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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024030905
(43)【公開日】2024-03-07
(54)【発明の名称】計測装置
(51)【国際特許分類】
   G01S 17/34 20200101AFI20240229BHJP
   G01S 7/481 20060101ALI20240229BHJP
【FI】
G01S17/34
G01S7/481 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022134132
(22)【出願日】2022-08-25
(71)【出願人】
【識別番号】000145806
【氏名又は名称】株式会社小野測器
(74)【代理人】
【識別番号】100099748
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 克志
(72)【発明者】
【氏名】大島 良太
【テーマコード(参考)】
5J084
【Fターム(参考)】
5J084AA05
5J084AA07
5J084BA03
5J084BA38
5J084BB02
5J084BB14
5J084BB16
5J084BB31
5J084BB34
5J084BB40
5J084CA08
5J084CA31
5J084CA33
5J084CA42
5J084DA01
5J084DA08
5J084EA04
(57)【要約】
【課題】光の強度変調を適用したFMCW法による計測を高精度化する。
【解決手段】LN変調器103はレーザ光源101から出射された光を強度の変動の周波数が線形に変化する強度変調光Lmodに強度変調し、タップカプラ105は強度変調光Lmodを参照光Lrefと測定光Lprbに分割する。参照光Lrefは第1光電変換素子111で参照信号RSに変換され、測定光Lprbは光サーキュレータ107、レンズ109を通って被測定物Aに出射され、被測定物Aで反射された測定光Lprbはレンズ109、光サーキュレータ107を通って第2光電変換素子113に至り検出信号DSに変換される。混合器114は参照信号RSと検出信号DSを乗算し、周波数f(RS)と周波数f(DS)の周波数差に一致する周波数f(IF)を持つ計測信号IFを計測部115に出力する。計測部115は、周波数f(IF)から、被測定物Aまでの距離Dを算定する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光を用いて計測を行う計測装置であって、
所定の時間長の期間中に強度の変動の周波数が変化する光である強度変調光を生成する強度変調光生成部と、
前記強度変調光を参照光と測定光の2つの光に分割する光分割デバイスと、
前記参照光を電気信号に変換し参照信号として出力する第1光電変換部と、
前記測定光を被測定物に出射し、被測定物で反射した前記測定光を集光する光学系と、
前記光学系が集光した測定光を電気信号に変換し検出信号として出力する第2光電変換部と、
前記参照信号の周波数と前記検出信号の周波数の差によって表される周波数の信号を計測信号として生成する混合器と、
前記計測信号の周波数から被測定物の距離と速度のうちの少なくとも一方を算定する算定部とを有することを特徴とする計測装置。
【請求項2】
請求項1記載の計測装置であって、
前記強度変調光生成部は、レーザ光を出射するレーザ光源と、前記レーザ光の強度を変調して前記強度変調光を出力するLN変調器とを有することを特徴とする計測装置。
【請求項3】
請求項1または2記載の計測装置であって、
前記強度変調光生成部は、前記所定の時間長の期間中に強度の変動の周波数が線形に変化する光を前記強度変調光として生成することを特徴とする計測装置。
【請求項4】
請求項1または2記載の計測装置であって、
前記強度変調光生成部は、前記所定の時間長の期間が、前記強度変調光の強度の変動の周波数が線形に高くなっていく第1の期間部分と、前記強度変調光の強度の変動の周波数が線形に低くなっていく第2の期間部分とを含むように、前記強度変調光を生成し、
前記算定部は、前記第1の期間部分に生成された前記計測信号の周波数と、前記第2の期間部分に生成された前記計測信号の周波数とから、被測定物の距離と速度の双方を算定することを特徴とする計測装置。
【請求項5】
光を用いて計測を行う計測装置であって、
強度の変動の周波数が一定の光である強度変調光を生成する強度変調光生成部と、
