(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024030922
(43)【公開日】2024-03-07
(54)【発明の名称】インサート着脱式ホルダ
(51)【国際特許分類】
B23B 27/10 20060101AFI20240229BHJP
【FI】
B23B27/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022134161
(22)【出願日】2022-08-25
(71)【出願人】
【識別番号】000006264
【氏名又は名称】三菱マテリアル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100175802
【弁理士】
【氏名又は名称】寺本 光生
(74)【代理人】
【識別番号】100142424
【弁理士】
【氏名又は名称】細川 文広
(74)【代理人】
【識別番号】100140774
【弁理士】
【氏名又は名称】大浪 一徳
(72)【発明者】
【氏名】萩原 隆行
【テーマコード(参考)】
3C046
【Fターム(参考)】
3C046BB07
(57)【要約】
【課題】ホルダ本体に対し、ノズルを高い位置精度で組み付け、切削インサートによる切削部位に対し、クーラントを、より均一に供給することができるインサート着脱式ホルダを提供する。
【解決手段】ホルダは、ホルダ本体と、ノズルとを備え、ホルダ本体は、工具幅方向における幅寸法が工具軸方向の基端部側から先端部側に向かって縮小または増大する第一位置決め面を有する第一位置決め部と、上下方向の下側を向く平面状の第二位置決め面を有する第二位置決め部と、を備え、ノズルは、第一位置決め面に突き当たる第一突き当たり面を有する第一係合部と、第二位置決め面に対して突き当たる平面状の第二突き当たり面を有する第二係合部と、ノズル内流路部内のクーラントを外部に噴射する噴射口と、を備える。
【選択図】
図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
切刃を有するインサートが先端部に着脱可能に装着されるホルダ本体と、クーラントを噴射するノズルと、前記ホルダ本体と前記ノズルとを接続するボルトと、を備え、
前記ホルダ本体は、
前記先端部において、前記ホルダ本体の前記先端部と基端部とを結ぶ第一方向に交差する第二方向の一方側に設けられ、前記インサートが装着可能な取付座と、
前記先端部において前記取付座に対して前記第二方向の他方側に設けられ、前記第二方向から見て、前記第一方向に交差する第三方向における幅寸法が前記第一方向の前記基端部側から前記先端部側に向かって縮小または増大する第一位置決め面を有する第一位置決め部と、
前記第一位置決め面に対して前記第二方向の他方側に設けられ、前記第二方向の他方側を向く平面状の第二位置決め面を有する第二位置決め部と、を備え、
前記ノズルは、
前記第二方向から見て、前記第三方向における幅寸法が前記第一方向の前記先端部側から前記基端部側に向かって増大または縮小し、前記第一位置決め面に対して前記第一方向の前記先端部側から突き当たる第一突き当たり面を有する第一係合部と、
前記第二位置決め面に対して前記第二方向の他方側から突き当たる平面状の第二突き当たり面を有する第二係合部と、
前記ノズル内に設けられ、クーラントの流路を形成するノズル内流路部と、
前記ノズル内流路部に連通して前記ノズル内流路部内の前記クーラントを外部に噴射する噴射口と、を備える、
インサート着脱式ホルダ。
【請求項2】
前記第二位置決め部は、前記ボルトが締結される雌ネジ穴を備え、
前記第二係合部は、前記ボルトが挿通される挿通孔を備え、
前記ボルトは、前記第二方向の他方側から前記挿通孔を通して前記雌ネジ穴に締結される、
請求項1に記載のインサート着脱式ホルダ。
【請求項3】
前記第二係合部は、前記第二方向の他方側から一方側に向かって、内径が漸次縮小し、前記挿通孔に連なるテーパ面を有し、
前記ボルトの座面は、前記第二方向の他方側から一方側に向かって外径が漸次縮小するテーパ状とされ、
前記第一位置決め面に前記第一突き当たり面を突き当てた状態で、前記テーパ面の中心位置が、前記雌ネジ穴の中心位置よりも、前記第一方向の前記先端部側に偏心している、
請求項2に記載のインサート着脱式ホルダ。
【請求項4】
前記挿通孔は、前記第二方向から見た際に、周方向の一部が前記第一方向の前記基端部側に拡がる楕円弧状に形成されている、
請求項3に記載のインサート着脱式ホルダ。
【請求項5】
前記ホルダ本体は、前記ノズル内流路部に連通し、外部から供給される前記クーラントを前記ノズル内流路部に送り込むホルダ内流路部を更に備え、
前記ノズル内流路部は、
前記ホルダ内流路部に連通する導入流路部と、
前記導入流路部と前記噴射口とを接続する接続流路部と、を備え、
前記第三方向から見た際に、前記接続流路部は、前記テーパ面及び前記挿通孔に対して前記第二方向の他方側に形成され、
前記挿通孔及び前記雌ネジ穴に前記第二方向の他方側から前記ボルトを挿入するためのボルト案内孔が、前記第二方向の一方側から他方側に向かって、前記第三方向で前記接続流路部から離間する方向にオフセットしている、
請求項3又は4に記載のインサート着脱式ホルダ。
【請求項6】
前記接続流路部は、
前記導入流路部から前記第一方向の前記先端部側に延びる延伸部と、
前記延伸部から前記第一方向の前記先端部側に延び、前記噴射口に連通する連通部と、を有し、
前記連通部は、前記第二方向における流路高さが、前記第一方向の前記基端部側から前記先端部側に向かって漸次縮小する、
請求項5に記載のインサート着脱式ホルダ。
【請求項7】
前記連通部の前記第二方向の一方側の流路天井面は、前記第一方向の前記基端部側から前記先端部側に向かって、前記第二方向の他方側に湾曲する湾曲部を有している、
請求項6に記載のインサート着脱式ホルダ。
【請求項8】
