(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024030915
(43)【公開日】2024-03-07
(54)【発明の名称】無線通信システム、受信品質表示システム、受信品質表示方法
(51)【国際特許分類】
H04W 24/08 20090101AFI20240229BHJP
H04W 88/18 20090101ALI20240229BHJP
H04W 4/44 20180101ALI20240229BHJP
【FI】
H04W24/08
H04W88/18
H04W4/44
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022134152
(22)【出願日】2022-08-25
(71)【出願人】
【識別番号】000001122
【氏名又は名称】株式会社日立国際電気
(74)【代理人】
【識別番号】100116687
【弁理士】
【氏名又は名称】田村 爾
(74)【代理人】
【識別番号】100098383
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 純子
(74)【代理人】
【識別番号】100155860
【弁理士】
【氏名又は名称】藤松 正雄
(72)【発明者】
【氏名】筒井 貴行
【テーマコード(参考)】
5K067
【Fターム(参考)】
5K067AA21
5K067BB21
5K067DD42
5K067DD43
5K067DD45
5K067EE02
5K067EE10
5K067EE16
5K067HH22
(57)【要約】
【課題】所定の経路を走行する車両を対象とした無線通信システムに関し、各移動局の受信品質および各基地局の受信品質の低下を容易に把握できるようにする。
【解決手段】無線通信システムは、各移動局60と各基地局50の組み合わせ毎に、移動局側RSSIおよび基地局側RSSIを蓄積するデータサーバ30と、データサーバ30に蓄積された移動局側RSSIおよび基地局側RSSIに基づいて、各移動局60を割り当てた第1軸と、各基地局50を割り当てた第2軸とで構成されたマトリクス形式の受信品質確認画面を表示する表示装置を有する監視端末40とを備える。受信品質確認画面の各マスは、そのマスに対応する移動局側RSSIおよび基地局側RSSIを所定の閾値と比較した結果に応じて決定された態様で表示される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の経路を走行する複数の車両にそれぞれ搭載された複数の移動局と、前記経路に沿って設置された複数の基地局とを備えた無線通信システムにおいて、
前記複数の移動局は、それぞれ、通信中の基地局から受信した無線信号の受信品質である移動局側受信品質を測定する機能を有し、
前記複数の基地局は、それぞれ、通信中の移動局から受信した無線信号の受信品質である基地局側受信品質を測定する機能を有し、
前記無線通信システムは更に、
各移動局と各基地局の組み合わせ毎に、前記移動局側受信品質および前記基地局側受信品質を蓄積するデータサーバと、
前記データサーバに蓄積された前記移動局側受信品質および前記基地局側受信品質に基づいて、各移動局を割り当てた第1軸と、各基地局を割り当てた第2軸とで構成されたマトリクス形式の受信品質確認画面を表示する表示装置とを備え、
前記受信品質確認画面の各マスは、そのマスに対応する前記移動局側受信品質および前記基地局側受信品質を所定の閾値と比較した結果に応じて決定された態様で表示されることを特徴とする無線通信システム。
【請求項2】
請求項1に記載の無線通信システムにおいて、
前記受信品質確認画面の各マスは、そのマスに対応する前記移動局側受信品質および前記基地局側受信品質の両方が前記閾値以上の場合、前記移動局側受信品質が前記閾値未満で前記基地局側受信品質が前記閾値以上の場合、前記移動局側受信品質が前記閾値以上で前記基地局側受信品質が前記閾値未満の場合、前記移動局側受信品質および前記基地局側受信品質の両方が前記閾値未満の場合のそれぞれで異なる態様で表示されることを特徴とする無線通信システム。
