(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024030945
(43)【公開日】2024-03-07
(54)【発明の名称】二次電池およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
H01M 10/0587 20100101AFI20240229BHJP
H01M 10/04 20060101ALI20240229BHJP
H01M 10/052 20100101ALI20240229BHJP
H01M 50/531 20210101ALI20240229BHJP
H01M 50/536 20210101ALI20240229BHJP
H01M 50/545 20210101ALI20240229BHJP
H01M 50/548 20210101ALI20240229BHJP
H01M 4/04 20060101ALI20240229BHJP
H01M 4/13 20100101ALI20240229BHJP
H01M 4/139 20100101ALI20240229BHJP
【FI】
H01M10/0587
H01M10/04 W
H01M10/052
H01M50/531
H01M50/536
H01M50/545
H01M50/548 201
H01M4/04 A
H01M4/13
H01M4/139
【審査請求】未請求
【請求項の数】16
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022134197
(22)【出願日】2022-08-25
(71)【出願人】
【識別番号】000006231
【氏名又は名称】株式会社村田製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100132263
【弁理士】
【氏名又は名称】江間 晴彦
(74)【代理人】
【識別番号】100197583
【弁理士】
【氏名又は名称】高岡 健
(72)【発明者】
【氏名】濱口 邦晶
【テーマコード(参考)】
5H028
5H029
5H043
5H050
【Fターム(参考)】
5H028AA05
5H028BB05
5H028BB07
5H028CC08
5H028CC12
5H028CC13
5H028HH05
5H029AJ14
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5H029AL06
5H029AL07
5H029AL08
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5H043AA19
5H043BA11
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5H043CA03
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5H043EA35
5H043EA60
5H043HA05E
5H043HA17E
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5H043JA13E
5H043LA21E
5H050AA19
5H050BA08
5H050BA17
5H050CA01
5H050CA08
5H050CA09
5H050CB02
5H050CB07
5H050CB08
5H050CB09
5H050CB11
5H050DA04
5H050DA20
5H050FA12
5H050GA03
5H050GA07
5H050GA10
5H050GA22
5H050HA04
5H050HA12
(57)【要約】 (修正有)
【課題】巻回方向に沿った長手側の端部に相対的に高密度の電極材層の未塗工部分を有する電極巻回体を備えた二次電池を提供すること。
【解決手段】本発明の一実施形態では、正極10と、負極20と、前記正極および前記負極の間に配置されたセパレータ30とを備えた電極巻回体50を含み、前記正極および前記負極のそれぞれの電極は、集電体11と前記集電体の主面に塗工された電極材層12とを備え、および、巻回方向に沿った長手側の端部に前記電極材層の未塗工部分を有し、少なくとも前記正極において、正極材層は、前記正極の巻回方向に沿って厚みが漸次増大する部分を含む、二次電池が提供される。
【選択図】
図5B
【特許請求の範囲】
【請求項1】
正極と、負極と、前記正極および前記負極の間に配置されたセパレータとを備えた電極巻回体を含み、
前記正極および前記負極のそれぞれの電極は、集電体と前記集電体の主面に塗工された電極材層とを備え、および、巻回方向に沿った長手側の端部に前記電極材層の未塗工部分を有し、
少なくとも前記正極において、正極材層は、前記正極の巻回方向に沿って厚みが漸次増大する部分を含む、二次電池。
【請求項2】
前記正極材層の厚みが前記正極の巻回方向に沿って巻内側端から巻外側端へと向かって漸次増大する、請求項1に記載の二次電池。
【請求項3】
前記正極材層の厚みが巻内側端から巻外側端まで一定である場合と比べて、巻回状態の前記正極の前記正極材層の前記未塗工部分における前記集電体の密度が高い、請求項1に記載の二次電池。
【請求項4】
前記巻回方向に沿って設けられた正極材層の前記未塗工部分における正極側の前記集電体の一部が正極側の集電板と接続され、前記巻回方向に沿って設けられた負極材層の前記未塗工部分における負極側の前記集電体の一部が負極側の集電板と接続される、請求項1に記載の二次電池。
【請求項5】
正極材層の前記未塗工部分における正極側の前記集電体の一部と正極側の前記集電板とがレーザーにて接続され、前記正極側の集電体の一部が前記電極巻回体内への前記レーザーの侵入抑制部材である、請求項4に記載の二次電池。
【請求項6】
前記正極材層の厚みが巻内側端から巻外側端まで一定である場合と比べて、巻回状態の前記正極の相互に隣り合う前記未塗工部分間の距離が小さい、請求項1に記載の二次電池。
【請求項7】
正極材層の体積が同じである条件下で、厚みが巻内側端から巻外側端まで一定である場合と比べて、前記巻回方向における前記正極材層の長さが長い、請求項1に記載の二次電池。
【請求項8】
前記正極材層は、前記正極の巻回方向に沿った厚み増大率が異なる部分を少なくとも2つ含む、請求項1に記載の二次電池。
【請求項9】
前記負極の負極材層の厚みが前記負極の巻回方向に沿って漸次増大する部分を更に含む、請求項1に記載の二次電池。
【請求項10】
巻回前の状態にて、少なくとも前記正極材層は、前記正極の集電体の長手方向に沿って漸次傾斜する部分を含む、請求項1に記載の二次電池。
【請求項11】
前記電極巻回体を内部に収容可能な外装体を更に含み、前記外装体が本体部および蓋部を備え、負極側の前記集電板が前記本体部の底部と接続され、正極側の前記集電板が前記蓋部に配置された端子と接続される、請求項1に記載の二次電池。
【請求項12】
前記電極がリチウムイオンを吸蔵放出可能となっている、請求項1に記載の二次電池。
【請求項13】
集電体の主面に電極材層材を塗布して電極を形成する工程と、
セパレータを挟んで前記電極としての正極と、負極との積層体を巻き回して、電極巻回体を形成する工程とを含み、
前記電極を形成する工程において、各電極の前記集電体の長手方向に沿った端部に電極材層材の未塗工部を形成し、および、少なくとも、正極材層材が前記正極側の集電体の長手方向に沿って漸次傾斜する部分を含むように前記正極側の集電体の主面に前記正極材層材を塗布する、二次電池の製造方法。
【請求項14】
前記正極材層材が前記正極側の集電体の長手方向に沿って一方の側から他方の側まで漸次傾斜するように、前記正極材層材の塗布を行う、請求項13に記載の二次電池の製造方法。
【請求項15】
前記電極巻回体を形成する工程後に、巻回状態の各電極の電極材層の未塗工部分における前記集電体の露出部分を傾けまたは平坦状にし、その後、レーザーを用いて各電極の集電体の前記露出部分と集電板とを接続させる工程を含む、請求項13に記載の製造方法。
【請求項16】
各電極の集電体の露出部分に所定の間隔をおいて溝を形成し、その後、前記露出部分を押圧して傾けまたは平坦状にする、請求項15に記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二次電池およびその製造方法に関する。特に、正極、負極およびセパレータを含む電極構成層から成る電極組立体を備えた二次電池およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
