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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024030958
(43)【公開日】2024-03-07
(54)【発明の名称】制御装置、制御方法および作業機械
(51)【国際特許分類】
   E02F 9/20 20060101AFI20240229BHJP
【FI】
E02F9/20 K
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022134218
(22)【出願日】2022-08-25
(71)【出願人】
【識別番号】000001236
【氏名又は名称】株式会社小松製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001634
【氏名又は名称】弁理士法人志賀国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】川又 利江
(72)【発明者】
【氏名】榎本 良太
(72)【発明者】
【氏名】福田 雄二
(72)【発明者】
【氏名】西藤 勝
(72)【発明者】
【氏名】寺西 雄一
(72)【発明者】
【氏名】高木 大輔
【テーマコード(参考)】
2D003
【Fターム(参考)】
2D003AA06
2D003BA07
2D003CA02
2D003DA04
2D003DB04
(57)【要約】
【課題】作業機の操作レバーの傾倒量の検出に異常が発生した場合に適切に対処する。
【解決手段】制御装置は、中立位置から第1方向または反対方向の第2方向に傾倒する作業機の操作レバーの傾倒量を検出する第1傾倒量センサが傾倒量に応じて出力した第1検出信号と、第2傾倒量センサが傾倒量に応じて出力した第2検出信号とを繰り返し取得する取得部と、作業機械の起動時に第1検出信号と第2検出信号が中立位置に対応した値であるか否かを所定時間繰り返し判定し、第1検出信号と第2検出信号の両方が中立位置に対応した値でない場合、所定の出力部からその旨の警報を出力し、所定時間が経過する前に第1検出信号と第2検出信号の両方が中立位置に対応した値となったとき、警報の出力を停止するとともに、第1検出信号に基づいて作業機を制御する所定の制御信号を生成して出力する制御部とを備える。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
作業機を備える作業機械の制御装置であって、
中立位置から第1方向または前記第1方向とは反対方向の第2方向に傾倒する前記作業機の操作レバーの傾倒量を検出する第1傾倒量センサが前記傾倒量に応じて出力した第1検出信号と、前記傾倒量を検出する第2傾倒量センサが前記傾倒量に応じて出力した第2検出信号とを繰り返し取得する取得部と、
前記作業機械の起動時に前記第1検出信号と前記第2検出信号が前記中立位置に対応した値であるか否かを所定時間繰り返し判定し、
前記第1検出信号と前記第2検出信号の両方が前記中立位置に対応した値でない場合、所定の出力部からその旨の警報を出力し、
前記所定時間が経過する前に前記第1検出信号と前記第2検出信号の両方が前記中立位置に対応した値となったとき、前記警報の出力を停止するとともに、前記第1検出信号に基づいて前記作業機を制御する所定の制御信号を生成して出力する制御部と
を備える制御装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記第1検出信号または前記第2検出信号のいずれか一方が前記中立位置に対応した値でない場合、他方の前記第1検出信号または前記第2検出信号に基づいて前記制御信号を生成して出力するとともに、所定の出力部から前記一方が前記中立位置に対応した値でない場合に対応した所定の情報を出力する
請求項1に記載の制御装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記第1検出信号または前記第2検出信号のいずれか一方が前記中立位置に対応した値でない場合、他方の前記第1検出信号または前記第2検出信号に基づいて、前記作業機の機能を制限した上で、前記制御信号を生成して出力する
請求項2に記載の制御装置。
【請求項4】
作業機を備える作業機械の制御方法であって、
中立位置から第1方向または前記第1方向とは反対方向の第2方向に傾倒する前記作業機の操作レバーの傾倒量を検出する第1傾倒量センサが前記傾倒量に応じて出力した第1検出信号と、前記傾倒量を検出する第2傾倒量センサが前記傾倒量に応じて出力した第2検出信号とを繰り返し取得するステップと、
前記作業機械の起動時に前記第1検出信号と前記第2検出信号が前記中立位置に対応した値であるか否かを所定時間繰り返し判定し、
