(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024030947
(43)【公開日】2024-03-07
(54)【発明の名称】発光材料、この発光材料の製造方法、および、この発光材料を用いたインク組成物
(51)【国際特許分類】
C09K 11/65 20060101AFI20240229BHJP
C09D 11/00 20140101ALI20240229BHJP
C09K 11/08 20060101ALI20240229BHJP
【FI】
C09K11/65
C09D11/00
C09K11/08 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022134201
(22)【出願日】2022-08-25
(71)【出願人】
【識別番号】503027931
【氏名又は名称】学校法人同志社
(74)【代理人】
【識別番号】100076406
【弁理士】
【氏名又は名称】杉本 勝徳
(74)【代理人】
【識別番号】100171941
【弁理士】
【氏名又は名称】辻 忠行
(72)【発明者】
【氏名】大谷 直毅
(72)【発明者】
【氏名】新美 尚弘
【テーマコード(参考)】
4H001
4J039
【Fターム(参考)】
4H001CF02
4H001XA06
4H001XA07
4H001YA63
4H001YA65
4J039BA17
4J039BA39
4J039BC07
4J039BC18
4J039BC31
4J039BC36
4J039BC54
4J039BE01
4J039BE12
4J039CA07
4J039EA28
4J039EA44
4J039GA24
(57)【要約】
【課題】所望の色の発光が得られるとともに、有機分散媒への分散性に優れる無機材料からなる発光材料、この発光材料の製造方法、およびこの発光材料を用いたインク組成物を提供することを目的とする。
【解決手段】ベンゾグアナミンと、塩化テルビウム六水和塩あるいは塩化ユウロピウム六水和塩との混合物を加熱して、ベンゾグアナミン由来の窒化炭素結晶を形成すると同時にこの窒化炭素結晶中にTb3+あるいはEu3+をドープして発光材料を得るようにした。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベンゾグアナミンの焼成体からなる窒化炭素結晶中に遷移金属イオンがドープされるとともに、有機分散媒に安定分散可能であることを特徴とする発光材料。
【請求項2】
前記遷移金属イオンがテルビウムイオンである請求項1に記載の発光材料。
【請求項3】
前記テルビウムイオンが全体の4~10重量%の割合でドープされている請求項2に記載の発光材料。
【請求項4】
前記有機分散媒が、N,N-ジメチルホルムアミドである請求項2または請求項3に記載の発光材料。
【請求項5】
前記ベンゾグアナミンと、テルビウム塩を混合したのち、この混合物を焼成するテルビウムイオンドープ工程を備える請求項2に記載の発光材料の製造方法。
【請求項6】
前記テルビウム塩が、塩化テルビウムである請求項5に記載の発光材料の製造方法。
【請求項7】
前記テルビウムイオンドープ工程の焼成温度が240℃以上300℃以下である請求項5または請求項6に記載の発光材料の製造方法。
【請求項8】
前記遷移金属イオンがユウロピウムイオンである請求項1に記載の発光材料。
【請求項9】
前記ユウロピウムイオンが全体の3~10重量%の割合でドープされている請求項8に記載の発光材料。
【請求項10】
前記有機分散媒が、N,N-ジメチルホルムアミド、エタノール、テトラヒドロフラン、ジメチルスルホキシドからなる群より選ばれたいずれか1種である請求項8または請求項9に記載の発光材料。
【請求項11】
前記ベンゾクアナミンと、ユウロピウム塩を混合したのち、この混合物を焼成するユウロピウムイオンドープ工程を備える請求項8に記載の発光材料の製造方法。
【請求項12】
前記ユウロピウム塩が、塩化ユウロピウムである請求項11に記載の発光材料の製造方法。
【請求項13】
前記ユウロピウムイオンドープ工程の焼成温度が240℃以上300℃以下である請求項11または請求項12に記載の発光材料の製造方法。
【請求項14】
請求項1、請求項2または請求項8に記載の発光材料を、有機分散媒中にコロイド分散させたコロイド分散液を含むことを特徴とするインク組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機分散媒への分散性がよく、インクジェット印刷装置を用いて印刷することが可能な発光材料、この発光材料の製造方法、および、この発光材料を用いたインク組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
