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特開2024-30969積層セラミック電子部品、およびその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024030969
(43)【公開日】2024-03-07
(54)【発明の名称】積層セラミック電子部品、およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01G 4/30 20060101AFI20240229BHJP
【FI】
H01G4/30 201F
H01G4/30 201G
H01G4/30 516
H01G4/30 513
【審査請求】未請求
【請求項の数】17
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022134234
(22)【出願日】2022-08-25
(71)【出願人】
【識別番号】000204284
【氏名又は名称】太陽誘電株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087480
【弁理士】
【氏名又は名称】片山 修平
(72)【発明者】
【氏名】中村 智彰
(72)【発明者】
【氏名】田原 幹夫
(72)【発明者】
【氏名】清水 寛樹
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 勝
(72)【発明者】
【氏名】井上 富雄
【テーマコード(参考)】
5E001
5E082
【Fターム(参考)】
5E001AB03
5E001AF06
5E082AB03
5E082EE01
5E082FF05
5E082FG26
5E082GG10
5E082GG11
5E082GG12
(57)【要約】
【課題】 実装後のたわみ強度を向上させることができる積層セラミック電子部品、およびその製造方法を提供する。
【解決手段】 積層セラミック電子部品は、複数の誘電体層11と、複数の誘電体層11を介して設けられ互いに対向する複数の内部電極層12と、を有する素体10と、複数の内部電極層12が対向する第1方向に直交する第2方向における素体10の端面に設けられ、表面において互いに離間する複数のガラスパターン31を有する外部電極20a,20bと、外部電極20a,20b上に設けられ、複数のガラスパターン31上に不連続部23を有するメッキ層25と、を有する。
【選択図】 図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の誘電体層と、前記複数の誘電体層を介して設けられ互いに対向する複数の内部電極層と、を有する素体と、
前記複数の内部電極層が対向する第1方向に直交する第2方向における前記素体の端面に設けられ、表面において互いに離間する複数のガラスパターンを有する外部電極と、
前記外部電極上に設けられ、前記複数のガラスパターン上に不連続部を有するメッキ層と、を有する積層セラミック電子部品。
【請求項2】
前記複数のガラスパターンは、前記外部電極の表面において、各々直径10μm以上30μm以下の円状の範囲内に形成されたパターンである、請求項1に記載の積層セラミック電子部品。
【請求項3】
前記複数のガラスパターンは、略円状である、請求項1または請求項2に記載の積層セラミック電子部品。
【請求項4】
前記複数のガラスパターンは、中央部が凹で、周縁部が凸になっている、請求項1または請求項2に記載の積層セラミック電子部品。
【請求項5】
前記複数のガラスパターンのうちの少なくとも2つについて、中心と中心との間隔が10μmより大きく100μm未満である、請求項1または請求項2に記載の積層セラミック電子部品。
【請求項6】
前記複数のガラスパターンのうちの少なくとも2つについて、中心と中心との間隔が63μm未満である、請求項1または請求項2に記載の積層セラミック電子部品。
【請求項7】
前記複数のガラスパターンは、ジルコニウムを含む、請求項1または請求項2に記載の積層セラミック電子部品。
【請求項8】
前記外部電極は、銅を主成分とする、請求項1または請求項2に記載の積層セラミック電子部品。
【請求項9】
前記外部電極は、前記第1方向の端に位置する前記素体の主面と、前記第1方向および前記第2方向に直交する第3方向の端に位置する前記素体の側面と、に延伸し、前記複数のガラスパターンは、前記側面および前記端面の各々より前記主面に専有面積として多く分布する、請求項1または請求項2に記載の積層セラミック電子部品。
【請求項10】
前記複数のガラスパターンの面積の総和は、前記外部電極の面積の16%以上33%以下である、請求項1または請求項2に記載の積層セラミック電子部品。
【請求項11】
複数の誘電体層と、前記複数の誘電体層を介して設けられ互いに対向する複数の内部電極と、を有する素体において、前記複数の内部電極が対向する第1方向に直交する第2方向における前記素体の端面に、導電ペーストを塗布する工程と、
前記導電ペーストにセラミックビーズを接触させる工程と、
前記セラミックビーズを接触させた状態で前記導電ペーストに対して熱処理することで、前記導電ペーストから外部電極を形成し、前記外部電極の表面に複数のガラスパターンを形成する工程と、
前記外部電極から前記セラミックビーズを除去する工程と、
前記外部電極上に、前記複数のガラスパターン上に不連続部を有するメッキ層を形成する工程と、を含む積層セラミック電子部品の製造方法。
【請求項12】
前記セラミックビーズを接触させる工程は、前記セラミックビーズを配置した容器に前記素体を配置する工程と、
前記素体が配置された前記容器に前記セラミックビーズを更に振りかける工程と、を含む、請求項11に記載の積層セラミック電子部品の製造方法。
【請求項13】