【請求項3】
請求項1に記載の無線通信システムにおいて、
前記表示装置は、前記受信品質確認画面の行または列の中に、前記移動局側受信品質が前記閾値未満であるマスの数が所定の条件を満たす行または列が存在する場合、または、前記基地局側受信品質が前記閾値未満であるマスの数が所定の条件を満たす行または列が存在する場合に、その行または列に対応する移動局または基地局に異常がある旨を示すメッセージを更に表示することを特徴とする無線通信システム。
【請求項4】
請求項1に記載の無線通信システムにおいて、
前記移動局に対するポーリング要求を送信する無線中央装置を更に備え、
前記移動局は、通信中の基地局を介して前記ポーリング要求を受信した場合に、前記ポーリング要求の受信品質を測定し、その測定結果を前記移動局側受信品質としてポーリング応答に含めて前記通信中の基地局へ送信し、
前記基地局は、通信中の移動局から前記ポーリング応答を受信した場合に、前記ポーリング応答の受信品質を測定し、その測定結果を前記基地局側受信品質として前記ポーリング応答に追加して前記無線中央装置へ送信し、
前記無線中央装置は、前記ポーリング応答に含まれる前記移動局側受信品質および前記基地局側受信品質を前記データサーバへ送信し、
前記データサーバは、前記無線中央装置から受信した前記移動局側受信品質および前記基地局側受信品質を蓄積することを特徴とする無線通信システム。
【請求項5】
所定の経路を走行する複数の車両にそれぞれ搭載された複数の移動局と、前記経路に沿って設置された複数の基地局とを備えた無線通信システムについて、各移動局と各基地局の間の無線通信に関する受信品質を確認するための受信品質表示システムにおいて、
各移動局と各基地局の組み合わせ毎に、該移動局が該基地局から受信した無線信号の受信品質である移動局側受信品質、および、該基地局が該移動局から受信した無線信号の受信品質である基地局側受信品質を蓄積するデータサーバと、
前記データサーバに蓄積された前記移動局側受信品質および前記基地局側受信品質に基づいて、各移動局を割り当てた第1軸と、各基地局を割り当てた第2軸とで構成されたマトリクス形式の受信品質確認画面を表示する表示装置とを備え、
前記受信品質確認画面の各マスは、そのマスに対応する前記移動局側受信品質および前記基地局側受信品質を所定の閾値と比較した結果に応じて決定された態様で表示されることを特徴とする受信品質表示システム。
【請求項6】
所定の経路を走行する複数の車両にそれぞれ搭載された複数の移動局と、前記経路に沿って設置された複数の基地局とを備えた無線通信システムについて、各移動局と各基地局の間の無線通信に関する受信品質を確認するための受信品質表示方法において、
データサーバが、各移動局と各基地局の組み合わせ毎に、該移動局が該基地局から受信した無線信号の受信品質である移動局側受信品質、および、該基地局が該移動局から受信した無線信号の受信品質である基地局側受信品質を蓄積し、
表示装置が、前記データサーバに蓄積された前記移動局側受信品質および前記基地局側受信品質に基づいて、各移動局を割り当てた第1軸と、各基地局を割り当てた第2軸とで構成されたマトリクス形式の受信品質確認画面を表示し、
前記受信品質確認画面の各マスは、そのマスに対応する前記移動局側受信品質および前記基地局側受信品質を所定の閾値と比較した結果に応じて決定された態様で表示されることを特徴とする受信品質表示方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、所定の経路を走行する車両に搭載された移動局とその経路に沿って設置された基地局との間で無線通信を行う無線通信システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、列車に搭載された移動局と列車が走行する線路に沿って設置された基地局との間で無線通信を行う無線通信システム(いわゆる「列車無線システム」)が実用されている。このような列車無線システムにおける移動局と基地局の間の無線通信について、安定的な無線通信を確保するために、受信信号強度などの受信品質を確認する必要がある。そこで、例えば、試験列車または運行中の列車に搭載された移動局で受信品質を測定してログに記録し、同様に各基地局でも受信品質を測定してログに記録し、これらを収集して解析することが行われている。
