(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024030955
(43)【公開日】2024-03-07
(54)【発明の名称】動翼固定方法および動翼固定構造
(51)【国際特許分類】
F01D 5/30 20060101AFI20240229BHJP
【FI】
F01D5/30
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022134214
(22)【出願日】2022-08-25
(71)【出願人】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(71)【出願人】
【識別番号】317015294
【氏名又は名称】東芝エネルギーシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001092
【氏名又は名称】弁理士法人サクラ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】村田 頼治
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 正樹
【テーマコード(参考)】
3G202
【Fターム(参考)】
3G202FA04
3G202FA06
3G202FB02
(57)【要約】
【課題】動翼をタービンロータに的確に固定することが可能であって、耐振性および減衰性を向上し、動翼の信頼性を容易に向上する。
【解決手段】実施形態の動翼固定方法は、シム挿入工程とシム接合工程とを有し、軸方向に沿うように翼植込溝が形成されているタービンロータに動翼を固定する。シム挿入工程では、動翼の翼植込部が挿入された翼植込溝において、翼植込部と翼植込溝との間に介在する間隙にシムを挿入する。シム接合工程では、間隙に挿入されたシムを翼植込部に接合する。ここでは、シムは、シム挿入工程において間隙に挿入されるシム挿入部と、シム挿入部が延在する第1延在方向に対して直交する第2延在方向に延在しており、シム接合工程において翼植込部に接合されるシム接合部とを含む。
【選択図】
図3A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸方向に沿うように翼植込溝が形成されているタービンロータに動翼を固定する、動翼固定方法であって、
前記動翼の翼植込部が挿入された前記翼植込溝において、前記翼植込部と前記翼植込溝との間に介在する間隙にシムを挿入する、シム挿入工程と、
前記間隙に挿入された前記シムを前記翼植込部に接合する、シム接合工程と
を有し、
前記シムは、
前記シム挿入工程において前記間隙に挿入されるシム挿入部と、
前記シム挿入部が延在する第1延在方向に対して直交する第2延在方向に延在しており、前記シム接合工程において前記翼植込部に接合されるシム接合部と
を含む、
動翼固定方法。
【請求項2】
前記シム接合工程では、前記シムを前記翼植込部に溶接する、
請求項1に記載の動翼固定方法。
【請求項3】
前記シム接合工程では、前記シムを前記翼植込部に接着する、
請求項1に記載の動翼固定方法。
【請求項4】
軸方向に沿うように翼植込溝が形成されているタービンロータと、
前記翼植込溝に翼植込部が挿入された動翼と
を備え、前記翼植込部と前記翼植込溝との間に介在する間隙に挿入されたシムによって、前記タービンロータに前記動翼が固定されている、動翼固定構造であって、
前記シムは、
前記間隙に挿入されるシム挿入部と、
前記シム挿入部が延在する第1延在方向に対して直交する第2延在方向に延在しており、前記翼植込部に接合されたシム接合部と
を含む、
動翼固定構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、動翼固定方法および動翼固定構造に関する。
【背景技術】
【0002】
タービンの組み立てにおいて、タービンロータに動翼を設置する際には、例えば、タービンロータの翼植込溝に動翼の翼植込部を挿入する。翼植込溝への翼植込部の植込形式は、タービンロータの周方向に翼植込部を挿入する周方向挿入型、タービンロータの半径方向に翼植込部を挿入する半径方向挿入型、および、タービンロータの軸方向に翼植込部を挿入する軸方向挿入型等がある。上記の植込形式は、例えば、蒸気タービンの低圧部において最終段のタービン段落を構成する動翼をタービンロータに設置する際に、十分な強度および耐振性を得るために適用されている。
【0003】
蒸気タービンの低圧部において最終段のタービン段落を構成する動翼のように、有効長が長い動翼は、耐振性および減衰性の向上が要求されている。このため、タービンロータの周方向において隣り合う動翼の間が連結状態になる綴り構造で動翼を構成することが提案されている。
【0004】