前記セラミックビーズを除去する工程において、ブラスト法または乾式研磨を用いる、請求項11または請求項12に記載の積層セラミック電子部品の製造方法。
【請求項14】
前記セラミックビーズは、酸化ジルコニウムを含む、請求項11または請求項12に記載の積層セラミック電子部品の製造方法。
【請求項15】
前記セラミックビーズの粒径は、100μm未満である、請求項11または請求項12に記載の積層セラミック電子部品の製造方法。
【請求項16】
前記セラミックビーズの粒径は、63μm未満である、請求項11または請求項12に記載の積層セラミック電子部品の製造方法。
【請求項17】
前記外部電極を形成する工程は、前記導電ペーストおよび前記セラミックビーズを雰囲気温度800℃以上880℃以下で熱処理する工程である、請求項11または請求項12に記載の積層セラミック電子部品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積層セラミック電子部品、およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
積層セラミックコンデンサなどの積層セラミック電子部品には、実装後に、外部電極の先端から素体内側にかけてたわみ、クラックが生じることがある。このクラックを抑制するために、金属フィラーを含む樹脂を、外部電極とメッキ層との間に挟み、応力を緩和したり、樹脂を適切に剥がしたりする設計にする(例えば、特許文献1参照)。これにより、たわみに対する耐性を向上させることができる。具体的には、クラックが入る押込み量を大きくできたり、素体内部にクラックが入り込まないようにしたりできる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001-76957号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、樹脂を外部電極に挟みこむ構造にする場合、樹脂自体が厚くなってしまうため、製品の小型化大容量化に不利になる。特に、低背品では側面部分が厚くなると大きな問題となる。また、金属フィラーを含む樹脂ペーストを塗布乾燥させ、硬化をさせる工程が増えるため、コスト増につながる。
【0005】
本発明は、上記課題に鑑みなされたものであり、実装後のたわみ強度を向上させることができる積層セラミック電子部品、およびその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る積層セラミック電子部品は、複数の誘電体層と、前記複数の誘電体層を介して設けられ互いに対向する複数の内部電極と、を有する素体と、前記複数の内部電極が対向する第1方向に直交する第2方向における前記素体の端面に設けられ、表面において互いに離間する複数のガラスパターンを有する外部電極と、前記外部電極上に設けられ、前記複数のガラスパターン上に不連続部を有するメッキ層と、を有する。
【0007】
上記積層セラミック電子部品において、前記複数のガラスパターンは、前記外部電極の表面において、各々直径10μm以上30μm以下の円状の範囲内に形成されたパターンであってもよい。
【0008】
上記積層セラミック電子部品において、前記複数のガラスパターンは、略円状であってもよい。
【0009】
上記積層セラミック電子部品において、前記複数のガラスパターンは、中央部が凹で、周縁部が凸になっていてもよい。
【0010】
上記積層セラミック電子部品において、前記複数のガラスパターンのうちの少なくとも2つについて、中心と中心との間隔が10μmより大きく100μm未満であってもよい。
【0011】
上記積層セラミック電子部品において、前記複数のガラスパターンのうちの少なくとも2つについて、中心と中心との間隔が63μm未満であってもよい。
【0012】
上記積層セラミック電子部品において、前記複数のガラスパターンは、ジルコニウムを含んでいてもよい。
【0013】
上記積層セラミック電子部品において、前記外部電極は、銅を主成分としてもよい。
【0014】
上記積層セラミック電子部品において、前記外部電極は、前記第1方向の端に位置する前記素体の主面と、前記第1方向および前記第2方向に直交する第3方向の端に位置する前記素体の側面と、に延伸し、前記複数のガラスパターンは、前記側面および前記端面の各々より前記主面に専有面積として多く分布していてもよい。
【0015】
上記積層セラミック電子部品において、前記複数のガラスパターンの面積の総和は、前記外部電極の面積の16%以上33%以下であってもよい。
【0016】
本発明に係る積層セラミック電子部品の製造方法は、複数の誘電体層と、前記複数の誘電体層を介して設けられ互いに対向する複数の内部電極と、を有する素体において、前記複数の内部電極が対向する第1方向に直交する第2方向における前記素体の端面に、導電ペーストを塗布する工程と、前記導電ペーストにセラミックビーズを接触させる工程と、前記セラミックビーズを接触させた状態で前記導電ペーストに対して熱処理することで、前記導電ペーストから外部電極を形成し、前記外部電極の表面に複数のガラスパターンを形成する工程と、前記外部電極から前記セラミックビーズを除去する工程と、前記外部電極上に、前記複数のガラスパターン上に不連続部を有するメッキ層を形成する工程と、を含む。
【0017】
上記製造方法において、前記セラミックビーズを接触させる工程は、前記セラミックビーズを配置した容器に前記素体を配置する工程と、前記素体が配置された前記容器に前記セラミックビーズを更に振りかける工程と、を含んでいてもよい。
【0018】
上記製造方法の前記セラミックビーズを除去する工程において、ブラスト法または乾式研磨を用いてもよい。
【0019】
上記製造方法において、前記セラミックビーズは、酸化ジルコニウムを含んでいてもよい。
【0020】
上記製造方法において、前記セラミックビーズの粒径は、100μm未満であってもよい。
【0021】