二次電池は、充電および放電の繰返しが可能であり、様々な用途に用いられている。例えば、携帯電話、スマートフォンおよびノートパソコンなどのモバイル機器に二次電池が用いられている。
【0003】
二次電池としては、正極、負極およびそれらの間にセパレータを含む電極構成層を巻回した電極巻回体、ならびに、その電極巻回体を収納する外装体を備えるものが用いられる場合がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007-172879号公報
【特許文献2】特開2011-138729号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
二次電池が電極巻回体を備える場合において、電流を外部に取り出す手法として以下の態様が考えられる。具体的には、巻回状態の電極(正極および負極)が巻回方向に沿った長手側の端部に電極材層の未塗工部分をそれぞれ有し、この未塗工部分における集電体の一部を、介在部材(集電板)を介して、外部端子と外装体に接続させる態様が考えられる。
【0006】
上記未塗工部分における集電体の一部を介在部材(集電板)と接続させる一手法としては、レーザー溶接が考えられる。しかしながら、巻回状態の未塗工部分における集電体の一部の密度が相対的に低いと、溶接時に用いるレーザーが電極巻回体の内部に入り込み、電極巻回体の構成要素を損傷させる虞がある。
【0007】
本発明は、かかる課題に鑑みてなされたものである。すなわち、本発明の目的は、巻回方向に沿った長手側の端部に相対的に高密度の電極材層の未塗工部分を有する電極巻回体を備えた二次電池およびその製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明の一実施形態では、
正極と、負極と、前記正極および前記負極の間に配置されたセパレータとを備えた電極巻回体を含み、
前記正極および前記負極のそれぞれの電極は、集電体と前記集電体の主面に塗工された電極材層とを備え、および、巻回方向に沿った長手側の端部に前記電極材層の未塗工部分を有し、
少なくとも前記正極において、正極材層は、前記正極の巻回方向に沿って厚みが漸次増大する部分を含む、二次電池が提供される。
【0009】
上記目的を達成するために、本発明の一実施形態では、
集電体の主面に電極材層材を塗布して電極を形成する工程と、
セパレータを挟んで前記電極としての正極と、負極との積層体を巻き回して、電極巻回体を形成する工程とを含み、
前記電極を形成する工程において、各電極の前記集電体の長手方向に沿った端部に電極材層材の未塗工部を形成し、および、少なくとも、正極材層材が前記正極側の集電体の長手方向に沿って漸次傾斜する部分を含むように前記正極側の集電体の主面に前記正極材層材を塗布する、二次電池の製造方法が提供される。
【発明の効果】
【0010】
本発明の一実施形態によれば、二次電池の電極巻回体は、巻回方向に沿った長手側の端部に相対的に高密度の電極材層の未塗工部分を有することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図2】
図2は、本発明の一実施形態に係る二次電池の外観を示す模式的斜視図である。
【
図3】
図3は、
図2の線分A-A間における模式的断面図である。
【
図4】
図4は、本発明の一実施形態に係る二次電池の集電板と接続時の電極巻回体50の模式的斜視図を示す。
【
図5A】
図5Aは、本発明の一実施形態に係る二次電池の巻回前における正極構造の模式的断面図を示す。
【
図5B】
図5Bは、本発明の一実施形態に係る二次電池の電極巻回体の構造の模式的部分断面図を示す。
【
図6A】
図6Aは、巻回前における従来の電極構造の模式的断面図を示す。
【
図6B】
図6Bは、従来の電極巻回体の構造の模式的部分断面図を示す。
【
図7】
図7は、傾斜構造を有する電極の模式的断面図を示す。
【
図8A】
図8Aは、実施例1で用いる巻回前の電極構造の模式的断面図を示す。
【
図8B】
図8Bは、実施例2で用いる巻回前の電極構造の模式的断面図を示す。
【
図8C】
図8Cは、実施例3で用いる巻回前の電極構造の模式的断面図を示す。
【
図8D】
図8Dは、比較例1で用いる巻回前の電極構造の模式的断面図を示す。
【
図8E】
図8Eは、比較例2で用いる巻回前の電極構造の模式的断面図を示す。
【
図8F】
図8Fは、比較例3で用いる巻回前の電極構造の模式的断面図を示す。
【
図8G】
図8Gは、比較例4で用いる巻回前の電極構造の模式的断面図を示す。
【
図9】
図9は、本発明の一実施形態に係る二次電池を構成する電極巻回体の構成部材を説明するための模式的斜視図である。
【
図10】
図10は、本発明の一実施形態に係る電極巻回体の巻回態様を説明するための模式的斜視図である。
【
図11A】
図11Aは、本発明の一実施形態に係る二次電池の製造方法(電極巻回体の用意)を説明するための模式的斜視図である。
【
図11B】
図11Bは、本発明の一実施形態に係る二次電池の製造方法(電極材層の未塗工部への溝部形成)を説明するための模式的斜視図である。
【
図11C】
図11Cは、本発明の一実施形態に係る二次電池の製造方法(集電板の取付け)を説明するための模式的斜視図である。
【
図11D】
図11Dは、本発明の一実施形態に係る二次電池の製造方法(絶縁体の貼付け)を説明するための模式的斜視図である。
【
図11E】
図11Eは、本発明の一実施形態に係る二次電池の製造方法(外装体の本体部の用意)を説明するための模式的斜視図である。
【
図11F】
図11Fは、本発明の一実施形態に係る二次電池の製造方法(外装体への集電板付きの電極巻回体の収納等)を説明するための模式的斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下では、本発明の一実施形態に係る二次電池をより詳細に説明する。必要に応じて図面を参照して説明を行うものの、図面における各種の要素は、本発明の理解のために模式的かつ例示的に示したにすぎず、外観または寸法比などは実物と異なり得る。
【0013】
本明細書で直接的または間接的に説明される“上下方向”および“左右方向”は、図中における上下方向および左右方向に相当する。また、本明細書で直接的または間接的に説明される「断面視」は、二次電池を構成する電極巻回体の巻回軸に沿う方向、または巻回軸に対して垂直な方向に沿って二次電池を切り取った仮想的な断面に基づいている。また、本明細書で用いる「平面視」とは、巻回軸の方向に沿って対象物を上側または下側からみた場合の見取図に基づいている。特記しない限り、同じ符号または記号は、同じ部材もしくは部位または同じ意味内容を示すものとする。
【0014】
[二次電池の基本的構成]
本明細書でいう「二次電池」は、充電および放電の繰り返しが可能な電池のことを指している。従って、本発明の一実施形態に係る二次電池は、その名称に過度に拘泥されるものでなく、例えば蓄電デバイスなども対象に含まれ得る。
【0015】
図1は、電極巻回体の模式図を示す。本発明の一実施形態に係る二次電池は、正極10、負極20およびセパレータ30を含む電極構成層を備える電極巻回体50を備える。図示されるように、電極巻回体50は、電極構成層が巻回状に巻かれた巻回構造を有する。つまり、電極巻回体50は、正極10、負極20および正極10と負極20との間に配置されたセパレータ30を含む帯状または長尺状に比較的長く延在する電極構成層が、ロール状に巻回した巻回構造を有する。本発明の一実施形態に係る二次電池では、このような電極巻回体50が電解質(例えば非水電解質)と共に外装体に封入されている。
【0016】
正極10は、正極側の集電体および正極側の集電体の主面に塗工された正極材層を含む。正極10では、正極側の集電体の少なくとも片面に正極材層が設けられており、正極材層には、電極活物質として正極活物質が含まれている。例えば、電極巻回体における正極は、正極側の集電体の両面に正極材層が設けられているものでもよいし、あるいは、正極側の集電体の片面のみに正極材層が設けられているものでもよい。正極側の集電体は、両面または片面の全面に正極材層を有さなければならないというわけではない。
