IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 愛三工業株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-弁装置 図1
  • 特開-弁装置 図2
  • 特開-弁装置 図3
  • 特開-弁装置 図4
  • 特開-弁装置 図5
  • 特開-弁装置 図6
  • 特開-弁装置 図7
  • 特開-弁装置 図8
  • 特開-弁装置 図9
  • 特開-弁装置 図10
  • 特開-弁装置 図11
  • 特開-弁装置 図12
  • 特開-弁装置 図13
  • 特開-弁装置 図14
  • 特開-弁装置 図15
  • 特開-弁装置 図16
  • 特開-弁装置 図17
  • 特開-弁装置 図18
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024030898
(43)【公開日】2024-03-07
(54)【発明の名称】弁装置
(51)【国際特許分類】
   F16K 31/50 20060101AFI20240229BHJP
   F16K 31/04 20060101ALI20240229BHJP
   F16K 11/048 20060101ALI20240229BHJP
【FI】
F16K31/50 Z
F16K31/04 K
F16K11/048
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022134111
(22)【出願日】2022-08-25
(71)【出願人】
【識別番号】000116574
【氏名又は名称】愛三工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000291
【氏名又は名称】弁理士法人コスモス国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】吉岡 衛
(72)【発明者】
【氏名】河井 伸二
(72)【発明者】
【氏名】中島 一真
【テーマコード(参考)】
3H062
3H063
3H067
【Fターム(参考)】
3H062AA02
3H062BB30
3H062CC01
3H062EE06
3H062HH10
3H063AA01
3H063AA08
3H063BB50
3H063CC02
3H063DA14
3H063DB03
3H063DB08
3H063GG19
3H067AA03
3H067BB02
3H067BB12
3H067CC60
3H067DD03
3H067DD12
3H067DD32
3H067ED01
3H067ED13
3H067FF17
(57)【要約】
【課題】弁体を所定開度に保持するためのアクチュエータの電力消費を抑制すること。
【解決手段】弁装置1は、流路2を有するハウジング3と、流路2にて同軸上に直列配置された二つの弁座4,5と、両弁座4,5それぞれに対し着座可能な二つの弁体6,7と、両弁体6,7が同軸上に直列配置された弁軸8と、弁軸8の一端側8aに両弁体6,7が固定され、他端側8bに雄ねじ10が設けられることと、弁軸8を往復動させるステップモータ9と、ステップモータ9は、雄ねじ10に螺合される雌ねじ31を有するロータ23を含むことと、流路2は、各弁座4,5を境にステップモータ9に対し近い側と遠い側に分かれ、一方の弁体7がステップモータ9から遠い側にて一方の弁座5に着座可能に配置される。雄ねじ10と雌ねじ31との螺合構造におけるねじのリード角を所定角度に設定することで、両弁体6,7が開弁されるときに、ステップモータ9を非通電とすることで両弁体6,7を任意の開度に保持可能に構成される。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体の流路を有するハウジングと、
前記流路にて同軸上に直列に設けられた複数の弁座と、
複数の前記弁座それぞれに対して着座可能に設けられた複数の弁体と、
複数の前記弁体が同軸上に直列に設けられた弁軸と、
前記弁軸は一端側と他端側を含み、その一端側に複数の前記弁体が固定され、前記他端側に第1ねじが設けられることと、
前記弁軸をその軸線方向へ往復動させるための電動式のアクチュエータと、
前記アクチュエータは、前記第1ねじに螺合される第2ねじを有するロータを含むことと、
前記流路は、それぞれの前記弁座を境として前記アクチュエータに近い側と前記アクチュエータから遠い側に分かれ、複数の前記弁体の少なくとも一つが基準弁体として前記アクチュエータから遠い側にて対応する前記弁座に着座可能に配置されることと
を備えた弁装置において、
前記第1ねじと前記第2ねじとの螺合構造におけるねじのリード角を所定角度に設定することで、複数の前記弁体が開弁されるときに、前記アクチュエータを非通電とすることで複数の前記弁体を任意の開度に保持可能に構成した
ことを特徴とする弁装置。
【請求項2】
請求項1に記載の弁装置において、
前記基準弁体を前記弁軸と共に閉弁方向へ付勢するための弁体スプリングを更に備え、
前記基準弁体を前記アクチュエータにより閉弁方向へ駆動することにより、前記基準弁体が前記弁体スプリングの付勢力により全閉まで閉弁可能に構成した
ことを特徴とする弁装置。
【請求項3】
請求項1に記載の弁装置において、
複数の前記弁座又は複数の前記弁体の少なくとも一つには、弾性材よりなるシール部材が設けられ、
前記シール部材を設けた前記弁体が対応する前記弁座に接近したとき、又は、前記弁体が前記シール部材を設けた対応する前記弁座に接近したときに前記弁体と前記弁座との間にできる隙間を前記シール部材がシールするように構成した
ことを特徴とする弁装置。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれかに記載の弁装置を制御する制御装置において、
前記アクチュエータは、ステップモータにより構成され、前記ロータを回転させるための2相のコイルを含み、
前記ステップモータを制御するための制御手段を更に備え、
前記制御手段は、複数の前記弁座及び複数の前記弁体の少なくとも一組が接近し所定開度となったとき、前記ステップモータを1相通電で制御する
ことを特徴とする弁装置の制御装置。
【請求項5】
流体の流路を有するハウジングと、
前記流路に設けられた弁座と、
前記弁座に対して着座可能に設けられた弁体と、
前記弁体が設けられた弁軸と、
前記弁軸は一端側と他端側を含み、その一端側に前記弁体が固定され、前記他端側に第1ねじが設けられることと、
前記弁軸をその軸線方向へ往復動させるための電動式のアクチュエータと、
前記アクチュエータは、前記第1ねじに螺合される第2ねじを有するロータを含むことと、
前記流路は、前記弁座を境として前記アクチュエータに近い側と前記アクチュエータから遠い側に分かれ、前記弁体が、前記アクチュエータから前記近い側又は前記遠い側にて前記弁座に着座可能に配置されることと
を備えた弁装置において、
前記第1ねじと前記第2ねじとの螺合構造におけるねじのリード角を所定角度に設定することで、前記弁体が開弁されるときに、前記アクチュエータを非通電とすることで前記弁体を任意の開度に保持可能に構成した