前記湾曲部は、前記第二方向から見て、前記第一方向の前記先端部側に窪む円弧状に設けられ、前記第二方向の他方側に向かって、漸次拡径する、
請求項7に記載のインサート着脱式ホルダ。
【請求項9】
前記連通部は、前記第三方向における流路幅が、前記第一方向の前記基端部側から前記先端部側に向かって漸次拡大する、
請求項6に記載のインサート着脱式ホルダ。
【請求項10】
前記ボルトは、前記第一方向に間隔を空けて複数本備えられ、
複数本の前記ボルトのうち、最も前記第一方向の前記先端部側の前記ボルトは、前記連通部に対して前記第三方向の一方の側に配置され、
前記連通部は、最も前記第一方向の前記先端部側の前記ボルトに前記第一方向で重なる部分から、前記第一方向の前記先端部側に向かって、前記第三方向の一方側に拡がる、
請求項9に記載のインサート着脱式ホルダ。
【請求項11】
前記インサートは、前記第二方向から見て円弧状の切刃を有し、
前記噴射口は、前記第二方向から見て円弧状に設けられ、前記第二方向の一方側に向かって開口する、
請求項1又は2に記載のインサート着脱式ホルダ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インサート着脱式ホルダに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、工具を用いて旋削などの切削加工を行う場合、工具の切刃による切削部位に、クーラントを連続的に供給することが行われている。例えば、特許文献1には、切削インサートが固定される座面の周縁部に、クーラントを吐出させる吐出口が開口された構成の切削工具用ホルダが記載される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述したような、吐出させる吐出口から吐出されるクーラントを、切削インサートにおける切削部位に、なるべく均一に供給することが望まれる。
これに対し、加工上の理由等により、切削インサートが固定されるホルダ本体と、クーラントを吐出させる吐出口を有するノズルとが、別々の部品として製作されることがある。この場合、ホルダ本体に対し、ノズルを、精度よく組み付けることが望まれる。
【0005】
本発明は、上記事情に鑑み、ホルダ本体に対し、ノズルを高い位置精度で組み付け、切削インサートによる切削部位に対し、クーラントを、より均一に供給することができるインサート着脱式ホルダを提供することを目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のインサート着脱式ホルダの一つの態様は、切刃を有するインサートが先端部に着脱可能に装着されるホルダ本体と、クーラントを噴射するノズルと、前記ホルダ本体と前記ノズルとを接続するボルトと、を備え、前記ホルダ本体は、前記先端部において、前記ホルダ本体の前記先端部と基端部とを結ぶ第一方向に交差する第二方向の一方側に設けられ、前記インサートが装着可能な取付座と、前記先端部において前記取付座に対して前記第二方向の他方側に設けられ、前記第二方向から見て、前記第一方向に交差する第三方向における幅寸法が前記第一方向の前記基端部側から前記先端部側に向かって縮小または増大する第一位置決め面を有する第一位置決め部と、前記第一位置決め面に対して前記第二方向の他方側に設けられ、前記第二方向の他方側を向く平面状の第二位置決め面を有する第二位置決め部と、を備え、前記ノズルは、前記第二方向から見て、前記第三方向における幅寸法が前記第一方向の前記先端部側から前記基端部側に向かって増大または縮小し、前記第一位置決め面に対して前記第一方向の前記先端部側から突き当たる第一突き当たり面を有する第一係合部と、前記第二位置決め面に対して前記第二方向の他方側から突き当たる平面状の第二突き当たり面を有する第二係合部と、前記ノズル内に設けられ、クーラントの流路を形成するノズル内流路部と、前記ノズル内流路部に連通して前記ノズル内流路部内の前記クーラントを外部に噴射する噴射口と、を備える。
【0007】
本発明のインサート着脱式ホルダの一つの態様によれば、第一位置決め面は、第三方向における幅寸法が第一方向の基端部側から先端部側に向かって縮小または増大している。第一突き当たり面は、第三方向における幅寸法が第一方向の先端部側から基端部側に向かって増大または縮小している。これにより、第一位置決め部の第一位置決め面と、第一係合部の第一突き当たり面とを突き当てることで、ホルダ本体の第一方向の先端部とノズルとが、第一方向、及び第三方向において互いに位置決めされる。
また、第二位置決め部の平面状の第二位置決め面と、第二係合部の平面状の第二突き当たり面とを互いに突き当てることで、ノズルがホルダ本体に対して第二方向において位置決めされる。
さらに、ボルトで、ホルダ本体とノズルとを接続することによって、ノズルがホルダ本体に対して強固に固定される。
このようにして、クーラントの噴射口を、ホルダ本体の先端部に設けられた取付座に装着されるインサートに対し、高い位置精度で配置することができる。その結果、ホルダ本体に対し、ノズルを高い位置精度で組み付け、切削インサートによる切削部位に対し、クーラントを、より均一に供給することができる。
【0008】
上記インサート着脱式ホルダにおいて、前記第二位置決め部は、前記ボルトが締結される雌ネジ穴を備え、前記第二係合部は、前記ボルトが挿通される挿通孔を備え、前記ボルトは、前記第二方向の他方側から前記挿通孔を通して前記雌ネジ穴に締結されるようにしてもよい。
【0009】
この場合、ボルトが、第二係合部の挿通孔を通して、第二位置決め部の雌ネジ孔に締結される。これにより、第二位置決め部の平面状の第二位置決め面と、第二係合部の平面状の第二突き当たり面とを互いに突き当てた状態で、ノズルがホルダ本体に対して強固に固定される。
【0010】