【0003】
本発明に関連する従来技術として、以下のようなものがある。例えば、特許文献1には、FPU受信基地局の受信電界強度の余裕度をモニタに表示する際に、余裕度に応じて表示色を変化させる発明が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来技術に係る受信品質の確認方法は、リアルタイム性をあまり考慮しておらず、リアルタイムに受信品質の解析結果を確認することが困難であった。また、受信品質に問題があっても、送信側に問題があるのか受信側に問題があるのか等の傾向をすぐに判断することが困難であった。このような問題は列車無線システムに特有のものではなく、バスや高速道路の作業車両など、所定の経路を走行する自動車を対象とした無線通信システムでも同様の懸念がある。
【0006】
本発明は、上記のような従来の事情に鑑みて為されたものであり、所定の経路を走行する車両を対象とした無線通信システムに関し、各移動局の受信品質および各基地局の受信品質の低下を容易に把握できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するために、本発明の一態様に係る無線通信システムは、以下のように構成される。
すなわち、所定の経路を走行する複数の車両にそれぞれ搭載された複数の移動局と、その経路に沿って設置された複数の基地局とを備えた無線通信システムにおいて、複数の移動局は、それぞれ、通信中の基地局から受信した無線信号の受信品質である移動局側受信品質を測定する機能を有し、複数の基地局は、それぞれ、通信中の移動局から受信した無線信号の受信品質である基地局側受信品質を測定する機能を有し、当該無線通信システムは更に、各移動局と各基地局の組み合わせ毎に、移動局側受信品質および基地局側受信品質を蓄積するデータサーバと、データサーバに蓄積された移動局側受信品質および基地局側受信品質に基づいて、各移動局を割り当てた第1軸と、各基地局を割り当てた第2軸とで構成されたマトリクス形式の受信品質確認画面を表示する表示装置とを備え、受信品質確認画面の各マスは、そのマスに対応する移動局側受信品質および基地局側受信品質を所定の閾値と比較した結果に応じて決定された態様で表示される。
【0008】
ここで、受信品質確認画面の各マスは、そのマスに対応する移動局側受信品質および基地局側受信品質の両方が閾値以上の場合、移動局側受信品質が閾値未満で基地局側受信品質が閾値以上の場合、移動局側受信品質が閾値以上で基地局側受信品質が閾値未満の場合、移動局側受信品質および基地局側受信品質の両方が閾値未満の場合のそれぞれで異なる態様で表示されてもよい。
【0009】
また、表示装置は、受信品質確認画面の行または列の中に、移動局側受信品質が閾値未満であるマスの数が所定の条件を満たす行または列が存在する場合、または、基地局側受信品質が閾値未満であるマスの数が所定の条件を満たす行または列が存在する場合に、その行または列に対応する移動局または基地局に異常がある旨を示すメッセージを更に表示してもよい。
【0010】
また、無線通信システムは更に、移動局に対するポーリング要求を送信する無線中央装置を備え、移動局は、通信中の基地局を介してポーリング要求を受信した場合に、ポーリング要求の受信品質を測定し、その測定結果を移動局側受信品質としてポーリング応答に含めて通信中の基地局へ送信し、基地局は、通信中の移動局からポーリング応答を受信した場合に、ポーリング応答の受信品質を測定し、その測定結果を基地局側受信品質としてポーリング応答に追加して無線中央装置へ送信し、無線中央装置は、ポーリング応答に含まれる移動局側受信品質および基地局側受信品質をデータサーバへ送信し、データサーバは、無線中央装置から受信した移動局側受信品質および基地局側受信品質を蓄積してもよい。
【0011】
本発明の別の態様に係る受信品質表示システムは、以下のように構成される。