ことを特徴とする弁装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この明細書に開示される技術は、弁体が弁座のシート部から直角方向に移動する形式のポペット弁構造を有し、流体の流れを制御する弁装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の技術として、例えば、下記の特許文献1に記載される「EGR弁」が知られている。このEGR弁は、流路を有するハウジングと、流路に設けられた弁座と、弁座に対して着座可能に設けられた弁体と、弁体が設けられた弁軸と、弁軸は一端部と他端部を含み、その一端部に弁体が固定され、他端部に雄ねじが設けられることと、弁軸をその軸線方向へ往復動させるための電動式のアクチュエータと、そのアクチュエータは、雄ねじに螺合される雌ねじを有するロータを含むことと、流路は、弁座を境としてロータに近い側と遠い側に分かれ、近い側の流路にて弁体が弁座に着座可能に配置されることと、弁体を弁軸と共に弁座から遠ざかる方向へ付勢するための弁体スプリングとを備え、いわゆる内開式の二方ポペット弁の構造が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2022-3237号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、特許文献1に記載のEGR弁では、弁体スプリングが、弁体を開弁方向へ付勢することから、弁体を所定の開度に保持するにはアクチュエータへの通電を継続する必要があり、この点で電費が悪くなっていた。
【0005】
この開示技術は、上記事情に鑑みてなされたものであって、その目的は、弁体を所定開度に保持するためのアクチュエータの電力消費を抑制することを可能とした弁装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、請求項1に記載の技術は、流体の流路を有するハウジングと、流路にて同軸上に直列に設けられた複数の弁座と、複数の弁座それぞれに対して着座可能に設けられた複数の弁体と、複数の弁体が同軸上に直列に設けられた弁軸と、弁軸は一端側と他端側を含み、その一端側に複数の弁体が固定され、他端側に第1ねじが設けられることと、弁軸をその軸線方向へ往復動させるための電動式のアクチュエータと、アクチュエータは、第1ねじに螺合される第2ねじを有するロータを含むことと、流路は、それぞれの弁座を境としてアクチュエータに近い側とアクチュエータから遠い側に分かれ、複数の弁体の少なくとも一つが基準弁体としてアクチュエータから遠い側にて対応する弁座に着座可能に配置されることとを備えた弁装置において、第1ねじと第2ねじとの螺合構造におけるねじのリード角を所定角度に設定することで、複数の弁体が開弁されるときに、アクチュエータを非通電とすることで複数の弁体を任意の開度に保持可能に構成したことを趣旨とする。
【0007】
上記技術の構成によれば、弁軸の第1ねじとロータの第2ねじとの螺合構造におけるねじのリード角を所定角度に設定することで、アクチュエータを非通電とすることにより複数の弁体を任意の開度に保持可能に構成される。従って、アクチュエータを通電しなくても、螺合構造により複数の弁体が任意の開度に保持される。
【0008】
上記目的を達成するために、請求項2に記載の技術は、請求項1に記載の技術において、基準弁体を弁軸と共に閉弁方向へ付勢するための弁体スプリングを更に備え、基準弁体をアクチュエータにより閉弁方向へ駆動することにより、基準弁体が弁体スプリングの付勢力により全閉まで閉弁可能に構成したことを趣旨とする。
【0009】
上記技術の構成によれば、請求項1に記載の技術の作用に加え、基準弁体をアクチュエータにより閉弁方向へ駆動することにより、それをきっかけとして基準弁体が弁体スプリングの付勢力により全閉まで閉弁可能となる。従って、基準弁体を閉弁するときは、その駆動初期にアクチュエータを通電するだけで第1ねじと第2ねじとの螺合構造の摩擦抵抗が大きな静的摩擦抵抗から小さな動的摩擦抵抗に切り替わり、基準弁体が動き始め、その後は弁体スプリングの付勢力のみにより駆動が完了する。
【0010】
上記目的を達成するために、請求項3に記載の技術は、請求項1に記載の技術において、複数の弁座又は複数の弁体の少なくとも一つには、弾性材よりなるシール部材が設けられ、シール部材を設けた弁体が対応する弁座に接近したとき、又は、弁体がシール部材を設けた対応する弁座に接近したときに弁体と弁座との間にできる隙間をシール部材がシールするように構成したことを趣旨とする。
【0011】
上記技術の構成によれば、請求項1に記載の技術の作用に加え、シール部材を設けた弁体が対応する弁座に接近したとき、又は、弁体がシール部材を設けた対応する弁座に接近したときに、弁体と弁座との間の隙間がシール部材によりシールされる。従って、シール部材に関わる弁体と弁座を互いに突き当てなくても両者の間がシールされる。
【0012】
上記目的を達成するために、請求項4に記載の技術は、請求項1乃至3のいずれかに記載の弁装置を制御する制御装置において、アクチュエータは、ステップモータにより構成され、ロータを回転させるための2相のコイルを含み、ステップモータを制御するための制御手段を更に備え、制御手段は、複数の弁座及び複数の弁体の少なくとも一組が接近し所定開度となったとき、ステップモータを1相通電で制御することを趣旨とする。
【0013】
上記技術の構成によれば、請求項1乃至3のいずれかに記載の技術の作用に加え、制御手段は、複数の弁座及び複数の弁体の少なくとも一組が接近し所定開度となったときは、ステップモータを1相通電で制御するので、ステップモータへの通電量が抑えられると共にステップモータの駆動トルクが低減される。
【0014】
上記目的を達成するために、請求項5に記載の技術は、流体の流路を有するハウジングと、前記流路に設けられた弁座と、前記弁座に対して着座可能に設けられた弁体と、前記弁体が設けられた弁軸と、前記弁軸は一端側と他端側を含み、その一端側に前記弁体が固定され、前記他端側に第1ねじが設けられることと、前記弁軸をその軸線方向へ往復動させるための電動式のアクチュエータと、前記アクチュエータは、前記第1ねじに螺合される第2ねじを有するロータを含むことと、前記流路は、前記弁座を境として前記アクチュエータに近い側と前記アクチュエータから遠い側に分かれ、前記弁体が、前記アクチュエータから近い側又は遠い側にて前記弁座に着座可能に配置されることとを備えた弁装置において、前記第1ねじと前記第2ねじとの螺合構造におけるねじのリード角を所定角度に設定することで、前記弁体が開弁されるときに、前記アクチュエータを非通電とすることで前記弁体を任意の開度に保持可能に構成したことを趣旨とする。
【0015】
上記技術の構成によれば、弁軸の第1ねじとロータの第2ねじとの螺合構造におけるねじのリード角を所定角度に設定することで、アクチュエータを非通電とすることにより弁体を任意の開度に保持可能に構成される。従って、アクチュエータを通電しなくても、螺合構造により弁体が任意の開度に保持される。
【発明の効果】
【0016】
