(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024030997
(43)【公開日】2024-03-07
(54)【発明の名称】定着部材用管状体、定着装置、及び画像形成装置
(51)【国際特許分類】
G03G 15/20 20060101AFI20240229BHJP
【FI】
G03G15/20 515
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022134270
(22)【出願日】2022-08-25
(71)【出願人】
【識別番号】000005496
【氏名又は名称】富士フイルムビジネスイノベーション株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】窪田 亮輔
【テーマコード(参考)】
2H033
【Fターム(参考)】
2H033AA13
2H033BA11
2H033BA12
2H033BA25
2H033BA26
2H033BB03
2H033BB04
2H033BB05
2H033BB13
2H033BB14
2H033BB18
2H033BB21
2H033BB29
2H033BB30
2H033BE00
(57)【要約】
【課題】定着装置の消費電力を低減しうる定着部材用管状体の提供。
【解決手段】熱伝導率が1.0W/m・K以上の第1層と、樹脂、及び、電子相転移により熱の授受が発生する固体材料の粒子を含む第2層と、を有する定着部材用管状体。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱伝導率が1.0W/m・K以上の第1層と、
樹脂、及び、電子相転移により熱の授受が発生する固体材料の粒子を含む第2層と、
を有する、定着部材用管状体。
【請求項2】
前記粒子がVO2を含む、請求項1に記載の定着部材用管状体。
【請求項3】
前記粒子が、Cr、W、Ta、Nb、Mo、Ti、Al、Fe、Mn、Cu、Ge、Zr、Ru、及びSnからなる群より選択される1種の金属により一部が置換されたVO2である、請求項2に記載の定着部材用管状体。
【請求項4】
前記第2層の潜熱量が0.5kJ/m2以上である、請求項1に記載の定着部材用管状体。
【請求項5】
前記第2層の潜熱量が1kJ/m2以上である、請求項4に記載の定着部材用管状体。
【請求項6】
前記粒子が、Cr、W、Ta、Nb、Mo、Ti、Al、Fe、Mn、Cu、Ge、Zr、Ru、及びSnからなる群より選択される1種の金属により一部が置換されたVO2であり、且つ、前記第2層の潜熱量が0.5kJ/m2以上である、請求項1に記載の定着部材用管状体。
【請求項7】
前記粒子が、Cr、W、Ta、Nb、Mo、Ti、Al、Fe、Mn、Cu、Ge、Zr、Ru、及びSnからなる群より選択される1種の金属により一部が置換されたVO2であり、且つ、前記第2層の潜熱量が1kJ/m2以上である、請求項1に記載の定着部材用管状体。
【請求項8】
前記第2層の厚みに対し、第1層の厚みが0.1倍以上6倍以下である、請求項7に記載の定着部材用管状体。
【請求項9】
更に第3層を有し、
前記第2層、前記第1層、及び前記第3層をこの順に有する、請求項1に記載の定着部材用管状体。
【請求項10】
第1回転体と、前記第1回転体の外面に接触して配置される第2回転体と、を備え、
前記第1回転体及び前記第2回転体の少なくとも一方が、請求項1~請求項9のいずれか1項に記載の定着部材用管状体であり、
トナー像が表面に形成された記録媒体を前記第1回転体と前記第2回転体との接触部に挿通して前記トナー像を定着する定着装置。
【請求項11】
像保持体と、
前記像保持体の表面を帯電する帯電手段と、
帯電した前記像保持体の表面に静電潜像を形成する静電潜像形成手段と、
トナーを含む現像剤により、前記像保持体の表面に形成された静電潜像を現像してトナー像を形成する現像手段と、
前記トナー像を記録媒体の表面に転写する転写手段と、
前記トナー像を前記記録媒体に定着する、請求項10に記載の定着装置から構成される定着手段と、
を備える画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、定着部材用管状体、定着装置、及び画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1には、定着ベルトに使用されるポリイミド管状物として、ポリイミド樹脂100重量部に対し、カーボンナノチューブを0.1~100重量部含有し、熱伝導率が0.30W/m・K以上である内層とフッ素樹脂を含有する外層とを有するポリイミド管状物が開示されている。
【0003】
また、例えば、特許文献2には、マトリックス樹脂と蓄熱性無機粒子を含む蓄熱性組成物であって、前記蓄熱性無機粒子は電子相転移する物質で電子相転移による潜熱が1J/cc以上の物質からなる蓄熱性無機粒子であり、マトリックス樹脂100重量部に対して10~2000重量部含み、熱伝導率が0.3W/m・K以上である蓄熱性組成物が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004-123867号公報
【特許文献2】国際公開公報第2015/087620号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本開示は、熱伝導率が1.0W/m・K以上の層を有し、電子相転移により熱の授受が発生する固体材料の粒子を含む層を有しない場合、又は、熱伝導率が1.0W/m・K以上で且つ電子相転移により熱の授受が発生する固体材料の粒子を含む層を有する場合に比べ、定着装置の消費電力を低減しうる定着部材用管状体を提供すること課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するための具体的手段には、下記の態様が含まれる。
<1> 熱伝導率が1.0W/m・K以上の第1層と、
樹脂、及び、電子相転移により熱の授受が発生する固体材料の粒子を含む第2層と、
を有する、定着部材用管状体。
<2> 前記粒子がVO2を含む、<1>に記載の定着部材用管状体。
<3> 前記粒子が、Cr、W、Ta、Nb、Mo、Ti、Al、Fe、Mn、Cu、Ge、Zr、Ru、及びSnからなる群より選択される1種の金属により一部が置換されたVO2である、<1>又は<2>に記載の定着部材用管状体。
<4> 前記第2層の潜熱量が0.5kJ/m2以上である、<1>~<3>のいずれか1つに記載の定着部材用管状体。
<5> 前記第2層の潜熱量が1kJ/m2以上である、<1>~<4>のいずれ1つに記載の定着部材用管状体。
<6> 前記粒子が、Cr、W、Ta、Nb、Mo、Ti、Al、Fe、Mn、Cu、Ge、Zr、Ru、及びSnからなる群より選択される1種の金属により一部が置換されたVO2であり、且つ、前記第2層の潜熱量が0.5kJ/m2以上である、<1>~<5>のいずれか1つに記載の定着部材用管状体。
<7> 前記粒子が、Cr、W、Ta、Nb、Mo、Ti、Al、Fe、Mn、Cu、Ge、Zr、Ru、及びSnからなる群より選択される1種の金属により一部が置換されたVO2であり、且つ、前記第2層の潜熱量が1kJ/m2以上である、<1>~<6>のいずれか1つに記載の定着部材用管状体。
<8> 前記第2層の厚みに対し、第1層の厚みが0.1倍以上6倍以下である、<1>~<7>のいずれか1つに記載の定着部材用管状体。
<9> 更に第3層を有し、
前記第2層、前記第1層、及び前記第3層をこの順に有する、<1>~<8>のいずれか1つに記載の定着部材用管状体。
【0007】
<10> 第1回転体と、前記第1回転体の外面に接触して配置される第2回転体と、を備え、
前記第1回転体及び前記第2回転体の少なくとも一方が<1>~<9>のいずれか1つに記載の定着部材用管状体であり、
トナー像が表面に形成された記録媒体を前記第1回転体と前記第2回転体との接触部に挿通して前記トナー像を定着する定着装置。
<11> 像保持体と、
前記像保持体の表面を帯電する帯電手段と、
帯電した前記像保持体の表面に静電潜像を形成する静電潜像形成手段と、
トナーを含む現像剤により、前記像保持体の表面に形成された静電潜像を現像してトナー像を形成する現像手段と、
前記トナー像を記録媒体の表面に転写する転写手段と、
前記トナー像を前記記録媒体に定着する、<10>に記載の定着装置から構成される定着手段と、
を備える画像形成装置。
【発明の効果】
【0008】
<1>、<2>、又は<4>に係る発明によれば、熱伝導率が1.0W/m・K以上の層を有し、電子相転移により熱の授受が発生する固体材料の粒子を含む層を有しない場合、又は、熱伝導率が1.0W/m・K以上で且つ電子相転移により熱の授受が発生する固体材料の粒子を含む層を有する場合に比べ、定着装置の消費電力を低減しうる定着部材用管状体が提供される。
<3>又は<6>に係る発明によれば、他の金属により一部を置換していないVO2を用いる場合に比べ、定着装置の消費電力を低減しうる定着部材用管状体が提供される。
