(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024030904
(43)【公開日】2024-03-07
(54)【発明の名称】静止誘導機器
(51)【国際特許分類】
G01R 31/12 20200101AFI20240229BHJP
【FI】
G01R31/12 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022134131
(22)【出願日】2022-08-25
(71)【出願人】
【識別番号】513296958
【氏名又は名称】東芝産業機器システム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000567
【氏名又は名称】弁理士法人サトー
(72)【発明者】
【氏名】大山 公治
(72)【発明者】
【氏名】尾崎 多文
(72)【発明者】
【氏名】前田 照彦
(72)【発明者】
【氏名】廣島 聡
【テーマコード(参考)】
2G015
【Fターム(参考)】
2G015AA07
2G015AA09
2G015BA10
2G015CA01
(57)【要約】
【課題】高精度で部分放電の発生位置が特定できる静止誘導機器を提供する。
【解決手段】静止誘導機器は、容器と、容器内部に収容される静止誘導機器本体と、静止誘導機器本体に電気的に接続された被接続部材と、静止誘導機器本体又は被接続部材から発生する部分放電による電磁波を検出する検出装置と、容器の内面に配置された、部分放電による電磁波を反射する反射部材と、を備える。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器と、
前記容器内部に収容される静止誘導機器本体と、
前記静止誘導機器本体に電気的に接続された被接続部材と、
前記静止誘導機器本体又は前記被接続部材から発生する部分放電による電磁波を検出する検出装置と、
前記容器の内面に配置された、前記部分放電による電磁波を反射する反射部材と、を備える、
静止誘導機器。
【請求項2】
前記反射部材は、前記容器の内表面の少なくとも一部に形成された凹凸部を覆い隠す、
請求項1に記載の静止誘導機器。
【請求項3】
前記反射部材の反射面は、前記電磁波の反射方向が前記検出装置に向かって集約する曲面に形成されている
請求項1に記載の静止誘導機器。
【請求項4】
前記静止誘導機器本体が有する巻線と、
前記巻線又は前記被接続部材のいずれか一方又は両方に配置されて、前記部分放電による電流パルスを受けて電磁波を放射するアンテナと、を備える、
請求項1に記載の静止誘導機器。
【請求項5】
複数の前記検出装置と、
前記容器内に分散して配置された複数の前記アンテナと、を備え、
複数の前記アンテナの各々は、複数の前記検出装置から選ばれる互いに異なる一の検出装置に対して指向性を有する、
請求項4に記載の静止誘導機器。
【請求項6】
異なる周波数の電磁波を放射する、互いに離れた位置に配置された複数の前記アンテナを備え、
前記検出装置は、複数の前記アンテナが放射する異なる周波数の電磁波を検知可能である、
請求項4に記載の静止誘導機器。
【請求項7】
容器内面のうち前記反射部材が配置されていない面の少なくとも一部に配置された、電磁波を吸収する吸収部材を備える、
請求項1から6のいずれか一項に記載の静止誘導機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本実施形態は、静止誘導機器に関する。
【背景技術】
【0002】
静止誘導機器の内部で絶縁異常が発生すると、局所的に微弱な放電現象である部分放電が発生する。部分放電の発生により絶縁体が劣化し、長期的には絶縁破壊に至る虞がある。そのため、部分放電の発生を検知する必要がある。
【0003】
例えば、特許文献1には、巻線をシールドケース内に収納してなる電気機器において、前記巻線外面と前記シールドケース内面との間に位置され少なくとも1MHzから100MHzまでの範囲の周波数帯域の電磁波を受信してその受信強度に応じた電圧信号を出力する検出ヘッドを備えたことを特徴とする電気機器が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