請求項1に記載の技術によれば、複数の弁体を任意の開度に保持するためのアクチュエータの電力消費を抑制することができる。
【0017】
請求項2に記載の技術によれば、請求項1に記載の技術の効果に加え、アクチュエータの通電時間を短縮することができ、アクチュエータの電力消費を更に抑制することができる。
【0018】
請求項3に記載の技術によれば、請求項1に記載の技術の効果に加え、シール部材に関わる弁体を全閉にするとき、第1ねじと第2ねじとの螺合構造への負荷を低減することができる。
【0019】
請求項4に記載の技術によれば、請求項1乃至3のいずれかに記載の技術の効果に加え、ステップモータの通電時にその電力消費を抑制することができ、かつ、第1ねじと第2ねじとの螺合構造への負荷を低減することができる。
【0020】
請求項5に記載の技術によれば、弁体を任意の開度に保持するためのアクチュエータの電力消費を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】第1実施形態に係り、弁装置の第1開閉状態を示す断面図。
図2】第1実施形態に係り、弁装置の第2開閉状態を示す断面図。
図3】第1実施形態に係り、第1開閉状態におけるステップモータの一部を示す拡大断面図。
図4】第1実施形態に係り、図3における雄ねじと雌ねじの螺合状態の一部を示す拡大断面図。
図5】第1実施形態に係り、第2開閉状態におけるステップモータの一部を示す拡大断面図。
図6】第1実施形態に係り、図5における雄ねじと雌ねじの螺合状態の一部を示す拡大断面図。
図7】第1実施形態に係り、第1及び第2の弁座に対する第1及び第2の弁体と弁軸の動作状態と、それらの関連したハウジングの一部を概略的に示す断面図。
図8】第1実施形態に係り、第1及び第2の弁座に対する第1及び第2の弁体と弁軸の動作状態と、それらの関連したハウジングの一部を概略的に示す断面図。
図9】第1実施形態に係り、第1及び第2の弁座に対する第1及び第2の弁体と弁軸の動作状態と、それらの関連したハウジングの一部を概略的に示す断面図。
図10】第1実施形態に係り、弁装置の制御装置を示す概略構成図。
図11】第1実施形態に係り、弁装置開閉制御の内容を示すフローチャート。
図12】第1実施形態に係り、雄ねじと雌ねじの螺合状態を示す図3図5に準ずる断面図。
図13】第2実施形態に係り、弁装置開閉制御の内容を示すフローチャート。
図14】第2実施形態に係り、弁装置開閉制御の内容を示すフローチャート。
図15】第3実施形態に係り、第1弁体とリップシールの関係を概略的に示す断面図。
図16】第3実施形態に係り、第1弁体とリップシールの関係を概略的に示す断面図。
図17】第3実施形態に係り、弁装置開閉制御の内容を示すフローチャート。
図18】第4実施形態に係り、弁装置の全閉状態を示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、弁装置を具体化したいくつかの実施形態を図面を参照して説明する。
【0023】
<第1実施形態>
先ず、第1実施形態について図1図12を参照して詳細に説明する。
【0024】
[弁装置の構成について]
図1に、この実施形態の弁装置1の第1開閉状態を断面図により示す。図2に、同じく弁装置1の第2開閉状態を断面図により示す。図1図2に示すように、この実施形態の弁装置1は、二つの弁体6,7が対応する弁座4,5のシート部4a,5aから直角方向に移動する形式のポペット弁構造を有する三方弁として構成される。この弁装置1は、流路2を有するハウジング3と、流路2にて同軸上に直列に設けられた二つの弁座4,5と、二つの弁座4,5それぞれに対して着座可能に設けられた二つの弁体6,7と、二つの弁体6,7が同軸上に直列に設けられた弁軸8と、弁軸8をその軸線方向へ往復運動(ストローク運動)させるためのステップモータ9とを備える。この実施形態で、ステップモータ9は、この開示技術における「電動式のアクチュエータ」の一例に相当する。
【0025】
弁軸8は、ハウジング3を垂直に貫通して配置される。弁軸8は一端側8a(図1図2の下端側)と他端側8b(図1図2の上端側)を含み、その一端側8aに二つの弁体6,7が固定され、他端側8bに雄ねじ10が設けられる。弁軸8には、雄ねじ10に隣接した下側にフランジ状のスプリング受け11が設けられる。弁軸8のスプリング受け11より下側には、横断面が略小判形状をなす二面幅部8cが設けられる。この実施形態で、雄ねじ10は、この開示技術の「第1ねじ」の一例に相当する。
【0026】
この実施形態において、弁装置1は、ハウジング3に、流路2に連通する一つの流入口12と二つの流出口13,14を含む三方弁として構成される。流路2は、それぞれの弁座4,5を境としてステップモータ9に近い側とステップモータ9から遠い側に分かれ、ステップモータ9に近い側又はステップモータ9から遠い側に対応する弁体6,7がそれぞれ弁座4,5に着座可能に配置される。すなわち、二つの弁座4,5は、ステップモータ9に最も近い第1弁座4と第1弁座4の次にステップモータ9に近い第2弁座5とを含む。第1弁座4は流路2に連通する第1弁孔4bを有し、第2弁座5は、同じく流路2に連通する第2弁孔5bを有する。二つの弁体6,7は、第1弁座4に対応する第1弁体6と、第2弁座5に対応する第2弁体7を含む。流路2は、第1弁座4を境としてステップモータ9に最も近い第1流路部15と、ステップモータ9から遠い第2流路部16とに分かれる。そして、第1弁座4に対応する第1弁体6は、第1流路部15にて第1弁座4に着座可能に配置される。一方、流路2は、第2弁座5を境としてステップモータ9に近い第2流路部16と、ステップモータ9から最も遠い第3流路部17とに分かれる。そして、第2弁座5に対応する第2弁体7は、第3流路部17にて第2弁座5に着座可能に配置される。第2弁体7は、この開示技術の「基準弁体」の一例に相当する。二つの流出口13,14の一方が第1流路部15に連通する第1流出口13であり、他方が第3流路部17に連通する第2流出口14である。流入口12は第2流路部16に連通する。
【0027】
第1弁体6は第1流路部15にて、第2弁体7は第3流路部17にて弁軸8上に設けられる。第1弁体6は、略円錐台形状をなし外周にテーパ状のシール面6aを有し、そのシール面6aが第1弁座4の稜線状のシート部4aに着座可能に設けられる。第2弁体7は、同じく略円錐台形状をなし外周にテーパ状のシール面7aを有し、そのシール面7aが第2弁座5の稜線状のシート部5aに着座可能に設けられる。この実施形態では、図1図2に示すように、第1弁座4のシート部4aの内周縁には、そのシート部4aよりも上方へ突出し、第1弁体6のシール面6aに接触可能なゴム製のリップシール18が設けられる。リップシール18は、この開示技術の「シール部材」の一例に相当する。
【0028】
ここで、弁軸8の有効ストロークをステップモータ9のステップ数で「100step」とすると、第1弁体6は、図2に示すように第1弁座4に着座させた状態で、ステップモータ9の「108step」の位置で溶接している。また、第2弁体7は、図1に示すように第2弁座5に着座させて状態で、ステップモータ9の「8step」の位置で溶接している。
【0029】