前記第1検出信号と前記第2検出信号の両方が前記中立位置に対応した値でない場合、所定の出力部からその旨の警報を出力し、
前記所定時間が経過する前に前記第1検出信号と前記第2検出信号の両方が前記中立位置に対応した値となったとき、前記警報の出力を停止するとともに、前記第1検出信号に基づいて前記作業機を制御する所定の制御信号を生成して出力するステップと
を含む制御方法。
【請求項5】
作業機と、
中立位置から第1方向または前記第1方向とは反対方向の第2方向に傾倒する前記作業機の操作レバーの傾倒量を検出する第1傾倒量センサが前記傾倒量に応じて出力した第1検出信号と、前記傾倒量を検出する第2傾倒量センサが前記傾倒量に応じて出力した第2検出信号とを繰り返し取得する取得部と、
作業機械の起動時に前記第1検出信号と前記第2検出信号が前記中立位置に対応した値であるか否かを所定時間繰り返し判定し、
前記第1検出信号と前記第2検出信号の両方が前記中立位置に対応した値でない場合、所定の出力部からその旨の警報を出力し、
前記所定時間が経過する前に前記第1検出信号と前記第2検出信号の両方が前記中立位置に対応した値となったとき、前記警報の出力を停止するとともに、前記第1検出信号に基づいて前記作業機を制御する所定の制御信号を生成して出力する制御部と
を備える作業機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、制御装置、制御方法および作業機械に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、作業機(可動体)の操作レバーの傾倒角度を2つの検出部で検出して比較し、比較結果に基づいて異常の有無を判定し、異常である場合、角度が小さい方の検出結果に基づいて作業機を制御する制御装置が記載されている。特許文献1に記載されている2つの検出部は、一方が角度の増大に伴って検出信号の電圧を低下させ、他方が角度の増大に伴って検出信号の電圧を上昇させる特性を有する。そして、制御装置は、2つの検出信号の合計値を正常値と比較することで異常の有無を判定する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006-328759号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載されている制御装置は、操作レバーの中立位置からの傾倒角度が大きいほど速い速度で作業機を動作させる。このため、例えば、2つの検出部に、中立位置からの傾倒角度が大きくなっていることを示す信号しか出力できないという異常が発生した場合、作業機の制御が不適切となってしまうおそれがあるという課題がある。
【0005】
本開示は、上記事情に鑑みてなされたものであり、作業機の操作レバーの傾倒量の検出に異常が発生した場合に適切に対処することができる制御装置、制御方法および作業機械を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様は、作業機を備える作業機械の制御装置であって、中立位置から第1方向または前記第1方向とは反対方向の第2方向に傾倒する前記作業機の操作レバーの傾倒量を検出する第1傾倒量センサが前記傾倒量に応じて出力した第1検出信号と、前記傾倒量を検出する第2傾倒量センサが前記傾倒量に応じて出力した第2検出信号とを繰り返し取得する取得部と、前記作業機械の起動時に前記第1検出信号と前記第2検出信号が前記中立位置に対応した値であるか否かを所定時間繰り返し判定し、前記第1検出信号と前記第2検出信号の両方が前記中立位置に対応した値でない場合、所定の出力部からその旨の警報を出力し、前記所定時間が経過する前に前記第1検出信号と前記第2検出信号の両方が前記中立位置に対応した値となったとき、前記警報の出力を停止するとともに、前記第1検出信号に基づいて前記作業機を制御する所定の制御信号を生成して出力する制御部とを備える制御装置である。
【0007】
本開示の一態様は、作業機を備える作業機械の制御方法であって、中立位置から第1方向または前記第1方向とは反対方向の第2方向に傾倒する前記作業機の操作レバーの傾倒量を検出する第1傾倒量センサが前記傾倒量に応じて出力した第1検出信号と、前記傾倒量を検出する第2傾倒量センサが前記傾倒量に応じて出力した第2検出信号とを繰り返し取得するステップと、前記作業機械の起動時に前記第1検出信号と前記第2検出信号が前記中立位置に対応した値であるか否かを所定時間繰り返し判定し、前記第1検出信号と前記第2検出信号の両方が前記中立位置に対応した値でない場合、所定の出力部からその旨の警報を出力し、前記所定時間が経過する前に前記第1検出信号と前記第2検出信号の両方が前記中立位置に対応した値となったとき、前記警報の出力を停止するとともに、前記第1検出信号に基づいて前記作業機を制御する所定の制御信号を生成して出力するステップとを含む制御方法である。