上記製造方法において、前記セラミックビーズの粒径は、63μm未満であってもよい。
【0022】
上記製造方法において、前記外部電極を形成する工程は、前記導電ペーストおよび前記セラミックビーズを雰囲気温度800℃以上880℃以下で熱処理する工程であってもよい。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、実装後のたわみ強度を向上させることができる積層セラミック電子部品、およびその製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】積層セラミックコンデンサの部分断面斜視図である。
図2図1のA-A線断面図である。
図3図1のB-B線断面図である。
図4】積層セラミックコンデンサが回路基板上に実装されている状態を例示する図である。
図5】(a)および(b)はメッキ層を例示する図である。
図6】クラックを例示する図である。
図7】ガラスパターンを説明するための図である。
図8】ガラスパターンを説明するための図である。
図9】ガラスパターンの形状を説明するための図である。
図10】ガラスパターン同士の間隔を説明するための図である。
図11】積層セラミックコンデンサの製造方法のフローを例示する図である。
図12】(a)および(b)は積層セラミックコンデンサの製造方法のフローを例示する図である。
図13】セラミックビーズの接触工程を説明するための図である。
図14】焼き付け工程を例示する図である。
図15】外部電極を焼き付けた後の積層セラミックコンデンサを例示する図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、図面を参照しつつ、実施形態について説明する。
【0026】
図1は、実施形態に係る積層セラミックコンデンサ100の部分断面斜視図である。図2は、図1のA-A線断面図である。図3は、図1のB-B線断面図である。図1図3では、後述するメッキ層25については省略されている。
【0027】
図1図3で例示するように、積層セラミックコンデンサ100は、略直方体形状を有する素体10と、素体10のいずれかの対向する2端面に設けられた外部電極20a,20bとを備える。なお、素体10の当該2端面以外の4面のうち、積層方向の上面および下面以外の2面を側面と称する。素体10の上面および下面のことを主面と称することがあり、上面、下面、および2側面のことを周面と称することがある。外部電極20a,20bは、素体10の積層方向の上面、下面および2側面に延在している。ただし、外部電極20aと外部電極20bとは、互いに離間している。
【0028】
なお、図1図3において、Z軸方向(第1方向)は、複数の内部電極層12が互いに対向する第1方向であって、積層方向であり、素体10の上面と下面とが対向する方向である。X軸方向(第2方向)は、素体10の長さ方向であって、素体10の2端面が対向する方向であり、外部電極20aと外部電極20bとが対向する方向である。Y軸方向(第3方向)は、内部電極層の幅方向であり、素体10の4側面のうち2端面以外の2側面が対向する方向である。
【0029】
素体10は、誘電体として機能するセラミック材料を含む誘電体層11と、金属を主成分とする内部電極層12とが、交互に積層された構成を有する。言い換えると、素体10は、互いに対向する複数の内部電極層12と、複数の内部電極層12の間に各々挟まれた誘電体層11と、を備えている。各内部電極層12が延伸される方向の端縁は、素体10の外部電極20aが設けられた端面と、外部電極20bが設けられた端面において、交互に露出している。それにより、各内部電極層12は、外部電極20aと外部電極20bとに、交互に導通している。その結果、積層セラミックコンデンサ100は、複数の誘電体層11が内部電極層12を介して積層された構成を有する。また、誘電体層11と内部電極層12との積層体において、積層方向の最外層には内部電極層12が配置され、当該積層体の上面および下面は、カバー層13によって覆われている。カバー層13は、セラミック材料を主成分とする。例えば、カバー層13は、誘電体層11と組成が同じであっても、異なっていても構わない。
【0030】
積層セラミックコンデンサ100のサイズは、例えば、長さ0.25mm、幅0.125mm、高さ0.125mmであり、または長さ0.4mm、幅0.2mm、高さ0.2mm、または長さ0.6mm、幅0.3mm、高さ0.3mmであり、または長さ0.6mm、幅0.3mm、高さ0.110mmであり、または長さ1.0mm、幅0.5mm、高さ0.5mmであり、または長さ1.0mm、幅0.5mm、高さ0.1mmであり、または長さ3.2mm、幅1.6mm、高さ1.6mmであり、または長さ4.5mm、幅3.2mm、高さ2.5mmであるが、これらのサイズに限定されるものではない。
【0031】
誘電体層11は、例えば、一般式ABOで表されるペロブスカイト構造を有するセラミック材料を主相とする。なお、当該ペロブスカイト構造は、化学量論組成から外れたABO3-αを含む。例えば、当該セラミック材料として、チタン酸バリウム(BaTiO),ジルコン酸カルシウム(CaZrO),チタン酸カルシウム(CaTiO),チタン酸ストロンチウム(SrTiO),チタン酸マグネシウム(MgTiO),ペロブスカイト構造を形成するBa1-x-yCaSrTi1-zZr(0≦x≦1,0≦y≦1,0≦z≦1)等のうち少なくとも1つから選択して用いることができる。Ba1-x-yCaSrTi1-zZrは、チタン酸バリウムストロンチウム、チタン酸バリウムカルシウム、ジルコン酸バリウム、チタン酸ジルコン酸バリウム、チタン酸ジルコン酸カルシウムおよびチタン酸ジルコン酸バリウムカルシウムなどである。
【0032】