上記インサート着脱式ホルダにおいて、前記第二係合部は、前記第二方向の他方側から一方側に向かって、内径が漸次縮小し、前記挿通孔に連なるテーパ面を有し、前記ボルトの座面は、前記第二方向の他方側から一方側に向かって外径が漸次縮小するテーパ状とされ、前記第一位置決め面に前記第一突き当たり面を突き当てた状態で、前記テーパ面の中心位置が、前記雌ネジ穴の中心位置よりも、前記第一方向の前記先端部側に偏心しているようにしてもよい。
【0011】
この場合、ボルトを、第二係合部の挿通孔を通して、第二位置決め部の雌ネジ孔に締結する際、ボルトの座面が、テーパ面に突き当たる。第一位置決め面に第一突き当たり面を突き当てた状態で、テーパ面の中心位置が、雌ネジ穴の中心位置よりも、第一方向の先端部側に偏心しているので、ボルトを締め込むと、ボルトの座面がテーパ面において第一方向の基端部側の部分に突き当たる。これにより、ノズルが、第一方向の基端部側に押圧され、第一係合部が第一位置決め部に密着するので、ノズルが、ホルダ本体に対して、より強固に位置決め固定される。
【0012】
上記インサート着脱式ホルダにおいて、前記挿通孔は、前記第二方向から見た際に、周方向の一部が前記第一方向の前記基端部側に拡がる楕円弧状に形成されているようにしてもよい。
【0013】
この場合、挿通孔の周方向の一部が第一方向の基端部側に拡がる楕円弧状に形成されることで、第一方向の先端部側に中心位置が偏心しているテーパ面にボルトの座面が突き当たる際、ボルトの軸部が挿通孔に干渉するのを抑えることができる。
【0014】
上記インサート着脱式ホルダにおいて、前記ホルダ本体は、前記ノズル内流路部に連通し、外部から供給される前記クーラントを前記ノズル内流路部に送り込むホルダ内流路部を更に備え、前記ノズル内流路部は、前記ホルダ内流路部に連通する導入流路部と、前記導入流路部と前記噴射口とを接続する接続流路部と、を備え、前記第三方向から見た際に、前記接続流路部は、前記テーパ面及び前記挿通孔に対して前記第二方向の他方側に形成され、前記挿通孔及び前記雌ネジ穴に前記第二方向の他方側から前記ボルトを挿入するためのボルト案内孔が、前記第二方向の一方側から他方側に向かって、前記第三方向で前記接続流路部から離間する方向にオフセットしているようにしてもよい。
【0015】
この場合、ホルダ内流路部から送り込まれるクーラントは、ノズル内流路部の導入流路部から、接続流路部を経て、噴射口に至る。挿通孔及び雌ネジ穴にボルトを挿入するためのボルト案内孔が、第二方向の一方側から他方側に向かって、第三方向で接続流路部から離間する方向にオフセットしているので、ボルト案内孔によって、接続流路部の第三方向における幅寸法が狭められるのを抑えることができる。これにより、接続流路部におけるクーラントの流路断面積を、大きく確保することができる。
【0016】
上記インサート着脱式ホルダにおいて、前記接続流路部は、前記導入流路部から前記第一方向の前記先端部側に延びる延伸部と、前記延伸部から前記第一方向の前記先端部側に延び、前記噴射口に連通する連通部と、を有し、前記連通部は、前記第二方向における流路高さが、前記第一方向の前記基端部側から前記先端部側に向かって漸次縮小するようにしてもよい。
【0017】
この場合、クーラントは、導入流路部から、接続流路部の延伸部、連通部を順次経て、噴射口へと至る。連通部は、第二方向における流路高さが、第一方向の基端部側から先端部側に向かって漸次縮小するため、クーラントの流路は、噴射口の手前で第二方向に絞られる。これにより、クーラントを、第二方向に絞られた流路を経て、噴射口から勢いよく噴射させることができる。
【0018】
上記インサート着脱式ホルダにおいて、前記連通部の前記第二方向の一方側の流路天井面は、前記第一方向の前記基端部側から前記先端部側に向かって、前記第二方向の他方側に湾曲する湾曲部を有しているようにしてもよい。
【0019】
この場合、連通部を流れるクーラントは、天井面の湾曲部に沿って、第一方向の基端部側から先端部側に向かって、第二方向の他方側にスムーズに案内されていく。これにより、クーラントの流れに生じる損失を抑え、クーラントを噴射口から勢いよく噴射させることができる。
【0020】
上記インサート着脱式ホルダにおいて、前記湾曲部は、前記第二方向から見て、前記第一方向の前記先端部側に窪む円弧状に設けられ、前記第二方向の他方側に向かって、漸次拡径するようにしてもよい。
【0021】
この場合、湾曲部が、第一方向の先端部側に窪む円弧状であり、しかも、第二方向の他方側に向かって漸次拡径している。このため、湾曲部によって第二方向の他方側に順次案内されるクーラントの流れを、連通部から円弧状の噴出口に向けて第三方向にスムーズに拡げていくことができる。
【0022】
上記インサート着脱式ホルダにおいて、前記連通部は、前記第三方向における流路幅が、前記第一方向の前記基端部側から前記先端部側に向かって漸次拡大するようにしてもよい。
【0023】
この場合、連通部から、円弧状の噴出口に向けて、クーラントの流れを第三方向にスムーズに拡げていくことができる。
【0024】
上記インサート着脱式ホルダにおいて、前記ボルトは、前記第一方向に間隔を空けて複数本備えられ、複数本の前記ボルトのうち、最も前記第一方向の前記先端部側の前記ボルトは、前記連通部に対して前記第三方向の一方の側に配置され、前記連通部は、最も前記第一方向の前記先端部側の前記ボルトに前記第一方向で重なる部分から、前記第一方向の前記先端部側に向かって、前記第三方向の一方側に拡がるようにしてもよい。
【0025】
この場合、連通部は、連通部に対して第三方向の一方の側に配置されたボルトを避けつつ、ボルトに第一方向で重なる部分から、第一方向の先端部側に向かって、第三方向の一方側に拡がることで、クーラントを円弧状の噴出口の全体にわたって、より均一に供給することができる。
【0026】
上記インサート着脱式ホルダにおいて、前記インサートは、前記第二方向から見て円弧状の切刃を有し、前記噴射口は、前記第二方向から見て円弧状に設けられ、前記第二方向の一方側に向かって開口するようにしてもよい。