例えば、動翼の先端側にカバーなどの先端連結部材を設けることが提案されている。また、動翼において翼植込部と先端部との間に、中間スナッバやラグなどの中間連結部材を設けることが提案されている。中間連結部材であるラグは、突起であって、タービンロータの周方向において隣り合う動翼のラグの間に、スリーブを介在させることによって、連結構造が構成される。
【0005】
連結構造の採用によって、例えば、タービンについて定格運転を行う際に、動翼が共振することを防止することが可能であり、耐振性および減衰性の向上を実現することができる。連結構造を構成する綴り構造は、例えば、回転方向に並ぶ複数の動翼の全てが連結する全周一群綴り構造であって、タービンロータの回転によって動翼にアンツイスト力が発生することで、カバーなどの連結部材が接触して連結する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第4886735号
【特許文献2】特開平4-214902号
【特許文献3】実開平4-119392号
【特許文献4】特開2018-159232号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記において説明した植込形式のうち、軸方向挿入型は、例えば、アキシャルエントリー型であって、動翼に作用する遠心力を支持する有効面積が他の植込形式よりも大きい。このため、軸方向挿入型では、タービンロータにおいて動翼が植え込まれた部分に加わる応力が比較的小さい。
【0008】
しかし、軸方向挿入型において、タービンロータに形成された翼植込溝へ動翼の翼植込部をスムーズに挿入するためには、翼植込溝よりも翼植込部を僅かに小さくする必要がある。このため、翼植込溝に翼植込部が挿入された状態では、翼植込溝の面と翼植込部の面との間に間隙が介在することになる。その結果、その間隙に起因して、動翼の固定が十分でなくなり、耐振性および減衰性を十分に確保することが困難な場合がある。
【0009】
また、翼植込溝の面と翼植込部の面との間の間隙に起因して、動翼が倒れた状態になる場合がある。このため、タービンロータの周方向において隣り合う動翼の間を連結する連結構造を採用する場合には、動翼の間の連結構造が設計通りの状態であるのか、正確に確認することが困難になる場合がある。
【0010】
上記のような事情により、動翼の固定が十分でないために、耐振性および減衰性を効果的に得ることが困難な場合があり、動翼の信頼性を向上させることが容易でない場合がある。
【0011】
したがって、本発明が解決しようとする課題は、動翼をタービンロータに的確に固定することが可能であって、耐振性および減衰性を向上し、動翼の信頼性を容易に向上可能な、動翼固定方法および動翼固定構造を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
実施形態の動翼固定方法は、シム挿入工程とシム接合工程とを有し、軸方向に沿うように翼植込溝が形成されているタービンロータに動翼を固定する。シム挿入工程では、動翼の翼植込部が挿入された翼植込溝において、翼植込部と翼植込溝との間に介在する間隙にシムを挿入する。シム接合工程では、間隙に挿入されたシムを翼植込部に接合する。ここでは、シムは、シム挿入工程において間隙に挿入されるシム挿入部と、シム挿入部が延在する第1延在方向に対して直交する第2延在方向に延在しており、シム接合工程において翼植込部に接合されるシム接合部とを含む。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】
図1は、第1実施形態における蒸気タービンの全体構成を模式的に示す断面図である。
【
図2】
図2は、第1実施形態の蒸気タービン1において、動翼50がタービンロータ30に設置された部分の構造の一例を模式的に示す斜視図である。
【
図3A】
図3Aは、第1実施形態の蒸気タービン1において、動翼50がタービンロータ30のロータディスク31に植え込まえた部分の動翼固定構造を拡大して側面図である。
【
図3B】
図3Bは、第1実施形態の蒸気タービン1において、シム80を模式的に示す断面図である。
【
図4A】
図4Aは、第2実施形態の蒸気タービン1において、動翼50がタービンロータ30のロータディスク31に植え込まえた部分の動翼固定構造を示す図である。
【
図4B】
図4Bは、第2実施形態の蒸気タービン1において、動翼50がタービンロータ30のロータディスク31に植え込まえた部分の動翼固定構造を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
<第1実施形態>
[A]蒸気タービン1
図1は、第1実施形態における蒸気タービンの全体構成を模式的に示す断面図である。
図1において、縦方向は鉛直方向zであり、横方向は第1水平方向xであり、紙面に垂直な方向は第1水平方向xに直交する第2水平方向yであり、
図1では、鉛直方向zおよび第1水平方向xに沿った縦断面(xz面)を示している。