【0017】
負極20は、負極側の集電体および負極側の集電体の主面に塗工された負極材層を含む。負極20では、負極側の集電体の少なくとも片面に負極材層が設けられており、負極材層には、電極活物質として負極活物質が含まれている。例えば、電極巻回体における負極は、負極側の集電体の両面に負極材層が設けられているものでもよいし、あるいは、負極側の集電体の片面にのみ負極材層が設けられているものでもよい。負極側の集電体は、両面または片面の全面に負極材層を有さなければならないというわけではない。
【0018】
正極10および負極20に含まれる電極活物質、即ち、正極活物質および負極活物質は、二次電池において電子の受け渡しに直接関与する物質であり、充放電、すなわち電池反応を担う正負極の主物質である。より具体的には、「正極材層に含まれる正極活物質」および「負極材層に含まれる負極活物質」に起因して電解質にイオンがもたらされ、かかるイオンが正極10と負極20の間で移動して電子の受け渡しが行われて充放電がなされる。正極材層および負極材層は特にリチウムイオンを吸蔵放出可能な層であってよい。つまり、本発明の一実施形態に係る二次電池は、非水電解質を介してリチウムイオンが正極10と負極20との間で移動して電池の充放電が行われる非水電解質二次電池となっていてよい。充放電にリチウムイオンが関与する場合、本発明の一実施形態に係る二次電池は、いわゆる“リチウムイオン電池”に相当し、正極10および負極20がリチウムイオンを吸蔵放出可能な層を有する。
【0019】
正極材層の正極活物質は例えば粒状体から構成されるところ、粒子同士のより十分な接触と形状保持のためにバインダーが正極材層に含まれていてよい。更には、電池反応を推進する電子の伝達を円滑にするために導電助剤が正極材層に含まれていてもよい。同様にして、負極材層の負極活物質は例えば粒状体から構成されるところ、粒子同士のより十分な接触と形状保持のためにバインダーが含まれてよく、電池反応を推進する電子の伝達を円滑にするために導電助剤が負極材層に含まれていてもよい。このように、複数の成分が含有されて成る形態ゆえ、正極材層および負極材層はそれぞれ“正極合材層” および“負極合材層”などと称すこともできる。
【0020】
正極活物質は、リチウムイオンの吸蔵放出に資する物質であってよい。かかる観点でいえば、正極活物質は例えばリチウム含有複合酸化物であってよい。より具体的には、正極活物質は、リチウムと、コバルト、ニッケル、マンガンおよび鉄から成る群から選択される少なくとも1種の遷移金属とを含むリチウム遷移金属複合酸化物であってよい。つまり、本発明の一実施形態に係る二次電池の正極材層においては、そのようなリチウム遷移金属複合酸化物が正極活物質として含まれていてよい。例えば、正極活物質はコバルト酸リチウム、ニッケル酸リチウム、マンガン酸リチウム、リン酸鉄リチウム、または、それらの遷移金属の一部を別の金属で置き換えたものであってよい。このような正極活物質は、単独種として含まれてよいものの、二種以上が組み合わされて含まれていてもよい。
【0021】
正極材層に含まれ得るバインダーとしては、特に制限されるわけではないが、ポリフッ化ビニリデン、ビニリデンフルオライド-ヘキサフルオロプロピレン共重合体、ビニリデンフルオライド-テトラフルオロエチレン共重合体およびポリテトラフルオロエチレンなどから成る群から選択される少なくとも1種を挙げることができる。正極材層に含まれ得る導電助剤としては、特に制限されるわけではないが、サーマルブラック、ファーネスブラック、チャンネルブラック、ケッチェンブラックおよびアセチレンブラック等のカーボンブラック、黒鉛、カーボンナノチューブや気相成長炭素繊維等の炭素繊維、銅、ニッケル、アルミニウムおよび銀等の金属粉末、ならびに、ポリフェニレン誘導体などから成る群から選択される少なくとも1種を挙げることができる。
【0022】
負極活物質は、リチウムイオンの吸蔵放出に資する物質であってよい。かかる観点でいえば、負極活物質は例えば各種の炭素材料、酸化物および/またはリチウム合金などであってよい。
【0023】
負極活物質の各種の炭素材料としては、黒鉛(天然黒鉛、人造黒鉛)、ハードカーボン、ソフトカーボン、ダイヤモンド状炭素などを挙げることができる。特に、黒鉛は電子伝導性が高く、負極側の集電体との接着性が優れる。負極活物質の酸化物としては、酸化シリコン、酸化スズ、酸化インジウム、酸化亜鉛および酸化リチウムなどから成る群から選択される少なくとも1種を挙げることができる。負極活物質のリチウム合金は、リチウムと合金形成され得る金属であればよく、例えば、Al、Si、Pb、Sn、In、Bi、Ag、Ba、Ca、Hg、Pd、Pt、Te、Zn、Laなどの金属とリチウムとの2元、3元または、それ以上の合金であってよい。このような酸化物は、その構造形態としてアモルファスとなっていてよい。結晶粒界または欠陥といった不均一性に起因する劣化が引き起こされにくくなるためである。
【0024】
負極材層に含まれ得るバインダーとしては、特に制限されるわけではないが、スチレンブタジエンゴム、ポリアクリル酸、ポリフッ化ビニリデン、ポリイミド系樹脂およびポリアミドイミド系樹脂から成る群から選択される少なくとも1種を挙げることができる。負極材層に含まれ得る導電助剤としては、特に制限されるわけではないが、サーマルブラック、ファーネスブラック、チャンネルブラック、ケッチェンブラックおよびアセチレンブラック等のカーボンブラック、黒鉛、カーボンナノチューブや気相成長炭素繊維等の炭素繊維、銅、ニッケル、アルミニウムおよび銀等の金属粉末、ならびに、ポリフェニレン誘導体などから成る群から選択される少なくとも1種を挙げることができる。なお、負極材層には、電池製造時に使用された増粘剤成分(例えばカルボキシルメチルセルロース)に起因する成分が含まれていてもよい。
【0025】
正極および負極に用いられる正極側の集電体および負極側の集電体は電池反応に起因して活物質で発生した電子を集めたり供給したりするのに資する部材である。このような集電体は、シート状の金属部材であってよく、多孔または穿孔の形態を有していてよい。例えば、集電体は金属箔、パンチングメタル、網またはエキスパンドメタル等であってよい。正極に用いられる正極側の集電体は、アルミニウム、ステンレスおよびニッケル等から成る群から選択される少なくとも1種を含んだ金属箔から成るものであってよく、例えばアルミニウム箔であってよい。一方、負極に用いられる負極側の集電体は、銅、ステンレスおよびニッケル等から成る群から選択される少なくとも1種を含んだ金属箔から成るものであってよく、例えば銅箔であってよい。
【0026】
正極および負極の間に用いられるセパレータ30は、正負極の接触による短絡防止および電解質保持などの観点から設けられる部材である。換言すれば、セパレータ30は、正極と負極との間の電子的接触を防止しつつイオンを通過させる部材であるといえる。例えば、セパレータ30は多孔性または微多孔性の絶縁性部材であり、その小さい厚みに起因して膜形態を有している。あくまでも例示にすぎないが、ポリオレフィン製の微多孔膜がセパレータとして用いられてよい。この点、セパレータ30として用いられる微多孔膜は、例えば、ポリオレフィンとしてポリエチレン(PE)のみ、または、ポリプロピレン(PP)のみを含んだものであってよい。更にいえば、セパレータ30は、“PE製の微多孔膜”と“PP製の微多孔膜 ”とから構成される積層体であってもよい。セパレータ30の表面が無機粒子コート層や接着層等より覆われていてもよい。セパレータ30の表面が接着性を有していてもよい。なお、セパレータ30は、その名称によって特に拘泥されるべきでなく、同様の機能を有する固体電解質、ゲル状電解質、絶縁性の無機粒子などであってもよい。
【0027】
正極10および負極20がリチウムイオンを吸蔵放出可能な層を有する場合、電解質は有機電解質・有機溶媒などの“非水系”の電解質であってよい。すなわち、電解質が非水電解質となっていてよい。電解質には電極(正極・負極)から放出された金属イオンが存在することになり、それゆえ、電解質は電池反応における金属イオンの移動を助力することになる。
【0028】