【0027】
この場合、円弧状の切刃の逃げ面に対して、円弧状の噴射口から、クーラントを、より均一に噴射することができる。
【発明の効果】
【0028】
本発明の一つの態様のインサート着脱式ホルダによれば、ホルダ本体に対し、ノズルを高い位置精度で組み付け、切削インサートによる切削部位に対し、クーラントを、より均一に供給することができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【
図1】本発明の一実施形態のインサート着脱式切削工具を示す斜視図である。
【
図2】本発明の一実施形態のインサート着脱式ホルダを工具軸方向の先端部側から見た図である。
【
図3】本発明の一実施形態のインサート着脱式ホルダを上下方向の下側から見た図である。
【
図4】本発明の一実施形態のインサート着脱式切削工具の部品構成を示す斜視展開図である。
【
図5】本発明の一実施形態のインサート着脱式切削工具のホルダ本体の一部を、上下方向の下側から見た図である。
【
図6】本発明の一実施形態のインサート着脱式切削工具のノズルを、工具幅方向の一方側から見た図である。
【
図7】本発明の一実施形態のインサート着脱式切削工具のノズルを、上下方向の上側から見た図である。
【
図8】本発明の一実施形態のインサート着脱式切削工具のノズルのホルダ本体に対する取付構造を示す図であり、
図3のA-A矢視断面図である。
【
図9】本発明の一実施形態のインサート着脱式切削工具のノズルのホルダ本体に対する取付構造を示す図であり、
図3のB-B矢視断面図である。
【
図10】本発明の一実施形態のインサート着脱式切削工具のノズルのホルダ本体に対する取付構造を示す図であり、
図9のC-C矢視断面図である。
【
図11】本発明の一実施形態のインサート着脱式切削工具のノズルを示す図であり、
図6のD-D矢視断面図である。
【
図12】本発明の一実施形態のインサート着脱式切削工具のノズルを示す図であり、
図6のE-E矢視断面図である。
【
図13】本発明の一実施形態のインサート着脱式切削工具のノズルを示す図であり、
図6のF-F矢視断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、本発明の一実施形態のインサート着脱式ホルダの一例を備えたインサート着脱式切削工具1について、図面を参照して説明する。
【0031】
〔インサート着脱式切削工具の概略構成〕
図1~
図4に示すように、このインサート着脱式切削工具1は、ホルダ(インサート着脱式ホルダ)10と、ホルダ10に装着されるインサート100とを備えている。
ホルダ10は、ホルダ本体20と、ノズル30と、ボルト91と、を備えている。
【0032】
〔ホルダ本体の構成〕
ホルダ本体20は、基端部20bと、先端部20sと、を備えている。ホルダ本体20の基端部20bは、インサート100を用いた旋削などの切削加工を行う工作機械に保持される。基端部20bには、上面21Aと、下面21Bと、第一側面21Cと、第二側面21Dと、後端面21Eと、が設けられる。先端部20sには、インサート100が着脱可能に取り付けられる取付座22が設けられる。
【0033】
以下の説明では、ホルダ本体20において、基端部20bと先端部20sとを結ぶ第一方向を工具軸方向Xとする。また、ホルダ本体20において、工具軸方向Xに直交し、上面21Aと下面21Bとを結ぶ第二方向を上下方向Zとし、上下方向Zにおいて上面21A側を上側(第二方向の一方側、+Z側)、上下方向Zにおいて下面21B側を下側(第二方向の他方側、-Z側)とする。また、ホルダ本体20において、工具軸方向X、及び上下方向Zに直交し、第一側面21Cと第二側面21Dとを結ぶ第三方向を工具幅方向Yとし、工具幅方向Yにおいて第一側面21C側を一方側、第二側面21D側を他方側とする。
【0034】
ホルダ本体20の基端部20bは、工具軸方向Xに延びる直方体状に形成されている。基端部20bは、工作機械の工具保持部に保持される。
【0035】
ホルダ本体20の先端部20sには、上下方向Zの中間部に、取付基部25が設けられる。取付基部25は、工具軸方向Xの先端部20s側に突出している。取付基部25の先端面25fは、上下方向Zからみて円弧状に設けられる。
【0036】
取付座22は、ホルダ本体20の先端部20sにおいて、上下方向Zの上側に設けられる。取付座22は、取付基部25に対して上下方向Zの上側に設けられる。取付座22は、一対の支持壁22A、22Bを有している。一対の支持壁22A、22Bは、工具幅方向Yに間隔をあけて設けられる。一対の支持壁22A、22Bは、取付基部25から上下方向Zの上側に突出する。一対の支持壁22A、22Bは、工具軸方向Xと平行に連続して延びている。
【0037】
ホルダ本体20の先端部20sには、取付座22に対して工具軸方向Xの基端部20b側に、上部傾斜面21Sが設けられる。上部傾斜面21Sは、工具軸方向Xの先端部20s側から基端部20b側に向かって、上下方向Zの下側から上側に傾斜し、上面21Aに連続する。
【0038】
〔第一位置決め部の構成〕
図1、
図4、
図5に示すように、ホルダ本体20の先端部20sには、取付座22に対して上下方向Zの下側に、第一位置決め部40が設けられる。第一位置決め部40は、第一位置決め面41を有する。第一位置決め面41は、工具軸方向Xの先端部20s側を向く。第一位置決め面41は、工具幅方向Yにおける幅寸法が工具軸方向Xの基端部20b側から先端部20s側に向かって縮小または増大する。第一位置決め面41は、一対の傾斜面42を有する。一対の傾斜面42は、工具幅方向Yに間隔をあけて設けられる。一対の傾斜面42は、本実施形態において、工具幅方向Yにおける互いの距離が、工具軸方向Xの基端部20b側から先端部20s側に向かって漸次縮小する。これにより、第一位置決め面41は、工具幅方向Yにおける幅寸法が工具軸方向Xの基端部20b側から先端部20s側に向かって漸次縮小する。すなわち、第一位置決め面41は、上下方向Zから見て、工具軸方向Xの先端部20s側に突出するV字状に設けられる。第一位置決め部40は、このような第一位置決め面41により、上下方向Zから見て工具軸方向Xの先端部20s側にV字状に突出する凸部43を有する。