誘電体層11には、添加物が添加されていてもよい。誘電体層11への添加物として、マグネシウム(Mg)、マンガン(Mn)、モリブデン(Mo)、バナジウム(V)、クロム(Cr)、希土類元素(イットリウム(Y)、サマリウム(Sm)、ユーロピウム(Eu)、ガドリニウム(Gd)、テルビウム(Tb)、ジスプロシウム(Dy)、ホルミウム(Ho)、エルビウム(Er)、ツリウム(Tm)およびイッテルビウム(Yb))の酸化物、または、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、リチウム(Li)、ホウ素(B)、ナトリウム(Na)、カリウム(K)もしくはケイ素(Si)を含む酸化物、または、コバルト、ニッケル、リチウム、ホウ素、ナトリウム、カリウムもしくはケイ素を含むガラスが挙げられる。誘電体層11の厚みは、例えば、1.0μm以上3.0μm以下であり、2.5μm以上4.5μm以下であり、4.0μm以上6.0μm以下であり、5.5μm以上7.5μm以下である。
【0033】
内部電極層12は、ニッケル,銅(Cu),スズ(Sn)等の卑金属を主成分とする。内部電極層12として、白金(Pt),パラジウム(Pd),銀(Ag),金(Au)などの貴金属やこれらを含む合金を用いてもよい。内部電極層12の厚みは、例えば、0.8μm以上1.2μm以下であり、1.0μm以上1.4μm以下であり、1.2μm以上1.6μm以下であり、1.4μm以上1.8μm以下である。
【0034】
外部電極20a,20bは、ニッケル、銅などの金属を主成分とする。外部電極20a,20bは、焼き付け時の加熱処理における温度を低下させるために、ガラス成分を含んでいる。
【0035】
図2で例示するように、外部電極20aに接続された内部電極層12と外部電極20bに接続された内部電極層12とが対向する領域は、積層セラミックコンデンサ100において静電容量を生じる領域である。そこで、当該静電容量を生じる領域を、容量部14と称する。すなわち、容量部14は、異なる外部電極に接続された隣接する内部電極層12同士が対向する領域である。
【0036】
外部電極20aに接続された内部電極層12同士が、外部電極20bに接続された内部電極層12を介さずに対向する領域を、エンドマージン15と称する。また、外部電極20bに接続された内部電極層12同士が、外部電極20aに接続された内部電極層12を介さずに対向する領域も、エンドマージン15である。すなわち、エンドマージン15は、同じ外部電極に接続された内部電極層12が異なる外部電極に接続された内部電極層12を介さずに対向する領域である。エンドマージン15は、静電容量を生じない領域である。エンドマージン15は、容量部14の誘電体層11と同じ組成であってもよく、異なる組成であってもよい。
【0037】
図3で例示するように、素体10において、素体10の2側面から内部電極層12に至るまでの領域をサイドマージン16と称する。すなわち、サイドマージン16は、上記積層構造において積層された複数の内部電極層12が2側面側に延びた端部を覆うように設けられた領域である。サイドマージン16も、静電容量を生じない領域である。サイドマージン16は、容量部14の誘電体層11と同じ組成であってもよく、異なる組成であってもよい。
【0038】
図4は、積層セラミックコンデンサ100が回路基板201上に実装されている状態を例示する図である。図4で例示するように、積層方向の下面が回路基板201上のランド203と対向するように配置される。回路基板201上のランド203に対して、ハンダ202を介して外部電極20aおよび第2外部電極20bがそれぞれ独立して回路基板201に電気的に接続される。
【0039】
図5(a)および図5(b)で例示するように、外部電極20aを覆うようにメッキ層が設けられており、外部電極20bを覆うようにメッキ層25が設けられている。したがって、メッキ層25は、素体10の上面、下面および2側面に延在している。ただし、外部電極20a上のメッキ層25と、外部電極20b上のメッキ層25とは、互いに離間している。メッキ処理時には、外部電極20aおよび外部電極20bは、下地層として機能する。メッキ層25は、銅、ニッケル、アルミニウム、亜鉛、スズなどの金属またはこれらの2以上の合金を主成分とする。メッキ層25は、単一金属成分のメッキ層(単一層)でもよく、互いに異なる金属成分の複数のメッキ層でもよい。例えば、メッキ層25は、下地層側から順に、第1メッキ層21および第2メッキ層22が形成された構造を有する。第1メッキ層21は、例えば、ニッケルメッキ層である。第2メッキ層22は、例えば、スズメッキ層である。
【0040】
積層セラミックコンデンサ100を回路基板201に実装した後、図6で例示するように、外部電極20a,20bの先端から素体10の内側にかけてたわみ、クラック30が生じることがある。そこで、クラック30の発生を抑制するため、金属フィラーを含む導電性樹脂を外部電極20a,20bとメッキ層25との間に挟み、応力を緩和したり、導電性樹脂を適切に剥がしたりする設計にすることが考えられる。このようにすることで、たわみに対する耐性を向上させることができる。
【0041】
しかしながら、導電性樹脂を設ける場合、導電性樹脂自体が厚くなってしまうため、製品の小型化大容量化に不利になる。特に、低背品では側面部分が厚くなると大きな問題となる。また、金属フィラーを含む樹脂ペーストを塗布乾燥させ、硬化をさせる工程が増えるため、コスト増につながる。
【0042】
そこで、本実施形態に係る積層セラミックコンデンサ100は、実装後のたわみ強度を向上させることができる構成を有している。
【0043】