<5>又は<7>に係る発明によれば、第2層の潜熱量が1kJ/m2未満である場合に比べ、定着装置の消費電力を低減しうる定着部材用管状体が提供される。
<8>に係る発明によれば、第2層の厚みに対し、第1層の厚みが0.1倍未満又は6倍超である場合に比べ、定着装置の消費電力を低減しうる定着部材用管状体が提供される。
<9>に係る発明によれば、更に第3層を有し、第1層、第2層、及び第3層をこの順に有する場合に比べ、定着装置の消費電力を低減しうる定着部材用管状体が提供される。
【0009】
<10>又は<11>に係る発明によれば、熱伝導率が1.0W/m・K以上の層を有し、電子相転移により熱の授受が発生する固体材料の粒子を含む層を有しない場合、又は、熱伝導率が1.0W/m・K以上で且つ電子相転移により熱の授受が発生する固体材料の粒子を含む層を有する定着部材用管状体を備える場合に比べ、消費電力を低減しうる定着装置又は画像形成装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】第2層の示差走査熱量測定の測定結果の一例を示す図である。
【
図2】本開示の管状体である定着ベルトの一例を示す模式断面図である。
【
図3】本開示の定着装置の第1実施形態の一例を示す概略構成図である。
【
図4】本開示の定着装置の第2実施形態の一例を示す概略構成図である。
【
図5】本開示の画像形成装置の一例を示す概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に、本発明の実施形態について説明する。これらの説明及び実施例は実施形態を例示するものであり、実施形態の範囲を制限するものではない。
【0012】
本明細書中に段階的に記載されている数値範囲において、一つの数値範囲で記載された上限値又は下限値は、他の段階的な記載の数値範囲の上限値又は下限値に置き換えてもよい。
また、本明細書中に記載されている数値範囲において、その数値範囲の上限値又は下限値は、実施例に示されている値に置き換えてもよい。
【0013】
本明細書において各成分は該当する物質を複数種含んでいてもよい。
本明細書において組成物中の各成分の量について言及する場合、組成物中に各成分に該当する物質が複数種存在する場合には、特に断らない限り、組成物中に存在する当該複数種の物質の合計量を意味する。
【0014】
<定着部材用管状体>
本開示の管状体用管状体は、熱伝導率が1.0W/m・K以上の第1層と、樹脂、及び、電子相転移により熱の授受が発生する固体材料の粒子を含む第2層と、を有する。
【0015】
本開示の管状体用管状体は、後述する画像形成装置に備えられる定着装置において、定着に適用される部材(すなわち、定着部材)として用いられる管状体を指す。管状体としては、ベルト状及びロール状のいずれであってもよい。
以下、定着部材用管状体を、単に、「管状体」ともいい、電子相転移により熱の授受が発生する固体材料の粒子を、「蓄熱粒子」ともいう。
【0016】
本開示の管状体は、上記構成により、定着装置に適用した際、定着装置の消費電力を低減しうる。その理由は、次の通り推測される。
定着装置の消費電力の低減を目的として、昇温速度を高める観点等から、高熱伝導率を有する層を有する管状体が提案されている。一方で、熱伝導率が高い層は放熱も生じることから、管状体の加熱を停止すると、表面温度が低下してしまうことがある。つまり、高熱伝導率を有する層を有する管状体は、その表面温度を一定に保つためには、管状体を加熱し続けること又は頻繁に加熱することが必要となる。
本開示の管状体では、熱伝導率が1.0W/m・K以上の第1層とともに、樹脂、及び、電子相転移により熱の授受が発生する固体材料の粒子(すなわち、蓄熱粒子)を含む第2層を有する。第2層に含まれる電子相転移により熱の授受が発生する固体材料は、相転移時に熱を吸収又は放出する固体材料であって、相転移時は温度を一定に保つ性質(いわゆる、蓄熱)を有する。このため、蓄熱粒子を含む第2層は、第1層が有する高熱伝導率により急速に得た熱量を潜熱として蓄え、管状体の加熱が停止している際にも、管状体の表面温度を一定に保ちやすくなる。これにより、管状体の表面温度を一定に保つために、管状体を加熱する時間、頻度を低減させることができ、その結果として、定着装置に適用した際、定着装置の消費電力を低減しうるものと推測される。
【0017】
以下、本開示の管状体について説明する。
本開示の管状体は、上述した、第1層及び第2層の他、必要に応じて、第3層を有する。
【0018】
[第1層]
第1層は、熱伝導率が1.0W/m・K以上である。第1層は、このような熱伝導率を示すことから、高熱伝導層であるともいえる。
第1層の熱伝導率は、1.0W/m・K以上であり、1.2W/m・K以上が好ましい。
第1層の熱伝導率の上限は、例えば、第1層の機械的特性の維持等の観点から、10W/m・Kが挙げられる。
【0019】
第1層の熱伝導率は、以下のようにして測定する。
即ち、対象の第1層から、平板状の試験片を切り出し、試験片の厚み方向の熱拡散率から熱伝導率を求める。具体的には、試験片を、熱伝導率測定装置アイフェイズ・モバイル((株)アイフェイズ製)のプローブに載せた後、50gfの錘を置き、マニュアルモードで、1.41V、3Hz~100Hzを10分割、測定時間2秒の条件で、熱伝導率を3回測定する。3回の測定値の算術平均値を、第1層の熱伝導率とする。
【0020】
第1層は、上記熱伝導率を有する層であれば特に制限はなく、金属層であってもよいし、樹脂及び熱伝導性フィラーを含む層であってもよい。屈曲耐久性及び低熱容量の観点から、第1層は、樹脂及び熱伝導性フィラーを含む層であることが好ましい。
【0021】
(金属層)
第1層としての金属層としては、例えば、ニッケル、鉄、銅、金、銀、アルミニウム、クロム、錫、亜鉛からなる群より選択される1種の金属、又は、上記群より選択される2種以上の金属を含む合金が挙げられる。
金属層中の上記金属の含有量は、金属層の全質量に対して、90質量%以上であればよく、100質量%であってもよい。
【0022】
(樹脂及び熱伝導性フィラーを含む層)
-樹脂-
第1層としての樹脂及び熱伝導性フィラーを含む層において、樹脂としては、ポリイミド、芳香族ポリアミド、サーモトロピック液晶ポリマー等の液晶材料など、高耐熱かつ高強度の耐熱性樹脂等が好ましいものとして挙げられる。また、これら以外にも、ポリエステル、ポリエチレンテレフタレート、ポリエーテルサルフォン、ポリエーテルケトン、ポリサルフォン、ポリイミドアミド等が用いられる。
これらの中でも、高耐熱かつ高強度である観点から、上記樹脂としては、ポリイミドが好ましい。
【0023】
ポリイミドとしては、例えば、テトラカルボン酸二無水物とジアミン化合物との重合体であるポリアミック酸(ポリイミド樹脂の前駆体)のイミド化物が挙げられる。ポリイミドとして具体的には、テトラカルボン酸二無水物とジアミン化合物との等モル量を溶媒中で重合反応させてポリアミド酸の溶液として得て、そのポリアミド酸をイミド化して得られた樹脂が挙げられる。
【0024】
テトラカルボン酸二無水物としては、芳香族系、及び脂肪族系いずれの化合物も挙げられるが、耐熱性の観点から、芳香族系の化合物であることが好ましい。
【0025】
芳香族系テトラカルボン酸二無水物としては、例えば、ピロメリット酸二無水物、3,3’,4,4’-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’-ビフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物、1,4,5,8-ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、2,3,6,7-ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’-ビフェニルエーテルテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’-ジメチルジフェニルシランテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’-テトラフェニルシランテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4-フランテトラカルボン酸二無水物、4,4’-ビス(3,4-ジカルボキシフェノキシ)ジフェニルスルフィド二無水物、4,4’-ビス(3,4-ジカルボキシフェノキシ)ジフェニルスルホン二無水物、4,4’-ビス(3,4-ジカルボキシフェノキシ)ジフェニルプロパン二無水物、3,3’,4,4’-パーフルオロイソプロピリデンジフタル酸二無水物、3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,3,3’,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、ビス(フタル酸)フェニルホスフィンオキサイド二無水物、p-フェニレン-ビス(トリフェニルフタル酸)二無水物、m-フェニレン-ビス(トリフェニルフタル酸)二無水物、ビス(トリフェニルフタル酸)-4,4’-ジフェニルエーテル二無水物、ビス(トリフェニルフタル酸)-4,4’-ジフェニルメタン二無水物等を挙げられる。
