の処理が、この実施形態の特徴的な処理である。
【0119】
その後、ECU80は、ステップ170及びステップ180の処理を実行した後、処理をステップ100へ戻る。
【0120】
一方、ステップ120から移行してステップ230の判断結果が肯定の場合は、ECU80は、ステップ610で、全開突き当て制御を実行する。すなわち、ECU80は、通常駆動周波数でEGR弁14(ステップモータ27)を「110step」開弁制御し、全開突き当てを完了する。
【0121】
その後、ECU80は、ステップ260及びステップ180の処理を実行した後、処理をステップ100へ戻る。
【0122】
一方、ステップ100から移行してステップ270の判断結果が肯定の場合、ステップ620で、ECU80は、全閉突き当て制御を実行する。すなわち、ECU80は、通常駆動周波数でEGR弁14(ステップモータ27)を「110step」閉弁制御し、全閉突き当てを完了する。
【0123】
次に、ステップ300で、ECU80は、全閉突き当て完了後、EGR弁14(ステップモータ27)を「3step」開弁制御する。
【0124】
その後、ECU80は、ステップ320の処理を実行した後、その後の処理を終了する。
【0125】
上記した「第3のEGR弁制御」によれば、ECU80は、全閉突き当て制御を実行した(ステップ600又はステップ620)後に、弁体25が微小開度で開弁するようにステップモータ27を駆動させる、すなわちEGR弁14を「3step」開弁制御する「微小開度開弁制御」を実行する(ステップ160又はステップ300)ようになっている。
【0126】
[エンジンのEGRシステムの作用及び効果について]
この実施形態の構成によれば、ECU80は、全閉突き当て制御を実行した後に、弁体25が微小開度で開弁するようにステップモータ27を駆動させる微小開度開弁制御を実行する。従って、全閉突き当て制御を実行した後は、微小開度開弁制御により確実に弁体25が微小開度で開弁するので、弁体25と弁座24との間に隙間が確保される。このため、エンジン1の振動等の影響を受けてEGR弁14が振動しても、弁体25と弁座24との間で振動摩耗を抑制することができる。
【0127】
<第4実施形態>
次に、第4実施形態について図面を参照して詳細に説明する。
【0128】
[EGR弁制御について]
この実施形態では、「第4のEGR弁制御」の内容の点で前記各実施形態と構成が異なる。ここで、極低温環境下では、ゴムシート28に接地凍結のおそれがある。そこで、この実施形態では、次のような「第4のEGR弁制御」を実行するようになっている。
【0129】
図14に、その「第4のEGR弁制御」の内容をフローチャートにより示す。
図14に示すように、このフローチャートでは、ステップ120、ステップ130、ステップ600、ステップ160~ステップ180、ステップ230、ステップ610及びステップ260の処理を削除した点で
図13のフローチャートと内容が異なる。また、
図14に示すように、このフローチャートでは、ステップ100の判断結果が肯定の場合にステップ630~ステップ710の処理が、ステップ300とステップ320との間にステップ720とステップ730の処理が、それぞれ設けられる点で
図13のフローチャートと異なる。
【0130】
処理がこのフローチャートのルーチンへ移行すると、ECU80は、ステップ100の判断結果が肯定の場合、処理をステップ630へ移行する。そして、ステップ630では、ECU80は、吸気温センサ77の検出値に基づき吸気温度THAを取り込む。
【0131】
次に、ステップ640で、ECU80は、吸気温度THAが「5℃」より低いか否かを判断する。ECU80は、この判断結果が肯定の場合は処理をステップ650へ移行し、この判断結果が否定の場合は処理をステップ710へ移行する。
【0132】
ステップ650では、ECU80は、EGR弁14の解凍制御が完了したことを示す解凍制御完了フラグXCOCLが「0」か否かを判断する。ECU80は、この判断結果が肯定の場合は、解凍制御未完了であるとして処理をステップ660へ移行し、この判断結果が否定の場合は、解凍制御完了であるとして処理をステップ710へ移行する。