【0008】
本開示の一態様は、作業機と、中立位置から第1方向または前記第1方向とは反対方向の第2方向に傾倒する前記作業機の操作レバーの傾倒量を検出する第1傾倒量センサが前記傾倒量に応じて出力した第1検出信号と、前記傾倒量を検出する第2傾倒量センサが前記傾倒量に応じて出力した第2検出信号とを繰り返し取得する取得部と、前記作業機械の起動時に前記第1検出信号と前記第2検出信号が前記中立位置に対応した値であるか否かを所定時間繰り返し判定し、前記第1検出信号と前記第2検出信号の両方が前記中立位置に対応した値でない場合、所定の出力部からその旨の警報を出力し、前記所定時間が経過する前に前記第1検出信号と前記第2検出信号の両方が前記中立位置に対応した値となったとき、前記警報の出力を停止するとともに、前記第1検出信号に基づいて前記作業機を制御する所定の制御信号を生成して出力する制御部とを備える作業機械である。
【発明の効果】
【0009】
本開示の制御装置、制御方法および作業機械によれば、作業機の操作レバーの傾倒量の検出に異常が発生した場合に適切に対処することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本開示の実施形態に係る作業機械を示す側面図である。
図2】本開示の実施形態に係る作業機械の制御システムの構成例を示すブロック図である。
図3】本開示の実施形態に係る操作レバーを示す断面図である。
図4】本開示の実施形態に係る操作レバーを示す断面図である。
図5】本開示の実施形態に係る角度センサの出力特性図である。
図6】本開示の実施形態に係るコントローラの動作例を示す状態遷移図である。
図7】本開示の実施形態に係るコントローラの動作例を説明するための模式図である。
図8】本開示の実施形態に係るコントローラの動作例を説明するための模式図である。
図9】本開示の実施形態に係るコントローラの動作例を説明するための模式図である。
図10】本開示の実施形態に係るコントローラの動作例を説明するための模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照して本開示の実施形態について説明する。なお、各図において同一または対応する構成には同一の符号を用いて説明を適宜省略する。
【0012】
本実施形態においては、作業機械1にローカル座標系を設定し、ローカル座標系を参照しながら各部の位置関係について説明する。ローカル座標系において、作業機械1の左右方向(車幅方向)に延伸する第1軸をX軸とし、作業機械1の前後方向に延伸する第2軸をY軸とし、作業機械1の上下方向に延伸する第3軸をZ軸とする。X軸とY軸とは直交する。Y軸とZ軸とは直交する。Z軸とX軸とは直交する。+X方向は右方向であり、-X方向は左方向である。+Y方向は前方向であり、-Y方向は後方向である。+Z方向は上方向であり、-Z方向は下方向である。
【0013】
[作業機械の概要]
図1は、本実施形態に係る作業機械1を示す側面図である。本実施形態に係る作業機械1は、例えばホイールローダである。以下の説明において、作業機械1を適宜、ホイールローダ1、と称する。
【0014】
図1に示すように、ホイールローダ1は、車体2と、キャブ3と、走行装置4と、作業機10とを有する。ホイールローダ1は、走行装置4により、作業現場を走行する。ホイールローダ1は、作業現場において、作業機10を用いて作業を実施する。ホイールローダ1は、作業機10を用いて、掘削作業、積込作業、運搬作業、および除雪作業等の作業を実施することができる。
【0015】
キャブ3は、車体2に支持される。キャブ3の内部には、オペレータが着座する運転席31と、後述する操作装置32と、表示入力部35と、出力部36とが配置される。
【0016】
走行装置4は、回転可能な車輪5を有する。車輪5は、車体2を支持する。ホイールローダ1は、走行装置4によって路面(あるいは地面)RSを走行可能である。なお、図1では、左側の前輪5Fおよび後輪5Rのみが図示されている。
【0017】
作業機10は、車体2に支持される。作業機10は、作業工具の一例としてのバケット12と、バケット12の位置と姿勢を変化させる可動支持部17とから構成されている。図1に示す例では、可動支持部17は、ブーム11と、ブームシリンダ13と、バケットシリンダ14と、ベルクランク15と、リンク16とを備える。
【0018】