非水電解質は、溶媒と溶質とを含む電解質である。具体的な非水電解質の溶媒としては、少なくともカーボネートを含んで成るものであってよい。かかるカーボネートは、環状カーボネート類および/または鎖状カーボネート類であってもよい。特に制限されるわけではないが、環状カーボネート類としては、プロピレンカーボネート(PC)、エチレンカーボネート(EC)、ブチレンカーボネート(BC)およびビニレンカーボネート(VC)から成る群から選択される少なくとも1種を挙げることができる。鎖状カーボネート類としては、ジメチルカーボネート(DMC)、ジエチルカーボネート(DEC)、エチルメチルカーボネート(EMC)およびジプロピルカーボネート(DPC)から成る群から選択される少なくも1種を挙げることができる。あくまでも例示にすぎないが、非水電解質として環状カーボネート類と鎖状カーボネート類との組合せが用いられてよく、例えばエチレンカーボネートとジエチルカーボネートとの混合物を用いてよい。また、具体的な非水電解質の溶質としては、例えば、LiPF6および/またはLiBF4などのLi塩が用いられてよい。
【0029】
図2は、本発明の一実施形態に係る二次電池の外観を示す模式的斜視図である。
図3は、
図2の線分A-A間における模式的断面図である。
【0030】
本発明の一実施形態に係る二次電池100では、正極、負極およびセパレータを含む電極巻回体が、電解質と共に外装体60に封入されている。この外装体60はハードケースであってよく、本体部61および蓋部62などの2つの部材から構成され得る。例えば、本体部61と蓋部62とは、電極巻回体、電解質などが収容された後、密封される。外装体60の密封方法としては、特に限定されず、例えばレーザー照射法などが挙げられる。
【0031】
本体部61および蓋部62を構成する材料としては、二次電池の分野でハードケース型外装体を構成し得るあらゆる材料が使用可能である。そのような材料は、電子の移動が達成され得る導電性材料であってもよいし、または電子の移動が達成され得ない絶縁材料であってもよい。外装体の材料は、電極取り出しの観点からいえば、導電性材料であることが好ましい。
【0032】
導電性材料としては、例えば銀、金、銅、鉄、スズ、プラチナ、アルミニウム、ニッケルおよび/またはステンレス鋼などの導電性材料が挙げられる。絶縁材料としては、例えば、ポリエステル(例えば、ポリエチレンテレフタレート)、ポリイミド、ポリアミド、ポリアミドイミド、ならびに/またはポリオレフィン(例えば、ポリエチレンおよび/もしくはポリプロピレン)などの絶縁ポリマー材料が挙げられる。
【0033】
導電性および剛性の観点からいえば、本体部および蓋部はともに、ステンレス鋼から構成されていてよい。なお、ステンレス鋼とは、「JIS G 0203 鉄鋼用語」に規定されている通り、クロムまたはクロムとニッケルとを含有させた合金鋼で、一般にはクロム含有量が全体の約10.5%以上の鋼をいう。そのようなステンレス鋼としては、マルテンサイト系ステンレス鋼、フェライト系ステンレス鋼、オーステナイト系ステンレス鋼、オーステナイト・フェライト系ステンレス鋼および/または析出硬化系ステンレス鋼が挙げられる。
【0034】
外装体の本体部および蓋部の寸法は、主として電極巻回体の寸法に応じて決定される。例えば、電極巻回体を収容したとき、外装体内での電極巻回体の移動が防止される程度の寸法を外装体が有していてよい。電極巻回体の移動を防止することにより、衝撃などによる電極巻回体の損傷を防止し、二次電池の安定性をより向上させることができる。
【0035】
外装体は、ラミネートフィルムから成るパウチなどのフレキシブルケースであってもよい。ラミネートフィルムとしては、少なくとも金属層(例えば、アルミニウムなど)と接着層(例えば、ポリプロピレンおよび/またはポリエチレンなど)とが積層される構成であり、付加的に保護層(例えば、ナイロンおよび/またはポリアミドなど)が積層される構成であってもよい。
【0036】
外装体の厚み寸法(すなわち、肉厚寸法)は、特に制限されるわけではないが、10μm以上200μm以下であってよく、例えば50μm以上100μm以下であってよい。外装体の厚み寸法は、任意の10箇所における測定値の平均値が用いられる。
【0037】
又、二次電池は電極端子(正極端子または負極端子)を備える。かかる電極端子としては、例えば正極の電極端子が供され、外装体が負極として機能し得る。電極端子には、導電率が大きい材料が用いられてよい。電極端子の材質としては、特に制限するわけではないが、銀、金、銅、鉄、スズ、プラチナ、アルミニウム、ニッケルおよびステンレス鋼から成る群から選択される少なくとも一種を挙げることができる。
【0038】
電極端子81は外装体の開口部に嵌合して挿通され、ガスケット部82と合わせて電極端子構造体80が供される。電極端子81は、リベット部およびこれに連続する内側端子から成り得る。リベット部および内側端子は、電子の移動が達成され得る材料から構成されていればよい。又、電極巻回体50の巻回中心に設けられ得る空洞には、ピン90が挿入されてよい。
【0039】
具体的には、電極端子構造体80は、(1)電極を外部に導出するための導電性のリベット部とリベット部と電極巻回体との電気的接続を確保するための内側端子からなる電極端子80、および、(2)リベット部と外装体との電気的な絶縁を確保しつつ、電解質の漏出を防止するための外側ガスケット部と、内側端子と外装体との電気的な絶縁を確保しつつ、電解質の漏出を防止するための内側ガスケット部とを含み得る。
【0040】
例えば、電極端子81は、それぞれ、銀、金、銅、鉄、錫、プラチナ、アルミニウム、ニッケルおよび/またはステンレス鋼などの導電性材料から構成される。ガスケット部82は、絶縁材料から構成されていればよい。例えば、ガスケット部82は、ポリエステル(例えば、ポリエチレンテレフタレート)、ポリイミド、ポリアミド、ポリアミドイミド、ならびに/またはポリオレフィン(例えば、ポリエチレンおよび/またはポリプロピレン)などの絶縁ポリマー材料から構成される。
【0041】
[本発明の二次電池の前提となる構成]
以下、本発明の二次電池の前提となる構成について説明する。本発明の一実施形態に係る二次電池100では、電極(正極10および負極20)が巻回方向に沿った長手側の端部に電極材層の未塗工部分を有することを前提とする。
【0042】
かかる前提下で、
図3に示すように、本発明の一実施形態に係る二次電池100は、電極端子81および外装体60と電極巻回体50とをそれぞれ電気的に接続する集電板70(正極側の集電板71および負極側の集電板72)を備える。集電板70は、電極巻回体50の端部に位置する電極材層の未塗工部分(即ち巻回状態の集電体の一部のみが存在する部分)と接続され得る。
【0043】
具体的には、正極の巻回方向に沿った長手側の端部に位置する正極材層の未塗工部分(即ち巻回状態の正極側の集電体の一部のみが存在する部分)をまとめたものが正極側の集電板71と接続される。この正極側の集電板71は正極端子81に接続される。
【0044】
同様に、負極の巻回方向に沿った長手側の端部に位置する負極材層の未塗工部分(即ち巻回状態の負極側の集電体の一部のみが存在する部分)をまとめたものが負極側の集電板72と接続される。この正極側の集電板72は外装体60に接続される。
【0045】
集電板70(71、72)は、電子の移動が達成され得る材料から構成されてよく、通常は銀、金、銅、鉄、スズ、プラチナ、アルミニウム、ニッケル、および/またはステンレス鋼などの導電性材料から構成される。集電板の形態は特に限定されず、平面視で帯状、平板状、または円板状であってよい。
【0046】
集電板は、電極端子81と外装体60との接続のための長尺部76を備え得る。長尺部76は、集電板70の一要素として構成され得る。一要素として構成されることで、二次電池の組立における長尺部76と集電板70との別途の接続工程を省略することができる。又、電極巻回体50と電極端子との間、および電極巻回体50と外装体60との間に集電板71、72をそれぞれ設けることで、電極巻回体50と電極端子81との間および電極巻回体50と外装体60との間に空間を設けることが可能となる。そのため、二次電池の内部空間が増加され、電解液の注液に際して、電解液の注液量を増やすことが可能となり得る。
【0047】
図4は、本発明の一実施形態に係る二次電池の集電板と接続時の電極巻回体50の模式的斜視図を示す。
図4に示すように、集電板と接続時において、電極巻回体50は、傾斜した又は略平坦状の電極材層の未塗工部分40(即ち巻回状態の集電体の一部のみが存在する部分)を有する。