部分放電の発生位置によって、静止誘導機器に与える影響が異なるため、部分放電の発生位置の特定は、静止誘導機器の保守・点検作業の一環として重要である。
【0006】
そこで、高精度で部分放電の発生位置が特定できる静止誘導機器を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
実施形態の静止誘導機器は、容器と、前記容器内部に収容される静止誘導機器本体と、前記静止誘導機器本体に電気的に接続された被接続部材と、前記静止誘導機器本体又は前記被接続部材から発生する部分放電による電磁波を検出する検出装置と、前記容器の内面に配置された、前記部分放電による電磁波を反射する反射部材と、を備える。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】第1実施形態による静止誘導機器の一例の概略構成を示す正面図
【
図2】第1実施形態による静止誘導機器の一例の概略構成を示す縦断面図
【
図3】第1実施形態による静止誘導機器の一例の容器の前側の側面部の一部を
図1のIII-III線に沿って示す横断面図
【
図4】第2実施形態による静止誘導機器の一例の概略構成を示す縦断面図
【
図5】第3実施形態による静止誘導機器の一例の概略構成を示す縦断面図
【
図6】第4実施形態による静止誘導機器の一例の概略構成を示す縦断面図
【
図7】第5実施形態による静止誘導機器の一例の概略構成を示す縦断面図
【
図8】第6実施形態による静止誘導機器の一例の概略構成を示す縦断面図
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、複数の実施形態による静止誘導機器について図面を参照して説明する。複数の実施形態の説明において実質的に同一の構成部は同一の符号を付し、説明を省略することがある。静止誘導機器の設置面側つまり鉛直下側を静止誘導機器の下側とし、設置面と反対側つまり鉛直上側を静止誘導機器の上側とする。また、
図1の紙面左右方向を静止誘導機器の左右方向とし、上下方向及び左右方向に垂直な方向を静止誘導機器の前後方向とする。なお、下記の実施形態において、静止誘導機器を一般的な油入変圧器に適用した例について説明するが、これに限らない。他の実施形態では、静止誘導機器は、容器に絶縁性のガスが封入されているガス絶縁変圧器であっても良いし、巻線の表面が樹脂等の絶縁基材によって覆われたつまりモールドされた巻線を容器に収容したモールド変圧器であっても良い。
【0010】
(第1実施形態)
図1~
図3を参照して、第1実施形態について説明する。本実施形態の静止誘導機器10は、容器に絶縁油が封入された油入変圧器である。静止誘導機器10は、容器11と、静止誘導機器本体20と、を備える。容器11は、概ね矩形の箱状に形成されており、内部に図示しない絶縁油と静止誘導機器本体20とを収容する。
【0011】
容器11は、箱部材12と、蓋部材13とを含んで構成される。箱部材12は、上部が開口した概ね矩形の箱状に形成されており、側面部121と、底面部122と、開口部123とを有する。側面部121は、箱部材12の周面この場合前後左右の面を形成する。底面部122は、箱部材12の底面を形成する。開口部123は、箱部材12の上部に設けられて箱部材12の内部と外部とを連通する。蓋部材13は、概ね平板状に形成されて、開口部123を開閉する。箱部材12と蓋部材13とは、金属部材で構成されている。
【0012】
図1~
図3に示すように、箱部材12は、多数のフィン14を有する。フィン14は、容器11内部の熱を外部に放熱する機能を有する。フィン14は、側面部121の上下左右の面の概ね全体にそれぞれ複数形成されている。フィン14は、側面部121から外部に向けて突出して形成され、互いに所定の間隔を空けて上下方向に延びて設けられている。
図3に前側の側面部121の部分断面図を示すように、多数のフィン14は金属の薄板を折り重ねるようにして形成されている。各フィン14の内部には空隙が形成されて、絶縁油が通過可能に構成されている。
【0013】
