(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024030902
(43)【公開日】2024-03-07
(54)【発明の名称】圧造機
(51)【国際特許分類】
B21J 5/06 20060101AFI20240229BHJP
【FI】
B21J5/06 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022134124
(22)【出願日】2022-08-25
(71)【出願人】
【識別番号】000117009
【氏名又は名称】旭サナック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000604
【氏名又は名称】弁理士法人 共立特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】葛谷 智恵美
【テーマコード(参考)】
4E087
【Fターム(参考)】
4E087AA08
4E087CA46
4E087EA20
4E087EC43
4E087ED22
4E087HA38
(57)【要約】
【課題】ワークの外周面に圧造加工を行う割り金型の移動を安定化して、ワークの成形品質を高く維持することができる圧造機を提供する。
【解決手段】圧造機1は、略軸対称形状のワークWの外周面に対向する加工型(ローレット加工型44)を有して、周方向に分割された複数の割り金型4と、加工型がワークWの外周面に圧造加工を行う時間帯を通して、面接触により複数の割り金型4を軸線方向に相対移動可能に、かつ径方向に移動可能に保持するケース3と、複数の割り金型4とケース3とを軸線方向に相対移動させることにより、複数の割り金型4を径方向内向きに移動させて、加工型によりワークWの外周面に圧造加工を行わせる駆動部(金型駆動部71)と、複数の割り金型4の移動を案内しつつ周方向への振れを規制するガイド部材(ガイドピン5)と、を備える。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
略軸対称形状のワークの外周面に対向する加工型を有して、周方向に分割された複数の割り金型と、
前記加工型が前記ワークの前記外周面に圧造加工を行う時間帯を通して、面接触により複数の前記割り金型を軸線方向に相対移動可能に、かつ径方向に移動可能に保持するケースと、
複数の前記割り金型と前記ケースとを軸線方向に相対移動させることにより、複数の前記割り金型を径方向内向きに移動させて、前記加工型により前記ワークの前記外周面に圧造加工を行わせる駆動部と、
複数の前記割り金型の移動を案内しつつ周方向への振れを規制するガイド部材と、
を備える圧造機。
【請求項2】
略軸対称形状のワークの外周面に対向する加工型を有して、周方向に分割された複数の割り金型と、
複数の前記割り金型を軸線方向に相対移動可能に、かつ径方向に移動可能に保持するケースと、
複数の前記割り金型と前記ケースとを軸線方向に相対移動させることにより、複数の前記割り金型を径方向内向きに移動させて、前記加工型により前記ワークの前記外周面に圧造加工を行わせる駆動部と、
複数の前記割り金型の移動を案内しつつ周方向への振れを規制するガイド部材と、
を備える圧造機。
【請求項3】
前記ガイド部材は、
軸線方向に互いに離隔して配置され、かつ前記割り金型が移動する径方向に平行して延在する複数のガイドピンからなる、請求項1または2に記載の圧造機。
【請求項4】
前記ガイドピンは、前記割り金型に線接触する、請求項3に記載の圧造機。
【請求項5】
前記ガイドピンは、円柱形状または円筒形状をもつ、請求項4に記載の圧造機。
【請求項6】
複数の前記ガイドピンは、前記割り金型の周方向の両側にそれぞれ配置され、一つの前記割り金型に対して四本以上設けられる、請求項3に記載の圧造機。
【請求項7】
複数の前記割り金型は、前記軸線方向と直交する第二方向の径方向に移動する二つの前記割り金型と、前記軸線方向および前記第二方向と直交する第三方向の径方向に移動する別の二つの前記割り金型とからなり、
前記ガイドピンは、前記第二方向または前記第三方向に平行して延在する、
請求項3に記載の圧造機。
【請求項8】
略軸対称形状のワークの外周面に対向する加工型を有して、周方向に分割された複数の割り金型と、
前記加工型が前記ワークの前記外周面に圧造加工を行う時間帯を通して、面接触により複数の前記割り金型を軸線方向に相対移動可能に、かつ径方向に移動可能に保持するケースと、