具体的には、外部電極20a,20bは、図7で例示するように、表面に、複数のガラスパターン31が備わっている。図7は、メッキ層25を透過して外部電極20a,20bを観察した場合の図である。複数のガラスパターン31のうち、少なくともいずれか2以上は、互いに離間している。図8は、外部電極20aのガラスパターン31付近の断面図である。図8では、断面を示すハッチが省略されている。図8で例示するように、外部電極20aの内部は、主として、主成分金属の主相32が占めている。外部電極20aの内部には、ガラス成分33が位置していてもよい。ガラスパターン31は、外部電極20aの表面に析出している。外部電極20bでも同様に、ガラスパターン31が表面に析出している。
【0044】
ガラスパターン31の表面には、メッキ処理時にメッキが形成されにくい。したがって、図8で例示するように、第1メッキ層21は、ガラスパターン31の表面で途切れている。したがって、第1メッキ層21は、ガラスパターン31の位置で、途切れである不連続部23を有している。第2メッキ層22は、不連続部23を覆っていてもよいが、不連続部23の位置で途切れていてもよい。
【0045】
本実施形態によれば、外部電極20a,20bの表面にガラスパターン31が互いに離間して点在している。それにより、第1メッキ層21が外部電極20a,20bの全体を覆うのではなく、不連続部23が形成される。この構成により、第1メッキ層21の引張応力を低減することができる。また、外部電極20a,20bと第1メッキ層21との界面における密着力を低下させることができる。積層セラミックコンデンサ100を回路基板201に実装した後、たわみ応力が生じた場合であっても、第1メッキ層21の引張応力が低減されているため、第1メッキ層21の内側にかかる応力が低減され、機械的な応力に対して強くなる。また、外部電極20a,20bと第1メッキ層21との界面において剥がれが生じる場合があり、たわみ応力を緩和することが可能となる。以上のことから、実装後のたわみ強度を向上させることができる。また、この構成では、外部電極20a,20bとメッキ層25との間に導電性樹脂層を設けなくてもよいため、積層セラミックコンデンサ100を小型化大容量化が可能となる。また、金属フィラーを含む樹脂ペーストを塗布乾燥させて硬化をさせる工程を省略することができるため、コストを抑制することができる。
【0046】
ガラスパターン31は、ガラス成分によって構成されている。例えば、ガラスパターン31は、ジルコニウムを成分として含んでいる。ガラスパターン31の材料は、例えば、BaO-B-ZnO-ZrO系材料、SiO-ZrO-RO系材料などである。
【0047】
複数のガラスパターン31のそれぞれが大きすぎると、濡れ性不良のおそれがある。そこで、複数のガラスパターン31のそれぞれの大きさに上限を設けることが好ましい。例えば、複数のガラスパターン31は、それぞれ、直径30μm以下の円状の範囲内に形成されたパターンであることが好ましく、直径25μm以下の円状の範囲内に形成されたパターンであることがより好ましい。
【0048】
一方で、複数のガラスパターン31のそれぞれが小さすぎると、十分に不連続部23を形成できないおそれがある。そこで、複数のガラスパターン31のそれぞれの大きさに下限を設けることが好ましい。例えば、複数のガラスパターン31は、それぞれ、直径10μm以上の円状の範囲内に形成されたパターンであることが好ましく、直径15μm以上の円状の範囲内に形成されたパターンであることがより好ましい。
【0049】
複数のガラスパターン31は、図7で例示するように、略円状を有している。ガラスパターン31は、真円になっていなくてもよく、真円から崩れた形状を有していてもよい。また、例えば、複数のガラスパターン31は、図9で例示するように、中央部が凹で、周縁部が凸になっていてもよい。凸となっていることで距離を稼ぐことができめっきの形成を妨げる方向に作用するため、だからである。なお、図9では、断面を示すハッチが省略されている。
【0050】
また、複数のガラスパターン31が互いに遠いと、実装後のたわみ強度の向上が十分に得られないおそれがある。そこで、複数のガラスパターン31の間隔に下限および上限を設けることが好ましい。例えば、図10で例示するように、複数のガラスパターン31のうちの少なくとも2つについて、中心位置同士の間隔が100μm未満であることが好ましい。または、複数のガラスパターン31について、各隣り合う2つのガラスパターン31の中心位置同士の間隔の平均値が、100μm未満であることが好ましい。また、複数のガラスパターン31のうちの少なくとも2つについて、中心位置同士の間隔が63μm未満であることが好ましい。または、複数のガラスパターン31について、各隣り合う2つのガラスパターン31の中心位置同士の間隔の平均値が、63μm未満であることが好ましい。なお、各ガラスパターン31において、中心位置は、ガラスパターンの重心位置として定めることができる。
【0051】
複数のガラスパターン31のうちの少なくとも2つにいて、離間距離が50μm以下であることが好ましい。または、複数のガラスパターン31について、各隣り合う2つのガラスパターン31の中心位置同士の間隔の平均値が、50μm以下であることが好ましい。
【0052】
外部電極20a,20bにガラスパターン31を形成するためには、外部電極20a,20bを比較的低温で焼き付けることが好ましい。したがって、素体10を焼成する際に外部電極20a,20bを同時に焼成するのではなく、素体10を焼成した後に外部電極20a,20bを素体10の焼成温度よりも低い温度で焼き付けることが好ましい。そこで、外部電極20a,20bの主成分を銅とすることが好ましい。
【0053】
例えば、外部電極20a,20bは、素体10の2端面のみに形成されているわけではなく、素体10の上面、下面、および2側面まで延在している。この場合において、複数のガラスパターン31は、素体10の2側面および2端面の各々より、上面および下面に多く分布することが好ましい。たわみ時の応力は端面よりも上面および下面のE寸先端部にかかるため、上面および下面の方が影響を強く受けるため、である。なお、ここでの「分布」とは、専有面積である。
【0054】