我々が日常的に使用しているスマートフォンをはじめとした多くの電化製品にディスプレイが用いられている。特に、ここ最近は新型コロナウイルスの影響でテレワークの急速な普及と巣ごもり需要の拡大によりパソコンやタブレット端末、スマートフォンなどの需要が高まり、それに伴い、ディスプレイの需要も急拡大している。
【0003】
その中でも、近年目覚ましい進歩を遂げつつある有機ELディスプレイは、素子単体が光り、バックライトが不要であるため軽くて薄く、さらに高画質であるため多くのデジタル端末に採用されつつある。
【0004】
有機ELの基本構造は、電極2枚で有機物の発光材料を挟み込んだものとなっており、電極に直流電圧をかけることで陽極からホール、陰極から電子が有機層に送り込まれ、それらが発光層で再結合することで、有機分子が一旦励起状態と呼ばれる高エネルギー状態に活性化され、これが元の安定状態である基底状態へ戻る際に発光する。
【0005】
発光層は有機ELの中で最も核となる役割を担っており、その材料には、高い発光量子効率を持つこと、成膜性がよいこと、キャリアの輸送性が高いことが求められる。そこで安価で環境にやさしい原料を用いて、ウェットプロセスによる簡単な方法で発光層を作製することができれば、有機ELの低価格化に貢献できると考えられる。
【0006】
一方、LEDを約10μmまで微細化し、RGBの3色の発光材料を平面上に敷き詰めてパネルを作り出すマイクロLEDが次世代技術として注目されている。
【0007】
すなわち、マイクロLEDは、自発光型の無機LEDで作られるため、有機ELに比べ、劣化が遅く、長寿命であるとともに、輝度が高いという利点を有していることで、メガネ型ウエアラブルデバイス等の小型・軽量化および高画質化が期待されている。
【0008】
このようなマイクロLEDとして、
図14に示すような、サファヤ基板100上にGaN系材料をエピタキシャル成長させて縦横が数十μm程度の小さいチップ状の紫外LED200を形成したのち、この紫外LED200上にInGaN系の無機材料からなる赤色発光層300、緑色発光層400、青色発光層500をそれぞれ積層することによって得られるマイクロLEDが提案されている(特許文献1)。
【0009】
しかし、先に提案された上記マイクロLEDは、窒化ガリウムをベースとしており、製造コストが高いため、価格も高いものとならざるを得ず、ほとんど実用化されていないのが現状である。
また、3種類の蛍光体にはCdTe系量子ドットを用いる研究が主流となってきている。
しかしながら、CdTe系量子ドットは、毒性の強いカドミウムを用いることがネックになっており、使用済みの製品の廃棄に厳密な管理が必要となるという問題がある。
【0010】
この問題を解決するために、本発明の発明者は、発光材料を、インクジェット装置を用いて印刷することができれば、マスキング工程を省くことができ、製造工程が簡略化できて、マイクロLEDの生産性が向上し、低コスト化が図れると考えた。
【0011】
そこで、本発明の発明者は、尿素、(イソ)シアヌル酸及び/又はメラミンを原料として用い、当該原料を焼成することによって、メタノールなどの有機分散媒に分散性があり、ウェットプロセスで窒化炭素膜することができる分散性窒化炭素を製造する方法を既に提案している(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開2020-57749号公報
【特許文献2】特開2021-187709号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
しかし、上記製造方法で得られる窒化炭素結晶のみでは、青色発光の単色の発光材料しか得ることができない。
【0014】
そこで、本発明の発明者は、特許文献2の上記窒化炭素化合物に、さらにユウロピウム塩を混ぜた状態で焼成すれば、窒化炭素結晶中にユウロピウムイオンがドープされて赤色に発光するとともに、有機分散媒に分散しやすい発光材料が得られるのではないかと考え、鋭意検討を行なった。
【0015】
しかしながら、上記のように、尿素、(イソ)シアヌル酸及び/又はメラミンにユウロピウム塩を混ぜた状態で焼成する方法で得られる発光材料は、有機分散媒に対して分散性が悪く、ウェットプロセスで用いることが難しいことがわかった。
【0016】
本発明は、所望の色の発光が得られるとともに、有機分散媒への分散性に優れる無機材料からなる発光材料、この発光材料の製造方法、およびこの発光材料を用いたインク組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
上記課題を解決するため、本発明の発光材料は、ベンゾグアナミンの焼成体からなる窒化炭素結晶中に遷移金属イオンがドープされ、有機分散媒に良分散性を備えることを特徴としている。