図1に示す第1開閉状態では、第2弁体7が第2弁座5に着座し(全閉状態)、第1弁体6が第1弁座4から上方へ最大限に離間する(全開状態)。この第1開閉状態では、図1に黒矢印で示すように、流入口12から第2流路部16に流入する流体が、第1流路部15へ流れて第1流出口13から流れ出る。一方、図2に示す第2開閉状態では、第2弁体7は第2弁座5から下方へ離間し(全開状態)、第1弁体6が第1弁座4に着座する(全閉状態)。この第2開閉状態では、図2に黒矢印で示すように、流入口12から第2流路部16に流入する流体が、第3流路部17へ流れて第2流出口14から流れ出る。
【0030】
ハウジング3には、弁軸8を軸線方向へストローク運動可能に支持するための、二つのスラスト軸受19,20が設けられる。スラスト軸受19の内周には、横断面が略小判形状をなし弁軸8の二面幅部8cに係合可能な回転規制部19aが形成される。二面幅部8cと回転規制部19aとが係合することで、弁軸8のストローク運動が案内されると共に、弁軸8の回転が規制される。
【0031】
ステップモータ9は、2相のコイル21A,21Bを有するステータ22と、ステータ22の内側に設けられたマグネットロータ23とを含む。これらの部材21A,21B,22,23等は、樹脂製のケーシング24によりモールドされて覆われる。ケーシング24には、横へ突出したコネクタ25が形成される。コネクタ25には、コイル21A,21Bから延びる端子26が設けられる。
【0032】
マグネットロータ23は、ロータ本体27と、ロータ本体27の外側に一体的に設けられた円筒状のマグネット28とを含む。ロータ本体27の上端部外周には、ケーシング24との間に第1ラジアル軸受29が設けられる。マグネット28の下端部内周には、スラスト軸受19との間に第2ラジアル軸受30が設けられる。これら第1及び第2のラジアル軸受29,30によりマグネットロータ23がステータ22の内側にて回転可能に支持される。ロータ本体27の中心には、弁軸8の雄ねじ10に螺合される雌ねじ31が設けられる。この実施形態で、雌ねじ31は、この開示技術の「第2ねじ」の一例に相当する。
【0033】
図3に、弁装置1につき、第1開閉状態におけるステップモータ9の一部を拡大断面図により示す。図4に、図3における雄ねじ10と雌ねじ31の螺合状態の一部を拡大断面図により示す。図5に、弁装置1につき、第2開閉状態におけるステップモータ9の一部を拡大断面図により示す。図6に、図5における雄ねじ10と雌ねじ31の螺合状態の一部を拡大断面図により示す。図3図6に示すように、雄ねじ10は、弁軸8の軸線方向において螺旋状に連なる雄ねじ山10aを有する。この雄ねじ山10aは、第1弁座4の方(下方)へ向いた第1雄ねじ山面10aaと、その第1雄ねじ山面10aaの反対側(上側)に位置する第2雄ねじ山面10abを含む。また、雌ねじ31は、弁軸8の軸線方向において螺旋状に連なる雌ねじ山31aを有する。この雌ねじ山31aは、第1弁座4の方(下方)へ向いた第1雌ねじ山面31aaと、その第1雌ねじ山面31aaの反対側(上側)に位置する第2雌ねじ山面31abを含む。そして、図4図6に示すように、この雄ねじ10と雌ねじ31との間には、弁軸8の軸線方向において所定のバックラッシ35(あそび)が設けられる。
【0034】
ここで、弁軸8のスプリング受け11と下側の第2ラジアル軸受30との間、すなわち、スプリング受け11とハウジング3との間には、二つの弁体6,7を弁軸8と共にステップモータ9に近付く方向(図1図6の上方)へ(基準弁体である第2弁体7を閉弁方向へ)付勢するための弁体スプリング32が設けられる。また、マグネットロータ23(マグネット28)と第2ラジアル軸受30との間には、マグネットロータ23を第1弁座4から遠ざかる方向へ付勢するためのロータスプリング33が設けられる。
【0035】
ハウジング3と弁軸8との間には、ハウジング3と弁軸8との間をシールするための略円筒形をなすリップシール37が、スラスト軸受20に隣接して設けられる。また、ハウジング3と弁軸8との間には、ハウジング3と弁軸8との間をデポジットからガードするための略円筒形をなすデポガードプラグ38が、リップシール37に隣接して設けられる。
【0036】
[ハウジングについて]
この実施形態において、図1図2に示すように、ハウジング3は、二つの弁座4,5のうちステップモータ9に最も近い第1弁座4の近傍にて、第1ハウジング部41と第2ハウジング部42とに分割されて構成される。第1ハウジング部41及び第2ハウジング部42は、それぞれ流路2の一部を含む。これら二つのハウジング部41,42が接合されることで、一つのハウジング3が構成されると共に、そのハウジング3の流路2が構成される。
【0037】
[弁装置の動作について]
図7図9に、第1及び第2の弁座4,5に対する、第1及び第2の弁体6,7と弁軸8の動作状態と、それらの関連したハウジング3(第1ハウジング部41と第2ハウジング部42)の一部を概略的に断面図により示す。この弁装置1は、ステップモータ9を駆動させてマグネットロータ23を回転させることにより、その回転運動を雌ねじ31と雄ねじ10を介して弁軸8と二つの弁体6,7のストローク運動に変換し、二つの弁座4,5に対する弁体6,7の位置を調節するようになっている。
【0038】
すなわち、この弁装置1は、マグネットロータ23を一方向へ回転させて弁軸8を二つの弁体6,7と共に弁体スプリング32の付勢力に抗してストローク運動させることにより、弁体6,7がステップモータ9から遠ざかる方向へ移動し、図2図7に示す第2開閉状態となる。このとき、第1弁体6が第1弁座4に突き当たるようにステップモータ9を制御することにより、第1弁体6のシール面6aが第1弁座4のシート部4aに突き当たると共に、リップシール18の先端がシール面6aに押し当たり変形する。この突き当て状態では、第1弁座4が第1弁体6の閉弁ストッパとして機能することになり、ロータ本体27の回転が規制されると共に、弁軸8及び弁体6,7のストローク運動が規制される。このときの弁軸8の位置を第2開閉状態の初期位置として規定することができる。
【0039】
ここで、この突き当て状態では、ステップモータ9が脱調することがある。ステップモータ9が脱調すると、弁体スプリング32の付勢力により、図8に示すように弁体6,7がステップモータ9へ近付く方向へ微小に移動し、第1弁体6が微小に開弁することになる。しかし、第1弁座4には、リップシール18が設けられるので、第1弁体6が微小に開弁しても、リップシール18の先端が弾性を伴って第1弁体6のシール面6aに接するので、第1弁座4と第1弁体6との間の隙間をリップシール18によりシールすることができる。
【0040】
このとき、弁体スプリング32の付勢力により、図6に示すように、雌ねじ31の第1雌ねじ山面31aaに雄ねじ10の第2雄ねじ山面10abが係合した状態となる。この係合状態では、弁軸8が弁体スプリング32の付勢力F1(黒矢印で示す)によりステップモータ9に近付く方向(図6の上方向)へ付勢されるので、バックラッシ35を介することなく雄ねじ山10aが雌ねじ山31aに当接し、弁軸8の上方向への移動が阻止される。従って、ステップモータ9に近付く方向へ弁体6,7を引き上げたり、押し上げたりするように流体の圧力が作用しても、その弁体6,7の移動が阻止される。このため、ステップモータ9(アクチュエータ)を特に高出力化及び大型化することなく、弁体6,7を第2開閉状態に保持することができる。