複数の前記割り金型と前記ケースとを軸線方向に相対移動させることにより、複数の前記割り金型を径方向内向きに移動させて、前記加工型により前記ワークの前記外周面に圧造加工を行わせる駆動部と、
を備える圧造機。
【請求項9】
前記ケースは、
複数の前記割り金型が径方向内向きに移動する時間帯を通して、面接触により前記割り金型の各々を保持し、前記割り金型から作用する径方向外向きの面圧を受容する複数の受圧面を有する、
請求項1または8に記載の圧造機。
【請求項10】
複数の前記割り金型の各々は、軸線方向に対して傾斜した金型側傾斜平面を有し、
複数の前記受圧面の各々は、前記金型側傾斜平面に面接触する受圧側傾斜平面からなり、
前記駆動部は、前記金型側傾斜平面と前記受圧側傾斜平面とを面接触させつつ軸線方向に相対移動させることにより、複数の前記割り金型を径方向内向きに移動させる、
請求項9に記載の圧造機。
【請求項11】
前記駆動部は、前記ワークを軸線方向に相対移動させて複数の前記割り金型の中央位置に挿入するワーク挿入部を兼ねる、請求項1、2、8のいずれか一項に記載の圧造機。
【請求項12】
前記ワーク挿入部を兼ねる前記駆動部は、挿入した前記ワークおよび複数の前記割り金型と、前記ケースとを軸線方向に相対移動させることにより、相対移動中の前記ワークに対して前記加工型を径方向内向きに移動させる、請求項11に記載の圧造機。
【請求項13】
前記加工型は、前記ワークの前記外周面にローレット加工を行うローレット加工型である、請求項1、2、8のいずれか一項に記載の圧造機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、略軸対称形状のワークの外周面に加工型を押し当てて圧造加工を行う圧造機に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的な圧造機では、ダイスがワークを保持し、パンチが軸線方向に移動してワークの端面に押し当てられることにより圧造加工を行う。このため、ワークの外周面に加工型を押し当てて圧造加工を行うことが難しかった。ワークの外周面にローレットや溝などを圧造加工する場合、従来技術では、圧造機を用いてワークの基本形状を圧造加工した後、そのワークを転造機などの別の加工機に搬送して外周面の成形加工を行っていた。しかしながら、この従来技術では、圧造機から別の加工機にワークを搬送する搬送装置などの設備投資が必要となり、または、搬送作業を行う作業者の手間が必要となる。さらに、生産管理や品質管理が煩雑化して、管理レベルが低下しがちになる。加えて、転造機では、生産速度が遅いため生産能率が上がらないという問題点がある。このような問題点に対応する技術例が特許文献1、2に開示されている。
【0003】
特許文献1に開示されたフォーマー(圧造機)は、4段の圧造ステーションを備え、第3ダイおよび第4ダイを支持するダイブロックを取り外した空間スペースにねじ転造装置を取り付けて、4段式フォーマーまたはねじ転造装置付きフォーマーのいずれかに選択可能としている。これによれば、ねじ転造装置付きフォーマーとして圧造からねじ転造までを連続的に行ってボルト等を製造するとともに、4段式フォーマーとしてねじ転造を必要としない圧造品を製造することができる、とされている。
【0004】
また、特許文献2に開示された溝付きナットの製造方法は、円柱状素材の一端部を圧造加工により縮径して小径部とし、分割型(割り金型)を用いて小径部に周溝を成形する。実施形態の説明によれば、4個の分割ダイスの外周面は、集合させた状態で奥方ほど径が小さくなる円錐面を構成する形状とされ、ダイケースの前部内周面も同様の円錐面とされている。4個の分割ダイスは、前方へ移動しながら互いに接近して全体が集合するので、周溝の圧造加工が可能になる。これによれば、円柱状素材の外周面に周溝を圧造加工することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】実用新案登録第3145390号公報
【特許文献2】特開2002-139013号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、特許文献1の技術例におけるダイブロックとねじ転造装置の交換は、交換範囲が大規模であるため、交換作業に多くの手間が掛かるとともに、交換後の調整作業も煩雑になる。これに対して、特許文献2に開示された分割ダイス(割り金型)は、多段圧造機の一つの圧造工程に組み込むことができるものであり、交換範囲が限定されて好ましい。しかしながら、4個の分割ダイスの円錐面とダイケースの円錐面とが接触する構成であるため、分割ダイスによる圧造加工が不安定化するおそれがある。