【0018】
本発明において、有機分散媒に良分散性を備えるとは、使用状態において、粒子径100nm以下のコロイド粒子が有機分散媒中に安定した分散状態となることを意味し、1日以上分散状態が保たれることが好ましい。
【0019】
上記ベンゾグアンアミンは、下式で示すトリアジン構造を持つ白色粉末の有機化合物である
【0020】
【0021】
本発明の発光材料において、遷移金属イオンとしてテルビウムイオンを用いれば、緑色に発光する発光材料となる。
そして、遷移金属イオンがテルビウムイオンである場合、特に限定されないが、前記テルビウムイオンが全体の4重量%以上10重量%以下の割合でドープされていることが好ましい。
すなわち、ドープ量が少ないと十分な強度の発光が得られないおそれがあり、多すぎると、原料コストが嵩む上、逆に発光強度が弱くなるおそれがある。
【0022】
また、遷移金属イオンがテルビウムイオンである場合、有機分散媒としては、良分散性を確保できれば、特に限定されないが、たとえば、N,N-ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシドが挙げられ、これらが単独であるいはこれらを混合した混合媒の状態で用いられてもよいが、発光材料が高濃度でも安定した分散状態の分散液を得られることからN,N-ジメチルホルムアミドが好ましい。
【0023】
本発明において、遷移金属イオンがテルビウムイオンである発光材料の製造方法は、特に限定されないが、たとえば、ベンゾグアナミンと、テルビウム塩を混合したのち、この混合物を焼成するテルビウムイオンドープ工程を備える製造方法(以下、「製造方法1」と記す)が挙げられる。
また、製造方法1に用いられるテルビウム塩としては、特に限定されないが、塩化テルビウム、硝酸テルビウムが挙げられ、塩化テルビウムの六水和塩が好ましい。
なお、本発明において、テルビウム塩は、必要に応じて、複数種のテルビウム塩を混合して用いることもある。
【0024】
上記製造方法1のテルビウムイオンドープ工程における焼成温度は、特に限定されないが、240℃以上300℃以下が好ましく、240℃以上250℃以下がより好ましい。
すなわち、焼成温度が低すぎても、高すぎても十分な発光を得られないおそれがある。
【0025】
本発明の発光材料において、遷移金属イオンとしてユウロピウムイオンを用いれば、赤色に発光する発光材料となる。
そして、遷移金属イオンがユウロピウムイオンである場合、前記ユウロピウムイオンが全体の3重量%以上10重量%以下の割合でドープされていることが好ましい。
すなわち、ドープ量が少ないと十分な強度の発光が得られないおそれがあり、多すぎる場合、原料コストが嵩む上、逆に発光強度が弱くなるおそれがある。
【0026】
また、遷移金属イオンがユウロピウムイオンである場合、有機分散媒としては、良分散性が確保されれば、特に限定されないが、たとえば、N,N-ジメチルホルムアミド、エタノール、テトラヒドロフラン、ジメチルスルホキシドが挙げられ、これらが単独であるいはこれらを混合した混合媒の状態で用いられてもよいが、有機分散媒中で、発光材料が高濃度でも安定したコロイド分散状態の分散液を得られることからN,N-ジメチルホルムアミドが好ましい。
【0027】
本発明において、遷移金属イオンがユウロピウムイオンである発光材料の製造方法は、特に限定されないが、たとえば、ベンゾクアナミンと、ユウロピウム塩を混合したのち、この混合物を焼成するユウロピウムイオンドープ工程を備える製造方法(以下、「製造方法2」と記す)が挙げられる。
また、上記製造方法2に用いられるユウロピウム塩としては、特に限定されないが、塩化ユウロピウム、硝酸ユウロピウムが挙げられ、塩化ユウロピウムの六水和塩が好ましい。
なお、本発明において、ユウロピウム塩は、必要に応じて、複数のユウロピウム塩を混合して用いることもある。
【0028】
上記ユウロピウムイオンドープ工程における焼成温度は、特に限定されないが、240℃以上300℃以下が好ましく、250℃以上290℃以下がより好ましい。
すなわち、焼成温度が低すぎても、高すぎても十分な発光を得られないおそれがある。
【0029】
また、上記混合物の焼成方法としては、特に限定されないが、たとえば、上記混合物を蓋付きのるつぼに入れたのち、るつぼを電気炉にいれて焼成する方法が挙げられる。
【0030】
上記製造方法1,2において、ベンゾグアナミンと、テルビウム塩あるいはユウロピウム塩との混合比は、得ようとする発光材料中のテルビウムイオンあるいはユウロピウムイオンの濃度、焼成温度、用いる塩の種類によって適宜決定される。
【0031】
本発明のインク組成物は、上記本発明の発光材料を、有機分散媒中にコロイド分散させたコロイド分散液を含むことを特徴としている。