【0133】
ステップ660では、ECU80は、全閉突き当て制御を実行する。すなわち、ECU80は、通常駆動周波数でEGR弁14(ステップモータ27)を「110step」閉弁制御し、全閉突き当てを完了する。
【0134】
次に、ステップ670で、ECU80は、全閉突き当て完了後、EGR弁14(ステップモータ27)を「10step」開弁制御する。
【0135】
次に、ステップ680で、ECU80は、解凍制御回数COCLN(i)を「1」だけ加算する。
【0136】
次に、ステップ690で、ECU80は、解凍制御回数COCLN(i)が所定値A1以上か否かを判断する。この所定値A1として、例えば「2~5」の中の数を当てはめることができる。ECU80は、この判断結果が肯定の場合は、所定回数完了したとして処理をステップ700へ移行し、この判断結果が否定の場合は所定回数未完了であるとして処理をステップ660へ戻す。
【0137】
ステップ700では、ECU80は、解凍制御完了フラグXCOCLを「1」に設定し、処理をステップ100へ戻す。
【0138】
一方、ステップ640又はステップ650から移行してステップ710では、ECU80は、EGR弁14につき通常の開閉制御を実行し、その後、処理をステップ100へ戻す。
【0139】
ステップ100からステップ270へ移行した場合、ECU80は、ステップ300又はステップ310の処理を実行した後、ステップ720で、解凍制御完了フラグXCOCLを「0」に設定する。
【0140】
次に、ステップ730で、ECU80は、解凍制御回数COCLN(i)を「0」にリセットした後、処理をステップ320へ移行する。
【0141】
上記した「第4のEGR弁制御」によれば、ECU80は、弁体25が微小開度で開弁するようにEGR弁14のステップモータ27を「10step」で駆動させる「微小開度開弁制御」を実行する(ステップ670)ように構成される。また、ECU80は、エンジン1の停止時に弁体25が閉弁状態となるときであって、EGR弁14を吸気温度THAが「5℃」より低い所定の低温環境下で駆動する(ステップ640及びステップ650)際に、「全閉突き当て制御」(ステップ660)と「微小開度開弁制御」(ステップ670)のうち一方を先に実行してから他方を実行するようになっている。この実施形態では、ECU80は、「全閉突き当て制御」と「微小開度開弁制御」を交互に繰り返すようになっている。
【0142】
[エンジンのEGRシステムの作用及び効果について]
以上説明したこの実施形態のEGRシステムの構成によれば、ECU80は、エンジン1の停止時に弁体が閉弁状態となるときであって、EGR弁14を所定の低温環境下で駆動する際に、「全閉突き当て制御」と「微小開度開弁制御」のうち一方を先に実行してから他方を実行する。従って、低温環境下でエンジン1を始動するとき、弁体25が弁座24に対し開閉され、ゴムシート28が変形する。このため、低温環境下でのエンジン1の始動時に、弁体25とゴムシート28とが凍結固着していても、その凍結固着を解除することができ、弁体25の開弁を保証することができる。また、弁座24に対する弁体25の開閉を繰り返すことで、凍結固着に亀裂や破壊を生じさせ、その凍結固着を確実に解除することができる。
【0143】
なお、前記第1実施形態では、ECU80が「第1のEGR弁制御」のみを実行し、前記第2実施形態では、ECU80が「第2のEGR弁制御」のみを実行するように構成した。これに対し、前記第1実施形態において、ECU80が「第1のEGR弁制御」と「第4のEGR弁制御」を組み合わせて実行したり、前記第2実施形態において、ECU80が「第2のEGR弁制御」と「第4のEGR弁制御」を組み合わせて実行したりするように構成することもできる。
【0144】
<第5実施形態>
次に、第5実施形態について図面を参照して詳細に説明する。
【0145】
[EGR弁の構成について]