【0048】
なお、集電板との接続前の巻回完了時には、電極材層の未塗工部分40は、電極の巻回延在方向に対して略垂直な方向に延在している(
図11参照)。即ち、集電板との接続前の巻回完了時には、電極材層の未塗工部分40は電極巻回体50の端部から突き出るように構成される。
【0049】
[本発明の特徴部分]
上記の構成を前提として、本願発明者は、電極材層の未塗工部分の密度を相対的に高くするための構成について鋭意検討した(
図3~
図5B参照)。
【0050】
その結果、本願発明者は、「少なくとも正極10の正極材層12につき、正極10の巻回方向に沿って厚みが漸次増大する部分を含む構成とする」ことを案出した。
【0051】
上記の構成によれば、正極材層12’の厚みが巻内側端から巻外側端まで一定である場合(
図6B参照)と比べて、以下の効果が奏され得る。具体的には、巻回状態の正極10における相互に隣り合う正極材層12の未塗工部分(即ち巻回状態の正極側の集電体11の一部のみが存在する部分)間の距離を小さくでき、それにより、全体として、巻回状態の正極10の正極材層12の未塗工部分における集電体11の密度を相対的に高くすることができる。
【0052】
巻回状態の正極材層12の未塗工部分における集電体11の密度をより増加させる観点からは、正極材層11の厚みは正極10の巻回方向に沿って巻内側端から巻外側端へと向かって漸次増大することが好ましい。
【0053】
その結果、この未塗工部分における集電体11の一部を介在部材(集電板70)と接続させるために用いられるレーザーが電極巻回体50の内部へ入り込むことを抑制することができる。これにより、集電板と電極巻回体とをより好適に溶接させることができる。また、電極巻回体50の構成要素の損傷を抑制することができる。そのため、本発明の一実施形態では、上記未塗工部分における正極側の集電体11の一部は電極巻回体50内へのレーザーの侵入抑制部材として機能し得る。
【0054】
又、本発明の一実施形態に係る二次電池の通常採り得る構成として、外装体60の本体部61の底部側に電極巻回体の負極が位置付けられ、蓋部62側に電極巻回体の正極が位置付けられ得る。この点につき、本発明の一実施形態では、正極側については、全体として、巻回状態の正極10の正極材層12の未塗工部分における集電体11の密度を相対的に高くすることができる。
【0055】
一方、負極側については、本発明の特異な電極材層の構造を必ずしも有する必要はなく、従前からの全体として均一な厚みの負極材層が用いられ得る。そのため、巻回状態の負極20の負極材層22の未塗工部分における集電体21の密度は正極側と比べて相対的に低くなり得る。そのため、発射体試験において、負極側にて圧力を逃がしやすくでき、外装体の底部の破裂を優先的に起こすことができる。その結果、正極側の蓋部が破裂して、内部の電極巻回体等が外部へ不意に突き出ることを回避でき、安全性の向上を図ることができる。
【0056】
少なくとも正極10の正極材層12の厚みが、正極10の巻回方向に沿って漸次増大する部分を含むことで、正極材層の体積が同じである条件下で、厚みが巻内側端から巻外側端まで一定である場合(
図6A参照)と比べて、巻回方向における正極材層12の長さを長くすることができる(
図5A参照)。これにより、少なくとも正極10の巻回数を増やすことができるため、抵抗が下がり、それにより電池の出力向上を図ることもできる。
【0057】
なお、上記の特異な構成については、後述するが、(1)電極巻回体50の作製前にて、正極の集電体11’の長手方向に沿って略同一方向に延在する正極材層12’を形成する場合(
図6A参照)と比べて、漸次傾斜する部分を含む正極材層12を形成し(
図5A参照)、その後、(2)電極巻回体50の作製時に傾斜構造を含む正極材層12を備えた正極10を巻き回すことで得ることができる。
【0058】
[本発明の二次電池の製造方法]
以下、本発明の二次電池の製造方法について、
図9~
図12Fを参照しながら説明する。なお、以下に説明する方法は一例にすぎず、本発明の一実施形態に係る二次電池の製造方法は、以下の方法に限定されるものではない。
【0059】
本発明の一実施形態に係る二次電池は、以下の工程を含む製造方法によって製造することができる。具体的には、本発明の一実施形態に係る二次電池の製造方法は、電極の形成工程、電極巻回体の形成工程、電極巻回体の端部調整工程、電極巻回体への集電板の取付け工程、集電板への絶縁体の貼付け工程、ならびに電極巻回体の外装体への収容および電解質の注入工程を含む。
【0060】
(電極の形成工程)
正極の形成に際して、まず、正極材層材料を調製する。正極材層材は正極材スラリーであり得る。正極材スラリーは、正極活物質およびバインダーを少なくとも含む材料である。かかる正極材スラリーを正極集電体として用いられる金属シート材(例えば、アルミニウム箔)に塗布し、ロールプレス機等で圧延する。これにより、正極前駆体が得られる。
【0061】
金属シート材は、帯状に長い形状を有していることが好ましく、そのような長尺状の金属シートの主面に対して正極材スラリーを塗布する。塗布するエリアは、長尺状の金属シートの全領域ではなく、金属シート材の長手端部および短手端部を除く主面であり得る。正極材スラリーを塗布しない金属シート材の長手端部および短手端部は未塗工部分となる。
【0062】
この正極材層材の塗布に際して、本発明の一実施形態では、少なくとも正極材層材(正極材スラリーに相当)が正極側の金属シート材(正極側の集電体に相当)の長手方向に沿って漸次傾斜する部分を含むように金属シート材の主面に正極材層材を塗布する。好ましくは、正極材層材が正極側の集電体の長手方向に沿って一方の側から他方の側まで漸次傾斜するように、正極材層材の塗布を行う。
【0063】
負極の形成に際しても同様に、まず、負極材層材料を調製する。負極材層材は負極材スラリーであり得る。負極材スラリーは、負極活物質およびバインダーを少なくとも含む材料である。かかる負極材スラリーを負極集電体として用いられる金属シート材(例えば、銅箔)に塗布し、ロールプレス機等で圧延する。これにより、負極前駆体が得られる。
【0064】
金属シート材は、帯状に長い形状を有していることが好ましく、そのような長尺状の金属シートに対して負極材スラリーを塗布する。塗布するエリアは、長尺状の金属シートの全領域ではなく、金属シート材の長手端部および短手端部を除く主面であり得る。負極材スラリーを塗布しない金属シート材の長手端部および短手端部は未塗工部分となる。
【0065】
なお、本発明の一実施形態では、負極材層材(負極材スラリーに相当)が負極側の金属シート材(負極側の集電体に相当)の長手方向に沿って漸次傾斜する部分を含むように金属シート材の主面に負極材層材を更に塗布することができる。好ましくは、負極材層材が負極側の集電体の長手方向に沿って一方の側から他方の側まで漸次傾斜するように、負極材層材の塗布を行うことができる。
【0066】
(電極巻回体の形成工程)
図9は、本発明の一実施形態に係る二次電池を構成する電極巻回体の構成部材を説明するための模式斜視図である。
図10は、本発明の一実施形態に係る電極巻回体の巻回態様を説明するための模式的斜視図である。
【0067】
本工程においては、矩形状を有する正極10、負極20およびセパレータ30を所定の順序で互いに重なるように巻回することで、電極巻回体を得る。具体的には、まず、正極10、負極20、および2枚のセパレータ30を所定の順序で配置する(
図9参照)。正極10または負極20は、巻回前の長手端部に電極材層の未塗工部分(即ち集電体の一部のみが存在する部分)が露出している。
【0068】
その後、正極10と負極20との間にセパレータ30を重ねて、正極側の未塗工部分41が負極20およびセパレータ30より外側に延在し、負極側の未塗工部分42が正極およびセパレータ30より外側に延在する状態で、正極10、セパレータ30、および負極20の積層体を巻回する(
図10参照)。
【0069】
以上により、未塗工部分40が電極の巻回延在方向に対して略垂直な方向に延在した形態を有する電極巻回体を得ることができる(
図11A参照)。即ち、電極材層の未塗工部分40が巻回方向に沿った電極巻回体50の端部から突き出る構成を有する。
【0070】
(電極巻回体の端部調整工程)
電極巻回体50の形成後、同巻回体の端部調整を行う(