【0039】
〔第二位置決め部の構成〕
ホルダ本体20の先端部20sには、第一位置決め部40に対して上下方向Zの下側に、第二位置決め部50が設けられる。第二位置決め部50は、上下方向Zの下側を向く平面状の第二位置決め面51を有する。第二位置決め面51は、凸部43に対して工具軸方向Xの基端部20b側に設けられる。第二位置決め面51は、上下方向Zに直交する面に沿う。
図5に示すように、第二位置決め面51には、雌ネジ穴52、53が設けられる。雌ネジ穴52、53は、第二位置決め面51に対して直交し、上下方向Zに延びて設けられる。本実施形態において、雌ネジ穴52、53は、工具軸方向Xに間隔をあけて2箇所に設けられる。雌ネジ穴52、53のうち、工具軸方向Xの先端部20s側の雌ネジ穴52は、工具幅方向Yの一方側に配置される。工具軸方向Xの基端部20b側の雌ネジ穴53は、工具幅方向Yの他方側に配置される。
【0040】
〔クーラント流路の構成〕
図1に示すように、ホルダ本体20内には、ホルダ内流路部80A、80Bが設けられる。ホルダ内流路部80Aは、工具軸方向Xに延びる。ホルダ内流路部80Aは、流入口81Aを有する。流入口81Aは、例えば、後端面21Eに開口する。ホルダ内流路部80Bは、上下方向Zに延びる。ホルダ内流路部80Bは、流入口81Bを有する。流入口81Bは、例えば、下面21Bに開口する。ホルダ内流路部80A、80Bは、流入口81A、81Bにそれぞれ接続されるクーラント供給配管(図示無し)を通して、外部から液状のクーラントが送給される。
【0041】
ホルダ内流路部80Aは、第二位置決め面51に開口する接続開口82を有している。ノズル30とホルダ本体20の第二位置決め面51との間には、Oリング(図示無し)が挟み込まれる。このため、例えば、第二位置決め面51には、接続開口82の外周部に、Oリング(図示無し)を収容する収容溝83が形成される。
図5に示すように、本実施形態において、接続開口82は、工具軸方向Xにおいて、2つの雌ネジ穴52、53の間に配置される。
【0042】
〔ノズルの構成〕
ノズル30は、ホルダ本体20に対して上下方向Zの下側に取り付けられる。ノズル30は、例えば、3Dプリンタを用いた金属積層造形法によって形成される。
図6~
図9に示すように、ノズル30は、ノズル端部31Aと、ノズル延出部31Bと、ノズル部31Cと、ノズル内流路部70(
図8参照)と、を有する。
【0043】
ノズル端部31Aは、ノズル30において工具軸方向Xの先端部20s側に設けられる。ノズル端部31Aは、ノズル延出部31Bに対して上下方向Zの上側に突出する。ノズル端部31Aは、第一係合部32と、前壁面31gと、を有する。
【0044】
図7に示すように、第一係合部32は、第一突き当たり面34を有する。第一突き当たり面34は、工具軸方向Xの基端部20b側を向く。第一突き当たり面34は、工具幅方向Yにおける幅寸法が工具軸方向Xの先端部20s側から基端部20b側に向かって縮小または増大する。第一突き当たり面34は、一対の傾斜面34sを有する。一対の傾斜面34sは、工具幅方向Yに間隔をあけて設けられる。一対の傾斜面34sは、本実施形態において、工具幅方向Yにおける互いの距離が、工具軸方向Xの先端部20s側から基端部20b側に向かって漸次増大する。第一突き当たり面34は、第一位置決め面41と平行に、工具幅方向Yにおける幅寸法が工具軸方向Xの先端部20s側から基端部20b側に向かって漸次増大する。すなわち、第一突き当たり面34は、上下方向Zから見て、工具軸方向Xの先端部20s側に窪むV字状に設けられる。第二位置決め部50は、このような第一突き当たり面34により、上下方向Zから見て工具軸方向Xの先端部20sにV字状に窪む凹部36を有する。
【0045】
図1、
図8、
図9に示すように、第一位置決め部40の第一位置決め面41と、第一係合部32の第一突き当たり面34とを係合させることで、ホルダ本体20の工具軸方向Xの先端部20sとノズル30とが、工具幅方向Y、及び工具軸方向Xにおいて互いに位置決めされる。
【0046】
前壁面31gは、ノズル端部31Aにおいて、工具軸方向Xの先端部20s側を向く。
図7に示すように、前壁面31gは、上下方向Zから見て、後述する噴出口75に沿った円弧状に設けられる。
【0047】
図6~
図9に示すように、ノズル延出部31Bは、ノズル端部31Aの下端部から、第二位置決め面51に沿って工具軸方向Xの基端部20b側に延びる。ノズル延出部31Bは、工具軸方向Xに直交する断面形状が矩形状である。ノズル延出部31Bには、第二係合部33が設けられる。第二係合部33は、第二突き当たり面35を有する。第二突き当たり面35は、平面状で、上下方向Zの上側を向く。第二突き当たり面35は、第二位置決め部50の第二位置決め面51に対して上下方向Zの下方から突き当たる。
【0048】
図1、
図8、
図9に示すように、第二位置決め部50の第二位置決め面51と、第二係合部33の第二突き当たり面35とを互いに突き当てることで、ノズル30が、ホルダ本体20に対して上下方向Zにおいて互いに位置決めされる。
【0049】
図7~
図10に示すように、ノズル延出部31Bには、挿通孔37が設けられる。本実施形態において、挿通孔37は、工具軸方向Xに間隔をあけて2箇所に設けられる。
図8~
図10に示すように、ノズル延出部31Bには、ボルト案内孔38が形成されている。ボルト案内孔38は、ノズル延出部31Bにおいて、上下方向Zの下側の下面31bから上方に窪む。ボルト案内孔38は、挿通孔37及び雌ネジ穴52、53にボルト91を案内する。