【0041】
一方、この第2開閉状態から、マグネットロータ23を反対方向へ回転させて弁軸8を二つの弁体6,7と共に弁体スプリング32の付勢力との協働によりストローク運動させることにより、弁体6,7がステップモータ9に近付く方向へ移動し、図1図9に示す第1開閉状態となる。このとき、第2弁体7のシール面7aが第2弁座5のシート部5aに突き当たることから、ステップモータ9に脱調のおそれがある。しかし、ステップモータ9が脱調して雄ねじ10の第2雄ねじ山面10abと雌ねじ31の第1雌ねじ山面31aaとが離れても、図4に黒矢印で示すように、弁体スプリング32の付勢力F1により、第2弁体7のシール面7aと第2弁座5のシート部5aとの当接が維持される。このため、第2弁体7を第2弁座5に突き当てたまま第1開閉状態を維持することができる。すなわち、基準弁体である第2弁体7をステップモータ9により閉弁方向へ駆動することにより、第2弁体7が弁体スプリング32の付勢力により全閉まで閉弁可能に構成される。
【0042】
[弁装置の制御装置について]
図10に、弁装置1の制御装置を概略構成図により示す。図10に示すように、この制御装置は、弁装置1の他に、電動式の水ポンプ61と電子制御装置(ECU)62とを備える。水流路を切り替えるために、弁装置1において、流入口12には入口パイプ56が接続され、第1流出口13には第1出口パイプ57が接続され、第2流出口14には第2出口パイプ58が接続される。水ポンプ61は、入口パイプ56に設けられる。ECU62は、弁装置1のステップモータ9と水ポンプ61に電気的に接続され、それらを制御するようになっている。この実施形態では、この制御装置の始動と同時に、ECU62が水ポンプ61をオン(通電)するようになっている。
【0043】
ここで、図2は、ECU62が弁装置1をオン(通電)した場合を示す。図1は、ECU62が弁装置1をオフ(非通電)した場合を示す。この実施形態では、前提として、弁装置1のステップモータ9における雄ねじ10及び雌ねじ31のリード角を通常のリード角(例えば、3°)よりもやや小さい角度に設定する(ねじピッチを小さいピッチに設定する)ことで、第2弁体7をステップモータ9により閉弁方向へ駆動することにより、それをきっかけとして第2弁体7が弁体スプリング32の付勢力により全閉に戻る、すなわち第1弁体6及び第2弁体7がイニシャル位置である第1開閉状態に戻る設計となっている。すなわち、雄ねじ10及び雌ねじ31のリード角を通常のリード角よりもやや小さい所定角度に設定する(ねじピッチを小さいピッチに設定する)ことで、第1弁体6及び第2弁体7が開弁されるときに、ステップモータ9を非通電とすることで第1弁体6及び第2弁体7を任意の開度に保持可能に構成される。この構成において、ECU62は、ステップモータ9への通電による消費電力を抑制するために、次のような「弁装置開閉制御」を実行するようになっている。ECU62は、この開示技術の「制御手段」の一例に相当する。
【0044】
[弁装置開閉制御について]
図11に、この実施形態の弁装置開閉制御の内容をフローチャートにより示す。ECU62は、処理がこのルーチンへ移行すると、ステップ100で、弁装置1が全閉保持か否かを判断する。この場合の「全閉」とは基準弁体である第2弁体7が全閉になることを意味し、弁装置1が図1に示す第1開閉状態になることを意味する。ECU62は、この判断結果が肯定となる場合は処理をステップ110へ移行し、この判断結果が否定となる場合は処理をステップ120へ移行する。
【0045】
ステップ110では、ECU62は、弁装置1(ステップモータ9)を通電カット制御する、すなわちステップモータ9への通電をカット(非通電)する。これにより、ステップモータ9のステップ位置Pstepは、イニシャル位置である「-4step」となる。図12に、このときの雄ねじ10と雌ねじ31の螺合状態を図3図5に準ずる断面図により示す。図12に示すように、イニシャル位置では、雄ねじ山10aと雌ねじ山31aが噛み合わないので、雄ねじ10と雌ねじ31にトルクがかからない。その後、ECU62は、処理をステップ100へ戻す。
【0046】
一方、ステップ100から移行してステップ120では、ECU62は、弁装置1の全開又は開弁の要求有りか否かを判断する。この場合の「全開」とは基準弁体である第2弁体7が全開になることを意味し、弁装置1が図2に示す第2開閉状態になることを意味する。ECU62は、この判断結果が肯定となる場合は処理をステップ130へ移行し、この判断結果が否定となる場合は処理をステップ170へ移行する。
【0047】
ステップ130では、ECU62は、弁装置1を通常開弁制御する。すなわち、ECU62は、ステップモータ9を「(108+α)step」まで開弁駆動する。このとき、ECU62は、ステップモータ9のコイル21A,21Bを1相・2相で切り換え通電又は2相で通電する。ここで、「α」は、第1弁体6を第1弁座4へ確実に突き当てるためのステップ数であり、例えば「4~6step」を当てはめることができる。
【0048】
次に、ステップ140で、ECU62は、弁装置1の全開突き当て完了か否かを判断する。図5図6は、全開突き当て完了時の雄ねじ10と雌ねじ31の螺合状態を示す。この状態では、雄ねじ山10aが雌ねじ山31aに突き当たる。ECU62は、この判断結果が肯定となる場合は処理をステップ150へ移行し、この判断結果が否定となる場合は処理をステップ100へ戻す。
【0049】
ステップ150では、ECU62は、全閉フラグXCLを「0」に設定する。
【0050】
次に、ステップ160で、ECU62は、弁装置1(ステップモータ9)を1相通電で保持制御する。このとき、ECU62は、コイル21A又はコイル21Bの一方のみを励磁させる。その後、ECU62は、処理をステップ100へ戻す。
【0051】
一方、ステップ120から移行してステップ170では、ECU62は、弁装置1が全開保持か否かを判断する。この場合の「全開」とは基準弁体である第2弁体7が全開になることを意味し、弁装置1が図2に示す第2開閉状態になることを意味する。ECU62は、この判断結果が肯定となる場合は処理をステップ160へ移行し、この判断結果が否定となる場合は処理をステップ180へ移行する。
【0052】
ステップ180では、ECU62は、全閉フラグXCLが「0」か否かを判断する。ECU62は、この判断結果が肯定となる場合は、閉弁開始であるとして処理をステップ190へ移行し、この判断結果が否定となる場合は、閉弁開始済みであるとして処理をステップ210へジャンプする。
【0053】
ステップ190では、ECU62は、弁装置1を例えば1stepだけ通常閉弁制御する。このとき、ECU62は、ステップモータ9のコイル21A,21Bを1相・2相で切り換え通電又は2相で通電する。
【0054】
次に、ステップ200で、ECU62は、全閉フラグXCLを「1」に設定する。
【0055】
そして、ステップ210で、ECU62は、弁装置1(ステップモータ9)を通電カット制御する。これにより、ステップモータ9のステップ位置Pstepは「-4step」となる。その後、ECU62は処理をステップ100へ戻す。