静止誘導機器本体20は、巻線21、22と鉄心23とを含んで構成されている。巻線21、22は、共に鉄心23に巻回されている。巻線21が電力系統に適用された場合に高圧電力が入力される高圧側巻線である。巻線22は、電力系統に適用された場合に低圧電力を出力する低圧側巻線である。鉄心23の外周側に低圧側巻線22が配置され、低圧側巻線22の外周側に高圧側巻線21が配置されている。高圧側巻線21と低圧側巻線22とは、それぞれ表面全体を樹脂等の絶縁部材により覆われて絶縁されている。高圧側巻線21と低圧側巻線22との間には、図示しないスペーサにより上下方向に貫通する空隙部が設けられている。尚、高圧側は一次側と称され、低圧側は二次側と称されることがある。なお、静止誘導機器本体20は、巻線21、22の表面を樹脂などの絶縁材料で覆ったモールド型変圧器であっても良いし、モールド型変圧器でなくても良い。
【0014】
静止誘導機器10は、更に高圧側口出し線151,152と、低圧側口出し線161,162と、高圧側端子171,172と、低圧側端子181,182と、を更に備える。高圧側口出し線151,152は、一端が高圧側巻線21に接続され、他端が高圧側端子171,172にそれぞれ接続されている。低圧側口出し線161,162は、一端が低圧側巻線22に接続され、他端が低圧側端子181,182にそれぞれ接続されている。高圧側口出し線151,152と低圧側口出し線161,162とは、巻線21,22に電気的に接続された被接続部材である。高圧側端子171,172と、低圧側端子181,182とは、それぞれ蓋部材13に取り付けられている。高圧側端子171,172と、低圧側端子181,182とは、例えばT型ブッシングやダイレクトモールドブッシングである。
【0015】
容器11内部において、絶縁異常により部分放電が発生する虞がある。部分放電が発生すると、部分放電に伴って電磁波がパルス信号として放射される。静止誘導機器10は、検出装置30を備える。検出装置30は、容器11内部で生じる部分放電により発生する電磁波を検出する機能を有する。
【0016】
検出装置30は、検出部31と、処理部32とを含んで構成されている。検出部31は、容器11の内部に配置されて、部分放電で発生した電磁波を検出する機能を有する。処理部32は、容器11の外部に配置されて、検出部31と電気的に接続されており、検出部31で検出した信号を処理する。処理部32は、静止誘導機器10外部のサーバに検出結果を通信可能に構成されていても良い。
【0017】
部分放電は、とりわけ、電圧の高い高圧側巻線21や、電界が集中する口出し線151,152、鉄心23の付近に配置された部材、巻線21,22と容器11内に設置された電圧の掛かっていない部材との間、等において発生する可能性が高い。なお、電磁波は金属を透過しないため、巻線21,22の内部で発生した部分放電は検知することが困難である。
【0018】
検出装置30は、部分放電が発生し易い部位に対向する位置に設けることができる。例えば、巻線21,22の端面を覗くように容器11の上部又は下部に取り付けることができる。本実施形態では、検出装置30は、箱部材12の上部つまり側面部121の上部に取り付けられている。具体的には、検出装置30は巻線21,22の上端面よりも上方であって、かつ、巻線21,22の上端面の近傍に取り付けられている。これにより、例えば、巻線21,22の上端面を概ね水平方向から観測することができる。他の実施形態では、検出装置30は、蓋部材13に取り付けられたり、底面部122に取り付けられたりしていても良い。
【0019】
なお、本実施形態では、検出装置30は、高圧側口出し線151,152の極近傍ではなく、高圧側口出し線151,152の近傍の側面部121この場合左の側面部121と対向する右の側面部121に設けられている。これにより、検出装置30は、部分放電が発生し易い部位のうち特定の部分のみでなく比較的広範囲な部分で発生する部分放電を観測することができる。
【0020】
検出装置30は、例えばMHz(メガヘルツ)帯域からGHz(ギガヘルツ)帯域の周波数のマイクロ波を検知することができる。検出装置30は、例えば、周波数が300MHzから300GHzすなわち波長が1mから1mmのマイクロ波を検出する機能を有するマイクロ波センサである。検出部31は、半導体素子や、ループセンサ、ロッドアンテナであっても良い。本実施形態では、検出部31は半導体素子によって実現されている。