外部電極20a,20bの表面積に対するガラスパターン31の面積の総和が低いと、実装後のたわみ強度向上が十分に得られないおそれがある。そこで、ガラスパターン31の面積に下限を設けることが好ましい。本実施形態においては、外部電極20a,20bの合計の表面積に対するガラスパターン31の面積の総和は、11%以上であることが好ましく、16%以上であることがより好ましく、20%以上であることがさらに好ましい。
【0055】
一方、ガラスパターン31の面積の総和が高いと、濡れ性不良を起こすおそれがある。そこで、ガラスパターン31の面積に上限を設けることが好ましい。本実施形態においては、外部電極20a,20bの合計の表面積に対するガラスパターン31の面積の総和は、33%以下であることが好ましい。
【0056】
続いて、積層セラミックコンデンサ100の製造方法について説明する。図11は、積層セラミックコンデンサ100の製造方法のフローを例示する図である。
【0057】
(原料粉末作製工程)
まず、誘電体層11を形成するための誘電体材料を用意する。誘電体層11に含まれるAサイト元素およびBサイト元素は、通常はABOの粒子の焼結体の形で誘電体層11に含まれる。例えば、BaTiOは、ペロブスカイト構造を有する正方晶化合物であって、高い誘電率を示す。このBaTiOは、一般的に、二酸化チタンなどのチタン原料と炭酸バリウムなどのバリウム原料とを反応させてチタン酸バリウムを合成することで得ることができる。誘電体層11の主成分セラミックの合成方法としては、従来種々の方法が知られており、例えば固相法、ゾル-ゲル法、水熱法等が知られている。本実施形態においては、これらのいずれも採用することができる。
【0058】
得られたセラミック粉末に、目的に応じて所定の添加化合物を添加する。添加化合物としては、マグネシウム(Mg)、マンガン(Mn)、モリブデン(Mo)、バナジウム(V)、クロム(Cr)、希土類元素(イットリウム(Y)、サマリウム(Sm)、ユーロピウム(Eu)、ガドリニウム(Gd)、テルビウム(Tb)、ジスプロシウム(Dy)、ホルミウム(Ho)、エルビウム(Er)、ツリウム(Tm)およびイッテルビウム(Yb))の酸化物、または、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、リチウム(Li)、ホウ素(B)、ナトリウム(Na)、カリウム(K)もしくはケイ素(Si)を含む酸化物、または、コバルト、ニッケル、リチウム、ホウ素、ナトリウム、カリウムもしくはケイ素を含むガラスが挙げられる。これらのうち、主としてSiOが焼結助剤として機能する。
【0059】
例えば、セラミック原料粉末に添加化合物を含む化合物を湿式混合し、乾燥および粉砕してセラミック材料を調製する。例えば、上記のようにして得られたセラミック材料について、必要に応じて粉砕処理して粒径を調節し、あるいは分級処理と組み合わせることで粒径を整えてもよい。以上の工程により、誘電体材料が得られる。
【0060】
(塗工工程)
次に、得られた誘電体材料に、ポリビニルブチラール(PVB)樹脂等のバインダと、エタノール、トルエン等の有機溶剤と、可塑剤とを加えて湿式混合する。得られたスラリを使用して、例えばダイコータ法やドクターブレード法により、基材51上にセラミックグリーンシート52を塗工して乾燥させる。基材51は、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムである。
【0061】
(内部電極形成工程)
次に、図12(a)で例示するように、セラミックグリーンシート52上に、内部電極パターン53を成膜する。図12(a)では、一例として、セラミックグリーンシート52上に4層の内部電極パターン53が所定の間隔を空けて成膜されている。内部電極パターン53が成膜されたセラミックグリーンシート52を、積層単位とする。内部電極パターン53には、内部電極層12の主成分金属の金属ペーストを用いる。成膜の手法は、印刷、スパッタ、蒸着などであってもよい。
【0062】
(圧着工程)
次に、セラミックグリーンシート52を基材51から剥がしつつ、図12(b)で例示するように、積層単位を積層する。次に、積層単位が積層されることで得られた積層体の上下にカバーシート54を所定数(例えば2~10層)だけ積層して熱圧着させ、所定チップ寸法(例えば1.0mm×0.5mm)にカットする。図12(b)の例では、点線に沿ってカットする。カバーシート54は、セラミックグリーンシート52と同じ成分であってもよく、添加物が異なっていてもよい。
【0063】
(焼成工程)
その後、酸素分圧10-5~10-8atmの還元雰囲気中で1100~1300℃で10分~2時間焼成する。このようにして、素体10を得ることができる。
【0064】
(再酸化処理工程)
その後、Nガス雰囲気中において600℃~1000℃で再酸化処理を行ってもよい。
【0065】
(塗布工程)
次に、素体10の2端面のそれぞれに、外部電極20a,20bとなる外部電極形成用の導電ペーストをディップ法などで塗布する。この場合、素体10の2端面から、上面、下面、および2側面まで延在するように導電ペーストを塗布してもよい。導電ペーストは、外部電極20a,20bの主成分金属の粉末を含むとともに、ガラスフリットなどのガラス成分を含んでいる。
【0066】
(セラミックビーズの接触工程)
次に、導電ペーストを塗布した複数の素体10を焼き付け治具40に配置する。この場合において、図13で例示するように、焼き付け治具40には、セラミックビーズ50が敷き詰められている。各素体10を焼き付け治具40に配置すると、各素体10の導電ペーストがセラミックビーズ50と接触するようになる。各素体10の導電ペーストがセラミックビーズ50に対して十分に接触できていない場合には、セラミックビーズ50を各素体10に対して上からさらに振りかけてもよい。セラミックビーズ50として、酸化ジルコニウム(ZrO)などを用いることができる。
