(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024030906
(43)【公開日】2024-03-07
(54)【発明の名称】釣竿
(51)【国際特許分類】
A01K 87/08 20060101AFI20240229BHJP
【FI】
A01K87/08 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022134133
(22)【出願日】2022-08-25
(71)【出願人】
【識別番号】000002439
【氏名又は名称】株式会社シマノ
(74)【代理人】
【識別番号】100117204
【弁理士】
【氏名又は名称】岩田 徳哉
(72)【発明者】
【氏名】山中 貴弘
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 魁
(72)【発明者】
【氏名】小澤 知之
【テーマコード(参考)】
2B019
【Fターム(参考)】
2B019AA06
2B019AB05
2B019AB32
2B019AC00
(57)【要約】
【課題】釣り人の手の大きさや好み、釣りの種類や状況等、種々の条件に柔軟に対応することができる釣竿を提供する。
【解決手段】竿体1と、第1部分、および、第1部分に対して竿体1の周方向にずれる第2部分を有し、竿体1の周方向に回動可能に設けられるグリップ4と、グリップ4を竿体1の周方向の任意の位置に固定する固定機構と、を備え、第1部分は、第2部分に対して形状および材質の少なくとも何れか一方が異なり、固定機構は、雄ネジ部と、グリップ4に設けられ、雄ネジ部に螺合する雌ネジ部と、雄ネジ部に螺合し、グリップ4に接離可能に設けられる固定ナット5と、を有する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
竿体と、
第1部分、および、前記第1部分に対して前記竿体の周方向にずれる第2部分を有し、前記竿体の周方向に回動可能に設けられるグリップと、
前記グリップを前記竿体の前記周方向の任意の位置に固定する固定機構と、
を備え、
前記第1部分は、前記第2部分に対して形状および材質の少なくとも何れか一方が異なる、釣竿。
【請求項2】
前記固定機構は、
雄ネジ部と、
前記グリップに設けられ、前記雄ネジ部に螺合する雌ネジ部と、
前記雄ネジ部に螺合し、前記グリップに接離可能に設けられる固定ナットと、
を有する、請求項1に記載の釣竿。
【請求項3】
前記第1部分は、径方向の第1寸法を有し、
前記第2部分は、径方向の第2寸法を有し、
前記第2寸法は、前記第1寸法とは異なる、請求項1に記載の釣竿。
【請求項4】
前記グリップは、前記第1部分および前記第2部分に対して前記周方向にずれる第3部分をさらに有する、請求項1乃至3の何れか1項に記載の釣竿。
【請求項5】
前記第3部分は、径方向の第3寸法を有し、
前記第3寸法は、前記第1寸法、および、前記第2寸法とは異なる、請求項4に記載の釣竿。
【請求項6】
前記第1寸法は、前記第2寸法よりも小さい、請求項3に記載の釣竿。
【請求項7】
前記第1寸法は、前記第2寸法よりも小さく、
前記第2寸法は、前記第3寸法よりも小さい、請求項5に記載の釣竿。
【請求項8】
前記グリップの軸方向長さは、前記第1寸法の2倍よりも短い、請求項7に記載の釣竿。
【請求項9】
前記第1部分、前記第2部分、および、前記第3部分は、前記周方向に前記第1部分、前記第2部分、および、前記第3部分の順に配置される、請求項4に記載の釣竿。
【請求項10】
前記竿体に釣り用リールを取り付けるために前記竿体に装着されるリールシートをさらに備え、
前記グリップは、前記竿体の前記リールシートよりも竿尻側に配置される、請求項1に記載の釣竿。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、グリップを備えた釣竿に関する。
【背景技術】
【0002】