【0026】
脂肪族テトラカルボン酸二無水物としては、例えば、ブタンテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4-シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、1,3-ジメチル-1,2,3,4-シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4-シクロペンタンテトラカルボン酸二無水物、2,3,5-トリカルボキシシクロペンチル酢酸二無水物、3,5,6-トリカルボキシノルボナン-2-酢酸二無水物、2,3,4,5-テトラヒドロフランテトラカルボン酸二無水物、5-(2,5-ジオキソテトラヒドロフリル)-3-メチル-3-シクロヘキセン-1,2-ジカルボン酸二無水物、ビシクロ[2,2,2]-オクト-7-エン-2,3,5,6-テトラカルボン酸二無水物等の脂肪族又は脂環式テトラカルボン酸二無水物;1,3,3a,4,5,9b-ヘキサヒドロ-2,5-ジオキソ-3-フラニル)-ナフト[1,2-c]フラン-1,3-ジオン、1,3,3a,4,5,9b-ヘキサヒドロ-5-メチル-5-(テトラヒドロ-2,5-ジオキソ-3-フラニル)-ナフト[1,2-c]フラン-1,3-ジオン、1,3,3a,4,5,9b-ヘキサヒドロ-8-メチル-5-(テトラヒドロ-2,5-ジオキソ-3-フラニル)-ナフト[1,2-c]フラン-1,3-ジオン等の芳香環を有する脂肪族テトラカルボン酸二無水物等が挙げられる。
【0027】
これらの中でも、テトラカルボン酸二無水物としては、芳香族系テトラカルボン酸二無水物がよく、具体的には、例えば、ピロメリット酸二無水物、3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,3,3’,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’-ビフェニルエーテルテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物がよく、更に、ピロメリット酸二無水物、3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物がよく、特に、3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物がよい。
【0028】
なお、テトラカルボン酸二無水物は、1種単独で用いてもよいし、2種以上組み合わせて併用してもよい。
また、テトラカルボン酸二無水物を2種以上組み合わせて併用する場合、芳香族テトラカルボン酸二無水物、又は脂肪族テトラカルボン酸二無水物を各々併用しても、芳香族テトラカルボン酸二無水物と脂肪族テトラカルボン酸二無水物とを組み合わせてもよい。
【0029】
一方、ジアミン化合物は、分子構造中に2つのアミノ基を有するジアミン化合物である。ジアミン化合物としては、芳香族系、脂肪族系いずれの化合物も挙げられるが、芳香族系の化合物であることが好ましい。
【0030】
ジアミン化合物としては、例えば、p-フェニレンジアミン、m-フェニレンジアミン、4,4’-ジアミノジフェニルメタン、4,4’-ジアミノジフェニルエタン、4,4’-ジアミノジフェニルエーテル、4,4’-ジアミノジフェニルスルフィド、4,4’-ジアミノジフェニルスルホン、1,5-ジアミノナフタレン、3,3-ジメチル-4,4’-ジアミノビフェニル、5-アミノ-1-(4’-アミノフェニル)-1,3,3-トリメチルインダン、6-アミノ-1-(4’-アミノフェニル)-1,3,3-トリメチルインダン、4,4’-ジアミノベンズアニリド、3,5-ジアミノ-3’-トリフルオロメチルベンズアニリド、3,5-ジアミノ-4’-トリフルオロメチルベンズアニリド、3,4’-ジアミノジフェニルエーテル、2,7-ジアミノフルオレン、2,2-ビス(4-アミノフェニル)ヘキサフルオロプロパン、4,4’-メチレン-ビス(2-クロロアニリン)、2,2’,5,5’-テトラクロロ-4,4’-ジアミノビフェニル、2,2’-ジクロロ-4,4’-ジアミノ-5,5’-ジメトキシビフェニル、3,3’-ジメトキシ-4,4’-ジアミノビフェニル、4,4’-ジアミノ-2,2’-ビス(トリフルオロメチル)ビフェニル、2,2-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン、1,4-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、4,4’-ビス(4-アミノフェノキシ)-ビフェニル、1,3’-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、9,9-ビス(4-アミノフェニル)フルオレン、4,4’-(p-フェニレンイソプロピリデン)ビスアニリン、4,4’-(m-フェニレンイソプロピリデン)ビスアニリン、2,2’-ビス[4-(4-アミノ-2-トリフルオロメチルフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン、4,4’-ビス[4-(4-アミノ-2-トリフルオロメチル)フェノキシ]-オクタフルオロビフェニル等の芳香族ジアミン;ジアミノテトラフェニルチオフェン等の芳香環に結合された2個のアミノ基と当該アミノ基の窒素原子以外のヘテロ原子を有する芳香族ジアミン;1,1-メタキシリレンジアミン、1,3-プロパンジアミン、テトラメチレンジアミン、ペンタメチレンジアミン、オクタメチレンジアミン、ノナメチレンジアミン、4,4-ジアミノヘプタメチレンジアミン、1,4-ジアミノシクロヘキサン、イソフォロンジアミン、テトラヒドロジシクロペンタジエニレンジアミン、ヘキサヒドロ-4,7-メタノインダニレンジメチレンジアミン、トリシクロ[6,2,1,02.7]-ウンデシレンジメチルジアミン、4,4’-メチレンビス(シクロヘキシルアミン)等の脂肪族ジアミン及び脂環式ジアミン等が挙げられる。
【0031】
これらの中でも、ジアミン化合物としては、芳香族系ジアミン化合物がよく、具体的には、例えば、p-フェニレンジアミン、m-フェニレンジアミン、4,4’-ジアミノジフェニルメタン、4,4’-ジアミノジフェニルエーテル、3,4’-ジアミノジフェニルエーテル、4,4’-ジアミノジフェニルスルフィド、4,4’-ジアミノジフェニルスルホンがよく、特に、4,4’-ジアミノジフェニルエーテル、p-フェニレンジアミンがよい。
【0032】
なお、ジアミン化合物は、1種単独で用いてもよいし、2種以上組み合わせて併用してもよい。
また、ジアミン化合物を2種以上組み合わせて併用する場合、芳香族ジアミン化合物、又は脂肪族ジアミン化合物を各々併用しても、芳香族ジアミン化合物と脂肪族ジアミン化合物とを組み合わせてもよい。
【0033】
これらの中でも、耐熱性の観点から、ポリイミドとしては、芳香族ポリイミド(具体的には、芳香族テトラカルボン酸二無水物と芳香族ジアミン化合物との重合体であるポリアミック酸(ポリイミド樹脂の前駆体)のイミド化物)が好ましい。
そして、芳香族ポリイミドとしては、下記一般式(PI1)で表される構造単位を有するポリイミドであることがより好ましい。
【0034】
【0035】
一般式(PI1)中、RP1はフェニル基、またはビフェニル基を示し、RP2は2価の芳香族基を示す。
RP2が示す2価の芳香族基は、フェニレン基、ナフチル基、ビフェニル基、ジフェニルエーテル基等が挙げられる。2価の芳香族基としては、屈曲耐久性の観点から、フェニレン基、ビフェニル基が好ましい。
【0036】
ポリイミドの数平均分子量は、5,000以上100,000以下であることがよく、より好ましくは7,000以上50,000以下、更に好ましくは10,000以上30,000以下である。
【0037】
ポリイミドの数平均分子量は、下記測定条件のゲル・パーミエーション・クロマトグラフィ(GPC)法で測定される。
・カラム:東ソーTSKgelα-M(7.8mm I.D×30cm)
・溶離液:DMF(ジメチルホルムアミド)/30mMLiBr/60mMリン酸
・流速:0.6mL/min
・注入量:60μL
・検出器:RI(示差屈折率検出器)
【0038】
-熱伝導性フィラー-
第1層に含まれる熱伝導性フィラーとしては、カーボンブラック、カーボンファイバー、カーボンナノチューブ等の炭化物が挙げられる。特に、第1層の熱伝導率、導電性及び柔軟性向上の観点から、熱伝導性フィラーとしてはカーボンナノチューブであることが好ましい。
【0039】