【0067】
(焼き付け工程)
次に、800℃以上880℃以下の温度で導電ペーストに加熱処理を行うことで、素体10に外部電極20a,20bを焼き付ける。この場合において、図14で例示するように、外部電極20a,20bの表面にガラスフリットが析出し、析出したガラスフリットが、セラミックビーズ50の接触箇所に集まってくる。セラミックビーズ50は、ガラスフリットを介して外部電極20a,20bの表面に付着する。セラミックビーズ50は略球形を有しているため、集まったガラスフリットは略円形状となる。この集まったガラスフリットが、ガラスパターン31となる。図15は、外部電極20a,20bを焼き付けた後の積層セラミックコンデンサ100を例示する図である。図15で例示するように、外部電極20a,20bの表面にセラミックビーズ50が付着している。なお、図15では、断面を示すハッチが省略されている。
【0068】
(ビーズ除去工程)
次に、積層セラミックコンデンサ100に付着しているセラミックビーズ50を除去する。例えば、ブラスト法または乾式研磨を用いることで、セラミックビーズ50を積層セラミックコンデンサ100から除去することができる。
【0069】
(メッキ処理工程)
その後、メッキ処理により、外部電極20a,20b上に、銅、ニッケル、スズ等の金属コーティングを行なうことで、メッキ層25を形成する。この場合において、少なくとも第1メッキ層21については、ガラスパターン31の箇所においては不連続部23を有するようにメッキ処理工程を行なう。第2メッキ層22については、不連続部23を覆ってもよいが、ガラスパターン31の箇所において不連続になっていてもよい。
【0070】
本実施形態に係る製造方法によれば、外部電極20a,20bの表面にガラスパターン31が互いに離間して点在するようになる。それにより、第1メッキ層21が外部電極20a,20bの全体を覆うのではなく、不連続部23が形成される。この構成により、第1メッキ層21の引張応力を低減することができる。また、外部電極20a,20bと第1メッキ層21との界面における密着力を低下させることができる。積層セラミックコンデンサ100を回路基板201に実装した後、たわみ応力が生じた場合であっても、第1メッキ層21の引張応力が低減されているため、第1メッキ層21の内側にかかる応力が低減され、機械的な応力に対して強くなる。また、外部電極20a,20bと第1メッキ層21との界面において剥がれが生じる場合があり、たわみ応力を緩和することが可能となる。以上のことから、実装後のたわみ強度を向上させることができる。また、この構成では、外部電極20a,20bとメッキ層25との間に導電性樹脂層を設けなくてもよいため、積層セラミックコンデンサ100を小型化大容量化が可能となる。また、金属フィラーを含む樹脂ペーストを塗布乾燥させて硬化をさせる工程を省略することができるため、コストを抑制することができる。
【0071】
また、本実施形態に係る製造方法によれば、セラミックビーズを素体の周囲に配置した状態で焼き付けを実施する。この場合、ベルト搬送時の振動や外部電極焼結時の収縮により、セラミックビーズに囲まれた素体が滑らかに動き、素体同士の接触を外すことができる。これにより、融着の発生率を大幅に低減することができる。また、融着自体の歩留まり向上だけでなく、融着同士が外れた場合の外観不良品の低減につなげることができる。
【0072】
複数のガラスパターン31のうち隣り合う2つの中心位置同士の間隔は、セラミックビーズ50の粒径で調整することができる。例えば、複数のガラスパターン31のうちの少なくとも2つについて、中心位置同士の間隔を10μmより大きく100μm未満とするために、セラミックビーズ50の粒径は、10μmより大きく100μm未満であることが好ましい。例えば、複数のガラスパターン31のうちの少なくとも2つについて、中心位置同士の間隔を63μm未満とするために、セラミックビーズ50の粒径は、63μm未満であることが好ましい。
【0073】
なお、上記各実施形態は、セラミック電子部品の一例として積層セラミックコンデンサについて説明したが、それに限られない。例えば、上記各実施形態の構成は、バリスタやサーミスタなどの、他の積層セラミック電子部品に適用することもできる。
【実施例0074】
以下、実施形態に係る積層セラミックコンデンサを作製し、特性について調べた。
【0075】
(実施例1~7)
焼成後の素体を準備し、外部電極形成用の導電ペーストを素体の2端面から、上面、下面、2側面に延在するように塗布した。導電ペーストにはガラスフリットを添加した、その後、酸化ジルコニウムのセラミックビーズを敷きつめ、その上に素体を並べ導電ペーストにセラミックビーズを接触させた。その後、追加でセラミックビーズを上から振りかけた。その結果、素体の2端面、上面、下面、2側面の導電ペーストにセラミックビーズが付着した。その後、外部電極を焼付けた。その際、セラミックビーズは、外部電極の表面のガラスに対してくっつきが発生した。その後、セラミックビーズを除去した。セラミックビーズの除去後に、外部電極の表面に、第1メッキ層および第2メッキ層の2層を形成した。
【0076】
実施例1~6では、酸化ジルコニウム(ZrO)のセラミックビーズを用いた。実施例7では、酸化ジルコニウム(ZrO)のセラミックビーズおよび酸化ケイ素(SiO)のセラミックビーズを用いた。セラミックビーズのビーズ径は、実施例1では50μmであり、実施例2では100μmであり、実施例3では30μmであり、実施例4では10μmであり、実施例5では50μmであり、実施例6では50μmであり、実施例7では63μm未満であった。
【0077】
外部電極の焼付温度は、実施例1~4,7では840℃とし、実施例5では800℃とし、実施例6では880℃とした。実施例1~7のいずれにおいても、積層セラミックコンデンサの形状は、107形状(長さ1600μm、幅800μm、高さ800μm)であった。