本出願人は既に、下記特許文献1記載のような釣竿を提案している。この釣竿では、リールシートの竿尻側にグリップが設けられている。このグリップは、膨出部を有するグリップ本体をコア部材から竿尻側に引き抜き、その状態でグリップ本体を180度回転させて再びコア部材に竿先側に向けて嵌め込む。そして、固定ナットにより、グリップ本体を竿先側に押してリールシートの後端面に押し付け、固定ナットとリールシートによりグリップ本体を軸方向に挟み込んでグリップ本体を固定する。この釣竿では、グリップ本体の向きを180度変更することができる。左手でリールシートとリールを把持する場合には、グリップ本体の膨出部を左側に向けて膨出部に左手を当接させるようにする。一方、右手でリールシートとリールを把持する場合には、グリップ本体を180度回転させて膨出部を右側に向けて右手に膨出部が当たるようにする。しかしながら、更なる改善が求められる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、釣り人の手の大きさや好み、釣りの種類や状況等、種々の条件に柔軟に対応することができる釣竿を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の第1側面に係る釣竿は、竿体と、グリップと、固定機構とを備える。グリップは、第1部分、および、第2部分を有する。第2部分は、第1部分に対して竿体の周方向にずれる。グリップは、竿体の周方向に回動可能に設けられる。固定機構は、グリップを竿体の周方向の任意の位置に固定する。第1部分は、第2部分に対して形状および材質の少なくとも何れか一方が異なる。
【0006】
この構成によれば、グリップを竿体の周方向に回動させることができ、グリップの第1部分及び第2部分を竿体の周方向の任意の位置に移動させることができる。そして、固定機構によって、グリップをその任意の位置に固定することができる。そのため、釣り人の好みや釣りの状況等、種々の条件に応じて、グリップの第1部分と第2部分の周方向の位置を設定することができる。また、第2部分は、第1部分とは、形状や材質が異なっている。そのため、第1部分に例えば手の平を当てたり、第2部分に手の平を当てたりすることで、手の当たり具合に変化を持たせることができる。
【0007】
本発明の第1側面に従う第2側面の釣竿においては、固定機構は、雄ネジ部と、雌ネジ部と、固定ナットと、を有する。雌ネジ部は、グリップに設けられる。雌ネジ部は、雄ネジ部に螺合する。固定ナットは、雄ネジ部に螺合する。固定ナットは、グリップに対して接離可能に設けられる。この構成によれば、グリップが雄ネジ部に螺合するので、グリップを竿体の軸線まわりに容易に回転させることができ、第1部分及び第2部分を竿体の周方向の任意の位置に容易に位置させることができる。また、グリップを竿体の軸線まわりに回転させることによってグリップを竿体の軸方向に移動させることができる。つまり、グリップを竿体の軸線まわりに回転させることによって、グリップの向きと軸方向の位置を任意に調整することができる。そして、固定ナットをグリップに向けて締め込んで固定ナットをグリップに圧着させることにより、グリップを固定することができる。また、固定ナットをグリップから離反させることによってグリップの固定状態を解除することができる。
【0008】
本発明の第1又は第2側面に従う第3側面の釣竿においては、第1部分は、径方向の第1寸法を有する。第2部分は、径方向の第2寸法を有する。第2寸法は、第1寸法とは異なる。この構成によれば、第1部分と第2部分とで、竿体の外周面からの径方向の出っ張り量が異なる。そのため、第1部分に例えば手の平を当てたり、第2部分に手の平を当てたりする際に、手の平の当たり具合が異なる。
【0009】
本発明の第1乃至第3側面の何れか一つの側面に従う第4側面の釣竿においては、グリップは、第1部分および第2部分に対して周方向にずれる第3部分をさらに有する。この構成によれば、グリップが第3部分を有することによって、例えば手の平を当てる際の当たり具合をより細やかに調整できる。
【0010】
本発明の第4側面に従う第5側面の釣竿においては、第3部分は、径方向の第3寸法を有する。第3寸法は、第1寸法、および、第2寸法とは異なる。この構成によれば、第1部分に例えば手の平を当てたり、第2部分に手の平を当てたり、第3部分に手の平を当てたりすることで、三種類の当たり具合が得られる。