すなわち、所定の経路を走行する複数の車両にそれぞれ搭載された複数の移動局と、その経路に沿って設置された複数の基地局とを備えた無線通信システムについて、各移動局と各基地局の間の無線通信に関する受信品質を確認するための受信品質表示システムにおいて、各移動局と各基地局の組み合わせ毎に、該移動局が該基地局から受信した無線信号の受信品質である移動局側受信品質、および、該基地局が該移動局から受信した無線信号の受信品質である基地局側受信品質を蓄積するデータサーバと、データサーバに蓄積された移動局側受信品質および基地局側受信品質に基づいて、各移動局を割り当てた第1軸と、各基地局を割り当てた第2軸とで構成されたマトリクス形式の受信品質確認画面を表示する表示装置とを備え、受信品質確認画面の各マスは、そのマスに対応する移動局側受信品質および基地局側受信品質を所定の閾値と比較した結果に応じて決定された態様で表示される。
【0012】
本発明の更に別の態様に係る受信品質表示方法は、以下のように構成される。
すなわち、所定の経路を走行する複数の車両にそれぞれ搭載された複数の移動局と、その経路に沿って設置された複数の基地局とを備えた無線通信システムについて、各移動局と各基地局の間の無線通信に関する受信品質を確認するための受信品質表示方法において、データサーバが、各移動局と各基地局の組み合わせ毎に、該移動局が該基地局から受信した無線信号の受信品質である移動局側受信品質、および、該基地局が該移動局から受信した無線信号の受信品質である基地局側受信品質を蓄積し、表示装置が、データサーバに蓄積された移動局側受信品質および基地局側受信品質に基づいて、各移動局を割り当てた第1軸と、各基地局を割り当てた第2軸とで構成されたマトリクス形式の受信品質確認画面を表示し、受信品質確認画面の各マスは、そのマスに対応する移動局側受信品質および基地局側受信品質を所定の閾値と比較した結果に応じて決定された態様で表示される。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、所定の経路を走行する車両を対象とした無線通信システムに関し、各移動局の受信品質および各基地局の受信品質の低下を容易に把握できるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の一実施形態に係る無線通信システムの構成例を示す図である。
【
図2】受信品質の収集に関する処理フローの例を示す図である。
【
図4】正常時の受信品質確認画面の表示例を示す図である。
【
図5】移動局側RSSIが低下した場合の受信品質確認画面の表示例を示す図である。
【
図6】基地局側RSSIが低下した場合の受信品質確認画面の表示例を示す図である。
【
図7】移動局側RSSIおよび基地局側RSSIの両方が低下した場合の受信品質確認画面の表示例を示す図である。
【
図8】移動局側RSSIおよび基地局側RSSIの両方が低下した場合の受信品質確認画面の別の表示例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の一実施形態に係る無線通信システムについて、図面を参照して説明する。
図1には、本発明の一実施形態に係る無線通信システムの構成例を示してある。本例の無線通信システムは、列車無線中央装置10と、指令卓20と、データサーバ30と、監視端末40と、基地局50と、移動局60とを備えた列車無線システムである。
【0016】
列車無線中央装置10は、指令卓20と基地局50を接続すると共に、回線制御などを行って通信システム全体を統括的に制御する装置である。指令卓20は、列車無線システム内の特定の拠点(例えば、指令室)に設置された端末装置であり、基地局50を介して移動局60との通話を提供する。
【0017】
基地局50は、指令卓20と移動局60の間の通話の中継拠点として地上に設置された無線通信設備であり、列車が走行する線路に沿って複数台が設置される。