【0007】
詳述すると、4個の分割ダイスは、径方向内向きに移動して集合したときにダイケースへの面接触が可能となる(双方の円錐面の面接触)。しかしながら、4個の分割ダイスが径方向内向きに移動する以前や移動途中の時間帯において、対向する双方の円錐面の曲率半径がわずかに相違する。つまり、ダイケースの円錐面の直径は手前側で大きく、奥側で小さくなっており、分割ダイスは、奥側の小さな直径に適合する円錐面をもつ。このため、分割ダイスは、奥側以外ではダイケースに線接触するだけで、面接触することができない。したがって、4個の分割ダイスの移動が不安定化し、いずれかの分割ダイスが軸線方向に対して傾斜したり、ダイス相互間の離間距離にばらつきが生じたりする場合がある。これにより、分割ダイスによる圧造加工が不安定化して、ワークの成形品質が低下することが懸念される。
【0008】
本発明は、上述した背景技術の問題点に鑑みてなされたものであり、ワークの外周面に圧造加工を行う割り金型の移動を安定化して、ワークの成形品質を高く維持することができる圧造機を提供することを解決すべき課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の圧造機は、略軸対称形状のワークの外周面に対向する加工型を有して、周方向に分割された複数の割り金型と、前記加工型が前記ワークの前記外周面に圧造加工を行う時間帯を通して、面接触により複数の前記割り金型を軸線方向に相対移動可能に、かつ径方向に移動可能に保持するケースと、複数の前記割り金型と前記ケースとを軸線方向に相対移動させることにより、複数の前記割り金型を径方向内向きに移動させて、前記加工型により前記ワークの前記外周面に圧造加工を行わせる駆動部と、複数の前記割り金型の移動を案内しつつ周方向への振れを規制するガイド部材と、を備える。
【0010】
また、圧造機は、略軸対称形状のワークの外周面に対向する加工型を有して、周方向に分割された複数の割り金型と、複数の前記割り金型を軸線方向に相対移動可能に、かつ径方向に移動可能に保持するケースと、複数の前記割り金型と前記ケースとを軸線方向に相対移動させることにより、複数の前記割り金型を径方向内向きに移動させて、前記加工型により前記ワークの前記外周面に圧造加工を行わせる駆動部と、複数の前記割り金型の移動を案内しつつ周方向への振れを規制するガイド部材と、を備えてもよい。
【0011】
さらに、圧造機は、略軸対称形状のワークの外周面に対向する加工型を有して、周方向に分割された複数の割り金型と、前記加工型が前記ワークの前記外周面に圧造加工を行う時間帯を通して、面接触により複数の前記割り金型を軸線方向に相対移動可能に、かつ径方向に移動可能に保持するケースと、複数の前記割り金型と前記ケースとを軸線方向に相対移動させることにより、複数の前記割り金型を径方向内向きに移動させて、前記加工型により前記ワークの前記外周面に圧造加工を行わせる駆動部と、を備えてもよい。
【発明の効果】
【0012】
本発明の圧造機において、ガイド部材は、複数の割り金型の移動を案内しつつ周方向への振れを規制するので、割り金型の移動が安定化される。また、ケースは、加工型がワークの外周面に圧造加工を行う時間帯を通して、面接触により複数の割り金型を軸線方向に相対移動可能に、かつ径方向に移動可能に保持するように構成することができる。これによれば、圧造加工を行う時間帯を通してケースと複数の割り金型との面接触が維持され、割り金型の移動が安定化される。したがって、ガイド部材およびケースの少なくとも一方の作用により割り金型の移動が安定化されて、ワークの成形品質を高く維持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】実施形態の圧造機の全体構成を模式的に示す平面図である。
【
図2】複数の割り金型およびケースが設けられた外周面圧造工程の構成を示す側面断面図であり、ワーク挿入前の初期状態が示されている。
【
図3】割り金型およびガイドピンの配置を示す
図2のA-A矢視断面図であり、見易さの観点から割り金型の断面を示すハッチングを省略している。
【
図4】上側の割り金型およびガイドピンを示す部分平面図である。
【
図5】
図2の初期状態から続く外周面圧造工程の動作を説明する側面断面図であり、ワーク挿入状態が示されている。
【
図6】
図5から続く外周面圧造工程の動作を説明する側面断面図であり、割り金型が集合位置に位置する成形加工終了状態が示されている。