熱伝導性フィラーの含有量は、第1層の熱伝導率を1.0W/m・K以上とする量であればよく、導電性及び柔軟性向上の観点から、第1層の全質量に対して、10質量%以上50質量%以下であることが好ましく、15質量%以上30質量%以下であることがより好ましい。
【0040】
-その他の成分-
樹脂及び熱伝導性フィラーを含む層は、熱伝導性フィラー以外の無機の充填剤、添加剤を更に含んでいてもよい。添加剤として、例えば、軟化剤(パラフィン系等)、加工助剤(ステアリン酸等)、老化防止剤(アミン系等)、加硫剤(硫黄、金属酸化物、過酸化物等)等が含んでいてもよい。
【0041】
-厚み-
第1層の厚みは、第2層の機械的特性の維持等の観点、及び、定着装置の消費電力を低減しうる観点から、5μm以上300μm以下であることが好ましく、10μm以上250μm以下であることがより好ましい。
【0042】
-形成方法-
第1層の形成には、層の種類に応じて、公知の方法を適用すればよい。
例えば、第1層が樹脂及び熱伝導性フィラーを含む層である場合には、この層を構成する各成分を含む第1層形成用塗布液を調製し、得られた塗布液を被塗布部に塗布し、乾燥することで得られる。被塗布部は、円筒形基材である場合、円筒形基材上に形成された第2層である場合もがある。
第1層形成用塗布液には、樹脂、熱伝導性フィラー、必要に応じて用いられるその他の成分(添加剤)等が含まれる。
なお、樹脂がポリイミドの場合、第1層は、ポリアミック酸(ポリイミド樹脂の前駆体)、熱伝導性フィラー、必要に応じて用いられるその他の成分(添加剤)等を含む第1層形成用塗布液を調製し、得られた第1層形成用塗布液を被塗布部に塗布し、焼成する(即ち、イミド化)ことで得られる。
なお、塗布液を調製する際、予め、熱伝導性フィラーを溶剤に分散した分散液を用いてもよい。この場合、得られた分散液に、樹脂(又はポリアミック酸)を溶解することで、第1層形成用塗布液が得られる。
熱伝導性フィラーを含む分散液又は塗布液を得る際には、例えば、ボールミル、サンドミル、ビーズミル、ジェットミル(対向衝突型分散機)等の分散方法の他、高圧ホモジナイザー等による高圧分散が用いられる。
また、第1層形成用塗布液の塗布には、特に制限はないが、例えば、フローコート法(らせん巻き塗布法)が用いられる。
【0043】
[第2層]
第2層は、樹脂、及び、電子相転移により熱の授受が発生する固体材料の粒子(すなわち、蓄熱粒子)を含む。第2層は、蓄熱粒子を含むことから、潜熱蓄熱層であるともいえる。
第2層に含まれる樹脂は、第1層としての樹脂及び熱伝導性フィラーを含む層における樹脂と同様の樹脂が用いられることが好ましい。第2層に含まれる樹脂としても、高耐熱かつ高強度である観点から、ポリイミドが好ましい。
【0044】
-電子相転移により熱の授受が発生する固体材料の粒子(蓄熱粒子)-
電子相転移により熱の授受が発生する固体材料の粒子(すなわち、蓄熱粒子)としては、固体材料の粒子であって、電子相転移により熱の授受が発生する性質を有していればよく、具体的には、VO2(二酸化バナジウム)を含むことが好ましい。
VO2は、熱伝導率が高く、熱応答性に優れ、熱安定性にも優れる。このため、VO2を含む第2層を有する管状体は、繰り返し使用への適正が高い。また、VO2は、固体材料であると共に、体積膨張及び収縮が小さいため、VO2を含む第2層は、その形状安定性にも優れる。これらの点から、第2層はVO2を含むことが好ましい。
【0045】
また、蓄熱粒子は、潜熱量を高める観点、及び、定着装置の消費電力をより低減しうる観点から、Cr、W、Ta、Nb、Mo、Ti、Al、Fe、Mn、Cu、Ge、Zr、Ru、及びSnからなる群より選択される1種の金属により一部が置換されたVO2であることが好ましい。特に、Crにより一部が置換されたVO2(以下、VO2-Crともいう)であることが好ましい。
【0046】
蓄熱粒子の含有量は、第2層の潜熱量向上の観点から、第2層の全質量に対して、1質量%以上100質量%未満であることが好ましく、10質量%以上90質量%以下であることがより好ましく、30質量%以上50質量%以下であること更に好ましい。
蓄熱粒子の含有量は、後述する第2層の潜熱量に応じて決定されることが好ましい。
【0047】
-その他の成分-
第2層は、添加剤を更に含んでいてもよい。
添加剤としては、第1層における添加剤と同様のものが挙げられる。
【0048】
-潜熱量-
第2層の潜熱量は、定着装置の消費電力をより低減しうる観点から、0.5kJ/m2以上であることが好ましく、1kJ/m2以上であることがより好ましく、20kJ/m2以上であることが更に好ましく、30kJ/m2以上であることが特に好ましい。
なお、第2層の潜熱量の上限は、特に制限はないが、第2層の機械的特性の維持等の観点から、例えば、40kJ/m2が挙げられる。
第2層の潜熱量は、主として、蓄熱粒子の含有量により調整される。
【0049】
第2層の潜熱量は、以下のようにして測定される。
第2層から測定用の試料を作製し、得られた試料について、示差走査熱量計(例えば、セイコーインスツル(株)製EXSTAR6000シリーズDSC6200)を用いた示差走査熱量測定により、相転移に伴う蓄熱量[kJ/mg]と蓄熱温度[℃]とを測定する。このとき、昇温速度、降温速度共に10℃/minとして測定を行う。示差走査熱量は、基準物質と試料に或る熱量を与えたときの温度差、又は、両者を或る温度にするために要した熱量の差を表すものである。ここで、測定結果の例を
図1に示す。
この測定により得られた、相転移に伴う蓄熱量[kJ/mg]と、試料量[mg]との積を、試料の面積(m
2)で除することで、試料の潜熱量[kJ/m
2]が算出される。
ここで、試料の面積は、測定時に使用するアルミパンφ6mm((株)日立ハイテクサイエンス製)に試料を注入した際の、試料の解放面積を示す。
【0050】
本開示の管状体は、蓄熱粒子が、Cr、W、Ta、Nb、Mo、Ti、Al、Fe、Mn、Cu、Ge、Zr、Ru、及びSnからなる群より選択される1種の金属により一部が置換されたVO2であり、且つ、第2層の潜熱量が0.5kJ/m2以上であることが好ましく、蓄熱粒子が、Cr、W、Ta、Nb、Mo、Ti、Al、Fe、Mn、Cu、Ge、Zr、Ru、及びSnからなる群より選択される1種の金属により一部が置換されたVO2であり、且つ、第2層の潜熱量が1kJ/m2以上であることがより好ましい。
このような組み合わせであることで、定着装置の消費電力をより低減しうる。
【0051】
-厚み-
第2層の厚みは、第2層の機械的特性の維持等の観点、及び、定着装置の消費電力を低減しうる観点から、10μm以上100μm以下であることが好ましく、20μm以上80μm以下であることがより好ましく、30μm以上70μm以下であることが更に好ましい。
【0052】
-潜熱量と層厚との関係-
第2層の潜熱量が0.5kJ/m2以上である、好ましくは、1kJ/m2以上である場合、第2層の厚みに対し、第1層の厚みが、0.1倍以上6倍以下であることが好ましく、0.5倍以上5倍以下であることがより好ましく、0.5倍以上1倍以下であることが更に好ましい。
上記の関係を有することで、管状体の機械的特性を維持しつつ、定着装置の消費電力をより低減し易くなる。
【0053】
-形成方法-
第2層の形成には、公知の方法を適用すればよく、第1層の形成と同様の方法を用いることが好ましい。すなわち、第2層を構成する各成分を含む第2層形成用塗布液を調製し、得られた第2層形成用塗布液を被塗布部に塗布し、乾燥することで得られる。被塗布部は、円筒形基材である場合、円筒形基材上に形成された第2層である場合もがある。
第2層形成用塗布液には、樹脂、蓄熱粒子、必要に応じて用いられるその他の成分(添加剤)等が含まれる。
なお、第2層の場合も、樹脂がポリイミドの場合は、ポリアミック酸(ポリイミド樹脂の前駆体)、蓄熱粒子、必要に応じて用いられるその他の成分(添加剤)等を含む第2層形成用塗布液を調製し、得られた第2層形成用塗布液を被塗布部に塗布し、焼成する(即ち、イミド化)ことで得られる。
なお、塗布液を調製する際、予め、蓄熱粒子を溶剤に分散した分散液を用いてもよい。この場合、得られた分散液に、樹脂(又はポリアミック酸)を溶解することで、塗布液が得られる。
蓄熱粒子を含む分散液又は塗布液を得る際には、例えば、ボールミル、サンドミル、ビーズミル、ジェットミル(対向衝突型分散機)等の分散方法の他、高圧ホモジナイザー等による高圧分散が用いられる。
また、第2層形成用塗布液の塗布には、特に制限はないが、例えば、フローコート法(らせん巻き塗布法)が用いられる。
【0054】
[第3層]
本開示の管状体は、第1層及び第2層の他に、更に第3層を有することが好ましい。
本開示の管状体が第3層を有する場合、第2層、第1層、及び第3層をこの順に有することが好ましい。
この層構成とすると、第1層が第2層と第3層との間に挟まれ、更には、第2層の蓄熱効果が付加され、第1層の放熱を効果的に抑えることができる。その結果、定着装置の消費電力をより低減しうる。