【0056】
上記した弁装置開閉制御によれば、ECU62は、弁装置1を全閉保持する(第2弁体7を所定開度である全閉に保持する)ときは、ステップモータ9への通電をカットするようになっている(ステップ100、ステップ110)。また、ECU62は、弁装置1を全開保持する(第2弁体7を所定開度である全開に保持する)ときは、ステップモータ9を1相通電で保持するようになっている(ステップ140、ステップ160、ステップ170)。また、ECU62は、第2弁体7を全開から全閉へ制御するときは、閉弁開始の初期のみステップモータ9を閉弁駆動する(ステップ180~ステップ200)ようになっている。このとき、ステップモータ9がイニシャル位置である「-4step」へ戻るときのトルクは、雄ねじ10と雌ねじ31のリード角(ねじピッチ)の設定と弁体スプリング32の付勢力のみによるものである。ここで、第2弁体7が全閉となる(弁装置1が第1開閉状態となる)ときに、ステップモータ9への通電をカットした場合、ステップモータ9がイニシャル位置に戻らない懸念があるが、弁体スプリング32の付勢力による動き出しのきっかけ作用により、ステップモータ9を確実にイニシャル位置へ戻し、第2弁体7を全閉に(弁装置1を第1開閉状態に)戻すことができる。
【0057】
[弁装置及びその制御装置の作用及び効果について]
以上説明したこの実施形態の弁装置1の構成によれば、弁軸8の雄ねじ10とマグネットロータ23の雌ねじ31との螺合構造におけるねじのリード角を所定角度に設定することで、ステップモータ9を非通電とすることにより第1弁体6と第2弁体7を任意の開度に保持可能に構成される。従って、ステップモータ9を通電しなくても、螺合構造により第1弁体6と第2弁体7が任意の開度に保持される。このため、第1弁体6と第2弁体7を任意の開度に保持するためのステップモータ9の電力消費を抑制することができる。
【0058】
この実施形態の弁装置1の構成によれ、基準弁体である第2弁体7をステップモータ9により閉弁方向へ駆動することにより、それをきっかけとして第2弁体7が弁体スプリング32の付勢力により全閉まで、すなわち第1開閉状態になるまで閉弁可能となる。従って、第2弁体7を閉弁するとき、すなわち第1開閉状態にするときは、その駆動初期にステップモータ9を通電するだけで雄ねじ10と雌ねじ31との螺合構造の摩擦抵抗が大きな静的摩擦抵抗から小さな動的摩擦抵抗に切り替わり、第2弁体7が動き始め、その後は弁体スプリング32の付勢力のみにより駆動が完了する。このため、ステップモータ9の通電時間を短縮することができ、ステップモータ9の電力消費を更に抑制することができる。
【0059】
また、この実施形態の弁装置1の制御装置の構成によれば、第1弁体6がリップシール18を設けた対応する第1弁座4に接近したときに、第1弁体6と第1弁座4との間の隙間がリップシール18によりシールされる。従って、リップシール18に関わる第1弁体6と第1弁座4を互いに突き当てなくても両者6,4の間がシールされる。このため、リップシール18に関わる第1弁体6を全閉にするとき、雄ねじ10と雌ねじ31との螺合構造への負荷を低減することができる。
【0060】
<第2実施形態>
次に、第2実施形態について図13図14を参照して詳細に説明する。なお、以下の説明において第1実施形態と同等の構成要素については、同一の符号を付して説明を省略し、以下には異なった点を中心に説明する。また、この実施形態では、弁装置1が、例えば、ガソリンエンジンシステムに設けられることを想定する。
【0061】
[弁装置ついて]
この実施形態の弁装置1は、第1弁体6及び第2弁体7の開閉による水流量の分解能を向上させるために、前提として、ステップモータ9における雄ねじ10及び雌ねじ31のリード角を通常のリード角度(例えば、3°)よりも小さい角度に(ねじピッチを小さいピッチに)設定している。このため、ステップモータ9への通電をカットすると、ステップモータ9は、そのときの状態で停止し、第1及び第2の弁体6,7もそのときの位置で停止することになる。ここで、雄ねじ10及び雌ねじ31のリード角を小さく(ねじピッチを小さく)すると、第2弁体7が全閉で保持又は全開で保持するときのねじ強度が低下する懸念がある。この構成において、ECU62は、ステップモータ9への通電による消費電力を抑制するために、次のような「弁装置開閉制御」を実行するようになっている。
【0062】
[弁装置開閉制御について]
図13図14に、この実施形態の弁装置開閉制御の内容をフローチャートにより示す。処理がこのフローチャートのルーチンへ移行すると、ECU62は、ステップ300で、図示しないイグニション(IG)がオンか否か、すなわちIGスイッチがオン操作されたか否かを判断する。ECU62は、この判断結果が肯定となる場合は、ECU62が起動し、エンジンが始動したことから処理をステップ310へ移行し、この判断結果が否定の場合は、IGオフの操作がされ、エンジンが停止されたことから処理をステップ550へ移行する。
【0063】
ステップ310では、ECU62は、本制御の初期設定が完了したことを示す初期設定フラグXSIが「0」か否かを判断する。ECU62は、この判断結果が肯定となる場合は、初期設定が未完了であるとして処理をステップ320へ移行し、この判断結果が否定となる場合は、初期設定が完了したとして処理をステップ350へ移行する。
【0064】
ステップ320では、ECU62は、弁装置1(ステップモータ9)をイニシャル位置(-4step)に突き当て制御(イニシャル制御)する。
【0065】
次に、ステップ330で、ECU62は、弁装置(ステップモータ9)をイニシャル制御から全閉位置(0step)へ移す全閉制御へ切り換える。
【0066】
次に、ステップ340で、ECU62は、初期設定が完了したものとして初期設定フラグXSIを「1」に設定し、処理をステップ300へ戻す。
【0067】
一方、ステップ310から移行してステップ350では、ECU62は、弁装置1の目標開度Tstepを取り込む。ECU62は、この目標開度Tstepを、別途処理によりエンジンの運転状態に応じて求めることができる。
【0068】
次に、ステップ360で、ECU62は、第2弁体7の全開判定完了を示す全開判定フラグXOPが「0」か否かを判断する。ECU62は、この判断結果が肯定となる場合は、第2弁体7(第1弁体6も)が中間開度であるとして処理をステップ370へ移行し、この判断結果が否定となる場合は、第2弁体7が全開(第1弁体6が全閉)であるとして処理を510へ移行する。
【0069】
ステップ370では、ECU62は、目標開度Tstepが「100(step)」未満であるか否かを判断する。ECU62は、この判断結果が肯定となる場合は処理をステップ380へ移行し、この判断結果が否定となる場合は処理をステップ430へ移行する。
【0070】
ステップ380では、ECU62は、弁装置1(ステップモータ9)を目標開度Tstepに開閉制御する。このとき、ECU62は、ステップモータ9のコイル21A,21Bを1相と2相で切り換え通電又は1相か2相で通電する。
【0071】