【
図7】
図6の圧造加工終了状態における割り金型、ガイドピン、およびワークの配置を示すA-A矢視断面図であり、見易さの観点から割り金型の断面を示すハッチングを省略している。
【
図8】
図6から続く外周面圧造工程の動作を説明する側面断面図であり、パンチが後退して割り金型が集合位置から離間位置に戻る途中の状態が示されている。
【
図9】
図8から続く外周面圧造工程の動作を説明する側面断面図であり、割り金型が離間位置まで戻った状態が示されている。
【
図10】
図9から続く外周面圧造工程の動作を説明する側面断面図であり、ワークが後方に突き出された状態が示されている。
【発明を実施するための形態】
【0014】
1.実施形態の圧造機1の全体構成
まず、実施形態の圧造機1の全体構成について、
図1を参考にして説明する。圧造機1は、フレーム21、ラム24、六組のダイス23およびパンチ26、トランスファー装置27、線材供給装置8、ならびに主駆動部9などで構成される。圧造機1は、パンチ26が水平方向に往復移動する横型の多段圧造機である。圧造機1は、六組の対向するダイス23およびパンチ26により第1~第6工程が形成されている。
図1の紙面左右方向が圧造機1の前後方向となり、紙面上下方向が圧造機1の幅方向となる。圧造機1の前後方向は、ダイス23、パンチ26、およびワークに共通する軸線方向と一致している。
図1において、第1~第6工程は、幅方向の紙面上側から紙面下側へと並んでいる。なお、圧造機1の工程数は、6工程に限定されず、1~8工程程度が一般的になっている。
【0015】
フレーム21は、各部を配設するための筐体である。6個のダイスホルダ22は、フレーム21の前寄り位置に幅方向に並んで設けられる。6個のダイス23の各々は、各ダイスホルダ22の後部に交換可能に取り付けられる。各ダイス23の図中の左方向を向いた後側に、所定の加工型が形成されている。ダイス23は、加工型の内部にワークを保持する。
【0016】
ラム24は、平面視で概ね矩形であり、フレーム21の略中央に配置される。ラム24は、前後方向に往復動作する。6個のパンチホルダ25は、ラム24の前寄り位置に幅方向に並んで設けられる。6個のパンチ26の各々は、各パンチホルダ25の前部に交換可能に取り付けられる。各パンチ26の図中の右方向を向いた前側に、所定の加工型が形成されている。各パンチ26は、ラム24とともに往復動作する。各工程において、パンチ26は、ダイス23に対向しつつ前後方向(軸線方向)に往復動作することにより、ダイス23と組になってワークに圧造加工を施す。
【0017】
線材供給装置8は、フレーム21の前部の第1工程の隣の位置から前方にかけて配置される。線材供給装置8は、切断刃81、固定把持部82、および可動把持部83などで構成される。可動把持部83は、前方から供給される長尺の線材を把持して後方に移動することにより、線材を切断刃81に送給する。可動把持部83が線材を解放して前方に戻る間、固定把持部82が線材を把持する。切断刃81は、線材が貫通する環状の固定刃および可動刃からなり、線材を切断してワークを作成する。作成されたワークは、図略のプッシャ部材によりトランスファー装置27に向かって押し出される。通常、線材は円形断面を有し、ワークは、円柱状の初期形状を有する。線材およびワークの材質として、鉄やアルミ、各種の合金などを例示することができる。なお、固定把持部82および可動把持部83に代え、線材を挟んで回転する一対以上のローラを有する線材送り機構を用いてもよい。
【0018】
トランスファー装置27は、ダイスホルダ22の上方からダイス23の後方にかけて配設される。トランスファー装置27は、ワークを把持する7対のフィンガ対を有する。最上流の第1のフィンガ対は、線材供給装置8から押し出されたワークを把持して、第1工程まで搬送する。第2~第6のフィンガ対は、上流側の工程でワークを把持して、下流側の工程まで搬送する。最下流の第7のフィンガ対は、第6工程でワークを把持して、図略の搬出部まで搬送する。
【0019】
パンチ26の往復動作を駆動するために主駆動部9が設けられる。主駆動部9は、線材供給装置8およびトランスファー装置27を併せて駆動する。主駆動部9は、主駆動源91と各種の伝達機構およびカム機構などで構成される。主駆動源91は、例えば、三相交流電源で動作する誘導モータまたは同期モータとすることができる。主駆動源91の駆動力は、フライホイール92、クラッチ機構93、ディスクブレーキ94、および減速機構95を介して、クランク軸96に入力される。