【0015】
本実施形態において、蒸気タービン1は、高圧タービン(図示省略)と中圧タービン(図示省略)とにおいて仕事を行った蒸気が作動媒体として供給される複流式の低圧タービンである場合を例示している。
【0016】
本実施形態の蒸気タービン1は、外部車室10と内部車室20とタービンロータ30とを有する。
【0017】
本実施形態の蒸気タービン1は、外部車室10が内部車室20を内部に収容し、内部車室20がタービンロータ30を内部に収容している。タービンロータ30は、軸中心線AXが第1水平方向xに沿うように軸受301によって回転可能に支持されている。
【0018】
蒸気タービン1は、多段式の軸流タービンであって、静翼40と動翼50とを含む複数のタービン段落60が、内部車室20の内部において軸中心線AXに沿った軸方向に設けられている。
【0019】
タービン段落60において、静翼40は、複数であって、複数の静翼40がダイアフラム内輪41とダイアフラム外輪43との間においてタービンロータ30の回転方向に配列されることでノズルダイアフラム45を構成している。
【0020】
タービン段落60において、動翼50は、複数であって、複数の動翼50がタービンロータ30の回転方向に沿って配列されている。動翼50は、タービンロータ30においては、外周面から径方向に突き出るように形成されたロータディスク31に植え込まれている。
【0021】
蒸気タービン1は、内部車室20に蒸気供給管70が連結されており、蒸気が外部車室10の外部から蒸気供給管70に作動流体として供給される。蒸気供給管70に供給された蒸気は、内部車室20の内部において、複数のタービン段落60を順次流れる。つまり、作動流体は、初段のタービン段落60から最終段のタービン段落60へ向かって流れ、それぞれのタービン段落60において膨張して仕事を行う。これにより、タービンロータ30が軸中心線AXを回転軸として回転し、タービンロータ30に連結された発電機(図示省略)が発電を行う。静翼40および動翼50の翼長(径方向の長さ)は、初段のタービン段落60から最終段のタービン段落60へ向かうに伴って、順次、長くなるように構成されている。
【0022】
蒸気タービン1において、最終段のタービン段落60を通過した蒸気は、コーン部12を経由して、外部車室10の下端部から排出される。外部車室10から排出された蒸気は、蒸気タービン1に連結された復水器(図示せず)に供給され、復水器において凝縮されて復水が生成される。
【0023】
[B]動翼50
図2は、第1実施形態の蒸気タービン1において、動翼50がタービンロータ30に設置された部分の構造の一例を模式的に示す斜視図である。
図2では、例えば、最終段のタービン段落60を構成する動翼50を備える動翼翼列の一部を示している。
【0024】
図2に示すように、複数の動翼50が回転方向Rに並ぶようにタービンロータ30のロータディスク31に設置されている。
【0025】
具体的には、ロータディスク31の外周面には、軸方向(第1水平方向x)に沿って延在する翼植込溝T30が複数形成されている。複数の翼植込溝T30は、ロータディスク31の回転方向Rに間を隔てて形成されている。
【0026】
本実施形態において、複数の動翼50のそれぞれは、翼本体部51と翼植込部52とカバー61と中間スナッバ62とを有する。
【0027】
[B-1]翼本体部51
翼本体部51は、例えば、翼根本から翼先端に渡って捻れた捻じれ翼であって、タービンロータ30の回転によってアンツイスト力が発生するように構成されている。
【0028】
[B-2]翼植込部52
翼植込部52は、翼本体部51において翼根本に設けられている。翼植込部52は、例えば、クリスマスツリー型の形状であり、ロータディスク31に形成された翼植込溝T30へ軸方向(第1水平方向x)に沿って挿入されて、嵌合する。つまり、本実施形態において、ロータディスク31に動翼50を植え込む植込形式は、軸方向挿入型である。
【0029】
[B-3]カバー61
カバー61は、翼本体部51において翼先端に設けられている。
【0030】
カバー61は、前縁側カバー部611と後縁側カバー部612とを含む。前縁側カバー部611は、翼本体部51の前縁側において背側表面S511から軸方向へ突出している。これに対して、後縁側カバー部612は、翼本体部51の後縁側において腹側表面S512から軸方向へ突出している。
【0031】
回転方向Rに並ぶ複数の動翼50は、前縁側カバー部611と後縁側カバー部612とが、翼本体部51に生ずるアンツイスト力で接触することによって、連結するように構成されている。
【0032】
[B-4]中間スナッバ62
中間スナッバ62は、翼本体部51において翼根本と翼先端との間に設けられている。中間スナッバ62は、前縁側中間スナッバ部621と後縁側中間スナッバ部622とを含む。
【0033】
