(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024030929
(43)【公開日】2024-03-07
(54)【発明の名称】構真柱
(51)【国際特許分類】
E02D 29/05 20060101AFI20240229BHJP
【FI】
E02D29/05 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022134168
(22)【出願日】2022-08-25
(71)【出願人】
【識別番号】000002299
【氏名又は名称】清水建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100161506
【弁理士】
【氏名又は名称】川渕 健一
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 和純
(72)【発明者】
【氏名】久保山 寛之
(72)【発明者】
【氏名】中川 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】島崎 大
【テーマコード(参考)】
2D147
【Fターム(参考)】
2D147AB04
(57)【要約】
【課題】コンクリートの充填率を向上させることができる構真柱を提供する。
【解決手段】構真柱1は、上下方向を軸線O1方向として延びる上側鋼管部11を有する上側構真柱部10と、上側鋼管部11の下側に連続して配置され、上下方向を軸線O1方方向として延びる中間鋼管部21と、中間鋼管部21の内部に配置された中間鉄骨部26と、を有する中間構真柱部20と、中間鋼管部21の下側に連続して配置された複数の側壁プレート部32と、側壁プレート部32から平面視中央側に延びる中央プレート部33と、を有する下側鉄骨部31を有する下側構真柱部30と、中間構真柱部20と下側構真柱部30との間に配置され、互いを区画する区画プレート部50と、を備え、区画プレート部50は、外縁部側が上方を向くように傾斜している。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
上下方向を軸線方向として延びる上側鋼管部を有する上側構真柱部と、
前記上側鋼管部の下側に連続して配置され、上下方向を軸線方向として延びる中間鋼管部と、前記中間鋼管部の内部に配置された中間鉄骨部と、を有する中間構真柱部と、
前記中間鋼管部の下側に連続して配置された複数の側壁プレート部と、前記側壁プレート部から平面視中央側に延びる中央プレート部と、を有する下側鉄骨部を有する下側構真柱部と、
前記中間構真柱部と前記下側構真柱部との間に配置され、互いを区画する区画プレート部と、を備え、
前記区画プレート部は、外縁部側が上方を向くように傾斜している構真柱。
【請求項2】
前記区画プレート部と前記中央プレート部の上端部との間には、隙間が形成されている請求項1に記載の構真柱。
【請求項3】
前記下側鉄骨部の下部では、前記中央プレート部は、平面視十文字状に配置され、
前記下側鉄骨部の上部では、前記中央プレート部は、平面視中央で交差していない請求項1または2に記載の構真柱。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、構真柱に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、超高層建物などにおいて、工期短縮を目的として、地下工事と地上工事を同時に施工する逆打ち工法が採用される場合がある。逆打ち工法では、場所打ちコンクリート杭に鉄骨柱を貫入させた構真柱を設けて、先行床(一般的に1階床)を構築する(下記の特許文献1参照)ことがある。
【0003】
構真柱は、逆打ちによる基礎が構築されるまで、地上及び地下の荷重を負担できるように設計されている。構真柱として、十字形状の鉄骨断面が採用されることが一般的である。また、超高層建物等の荷重が大きい場合には、柱形状をBOX断面としたCFT構真柱とする場合もある。CFT構真柱は施工時の浮力対策等から杭の上部でBOX形状から十字形状の断面へ切替を行うことがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の十字形状の鉄骨断面の構真柱は、基礎が構築されるまでの地上荷重を鉄骨断面のみで支持するため、超高層建物等の荷重が大きい場合や地下深度が深く、座屈長さが長くなる場合などにおいて、鉄骨断面を過大にしないと大きな荷重を支持できない場合がある。