前記強度変調光を参照光と測定光の2つの光に分割する光分割デバイスと、
前記参照光を電気信号に変換し参照信号として出力する第1光電変換部と、
前記測定光を被測定物に出射し、被測定物で反射した前記測定光を集光する光学系と、
前記光学系が集光した測定光を電気信号に変換し検出信号として出力する第2光電変換部と、
前記参照信号の周波数と前記検出信号の周波数の差によって表される周波数の信号を計測信号として生成する混合器と、
前記計測信号の周波数から被測定物の速度を算定する算定部とを有することを特徴とする計測装置。
【請求項6】
請求項5記載の計測装置であって、
前記強度変調光生成部は、レーザ光を出射するレーザ光源と、前記レーザ光の強度を変調して前記強度変調光を出力するLN変調器とを有することを特徴とする計測装置。
【請求項7】
請求項1、2、5または6記載の計測装置であって、
前記光分割デバイスは、前記強度変調光生成部から第1の光ファイバを介して入射する前記強度変調光を分割して、前記測定光を第2の光ファイバに出射すると共に前記参照光を第3の光ファイバに出射するタップカプラであり、
前記第1光電変換部は、前記第3の光ファイバを介して入射する前記参照光を前記電気信号に変換し参照信号として出力し、
前記光学系は、光サーキュレータとレンズとを備え、
前記光サーキュレータは、前記第2の光ファイバを介して入射する前記測定光を第4の光ファイバに出射し、
前記レンズは、前記第4の光ファイバを介して入射する前記測定光を前記被測定物に出射すると共に、前記被測定物で反射した前記測定光を前記第4の光ファイバに出射し、
前記光サーキュレータは、前記第4の光ファイバを介して入射する、被測定物で反射した前記測定光を第5の光ファイバに出射し、
前記第2光電変換部は、前記第5の光ファイバを介して入射する前記測定光を前記電気信号に変換し前記検出信号として出力することを特徴とする計測装置。
【請求項8】
請求項1、2、5または6記載の計測装置であって、
前記光分割デバイスは、前記強度変調光生成部から入射する前記強度変調光を分割して、前記測定光を第1の光路に出射すると共に前記参照光を第2の光路に出射する第1の偏光ビームスプリッタであり、
前記第1光電変換部は、前記第2の光路から入射する前記参照光を前記電気信号に変換し参照信号として出力し、
前記光学系は、第2の偏光ビームスプリッタとレンズと1/4波長板とを備え、
前記第2の偏光ビームスプリッタは、前記第1の光路から入射する前記測定光を第3の光路に出射し、
前記レンズは、前記第3の光路から入射する前記測定光を前記1/4波長板を介して前記被測定物に出射すると共に、前記1/4波長板を介して入射する前記被測定物で反射した前記測定光を前記第3の光路に出射し、
前記第2の偏光ビームスプリッタは、前記第3の光路から入射する前記測定光を第4の光路に出射し、
前記第2光電変換部は、前記第4の光路から入射する前記測定光を前記電気信号に変換し前記検出信号として出力することを特徴とする計測装置。
【請求項9】
光を用いて計測を行う計測装置であって、
レーザ光を出射するレーザ光源と、
前記レーザ光の強度を変調した光である強度変調光を生成するLN変調器と、
前記強度変調光の少なくとも一部を測定光として被測定物に出射し、被測定物で反射した前記測定光の反射光を集光する光学系と、
前記強度変調光と前記反射光の周波数差を検出し、検出した周波数差から被測定物の距離と速度のうちの少なくとも一方を算定する測定部とを有することを特徴とする計測装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光を用いて計測を行う技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
光を用いて計測を行う技術としては、FMCW(Frequency Modulated Continuous Wave)法に光の強度変調を適用して距離の計測を行う計測装置が知られている(たとえば、特許文献1、2)。
この計測装置の基本構成を図7aに示す。
図示するように、計測装置は、制御部701、駆動信号VSを出力するVCO702(電圧制御発信器702)、駆動信号VSの大きさに比例した強度で発光することにより生成した測定光Lを被測定物Aに出射するレーザ光源703、測定光Lの被測定物Aからの反射光を電気信号である検出信号DSに変換する光電変換素子704、駆動信号VSと検出信号DSを乗算し、駆動信号VSと検出信号DSの周波数差に等しい周波数の計測信号IFを生成する混合器705を備えている。