【0021】
静止誘導機器10は、更に反射部材40を備える。反射部材40は、容器11の内面に取り付けられて、部分放電により発生した電磁波を反射する。これにより、部分放電のみの場合に比較して、検出部31が観測する電磁波の量が増加することにより検出部31の検出精度が向上したり、反射部材40無しでは検出部31によって検出できない位置で発生した電磁波が、反射光を検出することで検出部31によって検出可能となったりする。したがって、検出装置30による検出精度や検出効率が向上する。
【0022】
反射部材40は、電磁波の反射率が大きい部材を含んで構成されており、例えば反射面401つまり容器11の中心に向いた面を鏡面仕上げされた金属の薄い板又は金属を含む薄板で構成することができる。反射部材40は、例えば樹脂の薄板の表面にアルミなどの金属を蒸着させて構成しても良い。
【0023】
反射部材40は、容器11の内面の一部又は全体を覆うように配置される。本実施形態では、反射部材40は、容器11の内面の一部を覆うように配置されている。反射部材40は、部分放電が発生し易い部分の近傍に配置することで、反射効率を向上することができる。例えば、反射部材40は、部分放電が発生し易い部分を取り囲み、検出部31に対向するように配置することができる。本実施形態では、高圧側口出し線151,152と、巻線21,22の上端面の高圧側口出し線151,152が接続している部分と、を取り囲むように、側面部121の上部の一部と蓋部材13との内面側に配置されている。換言すると、反射部材40は、右の側面部121に設けられた検出装置30と対向する左の側面部121の上部の一部と、蓋部材13との内面側に配置されている。
【0024】
容器11の内面は、三次元的な構造である凹凸部が多数形成されている。例えば、上述のように、側面部121には、フィン14による凹凸部が多数形成されている。凹凸部に電磁波が入射すると、電磁波は拡散反射するため、検出装置30にとって部分放電の発生部位を特定することが難しくなる。一方、反射部材40でフィン14による凹凸部を覆い、容器11の内表面を平滑にすることで、部分放電による電磁波を一層反射つまり正反射し易くすることができる。すなわち、反射部材40は、容器11の内表面の凹凸部を覆い隠して、電磁波を正反射し易くする機能を有する。
【0025】
以上説明した本実施形態によれば、静止誘導機器10は、容器11と、静止誘導機器本体20と、非接続部材である口出し線151,152,161,162と、検出装置30と、反射部材40と、を備える。静止誘導機器本体20は、容器11内部に収容されている。非接続部材である口出し線151,152,161,162は、静止誘導機器本体20に電気的に接続されている。検出装置30は、静止誘導機器本体20又は非接続部材から発生する部分放電による電磁波を検出する機能を有する。反射部材40は、容器11の内面に配置された、前記部分放電による電磁波を反射する機能を有する。
【0026】
これにより、部分放電によるマイクロ波を反射部材40によって反射させて、検出装置30が部分放電を検知しやすくする。したがって、高精度で部分放電の発生位置が特定できる静止誘導機器10が提供される。
【0027】
反射部材40は、容器11の内表面の少なくとも一部に形成された凹凸部を覆い隠す。
【0028】
これにより、反射部材40は、凹凸部による拡散反射を抑制し、入射光に対する正反射成分を増加させる。したがって、高精度で部分放電の発生位置が特定できる静止誘導機器10が提供される。
【0029】
(第2実施形態)
図4を参照して第2実施形態について説明する。本実施形態の静止誘導機器10は、反射部材41を備える。反射部材41は、反射面411つまり容器11の中心に向いた面で正反射した電磁波が、より検出部31に指向する姿勢に維持されている。更に、反射部材41は、2つ以上の面に跨って配置された場合、内角が90度以下となる鋭角部を有さない。これにより、反射部材41で反射された電磁波が、検出部31によって一層効率的に検知されるようになり、電磁波が鋭角部内で何度も反射を繰り返すことによって検出部31で検出されないという事態が抑制される。