【0078】
ガラスパターンの平均径は、実施例1では25μmであり、実施例2では35μmであり、実施例3では18μmであり、実施例5では21μmであり、実施例6では30μmであり、実施例7では28μm未満であった。平均径は、ガラスパターンの面積をそれぞれ測定し、その面積に相当する円の直径をそれぞれ算出した(円相当径)。
【0079】
隣り合う2つのガラスパターンの中心と中心との平均距離は、実施例1では50μmmであり、実施例2では100μmであり、実施例3では30μmであり、実施例5では50μmであり、実施例6では50μmであり、実施例7では63μm未満であった。
【0080】
外部電極の面積の表面積に対するガラスパターンの面積の総和は、実施例1では23%であり、実施例2では11%であり、実施例3では33%であり、実施例5では16%であり、実施例6では33%であり、実施例7では27%であった。
【0081】
実施例1~7のそれぞれについて、セラミックビーズがくっついていた部分の断面のSEM写真を確認したところ、円状のガラスパターンが多数形成されていた。各ガラスパターンは、中央部が凹んでおり、周縁部が凸になっていた。これらのガラスパターンは、セラミックビーズ痕である。また、ガラスパターンの箇所では、第1メッキ層に不連続部が形成されていることを確認した。
【0082】
(比較例)
比較例では、外部電極形成用の導電ペーストにセラミックビーズを接触させずに外部電極を焼き付けた。その他の条件は、実施例1と同様とした。
【0083】
実施例1~7および比較例の積層セラミックコンデンサについて、クラック試験を行った。具体的には、たわみ試験(専用基板に実装。背面側から2mm変位)を行なった。実施例1~7および比較例のそれぞれについて、サンプル数を10個とし、クラックが発生したサンプルの比率(クラック発生率)を測定した。結果を表1に示す。
【表1】
【0084】
表1に示すように、比較例では、クラック発生率が3/10と高くなった。これは、セラミックビーズを用いなかったことで外部電極の表面にガラスパターンが形成されず、第1メッキ層に不連続部が形成されなかったからであると考えられる。これに対して、実施例1~7では、クラックが発生した比率が1/10以下となった。これは、セラミックビーズを用いたことで外部電極の表面にガラスパターンが形成され、当該ガラスパターンの箇所において第1メッキ層に不連続部が形成され、たわみ強度が高くなったからであると考えられる。
【0085】
また、実施例1~7および比較例の積層セラミックコンデンサについて、融着率を調べた。実施例1~7および比較例のそれぞれについて、サンプル数を8000とした。融着率は、8000のサンプルに対して、融着が確認されたサンプル数の比率とした。結果を表1に示す。表1に示すように、比較例では、融着率が456/8000と高くなった。これは、素体にセラミックビーズを付着させなかったことで素体同士が接触したからであると考えられる。これに対して、実施例1~7では、融着率が40/8000以下となった。これは、素体にセラミックビーズを付着させたことで素体同士の接触が抑制されたからであると考えられる。
【0086】
(実施例8,9)
実施例8および実施例9では、追加でセラミックビーズを振りかけなかった。その結果、素体の2端面の導電ペーストにセラミックビーズが付着せず、素体の上面、下面、2側面の導電ペーストにだけセラミックビーズが付着した。
【0087】
実施例8では、酸化ジルコニウム(ZrO)のセラミックビーズを用いた。実施例9では、酸化ジルコニウム(ZrO)のセラミックビーズおよび酸化ケイ素(SiO)のセラミックビーズを用いた。セラミックビーズのビーズ径は、実施例8では50μmであり、実施例9では63μm未満であった。外部電極の焼付温度は、実施例8,9では840℃とした。実施例1~7のいずれにおいても、積層セラミックコンデンサの形状は、107形状であった。ガラスパターンの平均径は、実施例8では25μmであり、実施例9では28μm未満であった。
【0088】
実施例8,9のそれぞれについて、セラミックビーズがくっついていた部分の断面のSEM写真を確認したところ、円状のガラスパターンが多数形成されていた。各ガラスパターンは、中央部が凹んでおり、周縁部が凸になっていた。これらのガラスパターンは、セラミックビーズ痕である。また、ガラスパターンの箇所では、第1メッキ層に不連続部が形成されていることを確認した。
【0089】
実施例1,8,9および比較例の積層セラミックコンデンサについて、あらためて融着率を調べた。実施例1,8,9および比較例のそれぞれについて、サンプル数を2000とした。融着率は、2000のサンプルに対して、融着が確認されたサンプル数の比率とした。結果を表2に示す。表2に示すように、比較例では、融着率が114/2000と高くなった。これは、素体にセラミックビーズを付着させなかったことで素体同士が接触したからであると考えられる。これに対して、実施例1,8,9では、融着率が0/2000となった。これは、素体にセラミックビーズを付着させたことで素体同士の接触が抑制されたからであると考えられる。
【表2】
【0090】
以上、本発明の実施例について詳述したが、本発明は係る特定の実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。
【符号の説明】
【0091】
10 素体
11 誘電体層
12 内部電極層
13 カバー層
14 容量部
15 エンドマージン
16 サイドマージン
20a,20b 外部電極
51 基材
52 セラミックグリーンシート
53 内部電極パターン
100 積層セラミックコンデンサ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15