【0003】
制御部701の制御に従って、VCO702は、図7b1に示すように、その周波数f(VS)が線形に高くなっていく期間が繰り返し表れる信号を駆動信号VSとして生成する。
したがって、レーザ光源703が出射する測定光Lや、測定光Lの反射光は、図7b2に示すように、その強度変動の周波数f(T)が線形に高くなっていく期間が繰り返し表れる光となる。
また、光電変換素子704が出力する検出信号DSには、駆動信号VSに対する遅延として、レーザ光源703-被測定物A-光電変換素子704の光路長に応じた遅延τ、すなわち、被測定物Aまでの距離に応じた遅延τが生じる。
したがって、図7cに示すように、駆動信号VSの周波数f(VS)と検出信号DSの周波数f(DS)の差Δf=f(DS)-f(VS)は、遅延τに依存する。
したがって、Δfと等しい計測信号IFの周波数f(IF)から、被測定物Aまでの距離を算定することができる。
また、本発明に関する技術としては、ポッケルス効果を利用して光強度の変調を行う、LN変調器(LiNbO3変調器)などのマッハツェンダー型の光変調器が知られている(たとえば、特許文献3、4)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許出願公開第2004/0100626号
【特許文献2】特開2022-084185号公報
【特許文献3】特開2014- 10189号公報
【特許文献4】特開2014-145898号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
図7aに基本構成を示した計測装置では、VCO702が出力する駆動信号VSと、光電変換素子704が出力する検出信号DSを混合し計測信号IFを生成しているため、次のような問題が生じる。
まず、検出信号DSは、測定光Lの光路のみならず、レーザ光源703や光電変換素子704を辿る経路を経て生成されるため、検出信号DSに、測定光Lの光路長によらない駆動信号VSに対する遅延が発生する。
また、レーザ光源703や光電変換素子704の伝達関数や、レーザ光源703や光電変換素子704による波形歪みの影響により、検出信号DSの波形に、駆動信号VSの波形に対する比較的大きな差異が生じ、良質な計測信号IFが得られない。
また、駆動信号VSによりレーザ光源703の発光強度を制御することにより強度変調した測定光Lを生成しているため、レーザ光源703の緩和振動周波数による制約により、一般的なレーザ光源をレーザ光源703として用いた場合、測定光Lの強度変動の周波数の上限が、1GHz程度の比較的低い周波数に制限されてしまう。そして、他の条件が同じ場合、測定光Lの強度変動の周波数の変化幅が大きいほど、計測装置の測定分解能を高めることができるが、この周波数の変化幅も、強度変動の周波数の上限によって制限されてしまう。
【0006】
そして、これらが、高精度な計測を妨げる要因となっていた。
そこで、本発明は、FMCW法に光の強度変調を適用して計測を行う計測装置の計測の精度を向上することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題達成のために、本発明は、光を用いて計測を行う計測装置に、所定の時間長の期間中に強度の変動の周波数が変化する光である強度変調光を生成する強度変調光生成部と、前記強度変調光を参照光と測定光の2つの光に分割する光分割デバイスと、前記参照光を電気信号に変換し参照信号として出力する第1光電変換部と、前記測定光を被測定物に出射し、被測定物で反射した前記測定光を集光する光学系と、前記光学系が集光した測定光を電気信号に変換し検出信号として出力する第2光電変換部と、前記参照信号の周波数と前記検出信号の周波数の差によって表される周波数の信号を計測信号として生成する混合器と、前記計測信号の周波数から被測定物の距離と速度のうちの少なくとも一方を算定する算定部とを備えたものである。
【0008】
ここで、この計測装置において、前記強度変調光生成部は、レーザ光を出射するレーザ光源と、前記レーザ光の強度を変調して前記強度変調光を出力するLN変調器とを用いて構成することが好ましい。
また、以上の計測装置は、前記強度変調光生成部において、前記所定の時間長の期間中に強度の変動の周波数が線形に変化する光を前記強度変調光として生成してよい。