図1では、基地局50-1~50-NのN台を示してあるが、基地局50の数は任意である。基地局50は、移動局60から受信した無線信号の受信品質である移動局側受信品質を測定する機能を有する。本例では、移動局側受信品質として、無線信号の受信信号強度(RSSI)を測定するように構成されているが、無線信号の受信品質を表す他の値を測定してもよい。
【0018】
移動局60は、基地局50がカバーする無線通信エリア内の任意の位置で、基地局50を介して指令卓20との通話を提供する無線端末装置である。移動局60は、列車を走行する各列車に搭載されるため、車上局とも称される。
図1では、移動局60-1~60-2の2台を示してあるが、移動局60の数は任意である。移動局60は、基地局50から受信した無線信号の受信品質である基地局側受信品質を測定する機能を有する。本例では、基地局側受信品質として、無線信号の受信信号強度(RSSI)を測定するように構成されているが、無線信号の受信品質を表す他の値を測定してもよい。
【0019】
データサーバ30は、システム内の各基地局50で測定された移動局側受信品質および各移動局60で測定された基地局側受信品質を収集し、内蔵または付随されたデータベースに蓄積するサーバ装置である。監視端末40は、列車無線システム内の特定の拠点(例えば、監視室)に設置されており、データサーバ30の蓄積データに基づいて受信品質確認画面を表示する表示装置を有する。
【0020】
ここで、本例の列車無線中央装置10は、基地局50を通じて移動局60に対して定期的にポーリングを実施しており、その結果が在線情報としてデータサーバ30へ送信され、監視端末40にて表示される。また、在線情報に付随して、移動局60を識別する移動局ID、移動局60で測定された移動局側受信品質、基地局50を識別する基地局ID、基地局50で測定された基地局側受信品質なども収集され、データサーバ30に蓄積される。以下、これらの動作について
図2を参照して説明する。
【0021】
図2には、受信品質の収集に関する処理フローの例を示してある。ここでは、移動局側受信品質および基地局側受信品質として、無線信号の受信信号強度(RSSI)を測定するものとする。
列車無線中央装置10は、移動局60に対するポーリング要求を基地局50に送信する(ステップS11)。ポーリング要求には、宛先となる移動局60を識別する移動局IDが含まれる。基地局50は、列車無線中央装置10からのポーリング要求を移動局60に送信する(ステップS12)。
【0022】
移動局60は、自局に宛てたポーリング要求を基地局50から受信すると、ポーリング要求のRSSIを測定し、得られたRSSIおよび自身の移動局IDをポーリング応答に含めて基地局50に送信する(ステップS13)。基地局50は、移動局60からポーリング応答を受信すると、ポーリング応答のRSSIを測定し、得られたRSSIおよび自身の基地局IDをポーリング応答に追加して列車無線中央装置10に送信する(ステップS14)。以下、移動局60で測定されたRSSIを「移動局側RSSI」と表記し、基地局50で測定されたRSSIを「基地局側RSSI」と表記する場合がある。
【0023】
列車無線中央装置10は、受信したポーリング応答内のデータを在線情報に含めてデータサーバ30へ送信する(ステップS15)。つまり、移動局ID、移動局側RSSI、基地局ID、基地局側RSSIの各データが、列車無線中央装置10からデータサーバ30へ送信される。データサーバ30は、
図3に示すような受信品質蓄積テーブルを有しており、在線情報内の移動局IDおよび基地局IDをキーにして、受信品質蓄積テーブルに移動局側RSSIおよび基地局側RSSIを蓄積する(ステップS16)。
【0024】
なお、
図3の受信品質蓄積テーブルは、基地局ID、移動局ID、基地局側RSSI、移動局側RSSIの4つの項目で構成されているが、他のデータ項目を追加してもよい。例えば、収集時間の項目を追加することで、最新の移動局側RSSIおよび基地局側RSSIだけでなく、過去の移動局側RSSIおよび基地局側RSSIを履歴として管理することも可能である。
【0025】