本発明のインク組成物は、コロイド分散液が単独で用いられても構わないし、必要に応じて、バインダー樹脂を含んでいても構わない。
【発明の効果】
【0032】
本発明の発光材料は、上記のように、ベンゾグアナミンの焼成体からなる窒化炭素結晶中に遷移金属イオンがドープされ、有機分散媒に良分散性を備えている。
すなわち、本発明の発光材料は、有機分散媒に良分散性を備えているので、有機分散媒に分散させるようにすれば、ドープされた遷移金属イオンに応じた色に発光する発光層を、ウェットプロセスによって容易に形成することができる。
そして、本発明の発光材料を有機分散媒に分散させた分散液を用いてインク組成物を形成すれば、得られたインク組成物を、インクジェット印刷装置を用いることによって、基板上の必要な位置に所望の色の発光層を印刷形成することができ、マイクロLEDの製造が簡易になるとともに低コスト化を図ることができる。
また、本発明の発光材料は、無機材料であるので、この発光材料を用いて得られる発光層は、有機ELに比べ、耐久性も期待できる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【
図1】ベンゾグアナミンとEuCL
3・6H
2Oとの混合物を、焼成温度を変化させて得た各生成物のPLスペクトルを比較して示すグラフである。
【
図2】焼成温度毎の発光強度を比較してあらわすグラフである。
【
図3】200~300℃の間で、10℃刻みで焼成温度を変えた場合のそれぞれの焼成温度でのEu
3+をドープしたときと、ドープしないときのエネルギー遷移効率を対比して示すグラフである。
【
図4】焼成時間を変化させ、焼成時間の差によって得られるEu
3+ドープ窒化炭素の発光強度の変化を示すグラフである。
【
図5】Eu
3+のドーピング濃度と発光強度の関係を示すグラフである。
【
図6】最適な条件下で作製された試料Aの XRD スペクトルである。
【
図7】試料Aおよび試料Aと同じ条件でベンゾグアナミンのみを焼成した比較試料のXRD スペクトルを対比して示すグラフである。
【
図8】ベンゾグアナミン由来の試料AのPLスペクトルである。
【
図9】試料Aと、試料Aと同じ条件でベンゾグアナミンのみを焼成して得られた比較試料のそれぞれについて、フーリエ変換赤外分光光度計を用いて構造分析した結果を対比して示すグラフである。
【
図10】Tb
3+のドーピング濃度と発光強度の関係を示すグラフである。
【
図11】焼成温度毎の発光強度を比較してあらわすグラフである。
【
図12】ベンゾグアナミン由来の試料BのPLスペクトルである。
【
図13】本発明の発光材料を用いて製造することができるマイクロLEDを模式的にあらわした図である。
【
図14】公知のマイクロLEDの断面を模式的にあらわした図である。
【発明を実施するための形態】
【実施例0034】
以下、本発明にかかる好ましい実施形態について詳しく説明するが、本発明の範囲は、これらの説明に拘束されることはなく、以下の例示以外についても、本発明の趣旨を損なわない範囲で適宜変更実施し得る。
【0035】
〔実施例1〕
〔Euイオンドープの窒化炭素結晶の作製〕
<手順1> ベンゾグアナミン2gに対し、ドーピング濃度5重量%になるよう0.11gの塩化ユウロピウム六水和物を、乳鉢に入れ、乳棒にて乳鉢内でしっかり混合した。
<手順2>上記手順1で得られた混合物を蓋付アルミナるつぼ中に入れたのち、蓋付アルミナるつぼを電気炉内に入れた。
<手順3>表1に示すように、電気炉内で昇温速度10℃/minで、200℃~300℃まで10℃刻みで設定された加熱温度でそれぞれ120分間加熱した。
<手順4>加熱温度完了後、室温になるまで放置して、加熱温度が異なる11種の生成物を得た。
<手順5>各加熱温度で加熱完了させたのち、室温まで冷却後、るつぼ内に生成した各生成物を乳鉢に移し乳棒にてしっかりとすり潰した。
【0036】
【0037】
〔エネルギー移動効率の評価による最適加熱温度の調査〕
上記イオンドープの窒化炭素結晶の作製で得られた各生成物について、それぞれ、ホスト(窒化炭素結晶)からドーパント(Eu
3+)へのエネルギー移動効率を評価し、赤色発光強度が一番大きくなる温度を、以下の手順で理論的に求めた。
<手順1>ベンゾグアナミンのみを指定の焼成条件で加熱処理し、分光蛍光光度計でPLスペクトルを測定した。
<手順2>塩化ユウロピウム六水和物のみを<手順1>と同じ焼成条件で加熱処理し、吸光度計で吸収スペクトルを測定した。
<手順3>
図1に示すように、求めたPL(フォトルミネッセンス)スペクトルと吸収スペクトルを同一グラフに表し重なり面積の評価をした。なお、
図1は250℃、260℃、270℃のそれぞれの焼成温度で得た生成物についてのみのグラフである。
【0038】