前縁側中間スナッバ部621は、翼本体部51の前縁側において背側表面S511から軸方向へ突出している。これに対して、後縁側中間スナッバ部622は、翼本体部51の後縁側において腹側表面S512から軸方向へ突出している。
【0034】
回転方向Rに並ぶ複数の動翼50は、前縁側中間スナッバ部621と後縁側中間スナッバ部622とが、翼本体部51に生ずるアンツイスト力で接触することで、連結するように構成されている。
【0035】
[C]動翼固定構造
図3Aは、第1実施形態の蒸気タービン1において、動翼50がタービンロータ30のロータディスク31に植え込まえた部分の動翼固定構造を拡大した側面図である。
図3Aでは、例えば、最終段のタービン段落60を構成する動翼50に関する動翼固定構造について、タービンロータ30(
図1参照)の軸中心線AXが直交する側面(yz面)を図示している。つまり、
図3Aにおいて、紙面に垂直な方向は、タービンロータ30の軸中心線AXが沿った軸方向(
図3Aでは、第1水平方向x)である。なお、
図3Aでは、各部を識別するために、ハッチングを付している。
【0036】
図3Aに示すように、本実施形態の動翼固定構造では、ロータディスク31において軸方向に沿って延在するように形成された翼植込溝T30に、動翼50の翼植込部52が挿入されている。そして、本実施形態では、シム80を用いて、動翼50がロータディスク31に固定されている。
【0037】
ここでは、翼植込部52において腹側(
図3Aでは左側)および背側(
図3Aでは右側)に凸状に突き出た複数のフックのそれぞれに対して、シム80が設けられている。
【0038】
図3Bは、第1実施形態の蒸気タービン1において、シム80を模式的に示す断面図である。
図3Bでは、タービンロータ30(
図1参照)においてシム80が設置された部分を拡大して示している。
図3Bでは、横方向は、タービンロータ30(
図1参照)の軸中心線AXが沿った軸方向に相当する。
【0039】
図3Bに示すように、シム80は、シム挿入部81とシム接合部82とを備える。シム80は、例えば、金属材料の板状体を折り曲げることによって、シム挿入部81とシム接合部82とが設けられている。
【0040】
シム80のうち、シム挿入部81は、動翼50の翼植込部52がロータディスク31の翼植込溝T30に挿入されたときに、翼植込部52と翼植込溝T30の間に介在し、軸方向に延伸する間隙Gに挿入されている。ここでは、シム挿入部81が挿入される間隙Gは、例えば、翼植込部52のフック(
図3A参照)のうち径方向の内側(
図3Aおよび
図3Bでは下側)に位置する。シム挿入部81の厚みは、間隙Gの厚みよりも、やや薄いことが好ましい。
【0041】
シム80において、シム接合部82は、シム挿入部81が延在する方向(第1延在方向,
図3Bでは横方向)に対して直交する方向(第2延在方向,
図3Bでは縦方向)に延在している。そして、シム接合部82は、翼植込部52において径方向(
図3Bでは縦方向に相当)に沿った面に対面しており、翼植込部52に接合されている。ここでは、シム接合部82と翼植込部52との間は、溶接部90を介して接合されている。
【0042】
[D]動翼固定方法
タービンロータ30(
図1参照)に動翼50を固定させるときの手順について、説明する。
【0043】
まず、ロータディスク31において軸方向に延在する翼植込溝T30に、動翼50の翼植込部52を軸方向に沿って挿入する(
図3A参照)。
【0044】
つぎに、動翼50の翼植込部52が挿入された翼植込溝T30において、翼植込部52と翼植込溝T30との間に介在する間隙Gにシム80を挿入する(シム挿入工程)。ここでは、
図3Bに示したように、シム80を構成するシム挿入部81を間隙Gに挿入する。
【0045】
つぎに、間隙Gに挿入されたシム80を翼植込部52に接合する(シム接合工程)。ここでは、
図3Bに示したように、シム80を構成するシム接合部82を翼植込部52に接合する。例えば、スポット溶接によってシム接合部82と翼植込部52との間を、複数箇所、溶接することで、シム接合部82と翼植込部52との間が溶接部90を介して接合される。溶接部90の数は、溶接方法や溶着力に応じて任意に設定可能であり、単数でもよい。
【0046】
[E]まとめ
以上のように、本実施形態における軸方向挿入型の植込形式では、翼植込部52と翼植込溝T30との間に介在する間隙Gに、シム80を構成するシム挿入部81が挿入される。そして、シム80を構成するシム接合部82が翼植込部52に接合される。
【0047】
このため、本実施形態では、軸方向挿入型の植込形式によって組み立てが容易である利点を得ると共に、シム80によって翼植込部52が翼植込溝T30に十分に固定されるので、耐振性および減衰性を効果的に得ることができる。また、本実施形態では、動翼50が倒れた状態になりにくいので、タービンロータ30の周方向(回転方向Rの前方側および後方側)において隣り合う動翼50の間を連結する連結構造(カバー61等)を採用する場合に、動翼50の間の連結構造が設計通りの状態であるのか、正確に確認することができる。更に、シム80を構成するシム接合部82が翼植込部52に接合されているので、シム80がタービン運転中に間隙から抜けるのを防止することができる。