【0020】
クランク軸96とラム24の間に、コンロッド29が配置される。コンロッド29は、その一端がクランク軸96に連結され、その他端がラム24に連結される。主駆動源91に駆動されてクランク軸96が回転すると、コンロッド29の一端は円軌道に沿って回転し、コンロッド29の他端は前後方向に往復移動する。これにより、ラム24が前後方向に往復動作し、ラム24上の6個のパンチ26も前後方向(軸線方向)に往復動作する。
【0021】
コンロッド29の上方に、6個のキックアウトカム98が設けられている。キックアウトカム98は、幅方向に等間隔で配置されており、第1~第6工程の位置にそれぞれ対応する。キックアウトカム98は、各パンチ26に設けられたパンチ側キックアウトピンを前後方向に駆動する。また、クランク軸96から分岐歯車対97を介してサイド軸99へと、駆動力が分岐伝達される。
【0022】
サイド軸99は、駆動力を上方に分岐伝達する。上方に分岐された駆動力は、トランスファカム9Aを回転駆動する。トランスファカム9Aは、トランスファー装置27の工程間の往復移動を駆動する。また、サイド軸99からトランスファドライブ9Bを経由した先に、7個のオープンクローズカム9Cが回転駆動されるように連結される。オープンクローズカム9Cは、幅方向に等間隔で配置される。オープンクローズカム9Cは、トランスファー装置27の各フィンガ対を開閉駆動する。
【0023】
さらに、サイド軸99には、カッタカム9Dが設けられるとともに、プッシャカム9E、フィードカム9F、および5個のキックアウトカム9Hが連結される。カッタカム9Dは、切断刃81の切断動作を駆動する。プッシャカム9Eは、プッシャ部材の押し出し動作を駆動する。フィードカム9Fは、可動把持部83の往復動作を駆動する。キックアウトカム9Hは、幅方向に等間隔で配置されており、第1~第6工程の位置にそれぞれ対応する。キックアウトカム9Hは、ダイス23からワークを突き出す動作を駆動する。
【0024】
2.外周面圧造工程
本実施形態では、第1~第6工程のいずれか1工程以上を、
図2~
図4に示される外周面圧造工程に変形する。なお、
図2は、
図3のB-B矢視断面図に相当する。外周面圧造工程は、略軸対称形状のワークの外周面に圧造加工を行う工程である。以降では、円筒形状のワークWの外周面にローレット加工を行う場合を例にして説明する。外周面圧造工程は、ケース3、4個の割り金型4、複数のガイドピン5、キックアウトピン6、およびパンチ26などで構成される。
【0025】
図2に示されるように、ダイスホルダ22は、軸線ALに沿って前後方向に貫通する中心孔221を有する環形に形成されている。また、ダイスホルダ22は、中心孔221よりも外側にそれぞれ形成され、周方向に離隔して配置された複数の周囲室222を有する。周囲室222の各々は、後方(
図2では左方)に開放している。周囲室222の数量は、一般的には三つ~六つとされる。なお、周囲室222は、中心孔221よりも外側を周回する一つのリング形状の室でもよい。
【0026】
ケース3は、ダイスホルダ22の後部(
図2では左側)に取り付けられる。ケース3は、ダイスホルダ22と同程度の大きさをもち、軸線ALの周りに環形に形成される。ケース3の後部の中央に、横向きの正四角錘台の形状の金型収納空間が設けられる。正四角錘台の正方形の上底面および下底面の各4辺は、水平方向または鉛直方向に配置される。前側の上底面は、後側の下底面よりも小さい。したがって、金型収納空間は、前側(
図2では右側)が先細りとなっている。ケース3の後部の内側は、正四角錘台の側面にあたる等脚台形の形状の四つの受圧面からなる。受圧面の各々は、軸線方向に対して傾斜した受圧側傾斜平面31に相当する。
【0027】
4個の割り金型4は、前述した金型収納空間に後側から挿入されて配置される。その後、ケース3の後側に、ボルト32を用いて金型止め材33が取り付けられる。
図3に示されるように、4個の割り金型4の各々は、中心位置(軸線AL)からみて概ね90°の範囲を占め、周方向に四等分割された形状を有する。割り金型4の各々は、曲面状の内周面、内周面の両縁からそれぞれ径方向外向きに延びる二つの端面41、二つの端面41に連なる二つのガイド面42、および、二つのガイド面42の外縁に連なる外周側の金型側傾斜平面43を有する。二つの端面41は、90°の角度を成して径方向外側で拡がり、二つのガイド面42は、離隔して互いに平行する。
【0028】