上記イオンドープの窒化炭素結晶の作製で得られた各生成物の各加熱温度のPLスペクトルを測定し、赤色発光強度をまとめた結果を
図2に示す。
図2から、加熱温度が、260℃で赤色発光強度が最大を示すとともに、240℃以上300℃以下、好ましくは250℃以上290℃以下で良好な赤色発光が得られることがわかる。
【0039】
図3に加熱温度200~300℃の母体結晶から付活剤Eu
3+へのエネルギー遷移評価の結果を示した。
図3中、細線は、EuCl3・6H2Oを各加熱温度で焼成した付活剤の吸収スペクトル、また太線はベンゾグアナミンを各加熱温度で焼成した母体結晶のPLスペクトルを表す。
【0040】
図3に示すように、細線の付活剤Eu
3+の吸収スペクトルは全ての焼成温度で同じスペクトルを示した。
図3から、Eu
3+の吸収極大は395nmであり、Eu
3+の発光が母体結晶に影響されないことがわかる。一方、実線のPLスペクトルを見ると、200,210℃ではPLスペクトルのメインピークが450nm付近にあり、220~260℃ではメインピークが400nmに位置し、270℃以上では再び450nm付近にメインピークがあることがわかる。すなわち、同じ付活剤であっても、母材結晶の構造を加熱温度によって制御できることがわかる。
【0041】
そして、
図3の、細線の395nm付近のピークと太線の各加熱温度の発光ピークの重なりの面積からエネルギー遷移効率を評価すると、220~260℃において、両ピークの重なりが大きく、それらの温度において、母材結晶からのEu
3+へ効率よくエネルギーが遷移すると推測できる。
【0042】
一方、
図2から、220~240℃の赤色発光は弱く、250~290℃で強い赤色発光を示すことがわかる。
この原因は、Eu
3+をドーピングしたことで、母体結晶の構造に変化が生じ、母体結晶のPLスペクトルに変化が生じたためと思われる。
【0043】
〔加熱時間が赤色発光強度に及ぼす影響の調査〕
表2の焼成条件のうち加熱時間のみを変化させ、加熱時間が赤色発光強度にどのような影響を及ぼすのかPL測定により調べ、その結果を
図4に示した
図4から、加熱温度が260℃の場合、2時間焼成した試料が一番強い赤色発光を得られることがわかる。
【0044】
【0045】
〔Euドーピング濃度が赤色発光強度に及ぼす影響の調査〕
最適なドーピング量を求める目的で、ベンゾグアナミンに対する塩化ユウロピウム六水和物のドーピング量を1重量%~30重量%まで1重量%ずつ変化させた混合物をそれぞれるつぼ内で表3に示す焼成条件で加熱処理して、Euドーピング濃度が赤色発光強度にどのような影響を及ぼすのか調べ、その結果を
図5に示した
【0046】
【0047】
図5からドーピング量が10重量%になると、赤色発光強度が最大となり、それ以上濃度を増加させても、赤色発光強度が減少する傾向にあることがわかる。その原因は、母体結晶におけるEu
3+イオンの存在比率が高くなることで、結晶構造内に含有したEu
3+同士が凝集またはイオン対を形成し、希土類間エネルギー移動によって発光効率が低下する濃度消光が原因であると考えられる。
【0048】
したがって、ドーピング量は、10重量%を超えない量に抑えることが好ましいと思われる。
〔X線回折装置による結晶構造解析〕
Eu
3+のドーピング量が5重量%となるとともに、表3の条件で焼成した試料Aについて、X線回折装置でXRDスペクトルを測定し、その結果を
図6に示した。
【0049】
図6に示すように、上記試料Aは破線で示した下記構造式のケリンのスペクトルピークに50%一致することがわかった。しかし、ケリンの製造過程に窒化炭素系材料は関係ないため、このピークの一致はケリンがもつベンゼン環のピークにのみ対応するものであると考えられる。
【0050】
また、ピークサーチの検索結果に純粋なベンゾグアナミンがなかったので、作製したEuドーピングの試料Aが原料のベンゾグアナミンと異なる構造を持つことがわかった。
なお、焼成後のEu3+をドーピングしたるつぼ内の生成物と、ドーピングしていないもののるつぼ内の生成物を目視で見比べたところ、前者では茶色の粉末が確認できた一方、後者では黄色の粉末が確認できた。
このような焼成後の見た目の違いはベンゾグアナミンの融点(228℃)以上で焼成した試料全てに見られ、Eu3+をドーピングしたことで結晶構造に変化が起きたことが推測される。
ちなみに、後述する原料に尿素を用いた場合では、このような焼成後の見た目の違いはほとんどなかった。
【0051】
次に作製したユウロピウムイオンをドープした試料Aと、ベンゾグアナミンのみを同条件で焼成した試料の構造を、X線回折装置を用いて測定し、その結果を
図7に比較して示した。
図7のX線回折装置による結果を見ると、実線(Eu
3+ドーピングなし)のスペクトルで観測できたピークのうち20.5°, 22.5°,23.8°,27.5°のピークは破線(Eu