ブーム11は、車体2に対して回動可能に支持され、ブームシリンダ13の伸縮に応じて上下方向に移動する。ブームシリンダ13は、ブーム11を移動させるための動力を発生するアクチュエータであり、一端部は車体2に連結され、他端部はブーム11に連結される。オペレータが操作装置32に含まれるブーム操作レバー33(図2)を操作すると、ブームシリンダ13が伸縮する。これにより、ブーム11は上下方向に移動する。ブームシリンダ13は、例えば油圧シリンダである。
【0019】
バケット12は、刃先12Tを有し、土砂等の掘削対象物の掘削や、積み込みを行うための作業工具である。バケット12は、ブーム11に対して回動可能に連結されるとともに、リンク16の一端部に対して回動可能に連結されている。リンク16の他端部は、ベルクランク15の一端部に回動可能に連結されている。ベルクランク15は、中央部がブーム11に回動可能に連結され、他端部がバケットシリンダ14の一端部に回動可能に連結されている。バケットシリンダ14の他端部は車体2に回動可能に連結されている。バケット12は、バケットシリンダ14が発生する動力によって作動する。バケットシリンダ14は、バケット12を移動するための動力を発生するアクチュエータである。オペレータがバケット操作レバー34(図2)を操作すると、バケットシリンダ14が伸縮する。これにより、バケット12は揺動する。バケットシリンダ14は、例えば油圧シリンダである。刃先12Tは、山刃、平刃等の形状を有し、交換可能にバケット12の端部に取り付けられている。
【0020】
[制御システムの構成]
図2は、本実施形態に係るホイールローダ1の制御システムの構成例を示すブロック図である。図2に示すように、ホイールローダ1は、動力源201と、PTO(Power Take Off)202と、油圧ポンプ203と、制御弁200と、操作装置32と、表示入力部35と、出力部36と、コントローラ100とを備える。
【0021】
動力源201は、作業機械を作動させるための駆動力を発生する。動力源として、内燃機関や電動機が例示される。
【0022】
PTO202は、動力源201の駆動力の少なくとも一部を油圧ポンプ203に伝達する。PTO202は、動力源201の駆動力を走行装置4と油圧ポンプ203とに分配する。
【0023】
油圧ポンプ203は、動力源201によって駆動され、作動油を吐出する。油圧ポンプ203から吐出された作動油の少なくとも一部は、制御弁200を介して、ブームシリンダ13およびバケットシリンダ14のそれぞれに供給される。制御弁200は、コントローラ100から所定の制御信号を受け、油圧ポンプ203からブームシリンダ13およびバケットシリンダ14のそれぞれに供給される作動油の流量、圧力および方向を制御する。作業機10は、油圧ポンプ203からの作動油により動作する。
【0024】
操作装置32は、キャブ3の内部に配置される。操作装置32は、オペレータにより操作される。オペレータは、操作装置32を操作して、ホイールローダ1の進行方向と走行速度の調整、前進または後進の切替え、および作業機10の操作を実施する。操作装置32は、例えば、ステアリング、シフトレバー、アクセルペダル、ブレーキペダル、ブーム操作レバー33、およびバケット操作レバー34を含む。ブーム操作レバー33は、ブーム11の姿勢を操作するための操作レバーである。ブーム操作レバー33は、メイン角度センサ331とサブ角度センサ332を有し、操作レバーの傾倒量を示す2系統の検出信号を出力する。バケット操作レバー34は、バケット12の姿勢を操作するための操作レバーである。バケット操作レバー34は、メイン角度センサ341とサブ角度センサ342を有し、操作レバーの傾倒量を示す2系統の検出信号を出力する。
【0025】
なお、ブーム操作レバー33とバケット操作レバー34を総称する場合、操作レバーという。メイン角度センサ331、サブ角度センサ332、メイン角度センサ341およびサブ角度センサ342を総称する場合、角度センサという。また、メイン角度センサ331とメイン角度センサ341を総称する場合、メイン角度センサという。また、サブ角度センサ332とサブ角度センサ342を総称する場合、サブ角度センサという。角度センサは、操作レバーの傾倒量を検出し、検出結果をアナログ電圧値で示す検出信号を出力する。傾倒量は、例えば傾倒角度、把持部分の移動量等に応じた値で表すことができる。なお、角度センサは、例えば、可変抵抗器(ポテンショメータ)と信号処理回路との組み合わせ、ホール素子と信号処理回路との組み合わせ等から構成することができる。また、メイン角度センサの検出信号の電圧値と、サブ角度センサの検出信号の電圧値との合計値は、一定値となるように、各検出信号が設定されている。また、以下では、メイン角度センサを単にメイン、サブ角度センサを単にサブということがある。
【0026】
表示入力部35は、入力装置と表示装置の組み合わせ、タッチパネル等の入力表示装置等から構成される。オペレータは、表示入力部35を用いて、例えば作業機10の制御における設定値等を入力する。出力部36は、表示装置、合成音声、警報音あるいは報知音の出力装置、警告灯等の表示灯等を含み、所定の情報を出力する。
