(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024000031
(43)【公開日】2024-01-05
(54)【発明の名称】覆工板の締結機構及び覆工板
(51)【国際特許分類】
E01C 9/08 20060101AFI20231225BHJP
【FI】
E01C9/08 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022098546
(22)【出願日】2022-06-20
(71)【出願人】
【識別番号】593139374
【氏名又は名称】株式会社エムオーテック
(74)【代理人】
【識別番号】100110722
【弁理士】
【氏名又は名称】齊藤 誠一
(74)【代理人】
【識別番号】100213540
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 恵庭
(72)【発明者】
【氏名】沢里 真吾
【テーマコード(参考)】
2D051
【Fターム(参考)】
2D051AF11
2D051AH05
2D051DA12
2D051DB16
(57)【要約】
【課題】 桁材のサイズが異なる場合でも、取付孔や吊り孔の位置を変更する必要がなく、電動巻締装置を使用してボルトの締着が可能な覆工板の締結機構及び覆工板を提供する。
【解決手段】 覆工板の締結機構は、パイプ部材20と、先端がパイプ部材20の内側に突出するようにして取り付けられた案内部材40と、下端にナット14が取り付けられた円筒状の本体部12及び覆工板60を桁材70に掛止するために必要な長さの掛止部11を備えた締結金具10と、本体部12内を上方から貫通するようにしてナット14と螺合する締結金具10とを備え、本体部12の側面に案内部材40の先端が位置するようにして形成された案内溝13、13’が設けられ、締結ボルト30を締め込んだ際に掛止部11が桁材70と干渉しない位置から桁材70を掛止可能な位置へ移動するようにされたことを特徴とし、覆工板は締結機構1,1’を備えている。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
覆工板を桁材に固定するための覆工板の締結機構において、
前記覆工板の下面を貫通するようにして取り付けられたパイプ部材と、
先端が前記パイプ部材の内側の空間部に突出するようにして当該パイプ部材の側面に取り付けられた案内部材と、
前記パイプ部材の内側に軸方向に挿入される円筒状の本体部を備えると共に、前記本体部の下端部に配置されたナットの上部側には前記覆工板を前記桁材に掛止するために必要な長さの掛止部を備えた締結金具と、
前記パイプ部材の内側に配置された前記締結金具の前記本体部内を上方から貫通するようにして前記ナットと螺合する締結ボルトと、
を備え、
前記締結金具の前記本体部の側面には前記締結ボルトを締め込んだ際に、前記掛止部を前記桁材と干渉しない位置から前記桁材を掛止可能な位置へ移動させるために前記案内部材の先端が位置するようにして形成された案内溝が設けられ、前記締結ボルトを締め込んだ際に前記本体部の回転が前記案内溝を相対的に移動する前記案内部材によって制御され、前記掛止部が前記桁材と干渉しない位置から前記桁材を掛止可能な位置へ移動するようにされたことを特徴とする覆工板の締結機構。
【請求項2】
請求項1に記載の覆工板の締結機構において、
前記案内溝は、前記本体が略90°回転するように形成されていることを特徴とする覆工板の締結機構。
【請求項3】
請求項1に記載の覆工板の締結機構において、
前記パイプ部材は、前記覆工板への取り付けが補強リブによって補強されていることを特徴とする覆工板の締結機構。
【請求項4】
請求項1に記載の覆工板の締結機構において、
前記案内溝は、前記締結ボルトを締め込んだ際に、締め込み方向と同じ方向に回転するように形成、又は、前記締結ボルトを締め込んだ際に、締め込み方向と反対方向に回転するように形成されていることを特徴とする覆工板の締結機構。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか1項に記載の覆工板の締結機構を備えた覆工板において、