図11Bおよび
図11C参照)。具体的には、巻回状態の正極材層の未塗工部分41および負極材層の未塗工部分42のそれぞれにおける集電体の露出部分に荷重を加えて各露出部分を押圧する。これにより、傾いたまたは平坦状の各電極の集電体の露出部分40X(41X、42X)を得ることができる。
【0071】
より具体的には、各電極の集電体の露出部分は電極の巻回方向に対して略垂直な方向に渦巻き状に突き出ており、この突き出た集電体の露出部分を押圧して、傾けまたは平坦状にする。具体的には、巻回軸に対して交差する方向または垂直な方向に集電体の露出部分を位置付ける。これにより、渦巻き状の露出部分が折り重ねることができる。
【0072】
押圧手段としては、平板等を用いることができる。集電体の露出部分の押圧をしやすく観点から、各電極(正極および負極)の集電体の露出部分に所定の間隔をおいて溝を形成することができる。溝の形成手段としては、集電体の露出部分に対し任意の凹凸形状を有する金属片を用いることができる。
【0073】
(電極巻回体への集電板の取付け工程)
その後、各電極の集電体の傾いた又は平坦状の露出部分に集電板70を取り付ける(
図11C参照)。集電板70の取付けは、熱接合、例えば溶接、または溶着などによって実施することができる。一例として、集電板と電極巻回体とは、レーザー照射法によって溶接され得る。集電板側からレーザーを照射することにより、集電板70と集電板70直下の集電体の露出部分(電極材層の未塗工部分に対応)を溶解し、合金化させることで、両者を溶接することができる。
【0074】
(集電板への絶縁体の貼付け工程)
その後、各電極の集電板70に絶縁体(絶縁テープ等)を貼り付ける(
図11D参照)。この際、集電板70の一部、具体的には長尺部76が絶縁体95を部分的に貫通可能に、絶縁体95は貫通孔を有することが好ましい。
【0075】
(電極巻回体の外装体への収容および電解質の注入工程)
その後、集電板70付きの電極巻回体50Yを外装体の本体部61(
図11E参照)に収容する。具体的には、集電板70付きの電極巻回体50Yの上下にインシュレーター85を位置付けると共に、負極側の集電板71が本体部61の底部に位置するように、外装体の本体部61に収容する。
【0076】
この際、本体部61の底部と負極側の集電板71とを缶底溶接等により相互に接続させる。インシュレーター85の配置については、上記の集電体70への絶縁体95の貼付け工程後に実施することもできる。
【0077】
その後、正極端子81と正極側の集電板71を接続させた状態で、正極端子構造体80付きの蓋部62を本体部61に接着させて、本体部61の開口部の蓋をすると共に、本体部61および蓋部62から構成される外装体60の注入口から電解液を注入する。注入口については、封止プラグで封止めすることができる。
【0078】
以上により、本発明の一実施形態に係る二次電池100を得ることができる(
図1参照)
【実施例0079】
以下、実施例1~3および比較例1~4について説明する。
【0080】
実施例1
[巻回前状態にて正極材層および負極材層共に傾斜構造を有するパターン]
(電極の形成工程)
まず、正極側の集電体(アルミ箔シート)に正極材層材を塗布し、その後圧延処理を行うことで、正極側の集電体11Aおよび傾斜構造を有する正極材層12Aを有する正極10Aを形成した(
図8A参照)。なお、正極材層材が正極側の集電体の長手方向に沿って一方の側(後刻の正極巻回時の巻内側に相当)から他方の側(後刻の正極巻回時の巻外側に相当)まで漸次傾斜するように、正極材層材の塗布を行った。
【0081】
同様に、負極側の集電体(銅箔シート)に負極材層材を塗布し、その後圧延処理を行うことで、負極側の集電体21Aおよび傾斜構造を有する負極材層22Aを有する負極20Aを形成した(
図8A参照)。なお、負極材層材が負極側の集電体の長手方向に沿って一方の側(後刻の負極巻回時の巻内側に相当)から他方の側(後刻の負極巻回時の巻外側に相当)まで漸次傾斜するように、負極材層材の塗布を行った。
【0082】
なお、得られる各電極の傾斜構造の電極材層の高さおよび集電体の長さは以下のとおり(
図7参照)。
●正極材層および負極材層のそれぞれの他方の側(後刻の電極巻回時の巻外側に相当)の高さ:A(15μm以上70μm以下、15μm以上70μm以下)
●正極材層および負極材層のそれぞれの一方の側(後刻の電極巻回時の巻内側に相当)の高さ:B(A×40%)(6μm以上28μm以下、6μm以上28μm以下)
●正極材層および負極材層のそれぞれと接する部分における集電体の長さ:C(1500
mm以上1900mm以下、1500mm以上1900mm以下)
【0083】
(電極巻回体の形成工程)
電極の形成後、正極、負極およびセパレータを所定の順序で互いに重なるように巻回することで、電極巻回体を得た。
【0084】
(電極巻回体の端部調整工程)
電極巻回体の形成後、巻回状態の正極材層の未塗工部分および負極材層の未塗工部分のそれぞれにおける集電体の露出部分に荷重を加えて各露出部分を押圧した。これにより、平坦状の各電極の集電体の露出部分を得た。
【0085】
(電極巻回体への集電板の取付け工程)
その後、各電極の集電体の平坦状の露出部分に集電板をそれぞれ取り付けた。
【0086】
(集電板への絶縁体の貼付け工程)
集電体の取付け後、各電極の集電板に絶縁体(絶縁テープ等)を貼り付けた。
【0087】
(電極巻回体の外装体への収容および電解質の注入工程)
絶縁体の貼付け後、集電板付きの電極巻回体を外装体の本体部に収容した。具体的には、集電板付きの電極巻回体の上下にインシュレーターを位置付けると共に、負極側の集電板が本体部の底部に位置するように、外装体の本体部に収容した。この際、本体部の底部と負極側の集電板とを缶底溶接により相互に接続させた。
【0088】
その後、正極端子と正極側の集電板を接続させた状態で、正極端子構造体付きの蓋部を本体部に接着させて、本体部の開口部の蓋をすると共に、外装体の注入口から電解液を注入し、その後封止めした。
【0089】
以上により、実施例1の二次電池を作製した。
【0090】
二次電池の作製後、溶接不良率(%)((不良点数/全点数)×100)および発射体試験を実施した。その結果は以下のとおりであった。ここでいう「発射体試験」とは、UL1642(試験規格)にならって実施する二次電池の安全性試験である。この発射体試験では、作製した二次電池を火炎に直接曝し、ワイヤースクリーンを突き破るような爆発が無いかの確認を行う。
【0091】
(実施例1の測定結果)
●溶接不良率(%):0%
●発射体試験 NG:0/20
【0092】
以下の実施例2および3、ならびに比較例1~4では、実施例1を基準として異なる実施工程のみについて説明する。その他の同一または実質同一の工程については、記載の重複を避けるため説明を割愛または省略する。
【0093】
実施例2
[巻回前状態にて正極材層のみが傾斜構造を有するパターン]
実施例2では、電極の形成工程において、正極側の集電体(アルミ箔シート)に正極材層材を塗布し、その後圧延処理を行うことで、正極側の集電体11Bおよび傾斜構造を有する正極材層12Bを有する正極10Bを形成した(
図8B参照)。なお、正極材層材が正極側の集電の長手方向に沿って一方の側(後刻の正極巻回時の巻内側に相当)から他方の側(後刻の正極巻回時の巻外側に相当)まで漸次傾斜するように、正極材層材の塗布を行った。
【0094】
一方、負極側の集電体(銅箔シート)に負極材層材を塗布し、その後圧延処理を行うことで、負極側の集電体21Bおよび均一な厚さを有する負極材層22Bを有する負極20Bを形成した(
図8B参照)。なお、正極の場合と異なり、負極材層材が負極側の集電体の長手方向に沿って一方の側(後刻の負極巻回時の巻内側に相当)から他方の側(後刻の負極巻回時の巻外側に相当)まで同一の厚みを有するように、負極材層材の塗布を行った。
【0095】
得られる正極の傾斜構造の正極材層の高さおよび集電体の長さは以下のとおり(
図7参照)。
●正極材層の他方の側(後刻の正極巻回時の巻外側に相当)の高さ:A(15μm以上70μm以下)
●正極材層の一方の側(後刻の正極巻回時の巻内側に相当)の高さ:B(A×40%)(6μm以上28μm以下)
●正極材層と接する部分における集電体の長さ:C(1500mm以上1900mm以下)
【0096】