前記各実施形態では、「全閉突き当て制御」を実行したとき、ステップモータ27の脱調により弁体スプリング52の付勢力を受けて弁体25が所定の微小開度だけ開弁するように構成した。これに対し、この実施形態では、EGR弁14につき、上記構成に加え、ステップモータ27の非駆動時に、弁体25が弁体スプリング52の付勢力により所定の微小開度だけ開弁するように構成される。
【0146】
[第5のEGR弁制御について]
この実施形態では、「第5のEGR弁制御」の内容の点で前記各実施形態と構成が異なる。ここで、エンジン1の停止後にEGR弁14を閉弁状態から直ちに開弁すると、排気通路3に残留していた高濃度の排気ガスが吸気通路2へ侵入し、エンジン1の再始動時に失火やエンストが発生してしまう懸念がある。そこで、この実施形態では、次のような「第5のEGR弁制御」を実行するようになっている。
【0147】
図15に、その「第5のEGR弁制御」の内容をフローチャートにより示す。
図15に示すように、このフローチャートでは、ステップ300を省略し、ステップ620とステップ310との間にステップ740とステップ750が設けられる点で
図13のフローチャートと異なる。
【0148】
処理がこのフローチャートのルーチンへ移行すると、ECU80は、ステップ100の判断結果が否定の場合、処理をステップ270へ移行する。そして、ステップ270の判断結果が肯定の場合、ECU80は、ステップ620の処理を実行する。
【0149】
その後、ECU80は、ステップ740で、IGスイッチ70をオフした後の経過時間Toffを取り込む。ECU80は、IGスイッチ70がオフされた後、この経過時間Toffを計時するようになっている。
【0150】
そして、ステップ740又はステップ270から移行してステップ750では、ECU80は、その経過時間Toffが所定時間B1以上か否かを判断する。ECU80は、この判断結果が肯定の場合は処理をステップ300へ移行し、この判断結果が否定となる場合は処理をステップ180へ移行する。
【0151】
上記した「第5のEGR弁制御」によれば、ECU80は、エンジン1の停止が要求された後、EGR弁14の「全閉突き当て制御」(ステップ620)を所定時間B1だけ実行する(ステップ100、ステップ270、ステップ620、ステップ740及びステップ750)ようになっている。
【0152】
[エンジンのEGRシステムの作用及び効果について]
以上説明したこの実施形態のEGRシステムの構成によれば、ECU80は、エンジン1の停止が要求された後、「全閉突き当て制御」を所定時間B1だけ実行する。従って、エンジン1の停止が要求されてエンジン1が停止した後も、「全閉突き当て制御」が所定時間B1だけ実行されるので、その間にEGR弁14が全閉の状態に保たれ、EGR通路12の中に残留するEGRガスは、時間経過と共に拡散されて濃度が低下することになる。このため、エンジン1の停止後にEGR弁14が開弁し、EGR通路12から吸気通路2へEGRガスが侵入しても、侵入したEGRガスが低濃度となっているためエンジン1の再始動が不良となることを防止することができる。
【0153】
この実施形態の構成によれば、ステップモータ27の非駆動時に、弁体25が弁体スプリング52の付勢力により所定の開度開弁するので、低温環境下でエンジン1が停止しても、弁体25と弁座24との間に水が留まることがない。このため、エンジン1の停止時に弁体25と弁座24とが凍結固着することを防止することができる。
【0154】
なお、前記第1実施形態では、ECU80が「第1のEGR弁制御」のみを実行し、前記第2実施形態では、ECU80が「第2のEGR弁制御」のみを実行するように構成した。これに対し、前記第1実施形態において、ECU80が「第1のEGR弁制御」と「第5のEGR弁制御」を組み合わせて実行したり、前記第2実施形態において、ECU80が「第2のEGR弁制御」と「第5のEGR弁制御」を組み合わせて実行したりするように構成することもできる。
【0155】
<第6実施形態>
次に、第6実施形態について図面を参照して詳細に説明する。
【0156】
[第6のEGR弁制御について]
