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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024030977
(43)【公開日】2024-03-07
(54)【発明の名称】走行車両
(51)【国際特許分類】
   B62D 49/00 20060101AFI20240229BHJP
   A01C 11/02 20060101ALI20240229BHJP
   B62D 25/10 20060101ALI20240229BHJP
【FI】
B62D49/00 C
A01C11/02 311W
B62D25/10 L
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022134242
(22)【出願日】2022-08-25
(71)【出願人】
【識別番号】000000125
【氏名又は名称】井関農機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100092794
【弁理士】
【氏名又は名称】松田 正道
(72)【発明者】
【氏名】今泉 大介
(72)【発明者】
【氏名】朝田 雅貴
(72)【発明者】
【氏名】西風 聖也
(72)【発明者】
【氏名】高橋 学
【テーマコード(参考)】
3D004
【Fターム(参考)】
3D004AA14
3D004BA05
3D004DA02
(57)【要約】
【課題】乗用型田植機は、走行安定性を向上する為に走行車両の下部に設けた機体フレームにエンジンを搭載している。然しながら、走行車両の低い位置にエンジンを搭載しているので、湿田での走行時にエンジンの駆動で回転するフライホイール下部が水や泥に浸かり、フライホイールの回転で水や泥を大量にまき上げてエンジンや周辺機器にまき散らして、エンジンや周辺機器が水や泥にて故障する恐れがある。そこで、フライホイールが水や泥を大量にまき上げてエンジンや周辺機器が水や泥にて故障することを防止した走行車両を提供する。
【解決手段】下部位置にエンジン5を搭載した走行車両において、エンジン5にて駆動回転するフライホイール16上部を覆うカバー体18,19を設ける。
【選択図】図4

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下部位置にエンジン(5)を搭載した走行車両において、エンジン(5)にて駆動回転するフライホイール(16)の上部を覆うカバー体(18,19)を設けたことを特徴とする走行車両。
【請求項2】
エンジン(5)をボンネット(7)にて覆い、エンジン(5)側とボンネット(7)側の何れか一方に先端が他方に向けて延びてフライホイール(16)上部を覆う第1カバー体(18)を設け、他方に先端が一方に向けて延びて第1カバー体(18)上部を覆う第2カバー体(19)を設けたことを特徴とする請求項1に記載の走行車両。
【請求項3】
エンジン(5)を覆うボンネット(7)に排熱用の開口部(20)をカバー体(18,19)よりも上方位置に設けたことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の走行車両。
【請求項4】
フライホイール(16)下部を下から覆うフライホイール下カバー(25)を設けたことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の走行車両。
【請求項5】
フライホイール下カバー(25)の外側を上方に向けて傾斜する傾斜面(25a)にしたことを特徴とする請求項4に記載の走行車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、農業用トラクタ、乗用型田植機、土木用車両または運搬車両等の走行車両に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、乗用型田植機は、走行安定性を向上する為に走行車両の下部に設けた機体フレームにエンジンを搭載している(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005-036919号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
然しながら、走行車両の低い位置にエンジンを搭載しているので、湿田での走行時にエンジンの駆動で回転するフライホイール下部が水や泥に浸かり、フライホイールの回転で水や泥を大量にまき上げてエンジンや周辺機器にまき散らして、エンジンや周辺機器が水や泥にて故障する恐れがある。
