(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024031002
(43)【公開日】2024-03-07
(54)【発明の名称】開封構造及びこれを用いた包装容器
(51)【国際特許分類】
B65D 75/60 20060101AFI20240229BHJP
【FI】
B65D75/60
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022134275
(22)【出願日】2022-08-25
(71)【出願人】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】TOPPANホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001276
【氏名又は名称】弁理士法人小笠原特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】安居 彰治
(72)【発明者】
【氏名】和田 潔
【テーマコード(参考)】
3E067
【Fターム(参考)】
3E067AA03
3E067AC01
3E067BA03A
3E067BA06A
3E067BA12A
3E067BA14A
3E067BB14A
3E067CA07
3E067EB02
3E067EB07
3E067EB12
3E067EE59
3E067FB07
3E067FC01
(57)【要約】
【課題】支柱の捻り方向に力が加えられた場合でも、支柱が破断せず、弱化線を引き裂くことができる開封構造及びこれを用いた包装容器を提供する。
【解決手段】包装容器に開口を形成可能な開封構造であって、環状の第1の弱化線と、第1の弱化線の内側に形成される線状の第2の弱化線と、第1の弱化線との間に所定の間隔を空けて形成され、一方端が第2の弱化線に接続され、他方端が第1の弱化線に接続される線状の第3の弱化線とが設けられた平板部と、平板部における第2の弱化線と第3の弱化線とに挟まれた部分に一方端が接続される支柱と、支柱の他方端に接続されるプルリングと、プルリングの内側に支柱に隣接して設けられ、平板部のうち、第2の弱化線と第3の弱化線とに挟まれた部分に接続される立壁とを備える、開封構造。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
包装容器に開口を形成可能な開封構造であって、
環状の第1の弱化線と、前記第1の弱化線の内側に形成される線状の第2の弱化線と、前記第1の弱化線との間に所定の間隔を空けて形成され、一方端が前記第2の弱化線に接続され、他方端が前記第1の弱化線に接続される線状の第3の弱化線とが設けられた平板部と、
前記平板部における前記第2の弱化線と前記第3の弱化線とに挟まれた部分に一方端が接続される支柱と、
前記支柱の他方端に接続されるプルリングと、
前記プルリングの内側に前記支柱に隣接して設けられ、前記平板部のうち、前記第2の弱化線と前記第3の弱化線とに挟まれた部分に接続される立壁とを備える、開封構造。
【請求項2】
前記立壁が、前記第2の弱化線及び前記第3の弱化線に近づくにつれて厚みが減少する断面形状を有する、請求項1に記載の開封構造。
【請求項3】
前記立壁の上端が前記プルリングの上端よりも前記平板部側に位置する、請求項1に記載の開封構造。
【請求項4】
容器本体と、
請求項1~3のいずれかに記載の開封構造とを備える、包装容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、平板部の一部を分離除去することによって包装容器に開口を形成可能な開封構造及びこれを用いた包装容器に関する。
【背景技術】
【0002】
紙容器やボトル容器等に設けられる口栓として、注出口の内部を閉鎖する隔壁と、隔壁に接続されるプルリングとを備えたものが広く利用されている。例えば、特許文献1には、容器口部を覆う頂板部に、円形の開口ラインと、開口ラインに接続された引裂き誘導ラインとを有する開口形成用スコアを設け、開口ラインの内側に支柱を介してプルリングを接続した構成の開口形成用スコア付きプラスチックキャップが記載されている。特許文献1に記載のプラスチックキャップの開封時には、プルリングを指で引っ張ることによって最初に引裂き誘導ラインが引き裂かれ、引裂き誘導ラインに続いて開口ラインが引き裂かれることにより、頂板部に円形の開口が形成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載されるような、支柱を廻り込むように引き裂き用の弱化線を設けた開封構造においては、2本の弱化線の間に支柱が接続されるため、支柱の幅を大きく取ることが難しい。支柱の幅が小さい場合、支柱の捻り方向の強度が不足する。そのため、支柱を捻る方向にプルリングに力が加えられた場合、加えられた力を弱化線に伝達できず弱化線の引裂きができなかったり、支柱が捻り切れたりするという問題がある。また、支柱の付け根部分の厚みを幅方向の全体にわたって厚くすることも考えられるが、厚肉部を設けた場合、射出成形時の冷却時間が長くなり、引けや空隙が発生しやすくなるというデメリットがある。