【0048】
したがって、本実施形態では、耐振性および減衰性を効果的に得ることが可能であり、動翼50の信頼性向上を容易に実現可能である。
【0049】
[F]変形例
なお、上記の実施形態では、翼植込部52を構成する複数のフックと翼植込溝T30との間の間隙Gのそれぞれにシム80を設ける場合について説明したが、これに限らない。間隙Gの一部について、シム80を設けてもよい。例えば、翼植込部52を構成する複数のフックのうち、径方向において最も外側に位置するフックに対応する間隙Gにシム80を設け、その他のフックに対応する間隙Gについてはシム80を設けなくてもよい。
【0050】
また、上記の実施形態では、タービンロータの周方向において隣り合う動翼の間が連結する連結構造になるように、動翼の先端側にカバーを設けると共に、動翼において翼植込部と先端部との間に中間スナッバを設ける場合について示したが、これに限らない。上記実施形態で示した形態以外の連結構造であってもよい。
【0051】
<第2実施形態>
[A]動翼固定構造
図4Aおよび
図4Bは、第2実施形態の蒸気タービン1において、動翼50がタービンロータ30のロータディスク31に植え込まえた部分の動翼固定構造を示す図である。
【0052】
図4Aでは、
図3Aと同様に、例えば、最終段のタービン段落60を構成する動翼50に関する動翼固定構造について、タービンロータ30(
図1参照)の軸中心線AXが直交する側面(yz面)を図示している。
【0053】
そして、
図4Bでは、
図3Bと同様に、タービンロータ30(
図1参照)においてシム80が設置された部分を拡大して示しており、
図4Bの横方向は、タービンロータ30(
図1参照)の軸中心線AXが沿った軸方向に相当する。
【0054】
図4Aおよび
図4Bに示すように、本実施形態では、動翼50とシム80との間の接合の形態が、第1実施形態の場合(
図3Aおよび
図3B参照)と異なる。この点、および、関連する点を除き、本実施形態は、第1実施形態の場合と同様である。このため、重複する事項に関しては、適宜、説明を省略する。
【0055】
図4Aおよび
図4Bに示すように、本実施形態の動翼固定構造においても、シム80を用いて、動翼50がロータディスク31に固定されている。
図4Bに示すように、本実施形態においても、シム80は、シム挿入部81とシム接合部82とを備える。シム挿入部81は、動翼50の翼植込部52の面と、タービンロータ30(
図1参照)のロータディスク31に形成された翼植込溝T30の面との間に介在する間隙Gに挿入されている。
【0056】
しかし、本実施形態では、第1実施形態の場合と異なり、シム接合部82と翼植込部52との間は、接着層91によって接合されている。接着層91は、接着剤を用いて形成される。
【0057】
シム接合部82と翼植込部52との間を接合する工程(シム接合工程)は、例えば、翼植込部52においてシム接合部82に対面する面に接着剤を塗布した後に、翼植込部52にシム接合部82を密着させることで実行される。
【0058】
ここでは、接着剤は、例えば、ベース剤と活性剤とを混合して硬化が生ずる接着剤であって、例えば、エポキシ樹脂成分と金属成分(鉄,アルミニウムなど)とを含むもの(例えば、ベロメタル(登録商標))が好適に利用される。
【0059】
[B]まとめ
以上のように、本実施形態における軸方向挿入型の植込形式では、第1実施形態の場合と同様に、翼植込部52と翼植込溝T30との間に介在する間隙Gに、シム80を構成するシム挿入部81が挿入される。そして、シム80を構成するシム接合部82が翼植込部52に接合される。
【0060】
したがって、本実施形態では、第1実施形態の場合と同様に、耐振性および減衰性を効果的に得ることが可能であり、動翼50の信頼性向上を容易に実現可能である。
【0061】
<その他>
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0062】
1:蒸気タービン、10:外部車室、12:コーン部、20:内部車室、30:タービンロータ、31:ロータディスク、40:静翼、41:ダイアフラム内輪、
43:ダイアフラム外輪、45:ノズルダイアフラム、50:動翼、51:翼本体部、52:翼植込部、60:タービン段落、61:カバー、62:中間スナッバ、70:蒸気供給管、80:シム、81:シム挿入部、82:シム接合部、90:溶接部、91:接着層、301:軸受、611:前縁側カバー部、612:後縁側カバー部、621:前縁側中間スナッバ部、622:後縁側中間スナッバ部、AX:軸中心線、G:間隙、R:回転方向、S511:背側表面、S512:腹側表面、T30:翼植込溝