【0005】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、フライホイールが水や泥を大量にまき上げてエンジンや周辺機器が水や泥にて故障することを防止した走行車両を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1記載の発明は、下部位置にエンジン5を搭載した走行車両において、エンジン5にて駆動回転するフライホイール16上部を覆うカバー体18,19を設けた走行車両である。
【0007】
請求項1記載の発明によれば、エンジン5にて駆動回転するフライホイール16上部を覆うカバー体18、19を設けたので、フライホイール16下部が水や泥に浸かって回転して水や泥をまき上げても、該まき上げた水や泥はカバー体18,19にて上方への飛散が防止され、エンジン5やエンジン周辺機器が水や泥にて故障することを防止できる。
【0008】
請求項2記載の発明は、エンジン5をボンネット7にて覆い、エンジン5側とボンネット7側の何れか一方に先端が他方に向けて延びてフライホイール16上部を覆う第1カバー体18を設け、他方に先端が一方に向けて延びて第1カバー体18上部を覆う第2カバー体19を設けた請求項1に記載の走行車両である。
【0009】
請求項3記載の発明は、エンジン5を覆うボンネット7に排熱用の開口部20をカバー体18、19よりも上方位置に設けた請求項1または請求項2に記載の走行車両である。
【0010】
請求項4記載の発明は、フライホイール16下部を下から覆うフライホイール下カバー25を設けた請求項1または請求項2に記載の走行車両である。
【0011】
請求項5記載の発明は、フライホイール下カバー25の外側を上方に向けて傾斜する傾斜面25aにした請求項4に記載の走行車両である。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の実施形態にかかる走行車両の側面図である。
図2】同上走行車両の正面図である。
図3】同上走行車両の要部の側面図である。
図4】同上走行車両の要部の説明用側面図である。
図5】同上走行車両の要部の説明用正面図である。
図6】同上要部の斜視図である。
図7】本発明の別実施形態を示す要部の斜視図である。
図8】同上走行車両の要部の底面図である。
図9】同上走行車両の要部の斜視図である。
図10】同上走行車両の要部の側面図である。
図11】同上要部の斜視図である。
図12】同上走行車両のオイルパンガードの斜視図である。
図13】同上走行車両のフライホイール下カバーの斜視図である。
図14】同上走行車両のマフラーの斜視図である。
図15】本発明の他の実施形態を示す走行車両の要部の説明用斜視図である。
図16】同上走行車両の脱水器の説明用斜視図である。
図17】同上走行車両の脱水器の説明用断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、添付図面を参照して本願の開示する走行車両の実施形態である乗用型田植機を詳細に説明する。なお、以下に示す実施形態によりこの発明が限定されるものではない。
【0014】
<全体構成>
乗用型田植機は、水田圃場を走行可能な走行車両1を備える。走行車両1は、左右一対の前輪2,2と、左右一対の後輪3,3とを備える。なお、走行車両1は、左右前輪2,2及び左右後輪3,3が駆動する四輪駆動車である。
【0015】
走行車両1の後部には、昇降装置によって昇降駆動される苗植付部が装着されている。
【0016】
<走行車両1>
図1及び図2に示すように、走行車両1は、機体フレーム4と、エンジン5と、エンジン5で発生した動力を左右前輪2,2及び左右後輪3,3と苗植付部に伝達する動力伝達装置とを備える。すなわち、動力源であるエンジン5で発生した動力は、走行車両1を前進または後進させるために使用されるだけでなく、苗植付部を駆動するためにも使用される。
【0017】
エンジン5は、走行車両1前部のエンジンブラケット6に搭載される。なお、エンジン5としては、ディーゼル機関やガソリン機関などの熱機関が用いられる。
【0018】
エンジン5の上部、前部及び左右部は、ボンネット7に覆われている。ボンネット7の左右両側方及び後方には、フロアステップ8が設けられている。
【0019】
なお、エンジンブラケット6は、機体フレーム4前端部上に溶接固定されており、エンジン5の振動に対応すべく機体フレーム4にて剛性を向上している。
【0020】
フロアステップ8は、機体フレーム4上に取り付けられる。フロアステップ8のうち、たとえば、操縦席9付近の一部などは作業者の靴などに付着した泥などを水田圃場に落とせるように、平面視において格子状に形成される。