【0055】
本開示の管状体の層構成について例にとって説明する。
図2は、本開示の管状体の層構成の一例を示す概略断面図である。
図2に示す管状体110は、第2層110Aと、第2層110A上に設けられた第1層110Bと、第1層110B上に設けられた第3層110Cと、を有している。
なお、本開示の管状体の層構成は、
図2に示す層構成に限定されず、第2層110Aと第1層110Bとが逆になる層構成、第3層110Cを有さない層構成であってもよい。
【0056】
図2に示すように、第3層は、管状体の表面を構成する表面層であることが好ましい。表面層としての第3層は、定着時に溶融状態のトナー像が固着するのを抑制する役割を担う層である。そのため、第3層は、例えば、耐熱性、離型性が求められる。
耐熱性及び離型性の観点から、第3層を構成する材料には、耐熱性を有する離型材料を用いることが好ましい。耐熱性を有する離型材料としては、具体的には、フッ素ゴム、フッ素樹脂、シリコーン樹脂、ポリイミド樹脂等が挙げられる。
これらの中でも、耐熱性を有する離型材料としては、フッ素樹脂がよい。
【0057】
第3層に含まれるフッ素樹脂として、具体的には、テトラフルオロエチレン-パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラフルオロエチレン-ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)、ポリエチレン-テトラフルオロエチレン共重合体(ETFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリクロロ三フッ化エチレン(PCTFE)、フッ化ビニル(PVF)等が挙げられる。
【0058】
第3層は、単層構造であってもよいし、多層構造であってもよい。
【0059】
-厚み-
第3層の厚さは、10μm以上100μm以下であることが好ましく、20μm以上50μm以下であることがより好ましい。
【0060】
-形成方法-
第3層の形成は、公知の方法を適用すればよい。
第3層の形成には、第2層の形成と同様に、塗布法を用いてもよい。
また、チューブ状の第3層を予め準備し、これを第1層の外周上に被覆させることで、第3層を形成してもよい。なお、チューブ状の第3層の内面に接着剤層(例えば、エポキシ基を有するシランカップリング剤を含む接着剤層)を形成した上で、第1層の外周上に被覆させてもよい。
【0061】
[製造方法]
本開示の管状体の製造には、層を形成する公知の方法が適用される。
例えば、第2層、第1層、及び第3層をこの順に有する管状体であれば、以下のように製造することが好ましい。
まず、円筒形基材の外周面上に、第2層形成用塗布液を塗布、乾燥させて第2層を形成し、次いで、形成された第2層上に、第1層形成用塗布液を塗布、乾燥させて第1層を形成し、更に、形成された第1層上に、塗布法又は被覆法にて第3層を形成する。
【0062】
管状体の総膜厚は、管状体がベルト状であれば、例えば、0.03mm以上0.90mm以下が好ましく、より好ましくは0.08mm以上0.70mm以下、更に好ましくは0.10mm以上0.60mm以下である。
【0063】
[用途]
本開示の管状体は、定着ベルトであってもよいし、定着ロールであってもよい。
本開示の管状体が、定着ベルトであれば、加熱ベルト、加圧ベルトのいずれにも適用される。なお、例えば、加熱ベルトとしては、外部の熱源から加熱する加熱ベルトであってもよい。
また、本開示の管状体は、定着ロールであれば、加熱ロール、加圧ロールのいずれにも適用される。
本開示の管状体が定着ロールである場合、定着ロールは、例えば、円筒状又は円柱状の基材と、第1層と、第2層と、を有していればよく、中でも、円筒状又は円柱状の基材と、第2層と、第1層と、第3層と、をこの順に有することが好ましい。
【0064】
<定着装置>
本開示の定着装置としては、種々の構成があり、例えば、第1回転体と、第1回転体の外面に接して配置される第2回転体と、を備え、トナー像が表面に形成された記録媒体を第1回転体と第2回転体との接触部に挿通してトナー像を定着する定着装置が例示できる。そして、第1回転体及び第2回転体の少なくとも一方として、本開示の管状体が適用される。
【0065】
以下に、本開示の定着装置について、第1実施形態として、加熱ロールと加圧ベルトとを備えた定着装置、第2実施形態として、加熱ベルトと加熱ロールとを備えた定着装置を説明する。そして、第1及び第2実施形態において、本開示の管状体は、加熱ベルト、及び加圧ベルトのいずれにも適用され得る。
なお、本開示の定着装置は、第1及び第2実施形態に限られず、加熱ロール又は加熱ベルトと加圧ベルトとを備えた定着装置であってよい。そして、本開示の管状体は、加熱ベルト、及び加圧ベルトのいずれにも適用され得る。
【0066】
(定着装置の第1実施形態)
定着装置の第1実施形態について
図3を参照して説明する。
図3は、定着装置の第1実施形態の一例(即ち、定着装置60)を示す概略図である。
【0067】
図3に示すように、定着装置60は、例えば、回転駆動する加熱ロール61(第1回転体の一例)と、加圧ベルト62(第2回転体の一例)と、加圧ベルト62を介して加熱ロール61を押圧する押圧パッド64(押圧部材の一例)と、を備えて構成されている。
なお、押圧パッド64は、例えば、加圧ベルト62と加熱ロール61とが相対的に加圧されていればよい。従って、加圧ベルト62側が加熱ロール61に加圧されてもよく、加熱ロール61側が加熱ロール61に加圧されてもよい。
【0068】
加熱ロール61の内部には、ハロゲンランプ66(加熱手段の一例)が配設されている。加熱手段としては、ハロゲンランプに限られず、発熱する他の発熱部材を用いてもよい。
【0069】
一方、加熱ロール61の表面には、例えば、感温素子69が接触して配置されている。この感温素子69による温度計測値に基づいて、ハロゲンランプ66の点灯が制御され、加熱ロール61の表面温度が目的とする設定温度(例えば、150℃)に維持される。
【0070】
加圧ベルト62は、例えば、内部に配置された押圧パッド64とベルト走行ガイド63とによって回転自在に支持されている。そして、挟込領域N(ニップ部)において押圧パッド64により加熱ロール61に対して押圧されて配置されている。
【0071】
押圧パッド64は、例えば、加圧ベルト62の内側において、加圧ベルト62を介して加熱ロール61に加圧される状態で配置され、加熱ロール61との間で挟込領域Nを形成している。
押圧パッド64は、例えば、幅の広い挟込領域Nを確保するための前挟込部材64aを挟込領域Nの入口側に配置し、加熱ロール61に歪みを与えるための剥離挟込部材64bを挟込領域Nの出口側に配置している。
【0072】
加圧ベルト62の内周面と押圧パッド64との摺動抵抗を小さくするために、例えば、前挟込部材64a及び剥離挟込部材64bの加圧ベルト62と接する面にシート状の摺動部材68が設けられている。そして、押圧パッド64と摺動部材68とは、金属製の保持部材65に保持されている。
なお、摺動部材68は、例えば、その摺動面が加圧ベルト62の内周面と接するように設けられており、加圧ベルト62との間に存在するオイルの保持・供給に関与する。
【0073】
保持部材65には、例えば、ベルト走行ガイド63が取り付けられ、加圧ベルト62が回転する構成となっている。
【0074】
加熱ロール61は、例えば、図示しない駆動モータにより矢印S方向に回転し、この回転に従動して加圧ベルト62は、加熱ロール61の回転方向と反対の矢印R方向へ回転する。すなわち、例えば、加熱ロール61が
図3における時計方向へ回転するのに対して、加圧ベルト62は反時計方向へ回転する。
【0075】
そして、未定着トナー像を有する用紙K(記録媒体の一例)は、例えば、定着入口ガイド56によって導かれて、挟込領域Nに搬送される。そして、用紙Kが挟込領域Nを通過する際に、用紙K上の未定着トナー像は挟込領域Nに作用する圧力と熱とによって定着される。
【0076】
定着装置60では、例えば、加熱ロール61の外周面に倣う凹形状の前挟込部材64aにより、前挟込部材64aがない構成に比して、広い挟込領域Nを確保される。
【0077】
また、定着装置60では、例えば、加熱ロール61の外周面に対し突出させて剥離挟込部材64bを配置することにより、挟込領域Nの出口領域において加熱ロール61の歪みが局所的に大きくなるように構成されている。
【0078】
このように剥離挟込部材64bを配置すれば、例えば、定着後の用紙Kは、剥離挟込領域を通過する際に、局所的に大きく形成された歪みを通過することになるので、用紙Kが加熱ロール61から剥離しやすい。
【0079】
剥離の補助手段として、例えば、加熱ロール61の挟込領域Nの下流側に、剥離部材70を配設されている。剥離部材70は、例えば、剥離爪71が加熱ロール61の回転方向と対向する向き(カウンタ方向)に加熱ロール61と近接する状態で保持部材72によって保持されている。