その他実施例1と同様の工程を実施して、二次電池を作製した。その後、溶接不良率(%)((不良点数/全点数)×100)および発射体試験を実施した。その結果は以下のとおりであった。
【0097】
(実施例2の測定結果)
●溶接不良率(%):0%
●発射体試験NG:0/20回
【0098】
実施例3
[巻回前状態にて正極材層のみが2段階の傾斜構造を有するパターン]
実施例3では、電極の形成工程において、正極側の集電体(アルミ箔シート)に正極材層材を塗布し、その後圧延処理を行うことで、正極側の集電体11Cおよび2段階の傾斜構造を有する正極材層12Cを有する正極10Cを形成した(
図8C参照)。なお、正極材層材が正極側の集電の長手方向に沿って一方の側(後刻の正極巻回時の巻内側に相当)から他方の側(後刻の正極巻回時の巻外側に相当)まで漸次傾斜し、かつ2段階構造の傾斜をするように、正極材層材の塗布を行った。
【0099】
一方、負極側の集電体(銅箔シート)に負極材層材を塗布し、その後圧延処理を行うことで、負極側の集電体21Cおよび均一な厚さを有する負極材層22Cを有する負極20Cを形成した(
図8C参照)。なお、正極の場合と異なり、負極材層材が負極側の集電体の長手方向に沿って一方の側(後刻の負極巻回時の巻内側に相当)から他方の側(後刻の負極巻回時の巻外側に相当)まで同一の厚みを有するように、負極材層材の塗布を行った。
【0100】
得られる正極の傾斜構造の正極材層の高さおよび集電体の長さは以下のとおり(
図7参照)。
●正極材層の他方の側(後刻の正極巻回時の巻外側に相当)の高さ:A(15μm以上70μm以下)
●正極材層の一方の側(後刻の正極巻回時の巻内側に相当)の高さ:B(A×40%)(6μm以上28μm以下)
●正極材層と接する部分における集電体の長さ:C(1500mm以上1900mm以下)
【0101】
その他実施例1と同様の工程を実施して、二次電池を作製した。その後、溶接不良率(%)((不良点数/全点数)×100)および発射体試験を実施した。その結果は以下のとおりであった。
【0102】
(実施例3の測定結果)
●溶接不良率(%):0%
●発射体試験NG:0/20回
【0103】
比較例1
[巻回前状態にて正極材層の一方の側(後刻の正極巻回時の巻内側に相当)のみが傾斜構造を有するパターン]
比較例1では、電極の形成工程において、正極側の集電体(アルミ箔シート)に正極材層材を塗布し、その後圧延処理を行うことで、正極側の集電体11Dおよび一方の側(後刻の正極巻回時の巻内側に相当)のみが傾斜構造を有する正極材層12Dを有する正極10Dを形成した(
図8D参照)。なお、正極材層材が正極側の集電の長手方向に沿って一方の側(後刻の正極巻回時の巻内側に相当)のみが傾斜するように、正極材層材の塗布を行った。
【0104】
一方、負極側の集電体(銅箔シート)に負極材層材を塗布し、その後圧延処理を行うことで、負極側の集電体21Dおよび均一な厚さを有する負極材層22Dを有する負極20Dを形成した(
図8D参照)。なお、正極の場合と異なり、負極材層材が負極側の集電体の長手方向に沿って一方の側(後刻の負極巻回時の巻内側に相当)から他方の側(後刻の負極巻回時の巻外側に相当)まで同一の厚みを有するように、負極材層材の塗布を行った。
【0105】
得られる正極の傾斜構造の正極材層の高さおよび集電体の長さは以下のとおり(
図7参照)。
●正極材層の他方の側(後刻の正極巻回時の巻外側に相当)の高さ:A(15μm以上70μm以下)
●正極材層の一方の側(後刻の正極巻回時の巻内側に相当)の高さ:B(A×40%)(6μm以上28μm以下)
●正極材層と接する部分における集電体の長さ:C(1500mm以上1900mm以下)
【0106】
その他実施例1と同様の工程を実施して、二次電池を作製した。その後、溶接不良率(%)((不良点数/全点数)×100)および発射体試験を実施した。その結果は以下のとおりであった。
【0107】
(比較例1の測定結果)
●溶接不良率(%):5%
●発射体試験NG:0/20回
【0108】
比較例2
[巻回前状態にて正極材層および負極材層の他方の側(後刻の電極巻回時の巻外側に相当)のみが傾斜構造を有するパターン]
比較例2では、電極の形成工程において、正極側の集電体(アルミ箔シート)に正極材層材を塗布し、その後圧延処理を行うことで、正極側の集電体11Eおよび他方の側(後刻の正極巻回時の巻外側に相当)のみが傾斜構造を有する正極材層12Eを有する正極10Eを形成した(
図8E参照)。なお、正極材層材が正極側の集電の長手方向に沿って他方の側(後刻の正極巻回時の巻外側に相当)のみが傾斜するように、正極材層材の塗布を行った。
【0109】
同様に、負極側の集電体(銅箔シート)に負極材層材を塗布し、その後圧延処理を行うことで、負極側の集電体21Eおよび他方の側(後刻の負極巻回時の巻外側に相当)のみが傾斜構造を有する負極材層22Eを有する負極20Eを形成した(
図8E参照)。なお、負極材層材が負極側の集電の長手方向に沿って他方の側(後刻の負極巻回時の巻外側に相当)のみが傾斜するように、負極材層材の塗布を行った。
【0110】
なお、得られる各電極の傾斜構造の電極材層の高さおよび集電体の長さは以下のとおり(
図7参照)。
●正極材層および負極材層のそれぞれの他方の側(後刻の電極巻回時の巻外側に相当)の高さ:A(15μm以上70μm以下、15μm以上70μm以下)
●正極材層および負極材層のそれぞれの一方の側(後刻の電極巻回時の巻内側に相当)の高さ:B(A×40%)(6μm以上28μm以下、6μm以上28μm以下)
●正極材層および負極材層のそれぞれと接する部分における集電体の長さ:C(1500mm以上1900mm以下、1500mm以上1900mm以下)
【0111】
その他実施例1と同様の工程を実施して、二次電池を作製した。その後、溶接不良率(%)((不良点数/全点数)×100)および発射体試験を実施した。その結果は以下のとおりであった。
【0112】
(比較例2の測定結果)
●溶接不良率(%):2%
●発射体試験NG:7/20回
【0113】
比較例3
[巻回前状態にて負極材層のみが傾斜構造を有するパターン]
比較例3では、電極の形成工程において、正極側の集電体(アルミ箔シート)に正極材層材を塗布し、その後圧延処理を行うことで、正極側の集電体11Fおよび均一な厚さを有する正極材層12Fを有する正極10Fを形成した(
図8F参照)。なお、正極材層材が正極側の集電体の長手方向に沿って一方の側(後刻の正極巻回時の巻内側に相当)から他方の側(後刻の正極巻回時の巻外側に相当)まで同一の厚みを有するように、正極材層材の塗布を行った。
【0114】
一方、負極側の集電体(銅箔シート)に負極材層材を塗布し、その後圧延処理を行うことで、負極側の集電体21Fおよび傾斜構造を有する負極材層22Fを有する負極20Fを形成した(
図8F参照)。なお、負極材層材が負極側の集電の長手方向に沿って一方の側(後刻の負極巻回時の巻内側に相当)から他方の側(後刻の負極巻回時の巻外側に相当)まで漸次傾斜するように、負極材層材の塗布を行った。
【0115】
得られる負極の傾斜構造の負極材層の高さおよび集電体の長さは以下のとおり(
図7参照)。
●負極材層の他方の側(後刻の負極巻回時の巻外側に相当)の高さ:A(15μm以上70μm以下)
●負極材層の一方の側(後刻の負極巻回時の巻内側に相当)の高さ:B(A×40%)(6μm以上28μm以下)
●負極材層と接する部分における集電体の長さ:C(1500mm以上1900mm以下)
【0116】
その他実施例1と同様の工程を実施して、二次電池を作製した。その後、溶接不良率(%)((不良点数/全点数)×100)および発射体試験を実施した。その結果は以下のとおりであった。
【0117】
(比較例3の測定結果)
●溶接不良率(%):0%
●発射体試験NG:13/20回
【0118】
比較例4
[巻回前状態にて正極材層および負極材層共に均一な高さを有するパターン]
比較例4では、電極の形成工程において、正極側の集電体(アルミ箔シート)に正極材層材を塗布し、その後圧延処理を行うことで、正極側の集電体11Gおよび均一な厚さを有する正極材層12Gを有する正極10Gを形成した(
図8G参照)。なお、正極材層材が正極側の集電体の長手方向に沿って一方の側(後刻の正極巻回時の巻内側に相当)から他方の側(後刻の正極巻回時の巻外側に相当)まで同一の厚みを有するように、正極材層材の塗布を行った。
【0119】