【0027】
なお、メイン角度センサが本開示に係る第1傾倒量センサの一例である。また、サブ角度センサが本開示に係る第2傾倒量センサの一例である。
【0028】
図3および図4は、本実施形態に係るブーム操作レバー33およびバケット操作レバー34を示す断面図である。ブーム操作レバー33とバケット操作レバー34は同一構成とすることができ、以下、ブーム操作レバー33を例に挙げて説明する。図3はブーム操作レバー33の傾倒位置が中立位置である場合を示し、図4はブーム操作レバー33の傾倒位置が後ろ方向のストロークエンドに達した位置である場合を示す。なお、ブーム操作レバー33は前方向にも同様に傾倒する。ブーム操作レバー33は、操作レバーに一定以上の操作力が掛けられていない状態で、操作レバーの位置を中立位置に自動的に復帰する機構を有している。本実施形態では、角度センサは操作レバーの下方に設けられ、操作レバーの傾倒量を検出する。操作レバーの傾倒中心には、バネ301が設けられている。バネ301は、操作レバーの位置を中立位置に自動的に復帰させる機能を有する。操作レバーの下方には、デテントソレノイド302が設けられている。デテントソレノイド302は、デテントソレノイド302に電流が流れると、操作レバーを最大に傾倒させた際に、操作レバーから手を放しても操作レバーを最大に傾倒させた位置に保持する機能を有する。本実施形態に係る操作レバーは、中立位置から第1方向(例えば前方向)または第1方向とは反対方向の第2方向(例えば後ろ方向)に傾倒する作業機10の操作レバーである。
【0029】
図5は、本開示の実施形態に係る角度センサの出力特性図である。横軸は出力電圧、縦軸は操作レバーストロークである。この場合、操作レバーストロークは、ストロークエンドを「1」とした場合の百分率で表している。また、中立位置を「0%」として、例えば、前に倒した場合を負の値で表し、後ろに倒した場合を正の値で表している。ただし、正負の向きは逆でもよい。電圧値V1は例えば「0V」であり、電圧値V5は例えば「5V」である。本実施形態では、コントローラ100における信号電圧の範囲が直流0~5Vである。電圧値V2は地絡故障の判定電圧であり、電圧値V4が天絡故障の判定電圧である。角度センサが出力した検出信号の電圧がV2以下の場合、地絡故障が発生していると判定することができる。角度センサが出力した検出信号の電圧がV4以上の場合、天絡故障が発生していると判定することができる。なお、角度センサの検出信号の範囲は、電圧値V2~電圧値V4の範囲よりも小さい。また、電圧値V3は中立位置に対応する電圧であり、例えば「2.5V」である。この例では、メイン角度センサの検出信号の電圧値Vmとサブ角度センサの検出信号の電圧値Vsの合計値は例えば「5V」一定となる。図5において、実線はメイン角度センサの検出信号の電圧値Vmを、一点鎖線はサブ角度センサの検出信号の電圧値Vsを示す。なお、二点鎖線で示す出力特性は、実線で示す出力特性が何らかの不具合で降下した場合の例である。例えば、メイン角度センサの検出信号の電圧値がVm′に低下した場合、Vm′とVsの和は5Vを下回ることになる。
【0030】
コントローラ100は、例えば、プロセッサ、主記憶装置、補助記憶装置、入出力装置等を有するFPGA(Field Programmable Gate Array)やマイクロコンピュータを用いて構成される。コントローラ100は、ハードウェアまたはハードウェアとプログラム等のソフトウェアの組み合わせ等から構成される機能的構成として、取得部101と、制御部102とを備える。本実施形態のコントローラ100は、操作装置32の操作等に応じて、制御弁200を制御することで、ブームシリンダ13およびバケットシリンダ14を駆動制御する。コントローラ100は、本開示に係る制御装置の一例である。
【0031】
取得部101は、メイン角度センサが操作レバーの傾倒量に応じて出力した各検出信号(第1検出信号)と、サブ角度センサが操作レバーの傾倒量に応じて出力した各検出信号(第2検出信号)とを例えば所定の周期(例えば数ミリ秒~数百ミリ秒周期)で繰り返し取得する。
【0032】
制御部102は、例えば、メイン角度センサの検出信号とサブ角度センサの検出信号に基づいて、各検出信号が正常か異常かを判定したり、異常な場合にどの角度センサの検出信号に基づいて制御弁200の制御を行うかを選択したりする。なお、制御部102が行う異常の有無の判定には次の2つがある。ひとつは、ホイールローダ1のキーオン時(ホイールローダ1の起動時)に、操作レバーが操作されていないことを前提として、各検出信号が、操作レバーが中立位置にあることを示す値となっているか否かの判定である。この判定を中立判定という。なお、キーオン時とは、キーをオンしてから操作レバーの操作を開始するまでに通常要する時間より短い時間内であり、例えばキーをオンしてから数秒~十数秒程度の時間である。もう一つは、メインとサブの各検出信号の電圧値の合計値が、所定の一定値になっているか否かの判定である。この判定を和判定あるいはエラー判定という。和判定は起動時に限らず、操作レバーの操作中も判定することができる。