割り金型4は、内周面にローレット加工型44を有する。ローレット加工型44は、主に滑り止めのための細かい凹凸や切れ込みなどを圧造加工するための加工型である。隣り合う2個の割り金型4の向かい合う端面41は、互いに平行するように配置され、もしくは、互いに面接触することが可能となっている。端面41の各々に収納穴45が形成される。向かい合う二つの収納穴45の内部に、付勢ばね46が配置される。付勢ばね46は、例えばコイルばねが圧縮されて用いられ、端面41同士(割り金型4同士)を遠ざけるように付勢する。
【0029】
外周側の金型側傾斜平面43は、ケース3の受圧側傾斜平面31と同じ傾斜角度で軸線方向に対して傾斜している。したがって、割り金型4は、前側ほど径方向の厚み寸法が小さく形成される。一方、割り金型4の二つのガイド面42の間の幅寸法LGは、前側でも後側でも変わらない。金型側傾斜平面43は、平面視で長方形の形状をもつ(
図4参照)。双方の傾斜平面の傾斜角度が同じであるので、4個の割り金型4の金型側傾斜平面43は、それぞれ受圧側傾斜平面31に面接触する。そして、ローレット加工型44により圧造加工が行われるときに、受圧側傾斜平面31は、金型側傾斜平面43から作用する径方向外向きの面圧を受容する。
【0030】
金型側傾斜平面43と受圧側傾斜平面31との面接触により、割り金型4は、軸線方向(前後方向)に相対移動可能にケース3に保持される(
図4の矢印MA参照)。さらに、割り金型4は、径方向に移動可能にケース3に保持される。具体的には、
図3の矢印MVに示されるように、上側および下側の割り金型4は、径方向に相当する鉛直方向に移動可能とされる。また、矢印MHに示されるように、右側および左側の割り金型4は、径方向に相当する水平方向に移動可能とされる。ここで、鉛直方向は、軸線方向に直交する第二方向に該当し、水平方向は、軸線方向および第二方向に直交する第三方向に該当する。
【0031】
4個の割り金型4を後方に向かって付勢するために、付勢材47および複数の付勢ばね48が設けられる。
図2に示されるように、付勢材47は、ケース3の内周側の割り金型4の前側に配置される。付勢材47は、前側の環形の大径部471、および後側の環形の小径部472からなる。大径部471の前面は、ダイスホルダ22の後面に当接したり、離隔したりする。小径部472の後面は、割り金型4の前面に当接している。
【0032】
複数の付勢ばね48の各々は、ダイスホルダ22の周囲室222の内部に配置される。付勢ばね48は、例えばコイルばねが圧縮されて用いられ、付勢材47の大径部471を後方へ付勢する。
図2に示される初期状態において、付勢材47は、ダイスホルダ22から離隔するように後方へ付勢されている。これにより、付勢材47は、4個の割り金型4を後方に移動させて金型止め材33に当接させる。このとき、4個の割り金型4は、付勢ばね46の作用で径方向外向きに移動し、径方向外側で互いに離間した離間位置に位置する。
【0033】
4個の割り金型4の移動を案内しつつ周方向への振れを規制するガイド部材として、複数のガイドピン5が設けられる。ガイドピン5は、その一部がケース3に嵌め込まれて固定される。なお、ガイドピン5は、他の固定方法で固定されてもよい。ガイドピン5は、割り金型4の周方向の両側に、前述した幅寸法LGだけ離れて配置される。かつ、2本のガイドピン5が軸線方向に互いに離隔して配置される。つまり、
図4に示されるように、1個の割り金型4に対して4本のガイドピン5が設けられる。4本のガイドピン5を用いることにより、割り金型4とのがたつきが少なくなるため、割り金型4の移動が安定化する。
【0034】
ガイドピン5の各々は、割り金型4が移動する径方向に平行して延在する。具体的には、
図3に示されるように、矢印MVの鉛直方向に移動する上側および下側の割り金型4に対応して、鉛直方向に延在するガイドピン5が設けられる。また、矢印MHの水平方向に移動する右側および左側の割り金型4に対応して、水平方向に延在するガイドピン5が設けられる。割り金型4を4個とし、ガイドピン5を鉛直方向または水平方向に配置して傾斜方向としないことにより、圧造機1の構造設計の容易化および製造の容易化が実現され、構造上の精度を高める点でも有利となる。
【0035】
また、ガイドピン5は、円柱形状または円筒形状をもち(