一方、BOX断面のCFT構真柱とした場合には、大きな荷重を支持できるものの、十字形状の鉄骨断面への切り替え部分のコーナー部(隅部)が閉塞空間となる。このため、杭コンクリート打設時の安定液が閉塞空間に滞流してしまい、コンクリートの充填性が悪いという問題点がある。このため、CFT構真柱のコンクリートが負担している荷重を杭へ伝達することができず、CFT構真柱の合理的な設計ができないことがある。
【0006】
そこで、本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、コンクリートの充填率を向上させることができる構真柱を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明は以下の手段を採用している。
すなわち、本発明に係る構真柱は、上下方向を軸線方向として延びる上側鋼管部を有する上側構真柱部と、前記上側鋼管部の下側に連続して配置され、上下方向を軸線方向として延びる中間鋼管部と、前記中間鋼管部の内部に配置された中間鉄骨部と、を有する中間構真柱部と、前記中間鋼管部の下側に連続して配置された複数の側壁プレート部と、前記側壁プレート部から平面視中央側に延びる中央プレート部と、を有する下側鉄骨部を有する下側構真柱部と、前記中間構真柱部と前記下側構真柱部との間に配置され、互いを区画する区画プレート部と、を備え、前記区画プレート部は、外縁部側が上方を向くように傾斜している。
【0008】
このように構成された構真柱では、安定液が満たされた杭孔内に設置され、杭孔に杭コンクリートとなるコンクリートを打設すると、コンクリートが杭孔の底部から充填されていく。コンクリートと入れ替わるようにして、安定液の上部に差し込まれた排出管から安定液が排出される。この際に、コンクリートの上面が徐々に上昇していき、安定液は下側構真柱部と中間構真柱部との間に到達する。安定液は、外縁部側が上方を向くように傾斜している区画プレート部の下面に沿って流れて、複数の中央プレート部の間から構真柱の外側に排出される。よって、杭孔内に安定液が残存することなくコンクリートを充填して、コンクリートの充填率を向上させることができる。
【0009】
また、本発明に係る構真柱では、前記区画プレート部と前記中央プレート部の上端部との間には、隙間が形成されていてもよい。
【0010】
このように構成された構真柱では、区画プレート部と中央プレート部の上端部との間には、隙間が形成されている。よって、区画プレート部と中央プレート部の上端部との間に形成された隙間から、安定液を確実に排出することができる。
【0011】
また、本発明に係る構真柱では、前記下側構真柱部の下部では、前記中央プレート部は、平面視十文字状に配置され、前記下側構真柱部の上部では、前記中央プレート部は、平面視中央で交差していなくてもよい。
【0012】
このように構成された構真柱では、下側鉄骨部の上部では、中央プレート部は、平面視中央で交差していない。よって、下側鉄骨部の内部での安定液の対流を抑制することができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係る構真柱によれば、コンクリートの充填率を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の一実施形態に係る構真柱の構成を示す模式的な側面図である。
【
図8】本発明の一実施形態に係る構真柱の要部を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の一実施形態に係る構真柱について、図面を用いて説明する。
本実施形態に係る構真柱は、例えば逆打ち工法に用いられるものである。
図1は、本発明の一実施形態に係る構真柱の構成を示す模式的な側面図である。
図1に示すように、構真柱1の下部は、杭孔61内に配置されるものである。構真柱1は、上側構真柱部10と、中間構真柱部20と、下側構真柱部30と、区画プレート部50と、を備えている。中間構真柱部20は、上側構真柱部10の下側に配置されている。下側構真柱部30は、中間構真柱部20の下側に配置されている。区画プレート部50は、中間構真柱部20と下側構真柱部30との間に配置されている。上側構真柱部10、中間構真柱部20及び下側構真柱部30は、軸心O(
図2等参照)を同軸上に配置されている。
【0016】
図2は、
図1のII-II線断面図である。
上側構真柱部10は、上側鋼管部11を有している。上側鋼管部11は、軸心Oを通る上下方向を軸線O1方向とする鋼管である。
図2に示すように、上側鋼管部11は、角筒状をしている。なお、上側鋼管部11は、円筒状をしていてもよく、上側鋼管部11の形状は適宜設定可能である。