【0011】
本発明の第3乃至第5側面の何れか一つの側面に従う第6側面の釣竿においては、第1寸法は、第2寸法よりも小さい。この構成によれば、第1部分に例えば手の平を当てると、第2部分に当てる場合よりも手の平が竿体に近づく。
【0012】
本発明の第5側面に従う第7側面の釣竿においては、第1寸法は、第2寸法よりも小さい。第2寸法は、第3寸法よりも小さい。この構成によれば、例えばグリップに手の平を当てると、第3部分、第2部分、第1部分という順で手の平は竿体に近づく。
【0013】
本発明の第7側面に従う第8側面の釣竿においては、グリップの軸方向長さは、第1寸法の2倍よりも短い。この構成によれば、グリップの軸方向長さが短いので、グリップの第1部分や第2部分と共に、グリップの竿先側の端面や竿尻側の端面にも同時に手の平を容易に当てることができる。
【0014】
本発明の第4乃至第7側面の何れか一つの側面に従う第9側面の釣竿においては、第1部分、第2部分、および、第3部分は、周方向に第1部分、第2部分、および、第3部分の順に配置される。この構成によれば、グリップを竿体の回動させることで、第1部分、第2部分、第3部分という順で例えば手の平に当てることができる。
【0015】
本発明の第1乃至第9側面の何れか一つの側面に従う第10側面の釣竿においては、竿体に釣り用リールを取り付けるために竿体に装着されるリールシートをさらに備える。グリップは、竿体のリールシートよりも竿尻側に配置される。この構成によれば、例えば使用するリールの大きさに応じてグリップを回動させて使用することができる。例えば第1リールを使用する場合には、第1リール及びリールシートを把持する手の平に第1部分を当てることができる。また、第1リールと異なる第2リールを使用する場合には、第2リール及びリールシートを把持する手の平に第2部分を当てることができる。
【発明の効果】
【0016】
以上のように、グリップを竿体の周方向に回動させることにより、グリップの第1部分と第2部分を竿体の周方向の任意の位置に移動させることができ、固定機構によってその任意の位置にグリップを固定することができるので、釣り人の手の大きさや好み、釣りの種類や状況等、種々の条件に柔軟に対応することができ、釣竿の操作感が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明の一実施形態における釣竿の要部を示す正面図。
【
図4】同釣竿の要部の拡大図であって、(a)はグリップを最も竿先側に位置させてその位置に固定した状態を示し、(b)は(a)の状態から固定ナットによる固定を解除した状態を示し、(c)はグリップを最も竿尻側に位置させてその位置に固定した状態を示す。
【
図6】同グリップを竿尻側から見た断面図であって、(a)は第1部分を左側に向けた第1状態を示し、(b)は第2部分を左側に向けた第2状態を示し、(c)は第3部分を左側に向けた第3状態を示す。
【
図7】同釣竿に小型の第1リールを取り付けた第1使用状態を示す平面図。
【
図9】同釣竿に中型の第2リールを取り付けた第2使用状態を示す平面図。
【
図11】同釣竿に大型の第3リールを取り付けた第3使用状態を示す平面図。
【
図13】本発明の他の実施形態における釣竿のグリップを示す断面図。
【
図14】本発明の他の実施形態における釣竿の要部拡大図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の一実施形態に係る釣竿について、
図1~
図12を参酌しつつ説明する。釣竿は、釣り用リールが取り付けられて使用される。釣竿の種類は任意であって、振り出し竿であってもよいし、並継ぎの竿であってもよく、一本の竿体1からなる、いわゆるワンピースロッドであってもよい。外ガイド式の釣竿であってもよいし、中通し竿であってもよい。船釣り用の釣竿に適しており、大物用の釣竿、例えばジギング用に適している。釣り用リールとしては、特には両軸受けリールが好適であるが、スピニングリールであってもよい。本実施形態では、両軸受けリールに適した釣竿である。両軸受けリールは使用状態において釣竿の上側に位置する。以下、両軸受けリールの使用状態を基準にして上下方向を規定する。また、竿体1の軸方向を前後方向とし、竿先側を前側と、竿尻側を後側とする。竿尻側を手前にして釣竿を上から見た平面図(