【0030】
例えば、検出装置30が右の側面部121に配置されている場合、左の側面部121の上部の一部と蓋部材13との内表面に配置された反射部材41は、反射面411の少なくとも一部が曲面を形成する。反射面411は、例えば検出部31よりも上方において、曲面を形成する。例えば、反射面411の形成する曲面は反射光が検出部31に指向するように設定された放物面である。他の実施形態では、反射面411は、内角が鈍角例えば135度以上となるような複数の平面によって構成されていても良い。
【0031】
本実施形態によっても、上記実施形態と同様の効果が奏される。
【0032】
本実施形態の静止誘導機器10によれば、反射部材41は、反射部材41によって反射した電磁波の反射方向が、検出装置30に指向する姿勢に維持される。
【0033】
これによれば、反射部材41で反射された電磁波が、検出部31によって一層効率的に検知されるようになり、一層効率的に部分放電の発生部位が特定される。
【0034】
更に、反射部材41の反射面411は、マイクロ波の反射光が検出装置30に向かって集約する曲面に形成されている。
【0035】
(第3実施形態)
図5を参照して、第3実施形態について説明する。本実施形態の静止誘導機器10は、アンテナ50を備える。アンテナ50は、部分放電によって発生したパルス電流この場合マイクロ波を受けて、電磁波を発生する機能を有する。すなわちアンテナ50は、受信した部分放電による電流パルスを、検出装置30によってより検出され易い電磁波に変換する。
【0036】
アンテナ50は、部分放電が発生する可能性がある部分とりわけ部分放電が発生し易い部分と、検出装置30と、の間に配置される。また、アンテナ50は、部分放電が発生する可能性がある部分と導電性の部材を介して接続されている。部分放電によって電流パルスが発生すると、アンテナ50は導電性の部材を介して電流パルスを受信し、電磁波を発生する。導電性の部材は、静止誘導機器本体20の一部例えば巻線21,22であっても良いし、静止誘導機器10と電気的に接続される被接続部材例えば口出し線151,152,161,162であっても良い。
【0037】
本実施形態では、検出装置30は蓋部材13に配置されて、検出部31は蓋部材13の内面側に配置されて、巻線21,22の上端面と上方から対向する位置に配置されている。より具体的には、検出部31は高圧側口出し線151,152と高圧側巻線21との接続部分に上方から対向する位置に配置されている。アンテナ50は、例えば高圧側口出し線151,152に配置しても良いし、巻線21,22の周面に配置しても良いし、巻線21,22の上下の端面に配置しても良い。本実施形態では、アンテナ50は、高圧側口出し線152の上下方向の中央部に配置されている。ここで、高圧側口出し線152の中央部とは、必ずしも上下方向の高さが全長の1/2となる位置を意味せず、高圧側口出し線152の両端部以外の部分であることを意味する。
【0038】
アンテナ50は、例えばループアンテナやロッドアンテナであっても良い。容器11内で部分放電が発生すると、アンテナ50に電流パルスが到達する。電流パルスを受けて、アンテナ50は電磁波を放射する。アンテナ50は指向性を有しており、アンテナ50は、発生した電磁波が検出部31に向かう姿勢に維持される。
【0039】
本実施形態の静止誘導機器10によっても、上記各実施形態と同様の効果が奏される。
【0040】
本実施形態の静止誘導機器10は、静止誘導機器本体20が有する巻線21,22と、巻線21,22又は被接続部材である口出し線151,152,161,162のいずれか一方又は両方に配置されて、部分放電による電流パルスを受けて電磁波を放射するアンテナ50と、を備える。
【0041】
これによれば、アンテナ50がない場合と比較して部分放電に起因する電磁放射量が多くなり、検出装置30による検出精度を向上することができる。
【0042】
(第4実施形態)
図6を参照して第4実施形態について説明する。本実施形態の静止誘導機器100は、容器11の内部に、複数この場合3つの静止誘導機器本体20a,20b,20cを備える。静止誘導機器100は、例えば三相変圧器である。