または、以上の計測装置は、前記強度変調光生成部において、前記所定の時間長の期間が、前記強度変調光の強度の変動の周波数が線形に高くなっていく第1の期間部分と、前記強度変調光の強度の変動の周波数が線形に低くなっていく第2の期間部分とを含むように、前記強度変調光を生成し、前記算定部において、前記第1の期間部分に生成された前記計測信号の周波数と、前記第2の期間部分に生成された前記計測信号の周波数とから、被測定物の距離と速度の双方を算定してもよい。
【0009】
これらの計測装置によれば、参照光と測定光は同じ強度変調光を分割して生成した光であるので、第1光電変換部から出力される参照信号と第2光電変換部から出力される検出信号の相違は、基本的には、参照光と測定光が分割されてから、参照光が第1光電変換部に至るまでの光路である参照光光路と、測定光が第2光電変換部に至るまでの光路である測定光光路との違いのみとなる。
【0010】
よって、検出信号の参照信号に対する遅延は、測定光の光路長、したがって、被測定物の距離のみに依存して変化する。また、レーザや光電変換素子といった光との間の変換を行うデバイスが、参照光光路と測定光光路に存在しないので、当該デバイスが一方の光路中もしくは双方の光路中に存在することによって生じる、検出信号の参照信号に対する波形の歪みが生じることもない。
【0011】
よって、計測装置において、計測を高精度に行うことができる。
また、強度変動の周波数の上限が比較的大きいLN変調器を用いて強度変調を行って強度変調光を生成する場合には、一般的なレーザ光源を用いつつ、強度変調光の強度変動の周波数の変化幅を大きく設定して、計測装置の測定分解能を高めることができる。
また、本発明は併せて、光を用いて計測を行う計測装置として、強度の変動の周波数が一定の光である強度変調光を生成する強度変調光生成部と、前記強度変調光を参照光と測定光の2つの光に分割する光分割デバイスと、前記参照光を電気信号に変換し参照信号として出力する第1光電変換部と、前記測定光を被測定物に出射し、被測定物で反射した前記測定光を集光する光学系と、前記光学系が集光した測定光を電気信号に変換し検出信号として出力する第2光電変換部と、前記参照信号の周波数と前記検出信号の周波数の差によって表される周波数の信号を計測信号として生成する混合器と、前記計測信号の周波数から被測定物の速度を算定する算定部とを備えた計測装置も提供する。
【0012】
この計測装置においても、前記強度変調光生成部は、レーザ光を出射するレーザ光源と、前記レーザ光の強度を変調して前記強度変調光を出力するLN変調器とを用いて構成することが好ましい。
このような計測装置においても、レーザや光電変換素子といった光との間の変換を行うデバイスが、参照光光路と測定光光路に存在しないので、当該デバイスが一方の光路中もしくは双方の光路中に存在することによって生じる、検出信号の参照信号に対する波形の歪みが生じることはなく、計測装置において、計測を高精度に行うことができる。
【0013】
また、LN変調器を用いて強度変調を行って強度変調光を生成する場合には、一般的なレーザ光源を用いつつ、強度変調光の強度変動の周波数を大きく設定して、計測装置の測定分解能を高めることができる。
また、より具体的には、以上の各計測装置において、前記光分割デバイスは、前記強度変調光生成部から第1の光ファイバを介して入射する前記強度変調光を分割して、前記測定光を第2の光ファイバに出射すると共に前記参照光を第3の光ファイバに出射するタップカプラとしてよく、前記第1光電変換部は、前記第3の光ファイバを介して入射する前記参照光を前記電気信号に変換し参照信号として出力するものとしてよく、前記光学系は、光サーキュレータとレンズとを備えるものとしてよく、前記光サーキュレータは、前記第2の光ファイバを介して入射する前記測定光を第4の光ファイバに出射し、前記レンズは、前記第4の光ファイバを介して入射する前記測定光を前記被測定物に出射すると共に、前記被測定物で反射した前記測定光を前記第4の光ファイバに出射するものとしてよく、前記光サーキュレータは、前記第4の光ファイバを介して入射する、被測定物で反射した前記測定光を第5の光ファイバに出射するものとしてよく、前記第2光電変換部は、前記第5の光ファイバを介して入射する前記測定光を前記電気信号に変換し前記検出信号として出力するものとしてよい。
【0014】