【0021】
フロアステップ8の後部中央部は、凸状に形成されており、その上面に操縦席9が設けられている。
【0022】
フロアステップ8の後端部には、高く構成された左右後輪3,3のフェンダを兼ねるリヤステップ10が設けられている。
【0023】
動力伝達装置は、エンジン5からベルト式動力伝達部を介して伝達される動力を変速する変速装置である静油圧式無段変速機11とミッションケース12を備える。
【0024】
静油圧式無段変速機11は、ボンネット7上端後部の操作パネル13に設けた主変速レバーが操作されることで、出力(回転速度)と出力方向(回転方向)とを変更可能である。すなわち、静油圧式無段変速機11は、回転速度や回転方向を変更することで、走行車両1の前後進や走行速度を変更可能である。
【0025】
ミッションケース12には、静油圧式無段変速機11によって変速されたエンジン5からの動力を各部に伝達する伝動装置が設けられる。ミッションケース12は、走行時や作業時における走行速度を切り替える副変速機構を備える。ミッションケース12は、ボンネット7上端後部の操作パネル13に設けた副変速レバーが操作されると、走行車両1の走行速度を植付作業時における苗植付速度と苗植付速度よりも高速な路上走行速度に切り替える。
【0026】
走行車両1は、フロアステップ8上に操縦席9を備える。操縦席9は、作業者が操縦時に着席する座席である。走行車両1は、操縦席9の前方にステアリングハンドル14や植付レバーなどを備える。
【0027】
ステアリングハンドル14は、走行車両1のボンネット7上部の後方中央位置に設けられ、作業者に回動操作されることで、左右前輪2,2が操向されて走行車両1を操舵するものである。
【0028】
走行車両1は、操作パネル13に植付レバーを備える。植付レバーは、苗植付部を昇降させたり、苗植付部による苗の植え付けを開始及び停止させるために操作するレバーである。
【0029】
また、走行車両1は、主変速レバーと副変速レバーとを備える。主変速レバーは、静油圧式無段変速機11を変速操作して走行車両1の前後進及び走行速度を変更する場合に操作されるレバーである。副変速レバーは、走行車両1の走行速度を、走行する場所(水田圃場や路上)に応じた速度に切り替える場合に操作されるレバーである。
【0030】
また、ボンネット7は、走行車両1前部でフロアステップ8左右中央部から上方に突出して設けられ、前述のように内部にエンジン5が搭載されている。
【0031】
ボンネット7上部には、操作パネル13が設けられる。操作パネル13は、操縦席9に着席して前方を向いた作業者と対面するように、後下がりに傾斜した表示面を有する。
【0032】
操作パネル13は、たとえば、水田圃場面に直進の目安となる進行基準線を形成する後述する線引きマーカが走行車体の左右側部に出ていることを検知するマーカセンサ、植付レバーの操作位置を検知する植付レバーポジションセンサなどの各種センサ類からの情報を表示する。
【0033】
乗用型田植機は、昇降装置と苗植付部を備える。昇降装置は、昇降リンクを備える。昇降リンクは、走行車両1の後部と苗植付部とを連結する平行リンクであり、走行車両1の後部のリンクフレームと苗植付部とのそれぞれに対して上下方向に回動自在に連結されることで、走行車両1に対して苗植付部を昇降可能に連結する。
【0034】
また、昇降装置は、油圧式の昇降シリンダを備える。昇降シリンダは、植付レバーが操作されて油圧バルブが切り替えられることで、伸縮動作する。昇降シリンダは、伸縮動作することで昇降リンクを駆動して、苗植付部を昇降させる。すなわち、昇降シリンダは、植付レバーが操作されることで、苗植付部を上昇させた非作業位置、苗植付部を下降させた対地作業位置(植付位置)に切り替える。
【0035】
走行車両1前部の左右両側には、基部が機体フレーム4に固定された左右支柱に左右予備苗載台が設けられている。
【0036】
ここで、図3図6に基づいて、エンジン5左側部の周辺構成の説明をする。
【0037】
エンジン5は、前記のとおり、走行車両1前部に設けたエンジンブラケット6に搭載され、その上部、前部及び左右部がボンネット7に覆われている。
【0038】
エンジン5の左壁から突出した駆動軸15には、フライホイール16とその外側位置に駆動プーリ17が設けられている。
【0039】
フライホイール16は、大径でその下端位置が機体フレーム4よりも下方になっており、水田圃場で水や泥に浸かって回転する場合も多々ある。
【0040】
駆動プーリ17は、前記静油圧式無段変速機11に動力を伝達するベルト式動力伝達部を構成する。