図10に示すように、ボルト案内孔38は、上下方向Zの上側から下側に向かって、工具幅方向Yで接続流路部72から離間する方向にオフセットする。
【0050】
ボルト案内孔38及び挿通孔37は連通し、ノズル延出部31Bを上下方向Zに貫通する。ボルト案内孔38と挿通孔37との間には、テーパ面39が設けられる。テーパ面39は、挿通孔37に連なり、上下方向Zの下側から上側に向かって、内径が漸次縮小する。
図8、
図9に示すように、テーパ面39の中心位置C1は、第一位置決め面41に第一突き当たり面34を突き当てた状態で、雌ネジ穴52、53の中心位置C2よりも、工具軸方向Xの先端部20s側に偏心する。また、
図7に示すように、挿通孔37は、上下方向Zから見た際に、周方向の一部37wが工具軸方向Xの基端部20b側に拡がる楕円弧形状に設けられる。
【0051】
各挿通孔37には、ボルト91が挿通される。ボルト91は、挿通孔37を通して、第二位置決め面51に設けられた雌ネジ穴52、53に締結される。ノズル延出部31Bは、ボルト91によって第二位置決め面51に固定される。ボルト91の頭部の座面91aは、上下方向Zの下側から上側に向かって外径が漸次縮小するテーパ状とされる。ボルト91を、第二係合部33の挿通孔37を通して、第二位置決め部50の雌ネジ穴52、53に締結する際、ボルト91の座面91aが、テーパ面39に突き当たる。テーパ面39の中心位置C1が、雌ネジ穴52、53の中心位置C2よりも、工具軸方向Xの先端部20s側に偏心しているので、第一突き当たり面34を第一位置決め面41に突き当てた状態で、ボルト91を締め込むと、ボルト91の座面91aがテーパ面39において工具軸方向Xの基端部20b側の部分に突き当たる。これにより、ノズル30が、工具軸方向Xの基端部20b側に押圧され、第一係合部32が第一位置決め部40に密着する。また、挿通孔37の周方向の一部37wが工具軸方向Xの基端部20b側に拡がる楕円弧形状に形成されることで、工具軸方向Xの先端部20s側に中心位置C1が偏心しているテーパ面39にボルト91の座面91aが突き当たる際、ボルト91の軸部が挿通孔37に干渉することが抑えられる。
【0052】
図1、
図8に示すように、ノズル部31Cは、ノズル端部31Aの下部から工具軸方向Xの先端部20s側に突出する。ノズル部31Cの先端形状は、上下方向Zから見て円弧状に設けられる。ノズル部31Cは、ノズル面31fと、噴出口75と、を有する。ノズル面31fは、前壁面31gの下端から工具軸方向Xの先端部20s側に延びている。ノズル面31fは、上下方向Zの上側を向く。
【0053】
噴出口75は、ノズル面31fに設けられる。
図7に示すように、噴出口75は、上下方向Zから見て、ノズル部31Cの先端形状に沿って、円弧状に連続して設けられる。噴出口75は、ノズル面31fにおいて、上下方向Zの上方を向いて開口する。
【0054】
図8、
図9、
図11~
図13に示すように、ノズル内流路部70は、ノズル30内に設けられ、クーラントの流路を形成する。ノズル内流路部70は、ノズル延出部31B、及びノズル部31Cにわたって設けられる。
図8に示すように、ノズル内流路部70は、導入流路部71と、接続流路部72と、を備える。
【0055】
導入流路部71は、ホルダ内流路部80Aに連通する。導入流路部71は、ノズル内流路部70に連通するノズル側開口77を有する。ノズル側開口77は、第二位置決め面51に設けられた接続開口82と対向する位置に設けられる。導入流路部71は、ノズル側開口77から、上下方向Zに延びる。
【0056】
図8~
図10に示すように、接続流路部72は、工具幅方向Yから見た際に、テーパ面39及び挿通孔37に対して上下方向Zの下側に形成される。ここで、
図10に示すように、導入流路部71に対して、工具軸方向Xで重なる位置のボルト案内孔38は、上下方向Zの上側から下側に向かって、工具幅方向Yで接続流路部72から離間する方向にオフセットする。このため、導入流路部71を、工具幅方向Yに拡げ、その流路断面積を大きく確保する。
【0057】
接続流路部72は、導入流路部71と噴出口75とを接続する。接続流路部72は、工具軸方向Xに沿って延びる。
図8、
図11~
図13に示すように、接続流路部72は、延伸部73と、連通部74と、を有する。延伸部73は、導入流路部71から工具軸方向Xの先端部20s側に延びる。
【0058】
連通部74は、延伸部73から工具軸方向Xの先端部20s側に延び、噴出口75に連通する。
図8に示すように、連通部74の上下方向Zの上側の流路天井面74tは、工具軸方向Xの基端部20b側から先端部20s側に向かって、上下方向Zの下側に湾曲する湾曲部74wを有している。これにより、連通部74は、上下方向Zにおける流路高さが、工具軸方向Xの基端部20b側から先端部20s側に向かって漸次縮小する。
図11、
図12に示すように、湾曲部74wは、上下方向Zから見て、工具軸方向Xの先端部20s側に窪む円弧状に設けられる。この湾曲部74wは、上下方向Zの下側に向かって、その曲率半径が漸次拡径する。
【0059】
また、連通部74は、工具幅方向Yにおける流路幅が、工具軸方向Xの基端部20b側から先端部20s側に向かって漸次拡大し、上下方向Zから見た際に扇状に設けられる。ここで、複数本のボルト91のうち、最も工具軸方向Xの先端部20s側のボルト91は、連通部74に対して工具幅方向Yの一方の側に配置される。連通部74は、工具幅方向Yから見た際に、最も工具軸方向Xの先端部20s側のボルト91が挿通されるボルト案内孔38に工具軸方向Xで重なる部分から、工具軸方向Xの先端部20s側に向かって、工具幅方向Yの一方側に拡がる。つまり、連通部74は、上下方向Zから見た際に、最も工具軸方向Xの先端部20s側のボルト91を迂回するように、このボルト91よりも工具軸方向Xの先端部20s側で、工具幅方向Yの一方側に拡がる。
【0060】