【0033】
制御部102は、例えば、ホイールローダ1のキーオン時(起動時)に、メイン角度センサの検出信号(第1検出信号)とサブ角度センサの検出信号(第2検出信号)が中立位置に対応した値であるか否かを判定し、第1検出信号と第2検出信号の両方が中立位置に対応した値である場合、第1検出信号に基づいて作業機10を制御する所定の制御信号を生成して出力する。また、制御部102は、例えば、第1検出信号または第2検出信号のいずれか一方が中立位置に対応した値でない場合、他方の第1検出信号または第2検出信号に基づいて制御信号を生成して出力するとともに、出力部36から一方が中立位置に対応した値でない場合に対応した所定の情報を出力する。なお、中立位置に対応した値とは、図5に示す例では、電圧値V3±α以内の電圧値である。ここで、αは判定の許容範囲の電圧値である。また、所定の情報の出力は、例えば、中立位置に対応した値でない場合を表すエラーコードの表示、合成音声や電子音による異常が検出されたことの報知、所定の表示灯の点灯や点滅等である。なお、所定の情報の出力は、エラー発報ともいう。
【0034】
また、制御部102は、例えば、第1検出信号または第2検出信号のいずれか一方が中立位置に対応した値でない場合、他方の第1検出信号または第2検出信号に基づいて、作業機10の機能を制限した上で、制御信号を生成して出力する。作業機10の機能の制限とは、作業機10の作用あるいは動作の制限であり、例えば、作業機10の動作速度を通常より低い値(例えば通常の数~数十%程度)に制限することである。
【0035】
また、制御部102は、例えば、第1検出信号と第2検出信号の両方が中立位置に対応した値であると判定した場合、第1検出信号と第2検出信号との合計値が一定値であるか否かを判定し、一定値でない場合、作業機10の所定のアクチュエータの作動を停止するように、制御信号を生成して出力する。ここで、一定値は、図5を参照して説明した2倍の電圧値V3±β以内の電圧値である。また、βは判定の許容範囲の電圧値である。
【0036】
また、制御部102は、例えば、ホイールローダ1のキーオン時(起動時)に、メイン角度センサの検出信号(第1検出信号)とサブ角度センサの検出信号(第2検出信号)が中立位置に対応した値であるか否かを、例えば、キーオンの時刻から所定時間繰り返し判定する。所定時間は、例えば数秒~十数秒程度とすることができる。制御部102は、第1検出信号と第2検出信号の両方が中立位置に対応した値でない場合、出力部36からその旨の警報を出力する。また、制御部102は、所定時間が経過する前に第1検出信号と第2検出信号の両方が中立位置に対応した値となったとき、警報の出力を停止するとともに、第1検出信号に基づいて作業機10を制御する制御信号を生成して出力する。また、警報の出力は、例えば、操作レバーが中立位置にないことを表すエラーコードの表示、合成音声や電子音による操作レバーが中立位置にないことの報知、操作レバーが中立位置にないことを示す所定の表示灯の点灯や点滅等である。
【0037】
[コントローラの動作例]
図6は、本開示の実施形態に係るコントローラの動作例を示す状態遷移図である。図7図10は、本開示の実施形態に係るコントローラの動作例を説明するための模式図である。図6は、制御部102が、メイン角度センサの検出信号とサブ角度センサの検出信号に基づく異常の有無の判定状態(状態S0~S8)の遷移を示す。図6に示す状態遷移は、キーオン時に開始される。初期状態は状態S0である。
【0038】
状態S0では、次に状態S1~S4のどこに遷移するかを決定するために、制御部102によってイニシャルチェックが実施される。イニシャルチェックの結果に基づいて、状態S0から状態S1~S4のいずれかに状態が遷移する。なお、状態S0でのメイン角度センサとサブ角度センサの選択はメインである。図7は、イニシャルチェックの内容を示す。制御部102は状態S0にて中立判定を実施する。制御部102は、起動時からT5時間(例えば0.3秒間)経過で、経過後T6時間(例えば0.5秒間)でメイン・サブの中立判定を実施する。制御部102は、T6時間の間、常に中立範囲内であれば中立と判定する。また、制御部102は、T6時間に一度でも中立範囲外となると非中立と判定する。
【0039】