【0043】
各静止誘導機器本体20a,20b,20cは、それぞれ高圧側巻線21a,21a,21bと、低圧側巻線22a,22b,22bと、鉄心23a,23b,23cと、を備える。静止誘導機器10は、更に高圧側口出し線151a,152a,151b,152b,151c,152cと、低圧側口出し線161a,162a,161b,162b,161c,162cと、高圧側端子171a,172a,171b,172b,171c,172cと、低圧側端子181a,182a,181b,182b,181c,182cと、渡り線19d,19eと、を更に備える。
【0044】
高圧側口出し線151a,152a,151b,152b,151c,152cは、一端が高圧側巻線21a,21b,21cにそれぞれ接続され、他端が高圧側端子171a,172a,171b,172b,171c,172cにそれぞれ接続されている。低圧側口出し線161a,162a,161b,162b,161c,162cは、一端が低圧側巻線22a,22b,22cにそれぞれ接続され、他端が低圧側端子181a,182a,181b,182b,181c,182cにそれぞれ接続されている。渡り線19dは、高圧側巻線21aと高圧側巻線21bとの間に渡されて、それぞれを互いに電気的に接続している。渡り線19eは、高圧側巻線21bと高圧側巻線21cとの間に渡されて、それぞれを互いに電気的に接続している。なお、低圧側巻線22と低圧側巻線22aと低圧側巻線22bとの間,又は低圧側巻線22bと低圧側巻線22cとの間には、図示しない渡り線が渡されてそれぞれを電気的に接続している。高圧側口出し線151a,152a,151b,152b,151c,152cと低圧側口出し線161a,162a,161b,162b,161c,162cと、渡り線19d,19eとは、巻線21,22に電気的に接続された被接続部材である。高圧側端子171a,172a,171b,172b,171c,172cと、低圧側端子181a,182a,181b,182b,181c,182cとは、それぞれ蓋部材13に取り付けられている。
【0045】
静止誘導機器100は、複数の検出装置30a,30b,30c,30d,30eと、アンテナ50a,50b,50c,50d,50eと、を備える。各アンテナ50a,50b,50c,50d,50eは、それぞれ各検出装置30a,30b,30c,30d,30eの検出部31に指向性を有している。また、各アンテナ50a,50b,50c,50d,50eは、検出装置30a,30b,30c,30d,30eのうちそれぞれ指向性を有する各検出装置30a,30b,30c,30d,30eの検出部31に最も近くなるように配置されている。このため、各検出装置30a,30b,30c,30d,30eは、とりわけ各アンテナ50a,50b,50c,50d,50eが放射した電磁波を検知する。
【0046】
検出装置30a,30b,30cは、例えば、蓋部材13に取り付けられている。各検出装置30a,30b,30cの検出部31は、蓋部材13の内面に配置され、下方を向いてそれぞれ静止誘導機器本体20aの巻線21a,22aの上端面、静止誘導機器本体20bの巻線21b,22bの上端面、又は静止誘導機器本体20cの巻線21c,22cの上端面に上方から対向している。検出装置30d,30eは、例えば、底面部122に取り付けられている。各検出装置30d,30dの検出部31は、底面部122の内面に配置され、上方を向いてそれぞれ渡り線19d、19eに下方から対向している。
【0047】
アンテナ50a,50b,50c,50d,50eは、各静止誘導機器本体20a,20b,20cに電気的に接続された被接続部材に取り付けられている。この場合、アンテナ50a,50b,50cは、それぞれ静止誘導機器本体20aに接続された高圧側口出し線152a,152b,152cに取り付けられている。更に具体的には、アンテナ50a,50b,50cは、高圧側口出し線152a,152b,152cの上下方向の中央部に配置されている。アンテナ50d,50eは、渡り線19d,19eに取り付けられている。
【0048】
