(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024030930
(43)【公開日】2024-03-07
(54)【発明の名称】二酸化炭素変換装置
(51)【国際特許分類】
B01D 53/62 20060101AFI20240229BHJP
C25B 1/23 20210101ALI20240229BHJP
C25B 9/00 20210101ALI20240229BHJP
C25B 9/19 20210101ALI20240229BHJP
C25B 1/02 20060101ALI20240229BHJP
C25B 1/04 20210101ALI20240229BHJP
C25B 15/08 20060101ALI20240229BHJP
H01M 8/04 20160101ALI20240229BHJP
C02F 1/461 20230101ALI20240229BHJP
H01M 8/12 20160101ALN20240229BHJP
【FI】
B01D53/62
C25B1/23 ZAB
C25B9/00 Z
C25B9/19
C25B1/02
C25B9/00 A
C25B1/04
C25B15/08 302
H01M8/04 Z
C02F1/461 101A
H01M8/12 101
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022134175
(22)【出願日】2022-08-25
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)令和3年度、環境省、二酸化炭素の資源化を通じた炭素循環社会モデル構築促進事業「人工光合成技術を用いた電解による地域のCO2資源化検討事業」委託業務、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(71)【出願人】
【識別番号】317015294
【氏名又は名称】東芝エネルギーシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001092
【氏名又は名称】弁理士法人サクラ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小川 斗
(72)【発明者】
【氏名】村松 武彦
(72)【発明者】
【氏名】竹山 大基
【テーマコード(参考)】
4D002
4D061
4K021
5H126
5H127
【Fターム(参考)】
4D002AA09
4D002AC04
4D002AC10
4D002BA02
4D002BA03
4D002BA04
4D002BA20
4D002CA01
4D002CA20
4D002DA31
4D002EA02
4D002FA10
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4D061DB20
4D061EA03
4D061EA04
4D061EB01
4D061EB04
4D061EB12
4D061FA03
4D061FA06
4D061FA20
4K021AA01
4K021AB25
4K021BA02
4K021BA17
4K021CA11
4K021DB36
4K021DC15
5H126BB06
5H127AA07
5H127AB21
5H127AC04
5H127BA05
5H127BB04
(57)【要約】
【課題】CO
2の有効活用を促進し、CO
2の大気中への放出を低減することを可能にしたCO
2変換装置を提供する。
【解決手段】実施形態のCO
2変換装置1は、CO
2を還元してCOを生成するカソード室6とアノード室7とを備える電解部3と、カソード室6から供給されるCO含有ガスを含む原料ガスから有機物を合成する有機物合成部4と、有機物合成部4から排出される有機物の合成残ガスが供給される部分酸化室10、アノード室7から排出される酸素-二酸化炭素含有ガスが供給される酸素除去室11、及び部分酸化室10と酸素除去室11との間に配置される酸素透過膜12とを備える酸素透過膜型部分酸化部5とを具備する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
二酸化炭素含有ガスから二酸化炭素を回収する二酸化炭素回収部と、
前記二酸化炭素回収部で回収された二酸化炭素が供給され、前記二酸化炭素を還元して一酸化炭素に転換するカソード室と、被酸化物を酸化して酸化物を生成するアノード室とを備える二酸化炭素電解部と、
前記二酸化炭素電解部の前記カソード室から一酸化炭素含有ガスが供給され、一酸化炭素含有ガスを含む原料ガスから有機物を合成する有機物合成部と、