図7等)を基準にして左右方向を規定する。従って、
図1は、左側から見た図である。
【0019】
釣竿は、竿体1と、リールシート3と、可変グリップ4と、固定ナット5と、ネジ筒6と、竿体1の竿尻部に固定されたエンドグリップ7とを備えている。リールシート3は、竿体1の所定位置に固定されている。リールシート3は、筒状であって、いわゆるパイプシートと称されるものである。リールシート3は、竿体1の外周面に接着されている。リールシート3は、リールシート本体10と、移動フード11と、フード用ナット12を備えている。リールシート本体10は、筒状であって竿体1の外周面に固定されている。リールシート本体10は、例えば硬質の合成樹脂製や金属製である。リールシート本体10は、上面に、リールの脚が載置される脚載置面20を有し、脚載置面20の後側には固定フード21を有している。固定フード21にリールの脚の後端部が挿入され、保持される。リールシート本体10は、下面に、トリガ22を有している。トリガ22は下側に突出している。トリガ22には指を引っ掛けることができる。尚、トリガ22に代えて、下側に膨出したパーミンググリップ部を有していてもよい。リールシート本体10は、前部外周面に、図示しないフード用雄ネジ部を有している。
【0020】
フード用雄ネジ部にフード用ナット12が螺合している。移動フード11は、筒状であって、フード用ナット12の直後に位置している。移動フード11には、リールの脚の前端部が挿入されて保持される。移動フード11は、フード用ナット12と共に前後に移動するが相対回転は阻止されている。このようにリールシート3はフード用ナット12が前側に設けられた構成である。リールシート本体10の外周面の後端部は、竿体1と同軸の円形である。リールシート本体10の直後には化粧リング13が設けられている。化粧リング13の外径は、リールシート本体10の後端部外周面10aの半径10b(外径)と同じである。
【0021】
ネジ筒6は、リールシート3の後側に配置されている。ネジ筒6の内側を竿体1が前後に貫通している。ネジ筒6は、竿体1の外周面に接着されている。尚、ネジ筒6は、竿体1ではなく、リールシート3(リールシート本体10)に固定されてもよい。ネジ筒6は、リールシート3(リールシート本体10)と別体であってもよいし、一体であってもよい。ネジ筒6がリールシート3と別体である場合には、例えば、
図14のように、リールシート本体10から後側にネジ筒6が離れて設けられてもよい。ネジ筒6は、外周面にグリップ用雄ネジ部6aを有している。グリップ用雄ネジ部6aは、ネジ筒6の全長に形成されていてもよいし、全長のうちの一部のみに形成されていてもよい。
【0022】
可変グリップ4は、リールシート3の後側に配置されている。可変グリップ4は、筒状であって、その内側を竿体1が前後に貫通している。可変グリップ4の内周面には、グリップ用雄ネジ部6aに螺合する雌ネジ部30が形成されている。可変グリップ4は、グリップ用雄ネジ部6aに螺合していて、竿体1の軸線回りに回転しながら前後に移動することができる。可変グリップ4は、リールシート3に対して接近、離反する。
図1乃至
図3は、可変グリップ4が最も前側に位置した状態であって、可変グリップ4の前端面が化粧リング13に当接した状態にある。
【0023】
固定ナット5は、可変グリップ4の後側に配置されている。固定ナット5は、グリップ用雄ネジ部6aに螺合している。
図1乃至
図3、及び、
図4(a)のように、可変グリップ4が化粧リング13に当接した状態において、固定ナット5を前側に締め付けることにより、可変グリップ4を化粧リング13に当接した位置に固定することができる。