データサーバ30は、監視端末40を操作するユーザからの指示に従って、受信品質確認画面の表示用データを含む表示要求を監視端末40に送信する(ステップS17)。監視端末40は、データサーバ30から受信した表示要求に基づいて、受信品質確認画面の表示処理を行う(ステップS18)。
【0026】
監視端末40は、例えば、メモリに予め記憶した表示処理用プログラムを読み出してプロセッサにより実行することで、受信品質確認画面の表示処理を実現する。なお、受信品質確認画面の表示処理は、監視端末40以外の装置が実施してもよく、例えば、データサーバ30および監視端末40と通信可能に接続された他の装置が実施してもよい。
【0027】
受信品質確認画面の表示処理は、以下のような手順で実施される。
まず、データサーバ30に蓄積された各RSSIを、予め設定されているRSSI閾値と比較する。RSSI閾値としては、例えば、安定した通話を維持できる程度の値が設定される。次に、データサーバ30に蓄積された各RSSIをRSSI閾値と比較した結果に応じて、受信品質確認画面の表示態様を決定する。
【0028】
本例の受信品質確認画面は、
図4~
図8に示すように、各移動局を表す車上局IDを割り当てた第1軸(図示の例では縦軸)と、各基地局を表す基地局IDを割り当てた第2軸(図示の例では横軸)とで構成されたマトリクス形式の画面である。第1軸の各車上局IDは、各移動局の関係性を把握し易いような順序で配置することが好ましく、例えば、列車の運行順と同じ順序で配置される。第2軸の各基地局IDも同様に、各基地局の関係性を把握し易いような順序で配置することが好ましく、例えば、線路に沿った基地局の配置と同じ順序で配置される。
【0029】
なお、新たに在線状態となった車両が発生した場合には、その車両の移動局に対応する行が受信品質確認画面に追加される。また、在線状態でなくなった車両の移動局については、営業終了時刻(またはその後の一定時間経過後)に、対応する行が削除される。このような制御により、受信品質確認画面の表示を実際の在線状況に沿った内容にすることができる。
【0030】
受信品質確認画面のマトリクスの各マスは、そのマスに対応する基地局側RSSIおよび移動局側RSSIをRSSI閾値と比較した結果に応じた態様に変更される。本例では、比較結果に応じて各マスの表示色を決定し、その表示色で塗り潰すこととする。例えば、移動局側RSSIおよび基地局側RSSIの両方がRSSI閾値以上の場合は「青色」とし、移動局側RSSIが閾値未満で基地局側RSSIが閾値以上の場合は「赤色」とし、移動局側RSSIが閾値以上で基地局側RSSIが閾値未満の場合は「黄色」とし、移動局側RSSIおよび基地局側RSSIの両方がRSSI閾値未満の場合は「灰色」とする。以下、受信品質確認画面の表示例について
図4~
図8を参照して説明する。
【0031】
図4には、正常時の受信品質確認画面の表示例を示してある。
図4の例では、マトリクスの全てのマスが青色で表示されている。この場合、全ての基地局および全ての移動局で移動局側RSSIおよび基地局側RISSIが良好であることを確認できる。
【0032】
図5には、移動局側RSSIが低下した場合の受信品質確認画面の表示例を示してある。
図5の例では、基地局ID=07の列の各マスおよび車上局ID=1003の行の各マスが赤色で表示されている。基地局ID=07の列の赤色表示は、基地局ID=07の基地局から各移動局への下り通信で移動局側RSSIの低下が観測されたことを表している。この場合、基地局ID=07の基地局の送信系の問題により移動局側RSSIが低下したと考えられる。また、車上局ID=1003の行の赤色表示は、各基地局から車上局ID=1003の移動局への下り通信で移動局側RSSIの低下が観測されたことを表している。この場合、車上局ID=1003の移動局の受信系の問題により移動局側RSSIが低下したと考えられる。
【0033】
図6には、基地局側RSSIが低下した場合の受信品質確認画面の表示例を示してある。