または、以上の計測装置において、前記光分割デバイスは、前記強度変調光生成部から入射する前記強度変調光を分割して、前記測定光を第1の光路に出射すると共に前記参照光を第2の光路に出射する第1の偏光ビームスプリッタとしてよく、前記第1光電変換部は、前記第2の光路から入射する前記参照光を前記電気信号に変換し参照信号として出力するものとしてよく、前記光学系は、第2の偏光ビームスプリッタとレンズと1/4波長板とを備えたものとしてよく、前記第2の偏光ビームスプリッタは、前記第1の光路から入射する前記測定光を第3の光路に出射するものとしてよく、前記レンズは、前記第3の光路から入射する前記測定光を前記1/4波長板を介して前記被測定物に出射すると共に、前記1/4波長板を介して入射する前記被測定物で反射した前記測定光を前記第3の光路に出射するものとしてよく、前記第2の偏光ビームスプリッタは、前記第3の光路から入射する前記測定光を第4の光路に出射するものとしてよく、前記第2光電変換部は、前記第4の光路から入射する前記測定光を前記電気信号に変換し前記検出信号として出力するものとしてよい。
【0015】
また、併せて本発明は、光を用いて計測を行う計測装置として、レーザ光を出射するレーザ光源と、前記レーザ光の強度を変調した強度変調光を生成するLN変調器と、前記強度変調光の少なくとも一部を測定光として被測定物に出射し、被測定物で反射した前記測定光の反射光を集光する光学系と、前記強度変調光と前記反射光の周波数差を検出し、検出した周波数差から被測定物の距離と速度のうちの少なくとも一方を算定する測定部とを備えた計測装置を提供する。
【0016】
このような計測装置においても、LN変調器を強度変調に用いることにより、一般的なレーザ光源を用いつつ、強度変調光の強度変動の周波数の変化幅を大きく設定して、計測装置の測定分解能を高めることができる。
【発明の効果】
【0017】
以上のように、本発明によれば、FMCW法に光の強度変調を適用して、より精度の良い計測を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の実施形態に係る計測装置の構成を示す図である。
図2】本発明の実施形態に係る計測装置の強度変調光の強度変動の周波数を示す図である。
図3】本発明の実施形態に係る計測装置において検出する計測信号の周波数を示す図である。
図4】本発明の実施形態に係る測定光の他の例を示す図である。
図5】本発明の実施形態に係る計測装置の他の動作例を示す図である。
図6】本発明の実施形態に係る計測装置の他の構成例を示す図である。
図7】公知の計測装置を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の実施形態について説明する。
図1に、本実施形態に係る計測装置の構成を示す。
図示するように、計測装置1は、レーザ光源101、第1光ファイバ102、LN変調器103(LiNbO3変調器103)、第2光ファイバ104、タップカプラ105、第3光ファイバ106、光サーキュレータ107、第4光ファイバ108、レンズ109、第5光ファイバ110、第1光電変換素子111、第6光ファイバ112、第2光電変換素子113、混合器114、計測部115、変調信号発生部116、駆動部117を備えている。第1光電変換素子111と第2光電変換素子113としては、伝達関数等の特性が等しい光電変換素子を用いる。
【0020】
なお、LN変調器は、LN光変調器やLN光強度変調器と呼称されることもある。
次に、計測部115は、周波数検知器1151、距離算定部1152、計測制御部1153を備えている。
このような構成において、レーザ光源101から出射された光は、第1光ファイバ102を通ってLN変調器103に送られる。LN変調器103は、ポッケルス効果を利用して光強度の変調を行うマッハツェンダー型の光変調器であり、駆動部117の駆動に従って、第1光ファイバ102から入射した光の強度を変調し強度変調光Lmodとして第2光ファイバ104に送る。
【0021】
LN変調器103から第2光ファイバ104に送られた強度変調光Lmodはタップカプラ105で、参照光Lrefと測定光Lprbの2つの光に分割され、参照光Lrefは第5光ファイバ110に送られ、測定光Lprbは第3光ファイバ106に送られる。
タップカプラ105から、第3光ファイバ106に送られた測定光Lprbは光サーキュレータ107によって第4光ファイバ108に送られ、第4光ファイバ108に送られた測定光Lprbはレンズ109によって被測定物Aに向けて出射される。
被測定物Aによって反射された測定光Lprb'は、レンズ109によって集光され第4光ファイバ108に送られる。第4光ファイバ108に送られた測定光Lprb'は光サーキュレータ107に送られ、光サーキュレータ107は第4光ファイバ108から送られた測定光Lprb'を第6光ファイバ112に送る。
【0022】