【0005】
それ故に、本発明は、支柱の捻り方向に力が加えられた場合でも、支柱が破断せず、弱化線を引き裂くことができる開封構造及びこれを用いた包装容器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る開封構造は、包装容器に開口を形成可能なものであり、環状の第1の弱化線と、第1の弱化線の内側に形成される線状の第2の弱化線と、第1の弱化線との間に所定の間隔を空けて形成され、一方端が第2の弱化線に接続され、他方端が第1の弱化線に接続される線状の第3の弱化線とが設けられた平板部と、平板部における第2の弱化線と第3の弱化線とに挟まれた部分に一方端が接続される支柱と、支柱の他方端に接続されるプルリングと、プルリングの内側に支柱に隣接して設けられ、平板部のうち、第2の弱化線と第3の弱化線とに挟まれた部分に接続される立壁とを備える。
【0007】
本発明に係る包装容器は、容器本体と、上記の開封構造とを備える。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、支柱の捻り方向に力が加えられた場合でも、支柱が破断せず、弱化線を引き裂くことができる開封構造及びこれを用いた包装容器を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【発明を実施するための形態】
【0010】
図1は、実施形態に係る開封構造を示す平面図であり、
図2は、
図1に示す開封構造の断面図であり、
図3は、
図1に示した開封構造の周壁部内の拡大図であり、
図4は、
図2に示したプルリング部分の拡大図である。尚、
図2に示す断面は、
図1に示すII-IIラインから見た断面に相当する。
【0011】
開封構造10は、容器本体に取り付けられ、容器本体に収容された内容物を取り出すための開口を形成することができる部材である。開封構造10は、平板部1と、支柱2と、プルリング3と、立壁4とを備え、熱可塑性樹脂の射出成形により形成することができる。容器本体の形態は特に限定されないが、例えば、パウチを挙げることができる。
【0012】
平板部1には、第1の弱化線11と、第2の弱化線12と、第3の弱化線13とが形成される。尚、
図1において、第1の弱化線11及び第3の弱化線13の接続点と、第2の弱化線12及び第3の弱化線13の接続点とを黒丸で示す。尚、以下の説明において、第1の弱化線11、第2の弱化線12及び第3の弱化線13のいずれかを、または、総称して、単に「弱化線」ともいう。
【0013】
第1の弱化線11は、平板部1の外面に設けられた筒状の周壁部6の内周に沿って環状に形成されており、開封時に平板部1から分離除去される円形の領域を区画する。第2の弱化線12は、第1の弱化線11の内側に設けられ、プルリング3の外側の一点から、支柱2と第1の弱化線11との間の部分まで線状に伸びるように形成されている。第3の弱化線13は、支柱2と第1の弱化線11との間の部分において第2の弱化線12に接続され、第2の弱化線12との間に所定の間隔を空けて線状に伸び、第1の弱化線11に接続される。本実施形態では、第2の弱化線12及び第3の弱化線13は、第1の弱化線11の内側の一点から支柱2を廻り込んで時計回り方向に旋回し、第1の弱化線11に接続される渦巻き状に形成されている。ただし、第2の弱化線12及び第3の弱化線13は、反時計回り方向に旋回する渦巻き状に形成されていても良い。また、本実施形態では、第2の弱化線12と第3の弱化線13との間に、支柱2から離れるにつれて間隔が広がる部分が設けられている。
【0014】
第1の弱化線11、第2の弱化線12及び第3の弱化線13は、他の部分より相対的に薄くしたハーフカット等の薄肉部として形成することができる。本実施形態では、
図2に示すように、平板部1の外面に溝を設けることによって第1の弱化線11、第2の弱化線12及び第3の弱化線13が形成されているが、平板部1の内面に溝を設けることによって第1の弱化線11、第2の弱化線12及び第3の弱化線13を形成しても良い。また、平板部1の外面及び内面の両方に、平面視において重なる溝を設けることによって第1の弱化線11、第2の弱化線12及び第3の弱化線13を形成しても良い。
【0015】
平板部1の外面には、開封時におけるプルリングの引っ張り方向を示す矢印の表示が設けられている。
【0016】
支柱2は、第2の弱化線12と第3の弱化線13とに挟まれた部分に下端が接続されている。支柱2の下端は、第2の弱化線12及び第3の弱化線13の接続点近傍に接続されており、プルリング3を引っ張る力を第2の弱化線12及び第3の弱化線13の接続点近傍に集中させ、引き裂きの開始をしやすくしている。