図6の例では、基地局ID=07の列の各マスおよび車上局ID=1003の行の各マスが黄色で表示されている。基地局ID=07の列の黄色表示は、各移動局から基地局ID=07の基地局への上り通信で基地局側RSSIの低下が観測されたことを表している。この場合、基地局ID=07の基地局の受信系の問題により基地局側RSSIが低下したと考えられる。また、車上局ID=1003の行の各マスの黄色表示は、車上局ID=1003の移動局から各基地局への上り通信で基地局側RSSIの低下が観測されたことを表している。この場合、車上局ID=1003の移動局の送信系の問題により基地局側RSSIが低下したと考えられる。
【0034】
図7には、移動局側RSSIおよび基地局側RSSIの両方が低下した場合の受信品質確認画面の表示例を示してある。
図7の例では、基地局ID=07の列の各マスが赤色で表示され、車上局ID=1003の行の各マスが黄色で表示され、これら行と列の交点のマスが灰色で表示されている。基地局ID=07の列の赤色表示は、基地局ID=07の基地局から各移動局への下り通信で移動局側RSSIの低下が観測されたことを表している。この場合、基地局ID=07の基地局の送信系の問題により移動局側RSSIが低下したと考えられる。また、車上局ID=1003の行の各マスの黄色表示は、車上局ID=1003の移動局から各基地局への上り通信で基地局側RSSIの低下が観測されたことを表している。この場合、車上局ID=1003の移動局の送信系の問題により基地局側RSSIが低下したと考えられる。
【0035】
図8には、移動局側RSSIおよび基地局側RSSIの両方が低下した場合の受信品質確認画面の別の表示例を示してある。
図8の例では、基地局ID=07の列の各マスおよび車上局ID=1003の行の各マスが灰色で表示されている。基地局ID=07の列の灰色表示は、基地局ID=07の基地局から各移動局への下り通信で移動局側RSSIの低下が観測されたこと、および、各移動局から基地局ID=07の基地局への上り通信で基地局側RSSIの低下が観測されたことを表している。この場合、基地局ID=07の基地局の送信系および受信系の問題により移動局側RSSIおよび基地局側RSSIが低下したと考えられる。また、車上局ID=1003の行の灰色表示は、各基地局から車上局ID=1003の移動局への下り通信で移動局側RSSIの低下が観測されたこと、および、車上局ID=1003の移動局から各基地局への上り通信で基地局側RSSIの低下が観測されたことを表している。この場合、車上局ID=1003の移動局の送信系および受信系の問題により移動局側RSSIおよび基地局側RSSIが低下したと考えられる。
【0036】
なお、
図4~
図8の例では、送信系や受信系に問題がある移動局または基地局に対応する行または列について、全てのマスが赤色、黄色、又は灰色に表示されているが、天候や一時的な干渉源の存在などにより通信状況が時々刻々と変化する実運用上では、このような表示を完全に再現できるとは限らない。とはいえ、赤色、黄色、又は灰色が横方向に分布している場合には、移動局側に問題があると判断することができ、縦方向に分布している場合には、基地局側に問題があると判断することができる。
【0037】
また、
図4~
図8の例では、赤色、黄色、又は灰色でRSSIの低下を表現しているが、これら表示色の濃淡によりRSSIの低下度合いを表すようにしてもよい。例えば、移動局側RSSIや基地局側RSSIとRSSI閾値との乖離度に応じて、赤色、黄色、又は灰色の濃淡を変化させてもよい。あるいは、値が異なる複数のRSSI閾値を用意しておき、移動局側RSSIや基地局側RSSIと複数のRSSI閾値との比較結果に応じて、赤色、黄色、又は灰色の濃淡を変化させてもよい。
【0038】
また、赤色、黄色、又は灰色のマスの分布状況を分析し、推定される異常を報告するメッセージを受信品質確認画面に追加表示してもよい。すなわち、受信品質確認画面の行または列の中に、移動局RSSIがRSSI閾値未満であるマスの数が所定の条件を満たす行または列が存在する場合、または、基地局RSSIがRSSI閾値未満であるマスの数が所定の条件を満たす行または列が存在する場合に、その行または列に対応する移動局または基地局に異常がある旨を示すメッセージを更に表示してもよい。所定の条件としては、例えば、行または列内のマスの総数に対するRSSI閾値未満のマスの数の割合が基準値(例えば、50%)を超えることが挙げられる。このメッセージは、受信品質確認画面内の任意の位置に表示してもよいが、該当する行または列の近傍の位置であることが好ましい。