図4参照)、割り金型4のガイド面42に線接触する。したがって、ガイドピン5は、割り金型4の軸線方向の相対移動および径方向の移動を案内しつつ周方向への振れを規制することができる。加えて、線接触としたことにより、ガイドピン5と、移動する割り金型4との間に発生する摩擦が低減される。これにより、割り金型4の移動が円滑化され、不要な発熱および温度上昇が抑制される。線接触を実現するために、ガイドピン5は、楕円柱など他の形状であってもよい。さらに、ガイドピン5は、例えば瓢箪型のように滑らかな凹凸形状を有して、割り金型4に複数箇所で点接触してもよい。
【0036】
なお、金型側傾斜平面43の幅方向(周方向)の中央位置に軸線方向に延びるガイド溝を設け、ケース3に固定されたガイドピン5をガイド溝内に配置する変形が可能である。この変形によれば、ガイドピン5の本数を削減することができる。一方で、割り金型4の圧造加工時の内部圧力が大きくなる箇所にガイド溝を形成することになるため、機械的な強度が低下するおそれが生じる。また、ガイドピン5に代わるガイド部材として、例えば、割り金型4のガイド面42に平行して軸線方向に延びるガイドレールを用いるようにしてもよい。円柱形状または円筒形状のガイドレールを用いることにより、ガイドピン5と同様、線接触が実現される。
【0037】
キックアウトピン6は、軸線AL上に配置されて軸線方向に移動する。
図2に示されるように、キックアウトピン6は、ダイスホルダ22の中心孔221、付勢材47の中心、および4個の割り金型4の中央位置を貫通して軸線方向に延在する。キックアウトピン6は、複数の部材が連結されて構成されてもよい。
【0038】
ダイスホルダ22の中心孔221の内部のキックアウトピン6の周りに、付勢ばね61が設けられる。付勢ばね61は、例えばコイルばねが圧縮されて用いられ、キックアウトピン6を後方へ付勢する。付勢されたキックアウトピン6は、圧造加工が行われるワークWに当接してその位置を安定化する。また、前述したキックアウトカム9Hは、キックアウトピン6を前側の待機位置から後側の突き出し位置まで駆動する。
図2において、キックアウトピン6の突き出し位置が示されている。キックアウトピン6は、加工後のワークWに当接して押動し、割り金型4の中央位置から後方に突き出す。
【0039】
パンチ26は、4個の割り金型4とケース3とを軸線方向に相対移動させる金型駆動部71、およびワーク挿入部72を有する。
図2に示される初期状態において、パンチ26は、後死点に位置する。金型駆動部71は、前面が平らな環形状に形成される。金型駆動部71は、前進することによりその前面で4個の割り金型4の後面を押して軸線方向に前進させる。
【0040】
ワーク挿入部72は、前側の小径部73と後側の大径部74とからなる段付き円柱形状を有する(
図8参照)。大径部74は、金型駆動部71の中央に固定されており、金型駆動部71よりも前側まで突出する。小径部73は、円筒形状のワークWの後側内部に入り込んでワークWを保持する。ワーク挿入部72は、前進することによりワークWを軸線方向に前進させて4個の割り金型4の中央位置に挿入する。
【0041】
3.圧造機1(外周面圧造工程)の動作
次に、圧造機1の動作、主に外周面圧造工程の動作について、
図2、
図5~
図10を参考にして説明する。
図2の初期状態において、トランスファー装置27により上流工程側からワークWが搬入される。パンチ26が後死点から前進を開始すると、ワーク挿入部72は、その小径部73でワークWの後側内部を保持する。ワーク挿入部72は、続いてワークWを軸線方向に前進させる。ワークWは、キックアウトピン6を押動しながら4個の割り金型4の中央位置に向かって前進する。したがって、キックアウトピン6は、付勢ばね61に抗して突き出し位置から待機位置の方向へ戻ってゆく。この時点で、金型駆動部71と割り金型4は、相互に離間している。
【0042】
図5に示されるように、ワークWが4個の割り金型4の中央位置に到達したとき、金型駆動部71は、割り金型4の後面に当接する。その後、パンチ26は、ワークWおよび4個の割り金型4を同時に等速で前進させる。これにより、割り金型4は、付勢材47がダイスホルダ22に当接するまで前進する。このとき、4個の割り金型4は、金型側傾斜平面43が受圧側傾斜平面31に沿って前進するので、付勢ばね48に抗して前進しながら径方向内向きに移動する。結果として、4個の割り金型4は、付勢ばね46に抗して離間位置から径方向内向きに移動して、互いに接近する。ここで、割り金型4が前進する時間帯を通して、金型側傾斜平面43と受圧側傾斜平面31との面接触が維持される。かつ、割り金型4の移動は、ガイドピン5に案内されて周方向への振れが規制される。したがって、割り金型4の移動が安定化される。
【0043】