状態S0で、条件1が成立すると状態S1へ遷移する。状態S0で、条件2が成立すると状態S2へ遷移する。状態S0で、条件3が成立すると状態S3へ遷移する。状態S0で、条件4が成立すると状態S4へ遷移する。図8は、条件1~7を一覧にして示す。
【0040】
条件1の成立条件は、条件2が不成立かつ条件3が不成立かつ条件4が不成立である。
【0041】
条件2の成立条件は、メイン中立、かつ、サブ非中立、かつ、メイン・サブ両方とも断線、地絡、または、天絡のエラー検出範囲でない、である。なお、断線については、各センサの出力信号線がハイインピーダンス状態であるか否かで判定することができる。
【0042】
条件3の成立条件は、メイン非中立、かつ、サブ中立、かつ、メイン・サブ両方とも断線、地絡、または、天絡のエラー検出範囲でない、である。
【0043】
条件4の成立条件は、メイン非中立、かつ、サブ非中立、かつ、メイン・サブ両方とも断線、地絡、または、天絡のエラー検出範囲でない、である。
【0044】
状態S1はメインもサブも正常(通常)である状態である。メインとサブの選択はメインである。エラーの出力はエラー無しの状態(エラー発報も警報も無い状態)である。状態S1で条件7がT1時間(例えば0.05秒間)継続して成立すると、状態S1から状態S6へ遷移する。
【0045】
状態S2はサブが異常である状態である。メインとサブの選択はメインである。エラーの出力はエラー発報である。作業機10は機能制限される。状態S2は、キーオフとなるまで維持される。
【0046】
状態S3はメインが異常である状態である。メインとサブの選択はサブである。エラーの出力はエラー発報である。作業機10は機能制限される。状態S3は、キーオフとなるまで維持される。
【0047】
状態S4はメインもサブも両方とも異常である状態である。エラーの出力は警報である。状態S4は、条件5が成立すると状態S0へ遷移し、条件6が成立すると状態S5へ遷移する。
【0048】
条件5の成立条件は、メイン・サブ両方とも中立がT3時間(例えば0.5秒間)以上経過したである。制御部102は、この遷移をする場合にはイニシャルチェック結果をメイン・サブともに中立に変更する。
【0049】
条件6の成立条件は、状態S4に遷移後T4時間(例えば10秒間)経過である。
【0050】
条件7は、メイン・サブの電圧値の合計値が2×V3±βの範囲外、かつ、メイン・サブ両方とも断線、地絡、または、天絡のエラー検出範囲でない、である。
【0051】
状態S5はサブもメインも異常である状態である。メインとサブの選択はメインである。エラーの出力はエラー発報である。作業機10は機能制限される。状態S5は、条件7がT1時間成立した場合に状態S7へ遷移する。
【0052】
状態S6はサブとメインの一方または両方が異常である状態である。メインとサブの選択はメインである。エラーの出力はなしである。作業機10は所定のアクチュエータの作動が停止される。状態S6は、条件7が不成立で状態S1へ遷移し、条件7がT2時間(例えば1秒間)成立した場合に状態S8へ遷移する。
【0053】
状態S7はサブもメインも異常である状態である。メインとサブの選択はメインである。エラーの出力はエラー発報である。作業機10は所定のアクチュエータの作動が停止される。状態S7は、条件7が不成立の場合に状態S6へ遷移し、条件7がさらにT2時間成立した場合に状態S8へ遷移する。
【0054】
状態S8はサブとメインの一方または両方が異常である状態である。メインとサブの選択はメインである。エラーの出力はエラー発報である。作業機10は所定のアクチュエータの作動が停止される。状態S8は、キーオフとなるまで維持される。
【0055】
図6に示す状態遷移において、状態S2および状態S3では、メインとサブのどちらかが非中立でも片方が正常なら作業機10は動かせるため、非常時稼働が可能である。また、エラー発報が行われているので、修理が促され、他方の角度センサも故障(二重故障)してしまう可能性を低くすることができる。なお、本実施形態において非常時稼働とは、故障等が発生した非常時において最低限の機能を維持した状態での作業機械1の稼働を意味し、例えば、作業機10を作業機械1が走行可能な状態まで駆動し、作業機械1を走行させて、修理が可能な場所等まで移動させるのに必要な機能を維持した状態での稼働である。
【0056】
また、状態S4では、キーオン時の誤操作では警報(例えば誤操作警報(故障ではない))を行い、T4時間以上、異常と判定された場合に故障と判断するようにした。
【0057】
状態S8では、和エラーの場合、作業機10の強制停止で安全が確保される。非常時稼働したい場合、キーオフからキーオンすれば、例えば状態S2等へ遷移し、片方のセンサが故障していなければ作業機10を動かすことができる。
【0058】