図4(b)のように、固定ナット5を緩めて後側に移動させて可変グリップ4から固定ナット5を後側に離反させると、可変グリップ4を回転させながら前後方向に移動させることができる。
図4(c)は、可変グリップ4が最も後側に位置した状態であって、この状態において固定ナット5を前側に締め付けると、可変グリップ4の後端面4aと固定ナット5の前端面との間の摩擦力によって、可変グリップ4をこの位置に固定することができる。
【0024】
本実施形態において、グリップ用雄ネジ部6aと可変グリップ4の雌ネジ部30と固定ナット5により、可変グリップ4を竿体1の周方向及び軸方向の任意の位置に固定する固定機構が構成されている。この固定機構により、可変グリップ4を前後方向の所定長さ範囲において任意の位置に固定することができる。
図4(a)のように可変グリップ4をリールシート3に対して前後方向に隙間を空けない状態に接近した接近位置に固定することができると共に、
図4(c)のように可変グリップ4をリールシート3から後側に離間した離間位置にも固定することができる。また、離間位置を前後に調整することもできる。
【0025】
図5及び
図6に、可変グリップ4を示している。可変グリップ4は、外周面が周方向に複数の領域に区分されている。本実施形態においては、外周面が三つの領域に区分されている。三つの領域は互いに周方向の長さが等しいが、異なっていてもよい。三つの領域、即ち、第1領域31(第1部分)と第2領域32(第2部分)と第3領域33(第3部分)は、それぞれ120度の中心角を有している。このように、可変グリップ4の外周面は、120度ずつ周方向に三つの領域に等分割されている。
【0026】
第2領域32は、第1領域31の周方向の第1方向に隣接する。
図5に周方向の第1方向を符号R1で示し、第1方向とは反対方向である第2方向を符号R2で示している。第3領域33は、第2領域32の周方向の第1方向に隣接する。第1領域31は、第3領域33の周方向の第1方向に隣接する。つまり、周方向の第1方向に、第1領域31、第2領域32、第3領域33の順に設けられている。
図5のように、可変グリップ4を後側から軸方向に見て、周方向の第1方向は時計まわりである。可変グリップ4は右ネジである。従って、周方向の第1方向は、可変グリップ4が前側に移動するときに回転する方向であってリールシート3に接近する際の方向である。逆に、周方向の第2方向は、可変グリップ4が後側に移動するときに回転する方向であってリールシート3から離反する際の方向である。つまり、可変グリップ4を周方向の第2方向に回転させてリールシート3から後側に離していくと、第1領域31、第2領域32、第3領域33の順に、特定の方向、例えば左側に向くことになる。
【0027】
第1領域31の周方向の両側にそれぞれ第2領域32と第3領域33が位置する。従って、所定方向に第1領域31が向いている場合を基準として、可変グリップ4を周方向の第1方向に120度回転させるとその所定方向には第3領域33が向き、逆に、可変グリップ4を周方向の第2方向に120度回転させると所定方向には第2領域32が向くことになる。
【0028】
第1領域31と第2領域32と第3領域33は、互いに径方向の寸法(半径)が異なる。第1領域31は、その周方向の全長に亘って径一定であり、第2領域32は、その周方向の全長に亘って径一定であり、第3領域33は、その周方向の全長に亘って径一定である。径方向の寸法は、可変グリップ4の中心(竿体1の中心1a)から外周面までの径方向の距離である。第1領域31は第1径方向寸法41(第1寸法)を有し、第2領域32は第2径方向寸法42(第2寸法)を有し、第3領域33は第3径方向寸法43(第3寸法)を有する。第1径方向寸法41、第2径方向寸法42、及び第3径方向寸法43は、この順に大きくなる。即ち、第2径方向寸法42は第1径方向寸法41よりも大きく、第3径方向寸法43は第2径方向寸法42よりも大きい。第1径方向寸法41が最も小さく、第3径方向寸法43が最も大きい。第1径方向寸法41は、可変グリップ4の外周面における最小半径であり、第3径方向寸法43は、可変グリップ4の外周面における最大半径である。第1径方向寸法41は、リールシート本体10の後端部外周面10aの半径10bよりも大きい。即ち、可変グリップ4は、リールシート本体10の後端部外周面10aよりも大径である。