図8に示すように、連通部74の上下方向Zの下側の流路底面74dは、工具軸方向Xに延びている。これにより、連通部74は、湾曲部74wの下端74xと、流路底面74dとの間で、工具幅方向Yから見た際の流路高さが最小とされた、喉部74sを有している。
図8、
図13に示すように、連通部74は、この喉部74sを介して、噴出口75に連通する。
【0061】
ホルダ本体20に設けられたホルダ内流路部80からノズル側開口77を経てノズル30のノズル内流路部70に流れてきたクーラントは、導入流路部71を経て接続流路部72に流入する。接続流路部72において、クーラントは、工具幅方向Yから見た際に、流路天井面74tの湾曲部74wに沿って、工具軸方向Xの先端部20s側に向かって、上下方向Zの上側から下側に、斜め下方に案内される。一方、クーラントは、上下方向Zから見ると、上下方向Zの上方から下方に向かって漸次拡径する湾曲部74wに沿って、湾曲部74wの周方向(工具幅方向Y)に漸次拡がる。また、クーラントは、連通部74において、最も工具軸方向Xの先端部20s側のボルト91よりも工具軸方向Xの先端部20s側で、工具幅方向Yの一方側に拡がる。このようにして工具幅方向Yに拡がったクーラントは、湾曲部74wの下端74xと流路底面74dの間の喉部74sを通って、噴出口75に至り、噴出口75から上下方向Zの上側に向かって噴射される。
【0062】
〔インサートの構成〕
図1~
図4に示すように、インサート100は、取付座22に取り付けた状態で上下方向Zの上方から見ると、円形状に設けられる。インサート100の上面100tは、上下方向Zの上側を向く。上面100tの外周部には、上下方向Zから見て円弧状の切刃101が設けられる。本実施形態において、切刃101は、上面100tの全周にわたって円形状に設けられる。
【0063】
図2に示すように、インサート100は、大径部102と、小径部103と、を有する。大径部102は、インサート100の上下方向Zの上側に設けられる。大径部102は、上下方向Zの上側から下側に向かって、外径寸法が漸次縮小する。小径部103は、大径部102の下側に設けられる。小径部103は、大径部102よりも外径が小さい。小径部103は、上下方向Zの上側から下側に向かって、外径寸法が漸次縮小する。
【0064】
大径部102と小径部103との間には、上下方向Zの上側から下側に向かって、外径寸法が縮小する段部104が設けられる。段部104の外周面には、複数の位置決め凹部105が設けられる。位置決め凹部105は、段部104に設けられる。位置決め凹部105は、段部104に、径方向内側に窪むように設けられる。位置決め凹部105は、上下方向Zから見て、例えば、互いに直交する四方を向いて設けられる。
【0065】
インサート100は、インサート100の中心を挟んで対向する一対の位置決め凹部105に、取付座22の一対の支持壁22A、22Bの上端を下方から突き当てることで、インサート100の中心軸回りの回転が拘束される。
【0066】
上記したようなインサート着脱式切削工具1では、ホルダ本体20の基端部20bを工作機械に取り付けた状態で、取付座22に取り付けたインサート100によって溝などを形成するための切削加工を行う。ホルダ内流路部80には、流入口81A、81Bに接続されるクーラント供給配管(図示無し)を通して、外部から液状のクーラントが送給される。ホルダ内流路部80に送給されたクーラントは、接続開口82、ノズル側開口77を通してノズル内流路部70に流入し、噴出口75から上下方向Zの上側に向けて噴射される。噴出口75は、上下方向Zから見て円弧状であるので、インサート100の円弧状の切刃101による切削部位に対して、クーラントが円弧状に噴射される。このとき、取付基部25の先端面25fが、円弧状に設けられるので、噴出口75から噴射されるクーラントの妨げになることが抑えられる。
【0067】
〔本実施形態による作用効果〕
以上説明した本実施形態のホルダ(インサート着脱式ホルダ)10によれば、第一位置決め面41は、工具幅方向Yにおける幅寸法が工具軸方向Xの基端部20b側から先端部20s側に向かって縮小または増大している。第一突き当たり面34は、工具幅方向Yにおける幅寸法が工具軸方向Xの先端部20s側から基端部20b側に向かって増大または縮小している。これにより、第一位置決め部40の第一位置決め面41と、第一係合部32の第一突き当たり面34とを突き当てることで、ホルダ本体20の工具軸方向Xの先端部20sとノズル30とが、工具軸方向X、及び工具幅方向Yにおいて互いに位置決めされる。
また、第二位置決め部50の平面状の第二位置決め面51と、第二係合部33の平面状の第二突き当たり面35とを互いに突き当てることで、ノズル30がホルダ本体20に対して上下方向Zにおいて位置決めされる。
さらに、ボルト91で、ホルダ本体20とノズル30とを接続することによって、ノズル30がホルダ本体20に対して強固に固定される。
このようにして、クーラントの噴出口75を、ホルダ本体20の先端部20sに設けられた取付座22に装着されるインサート100に対し、高い位置精度で配置することができる。その結果、ホルダ本体20に対し、ノズル30を高い位置精度で組み付け、インサート100による切削部位に対し、クーラントを、より均一に供給することができる。
【0068】
また本実施形態では、ボルト91が、第二係合部33の挿通孔37を通して、第二位置決め部50の雌ネジ穴52、53に締結される。これにより、第二位置決め部50の平面状の第二位置決め面51と、第二係合部33の平面状の第二突き当たり面35とを互いに突き当てた状態で、ノズル30がホルダ本体20に対して強固に固定される。
【0069】