アンテナ50a,50b,50c,50d,50eは、容器11内に分散して配置されているため、全体として広範囲で生じる部分放電を受けることができる。更に、各アンテナ50a,50b,50c,50d,50eは、それぞれ各検出装置30a,30b,30c,30d,30eに対して指向性を有するため、いずれの検出装置30a,30b,30c,30d,30eがマイクロ波を検知したかによって、いずれのアンテナ50a,50b,50c,50d,50eからマイクロ波が放射されているかが分かり、ひいては容器11内のいずれの部位で部分放電が発生しているかをより確実に特定することができる。
【0049】
本実施形態によっても、上記実施形態と同様の効果が奏される。
【0050】
ここで、部分放電により発生する電磁波は、発生場所から遠くなればなるほど減衰して検知が難しくなる。
【0051】
これに対し、本実施形態の静止誘導機器100は、複数の検出装置30a,30b,30c,30d,30eと、容器11内に分散して配置された複数のアンテナ50a,50b,50c,50d,50eと、を備える。複数のアンテナ50a,50b,50c,50d,50eの各々は、複数の検出装置30a,30b,30c,30d,30eから選ばれる互いに異なる一の検出装置30a,30b,30c,30d,30eに対して指向性を有する。
【0052】
これにより、指向性を有するアンテナ50a,50b,50c,50d,50eと検出装置30a,30b,30c,30d,30eとを対にすることで、より確実に部分放電の発生位置を特定することができる。
【0053】
なお、本実施形態の静止誘導機器100は、容器11内に複数の静止誘導機器本体20を備える構成であるが、これに限らない。例えば、上記各実施形態の静止誘導機器10において、複数の検出装置30及び複数のアンテナ50を備え、各アンテナ50が各検出装置30に指向性を有する構成であっても良い。
【0054】
(第5実施形態)
図7を参照して第5実施形態について説明する。本実施形態の静止誘導機器10は、複数この場合2個のアンテナ50f,50gと、一又は複数この場合1個の検出装置30fとを備える。アンテナ50f,50gは、部分放電による電流パルスを受けると、互いに異なる周波数の電磁波を放射する。検出装置30fは、アンテナ50f,50gが放射する異なる周波数の電磁波をいずれも検知する機能を有する。
【0055】
アンテナ50f,50gは、互いから距離を空けて、静止誘導機器本体20に電気的に接続された被接続部材に取り付けられている。すなわち、各アンテナ50f,50gは、概ね互いに異なる部分で発生する部分放電による電流パルスを受信する。本実施形態では、アンテナ50f,50gは、それぞれ静止誘導機器本体20aに接続された高圧側口出し線151,152に取り付けられている。更に具体的には、アンテナ50f,50gは、高圧側口出し線151,152の上下方向の中央部に配置されている。高圧側口出し線151,152は互いから距離を開けて上下方向に延びている。
【0056】
例えば、部分放電による電流パルスを受けて、アンテナ50fは、数百MHz帯域のマイクロ波を放射する。アンテナ50gは、数GHz帯域のマイクロ波を放射する。検出装置30は、マイクロ波の帯域に応じて、検出部31が検知したマイクロ波がいずれのアンテナ50f,50gによって放射されたマイクロ波であるかを判定することができる。更には、アンテナ50f、50gは互いに離れて配置されることから、いずれのアンテナ50f、50gがマイクロ波を放射しているかによって、容器11内のいずれの部位から部分放電が発生しているかが特定される。
【0057】
本実施形態によっても、上記各実施形態と同様の効果が奏される。
【0058】
本実施形態の静止誘導機器10は、異なる周波数の電磁波を放射する、互いに離れた位置に配置された複数のアンテナ50f,50gを備える。検出装置30fは、複数のアンテナ50f,50gが放射する異なる周波数の電磁波を検知可能である。
【0059】
これにより、1つの検出装置30fによって、複数のアンテナ50f,50gからのマイクロ波を区別可能に検知することができる。したがって、コストを抑えつつ、部分放電の発生位置の特定をより確実にすることができる。