【0080】
(定着装置の第2実施形態)
定着装置の第2実施形態について
図4を参照して説明する。
図4は、定着装置の第2実施形態の一例(即ち、定着装置80)を示す概略図である。
【0081】
定着装置80は、
図4に示すように、例えば、加熱ベルト84(第1回転体の一例)を備える定着ベルトモジュール86と、加熱ベルト84(定着ベルトモジュール86)に押圧して配置された加圧ロール88(第2回転体の一例)とを含んで構成されている。そして、例えば、加熱ベルト84(定着ベルトモジュール86)と加圧ロール88との接触部には挟込領域N(ニップ部)が形成されている。挟込領域Nでは、用紙K(記録媒体の一例)が加圧及び加熱されトナー像が定着される。
【0082】
定着ベルトモジュール86は、例えば、無端状の加熱ベルト84と、加圧ロール88側で加熱ベルト84が巻き掛けられ、モータ(不図示)の回転力で回転駆動すると共に加熱ベルト84をその内周面から加圧ロール88側へ押し付ける加熱押圧ロール89と、加熱押圧ロール89と異なる位置で内側から加熱ベルト84を支持する支持ロール90と、を備えている。
定着ベルトモジュール86は、例えば、加熱ベルト84の外側に配置されてその周回経路を規定する支持ロール92と、加熱押圧ロール89から支持ロール90までの加熱ベルト84の姿勢を矯正する姿勢矯正ロール94と、加熱ベルト84と加圧ロール88とで形成された挟込領域Nの下流側において加熱ベルト84に内周面から張力を付与する支持ロール98と、が設けられている。
【0083】
そして、定着ベルトモジュール86は、例えば、加熱ベルト84と加熱押圧ロール89との間に、シート状の摺動部材82が介在するように設けられている。
摺動部材82は、例えば、その摺動面が加熱ベルト84の内周面と接するように設けられており、加熱ベルト84との間に存在するオイルの保持・供給に関与する。
ここで、摺動部材82は、例えば、その両端が支持部材96により支持された状態で設けられている。
【0084】
加熱押圧ロール89の内部には、例えば、ハロゲンヒータ89A(加熱手段の一例)が設けられている。
【0085】
支持ロール90は、例えば、アルミニウムで形成された円筒状ロールであり、内部にはハロゲンヒータ90A(加熱手段の一例)が配設されており、加熱ベルト84を内周面側から加熱するようになっている。
支持ロール90の両端部には、例えば、加熱ベルト84を外側に押圧するバネ部材(不図示)が配設されている。
【0086】
支持ロール92は、例えば、アルミニウムで形成された円筒状ロールであり、支持ロール92の表面には厚さ20μmのフッ素樹脂からなる離型層が形成されている。
支持ロール92の離型層は、例えば、加熱ベルト84の外周面からのトナーや紙粉が支持ロール92に堆積するのを防止するために形成されるものである。
支持ロール92の内部には、例えば、ハロゲンヒータ92A(加熱手段の一例)が配設されており、加熱ベルト84を外周面側から加熱するようになっている。
【0087】
つまり、例えば、加熱押圧ロール89と支持ロール90及び支持ロール92とによって、加熱ベルト84が加熱される構成となっている。
【0088】
姿勢矯正ロール94は、例えば、アルミニウムで形成された円柱状ロールであり、姿勢矯正ロール94の近傍には、加熱ベルト84の端部位置を測定する端部位置測定機構(不図示)が配置されている。
姿勢矯正ロール94には、例えば、端部位置測定機構の測定結果に応じて加熱ベルト84の軸方向における当り位置を変位させる軸変位機構(不図示)が配設され、加熱ベルト84の蛇行を制御するように構成されている。
【0089】
一方、加圧ロール88は、例えば、回転自在に支持されると共に、図示しないスプリング等の付勢手段によって加熱ベルト84が加熱押圧ロール89に巻き回された部位に押圧されて設けられている。これにより、定着ベルトモジュール86の加熱ベルト84(加熱押圧ロール89)が矢印S方向へ回転移動するのに伴って、加熱ベルト84(加熱押圧ロール89)に従動して加圧ロール88が矢印R方向に回転移動するようになっている。
【0090】
そして、未定着トナー像(不図示)を有する用紙Kは、矢印P方向に搬送され、定着装置80の挟込領域Nに導かれる。そして、用紙Kが挟込領域Nを通過する際に、用紙K上の未定着トナー像は、挟込領域Nに作用する圧力と熱とによって定着される。
【0091】
なお、定着装置80では、複数ある加熱手段の一例としてハロゲンヒータ(ハロゲンランプ)を適用した形態を説明したが、これに限られず、ハロゲンヒータ以外の輻射ランプ発熱体(放射線(赤外線等)を発する発熱体)、抵抗発熱体(抵抗に電流を流すことによりジュール熱を発生させる発熱体:例えばセラミック基板に抵抗を有する膜を形成して焼成させたもの等)を適用してもよい。
【0092】
<画像形成装置>
次に、本開示の画像形成装置について説明する。
本開示の画像形成装置は、像保持体と、像保持体の表面を帯電する帯電手段と、帯電した像保持体の表面に静電潜像を形成する静電潜像形成手段と、トナーを含む現像剤により、像保持体の表面に形成された静電潜像を現像してトナー像を形成する現像手段と、トナー像を記録媒体の表面に転写する転写手段と、トナー像を記録媒体に定着する定着手段と、を備える。
そして、定着手段として、本開示の定着装置が適用される。
【0093】
ここで、本開示の画像形成装置において、定着装置は、画像形成装置に着脱するようにカートリッジ化していてもよい。つまり、本開示の画像形成装置は、プロセスカートリッジの構成装置として、本開示の定着装置を備えてもよい。
【0094】
以下、本開示の画像形成装置について図面を参照しつつ説明する。
図5は、本開示の画像形成装置の構成を示した概略構成図である。
【0095】
本開示の画像形成装置100は、
図5に示すように、例えば、一般にタンデム型と呼ばれる中間転写方式の画像形成装置であって、電子写真方式により各色成分のトナー像が形成される複数の画像形成ユニット1Y、1M、1C、1Kと、各画像形成ユニット1Y、1M、1C、1Kにより形成された各色成分トナー像を中間転写ベルト15に順次転写(一次転写)させる一次転写部10と、中間転写ベルト15上に転写された重畳トナー像を記録媒体である用紙Kに一括転写(二次転写)させる二次転写部20と、二次転写された画像を用紙K上に定着させる定着装置60と、を備えている。また、画像形成装置100は、各装置(各部)の動作を制御する制御部40を有している。
【0096】
この定着装置60が既述の定着装置の第1実施形態である。なお、画像形成装置100は、既述の定着装置の第2実施形態を備える構成であってもよい。
【0097】
画像形成装置100の各画像形成ユニット1Y,1M,1C,1Kは、表面に形成されるトナー像を保持する像保持体の一例として、矢印A方向に回転する感光体11を備えている。
【0098】
感光体11の周囲には、帯電手段の一例として、感光体11を帯電させる帯電器12が設けられ、潜像形成手段の一例として、感光体11上に静電潜像を書込むレーザ露光器13(図中露光ビームを符号Bmで示す)が設けられている。
【0099】
また、感光体11の周囲には、現像手段の一例として、各色成分トナーが収容されて感光体11上の静電潜像をトナーにより可視像化する現像器14が設けられ、感光体11上に形成された各色成分トナー像を一次転写部10にて中間転写ベルト15に転写する一次転写ロール16が設けられている。
【0100】
更に、感光体11の周囲には、感光体11上の残留トナーが除去される感光体クリーナ17が設けられ、帯電器12、レーザ露光器13、現像器14、一次転写ロール16及び感光体クリーナ17の電子写真用デバイスが感光体11の回転方向に沿って順次配設されている。これらの画像形成ユニット1Y,1M,1C,1Kは、中間転写ベルト15の上流側から、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)の順に、略直線状に配置されている。
【0101】
中間転写体である中間転写ベルト15は、ポリイミド又はポリアミド等の樹脂をベース層としてカーボンブラック等の帯電防止剤を適当量含有させたフィルム状の加圧ベルトで構成されている。そして、その体積抵抗率は106Ωcm以上1014Ωcm以下となるように形成されており、その厚さは、例えば、0.1mm程度に構成されている。
【0102】
中間転写ベルト15は、各種ロールによって
図5に示すB方向に目的に合わせた速度で循環駆動(回転)されている。この各種ロールとして、定速性に優れたモータ(不図示)により駆動されて中間転写ベルト15を回転させる駆動ロール31、各感光体11の配列方向に沿って略直線状に延びる中間転写ベルト15を支持する支持ロール32、中間転写ベルト15に対して張力を与えると共に中間転写ベルト15の蛇行を防止する補正ロールとして機能する張力付与ロール33、二次転写部20に設けられる背面ロール25、及び、中間転写ベルト15上の残留トナーを掻き取るクリーニング部に設けられるクリーニング背面ロール34を有している。