【0041】
エンジン5の左側壁には、フライホイール16外周の上半分(上方)を覆う第1カバー体18の基部が固定され、ボンネット7の左カバー7Lに向かって延びている。
【0042】
また、ボンネット7の左カバー7Lには、第1カバー体18の外周を覆うリブ状の第2カバー体19が一体形成されており、第1カバー体18の外周近くを隙間をあけて平面視で第1カバー体18と重なってエンジン5左側壁に向かって延びている。
【0043】
そして、ボンネット7の左カバー7Lには、第2カバー体19よりも上方位置にエンジン5の排熱用の開口部20が設けられている。なお、開口部20は、メッシュ状の目隠しがされている。
【0044】
従って、フライホイール16が水田圃場で水や泥に浸かって回転して泥水をまき上げても(掻き揚げても)、該まき上げた泥水は重なるように配置した第1カバー体18及び第2カバー体19にて上方への飛散が防止され、エンジン5やボンネット7内部の機器にかかることが防止され、エンジン5やエンジン周辺機器が水や泥にて故障することを防止できる。
【0045】
また、排熱用の開口部20が第1カバー体18及び第2カバー体19よりも上方位置に設けられているので、フライホイール16がまき上げた泥水は重なるように配置した第1カバー体18及び第2カバー体19にて上方への飛散が防止され、開口部20から泥水が飛散して作業者(運転者)にかかるような事態も回避できる。
【0046】
また、エンジン5に固定した第1カバー体18は、エンジン5の振動にて振動するが、第1カバー体18と第2カバー体19との間には隙間を設けて重ねているので、第1カバー体18の振動が第2カバー体19を通じてボンネット7に伝達することが防止できる。
【0047】
また、ボンネット7の左カバー7Lに設けた第2カバー体19は、リブ状で左カバー7Lの補強も兼ねている。そして、左カバー7Lは、ボンネット7の他のカバーに対して着脱自在であり、洗浄が容易に行える。
【0048】
なお、上記ではエンジン5に固定した第1カバー体18がフライホイール16外周の上半分を覆い、ボンネット7の左カバー7Lに設けた第2カバー体19が第1カバー体18の上方を覆うようにしたが、逆に、ボンネット7の左カバー7Lに設けた第2カバー体19がフライホイール16外周の上半分を覆い、エンジン5に固定した第1カバー体18がボンネット7の左カバー7Lに設けた第2カバー体19の上方を覆うようにしても良い。
【0049】
図7は、ボンネット7の左カバー7Lの別実施形態を示す。
【0050】
即ち、上記左カバー7Lに一体形成したリブ状の第2カバー体19に換えて、板金または樹脂製のプレート19aを設けている。
【0051】
プレート19aの基部は、開口部20を目隠しするメッシュ状体(金網等)を左カバー7L内面に取付けるスピードナット21にて共締めで取り付けられている。
【0052】
一方、エンジン5のエアクリーナは、走行車両1前部の右外側に設けた右予備苗載台を支持する右支柱の下端部に設けている。
【0053】
従って、走行車両1前部の右外側に設けたことにより、ボンネット7外の冷たい空気を吸引することができる。
【0054】
また、エアクリーナからエンジン5への空気移送パイプは、右支柱基部を固定した車体左右方向に配設した機体フレーム4に沿わせて配設する。
【0055】
なお、エアクリーナは、走行車両1前部の左外側に設けた左予備苗載台を支持する左支柱の下端部に設けても良い。
【0056】
エアクリーナがボンネット7外の冷たい空気を吸引すべく左右予備苗載台を支持する左右支柱の何れかにエアクリーナを設けることにより、比較的にエンジン5に近い位置の左右支柱をエアクリーナの支持部材に兼用でき、エアクリーナからエンジン5への空気移送パイプも短くて済んで安価な構成となる。
【0057】
次に、図8図14に基づいて、エンジン5下部の周辺構成の説明をする。
【0058】
エンジン5を搭載する4つのエンジンブラケット6の中央下方位置にオイルパン22が配置され、該オイルパン22を囲うように配置して防護するオイルパンガード23が4つのエンジンブラケット6に取付けられている。
【0059】
オイルパンガード23は、鉄パイプ材を長方形の枠状に溶接固定し、該枠状部がオイルパン22を囲うように配置している。そして、枠状部の4角に取付けステー23aの基部を溶接固定し、該取付けステー23a上端部をエンジンブラケット6にボルトにて固定している。
【0060】
従って、オイルパンガード23は、エンジンブラケット6に固定されているので、剛性が向上しエンジン5の加振による破損が防止できる。
【0061】