前記覆工板の締結機構が当該覆工板の四隅の近傍にそれぞれ配置され、
各前記締結部材の前記掛止部は前記桁材と平行となるようにして先端が前記覆工板の内側へ向かって配置されると共に、各前記締結部材の前記案内溝は当該本体部が略90°回転したときに前記掛止部が前記桁材を掛止する位置に移動するような形状に形成されていることを特徴とする覆工板。
【請求項6】
請求項5に記載の覆工板において、
前記覆工板の底面には、当該覆工板を積層した際に前記覆工板の締結機構を保護するために当該覆工板の締結機構の下端位置よりも下側に位置するような長さを有する保護部材を備えていることを特徴とする覆工板。
【請求項7】
請求項6に記載の覆工板において、
前記保護部材は、平面視が略L字状に形成され、一辺が当該覆工板の側面と平行となるように、且つ、前記掛止部の回転を妨げることがないように当該覆工板の締結機構の近傍に配置されていることを特徴とする覆工板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、覆工板の締結機構及び覆工板に関するものである。
【背景技術】
【0002】
地下鉄工事、下水道工事等、路面下を掘削する場合や地下構造物の構築など、地下に構造物を設ける場合に、交通路を確保するための仮設路面板として地表部分には覆工板が敷設される。覆工板の敷設は地表に設けられた開削部に例えば、H鋼からなる桁材を架設し、桁材の上に覆工板を配置し、覆工板に設けられた締結機構で覆工板を桁材に固定することにより敷設される。
【0003】
従来の覆工板の締結機構として、例えば、
図7に示すものがある。
図7は従来の覆工板の締結機構の一例を示す側面図である。従来の覆工板の締結機構100は、H鋼からなる桁材70のフランジ部71に掛止される略L字状の締結金具101を備えており、締結金具101には図における下から上に向かって覆工板60の下面61を貫通するようにして締結ボルト103が取り付けられており、締結ボルト103のネジ部106にはナット105が取り付けられている。そして、締結金具101と覆工板60の下面61との間にはナット107が配置されている。
【0004】
覆工板60の上面(図示せず)にはナット105を締着するための専用のハンドル(図示せず)の先端110が挿入可能な吊り孔(図示せず)が穿設されており、この吊り孔からハンドルの先端110を挿入し、ハンドルを回すことでナット105を回転させて締結ボルト103を締め付け、締結金具101を桁材70のフランジ部71に掛止固定する。尚、取り付け前の締結金具101は桁材70と平行となるような方向に位置しており、ナット105を回すことで締結金具101は90°回転し、先端が桁材71の下方側へ移動し、さらにナット105を締めることで締結金具101が桁材71へしっかりと掛止されるようになっている。
【0005】
覆工板の締結機構としては、
図7に示すもの以外にも種々のものが提供されており、例えば、特許文献1~3に示すようなものもある。特許文献1~3ではいずれもスプリングが使用されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第6703178号公報
【特許文献2】特許第5629396号公報
【特許文献3】特許第3382412号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
図7に示した従来の覆工板の締結機構は、桁材のサイズ、特にフランジ部の長さによってその取り付け位置が異なっており、覆工板の下面にボルトを取り付けるための取付孔やハンドルの先端を挿通するための吊り孔の位置を使用される桁材に応じて開け直す必要があった。また、専用のハンドルによる手締めによるものであったため締結力が弱く、緩みが生じる恐れがあり、万一、ボルトが緩んだ場合には締結金具が落下する可能性もある。また、手作業による締結作業であったため作業時間が長くかかっていた。
【0008】