【0017】
図1に示すように、中間構真柱部20は、中間鋼管部21と、中間鉄骨部26と、を有している。中間鋼管部21は、軸線O1方向とする鋼管である。中間鋼管部21は、上側鋼管部11の下側に連続して配置されている。中間鋼管部21の形状は、上側鋼管部11の形状と略同一である。中間鋼管部21は、上側鋼管部11と一体に形成されている。なお、中間鋼管部21は、上側鋼管部11と別体で形成されていて、上側鋼管部11に接合される構成であってもよい。中間鋼管部21は、円筒状をしていてもよく、中間鋼管部21の形状は適宜設定可能である。
【0018】
図3は、
図1のIII-III線断面図である。
図3に示すように、中間鉄骨部26は、平面視略十字状に形成されている。中間鉄骨部26の端部26aは、中間鋼管部21に接合されている。
【0019】
図1に示すように、中間構真柱部20は、杭60の上端部60uからL=約1000~1500mm貫入している。
【0020】
下側構真柱部30は、第1下側鉄骨部(下側鉄骨部)31と、第2下側鉄骨部(下側鉄骨部)41と、を有している。第2下側鉄骨部41は、第1下側鉄骨部31の下側に配置されている。
【0021】
第1下側鉄骨部31は、複数の第1側壁プレート部(側壁プレート部)32と、複数の第1中央プレート部(中央プレート部)33と、を有している。
【0022】
図4は、
図1のIV-IV線断面図である。
第1側壁プレート部32は、中間鋼管部21の下側に連続して配置されている。
図4に示すように、4枚の第1側壁プレート部32は、中間鋼管部21を形成する4面の鉛直下方にそれぞれ配置されている(中間鋼管部21の外形を二点鎖線T1で示す)。第1側壁プレート部32は、板状に形成されている。第1側壁プレート部32の長さは、中間鋼管部21の一辺の長さよりも短い。隣り合う第1側壁プレート部32の間には、空間S1が形成されている。第1側壁プレート部32の上端部は、中間鋼管部21の下端部に接合されている。
【0023】
第1中央プレート部33は、4枚の第1側壁プレート部32から平面視中央側(軸心O側)に向かってそれぞれ延びている。4枚の第1中央プレート部33の先端部33aは、軸心Oまでは到達しておらず、互いに交差していない。これによって、4枚の第1中央プレート部33の先端部33aの間には、上下方向に連通する空間S2が形成されている。第1中央プレート部33の上端部は、中間鉄骨部26の下端部に接合されている。
【0024】
図1に示すように、第2下側鉄骨部41は、複数の第2側壁プレート部(側壁プレート部)42と、複数の第2中央プレート部(中央プレート部)43と、を有している。
【0025】
図5は、
図1のV-V線断面図である。
第2側壁プレート部42は、第1側壁プレート部32の下側に連続して配置されている。
図5に示すように、4枚の第2側壁プレート部42は、中間鋼管部21を形成する4面の鉛直下方にそれぞれ配置されている(中間鋼管部21の外形を二点鎖線T1で示す)。第2側壁プレート部42は、板状に形成されている。第2側壁プレート部42の長さは、中間鋼管部21の一辺の長さよりも短い。隣り合う第2側壁プレート部42の間には、空間S11が形成されている。空間S11は、空間S1の下側に空間S1に連通するように形成されている。第2側壁プレート部42の上端部は、第1側壁プレート部32の下端部に接合されている。第2側壁プレート部42は、第1側壁プレート部32と一体に形成されていてもよい。
【0026】
第2中央プレート部43は、4枚の第2側壁プレート部42から平面視中央側(軸心O側)に向かってそれぞれ延びている。4枚の第2中央プレート部43は、軸心Oまでは到達している。4枚の第2中央プレート部43によって、平面視十文字状をしている。
図1に示すように、第2中央プレート部43は、上下方向に間隔を有して複数配置されている。
【0027】
区画プレート部50は、中間構真柱部20と下側構真柱部30との間に配置され、互いを区画している。
【0028】
図6は、
図1のVI部の拡大図である。
図6に示すように、区画プレート部50の外縁部50aは、中間構真柱部20の中間鋼管部21の下端部21dに接合されている。
【0029】
図7は、区画プレート部50を示す斜視図である。
図7に示すように、区画プレート部50は、4枚の区画プレート本体51を有している。区画プレート本体51は、中間鋼管部21の下端部及び中間鉄骨部26の下端部(