この実施形態では、「第6のEGR弁制御」の内容の点で前記各実施形態と構成が異なる。ここで、エンジン1の停止後にEGR弁14を閉弁状態のままにすると、極寒時に弁体25とゴムシート28と凍結してしまう懸念がある。そこで、この実施形態では、次のような「第6のEGR弁制御」を実行するようになっている。
【0157】
図16に、その「第6のEGR弁制御」の内容をフローチャートにより示す。
図16に示すように、このフローチャートでは、ステップ300とステップ310との間にステップ740~ステップ760が設けられる点で
図13のフローチャートと異なる。
【0158】
処理がこのフローチャートのルーチンへ移行すると、ECU80は、ステップ100の判断結果が否定の場合、処理をステップ270へ移行する。そして、ステップ270の判断結果が肯定の場合、ECU80は、ステップ620及びステップ300の処理を実行する。
【0159】
その後、ステップ740で、ECU80は、IGスイッチ70をオフした後の経過時間Toffを取り込む。ECU80は、IGスイッチ70がオフされた後、この経過時間Toffを計時するようになっている。
【0160】
そして、ステップ740又はステップ270から移行してステップ750では、ECU80は、その経過時間Toffが所定時間B1以上か否かを判断する。ECU80は、この判断結果が肯定の場合は処理をステップ760へ移行し、この判断結果が否定となる場合は処理をステップ180へ移行する。
【0161】
そして、ステップ760では、ECU80は、EGR弁14(ステップモータ27)を「20step」開弁制御した後、処理をステップ310へ移行する。
【0162】
上記した「第6のEGR弁制御」によれば、ECU80は、エンジン1の停止が要求された後、「全閉突き当て制御」を所定時間B1だけ実行して(ステップ100、ステップ270、ステップ620、ステップ740及びステップ750)から弁体25をステップモータ27で「20step」に相当する所定の開度開弁する(ステップ760)ようになっている。
【0163】
[エンジンのEGRシステムの作用及び効果について]
以上説明したこの実施形態のEGRシステムの構成によれば、ECU80は、エンジン1の停止が要求された後、「全閉突き当て制御」を所定時間B1だけ実行してから弁体25をステップモータ27で「20step」に相当する所定の開度開弁する。従って、低温環境下でエンジン1が停止しても、弁体25と弁座24との間に水が留まることがない。このため、エンジン1の停止時に弁体25と弁座24とが凍結固着することを防止することができる。
【0164】
なお、前記第1実施形態では、ECU80が「第1のEGR弁制御」のみを実行し、前記第2実施形態では、ECU80が「第2のEGR弁制御」のみを実行するように構成した。これに対し、前記第1実施形態において、ECU80が「第1のEGR弁制御」と「第6のEGR弁制御」を組み合わせて実行したり、前記第2実施形態において、ECU80が「第2のEGR弁制御」と「第6のEGR弁制御」を組み合わせて実行したりするように構成することもできる。
【0165】
<第7実施形態>
次に、第7実施形態について図面を参照して詳細に説明する。
【0166】
[EGR弁の構成について]
この実施形態でも、第5実施形態と同様、EGR弁14につき、ステップモータ27の非駆動時に、弁体25が弁体スプリング52の付勢力により所定の微小開度だけ開弁するように構成される。
【0167】
[エンジン始動制御について]
この実施形態では、少なくとも第1又は第2の実施形態の構成を前提にして、ECU80が、併せて「エンジン始動制御」を実行する点で構成が異なる。ここで、エンジン1の停止後にEGR弁14が開弁した状態でエンジン1が始動されると、その始動と同時に大量のEGRガスが吸気通路2へ流れ、エンジン1に失火やエンストが発生する懸念がある。EGR弁14につき、その雄ねじ30及び雌ねじ51のねじ山30a,51aの傾斜角を小さくすることで、コイル41への通電オフ時に、弁軸26の移動を規制し、EGR弁14が開弁してしまうことを防止できるが、ねじ山30a,51aの傾斜角を小さくすると、弁軸26の運動応答性が悪化したり、部品の新設が必要になったりする。そこで、この実施形態では、次のような「エンジン始動制御」を実行するようになっている。