そこで、桁材のサイズが異なる場合でも、取付孔や吊り孔の位置を変更する必要がなく、また、インパクトドライバのような電動巻締装置を使用してボルトの締着が可能な覆工板の締結機構及び覆工板を提供することを目的とする。また、締結機構は覆工板の四隅の近傍にそれぞれ取り付けられるが、電動巻締装置によってナットの巻き締める方向が同じであっても締結金具の回転方向を異なる方向とすることが可能な覆工板の締結機構及び覆工板を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために請求項1に記載の本発明は、覆工板を桁材に固定するための覆工板の締結機構において、前記覆工板の下面を貫通するようにして取り付けられたパイプ部材と、先端が前記パイプ部材の内側の空間部に突出するようにして当該パイプ部材の側面に取り付けられた案内部材と、前記パイプ部材の内側に軸方向に挿入される円筒状の本体部を備えると共に、前記本体部の下端部に配置されたナットの上部側には前記覆工板を前記桁材に掛止するために必要な長さの掛止部を備えた締結金具と、前記パイプ部材の内側に配置された前記締結金具の前記本体部内を上方から貫通するようにして前記ナットと螺合する締結ボルトとを備え、前記締結金具の前記本体部の側面には前記締結ボルトを締め込んだ際に、前記掛止部を前記桁材と干渉しない位置から前記桁材を掛止可能な位置へ移動させるために前記案内部材の先端が位置するようにして形成された案内溝が設けられ、前記締結ボルトを締め込んだ際に前記本体部の回転が前記案内溝を相対的に移動する前記案内部材によって制御され、前記掛止部が前記桁材と干渉しない位置から前記桁材を掛止可能な位置へ移動するようにされたことを特徴とする。
【0010】
上記課題を解決するために請求項2に記載の本発明は、請求項1に記載の覆工板の締結機構において、前記案内溝は、前記本体が略90°回転するように形成されていることを特徴とする。
【0011】
上記課題を解決するために請求項3に記載の本発明は、請求項1に記載の覆工板の締結機構において、前記パイプ部材は、前記覆工板への取り付けが補強リブによって補強されていることを特徴とする。
【0012】
上記課題を解決するために請求項4に記載の本発明は、請求項1に記載の覆工板の締結機構において、前記案内溝は、前記締結ボルトを締め込んだ際に、締め込み方向と同じ方向に回転するように形成、又は、前記締結ボルトを締め込んだ際に、締め込み方向と反対方向に回転するように形成されていることを特徴とする。
【0013】
上記課題を解決するために請求項5に記載の本発明は、請求項1から4のいずれか1項に記載の覆工板の締結機構を備えた覆工板において、前記覆工板の締結機構が当該覆工板の四隅の近傍にそれぞれ配置され、各前記締結部材の前記掛止部は前記桁材と平行となるようにして先端が前記覆工板の内側へ向かって配置されると共に、各前記締結部材の前記案内溝は当該本体部が略90°回転したときに前記掛止部が前記桁材を掛止する位置に移動するような形状に形成されていることを特徴とする。
【0014】
上記課題を解決するために請求項6に記載の本発明は、請求項5に記載の覆工板において、前記覆工板の底面には、当該覆工板を積層した際に前記覆工板の締結機構を保護するために当該覆工板の締結機構の下端位置よりも下側に位置するような長さを有する保護部材を備えていることを特徴とする。
【0015】
上記課題を解決するために請求項7に記載の本発明は、請求項6に記載の覆工板において、前記保護部材は、平面視が略L字状に形成され、一辺が当該覆工板の側面と平行となるように、且つ、前記掛止部の回転を妨げることがないように当該覆工板の締結機構の近傍に配置されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明に係る覆工板の締結機構及び覆工板によれば、締結金具の本体に案内溝を設けたので掛止部を桁材と干渉しない位置から桁材を掛止可能な位置への移動を確実に実行させることができるという効果がある。また、スプリングを使用していないので確実に動作させることができる。また、締結機構を覆工板へ取り付ける位置によって案内溝の形状を異ならせたので電動巻締装置による巻き締め方向が同じであっても締結金具の回転方向を異なる方向に回転させることができ、作業時間も大幅に短縮できるという効果がある。また、掛止部は桁材に掛止するために必要な長さ及び強度を備えているので、桁材のサイズが異なっている場合でも取付孔や吊り孔の位置を変更する必要がないという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】