3+ドーピングあり)では確認できなかった。そこで、これらのピークがEuCl
3・6H
2Oに起因するピークであるか調べたところ、関係ないことがわかった。よってEu
3+が母体結晶中に高度に分散した状態で存在していることがわかった。また、それらのピークのうち、27.5°の回折ピークはグラファイト状窒化炭素の(002)面に起因するピークに類似しており、破線のEuなしで焼成した試料は層状構造を一部含むと考えられる。しかし、実線のEuをドーピングした試料ではそのピークが消失した。これは化学的に母体結晶と配位したEu
3+により母体結晶の凝集が抑制されたことが原因と考えられる。
【0052】
上記試料AについてPLスペクトルを測定した結果を
図8に示した。
図8から、Eu
3+由来のシャープな波形が波長617nmに確認できるとともに、窒化炭素(CN)の450nm付近の発光が低いことがわかる。
すなわち、窒化炭素の発光エネルギーが、ほとんどEu
3+に遷移でき、Eu由来の強い赤色発光が得られると考えられる。
【0053】
つぎに、フーリエ変換赤外分光光度計を用いて上記試料Aと、比較試料のそれぞれについて、構造分析した結果を
図9に示す。
図9で、実線で示す試料Aの測定結果と、破線で示す比較試料の測定結果を比較すると、共通して827cm
-1にトリアジン環の面外変角振動、1260cm
-1,1330cm
-1,1420cm
-1,1530cm
-1, 1620cm
-1に複素環に特徴的な伸縮振動、3450 cm
-1にN-H伸縮振動、773cm
-1,1520cm
-1,1600cm
-1,1730cm
-1,3062cm
-1にベンゼン環の面内骨格振動、1450cm
-1に芳香族環のC=C面内骨格振動、1320cm
-1,1580cm
-1,3512cm
-1に第2級アミンのC-N伸縮振動、3615cm
-1にO-H伸縮振動に起因するピークが確認できた。よって、試料AのようにEu
3+をドープしても母体結晶の大部分は変化していないことがわかる。一方、破線で示す比較試料で見られた1220cm
-1,1360cm
-1の第3級アミンのC-N伸縮振動に起因するピークが実線で示す試料Aでは消失していた。これらのことを踏まえると、ベンゾグアナミンのみでは260℃で熱処理すると、三つのアミノ基を介して第3級アミンのように重合すると予想される。そしてEu
3+をドーピングすることで一つのC-N結合が切れて、第2級アミンのように二つのアミノ基を介して重合した母体結晶がそれらを構成するN原子とEu
3+で配位結合し、希土類錯体のような構造となっていることが推測される。
【0054】
〔分散液の作製と成膜の検討結果〕
有機分散媒としてのエタノール、テトラヒドロフラン、アセトン、ジクロロエタン、N,N-ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシドのそれぞれについて、上記試料Aを3mg/mL、5mg/mL、10mg/mLの濃度となるように分散させたときの分散性について調べ、その評価結果を表4に示した。
なお、表4において、○は分散性が非常に良い(目に見える溶け残り無しのコロイド溶液)、△は分散性が悪い(目に見える溶け残りが一部あり)、×は不溶(明らかな沈澱がある)を表している
【0055】
【0056】
表4に示すように、3mg/mLでは、有機分散媒としてエタノール、N,N-ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、テトラヒドロフランを用いた場合、どれも高い分散性を示したが、それ以外の有機分散媒には分散性が悪かった。5mg/mLでは、テトラヒドロフランを有機分散媒として用いた場合、分散性が悪くなり、10mg/mLでは、エタノールを有機分散媒として用いた場合、分散性が悪くなった。
また、エタノールおよびジメチルスルホキシドを有機分散媒として用いた場合、試料Aのみの場合に比べ波長617nm付近の赤色発光が弱くなる傾向が見られた。
よって、分散性や赤色発光への影響を考えると、有機分散媒にN,N-ジメチルホルムアミドを用いることが適切であると考えられる。
【0057】
なお、N,N-ジメチルホルムアミドに対して、10mg/mLでは半透明で目視では完全に溶解しているように見えるが、横からレーザー光を照射するとチンダル現象が確認できたので、これは真の溶液ではなくコロイド溶液であることがわかった。このコロイド溶液は半透明で、高い分散性を示したため、コロイドの大きさは数10nm程度であると考えられる。
【0058】
上記結果から、所定の濃度以下では、有機分散媒を選択すれば、安定分散状態の分散液が得られ、ウェットプロセスでの皮膜形成が可能となることがわかる。
すなわち、インクジェット印刷方法を用いて所望の位置に、所望の大きさの赤色発光層を形成可能であることがわかる。