また本実施形態では、ボルト91を、第二係合部33の挿通孔37を通して、第二位置決め部50の雌ネジ穴52、53に締結する際、ボルト91の座面91aが、テーパ面39に突き当たる。第一位置決め面41に第一突き当たり面34を突き当てた状態で、テーパ面39の中心位置C1が、雌ネジ穴52、53の中心位置C2よりも、工具軸方向Xの先端部20s側に偏心しているので、ボルト91を締め込むと、ボルト91の座面91aがテーパ面39において工具軸方向Xの基端部20b側の部分に突き当たる。これにより、ノズル30が、工具軸方向Xの基端部20b側に押圧され、第一係合部32が第一位置決め部40に密着するので、ノズル30が、ホルダ本体20に対して、より強固に位置決め固定される。
【0070】
また本実施形態では、挿通孔37の周方向の一部37wが工具軸方向Xの基端部20b側に拡がる楕円弧状に形成されることで、工具軸方向Xの先端部20s側に中心位置C1が偏心しているテーパ面39にボルト91の座面91aが突き当たる際、ボルト91の軸部が挿通孔37に干渉するのを抑えることができる。
【0071】
また本実施形態では、ホルダ内流路部80Aから送り込まれるクーラントは、ノズル内流路部70の接続流路部72から、接続流路部72を経て、噴出口75に至る。挿通孔37及び雌ネジ穴52、53にボルト91を挿入するためのボルト案内孔38が、上下方向Zの上側から下側に向かって、工具幅方向Yで接続流路部72から離間する方向にオフセットしているので、ボルト案内孔38によって、接続流路部72の工具幅方向Yにおける幅寸法を狭めるのを抑えることができる。これにより、接続流路部72におけるクーラントの流路断面積を、大きく確保することができる。
【0072】
また本実施形態では、円弧状の切刃101の逃げ面に対して、円弧状の噴出口75から、クーラントを、より均一に噴射することができる。
【0073】
また本実施形態では、クーラントは、導入流路部71から、接続流路部72の延伸部73、連通部74を順次経て、噴出口75へと至る。連通部74は、上下方向Zにおける流路高さが、工具軸方向Xの基端部20b側から先端部20s側に向かって漸次縮小するため、クーラントの流路は、噴出口75の手前で上下方向Zに絞られるようになる。これにより、クーラントを、上下方向Zに絞られた流路を経て、噴出口75から勢いよく噴射させることができる。
【0074】
また本実施形態では、連通部74を流れるクーラントは、流路天井面74tの湾曲部74wに沿って、工具軸方向Xの基端部20b側から先端部20s側に向かって、上下方向Zの下側にスムーズに案内されていく。これにより、クーラントを、噴出口75の全体にわたって均一に拡げ、噴出口75から勢いよく噴射させることができる。
【0075】
また本実施形態では、湾曲部74wが、工具軸方向Xの先端部20s側に窪む円弧状であり、しかも、上下方向Zの下側に向かって漸次拡径している。このため、湾曲部74wによって上下方向Zの下側に順次案内されるクーラントの流れを、連通部74から円弧状の噴出口75に向けて工具幅方向Yにスムーズに拡げていくことができる。
【0076】
また本実施形態では、連通部74は、工具幅方向Yにおける流路幅が、工具軸方向Xの基端部20b側から先端部20s側に向かって漸次拡大する。これにより、連通部74から、円弧状の噴出口75に向けて、クーラントの流れを工具幅方向Yにスムーズに拡げていくことができる。
【0077】
また本実施形態では、連通部74は、連通部74に対して工具幅方向Yの一方の側に配置されたボルト91を避けつつ、ボルト91に工具軸方向Xで重なる部分から、工具軸方向Xの先端部20s側に向かって、工具幅方向Yの一方側に拡がることで、クーラントを円弧状の噴出口75の全体にわたって、より均一に供給することができる。
【0078】
また本実施形態では、ノズル30を3Dプリンタで製造することで、通常の金型を用いた鋳造や機械加工では製造が困難な、ノズル内流路部70を内部に有したノズル30を容易に製作することができる。
【0079】
〔本発明に含まれるその他の構成〕
なお、本発明は前述の実施形態に限定されず、例えば下記に説明するように、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において構成の変更等が可能である。
【0080】
前述の実施形態では、ホルダ本体20、ノズル30の具体的な構成の例を挙げたが、これに限らない。ホルダ本体20やノズル30の形状、各部の構成は、適宜変更可能である。
【0081】
前述の実施形態では、インサート100の構成の例を挙げたが、これに限らない。インサート100自体の形状や各部の構成、インサート100のホルダ本体20に対する取付構造等は適宜変更してもよい。
【0082】
その他、本発明の趣旨から逸脱しない範囲において、前述の実施形態、変形例およびなお書き等で説明した各構成(構成要素)を組み合わせてもよく、また、構成の付加、省略、置換、その他の変更が可能である。また本発明は、前述した実施形態によって限定されず、特許請求の範囲によってのみ限定される。
【符号の説明】
【0083】
10…ホルダ(インサート着脱式ホルダ)
20…ホルダ本体
20b…基端部
20s…先端部
22…取付座
30…ノズル
31C…ノズル部
32…第一係合部
33…第二係合部
34…第一突き当たり面
35…第二突き当たり面
37…挿通孔
37w…一部
38…ボルト案内孔
39…テーパ面
40…第一位置決め部
41…第一位置決め面
50…第二位置決め部
51…第二位置決め面
52…雌ネジ穴
53…雌ネジ穴
70…ノズル内流路部
71…導入流路部
72…接続流路部
73…延伸部
74…連通部
74t…流路天井面
74w…湾曲部
75…噴出口
80A…ホルダ内流路部
91…ボルト
91a…座面
100…インサート
101…切刃
C1…中心位置
C2…中心位置
X…工具軸方向(第一方向)
Y…工具幅方向(第三方向)
Z…上下方向(第二方向)
+Z側…上側(第二方向の一方側)
-Z側…下側(第二方向の他方側)
【手続補正書】
【提出日】2023-08-23
【手続補正1】
【補正対象書類名】図面
【補正方法】変更
【補正の内容】
【手続補正2】
【補正対象書類名】図面
【補正方法】変更
【補正の内容】