図1参照)に接合されている。区画プレート部50は、外縁部50a側が上方を向くように傾斜している。換言すると、4枚の区画プレート本体51はそれぞれ、外縁部50a側に向かうにしたがって、次第に上方に向かうように傾斜している。区画プレート部50の傾斜角度は、水平面に対して約5~10°である。
【0030】
図8は、構真柱1の要部を示す斜視図である。
図8では、中間鋼管部21を二点鎖線で示している。
図6及び
図8に示すように、区画プレート部50と第1中央プレート部33の上端部33uとの間には、貫通孔34が形成されている。第1中央プレート部33の上端部33uには、下方に凹むとともに第1中央プレート部33を板厚方向に貫通する貫通孔34が形成されている。貫通孔34は、第1中央プレート部33における第1側壁プレート部32側である外縁部33bに形成されている。
【0031】
このように構成された構真柱1では、安定液が満たされた杭孔61内に設置され、杭孔61に杭コンクリートとなるコンクリートを打設すると、コンクリートが杭孔61の底部から充填されていく。コンクリートと入れ替わるようにして、安定液の上部に差し込まれた排出管から安定液が排出される。この際に、コンクリートの上面が徐々に上昇していき、安定液は下側構真柱部30と中間構真柱部20との間に到達する。安定液は、外縁部50a側に向かうにしたがって次第に上方に向かうように傾斜している区画プレート部50の下面に沿って流れて、隣り合う第1側壁プレート部32の間の空間S1から構真柱1の外側に排出される。よって、杭孔61内に安定液が残存することなくコンクリートを充填して、コンクリートの充填率を向上させることができる。
【0032】
また、第1中央プレート部33の上端部33uには、下方に凹むとともに第1中央プレート部33を板厚方向に貫通する貫通孔34が形成されている。よって、区画プレート部50の下面に沿って流れる安定液を貫通孔34を通過させて、構真柱1の外側に排出することができる。
【0033】
また、第1下側鉄骨部31では、4枚の第1中央プレート部33は平面視中央で交差しておらず、第1下側鉄骨部31の内部には空間S2が形成されている。よって、安定液が空間S2を上方に通過することができ、第1下側鉄骨部31の内部での安定液の対流を抑制することができる。
【0034】
また、第1側壁プレート部32には、第1中央プレート部33が設けられている。よって、第1側壁プレート部32の座屈補剛をすることができるとともに、中間構真柱部20から下側構真柱部30へ軸力を十分に伝達することができる。
【0035】
また、中間構真柱部20は、杭60の上端部60uからL=約1000~1500mm貫入している。よって、上側構真柱部10から中間構真柱部20への切り替え時に中間鉄骨部26の鉄骨負担荷重を杭コンクリートへ伝達し、切替部上部の鉄骨断面の合理的な設計を行うことができる。
【0036】
なお、上述した実施の形態において示した組立手順、あるいは各構成部材の諸形状や組み合わせ等は一例であって、本発明の主旨から逸脱しない範囲において設計要求等に基づき種々変更可能である。
【0037】
例えば、上記に示す実施形態では、第1中央プレート部33の上端部33uには、下方に凹むとともに第1中央プレート部33を板厚方向に貫通する貫通孔34が形成されているが、本発明はこれに限られない。例えば、区画プレート部50の下面から上方に凹む凹部が形成されることによって、当該凹部が区画プレート部と中央プレート部の上端部との間に形成される隙間となっていてもよい。あるいは、区画プレート部と中央プレート部の上端部との間に隙間が形成されていなくてもよい。
【0038】
また、上記に示す実施形態では、第1下側鉄骨部31では、4枚の第1中央プレート部33の先端部33aは、軸心Oまでは到達しておらず、互いに交差していないが、本発明はこれに限られない。下側構真柱部30は上下方向にわたって平面視略十字状に形成された中間鉄骨部26であってもよい。
【0039】
また、上記に示す実施形態では、貫通孔34は、第1中央プレート部33の外縁部33bに形成されているが、本発明はこれに限られない。貫通孔34は、第1中央プレート部33の平面視内側等に形成されていてもよい。
【符号の説明】
【0040】
1 構真柱
10 上側構真柱部
11 上側鋼管部
20 中間構真柱部
21 中間鋼管部
26 中間鉄骨部
26a 端部
30 下側構真柱部
31 第1下側鉄骨部(下側鉄骨部)
32 第1側壁プレート部(側壁プレート部)
33 第1中央プレート部(中央プレート部)
33u 上端部
41 第2下側鉄骨部(下側鉄骨部)
42 第2側壁プレート部(側壁プレート部)
43 第2中央プレート部(中央プレート部)
50 区画プレート部
50a 外縁部
O1 軸線