前記有機物合成部から排出される前記有機物の合成残ガスが供給される部分酸化室と、前記二酸化炭素電解部の前記アノード室から排出される酸素-二酸化炭素含有ガスが供給される酸素除去室と、前記部分酸化室と前記酸素除去室との間に配置される酸素透過膜とを備える酸素透過膜型部分酸化部と
を具備する二酸化炭素変換装置。
【請求項2】
前記酸素透過膜型部分酸化部は、前記部分酸化室で前記有機物の合成残ガスを部分酸化して一酸化炭素を含むガスを生成し、前記一酸化炭素を含むガスを前記有機物合成部に供給するように構成されている、請求項1に記載の二酸化炭素変換装置。
【請求項3】
前記酸素透過膜型部分酸化部は、前記酸素除去室から酸素濃度を低下させた二酸化炭素含有残ガスを排出し、前記二酸化炭素含有残ガスを前記二酸化炭素回収部に供給するように構成されている、請求項1又は請求項2に記載の二酸化炭素変換装置。
【請求項4】
前記酸素透過膜型部分酸化部は、酸素イオン伝導型電解装置を備える、請求項1に記載の二酸化炭素変換装置。
【請求項5】
前記酸素透過膜型部分酸化部は、酸素イオン伝導型燃料電池を備える、請求項1に記載の二酸化炭素変換装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、二酸化炭素変換装置に関する。
【背景技術】
【0002】
天然ガス、石炭、石油等の化石燃料を燃焼させることで発生する二酸化炭素(CO2)は、温室効果による地球温暖化の主因と考えられており、化石燃料の使用削減が求められている。CO2発生源から排出される排ガスからCO2を除去し、大気中への放出を抑制することに加えて、排ガスから除去したCO2を原料とする化学合成が行われている。その一環として、CO2を還元して一酸化炭素(CO)を生成し、生成したCOと水素(H2)とから有機物を合成する技術の開発が進められている。CO生成後のパージガスの一部はCO2の電解装置へ供給され、残部は空気燃焼させて無害化して大気中に放出される。CO2電解装置から発生する酸素をパージするために供給されるCO2、及び燃焼装置から放出されるCO2は、CO2電解装置に供給されたCO2のうちで、有効活用されずに大気中に放出されてしまう。このため、供給されたCO2を有効活用し、CO2の大気中への放出を低減した二酸化炭素変換装置が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第2014/154253号
【特許文献2】特開2021-055124号公報
【特許文献3】特開2019-218578号公報
【特許文献4】特開2016-124759号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明が解決しようとする課題は、CO2の有効活用を促進し、CO2の大気中への放出を低減することを可能にした二酸化炭素変換装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
実施形態の二酸化炭素変換装置は、二酸化炭素含有ガスから二酸化炭素を回収する二酸化炭素回収部と、前記二酸化炭素回収部で回収された二酸化炭素が供給され、前記二酸化炭素を還元して一酸化炭素に転換するカソード室と、被酸化物を酸化して酸化物を生成するアノード室とを備える二酸化炭素電解部と、前記二酸化炭素電解部の前記カソード室から一酸化炭素含有ガスが供給され、一酸化炭素含有ガスを含む原料ガスから有機物を合成する有機物合成部と、前記有機物合成部から排出される前記有機物の合成残ガスが供給される部分酸化室と、前記二酸化炭素電解部の前記アノード室から排出される酸素-二酸化炭素含有ガスが供給される酸素除去室と、前記部分酸化室と前記酸素除去室との間に配置される酸素透過膜とを備える酸素透過膜型部分酸化部とを具備する。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図1】第1の実施形態の二酸化炭素変換装置を示す図である。
【
図2】第2の実施形態の二酸化炭素変換装置を示す図である。
【
図3】第3の実施形態の二酸化炭素変換装置を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、実施形態の二酸化炭素変換装置について、図面を参照して説明する。以下に示す各実施形態において、実質的に同一の構成部位には同一の符号を付し、その説明を一部省略する場合がある。図面は模式的なものであり、厚さと平面寸法との関係、各部の厚さの比率等は現実のものとは異なる場合がある。なお、以下の説明における“~”の記号は、それぞれの数値の上限値と下限値の間の範囲を示すものである。その場合、各数値範囲は上限値及び下限値を含むものである。