【0060】
(第6実施形態)
図8を参照して、第6実施形態について説明する。本実施形態の静止誘導機器10は、吸収部材60を備える。吸収部材60は、電磁波を吸収するすなわち電磁波を反射し難く減衰させる機能を有する。これにより、部分放電の発生部分又はそれを受けてアンテナ50から放射された電磁波が検出装置30以外の方向に進んだ場合、吸収部材60に吸収される。そのため、ノイズが除去されて、検出装置30による部分放電の発生部位の特定精度が向上する。
【0061】
吸収部材60は、容器11の内面の一部又は全体に配置されている。本実施形態では、吸収部材60は、容器11の内面のうち反射部材40が配置されている部分以外の部分の全体に配置されている。具体的には、反射部材40は、高圧側口出し線151,152を取り囲むように側面部121の内面の上部の一部と、蓋部材13の内面に配置されている。吸収部材60は、側面部121のうち反射部材40が配置されていない部分の内面と、底面部122の内面に配置されている。
【0062】
更に、吸収部材60は検出装置30を取り囲むように配置されている。本実施形態の場合、検出装置30は高圧側口出し線151,152に近接する左の側面部121と対向する右の側面部121に配置されている。吸収部材60は、右の側面部121に配置されている。
【0063】
吸収部材60は、例えば、容器11の中心寄りの面に多数の凹凸形状を有する。吸収部材60の凹凸形状は、例えば四角錐や、四角錐の頭部を落とした載頭四角錐、楔形などが挙げられるがこれらに限定されない。本実施形態では、吸収部材60は、四角錐に形成された多数の凹凸形状を有している。また、吸収部材60は、例えば磁性、誘電性、又は抵抗性の部材で構成することができる。磁性部材の例としては、フェライト焼結体や、軟磁合金、カルボニル鉄、炭素等を多孔性の樹脂に塗り込めて複合体化したものが挙げられる。
【0064】
本実施形態によっても、上記各実施形態と同様の効果が奏される。
【0065】
本実施形態の静止誘導機器10は、容器11の内面のうち反射部材40が配置されていない面の少なくとも一部に配置された、電磁波を吸収する吸収部材60を備える。
【0066】
これにより、部分放電の発生部分又はそれを受けてアンテナ50から放射された電磁波が容器11の内壁に入射することで生じるノイズが抑制される。したがって、検出装置30による部分放電の位置の特定が、より確実となる。
【0067】
本実施形態では、静止誘導機器10は、反射部材40と吸収部材60とを両方備えているが、これに限らない。例えば、静止誘導機器10は、容器11の内面に配置される吸収部材60のみを備えていても良い。この場合、吸収部材60は、容器11の内面の全体に配置されていても良いし、一部に配置されていても良い。
【0068】
以上説明した各実施形態の構成は、組み合わせて実施することができる。例えば、上記各実施形態では、一又は複数のアンテナ50を備える静止誘導機器10,100は、反射部材40を備えているがこれに限らない。例えば、静止誘導機器10,100は、一又は複数のアンテナ50を備え、反射部材40を備えない構成であっても良い。また、静止誘導機器10,100は、一又は複数のアンテナ50と、反射部材41とを備える構成であっても良い。
【0069】
以上、本発明の複数の実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これらの新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると共に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0070】
10…静止誘導機器、11…容器、151,152…高圧側口出し線(口出し線、被接続部材)、161,162…低圧側口出し線(口出し線、被接続部材)、19d,19e…渡り線(被接続部材)、20…静止誘導機器本体、21…高圧側巻線(巻線)、22…低圧側巻線(巻線)、30…検出装置、31…検出部、40,41…反射部材、401,411…反射面、50,50a,50b,50c,50d,50e,50f,50g…アンテナ、60…吸収部材、100…静止誘導機器