タップカプラ105から第5光ファイバ110に送られた参照光Lrefは第1光電変換素子111で電気信号に変換され参照信号RSとして混合器114に出力され、光サーキュレータ107から第6光ファイバ112に送られた測定光Lprb'は第2光電変換素子113で電気信号に変換され検出信号DSとして混合器114に出力される。
【0023】
混合器114は、第1光電変換素子111から出力された参照信号RSと第2光電変換素子113から出力された検出信号DSを乗算し、周波数f(IF)の計測信号IFを計測部115に出力する。計測信号IFの周波数f(IF)は、参照信号RSの周波数f(RS)と検出信号DSの周波数f(DS)を用いてf(IF)=f(RS)-f(DS)と表され、計測信号IFは、周波数f(RS)と周波数f(DS)の周波数差の周波数f(IF)を持つ信号となる。
【0024】
計測部115の周波数検知器1151は、計測制御部1153の制御に従ったタイミングで、混合器114が出力した計測信号IFを高速フーリエ変換して計測信号IFの周波数スペクトルを求め、距離算定部1152は、算定された周波数スペクトルに基づいて計測信号IFの周波数f(IF)を検出し、計測信号IFの周波数f(IF)から、予め設定されている周波数f(IF)と距離との関係式に従って被測定物Aまでの距離Dを算出する。
【0025】
次に、変調信号発生部116は、計測制御部1153の指令に従って、LN変調器103で施す光強度変調の態様を制御する変調信号を駆動部117に出力し、駆動部117は変調信号に従った光強度変調が行われるように、LN変調器103を駆動する。
変調信号発生部116は、図2aに示すように、LN変調器103の出力する強度変調光Lmodの強度変動の周波数f(Lmod)が線形に高くなっていく期間が間欠的に現れる強度変調をLN変調器103に行わせる変調信号を生成し駆動部117に出力する。
すなわち、図2bに模式的に示したように、強度変調光Lmodとして、強度Iの振幅が一定で、強度Iの周波数が線形に高くなっていく光が、LN変調器103から間欠的に出力されるように変調信号を生成し出力する。
なお、強度変調光Lmodの光の波長自体は一定であり、強度Iの周波数のみがLN変調器103によって変調される。
次に、タップカプラ105から出力された参照光Lrefが第1光電変換素子111に至るまでの光路である参照光光路と、タップカプラ105から出力された測定光Lprbが測定光Lprb'として第2光電変換素子113に至るまでの光路である測定光光路には、被測定物Aまでの距離Dに応じた光路長の差が生じるので、第2光電変換素子113が出力する検出信号DSには、第1光電変換素子111が出力する参照信号RSに対する、距離Dに応じた時間長の遅延τが生じる。
【0026】
また、図3a、bに示すように、被測定物Aが静止している場合、混合器114によって生成される計測信号IFの周波数f(IF)として表れる、参照信号RSの周波数f(RS)と検出信号DSの周波数f(DS)の周波数差f(RS)-f(DS)は遅延τに応じたものとなる。
ここで、LN変調器103の強度変調による強度変調光Lmodの周波数f(Lmod)の変化幅をΔF、周波数f(Lmod)が変化幅ΔF変化するのに要する時間をTとすると、
f(IF)=f(RS)-f(DS)=(ΔF×τ)/T
の関係がある。
【0027】
光速をCとし、(測定光光路の計測装置内部部分の光路長)-(参照光光路の光路長)をdとすると、
τ={2D+d)}/Cであるので、
f(IF)={ΔF×(2D+d))}/(T×C)
となり、f(IF)より、被測定物Aまでの距離Dを算定することができる。
【0028】
そこで、計測制御部1153は、適切なタイミングで周波数検知器1151に計測信号IFの周波数スペクトルを算定させると共に、距離算定部1152に周波数スペクトルに基づいた計測信号IFの周波数f(IF)の算出と、周波数f(IF)に基づいた被測定物Aまでの距離Dの算出を行わせる。
【0029】
以上、本発明の実施形態について説明した。
本実施形態によれば、参照光Lrefと測定光Lprbは同じ強度変調光Lmodを分割して生成した光であるので、第1光電変換素子111から出力される参照信号RSと第2光電変換素子113から出力される検出信号DSの相違は、基本的には、タップカプラ105で分割された参照光Lrefが第1光電変換素子111に至るまでの光路である参照光光路と、タップカプラ105で分割された測定光Lprbが測定光Lprb'として第2光電変換素子113に至るまでの光路である測定光光路との違いのみとなる。