【0008】
(第1の実施形態)
図1は第1の実施形態の二酸化炭素変換装置を示す図である。
図1に示す二酸化炭素(CO
2)変換装置1は、二酸化炭素(CO
2)含有ガスからCO
2を回収するCO
2回収部2と、CO
2を電解及び還元して一酸化炭素(CO)に変換するCO
2電解部3と、CO
2電解部3から供給される一酸化炭素(CO)と水素(H
2)とを含む原料ガスから有機物を合成する有機物合成部4と、有機物合成部4から排出される有機物の合成残ガスを部分酸化してCOを含むガスを生成する酸素透過膜型部分酸化部5とを具備している。
【0009】
CO2回収部2は、火力発電所、廃棄物焼却場、製鉄所等から排出されるCO2を含む排出ガス(CO2含有ガス)G1からCO2を分離回収し、CO2濃度を高めたCO2ガスG2をCO2電解部3に供給するように構成されている。CO2回収部2には、例えばアミン水溶液のような化学吸収液を用いる化学吸収法、アミン化合物のような固体吸収剤を用いた固体吸収法、CO2分離膜を用いた膜分離法、ゼオライト等の無機物を吸着材として用いる物理吸着法等が適用される。例えば、アミン水溶液を用いた化学吸収法及び装置では、アミン水溶液が噴霧される吸収塔に排出ガスG1を供給し、CO2を吸収したアミン水溶液を再生塔で加熱してアミン水溶液から放散されたCO2を回収する。CO2回収部2に適用するCO2の回収方法及び装置は、特に限定されるものではなく、排出ガスG1からCO2を回収することが可能な各種の方法及び装置を適用することができる。
【0010】
CO2電解部3は電解セルを有するCO2電解装置であり、カソード室(還元部)6とアノード室(酸化部)7とを備えている。カソード室6は還元電極(カソード)を備え、アノード室7は酸化電極(アノード)を備えており、少なくともアノード室7には電解液が流通又は満たされている。カソード室6は、CO2ガスを流通させるようにしてもよいし、CO2を含む電解液を流通又は満たすようにしてもよい。カソード室6又はアノード室7において、電解液には水(H2O)を用いた溶液、例えば任意の電解質を含む水溶液が用いられる。電解質を含む水溶液としては、リン酸イオン(PO4
2-)、ホウ酸イオン(BO3
3-)、ナトリウムイオン(Na+)、カリウムイオン(K+)、カルシウムイオン(Ca2+)、リチウムイオン(Li+)、セシウムイオン(Cs+)、マグネシウムイオン(Mg2+)、塩化物イオン(Cl-)、炭酸水素イオン(HCO3
-)、炭酸イオン(CO3
2-)、水酸化物イオン(OH-)等を含む水溶液が挙げられる。電解液の具体例としては、KOH、KHCO3、K2CO3等が溶解されたアルカリ水溶液が挙げられる。
【0011】
カソード室6には、CO2回収部2で回収されたCO2ガスG2が供給される。カソード室6は、図示しない還元電極に面するガス流路を有し、そのようなガス流路にCO2ガスが供給される。アノード室7は、例えば図示しない酸化電極に面する液体流路を有し、そのような液体流路に電解液が供給される。還元電極及び酸化電極には図示しない電源が接続されている。カソード室6とアノード室7とは、水素イオン(H+)、水酸化物イオン(OH-)、炭酸イオン(CO3
2-)、炭酸水素イオン(HCO3
-)等のイオンを移動させることが可能な隔膜8、例えばイオン交換膜により分離されている。CO2電解部3(電解セルを有するCO2電解装置)は、単一の電解セルやそれらを面方向に接続した構造を有していてもよいし、複数の電解セルが積層されて一体化されたスタック構造を有していてもよい。
【0012】
CO2電解部3のカソード室6及びアノード室7においては、以下に示すような反応が生じる。カソード室6においては、下記の(1)式に示すように、CO2の電解反応及び還元反応が生じる。カソード室6では、CO2の還元反応によりCOと炭酸イオン(CO3
2-)が生成される。
2CO2+2e- → CO+CO3
2- …(1)
カソード室6で生成された炭酸イオン(CO3
2-)は、隔膜8を介してアノード室7に移動する。アノード室7においては、下記の(2)式に示すように、カソード室6で生成され、隔膜8を介して移動した炭酸イオン(CO3
2-)の酸化反応が生じ、これによりCO2とO2とが生成される。
CO3
2- → CO2+0.5O2+2e- …(2)
【0013】
さらに、カソード室6においては、電解液中のH2Oの電解反応が生じ、下記の(3)式に示すように、水素(H2)と水酸化物イオン(OH-)とが生成される。
2H2O+2e- → H2+2OH- …(3)
カソード室6で生成された水酸化物イオン(OH-)は、隔膜8を介してアノード室7に移動する。そして、下記の(4)式に示すように、アノード室7で水(H2O)と酸素(O2)が生成される。