したがって、ベンゾクアナミンの焼成体からなる窒化炭素結晶中にEu3+をドープした発光材料は、所望の有機分散媒、特にN,N-ジメチルホルムアミドに分散させることによってウェットプロセスでの使用が可能となり、インクジェット印刷装置を用いて基板の所望位置に赤色発光層を印刷することができ、低コストでマイクロLEDを製造できると思われる。
【0059】
また、スピンコートや静電噴霧法を用いてウェットプロセスで発光層の形成も行えると考えられる。
なお、インクジェット印刷装置用のインク組成物として用いる場合、発光を阻害しない範囲で、必要に応じて、バインダー樹脂を配合するようにしても構わない。
【0060】
(実施例2)
〔テルビウムイオンの窒化炭素結晶へのドーピング濃度の検討〕
<手順1>塩化テルビウム六水和物を、ベンゾグアナミン3gと、Tb3+のドーピング濃度が1重量%、4重量%、6重量%、8重量%、10重量%、20重量%、30重量%になる量の塩化テルビウム六水和塩とを、それぞれ乳鉢に入れ、乳棒にて乳鉢内でしっかり混合した。
<手順2>上記手順1で得られた混合物を蓋付アルミナるつぼ中に入れたのち、蓋付アルミナるつぼを電気炉内に入れた。
<手順3>それぞれ電気炉内で昇温速度10℃/minで、250℃の焼成温度まで加熱し、それぞれ120分間250℃で加熱保持した。
<手順4>加熱完了後、室温になるまで放置して、Tb3+のドーピング濃度が異なる7種の生成物B1(ドーピング濃度1重量%)、生成物B2(ドーピング濃度4重量%)、生成物B3(ドーピング濃度6重量%)、生成物B4(ドーピング濃度8重量%)、生成物B5(ドーピング濃度10重量%)、生成物B6(ドーピング濃度20重量%)、生成物B7(ドーピング濃度30重量%)を得た。
<手順5>室温まで冷却後、るつぼ内に生成した上記生成物B1~B7を乳鉢に移し、乳棒にてしっかりとすり潰した。
【0061】
そして、すり潰した生成物B1~B7について、蛍光分光光度計によって各生成物の発光強度を測定し、Tb
3+ドーピング濃度と緑色発光強度との関係を
図10に示した。
図10から、Tb
3+ドーピング濃度が4重量%以上で、良好な緑色の発光が得られ、ドーピング濃度が8重量%までは濃度の上昇に伴って発光強度が大きくなるが、8重量%を超えると、それ以上の増加はほとんど見られなかった。
この結果から、Tb
3+ドーピング濃度は、好ましくは4重量%以上10重量以下、より好ましくは6重量%以上10重量以下、最も好ましくは8重量%程度であると判断できる。
【0062】
〔焼成温度が緑色発光強度に及ぼす影響の調査〕
<手順1>塩化テルビウム六水和物を、ベンゾグアナミン3gと、テルビウムイオンのドーピング濃度が8重量%になる量(0.26g)の塩化テルビウム六水和塩を乳鉢に入れ、乳棒にて乳鉢内でしっかり混合した。
<手順2>上記手順1で得られた混合物を蓋付アルミナるつぼ中に入れたのち、蓋付アルミナるつぼを電気炉内に入れた。
<手順3>焼成温度としての210℃、220℃、230℃、240℃、250℃、260℃、270℃、280℃、290℃、300℃、350℃に達するまで、昇温速度10℃/でそれぞれ昇温し、2時間その温度を保持したのち、室温になるまで放置し、それぞれの焼成温度で得られた生成物を乳鉢に移し乳棒にてしっかりとすり潰した。
【0063】
そして、すり潰した各焼成温度の生成物について、蛍光分光光度計によって各生成物の発光強度を測定し、焼成温度と緑色発光強度との関係を
図11に示した。
図11に示すように、250℃で焼成した生成物の発光強度が最も高いことがわかった。
【0064】
〔分散液の作製と成膜の検討結果〕
<手順1>塩化テルビウム六水和物を、ベンゾグアナミン3gと、テルビウムイオンのドーピング濃度が8重量%になる量(0.26g)の塩化テルビウム六水和塩を乳鉢に入れ、乳棒にて乳鉢内でしっかり混合した。
<手順2>上記手順1で得られた混合物を蓋付アルミナるつぼ中に入れたのち、蓋付アルミナるつぼを電気炉内に入れた。
<手順3> 250℃に達するまで、昇温速度10℃/でそれぞれ昇温し、2時間その温度を保持したのち、室温になるまで放置し、得られた生成物を乳鉢に移し乳棒にてしっかりとすり潰し、試料Bを得た。
【0065】
上記試料BについてPLスペクトルを測定した結果を
図12に示した。
図12から、Tb
3+由来のシャープな波形が波長545nmに確認できるとともに、窒化炭素(CN)の450nm付近の発光が低いことがわかる。
すなわち、窒化炭素の発光エネルギーが、ほとんどTb
3+に遷移でき、Tb由来の強い緑色発光が得られると考えられる。
【0066】
つぎに、有機分散媒としてのエタノール、テトラヒドロフラン、アセトン、N,N-ジメチルホルムアミドのそれぞれについて、上記試料Bを3mg/mL、5mg/mL、10mg/mLの濃度となるように分散させたときの分散性について、上記試料1と同様の評価を行い、その結果を表5に示した。