図1は本発明に係る覆工板の締結機構を備えた覆工板の一実施形態の平面図である。
【
図2】
図2は本発明に係る覆工板の締結機構の正面説明図である。
【
図3】
図3は本発明に係る覆工板の締結機構の側面説明図である。
【
図4】
図4(a)は締結金具の側面図、同(b)は他の締結金具の側面図、(c)は締結金具の本体の展開図、同(d)は他の締結金具の本体の展開図である。
【
図6】
図6(A)は覆工板設置時の締結金具の正面図、同(A’)は覆工板設置時の締結金具の側面図、同(B)は締結金具の回転時の正面図、同(B’)は締結金具の回転時の側面図、同(C)は締め付け完了時の締結金具の正面図、同(B’)は締め付け完了時の締結金具の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明に係る覆工板の締結機構及び覆工板について好ましい一実施形態に基づいて以下詳細に説明する。初めに、覆工板の締結機構について図面を参照しつつ説明する。
【0019】
[覆工板の締結機構]
図2、3に示すように、覆工板の締結機構(以下、「締結機構」という。)1は、概略として、締結金具10と、パイプ部材20と、締結ボルト30を備えて構成されている。そして、締結機構1は、
図1に示すように、略矩形状に形成された覆工板60の四隅の近傍にそれぞれ配置される。尚、
図1では、配置場所に応じて締結金具10の回転方向が異なる2種類の締結機構、具体的には、締結金具10の回転方向が時計回りの締結機構1と、締結金具10の回転方向が反時計回りの締結機構1’が取り付けられているが、その詳細は後述する。
【0020】
パイプ部材20は、中空状の円筒状部材であり、覆工板60の4つの角部の近傍に覆工板60の下面61に設けられた取付孔66を貫通するようにして取り付けられている。覆工板60の下面61の上部側に位置するパイプ部材20の側面には側面視が略三角形状の補強リブ25によって補強されている。補強リブ25はその底辺(隣辺)を覆工板60の下面61に、対辺をパイプ部材20の側面に接するようにして固定されている。尚、補強リブ25の形状はこれに限るものではなく、また複数個を取り付けることもできる。
【0021】
また、覆工板60の下面61の下部側に位置するパイプ部材20の側面には案内部材40が配置されている。案内部材40は、パイプ部材20の軸方向と直交する方向に、その先端部がパイプ部材20の内部の空間部に突出するようにして取り付けられている。案内部材40の先端部は後述する締結金具10の本体部12に設けられた案内溝13、13’内に位置するようにして配置される。
【0022】
締結金具10は、円筒状の本体部12と、本体部12の軸方向と直交する方向に延伸する掛止部11を備えており、本体部12はパイプ部材20の内部に挿入した状態で配置される。そして、本体部12の表面には所定の形状に形成された案内溝13が設けられている。また、本体部12の下端側には本体部12の内部を貫通するようにして取り付けられる締結ボルト30と螺合するナット14が取り付けられている。このナット14の上方に掛止部11がその底部を接するようにして配置されている。
【0023】
掛止部11は、本体部12の軸方向と直交する方向に延伸するようにして本体部12に取り付けられており、表面側は基端側と先端側とで同じ高さ位置で延伸されているが、底面側は先端側に行くほど厚みが薄くなるように上方に向かって傾斜するような形状とされている。掛止部11の形状は図示されたものに限定されることはなく、直方体形状など適宜の形状を採用することができる。ここで、桁材70は、そのサイズによってフランジ部71の長さ及び厚さが異なっている。そのため、覆工板60へ締結機構1、1’を配置する位置もフランジ部71の長さが最長の場合でも干渉することのない位置に配置されると共に、フランジ部71の長さが最短の場合でも掛止部11がフランジ部71を掛止可能となるような長さに設定されている。尚、桁材70のフランジ部71の長さ及び厚さは、具体的には、長いものではその中心から約200mmで厚みは約28mmであり、短いものではその中心から約150mmで厚みは約15mmであるが、これは一例であり、これに限定されるものではない。また、掛止部11は覆工板60を確実に桁材70に固定するための強度を有していることが必要であることはいうまでもない。