4個の割り金型4が径方向内向きに移動する過程において、ローレット加工型44は、ワークWの外周面に押し当てられて圧造加工を施す。このとき、キックアウトピン6は、付勢ばね61の作用により、ワークWを後方に向かって付勢し、ワークWの位置を安定化する。また、ワークWおよび割り金型4が軸線方向に等速で移動しているので、ローレット加工型44は、ワークWに対して径方向内向きに移動する。換言すると、ローレット加工型44は、加工対象面に向かって垂直に押し付けられる。したがって、良好な加工精度が確保される。仮に、ワークWが静止した状態で割り金型4が軸線方向に移動すると、ローレット加工型44が加工対象面に向かって斜め方向から押し付けられることになり、加工精度が低下しがちになる。
【0044】
図6および
図7に示されるように、パンチ26が前死点まで前進すると、4個の割り金型4は、端面41同士が接触し、または最接近する径方向内側の集合位置に位置し、圧造加工が終了する。この後、パンチ26は、ワークWを残して、前死点からの後退を開始する。パンチ26の後退に伴い、付勢ばね48の作用によって付勢材47が割り金型4を後方へ移動させる。4個の割り金型4は、軸線方向に後退しつつ、付勢ばね46の作用で集合位置から径方向外側の離間位置に向かって移動する(
図8参照)。
【0045】
図9に示されるように、4個の割り金型4が離間位置まで戻った後、または戻る途中で、キックアウトピン6は、キックアウトカム9Hに駆動されて突き出し動作を開始する。すなわち、キックアウトピン6は、待機位置から突き出し位置まで動作する。これにより、ローレット加工が施されたワークWは、
図10に示されるように、割り金型4よりも後方まで突き出される。なお、付勢ばね61は、補助的にキックアウトピン6を後方に付勢している。したがって、キックアウトピン6は、付勢ばね61によって動作を開始し、最終的にキックアウトカム9Hに駆動されてもよい。この後、突き出されたワークWは、トランスファー装置27により下流工程側へ搬出される。
【0046】
実施形態の圧造機1において、ガイドピン5は、4個の割り金型4の移動を案内しつつ周方向への振れを規制するので、割り金型4の移動が安定化される。また、ケース3は、ローレット加工型44がワークWの外周面に圧造加工を行う時間帯を通して、面接触により4個の割り金型4を軸線方向に相対移動可能に、かつ径方向に移動可能に保持するように構成することができる。具体的には、受圧側傾斜平面31と金型側傾斜平面43との面接触を維持する構成を採用する。これによれば、圧造加工を行う時間帯を通してケース3と4個の割り金型4との面接触が維持され、割り金型4の移動が安定化される。したがって、ガイドピン5およびケース3の少なくとも一方の作用により割り金型4の移動が安定化されて、ワークWの成形品質を高く維持することができる。加えて、転造機と比較して速い生産速度を実現して、生産能率を高めることができる。
【0047】
4.実施形態の変形および応用
なお、本発明は、パンチ26の移動方向を上下方向と読み替えて、縦型の鍛造機やプレス機などに応用することができる。加えて、割り金型4の個数は4個以外でもよい。また、ガイドピン5を用いることにより割り金型4の移動が安定化されるので、金型側傾斜平面43および受圧側傾斜平面31を従来技術の円錐面に置き換えても、ワークWの成形品質を高く維持する効果が生じる。一方で、金型側傾斜平面43と受圧側傾斜平面31との面接触の維持により割り金型4の移動が安定化されるので、ガイドピン5を省略しても、ワークWの成形品質を高く維持する効果が生じる。
【0048】
さらに、実施形態において、ケース3が静止状態でパンチ26(金型駆動部71)が軸線方向に動作することにより割り金型4が径方向内向きに移動するが、逆に、パンチ26が静止状態でケース3および割り金型4が軸線方向に動作しても、同様の作用が生じる。また、ワークWは、円筒形状に限定されず、略軸対称形状であればよく、段付き円柱形状や多角柱形状などでもよい。さらに、割り金型4が内周面に有する加工型はローレット加工型44に限定されず、ワークWの外周面に凹みや孔、溝などを圧造加工する加工型や、刻印等を行う加工型でもよい。本発明は、その他にも様々な変形や応用が可能である。
【符号の説明】
【0049】
1:圧造機 23:ダイス 26:パンチ
3:ケース 31:受圧側傾斜平面
4:割り金型 41:端面 42:ガイド面 43:金型側傾斜平面
44:ローレット加工型 46:付勢ばね
5:ガイドピン 6:キックアウトピン
71:金型駆動部 72:ワーク挿入部
W:ワーク AL:軸線