【0103】
一次転写部10は、中間転写ベルト15を挟んで感光体11に対向して配置される一次転写ロール16で構成されている。一次転写ロール16は、芯体と、芯体の周囲に固着された弾性層としてのスポンジ層と、で構成されている。芯体は、鉄、SUS等の金属で構成された円柱棒である。スポンジ層はカーボンブラック等の導電剤を配合したNBRとSBRとEPDMとのブレンドゴムで形成され、体積抵抗率が107.5Ωcm以上108.5Ωcm以下のスポンジ状の円筒ロールである。
【0104】
そして、一次転写ロール16は中間転写ベルト15を挟んで感光体11に圧接配置され、更に一次転写ロール16にはトナーの帯電極性(マイナス極性とする。以下同様。)と逆極性の電圧(一次転写バイアス)が印加されるようになっている。これにより、各々の感光体11上のトナー像が中間転写ベルト15に順次、静電吸引され、中間転写ベルト15上において重畳されたトナー像が形成されるようになっている。
【0105】
二次転写部20は、背面ロール25と、中間転写ベルト15のトナー像保持面側に配置される二次転写ロール22と、を備えて構成されている。
【0106】
背面ロール25は、表面がカーボンを分散したEPDMとNBRのブレンドゴムのチューブ、内部はEPDMゴムで構成されている。そして、その表面抵抗率が107Ω/□以上1010Ω/□以下となるように形成され、硬度は、例えば、70°(アスカーC:高分子計器社製、以下同様。)に設定される。この背面ロール25は、中間転写ベルト15の裏面側に配置されて二次転写ロール22の対向電極を構成し、二次転写バイアスが安定的に印加される金属製の給電ロール26が接触配置されている。
【0107】
一方、二次転写ロール22は、芯体と、芯体の周囲に固着された弾性層としてのスポンジ層と、で構成されている。芯体は鉄、SUS等の金属で構成された円柱棒である。スポンジ層はカーボンブラック等の導電剤を配合したNBRとSBRとEPDMとのブレンドゴムで形成され、体積抵抗率が107.5Ωcm以上108.5Ωcm以下のスポンジ状の円筒ロールである。
【0108】
そして、二次転写ロール22は中間転写ベルト15を挟んで背面ロール25に圧接配置され、更に、二次転写ロール22は接地されて背面ロール25との間に二次転写バイアスが形成され、二次転写部20に搬送される用紙K上にトナー像を二次転写する。
【0109】
また、中間転写ベルト15の二次転写部20の下流側には、二次転写後の中間転写ベルト15上の残留トナーや紙粉を除去し、中間転写ベルト15の表面をクリーニングする中間転写ベルトクリーナ35が、中間転写ベルト15に対し接離自在に設けられている。
【0110】
なお、中間転写ベルト15、一次転写部10(一次転写ロール16)、及び二次転写部20(二次転写ロール22)が、転写手段の一例に該当する。
【0111】
一方、イエローの画像形成ユニット1Yの上流側には、各画像形成ユニット1Y,1M,1C,1Kにおける画像形成タイミングをとるための基準となる基準信号を発生する基準センサ(ホームポジションセンサ)42が配設されている。この基準センサ42は、中間転写ベルト15の裏側に設けられたマークを認識して基準信号を発生しており、この基準信号の認識に基づく制御部40からの指示により、各画像形成ユニット1Y,1M,1C,1Kは画像形成を開始するように構成されている。
また、黒の画像形成ユニット1Kの下流側には、画質調整を行うための画像濃度センサ43が配設されている。
【0112】
更に、本開示の画像形成装置では、用紙Kを搬送する搬送手段として、用紙Kを収容する用紙収容部50、この用紙収容部50に集積された用紙Kを予め定められたタイミングで取り出して搬送する給紙ロール51、給紙ロール51により繰り出された用紙Kを搬送する搬送ロール52、搬送ロール52により搬送された用紙Kを二次転写部20へと送り込む搬送ガイド53、二次転写ロール22により二次転写された後に搬送される用紙Kを定着装置60へと搬送する搬送ベルト55、及び、用紙Kを定着装置60に導く定着入口ガイド56を備えている。
【0113】
次に、本開示の画像形成装置の基本的な作像プロセスについて説明する。
本開示の画像形成装置では、図示しない画像読取装置や図示しないパーソナルコンピュータ(PC)等から出力される画像データは、図示しない画像処理装置により画像処理が施された後、画像形成ユニット1Y,1M,1C,1Kによって作像作業が実行される。
【0114】
画像処理装置では、入力された反射率データに対して、シェーディング補正、位置ズレ補正、明度/色空間変換、ガンマ補正、枠消しや色編集、移動編集等の各種画像編集等の画像処理が施される。画像処理が施された画像データは、Y、M、C、Kの4色の色材階調データに変換され、レーザ露光器13に出力される。
【0115】
レーザ露光器13では、入力された色材階調データに応じて、例えば半導体レーザから出射された露光ビームBmを画像形成ユニット1Y,1M,1C,1Kの各々の感光体11に照射している。画像形成ユニット1Y,1M,1C,1Kの各感光体11では、帯電器12によって表面が帯電された後、このレーザ露光器13によって表面が走査露光され、静電潜像が形成される。形成された静電潜像は、各々の画像形成ユニット1Y,1M,1C,1Kによって、Y、M、C、Kの各色のトナー像として現像される。
【0116】
画像形成ユニット1Y,1M,1C,1Kの感光体11上に形成されたトナー像は、各感光体11と中間転写ベルト15とが接触する一次転写部10において、中間転写ベルト15上に転写される。より具体的には、一次転写部10において、一次転写ロール16により中間転写ベルト15の基材に対しトナーの帯電極性(マイナス極性)と逆極性の電圧(一次転写バイアス)が付加され、トナー像を中間転写ベルト15の表面に順次重ね合わせて一次転写が行われる。
【0117】
トナー像が中間転写ベルト15の表面に順次一次転写された後、中間転写ベルト15は移動してトナー像が二次転写部20に搬送される。トナー像が二次転写部20に搬送されると、搬送手段では、トナー像が二次転写部20に搬送されるタイミングに合わせて給紙ロール51が回転し、用紙収容部50から目的とするサイズの用紙Kが供給される。給紙ロール51により供給された用紙Kは、搬送ロール52により搬送され、搬送ガイド53を経て二次転写部20に到達する。この二次転写部20に到達する前に、用紙Kは一旦停止され、トナー像が保持された中間転写ベルト15の移動タイミングに合わせて位置合わせロール(不図示)が回転することで、用紙Kの位置とトナー像の位置との位置合わせがなされる。
【0118】
二次転写部20では、中間転写ベルト15を介して、二次転写ロール22が背面ロール25に加圧される。このとき、タイミングを合わせて搬送された用紙Kは、中間転写ベルト15と二次転写ロール22との間に挟み込まれる。その際に、給電ロール26からトナーの帯電極性(マイナス極性)と同極性の電圧(二次転写バイアス)が印加されると、二次転写ロール22と背面ロール25との間に転写電界が形成される。そして、中間転写ベルト15上に保持された未定着トナー像は、二次転写ロール22と背面ロール25とによって加圧される二次転写部20において、用紙K上に一括して静電転写される。
【0119】
その後、トナー像が静電転写された用紙Kは、二次転写ロール22によって中間転写ベルト15から剥離された状態でそのまま搬送され、二次転写ロール22の用紙搬送方向下流側に設けられた搬送ベルト55へと搬送される。搬送ベルト55は、定着装置60における最適な搬送速度に合わせて、用紙Kを定着装置60まで搬送する。定着装置60に搬送された用紙K上の未定着トナー像は、定着装置60によって熱及び圧力で定着処理を受けることで用紙K上に定着される。そして定着画像が形成された用紙Kは、画像形成装置の排出部に設けられた排紙収容部(不図示)に搬送される。
【0120】
一方、用紙Kへの転写が終了した後、中間転写ベルト15上に残った残留トナーは、中間転写ベルト15の回転に伴ってクリーニング部まで搬送され、クリーニング背面ロール34及び中間転写ベルトクリーナ35によって中間転写ベルト15上から除去される。
【0121】
以上、本実施形態について説明したが、上記実施の形態に限定的に解釈されるものではなく、種々の変形、変更、改良が可能である。
【実施例0122】
以下、実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明する。ただし、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0123】
<実施例1>
(塗布液の準備)
ポリアミック酸溶液(ユニチカ(株)製:TX-HMM(ポリイミドワニス)、固形分濃度:18質量%、溶媒:NMP)と、カーボンナノチューブ(昭和電工(株)製:VGCF(登録商標))と、を用い、ポリアミック酸溶液の固形分を100体積%としたとき、カーボンナノチューブが20体積%となる量で混合し、第1層形成用塗布液を調製した。