【0024】
本体部12は、その側面に案内溝13が形成されている。案内溝13は、下端側が掛止部11の基端側のやや上方から軸方向(上方側)に直進し、途中で傾斜するようにして本体部12の表面を1/4回転する方向に移動した後、再び軸方向(上方側)へ直進するようにして形成されている。尚、案内溝13は、上述したように、案内部材40の先端が挿入されるようにして配置され、締結ボルト30を締め込むことによって締結金具10の本体部12を所定方向に回転させる。このように、本体部12に案内溝13を設けて案内部材40によって上下方向の移動及び回転を制御することとしたので、締結ボルト30の締め込みによる締結金具10の供回りを防止することができる。尚、上述したように、使用する桁材70によってフランジ部71の厚みが、例えば15~28mmと、異なるので、いずれの場合でも掛止部11をフランジ部71側に移動することができるように案内溝13、13’の形状が決定される。
【0025】
ここで、案内溝13は、
図1、2及び
図4(a)(c)に示すものの他、これとは反対方向に1/4回転した
図4(b)(d)に示す案内溝13’の二種類がある。これは、後述するように、締結ボルト30を締め込んだ際に締結金具10及び掛止部11の回転方向を時計回りと反時計回りとするためである。具体的には、
図4(a)(c)に示す案内溝13は時計回りであり、
図4(b)(d)に示す案内溝13’は反時計回りとなる。このように二種類の案内溝13、13’を用意したのは覆工板60への取り付け位置によって締結金具10及び掛止部11の回転方向を変えるためであり、締結金具10の掛止部11を約90°回転可能としたのは、掛止部11を桁材70と干渉しない位置に配置した状態で覆工板60を桁材70に敷設してから、締結金具10の掛止部11を、桁材70を掛止可能な位置へ移動させるためである。尚、二種類の締結機構1,1’は基本的に案内溝13、13’の形状が相対的に対照になっている点が相違するだけなので、必要な説明は時計回りの締結金具10に基づいて行う。
【0026】
締結金具10の本体部12の下端に配置されたナット14の下方にはさらに座金16を挟んでナット15が配置されている。ナット15は、いわゆる段付きナットであり、段付きナットには割ピン17を挿通するための凹部15aが設けられている(
図2参照)。
【0027】
締結ボルト30は、パイプ部材20の内側に配置された締結金具10の本体部12の内部を上方側から下方側に貫通するようにして挿入され、ナット14、15に螺合した状態で先端がナット15から僅かに突出した状態で配置される。締結ボルト30の先端側には軸方向と直交する方向に穿設された貫通孔35が設けられており、ナット15の凹部15aを介して締結ボルト30の貫通孔35に割ピン17を挿通することでナット15と締結ボルト30とが一体となるようにされている。これにより、締結金具10の落下防止を図ると共に、締結ボルト30を締め込むことにより締結ボルト30の先端がナット15から進出することなく、締結金具10を上方に向かって移動させることができる。特に、落下防止機構は作業時に締結金具10の状態を目視で確認することが困難であるため大変有用である。尚、パイプ部材20の上端部には座金50が配置されており、締結ボルト30の頭部とパイプ部材20の上端部との間に座金50が介在するようになっている。また、パイプ部材20が配置された覆工板60の上面には電動巻締装置を挿入して締結ボルト30を締め込むための吊り孔63が穿設されている。
【0028】
[締結機構を備えた覆工板]
上述した締結機構1、1’は、
図1に示すように、覆工板60の四つの角部の近傍に配置されるが、時計回り又は反時計回りの締結機構1,1’は以下のようにして配置されている。すなわち、桁材70への敷設前にあっては、締結機構1、1’の各掛止部11、11は、その先端が覆工板60の内側を向く位置であって、桁材70と平行となるようにして位置し、掛止部11、11を桁材70のフランジ部71に掛止する際には約90°回転することによって掛止部11、11の先端が桁材70のフランジ部71を掛止可能となるように位置する締結機構1,1’が配置されている。このように締結機構1,1’配置することで、最小の回転角度で掛止部11、11を移動できるからである。