【0029】
可変グリップ4の軸方向長さは、第1径方向寸法41の2倍よりも小さい。固定ナット5の外径は、第1径方向寸法41の2倍よりも小さい。即ち、固定ナット5は、可変グリップ4よりも小径である。また、固定ナット5は、リールシート本体10の後端部外周面10aよりも小径である。
【0030】
各領域同士の間の境界部にはそれぞれ段差部が設けられている。即ち、可変グリップ4の外周面は周方向に階段状に拡径している。段差部は、前後方向に沿って延びていて可変グリップ4の外周面の全長に亘って形成されている。第1領域31と第2領域32の間には第1段差部51が設けられ、第2領域32と第3領域33の間には第2段差部52が設けられ、第3領域33と第1領域31の間には第3段差部53が設けられる。第1段差部51、第2段差部52、第3段差部53のうち第3段差部53が最も径方向の寸法が大きい、即ち、段差が大きい。
【0031】
可変グリップ4は、径方向(内外方向)に複数の層から構成されている。本実施形態では、筒状の内層61(第1層)と筒状の外層62(第2層)とから構成されている。内層61は可変グリップ4の内周面を有する。従って、内層61に雌ネジ部30が形成されている。外層62は可変グリップ4の外周面を有する。従って、外層62に、第1領域31と第2領域32と第3領域33が設けられている。内層61と外層62は、互いに異なる材質から構成される。外層62は、内層61の外周面に例えば接着される。
【0032】
内層61は、金属製や硬質の合成樹脂製である。外層62は、クッション性を有する。外層62は、内層61よりも軟質の素材であって内層61よりも容易に弾性変形する。また、外層62は、リールシート本体10よりも容易に弾性変形する。外層62は、例えば発泡EVA等の発泡樹脂やコルク等である。内層61は、外径一定である。外層62は、その厚さ(径方向の寸法)が周方向に異なっており、その厚さの変化により、可変グリップ4の外周面の第1領域31と第2領域32と第3領域33が形成されている。即ち、外層62は、第1領域31において第1厚さ71を有し、第2領域32において第2厚さ72を有し、第3領域33において第3厚さ73を有する。第1厚さ71、第2厚さ72、第3厚さ73の順に厚くなっている。第1厚さ71と第2厚さ72との間の差が、第1径方向寸法41と第2径方向寸法42との間の差であり、第2厚さ72と第3厚さ73との間の差が、第2径方向寸法42と第3径方向寸法43との間の差であり、第1厚さ71と第3厚さ73との間の差が、第1径方向寸法41と第3径方向寸法43との間の差である。内層61の外径は、リールシート本体10の後端部外周面10aの半径10bよりも小さい。
【0033】
可変グリップ4を回転させることにより、第1領域31、第2領域32、第3領域33を所定の方向に向けることができる。例えば、
図6(a)のように、第1領域31を左側に向けることができ、その状態から可変グリップ4を後側から見て反時計回りに回転させることで、
図6(b)のように、第2領域32を左側に向けることができ、またその状態から可変グリップ4を後側から見て反時計回りに回転させることで、
図6(c)のように第3領域33を左側に向けることができる。そして、固定ナット5によって可変グリップ4を各状態に固定することができる。
【0034】
使用状態の一例を説明する。尚、以下の説明では、右ハンドル仕様の両軸受けリールを使用する場合について説明する。右ハンドル仕様のリールを使用する場合には、リールシート3及びリールを左手で把持する。
図7及び