次に、ステップ390で、ECU62は、弁装置1(ステップモータ9)の制御stepが目標開度Tstepか否かを判断する。ECU62は、この判断結果が肯定となる場合は、弁装置1を固定開度に制御するために処理をステップ400へ移行し、この判断結果が否定となる場合は、弁装置1を目標開度Tstepにフィードバック制御するために処理をステップ300へ戻す。
【0072】
ステップ400では、ECU62は、弁装置1(ステップモータ9)を1相通電で保持制御する。
【0073】
次に、ステップ410で、ECU62は、現在の制御開度を保持して弁装置1(ステップモータ9)を通電カットする。
【0074】
次に、ステップ420で、ECU62は、全開判定フラグXOPを「0」に設定し、処理をステップ300へ戻す。
【0075】
一方、ステップ370から移行してステップ430では、ECU62は、弁装置1(ステップモータ9)を1相通電で開閉制御する。
【0076】
次に、ステップ440で、ECU62は、目標開度Tstepが「108(step)」以上か否かを判断する。ECU62は、この判断結果が肯定となる場合は、第2弁体7の全開要求であるとして処理をステップ450へ移行し、この判断結果が否定となる場合は、第2弁体7の中間開度要求であるとして処理をステップ500へ移行する。
【0077】
ステップ450では、ECU62は、第2弁体7を全開に突き当てるまで弁装置1(ステップモータ9)の全開突き当て制御を実行する。すなわち、ECU62は、ステップモータ9を「114step」まで1相通電で開弁する。
【0078】
次に、ステップ460で、ECU62は、弁装置1(ステップモータ9)の制御stepが「114(step)」以上か否かを判断する。ECU62は、この判断結果が肯定となる場合は、弁装置1を全開制御するために処理をステップ470へ移行し、この判断結果が否定となる場合は、弁装置1を目標開度Tstepにフィードバック制御するために処理をステップ300へ戻す。
【0079】
ステップ470では、ECU62は、弁装置1(ステップモータ9)を1相通電で保持制御する。
【0080】
次に、ステップ480で、ECU62は、弁装置1(ステップモータ9)を全閉保持して通電カットする。
【0081】
次に、ステップ490で、ECU62は、全開判定フラグXOPを「1」に設定し、処理をステップ300へ戻す。
【0082】
一方、ステップ440から移行してステップ500では、ECU62は、全開判定フラグXOPが「1」か否かを判断する。ECU62は、この判断結果が肯定となる場合は処理をステップ510へ移行し、この判断結果が否定となる場合は処理をステップ370へ移行する。
【0083】
ステップ510では、ECU62は、目標開度Tstepが「0」より大きいか否かを判断する。ECU62は、この判断結果が肯定となる場合は処理をステップ520へ移行し、この判断結果が否定となる場合は、全閉要求であるとして処理をステップ540へ移行する。
【0084】
ステップ520では、ECU62は、弁装置1(ステップモータ9)を目標開度Tstepに開閉制御する。このとき、ECU62は、ステップモータ9のコイル21A,21Bを1相と2相で切り換え通電又は1相か2相で通電する。
【0085】
次に、ステップ530で、ECU62は、弁装置1(ステップモータ9)の制御stepが目標開度Tstepか否かを判断する。ECU62は、この判断結果が肯定となる場合は、弁装置1を固定開度で制御するために処理をステップ400へ移行し、この判断結果が否定となる場合は、弁装置1を目標開度Tstepにフィードバック制御するために処理をステップ300へ戻す。
【0086】
一方、ステップ510から移行してステップ540では、ECU62は、弁装置1(ステップモータ9)にイニシャル要求が有るか否かを判断する。ECU62は、この判断結果が肯定となる場合は処理をステップ320へ移行し、この判断結果が否定となる場合は、全閉要求であるとして処理をステップ400へ移行する。
【0087】
一方、ステップ300から移行してステップ550では、ECU62は、弁装置1(ステップモータ9)をイニシャル位置に突き当て制御する。
【0088】
次に、ステップ560で、ECU62は、弁装置(ステップモータ9)をイニシャル制御から全閉制御へ切り換える。
【0089】
次に、ステップ570では、ECU62は、初期設定フラグXSIを「0」に、全開判定フラグXOPを「0」にリセットする。
【0090】
次に、ステップ580で、ECU62は、ECU62を停止し、処理をステップ300へ戻す。
【0091】
上記した弁装置開閉制御によれば、ECU62は、IGオフ時に、弁装置1(ステップモータ9)をイニシャル位置に戻す(ステップ550~ステップ580)ようになっている。また、ECU62は、弁装置1(ステップモータ9)の全閉制御時、全開突き当て制御時及び全開保持制御時には、ステップモータ9のコイル21A,21Bを1相通電で制御する(ステップ320~ステップ340、ステップ390、ステップ400、ステップ450~ステップ470)ようになっている。また、ECU62は、弁装置1(ステップモータ9)を全開突き当て制御する直前からステップモータ9を1相通電で制御する(ステップ430)ようになっている。すなわち、ECU62は、二つの弁座4,5及び二つの弁体6,7のうちの一組(第2弁座5と第2弁体7)が接近し所定開度となったとき、ステップモータを1相通電で制御するようになっている。ここで、図12に2点鎖線で示すように、弁軸8とロータ本体27との間に当接し合うストッパ構造50がある場合は、イニシャル位置で、ストッパ構造50が当接し合う状態では、雄ねじ10と雌ねじ31がメカタッチにより脱調する状態については、2相通電可能である。また、ECU62は、ステップモータ9を全開突き当て直前から1相通電制御するときにおいて、第2弁体7(第1弁体6)の中間開度では、ステップモータ9を1相と2相で切り換え通電するようになっている。更に、ECU62は、第2弁体7をある固定開度に制御するときには、ステップモータ9を通電カットするようになっている。そして、ECU62は、基準弁体である第2弁体7を閉弁制御する際、第2弁体7が所定開度となったときは、ステップモータ9を1相通電で制御するようになっている。
【0092】
[弁装置及びその制御装置の作用及び効果について]
以上説明したこの実施形態の弁装置1の構成によれば、ECU62は、基準弁体としての第2弁体7と第2弁座5が接近して所定開度としての全閉となったときは、ステップモータ9を1相通電で制御するので、ステップモータ9への通電量が抑えられると共にステップモータ9の駆動トルクが低減される。このため、ステップモータ9の通電時にその電力消費を抑制することができ、かつ、雄ねじ10と雌ねじ31との螺合構造への負荷を低減することができる。
【0093】
<第3実施形態>
次に、第3実施形態について図15図17を参照して詳細に説明する。
【0094】
[弁装置ついて]