【0030】
よって、検出信号DSの参照信号RSに対する遅延は、測定光光路の光路長、したがって、被測定物Aの距離Dのみに依存して変化する。また、レーザや光電変換素子704といった光との間の変換を行うデバイスが、参照光光路と測定光光路に存在しないので、当該デバイスが一方の光路中もしくは双方の光路中に存在することによって生じる、検出信号DSの参照信号RSに対する波形の歪みが生じることもない。
【0031】
よって、本実施形態に係る計測装置1によれば、計測を高精度に行うことができる。
また、本実施形態では、レーザ光源101の発光強度を制御することによらず、強度変動の周波数の上限が比較的大きい(たとえば、40GHz)LN変調器103を用いて強度変調を行って強度変調光Lmodを生成しているので、一般的なレーザ光源を用いつつ、強度変調光Lmodの強度変動の周波数の変化幅を大きく設定して、計測装置1の測定分解能を高めることができる。
【0032】
ここで、以上の実施形態は、計測制御部1153において、測定対象とする距離Dの範囲に応じて、強度変調光Lmodの周波数f(Lmod)の変化幅ΔFを、測定対象とする距離Dの範囲がより近い場合ほど、変化幅ΔFがより大きくなるように制御したり、周波数f(Lmod)がΔF変化するのに要する時間Tを、測定対象とする距離Dの範囲がより近い場合ほど、時間Tがより小さくなるように制御したりしてもよい。
【0033】
このようにすることにより、被測定物Aまでの距離Dによらず、周波数fbを周波数検知器1151の周波数の測定レンジで適正に検出できる値とすることができる。
また、以上の実施形態では、強度変調光Lmodを、周波数f(Lmod)が線形に高くなっていく期間が間欠的に現れる光としたが、強度変調光Lmodとしては、図4aに示すような、周波数f(Lmod)が線形に低くなっていく期間が間欠的に現れる光を用いてもよい。
また、強度変調光Lmodとしては、図4bに示すような、線形に周波数f(Lmod)が高くなっていった後に線形に周波数f(Lmod)が低くなっていく光や、図4cに示す周波数f(Lmod)が、のこぎり波形状に変化する光や、図4d、eに示す周波数f(Lmod)が三角波形状に変化する光を用いてもよい。
【0034】
また、強度変調光Lmodとして、図4b、dに示すような線形に周波数f(Lmod)が高くなっていった後に線形に周波数f(Lmod)が低くなっていく光を用いる場合には、周波数f(Lmod)が高くなっていく部分と周波数f(Lmod)が低くなっていく部分の双方を用いることにより2倍の応答性を得るようにしてよい。
【0035】
また、強度変調光Lmodとしては、図4fに示す周波数f(Lmod)がステップ状に変化する光や、図4gに示す周波数f(Lmod)が正弦波形状に変化する光などの非線形に周波数f(Lmod)が変化する光を用いてもよい。
ただし、いずれの場合も、周波数fbからの被測定物Aまでの距離Dの算出法は、強度変調光Lmodの強度の周波数の変化の形態に適合するものを用いる。
また、以上の実施形態では被測定物Aの距離Dのみを計測したが、被測定物Aが移動する物体である場合には、計測装置1において、被測定物Aまでの距離Dと共に被測定物Aの速度Vを計測してもよい。
この場合には、強度変調光Lmodとして、図4bに示した線形に周波数f(Lmod)が高くなっていった後に線形に周波数f(Lmod)が低くなっていく光を用いる。
このような光を強度変調光Lmodとして、速度Vを持つ被測定物Aに対して用いた場合、混合器114によって生成される計測信号IFの周波数f(IF)には、参照光光路と測定光光路の光路長の差による影響と、速度Vによるドップラシフトによる影響が表れるために、図5に示すように、周波数f(Lmod)が高くなっていく期間と低くなっていく期間とで周波数f(IF)は異なったものとなる。
【0036】
f(IF)として表れる参照信号RSの周波数f(RS)と検出信号DSの周波数f(DS)の周波数差のうちの、参照光光路と測定光光路の光路長の差による周波数差をfL、ドップラシフトによる周波数差をfVとすると、周波数f(Lmod)が高くなっていく期間中は、f(IF)=fL-fVとなり、周波数f(Lmod)が低くなっていく期間中は、f(IF)=fL+fVとなる。したがって、周波数f(Lmod)が高くなっていく期間中のf(IF)をfa(IF)、周波数f(Lmod)低くなっていく期間中のf(IF)をfb(IF)として、
fL={fa(IF)+fb(IF)}/2
fV={fb(IF)-fa(IF)}/2