図8に、リールシート3に小型の第1リール2aを取り付けた第1使用状態を示している。可変グリップ4は、釣り人の好みや釣りの状況等に応じて任意の前後位置、任意の周方向位置にセットすることができるが、一例として、可変グリップ4を最もリールシート3に接近させた状態としている。但し、可変グリップ4がリールシート3から後側に離れた位置であってもよい。また、第1リール2aを使用する場合、第1領域31が左側を向くようにすることが好ましい。尚、可変グリップ4を最もリールシート3に接近させた状態としたときに、第2領域32や第3領域33が左側を向いていてもよい。その場合には、可変グリップ4を周方向の第2方向に回転させて、第1領域31を左側に向けて、その状態で固定ナット5で可変グリップ4を固定すればよい。小型の第1リール2aを使用する場合、可変グリップ4を前側に移動させ且つ第1領域31が左側を向くようにすると、二点鎖線で示しているように、左手の手の平100が可変グリップ4にスムーズに当たる。特に、手の平100が可変グリップ4の後端面4aのうち第1領域31に対応した箇所に当たる。そのため、ホールド感に優れる。
【0035】
図9及び
図10には、リールシート3に、第1リール2aよりも大きい中型の第2リール2bを取り付けた第2使用状態を示している。この場合、可変グリップ4を第1リール2aの時の位置よりも後側に移動させてリールシート3から後側に離し、且つ、第2領域32が左側を向くようにすることが好ましい。これにより、二点鎖線で示しているように、左手の手の平100が可変グリップ4にスムーズに当たる。特に、手の平100が可変グリップ4の後端面4aのうち第2領域32に対応した箇所に当たる。そのため、ホールド感に優れる。
【0036】
図11及び
図12には、リールシート3に、第2リール2bよりも更に大きい大型の第3リール2cを取り付けた第3使用状態を示している。この場合、可変グリップ4を第2リール2bの時の位置よりも更に後側に移動させてリールシート3から後側に更に遠ざけ、且つ、第3領域33が左側を向くようにすることが好ましい。
図11では可変グリップ4を最も後側に位置させているが、これよりも前側の位置であってもよい。二点鎖線で示しているように、左手の手の平100が可変グリップ4にスムーズに当たる。特に、手の平100が可変グリップ4の後端面4aのうち第3領域33に対応した箇所に当たる。そのため、ホールド感に優れる。
【0037】
このように、リールの大きさに合わせて可変グリップ4を軸線まわりに回転させて、可変グリップ4の向きを任意に調整することができる。可変グリップ4の外周面に半径が異なる三つの領域が設けられているので、可変グリップ4の外周面に手の平100を当てた際に、手の平100の竿体1からの径方向の距離を容易に変化させることができ、手の平100を竿体1に近づけたり、逆に遠ざけたりすることができる。そして、領域同士の間の境界部に段差部が設けられているので、各領域の範囲を手の触感によって容易に把握することができる。
【0038】
また、可変グリップ4を軸線まわりに回転させることで、可変グリップ4をリールシート3に近づけたり、遠ざけたりすることができる。特に、可変グリップ4をリールシート3から後側に離れた位置に固定することができるので、可変グリップ4の軸方向長さが短くても、リールを把持する手の平100に可変グリップ4の外周面や後端面を容易に当てることができて、可変グリップ4で手の平100を支持することができる。特に、可変グリップ4の軸方向長さが第1径方向寸法41の2倍以下と短いため、可変グリップ4の後端面4aに手の平100を容易に当てることができる。可変グリップ4の後端面4aに手の平100を当てることができると、手の平100が前後方向にも安定し、リールを容易に前後左右にホールドすることができる。
【0039】
上述のように、リールの大きさが大きくなると、第1領域31よりも第2領域32、第2領域32よりも第3領域33と、半径が大きい領域に手の平100を当てることが多い。それと同時に、可変グリップ4をリールシート3から後側に離して位置させることが多い。可変グリップ4を後側から見て反時計回りに回転させると、つまり、左側に回転させると、可変グリップ4は後側に移動すると共に、第1領域31、第2領域32、第3領域33という順で左側を向くことになる。そのため、リールの大きさが大きくなると、可変グリップ4を左側に回転させる操作を感覚的に容易に行うことができる。逆に、リールの大きさが小さくなると、可変グリップ4を右側に回転させる操作を感覚的に容易に行うことができる。
【0040】