同様に、負極側の集電体(銅箔シート)に負極材層材を塗布し、その後圧延処理を行うことで、負極側の集電体21Gおよび均一な厚さを有する負極材層22Gを有する負極20Gを形成した(
図8G参照)。なお、負極材層材が負極側の集電の長手方向に沿って一方の側(後刻の負極巻回時の巻内側に相当)から他方の側(後刻の負極巻回時の巻外側に相当)まで同一の厚みを有するように、負極材層材の塗布を行った。
【0120】
得られる各電極の高さおよび集電体の長さは以下のとおり(
図7参照)。
●各電極材層の他方の側(後刻の電極巻回時の巻外側に相当)の高さ:A(それぞれ15μm以上70μm以下)
●各電極材層の一方の側(後刻の電極巻回時の巻内側に相当)の高さ:B(A×100%)(それぞれ15μm以上70μm以下)
●各電極材層と接する部分における集電体の長さ:C(それぞれ1500mm以上1900mm以下)
【0121】
その他実施例1と同様の工程を実施して、二次電池を作製した。その後、溶接不良率(%)((不良点数/全点数)×100)および発射体試験を実施した。その結果は以下のとおりであった。
【0122】
(比較例4の測定結果)
●溶接不良率(%):8%
●発射体試験NG:5/20回
【0123】
以上の実施例1~実施例3および比較例1~比較例4の結果から、巻回前において、少なくとも正極材層が正極の集電体の長手方向に沿って漸次傾斜する部分を含むと、即ち、巻回後でいえば、少なくとも正極の正極材層が正極の巻回方向に沿って厚みが漸次増大する部分を含むと、溶接不良率が0%となり、かつ発射体試験NGがゼロになることが分かった。
【0124】
実施例4
電極巻回前において、
図7に示すように、均一な厚みを有する電極材層を有する電極を形成する場合と比べて、傾斜構造の電極材層を有する電極を形成する場合の電極材層の増加長を算出した。
【0125】
具体的には、電極材層の一方の側(後刻の電極巻回時の巻内側に相当)の高さ:B、電極材層の他方の側(後刻の負極巻回時の巻外側に相当)の高さ:A、および各電極材層と接する部分における集電体の長さ:Cに関する、下記の式により、上記の電極材層の増加長を算出した。
【0126】
●電極材層の他方の側(後刻の電極巻回時の巻外側に相当)の高さ:A
●電極材層の一方の側(後刻の電極巻回時の巻内側に相当)の高さ:B=A×比率(0.1~99.9%)
●電極材層と接する部分における集電体の長さ:C(1500mm)
●増加長:((2×A×C)/(A+B))-C
【0127】
【0128】
表1から分かるように、基準(Ref.)と比べて、電極材層の他方の側(後刻の電極巻回時の巻外側に相当)の高さ:Aと電極材層の一方の側(後刻の電極巻回時の巻内側に相当)の高さBとが異なる場合(電極材層が傾斜構造を有する場合)、両者が同じである場合と比べて、電極材層の長さを増加させることができることが分かった。また、これに伴い、電極の巻回回数も増加させることができることが分かった。これにより、巻回時に電極材層の未塗工部分の密度を相対的に高くすることができると分かった。
【0129】
以上、本発明の実施形態について説明してきたが、あくまでも典型例を例示したに過ぎない。本発明はこれに限定されず、本発明の要旨を変更しない範囲において種々の態様が考えられることを、当業者は容易に理解されよう。
【0130】
本発明の一実施形態に係る二次電池の態様は、以下のとおりである。
<1>
正極と、負極と、前記正極および前記負極の間に配置されたセパレータとを備えた電極巻回体を含み、
前記正極および前記負極のそれぞれの電極は、集電体と前記集電体の主面に塗工された電極材層とを備え、および、巻回方向に沿った長手側の端部に前記電極材層の未塗工部分を有し、
少なくとも前記正極において、正極材層は、前記正極の巻回方向に沿って厚みが漸次増大する部分を含む、二次電池。
<2>
前記正極材層の厚みが前記正極の巻回方向に沿って巻内側端から巻外側端へと向かって漸次増大する、<1>に記載の二次電池。
<3>
前記正極材層の厚みが巻内側端から巻外側端まで一定である場合と比べて、巻回状態の前記正極の前記正極材層の前記未塗工部分における前記集電体の密度が高い、<1>又は<2>に記載の二次電池。
<4>
前記巻回方向に沿って設けられた正極材層の前記未塗工部分における正極側の前記集電体の一部が正極側の集電板と接続され、前記巻回方向に沿って設けられた負極材層の前記未塗工部分における負極側の前記集電体の一部が負極側の集電板と接続される、<1>~<3>のいずれかに記載の二次電池。
<5>
正極材層の前記未塗工部分における正極側の前記集電体の一部と正極側の前記集電板とがレーザーにて接続され、前記正極側の集電体の一部が前記電極巻回体内への前記レーザーの侵入抑制部材である、<4>に記載の二次電池。
<6>
前記正極材層の厚みが巻内側端から巻外側端まで一定である場合と比べて、巻回状態の前記正極の相互に隣り合う前記未塗工部分間の距離が小さい、<1>~<5>のいずれかに記載の二次電池。
<7>
正極材層の体積が同じである条件下で、厚みが巻内側端から巻外側端まで一定である場合と比べて、前記巻回方向における前記正極材層の長さが長い、<1>~<6>のいずれかに記載の二次電池。
<8>
前記正極材層は、前記正極の巻回方向に沿った厚み増大率が異なる部分を少なくとも2つ含む、<1>~<7>のいずれかに記載の二次電池。
<9>
前記負極の負極材層の厚みが前記負極の巻回方向に沿って漸次増大する部分を更に含む、<1>~<8>のいずれかに記載の二次電池。
<10>
巻回前の状態にて、少なくとも前記正極材層は、前記正極の集電体の長手方向に沿って漸次傾斜する部分を含む、<1>~<9>のいずれかに記載の二次電池。
<11>
前記電極巻回体を内部に収容可能な外装体を更に含み、前記外装体が本体部および蓋部を備え、負極側の前記集電板が前記本体部の底部と接続され、正極側の前記集電板が前記蓋部に配置された端子と接続される、<1>~<10>のいずれかに記載の二次電池。
<12>
前記電極がリチウムイオンを吸蔵放出可能となっている、<1>~<11>のいずれかに記載の二次電池。
<13>
集電体の主面に電極材層材を塗布して電極を形成する工程と、
セパレータを挟んで前記電極としての正極と、負極との積層体を巻き回して、電極巻回体を形成する工程とを含み、
前記電極を形成する工程において、各電極の前記集電体の長手方向に沿った端部に電極材層材の未塗工部を形成し、および、少なくとも、正極材層材が前記正極側の集電体の長手方向に沿って漸次傾斜する部分を含むように前記正極側の集電体の主面に前記正極材層材を塗布する、二次電池の製造方法。
<14>
前記正極材層材が前記正極側の集電体の長手方向に沿って一方の側から他方の側まで漸次傾斜するように、前記正極材層材の塗布を行う、<13>に記載の二次電池の製造方法。
<15>
前記電極巻回体を形成する工程後に、巻回状態の各電極の電極材層の未塗工部分における前記集電体の露出部分を傾けまたは平坦状にし、その後、レーザーを用いて各電極の集電体の前記露出部分と集電板とを接続させる工程を含む、<13>又は<14>に記載の製造方法。
<16>
各電極の集電体の露出部分に所定の間隔をおいて溝を形成し、その後、前記露出部分を押圧して傾けまたは平坦状にする、<15>に記載の製造方法。
本発明の一実施形態に係る二次電池は、蓄電が想定される様々な分野に利用することができる。あくまでも例示にすぎないが、本発明の二次電池は、モバイル機器などが使用される電気・情報・通信分野(例えば、携帯電話、スマートフォン、ノートパソコンおよびデジタルカメラ、活動量計、アームコンピューター、電子ペーパー、RFIDタグ、カード型電子マネー、スマートウォッチなどの小型電子機などを含む電気・電子機器分野あるいはモバイル機器分野)、家庭・小型産業用途(例えば、電動工具、ゴルフカート、家庭用・介護用・産業用ロボットの分野)、大型産業用途(例えば、フォークリフト、エレベーター、湾港クレーンの分野)、交通システム分野(例えば、ハイブリッド車、電気自動車、バス、電車、電動アシスト自転車、電動二輪車などの分野)、電力系統用途(例えば、各種発電、ロードコンディショナー、スマートグリッド、一般家庭設置型蓄電システムなどの分野)、ならびに、医療用途(イヤホン補聴器などの医療用機器分野)、医薬用途(服用管理システムなどの分野)、IoT分野、宇宙・深海用途(例えば、宇宙探査機、潜水調査船などの分野)などにも本発明を利用することができる。