2OH- → 0.5O2+H2O+2e- …(4)
【0014】
また、アノード室7においては、下記の(5)式に示すように、電解液中の水(H2O)が電気分解され、酸素(O2)と水素イオン(H+)とが生成される。
2H2O → 4H++O2+4e- …(5)
生成された水素イオン(H+)は、隔膜8を介してカソード室6に移動する。カソード室6に水素イオン(H+)が到達し、外部回路を通って電子(e-)が到達したカソード室6においては、下記の(6)式に示す反応により水素が発生する。
4H++4e- → 2H2 …(6)
【0015】
カソード室6においては、(1)式に示すCO2の還元反応によりCOが生成されると共に、(3)式に示すH2Oの電解反応及び(6)式に示す反応によりH2が生成される。カソード室6で生成されたCO及びH2は、未反応のCO2と共にカソード室6から排出される。カソード室6から排出される、COとH2とCO2を含む混合ガスG3は、有機物の合成反応の原料ガスの一部として、有機物合成部4に供給される。有機物合成部4には、有機物の合成反応の原料ガスの一部として、CO及びH2を含む混合ガスG3とは別に、水素(H2)が供給される。
【0016】
有機物合成部4においては、例えばフィッシャー・トロプシュ合成反応を利用した有機物の合成反応、例えば炭化水素、アルコール、その他の有機物等を合成する反応が行われる。有機物合成部4で合成される有機物の具体例としては、炭素含有の液体燃料等が挙げられる。有機物合成部4の生成物(有機物)は、有機物合成部4から排出され、例えば別途設置されたタンク等の貯蔵設備(図示せず)に送られる。有機物合成部4からは、有機物の合成残ガスG4が排出される。合成残ガスG4は、残存するCO、H2、CO2やメタン(CH4)のような不要な生成物等を含んでいる。このような合成残ガスG4は、酸素透過膜型部分酸化部5の部分酸化室10に送られる。
【0017】
一方、CO2電解部3のアノード室7では、上記した(2)式及び(4)式に示すように、炭酸イオン(CO3
2-)及び水酸化物イオン(OH-)の酸化により、酸素(O2)と二酸化炭素(CO2)が生成される。アノード室7で生成されたO2及びCO2を含有するガス(O2-CO2含有ガス)は、電解液と共にアノード室7から排出される。O2-CO2含有ガスを含む電解液は、アノード室7の排出配管に設けられた気液分離部9に送られて、O2-CO2含有ガスG5が電解液から分離される。分離されたO2-CO2含有ガスのCO2濃度は30~60体積%と高いため、そのまま大気中に放出した場合にはCO2の有効活用を妨げることになる。O2-CO2含有ガスは比較的多くのO2を含むため、そのままカソード室6に送るとCO2電解部3の動作や機能を低下させることになる。そこで、CO2電解部3のアノード室7から排出され、気液分離部9で分離回収されたO2-CO2含有ガスG5は、酸素透過膜型部分酸化部5の酸素除去室11に送られる。
【0018】
酸素透過膜型部分酸化部5は、部分酸化室10と酸素除去室11とこれらを分離するように配置された酸素透過膜12とを備えている。酸素透過膜12としては、緻密質な固体酸化物電解質層等が用いられる。固体酸化物電解質層は、酸素イオン等のイオンを通すものの、気体を通さないイオン伝導体である。固体酸化物電解質層としては、例えばY、Sc、Ce、Gd、Sm等の希土類元素の酸化物からなる安定化剤が固溶された安定化ジルコニア、代表的にはイットリア安定化ジルコニア(YSZ)やセリア安定化ジルコニア(CSZ)、あるいはこれらの複合体が用いられる。
【0019】
酸素透過膜型部分酸化部5は、第1電極を有する第1電極室としての部分酸化室10と、第2電極を有する第2電極室としての酸素除去室11とを、固体酸化物電解質層等からなる酸素透過膜により分離した構造を有する。2つの電極間は、直接接続されており、ショートされている。第2電極室としての酸素除去室11は、酸素分子(O2)の酸素イオン(O2-)への変換を担うものである。第1電極室としての部分酸化室10は、酸素イオン(O2-)の酸素分子(O2)への変換を担うと共に、メタン(CH4)のような低級炭化水素の部分酸化を担うものである。
【0020】
上述したような酸素透過膜型部分酸化部5において、CO2電解部3のアノード室7から排出されるO2-CO2含有ガスG5は酸素除去室11に供給される。酸素除去室11において、O2-CO2含有ガスG5中のO2は、下記の(7)式に示すように、酸素イオン(O2-)に変換される。
O2+4e- → 2O2- …(7)
酸素除去室11で変換された酸素イオン(O2-)は、酸素透過膜12を介して部分酸化室10に送られる。部分酸化室10に送られた酸素イオン(O2-)は、下記の(8)式に示すように、酸素分子(O2)に変換される。