ポリアミック酸溶液(ユニチカ(株)製:TX-HMM(ポリイミドワニス)、固形分濃度:18質量%、溶媒:NMP)と、Crにより一部が置換されたVO2(表1中「VO2-Cr」と表記、(株)高純度化学研究所:商品名:Smartec(登録商標) HS 70)と、を用い、ポリアミック酸溶液の固形分を100体積%としたとき、Crにより一部が置換されたVO2が30体積%となる量で混合し、第2層形成用塗布液を調製した。
【0124】
(第2層及び第1層の形成)
アルミニウム製の円筒状基材(φ118cm)の外周面上に、フローコート法にて、第2層形成用塗布液を、乾燥、焼成後の厚みが50μmとなるように塗布して塗膜を形成し、その塗膜を150℃で乾燥させた。
続いて、得られた第2層上に、フローコート法にて、第1層形成用塗布液を、乾燥、焼成後の厚みが30μmとなるように塗布して塗膜を形成し、その塗膜を150℃で乾燥させた。
その後、300℃にて焼成した。
【0125】
(第3層の形成)
膜厚35μmのPFA製チューブ(グンゼ(株)製)を、第1層の上に被せ、200℃で120分間加熱し、フッ素樹脂チューブからなる第3層を形成した。
【0126】
以上の工程を経て、基材上に第2層/第1層/第3層を備える定着ベルトを得た。
【0127】
<実施例2>
円筒状基材の外周面上に、第2層を形成した後、第1層を形成するように層の形成順を変えた以外は、実施例1と同様にして、基材上に第1層/第2層/第3層を備える定着ベルトを得た。
【0128】
<実施例3、4>
ポリアミック酸溶液の固形分を100体積%としたとき、Crにより一部が置換されたVO2が3体積%(実施例3)、6体積%(実施例4)となる量で混合した第2層形成用塗布液を用いた以外は、実施例1と同様にして、基材上に第2層/第1層/第3層を備える定着ベルトを得た。
【0129】
<実施例5>
「Crにより一部が置換されたVO2」を「VO2(二酸化バナジウム、(株)高純度化学研究所)」を変えた以外は、実施例1と同様にして、基材上に第2層/第1層/第3層を備える定着ベルトを得た。
【0130】
<実施例6~9>
第1層の厚みを表1に記載のとおりに変えた以外は、実施例1と同様にして、基材上に第2層/第1層/第3層を備える定着ベルトを得た。
【0131】
<実施例10>
第2層の厚みを表1に記載のとおりに変えた以外は、実施例1と同様にして、基材上に第2層/第1層/第3層を備える定着ベルトを得た。
【0132】
<実施例11>
第3層を設けなかった以外は、実施例1と同様にして、基材上に第2層/第1層を備える定着ベルトを得た。
【0133】
<比較例1>
実施例1において、第2層を形成しなかった以外は、実施例1と同様にして、比較例1の定着ベルトを得た。
即ち、基材上に第1層/第3層を備える定着ベルトを作製した。
【0134】
<比較例2>
実施例1において、第2層及び第1層の代わりに、以下の混合層形成用塗布液を用いて、混合層を形成した以外は、実施例1と同様にして、比較例2の定着ベルトを得た。
即ち、ポリアミック酸溶液(ユニチカ(株)製:TX-HMM(ポリイミドワニス)、固形分濃度:18質量%、溶媒:NMP)と、カーボンナノチューブ(昭和電工(株)製:VGCF(登録商標))と、を用い、ポリアミック酸溶液の固形分を100体積%としたとき、カーボンナノチューブが10体積%、Crにより一部が置換されたVO2((株)高純度化学研究所:商品名:Smartec(登録商標) HS 70)が20体積%となる量で混合し、混合層形成用塗布液を得た。
これにより、基材上に混合層/第3層を備える定着ベルトを作製した。
【0135】
<熱伝導率の測定>
各例で得られた定着ベルトの第1層の熱伝導率について、既述の方法に従って測定した。
【0136】
<潜熱量の測定>
各例で得られた定着ベルトの第2層の潜熱量について、既述の方法に従って測定した。
【0137】
<消費電力の評価>
各例で得られた定着ベルトを、画像形成装置(富士フイルムビジネスイノベーション(株)製:Versant 3100 Press)の定着装置に装着した。この定着装置は、定着ベルトの内部に熱源がある態様である。この画像形成装置を用い、国際エネルギースタープログラム測定方法のTEC基準に基づき、消費電力[Wh/週]を算出した。
結果を表1に示す。
【0138】
【0139】
上記結果から、本実施例の定着ベルトを用いた定着装置は、比較例の定着ベルトを用いた定着装置に比べ、消費電力が低いことが分かる。
【0140】
以下に、本発明の好ましい態様について付記する。
(((1))) 熱伝導率が1.0W/m・K以上の第1層と、
樹脂、及び、電子相転移により熱の授受が発生する固体材料の粒子を含む第2層と、
を有する、定着部材用管状体。
(((2))) 前記粒子がVO2を含む、(((1)))に記載の定着部材用管状体。
(((3))) 前記粒子が、Cr、W、Ta、Nb、Mo、Ti、Al、Fe、Mn、Cu、Ge、Zr、Ru、及びSnからなる群より選択される1種の金属により一部が置換されたVO2である、(((1)))又は(((2)))に記載の定着部材用管状体。
(((4))) 前記第2層の潜熱量が0.5kJ/m2以上である、(((1)))~(((3)))のいずれか1つに記載の定着部材用管状体。
(((5))) 前記第2層の潜熱量が1kJ/m2以上である、(((1)))~(((4)))のいずれ1つに記載の定着部材用管状体。
(((6))) 前記粒子が、Cr、W、Ta、Nb、Mo、Ti、Al、Fe、Mn、Cu、Ge、Zr、Ru、及びSnからなる群より選択される1種の金属により一部が置換されたVO2であり、
前記第2層の潜熱量が0.5kJ/m2以上である、(((1)))~(((5)))のいずれか1つに記載の定着部材用管状体。
(((7))) 前記粒子が、Cr、W、Ta、Nb、Mo、Ti、Al、Fe、Mn、Cu、Ge、Zr、Ru、及びSnからなる群より選択される1種の金属により一部が置換されたVO2であり、
前記第2層の潜熱量が1kJ/m2以上である、(((1)))~(((6)))のいずれか1つに記載の定着部材用管状体。
(((8))) 前記第2層の厚みに対し、第1層の厚みが0.1倍以上6倍以下である、(((1)))~(((7)))のいずれか1つに記載の定着部材用管状体。
(((9))) 更に第3層を有し、
前記第2層、前記第1層、及び前記第3層をこの順に有する、(((1)))~(((8)))のいずれか1つに記載の定着部材用管状体。
【0141】
(((10))) 第1回転体と、前記第1回転体の外面に接触して配置される第2回転体と、を備え、
前記第1回転体及び前記第2回転体の少なくとも一方が(((1)))~(((9)))のいずれか1つに記載の定着部材用管状体であり、
トナー像が表面に形成された記録媒体を前記第1回転体と前記第2回転体との接触部に挿通して前記トナー像を定着する定着装置。
(((11))) 像保持体と、
前記像保持体の表面を帯電する帯電手段と、
帯電した前記像保持体の表面に静電潜像を形成する静電潜像形成手段と、
トナーを含む現像剤により、前記像保持体の表面に形成された静電潜像を現像してトナー像を形成する現像手段と、
前記トナー像を記録媒体の表面に転写する転写手段と、
前記トナー像を前記記録媒体に定着する、(((10)))に記載の定着装置から構成される定着手段と、
を備える画像形成装置。
【0142】
(((1)))、(((2)))、又は(((4)))に係る発明によれば、熱伝導率が1.0W/m・K以上の層を有し、電子相転移により熱の授受が発生する固体材料の粒子を含む層を有しない場合、又は、熱伝導率が1.0W/m・K以上で且つ電子相転移により熱の授受が発生する固体材料の粒子を含む層を有する場合に比べ、定着装置の消費電力を低減しうる定着部材用管状体が提供される。
(((3)))又は(((6)))に係る発明によれば、他の金属により一部が置換されていないVO2を用いる場合に比べ、定着装置の消費電力を低減しうる定着部材用管状体が提供される。
(((5)))又は(((7)))に係る発明によれば、第2層の潜熱量が1kJ/m2未満である場合に比べ、定着装置の消費電力を低減しうる定着部材用管状体が提供される。
(((8)))に係る発明によれば、第2層の厚みに対し、第1層の厚みが0.1倍未満又は6倍超である場合に比べ、定着装置の消費電力を低減しうる定着部材用管状体が提供される。
(((9)))に係る発明によれば、更に第3層を有し、第1層、第2層、及び第3層をこの順に有する場合に比べ、定着装置の消費電力を低減しうる定着部材用管状体が提供される。
【0143】
(((10)))又は(((11)))に係る発明によれば、熱伝導率が1.0W/m・K以上の層を有し、電子相転移により熱の授受が発生する固体材料の粒子を含む層を有しない場合、又は、熱伝導率が1.0W/m・K以上で且つ電子相転移により熱の授受が発生する固体材料の粒子を含む層を有する定着部材用管状体を備える場合に比べ、消費電力を低減しうる定着装置又は画像形成装置が提供される。