【0039】
なお、RSSIの低下を表現する手法は任意であり、
図4~
図8のような表示色の変更は一例に過ぎない。例えば、特定の文字や記号、あるいはマーク等により、RSSIの低下を表現してもよい。
【0040】
以上のように、本例の無線通信システムは、複数の列車にそれぞれ搭載された複数の移動局60と、列車が走行する線路に沿って設置された複数の基地局50とを備えた無線通信システムにおいて、複数の移動局60は、それぞれ、通信中の基地局50から受信した無線信号のRSSIである移動局側RSSIを測定する機能を有し、複数の基地局50は、それぞれ、通信中の移動局60から受信した無線信号のRSSIである基地局側RSSIを測定する機能を有する。無線通信システムは更に、各移動局60と各基地局50の組み合わせ毎に、移動局側RSSIおよび基地局側RSSIを蓄積するデータサーバ30と、データサーバ30に蓄積された移動局側RSSIおよび基地局側RSSIに基づいて、各移動局50を割り当てた第1軸と、各基地局50を割り当てた第2軸とで構成されたマトリクス形式の受信品質確認画面を表示する表示装置を有する監視端末40とを備える。そして、受信品質確認画面の各マスが、そのマスに対応する移動局側RSSIおよび基地局側RSSIを所定の閾値と比較した結果に応じて決定された態様で表示されるように構成されている。
【0041】
このような受信品質確認画面を用いることで、移動局側RSSIや基地局側RSSIの低下を容易に把握できるようになる。また、移動局側RSSIや基地局側RSSIの低下を示すマスの分布状況を見るだけで、移動局側または基地局側のどちらに問題があるかを把握することができ、更には、送信系または受信系のどちらに問題があるかも把握できるようになる。
【0042】
なお、上記の説明では、最新の移動局側RSSIおよび基地局側RSSIに基づいて受信品質確認画面を表示しているが、過去の移動局側RSSIおよび基地局側RSSIを履歴として管理している場合には、過去の時点の移動局側RSSIおよび基地局側RSSIに基づいて受信品質確認画面を表示する機能を設けてもよい。また、時系列順またはその逆順に受信品質確認画面を表示する機能を設けることも可能である。
【0043】
また、上記の説明では、本発明を適用した列車無線システムに事例について説明したが、本発明は他の無線通信システムに適用することが可能である。例えば、所定の経路を走行することが計画された自動車(バスや高速道路の作業車両など)に搭載された移動局と、その経路に沿って配置された基地局とを備えた無線通信システムにも、本発明を適用することが可能である。
【0044】
以上、本発明の実施形態について説明したが、上記の実施形態は例示に過ぎず、本発明の技術的範囲を限定するものではない。本発明は、その他の様々な実施形態をとることが可能であると共に、本発明の要旨を逸脱しない範囲で、省略や置換等の種々の変形を行うことができる。これら実施形態及びその変形は、本明細書等に記載された発明の範囲や要旨に含まれると共に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【0045】
また、本発明は、上記の説明で挙げたような装置や、これら装置で構成されたシステムとして提供することが可能なだけでなく、これら装置により実行される方法、これら装置の機能をプロセッサにより実現させるためのプログラム、そのようなプログラムをコンピュータ読み取り可能に記憶する記憶媒体などとして提供することも可能である。
【産業上の利用可能性】
【0046】
本発明は、所定の経路を走行する車両に搭載された移動局とその経路に沿って設置された基地局との間で無線通信を行う無線通信システムに利用することが可能である。
【符号の説明】
【0047】
10:列車無線中央装置、 20:指令卓、 30:データサーバ、 40:監視端末、 50-1~50-N:基地局、 60-1~60-2:移動局