【0029】
また、覆工板60の下面61の下方側には、締結機構1,1’の下端位置よりもさらに下側に位置するような長さを有する保護部材65が取り付けられている。保護部材65は、複数の覆工板60を積層した際に締結機構1,1’が下方側の覆工板60に衝突するのを防止して締結機構1,1’を保護するために設けられている。保護部材65は、平面視が略L字状に形成され、一辺が覆工板60の側面と平行となるように、且つ、掛止部11の90°回転を妨げることがないようにして配置されている。尚、符号67は、覆工板60の敷設後に覆工板60のズレを防止するためのストッパである。
【0030】
[締結機構の動作]
上述した締結機構1(時計回り)について、
図6を参照しつつ、その動作を説明する。締結機構1’(反時計回り)も掛止部11及び本体部12の回転方向が異なるだけで動作は基本的に同じであるため、締結機構1について説明する。
【0031】
締結機構1、1’を備えた覆工板60は、予め設置された桁材70の上に互いに隣接するようにして配置される。その際、掛止部11は、桁材70のフランジ部71と干渉しないように、フランジ部71と平行となる位置に位置している(
図6(A)(A’))。
【0032】
そして、吊り孔63から図示しない電動巻締装置を挿入し、締結ボルト30を締め込むと、締結金具10の本体部12が上方へ移動を開始する。その際、パイプ部材20に取り付けられた案内部材40が本体部12に形成された案内溝13内に介在していることによって、案内部材40は移動することなく相対的に案内溝13内を案内されるため本体部12が回転する。案内溝13の上端と下端は本体部12の表面を約1/4回転した位置に配置されているので、本体部12は時計回りに約90°回転することとなり、その結果、掛止部11の先端側が桁材70のフランジ部71方向に移動する(
図6(B)(B’))。締結ボルト30の締め込んだ際の反力は締結金具10の本体部12とパイプ部材20が重なる部分(ラップ部)及び補強リブ25によって処理される。これにより、桁材70」のフランジ部71の厚みの違いにも的確に対応することができる。
【0033】
そして、さらに締結ボルト30を締め込むことによって締結金具10は上方に移動して掛止部11が桁材70のフランジ部71に当接し、しっかりと固定される。同様にして、他の締結機構1,1’もそれぞれ桁材70に固定する。
【0034】
以上のように、本発明に係る覆工板の締結機構及び覆工板の実施形態によれば、掛止部11を桁材70と干渉しない位置から桁材70を掛止可能な位置への移動を確実に実行させることができるという効果がある。また、締結機構1,1’を覆工板60へ取り付ける位置によって案内溝13、13’の形状を異ならせたので巻き締め方向が同じであっても締結金具10の回転方向(
図1中の矢印参照)を互いに異なる方向とすることができることから、2種類の締結機構1,1’の双方に共通の電動巻締装置を用いることが可能となり、装置を持ち替える必要がないので、作業時間も大幅に短縮することができるという効果がある。また、掛止部11は桁材70に掛止するために必要な長さを備えているので、桁材70のフランジ部71までの長さが異なる場合でも取付孔66や吊り孔63の位置を変更する必要がない。
【0035】
[その他]
以上のように、本発明の好ましい実施形態について詳述したが、本発明は上述した特定の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能であることはいうまでもない。
【符号の説明】
【0036】
1、1’ 締結機構
10 締結金具
11 掛止部
12 本体部
13、13’ 案内溝
14 ナット
15 ナット
16 座金
17 割ピン
20 パイプ部材
30 締結ボルト
35 貫通孔
40 案内部材
50 座金
60 覆工板
61 下面
63 吊り孔
65 保護部材
66 取付孔
67 ストッパ