2O2- → O2+4e- …(8)
【0021】
部分酸化室10においては、下記の(9)式に示すように、合成残ガスG4中に含まれるメタン(CH4)等を部分酸化し、COとH2に変換する。部分酸化とは、例えばメタン(CH4)の酸化において、(9)式に示すように、部分燃焼(部分酸化)して安定なCO2まで酸化せずに、H2に富んだCOを生成する反応を示す。
2CH4+O2 → 2CO+4H2 …(9)
さらに、下記の(10)式に示すように、逆水性シフト反応によりCO2とH2がCOとH2Oに転換される。
CO2+H2 → CO+H2O …(10)
【0022】
酸素透過膜型部分酸化部5の部分酸化室10からは、COとH2とを含むガス(CO-H2含有ガス)G6が排出される。CO-H2含有ガスG6は、有機物合成部4における原料ガスの一部として使用可能であるため、有機物合成部4に供給される。酸素透過膜型部分酸化部5の酸素除去室11からは、酸素濃度を低下させたO2-CO2含有ガス(低濃度O2-CO2含有ガス)G7が排出される。低濃度O2-CO2含有ガスG7は、比較的高濃度にCO2を含むため、再利用するためにCO2回収部2に返送される。低濃度O2-CO2含有ガスG7は、酸素濃度を低下させているといっても、ある程度のO2含んでいる。このため、低濃度O2-CO2含有ガスG7はCO2回収部2に返送し、CO2回収部2でCO2を分離回収し、CO2濃度を高めたCO2ガスG2としてCO2電解部3のカソード室6に送って再利用される。
【0023】
上述したように、メタン(CH4)のような不要な生成物等を含む合成残ガスG4を酸素透過膜型部分酸化部5の部分酸化室10に送り、メタン(CH4)等を部分酸化してCOとH2を再合成することによって、合成残ガスG4を有機物合成部4の原料ガスの一部として有効利用することができる。また、CO2電解部3のアノード室7から排出されるO2-CO2含有ガスG5を酸素除去室11に供給し、上記したCOとH2の再合成に寄与させた上で、O2-CO2含有ガスG5中の酸素濃度を低下させている。これによって、CO2濃度を高めた低濃度O2-CO2含有ガスG7をCO2回収部2に返送してCO2の再利用を促進することができる。さらに、CO2回収部2にアミン吸収液を用いた化学吸収法等を適用した場合、低濃度O2-CO2含有ガスG7中のO2濃度を低下させることによって、CO2回収部2に必要な熱エネルギーを低減することができると共に、アミン吸収液の酸素劣化を抑制することができる。これらによって、CO2変換装置1におけるCO2を含むガスの再利用効率を高め、かつ装置利用効率を向上させることが可能になる。
【0024】
(第2の実施形態)
次に、第2の実施形態のCO
2変換装置1について、
図2を参照して説明する。第2の実施形態のCO
2変換装置1は、酸素透過膜型部分酸化部(部分酸化装置)として酸素イオン伝導型電解装置20を備えている。酸素イオン伝導型電解装置20としては、固体酸化物形電解セル(SOEC)が用いられる。SOEC20は、水素極室21と酸素極室22とこれらを分離するように配置された酸素透過膜23とを備えている。酸素透過膜23としては、緻密質な固体酸化物電解質層等が用いられる。固体酸化物電解質層は、酸素イオン等のイオンを通すものの、気体を通さないイオン伝導体である。水素極室21に配置された水素極(カソード)と酸素極室22に配置された酸素極(アノード)とは、図示を省略した電源に接続されている。
【0025】
SOEC20における酸素極室22には、CO2電解部3のアノード室7から排出され、気液分離部9で分離回収されたO2-CO2含有ガスG5が供給される。酸素極室22においては、上記した(7)式に示したように、O2-CO2含有ガスG5中のO2が酸素イオン(O2-)に変換される。酸素極室22で変換された酸素イオン(O2-)は、酸素透過膜23を介して水素極室21に送られる。水素極室21においては、上記した(8)式に示したように、酸素イオン(O2-)が酸素分子(O2)に変換される。
【0026】
水素極室21には、有機物合成部4から排出される有機物の合成残ガスG4が供給される。合成残ガスG4は、上述したように、残存するCO、H2、CO2やメタン(CH4)のような不要な生成物等を含んでいる。水素極室21においては、上記した(9)式に示したように、合成残ガスG4中に含まれるメタン(CH4)等を部分酸化してCOとH2に変換する。さらに、上記した(10)式に示したように、逆水性シフト反応によりCO2とH2がCOとH2Oに転換される。
【0027】