尚、可変グリップ4の外周面は、4つ以上の領域に区分されていてもよい。可変グリップ4の外周面に4つの領域が設けられる場合には、第1領域31、第2領域32、及び第3領域33とは異なる第4領域が設けられる。同様に、可変グリップ4の外周面に5つの領域が設けられる場合には、第1領域31乃至第4領域とは異なる第5領域が設けられる。このように、可変グリップ4の外周面に4つ以上の領域が設けられる場合には、第1領域31、第2領域32、及び第3領域33とは異なる第4領域を含む、4つ以上の領域に区分されていてよい。また、可変グリップ4の外周面が2つの領域に区分されていてもよい。即ち、第1領域31と第2領域32のみが外周面に設けられていてもよい。尚、各領域の周方向の長さは互いに異なるものであってよい。また、可変グリップ4の外周面が周方向に階段状に変化するのではなく周方向に連続的に変化していてもよい。
【0041】
可変グリップ4の外周面が径一定であって、例えば、可変グリップ4の外周面の硬度が周方向に変化してもよい。例えば、
図13(a)のように、可変グリップ4の外周面が周方向に複数の領域、具体的には第1領域31と第2領域32と第3領域33の三つの領域に区分され、その領域毎に硬度が異なるようにしてもよい。例えば、第1領域31、第2領域32、第3領域33の順に硬度が大きくなるようにしてもよい。硬度が大きくなる程、弾性変形しにくくなり、逆に、硬度が小さくなる程、弾性変形しやすくなる。また、
図13(b)のように、可変グリップ4の外周面が径一定であって、内層61の外周面の径が周方向に異なるようにして、外層62の厚さが三つの領域(第1領域31、第2領域32、第3領域33)で異なるようにしてもよい。例えば、第1領域31、第2領域32、第3領域33の順に外層62の厚さが厚くなるようにしてもよい。また更に、第1領域31、第2領域32、第3領域33で、それぞれ表面粗さが異なるようにしてもよい。例えば、第1領域31、第2領域32、第3領域33の順に表面粗さが粗くなるようにしてもよい。
【0042】
尚、化粧リング13を省略してもよく、可変グリップ4の前端面はリールシート本体10に当接してもよい。
【0043】
また、
図3に二点鎖線で示しているように、リールシート本体10の下面に軟質部材80を設けてもよい。軟質部材80は、リールシート本体10よりも軟質の部材である。軟質部材80の下面80aは例えば平面とすることができる。軟質部材80によってトリガ22が覆われている。軟質部材80の下面80aはトリガ22よりも下側に位置することが好ましい。このように軟質部材80が設けられた構成では、軽い力でリールシート3を把持した際には、軟質部材80で手の平100等を支持することができ、強い力で把持した際には、軟質部材80が凹むように変形することで、トリガ22等の硬いリールシート本体10によって手の平100等を支持することができる。竿体1の中心1aから軟質部材80の下面80aまでの径方向の距離である第4径方向寸法80bは、可変グリップ4の最大寸法である第3径方向寸法よりも大きい。そのため、可変グリップ4とリールシート10との間に生じる段差が埋められるので把持しやすくなる。
【符号の説明】
【0044】
1 竿体
1a 中心
2a 第1リール
2b 第2リール
2c 第3リール
3 リールシート
4 可変グリップ(グリップ)
4a 後端面
5 固定ナット
6 ネジ筒
6a グリップ用雄ネジ部(雄ネジ部)
7 エンドグリップ
10 リールシート本体
10a 後端部外周面
10b 半径(径方向寸法)
11 移動フード
12 フード用ナット
13 化粧リング
20 脚載置面
21 固定フード
22 トリガ
30 雌ネジ部
31 第1領域(第1部分)
32 第2領域(第2部分)
33 第3領域(第3部分)
41 第1径方向寸法(第1寸法)
42 第2径方向寸法(第2寸法)
43 第3径方向寸法(第3寸法)
51 第1段差部
52 第2段差部
53 第3段差部
61 内層
62 外層
71 第1厚さ
72 第2厚さ
73 第3厚さ
80 軟質部材
80a 下面
80b 第4径方向寸法
100 手の平