なお、表5において、○は分散性が非常に良い(目に見える溶け残り無し)、△は分散性が悪い(目に見える溶け残りが一部あり)、×は不溶(明らかな沈澱がある)を表している
【0067】
【0068】
表5に示すように、試料Bは、N,N-ジメチルホルムアミドのみに良好な分散性を示した。
したがって、ベンゾクアナミンの焼成体からなる窒化炭素結晶中にTbイオンをドープした発光材料は、N,N-ジメチルホルムアミドに分散させることによってウェットプロセスでの使用が可能となり、インクジェット印刷装置を用いて基板の所望位置に緑色発光層を印刷することができ、低コストでマイクロLEDを製造できると思われる。
【0069】
また、スピンコートや静電噴霧法を用いてウェットプロセスで発光層の形成も行えると考えられる。
なお、インクジェット印刷装置用のインク組成物として用いる場合、発光を阻害しない範囲で、必要に応じて、バインダー樹脂を配合するようにしても構わない。
【0070】
(比較例1)
<手順1> 尿素3gに対しドーピング濃度5重量%になるよう0.16gの塩化ユウロピウム六水和物を混合し、ともに100mLの脱イオン水の入ったビーカーに入れて、磁気攪拌機にて30分間攪拌した。
<手順2> 上記ビーカーごとホットプレートの上に載せ、80℃で溶媒(脱イオン水)が除去されるまで乾燥させた。
<手順3> 得られた乾燥物を乳鉢・乳棒にてすり潰し、すり潰した乾燥物を蓋付アルミナるつぼに入れたのち、このるつぼを電気炉にて表6に示す焼成条件で加熱処理し、尿素由来の窒化炭素結晶中にEu3+がドーピングされた生成物を得た。
<手順4>得られた生成物を再び乳鉢・乳棒にてしっかりすり潰して試料Cを得た。
なお、表6に示す焼成条件は、実施例1と同様にして予備実験を行い、最も強い赤色発光が得られる条件とした。
【0071】
【0072】
得られた試料CのPLスペクトルを測定したところ、Eu3+由来の617nm付近のピークが見られた。
【0073】
そして、上記試料Cについて、有機分散媒としての脱イオン水、エタノール、テトラヒドロフラン、アセトン、ジクロロエタン、テトラヒドロフラン、熱エタノール、ピリジンへの分散性について実施例1の試料Aと同様の評価を行った。その結果を以下の表7に示した。
【0074】
【0075】
上記のように、尿素由来の窒化炭素結晶にEu3+をドープした試料Cは、発明者の知見によれば、本発明のベンゾグアナミン由来の窒化炭素結晶にEuイオンをドープした試料Aに比べ発光強度は劣るものの、試料Aと同様に、Eu3+由来の617nm付近のピークが見られ、ドライプロセスであれば、赤色発光材料として使用可能であると思われるが、上記表7に示すように、有機分散媒への分散性が悪く、ウェットプロセスでの使用が望めないことがわかる。
【0076】
以上のように、本発明の発光材料は、有機分散媒にコロイド分散してウェットプロセスでの使用が可能であることがわかる。
【0077】
また、本発明の発光材料は、たとえば、
図13に模式的に示すマイクロLEDディスプレイを容易に製造することができる。
まず、特許文献2に記載のように、窒化炭素化合物のみを焼成することにより得た有機分散媒に分散可能で青色発光する窒化炭素結晶を有機分散媒に分散させた分散液aを含むインク組成物Aを用いて基板1上に、所望間隔で青色発光層2を形成する。
【0078】
つぎに、隣接する3つの青色発光層2のうち、1つの青色発光層2の上に、上記製造方法1のようにして得られたテルビウムイオンをドープした本発明の発光材料からなる分散液bを含むインク組成物Bを印刷して、緑色発光層3を形成するとともに、隣接する3つの青色発光層2のうち、他の1つの青色発光層2の上に、上記製造方法2のようにして得られたユーロピウムイオンをドープした本発明の発光材料からなる分散液cを含むインク組成物Cを印刷して赤色発光層4を形成する。
すなわち、上記のように、本発明の発光材料を用いることによって、窒化炭素という共通の材料でRGB3原色を扱うことができる上、同じインクジェット印刷装置を用いて同じ印刷条件ですべて作製でき、マイクロLEDディスプレイを容易かつ安価に製造可能になると思われる。
また、上記のようにマイクロLEDディスプレイをほぼ窒化炭素からなる発光材料で形成するようにすれば、発光層を形成する材料が、従来用いられているCdTe系のような毒性成分を備えていないため、安全である上、廃棄コストもあまりかからない。
【0079】
また、場合によっては、
図14に示す青色発光層500を上記インク組成物Aを用いて形成し、緑色発光層400を上記インク組成物Bを用いて形成し、赤色発光層300を上記インク組成物Cを用いて形成するようにしても構わない。