図9は、図6を参照して説明したコントローラ100の動作をまとめて表す。中立判定またはエラー判定については、「〇」が正常、「×」が異常を表す。非常時稼働については、「〇」が作業機10の姿勢を走行可能な状態まで駆動し、非常時稼働可能であること、「△」は場合によっては非常時稼働可能であることを表す。
【0059】
図10は、図9に示す正常(No.1)から、故障が進行した場合の動作をまとめて示す。角度センサの片方または両方の検出信号の電圧が降下した場合、いずれもエラー判定が異常となり、作業機10が停止される。よって、中立判定が異常となるような状態となった場合でも作業機10が停止されることになるので、操作レバーから手を離した状態で作業機10が動くようなことはない。したがって、安全性を確保することができる(「〇」)。
【0060】
(作用・効果)
本実施形態によれば、作業機の操作レバーの傾倒量の検出に異常が発生した場合に適切に対処することができる。
【0061】
<本実施形態の変形例または他の実施形態>
以上、この発明の実施形態について図面を参照して説明してきたが、具体的な構成は上記実施形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等も含まれる。また、上記実施形態でコンピュータが実行するプログラムの一部または全部は、コンピュータ読取可能な記録媒体や通信回線を介して頒布することができる。
【0062】
例えば、ホイールローダ1は、遠隔操作できるものとしてもよい。この場合、コントローラ100の一部または全部と、操作装置32とを、例えば、遠隔操作を行う場所に設けることができる。
【0063】
また、例えば、作業機械(あるいは作業車両)は、ホイールローダに限定されず、操作レバーの操作に応じて駆動される作業機を備える作業機械であればよい。例えば、油圧ショベル等の他の作業機械とすることができる。また、作業工具は、バケットに限られない。作業工具は、例えばアタッチメントとしてホイールローダに交換可能に取り付けられるフォーク、ベールグラブ等としてもよい。
【0064】
<付記>
上記実施形態に記載のコントローラ100(制御装置)は、例えば以下のように把握される。
【0065】
(1)コントローラ100(制御装置)は、作業機10を備える作業機械1の制御装置であって、中立位置から第1方向または前記第1方向とは反対方向の第2方向に傾倒する前記作業機の操作レバーの傾倒量を検出する第1傾倒量センサ(メインストロークセンサ)が前記傾倒量に応じて出力した第1検出信号と、前記傾倒量を検出する第2傾倒量センサ(サブストロークセンサ)が前記傾倒量に応じて出力した第2検出信号とを繰り返し取得する取得部101と、前記作業機械の起動時に前記第1検出信号と前記第2検出信号が前記中立位置に対応した値であるか否かを所定時間繰り返し判定し、前記第1検出信号と前記第2検出信号の両方が前記中立位置に対応した値でない場合、所定の出力部36からその旨の警報を出力し、前記所定時間が経過する前に前記第1検出信号と前記第2検出信号の両方が前記中立位置に対応した値となったとき、前記警報の出力を停止するとともに、前記第1検出信号に基づいて前記作業機を制御する所定の制御信号を生成して出力する制御部102とを備える。
【0066】
(2)前記制御部102は、前記第1検出信号または前記第2検出信号のいずれか一方が前記中立位置に対応した値でない場合、他方の前記第1検出信号または前記第2検出信号に基づいて前記制御信号を生成して出力するとともに、所定の出力部から前記一方が前記中立位置に対応した値でない場合に対応した所定の情報を出力する(1)の制御装置である。
【0067】
(3)前記制御部102は、前記第1検出信号または前記第2検出信号のいずれか一方が前記中立位置に対応した値でない場合、他方の前記第1検出信号または前記第2検出信号に基づいて、前記作業機の機能を制限した上で、前記制御信号を生成して出力する(2)の制御装置である。
【符号の説明】
【0068】
1…ホイールローダ(作業機械)、2…車体、3…キャブ、4…走行装置、5…車輪、6…タイヤ、10…作業機、11…ブーム、12…バケット(作業工具)、12T…刃先、13…ブームシリンダ、14…バケットシリンダ、15…ベルクランク、16…リンク、17…可動支持部、32…操作装置、33…ブーム操作レバー、34…バケット操作レバー、331、341…メインストロークセンサ、332、342…サブストロークセンサ、100…コントローラ(制御装置)、101…取得部、102…制御部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
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図8
図9
図10