そして、オイルパンガード23は、オイルパン22のドレンボルト22aよりも高い位置に設けており、最低地上高を高く確保できる。
【0062】
また、オイルパンガード23には、車体左側方に向けて延びるフライホイール下カバーステー24の基部が溶接固定されており、該フライホイール下カバーステー24の先端部にフライホイール下カバー25が固定されている。
【0063】
フライホイール下カバー25は、フライホイール16下部を下方から覆っており、作業者が誤って回転中のフライホイール16に触れて手が巻き込まれるような事故を防止する。
【0064】
また、フライホイール下カバー25は、耕盤の深い水田圃場内でフライホイール16が水や泥に浸かった場合に、フライホイール16が水や泥をまき上げる量(掻き揚げる量)を少なくする。
【0065】
そして、フライホイール下カバー25は、左外側が上方に向けて傾斜する傾斜面25aとなっており、フライホイール下カバー25内の泥の排出を良くし、車体左外側に位置するマフラー26に向けてエンジン5の排熱風(車体の右外側方に位置するラジエータ27の冷却風がエンジン5外周を通過して車体左外側に排熱風として流れる)を導いてマフラー26の排風を機体外に効率良く排出することができる。
【0066】
更に、ラジエータ27のラジエータシュラウドに設けた孔にチューブ30の一端を接合し、チューブ30の他端をフライホイール下カバー25内面に車体左外側方に向けて設けている。
【0067】
従って、ラジエータ27の送風がチューブ30を介してフライホイール下カバー25内面に車体左外側方に向けて送られるので、マフラー26の排風を機体外に効率良く排出することができる。
【0068】
なお、チューブ30は、オイルパンガード23の内側(上方)に配策し、破損防止を図っている。
【0069】
また、チューブ30の他端をフライホイール下カバー25内面の泥の溜まりやすい部位に設けても良い。
【0070】
また、フライホイール下カバー25に泥の排出用の孔や溝を設けて、該排出用の孔や溝に向けてチューブ30の他端を設けることにより、ラジエータ27の送風にてフライホイール下カバー25内の泥の排出を促すようにしても良い。
【0071】
また、チューブ30の内径をラジエータシュラウド側から他端側に向けて徐々に小さくなるようにして、風速を上げるようにしても良い。
【0072】
なお、フライホイール下カバーステー24にフライホイール下カバー25をボルトにて固定する位置は、車体下面側とし、フライホイール下カバー25の着脱が容易に行えて、メンテナンスが容易である。
【0073】
そして、フライホイール下カバー25は、1枚の鉄板を板金成形して作成しており、安価である。
【0074】
また、車体左側の2つのエンジンブラケット6には、車体左側方に向けて延びる2つのマフラーステー28の基部が溶接固定され、該2つのマフラーステー28先端部を補強プレート29にて連結し、該先端部上にマフラー26が固定されている。
【0075】
2つのマフラーステー28は、互いに向き合う側が凹んだコ字状に形成され、剛性を高めると共に、エンジン5の排熱風をマフラー26に集めて導く効果がある。
【0076】
補強プレート29は、剛性を高めると共に、エンジン5の排熱風をマフラー26の排気口26aに導く導風板の機能を兼ねる。
【0077】
また、マフラー26を支持するマフラーステー28をエンジンブラケット6に取付け、フライホイール下カバー25を支持するフライホイール下カバーステー24をオイルパンガード23に取付けることにより、マフラー26とフライホイール下カバー25の取付位置が離れ、マフラー26の振動による加振の影響をフライホイール下カバー25が受け難い。
【0078】
<苗植付部>
苗植付部は、上記したように、昇降リンクを介して走行車両1の後部に取り付けられる。苗植付部は、たとえば、複数の列(条)で苗を植え付けることが可能である。苗植付部は、苗載置台と、フロートと、植付装置とを備える。
【0079】
苗載置台は、機体の左右方向において、植付条数分の6つの苗載せ面を有する。各苗載せ面は、上下方向に複数枚のマット状土付苗を載置可能な後下がりの傾斜面である。フロートは、走行車両1の移動に伴い水田圃場の泥面上を滑走しながら整地する。フロートは、機体の左右方向において、機体中央部に配置されるセンターフロートと、センターフロートを挟んで左右方向の外側に配置されるサイドフロートとを備える。
【0080】
フロート(センターフロート及びサイドフロート)は、水田圃場面の凹凸に応じて前部が上下動するように、走行車両1に後部が回動自在に取り付けられ、センターフロート前部の上下動を迎角制御用の回動センサで検知する。苗植付部では、植付作業時にはセンターフロートの前部の上下動が回動センサによって検知され、回動センサの検知結果に応じて制御部によって昇降シリンダの伸縮動作を制御する油圧バルブを切り替えて苗植付部を昇降させ、苗の植え付け深さを自動制御で調節することができる。