上述したように、SOEC20の水素極室21から排出される、COとH2とを含むガス(CO-H2含有ガス)G6は、有機物を合成する際の原料ガスの一部として有機物合成部4に供給される。SOEC20の酸素極室22から排出される、酸素濃度を低下させたO2-CO2含有ガス(低濃度O2-CO2含有ガス)G7は、CO2回収部2に返送され、CO2回収部2でCO2を分離回収してCO2ガスG2としてCO2電解部3のカソード室6に送られる。このように、合成残ガスG4中のメタン(CH4)等からCOとH2を合成すると共に、アノード室7から排出されるO2-CO2含有ガスG5からO2濃度を低下させる際に、SOEC20を使用することによって、酸素移動量を電流値で調整して部分酸化状態を制御することが可能になる。さらに、ジュール発熱により反応部を昇温することができるたる、反応性を向上させることが可能になる。
【0028】
(第3の実施形態)
次に、第3の実施形態のCO
2変換装置1について、
図3を参照して説明する。第3の実施形態のCO
2変換装置1は、酸素透過膜型部分酸化部(部分酸化装置)として酸素イオン伝導型燃料電池30を備えている。酸素イオン伝導型燃料電池30としては、固体酸化物形燃料電池(Solid Oxide Fuel Cell:SOFC)が用いられる。SOFC30は、燃料極室31と空気極室32とこれらを分離するように配置された酸素透過膜33とを備えている。酸素透過膜33としては、緻密質な固体酸化物電解質層等が用いられる。固体酸化物電解質層は、酸素イオン等のイオンを通すものの、気体を通さないイオン伝導体である。
【0029】
SOFC30における空気極室32には、CO2電解部3のアノード室7から排出され、気液分離部9で分離回収されたO2-CO2含有ガスG5が供給される。空気極室32においては、上記した(7)式に示したように、O2-CO2含有ガスG5中のO2が酸素イオン(O2-)に変換される。空気極室32で変換された酸素イオン(O2-)は、酸素透過膜32を介して燃料極室31に送られる。燃料極室31においては、上記した(8)式に示したように、酸素イオン(O2-)が酸素分子(O2)に変換される。SOFC30においては、O2が消費される。この際、O2-CO2含有ガスG5中のO2濃度は30~60体積%(例えば33体積%)程度であり、空気中の酸素濃度(20体積%程度)より高いため、SOFC30の発電効率を高めることができる。SOFC30で発電した電力は、CO2電解部3で消費される電力の一部として使用してもよい。
【0030】
燃料極室31には、有機物合成部4から排出される有機物の合成残ガスG4が供給される。合成残ガスG4は、上述したように、残存するCO、H2、CO2やメタン(CH4)のような不要な生成物等を含んでいる。燃料極室31においては、上記した(9)式に示したように、合成残ガスG4中に含まれるメタン(CH4)等を部分酸化してCOとH2に変換する。さらに、上記した(10)式に示したように、逆水性シフト反応によりCO2とH2がCOとH2Oに転換される。
【0031】
上述したように、SOFC30を用いることよって、有機物合成部4から排出される有機物の合成残ガスG4により発電させることができ、さらに合成残ガスG4中のメタン等を部分酸化して、有機物合成部4で原料ガスとして使用するCOとH2を再合成することができる。第1の実施形態に示した酸素透過膜型部分酸化部5、第2の実施形態に示したSOEC20、第3の実施形態に示したSOFC30は、いずれも600~900℃の高温で作動させるため、図示しない熱交換器を用いて熱回収を行うことが好ましい。
【0032】
なお、上述した各実施形態の構成は、それぞれ組合せて適用することができ、また一部置き換えることも可能である。ここでは、本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図するものではない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施し得るものであり、発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々の省略、置き換え、変更等を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同時に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0033】
1…CO2変換装置、2…CO2回収部、3…CO2電解部、4…有機物合成部、5…酸素透過膜型部分酸化部、6…カソード室、7…アノード室、8…隔膜、10…部分
酸化室、11…酸素除去室、12,23,33…酸素透過膜、20…酸素イオン伝導型電解装置、21…水素極室、22…酸素極室、30…酸素イオン伝導型燃料電池、31…燃料極室、32…空気極室。