この実施形態の弁装置1は、基本的には、前記各実施形態と同等の構成を備えるが、第1弁体6とリップシール18との関係の点で少し異なる。図15及び図16に、第1弁体6とリップシール18の関係を概略的に断面図により示す。この実施形態の弁装置1は、第1弁体6を全閉とし第2弁体7を全開とする第2開閉状態のときに、ステップモータ9を脱調させない構成となっている。弁装置1の部品公差を考慮した場合、ステップモータ9の駆動上限である「108step」でも、第1弁体6を第1弁座4に突き当てないようになっている。そして、その駆動上限位置では、図15に示すように、第1弁体6と第1弁座4とが最大接近するが、第1弁体6と第1弁座4との間に「0step以上」の僅かな隙間G1が設けられる。仮に、駆動上限位置を「109step」にすると、第1弁体6が第1弁座4に突き当たってしまいステップモータ9に脱調が発生してしまう。一方、ステップモータ9の駆動下限位置である「108step」でも、第1弁体6を第1弁座4に突き当てないようになっている。そして、その駆動下限位置では、図16に示すように、第1弁体6と第1弁座4とが最小接近するが、第1弁体6と第1弁座4との間に「8step以上(0.4mm以上)」の隙間G2(G2>G1)が設けられる。この構成において、ECU62は、ステップモータ9への通電による消費電力を抑制するために、次のような「弁装置開閉制御」を実行するようになっている。
【0095】
[弁装置開閉制御について]
図17に、この実施形態の弁装置開閉制御の内容をフローチャートにより示す。このフローチャートは、ステップ360、ステップ370、ステップ420、ステップ430~ステップ540の処理が削除され、ステップ400の代わりにステップ600の処理が設けられる点で図13図14のフローチャートと異なる。
【0096】
処理がこのフローチャートのルーチンへ移行すると、ECU62は、ステップ300の判断結果が否定となる場合は、処理をステップ550へ移行し、ステップ550~ステップ580の処理を実行する。
【0097】
一方、ステップ300の判断結果が肯定となり、かつ、ステップ310の判断結果が肯定となる場合は、ECU62は、処理をステップ320へ移行し、ステップ320~ステップ340の処理を実行する。
【0098】
一方、ステップ310の判断結果が否定となる場合は、ECU62は、処理をステップ350へ移行し、ステップ350、ステップ380及びステップ390の処理を実行し、ステップ390の判断結果が否定となる場合は、処理をステップ300へ戻し、ステップ390の判断結果が肯定となる場合は、ステップ600及びステップ410の処理を実行する。ここで、ステップ600では、ECU62は、ステップモータ9の通電保持制御を実行する。この通電保持制御で、ECU62は、2相通電を1相通電に切り換える必要はない。
【0099】
[弁装置の作用及び効果について]
以上説明したこの実施形態の弁装置1の構成によれば、ステップモータ9を脱調させない構成については、第1弁体6と第1弁座4との突き当てがないので、突き当てにより雄ねじ10と雌ねじ31との間に高負荷がかかることはない。そのため、ステップモータ9の駆動トルクを抑える必要がなくなり、ステップモータ9を1相通電に切り換える必要がなくなる。そして、第1弁体6を全閉とする全閉制御(0step)から全開にする全開制御(108step)までの間で、第1弁体6と第1弁座4との突き当てがないので、ステップモータ9の脱調を考慮した「+α(step)」の開弁制御の補正が不要となる。
【0100】
<第4実施形態>
次に、第4実施形態について図18を参照して詳細に説明する。
【0101】
[弁装置ついて]
この実施形態の弁装置71は、弁体7と弁座5及び流路2の構成の点で前記各実施形態の弁装置1と異なる。図18に、この実施形態の弁装置71の全閉状態を断面図により示す。図18に示すように、この実施形態の弁装置71は、前述した弁装置1と比較すると、流路2から、第1弁座4が省略され、第2弁座5のみが設けられる。また、前述した弁装置1と比較すると、流路2は、第2流路部16が省略され、第2弁座5を境としてステップモータ9に近い側である第1流路部15とステップモータ9から遠い側である第3流路部17とに分かれて構成される。そして、第3流路部17に流入口12が設けられ、第1流路部15に第1流出口13が設けられ、第2流出口14は省略される。また、弁軸8上から第1弁体6が省略され、第2弁座5に対応する第2弁体7のみが設けられる。第2弁体7は、第3流路部17にて第2弁座5に着座可能に配置される。また、この実施形態の弁装置71は、ハウジング3が二体ではなく一体のみで形成される。この実施形態の弁装置71につき、ステップモータ9を含むその他の構成は、前記各実施形態の弁装置1と同じである。
【0102】
そして、上記のように構成した弁装置71でも、前提として、ステップモータ9における雄ねじ10及び雌ねじ31のリード角を通常のリード角度よりも小さい角度に設定する(ねじピッチを小さいピッチに設定する)ことで、第2弁体7が開弁されるときに、ステップモータ9を非通電とすることで第2弁体7を任意の開度に保持可能に構成される。
【0103】
[弁装置及びその制御装置の作用及び効果について]
以上説明したこの実施形態の弁装置71の構成によれば、弁軸8の雄ねじ10とマグネットロータ23の雌ねじ31との螺合構造におけるねじのリード角が通常のリード角よりも小さい角度(所定角度)に設定することで、ステップモータ9を非通電とすることにより第2弁体7を任意の開度に保持可能に構成される。従って、ステップモータ9を通電しなくても、螺合構造により第2弁体7が任意の開度に保持される。このため、第2弁体7を任意の開度に保持するためのステップモータ9の電力消費を抑制することができる。
【0104】
<別の実施形態>
なお、この開示技術は前記各実施形態に限定されるものではなく、開示技術の趣旨を逸脱することのない範囲で構成の一部を適宜変更して実施することもできる。
【0105】
(1)前記各実施形態では、弁軸8に設けられる第1ねじを雄ねじ10により構成し、ロータ本体27に設けられる第2ねじを雌ねじ31により構成したが、第1ねじを雌ねじにより構成し、第2ねじを雄ねじにより構成することもできる。
【0106】
(2)前記各実施形態では、複数の弁座及びそれに対応する複数の弁体として、二つの弁座4,5と二つの弁体6,7を設けたが、3つ以上の弁座及びそれに対応する3つ以上の弁体を設けることもできる。
【0107】
(3)前記各実施形態では、第1弁座4にシール部材としてのリップシール18を設けたが、第1弁座に対するする第1弁体にリップシールを設けることもできる。また、第2弁座又は第2弁体にシール部材を設けることもできる。
【産業上の利用可能性】
【0108】
この開示技術は、ポペット弁構造を有し、流体の流れを制御する弁装置に適用することができる。
【符号の説明】
【0109】
1 弁装置
2 流路
3 ハウジング
4 第1弁座
5 第2弁座
6 第1弁体
7 第2弁体
8 弁軸
8a 一端側
8b 他端側
9 ステップモータ(アクチュエータ)
10 雄ねじ(第1ねじ)
18 リップシール(ゴムシート)
21A コイル
21B コイル
23 マグネットロータ
31 雌ねじ(第2ねじ)
32 弁体スプリング
62 ECU(制御手段)
71 弁装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18