【0081】
植付装置は、苗載置台の植付支持フレームによって支持されることで、苗載置台の下方に配置される。植付装置は、苗載置台に載置されたマット状土付苗を水田圃場に植え付ける。植付装置は、植込杆とロータリーケースを備える。植込杆は、苗載置台に載置されたマット状土付苗から一株分の苗をとって水田圃場面に植え付ける。
【0082】
<他の実施形態>
(1)図15は、フロアステップ8後端部のリヤステップ10を燃料タンク31で兼用した他の実施形態を示す。
【0083】
即ち、フロアステップ8後端部に立ち上がり壁8aを一体形成し、該立ち上がり壁8a上端部に燃料タンク31を配置して設ける。
【0084】
燃料タンク31の上面は、操縦席9を設けるフロアステップ8の後部中央部の凸状部8b上面と同じ高さに設定されている。
【0085】
従って、燃料タンク31の上面が操縦席9の後部左右側方及び後方に位置して、平坦なリヤステップ10として兼用できる。
【0086】
(2)図16及び図17は、ブロア40で発生させたエアで肥料を搬送する形態の施肥装置を装着した乗用型田植機において、エアの水分を取る脱水器41を設けた実施形態を示す。
【0087】
即ち、施肥装置は、走行車両1のリヤステップ10後部上方に配置した肥料ホッパに貯留されている粒状の肥料を繰出部によって一定量づつ繰り出し、その肥料を施肥ホースで苗植付部のセンターフロート及びサイドフロートの左右両側に取り付けた施肥ガイドまで導き、施肥ガイドの前側に設けた作溝体によって苗植付条の側部近傍に形成される施肥構内に落とし込むようになっている。
【0088】
ブロア用電動モータで駆動するブロア40が脱水器41を介して外気を吸い込んで圧縮したエアが、ブロア40のエア吐出口40aから左右方向に長い肥料ホッパに沿って設けたエアチャンバを経由して施肥ホースに吹き込まれ、繰出部が繰り出した施肥ホース内の肥料を風圧で強制的に搬送する。
【0089】
そして、ブロア40の吸い込み口40bに脱水器41のエア出口41aが連結されている。
【0090】
脱水器41は、外気吸い込み口41bから吸い込んだ外気をサイクロン41cにて水分を除去してエア出口41aからブロア40の吸い込み口40bに供給する。
【0091】
サイクロン41cは、一般的なサクロンであって、下側に向かうほど内径が小さくなる管を渦巻状に構成し、その下部にエア出口41aにつながるパイプ口41dを渦巻状の管の中央位置に設けている。
【0092】
なお、下端部には、ドレンコック41eが設けられている。
【0093】
従って、脱水器41の外気吸い込み口41bから吸い込んだ外気は、サイクロン41cにて水分が分離除去され、水分が除去されたエアがパイプ口41dからエア出口41aを通ってブロア40の吸い込み口40bに供給されるので、ブロア40のエア吐出口40aから吐出されるエアは乾燥しており、繰出部が繰り出した施肥ホース内の肥料を乾燥したエアの風圧で強制的に搬送し、肥料を乾燥させて施肥ホースや施肥ガイド内で肥料が詰まるのを防止でき、適切な施肥作業が行える。
【0094】
そして、脱水器41のサイクロン41cにて分離された水分は、下部の容器41f内に溜まり、適時にドレンコック41eを開くことにより、排出できる。
【0095】
なお、上例では脱水器41をブロア40の吸い込み口40b側に設けた例を示したが、脱水器41をブロア40のエア吐出口40aに設けて、ブロア40のエア吐出口40aから吐出されるエアを脱水器41にて水分を分離除去して、エアチャンバを経由して施肥ホースに吹き込む構成にしても作用効果は同じである。
【0096】
また、マフラー26の排気口26aから排出される排気が脱水器41を通って、ブロア40の吸い込み口40bに吸い込まれる構成にすれば、エア温度が高くなり更に肥料の乾燥が増進し、肥料詰まりの防止に貢献する。
【0097】
また、ドレンコック41eを廃止して、下部の容器41fを着脱自在に構成して、溜まった水を排出するようにしても良い。
【0098】
なお、下部の容器41fは、透明な材料で形成すれば、中に溜まった水の量が分かり便利である。
【符号の説明】
【0099】
5 エンジン
7 ボンネット
16 フライホイール
18 カバー体(第1カバー体)
19 カバー体(第2カバー体)
20 開口部
25 フライホイール下カバー
25a 傾斜面
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