【0168】
図17に、その「エンジン始動制御」の内容をフローチャートにより示す。処理がこのフローチャートのルーチンへ移行すると、ECU80は、イグニション(IG)がオンか否か、すなわち、ECU80が起動し、IGスイッチ70がオン操作されたか否かを判断する。ECU80は、この判断結果が肯定の場合は、エンジン1が始動したことから処理をステップ810へ移行し、この判断結果が否定の場合は、エンジン1が始動していないことから処理をステップ860へ移行する。
【0169】
ステップ810では、ECU80は、初期エンジン始動フラグXEOが「0」か否かを判断する。このフラグXEOは、初期にエンジン1の始動が完了したことを示すものである。ECU80は、この判断結果が肯定の場合は、初期エンジン始動が未完了であるとして処理をステップ820へ移行し、この判断結果が否定の場合は初期エンジン始動完了であるとして処理をステップ850へ移行する。
【0170】
ステップ820では、ECU80は、初期設定完了フラグXISCが「1」か否かを判断する。ECU80は、この判断結果が肯定の場合は、初期設定完了であるとして処理をステップ830へ移行し、この判断結果が否定の場合は初期設定未完了であるとして処理をステップ800へ戻る。
【0171】
ステップ830では、ECU80は、エンジン1の始動を実行する。すなわち、ECU80は、エンジン1を始動及び運転するための各種制御プログラムの実行を開始する。
【0172】
次に、ステップ840で、ECU80は、初期エンジン始動フラグXEOを「1」に設定し、処理をステップ800へ戻る。
【0173】
一方、ステップ810から移行してステップ850では、ECU80は、通常のエンジン運転制御を実行し、処理をステップ800へ戻る。
【0174】
一方、ステップ800から移行してステップ860では、ECU80は、初期設定完了フラグXISCと初期エンジン始動フラグXEOをそれぞれ「0」にリセットする。
【0175】
次に、ステップ870で、ECU80は、ECU80を停止し、その後の処理を終了する。
【0176】
上記した「エンジン始動制御」によれば、ECU80は、エンジン1の始動が要求された後、「全閉突き当て制御」を実行してからエンジン1を始動させるようになっている。すなわち、第1又は第2の実施形態では、
図9及び
図10、
図11及び
図12のフローチャートのステップ100,110,190,200,210において、ECU80は、エンジン1の始動が要求されたとき、初期設定完了フラグXISCが「0」の場合は、「全閉突き当て制御」を実行し、その後に初期設定完了フラグXISCを「1」に設定するようになっている。そして、
図17のフローチャートでは、ステップ800~ステップ830において、ECU80は、エンジン1の始動が要求されたとき、初期設定完了フラグXISCが「1」の場合にのみ、エンジン始動を実行するようになっている。
【0177】
[エンジンのEGRシステムの作用及び効果について]
以上説明したこの実施形態のEGRシステムの構成によれば、ECU80は、エンジン1の始動が要求された後、「全閉突き当て制御」を実行してからエンジン1を始動させる。従って、エンジン1の始動時には、弁体25が微小開弁のない全閉状態となる。このため、エンジン1の始動と同時にEGRガスがEGR通路12から吸気通路2へ漏れることを防止することができ、エンジン1の失火やエンストを防止することができる。
【0178】
<第8実施形態>
次に、第8実施形態について図面を参照して詳細に説明する。
【0179】
[EGR弁の構成について]
この実施形態では、EGR弁14における弁座24とシール部材の構成の点で前記各実施形態と異なる。
図18に、この実施形態のEGR弁14の断面図であって、その弁体25を弁座24に突き当てて全閉にする全閉突き当て状態を示す。
図19に、同じくEGR弁14の断面図であって、全閉時にステップモータ27が脱調したときの状態を示す。
図20に、同じくEGR弁14の断面図であって、全開状態を示す。
図18~