によって、光路長の差によって生じた周波数差fL、ドップラシフトによって生じた周波数差fVを算出することができる。そして、周波数差fLより被測定物Aの距離Dを算出でき、周波数差fVが表すドップラシフト量より被測定物Aの速度Vを算出することができる。
【0037】
そこで、計測制御部1153は、距離算定部1152に、周波数スペクトルに基づいた、計測信号IFの周波数fa(IF)、fb(IF)の算出と、fa(IF)、fb(IF)からの周波数差fL、周波数差fVの算出と、周波数差fL、周波数差fVからの被測定物Aまでの距離Dと、被測定物Aの速度Vの算出を行わせる。
【0038】
また、以上の実施形態は、計測装置1に、測定光Lprbを被測定物Aに向けて出射する対物レンズとは別に、被測定物Aで反射した測定光Lprb'を第6光ファイバ112に集光する受光レンズを設け、光サーキュレータ107を廃してもよい。
また、以上の計測装置1に、外部への測定光Lprbの出射方向を変更する機構を設け、測定光Lprbで1次元もしくは2次元に空間を走査するようにしてもよい。このようにすることにより被測定物Aの2次元位置や3次元位置の測定を行うことができる。
また、計測装置1のレーザ光源101としては、アイセーフレーザと呼ばれる、波長が1400nmから2600nmまでのレーザ光源101を用いることが、安全性を向上する上で望ましい。
次に、以上の実施形態では、計測装置1の内部の光路の全てを光ファイバで構成したが、これは、必ずしも全ての光路を光ファイバで構成しなくてもよい。
たとえば、計測装置1の構成は、図6に示す構成とすることもできる。
図6に示す計測装置1は、図1に示した計測装置1の、タップカプラ105、光サーキュレータ107、第3から第6までの光ファイバ106、108、110、112、レンズ109に代えて、第1PBS601と第2PBS602との2つの偏光ビームスプリッタ、対物レンズ603、1/4波長板604を備えたものである。
【0039】
LN変調器103から第2光ファイバ104に送られた強度変調光Lmodは、第1PBS601で反射されたS偏光の参照光Lrefと、第1PBS601を透過したP偏光の測定光Lprbの2つの光に分割され、参照光Lrefは空間を伝搬して第1光電変換素子111に到達し、測定光Lprbは空間を伝搬して第2PBS602に到達する。
【0040】
第1光電変換素子111に到達した参照光Lrefは、第1光電変換素子111で参照信号RSに変換され、混合器114に出力される。
一方、第2PBS602に到達したP偏光の測定光Lprbは、第2PBS602を透過し、対物レンズ603によって、1/4波長板604を介して円偏光の測定光Lprbとして被測定物Aに向けて出射される。
被測定物Aによって反射された測定光Lprb'は、1/4波長板604によってS偏光に偏光され、対物レンズ603を介して、第2PBS602に到達する。
第2PBS602に到達したS偏光の測定光Lprb'は、第2PBS602で反射され、空間を伝搬して第2光電変換素子113に到達し、第2光電変換素子113で検出信号DSに変換され、混合器114に出力される。
その他の動作は、図1に示した計測装置の動作と同様である。
また、以上で示した計測装置は、被測定物Aの速度Vのみを計測する計測装置としてもよい。
この場合には、図1図6に示した計測装置のLN変調器103において周波数f(Lmod)が一定の強度変調光Lmodを生成する強度変調を行う。
このようにすることにより、被測定物Aの距離Dによらずに、ドップラシフトによって生じた周波数差が、計測信号IFの周波数f(IF)として表れることになり、この周波数f(IF)から被測定物Aの速度Vを求めることができる。
【符号の説明】
【0041】
1…計測装置、101…レーザ光源、102…第1光ファイバ、103…LN変調器、104…第2光ファイバ、105…タップカプラ、106…第3光ファイバ、107…光サーキュレータ、108…第4光ファイバ、109…レンズ、110…第5光ファイバ、111…第1光電変換素子、112…第6光ファイバ、113…第2光電変換素子、114…混合器、115…計測部、116…変調信号発生部、117…駆動部、601…第1PBS、602…第2PBS、603…対物レンズ、604…1/4波長板、701…制御部、702…VCO、703…レーザ光源、704…光電変換素子、705…混合器、1151…周波数検知器、1152…距離算定部、1153…計測制御部。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7