図20に示すように、この実施形態では、弁座24は、弁孔24bに沿って上方へ突出する円環堤状をなし、その上端面がシート部24aとなっている。そして、このシート部24aに対し、弁体25の下面周縁のシール面25aが当接可能(閉弁可能)となっている。そして、この実施形態では、弁座24にゴムシート28が設けられておらず、その代わりに、弁体25の外周に沿って、ゴム製円環状のリップシール29が設けられる。このリップシール29は、その外周に下方内側へ傾斜するリップ部29aを有する。そして、このリップ部29aの下端部が、弁座24の外周近傍に弾性を伴って接触可能となっている。このリップシール29は、この開示技術のシール部材の一例に相当する。弁体25に設けられるリップシール29は、弁体25の全閉時に、弁体25がシート部24aに接する以外の領域で、弁体25と弁座24との間を密閉するようになっている。
【0180】
図18に示す全閉突き当て状態では、弁体25のシール面25aが弁座24のシート部24aに突き当たり、リップシール29のリップ部29aの下端部が弁座24の外周近傍の壁面に押し付けられて弁体25が全閉となっている。この全閉突き当て状態でのリップ部29aの弾性力は、極力小さいことが望ましい。
図19に示す脱調状態では、弁体25が弁座24のシート部24aから上方へわずかに移動し、シール面25aがシート部24aから離れているが、リップシール29の下端が弁座24の外周近傍の壁面に接することで、弁体25と弁座24の間がシールされている。リップシール29には、この脱調時に弁体25の移動に追従するだけの弾性機能が要求される。一方、
図20に示す全開状態では、弁体25が弁座24から最大限に離間して最大開度になっている。
【0181】
[エンジンのEGRシステムの作用及び効果について]
以上説明したこの実施形態のEGRシステムの構成によれば、EGR弁14における弁座24とリップシール29(シール部材)の構成の点で前記各実施形態と異なるものの、前記各実施形態と同等の作用及び効果を得ることができる。特に、このリップシール29によれば、全閉突き当て時又は脱調時に弁体25の振動も抑制されるので、弁体25と弁座24との間の全閉摩耗やスラスト軸受39,40の摩耗も抑制することができる。
【0182】
<別の実施形態>
なお、この開示技術は前記各実施形態に限定されるものではなく、開示技術の趣旨を逸脱することのない範囲で構成の一部を適宜変更して実施することもできる。
【0183】
(1)前記各実施形態では、弁軸26に設けられる被動ねじを雄ねじ30により構成し、ロータ本体47に設けられる駆動ねじを雌ねじ51により構成したが、被動ねじを雌ねじにより構成し、駆動ねじを雌ねじに螺合される雄ねじにより構成することもできる。
【0184】
(2)前記第1~第7の実施形態では、ゴムシート28を弁座24の側に設けたが、ゴムシートを弁体の側に設けてもよい。
【0185】
(3)前記第8実施形態では、リップシール29を弁体25の側に設けたが、リップシールを弁座の側に設けてもよい。
【0186】
(4)前記第3実施形態では、ECU80を、全閉突き当て制御を実行した後に、微小開度開弁制御を実行するように構成したが、ECUを、全閉突き当て制御を実行せずに、微小開度開弁制御のみを実行するように構成することもできる。
【産業上の利用可能性】
【0187】
この開示技術は、自動車のガソリンエンジンシステムに利用することができる。
【符号の説明】
【0188】
1 エンジン
12 EGR通路
14 EGR弁
22 流路
23 ハウジング
24 弁座
24a シート部
25 弁体
26 弁軸
26a 一端部
26b 他端部
27 ステップモータ
28 ゴムシート(シール部材)
29 リップシール(シール部材)
30 雄ねじ(被動ねじ)
30a 雄ねじ山(被動ねじ山)
30aa 第1雄ねじ山面(第1被動ねじ山面)
30ab 第2雄ねじ山面(第2被動ねじ山面)
43 マグネットロータ(ロータ)
51 雌ねじ(駆動ねじ)
51a 雌ねじ山(駆動ねじ山)
51aa 第1雌ねじ山面(第1駆動ねじ山面)
51ab 第2雌ねじ山面(第2駆動ねじ山面)
52 弁体スプリング
55 バックラッシ
80 ECU(制御手段)