【0017】
プルリング3は、支柱2の上端に接続されている。プルリング3の形状は特に限定されないが、プルリング3の内周面を円柱面とし、プルリング3の支柱2側部分の内周面の高さが、プルリング3の正面側部分(支柱2と対向する部分)の内周面の高さより高くなるように構成されていることが好ましい(
図4(a)参照)。このように構成した場合、プルリング3に指を掛けやすくなるため、プルリング3の引っ張り時に強い力を加えることができ、プルリング3の引っ張りによる弱化線の引き裂きをしやすくすることができる。
【0018】
立壁4は、プルリング3の内側において支柱2に隣接するように設けられており、平板部1のうち、第2の弱化線12と前記第3の弱化線13とに挟まれた部分に接続されている。立壁4は、第2の弱化線12及び第3の弱化線に近づくにつれて厚みが減少する断面形状を有するブレード状であることが好ましい。また、立壁4の上端は、プルリング3の上端より平板部1側に位置していることが好ましい。立壁4の上端は、丸められていることが好ましい。
【0019】
【0020】
立壁4の断面形状は特に限定されないが、例えば、
図5(a)に示す台形状や、
図5(b)に示す楕円形状、
図5(c)に示すエッジ形状(六角形状)としても良い。
【0021】
再度、
図1~
図4を参照して、平板部1の外面には更に、周壁部6を取り囲む外壁部7が設けられている。外壁部7には、ヒンジ8を介して開閉可能な蓋9が設けられている。蓋9の内面には、閉鎖時に周壁部6に挿入され、周壁部6の内周面に密着するインナーリング14と、閉鎖時に周壁部6の外周面に設けられた図示しないアンダーカットと嵌合するアウターリング15とが設けられている。本実施形態の開封構造10は、蓋9を備えることにより、開口を形成した後の再封性に優れる。
【0022】
開封構造10に開口を形成する際、
図4(b)に示すように、プルリング3に指を掛けて正面方向(
図3における下方向)に引っ張ることにより弱化線の引き裂きを開始させる。このとき、立壁4が指により支柱2側に押し当てられる。立壁4を支柱2に押し当てた状態とすると、立壁4により剛性が高まることにより、支柱2の捻りが抑制される。また、立壁4は支柱2と独立して設けられているので、支柱2の捻り方向に若干の力が加わったとしても、立壁4は支柱2と同調して捻れない。したがって、立壁4は、支柱2の捻りを抑制して、プルリング3の引っ張り方向を正面方向へ誘導する機能を発揮する。また、立壁4が押し倒されることにより、第2の弱化線12及び第3の弱化線13のうち、立壁4の両側端近傍に位置する部分が引き上げられるため、第2の弱化線12及び第3の弱化線13の引き裂きを進行させやすく、より開封がしやすくなる。更に、プルリング3内に立壁4があることにより、指への接触面が増え、フィット感触が良くなり、プルリング3の引っ張りがしやすい。
【0023】
また、プルリング3を引っ張る際に支柱2の捻り方向にある程度大きな力が加わったとしても、
図3の二点鎖線で示すように、立壁4がプルリング3の内壁に当接し、それ以上の支柱2の捻りが抑制される。また、立壁4の側端部がプルリング3の内壁に当接した状態で更に支柱2の捻り方向に力が加えられた場合、立壁4の付け根の側端部が引き起こされ、弱化線(
図3の例では第3の弱化線13)の引き裂き開始のきっかけとなる。立壁4の付け根の断面形状が第2の弱化線12及び第3の弱化線13に近づくにつれて先細りとなるように形成されている場合、支柱2の捻り方向に力が加えられたときに、立壁4の付け根の側端部において引き裂きがより開始しやすくなるため好ましい。
【0024】
第2の弱化線12及び第3の弱化線の引き裂きが開始した後は、プルリング3を更に引っ張って、第2の弱化線12及び第3の弱化線13の引き裂きを進行させ、第3の弱化線の引き裂きに続いて第1の弱化線11を引き裂く。これにより、平板部1のうち、環状の第1の弱化線11により区画された部分を分離除去して開口を形成することができる。
【0025】
以上説明したように、本実施形態に係る開封構造10は、プルリング3の内側に支柱2に隣接する板状の立壁4を備える。これにより、プルリング3に支柱2の捻れ方向の力が加えられた場合でも、支柱2が捻り切れることなく、弱化線を引き裂くことが可能となる。
【0026】
尚、開封構造10を用いて包装容器を構成する際、平板部1の外周縁を含む所定範囲に容器本体を取り付けることができる。例えば、容器本体に外壁部7で囲まれた部分を挿入可能な開口部を設け、外壁部7及び蓋9を容器本体の内側から開口部に挿入し、平板部1の外周縁を含む所定範囲に容器本体の開口部周辺の内面を溶着または接着することにより、包装容器を構成することができる。上記の実施形態では、容器本体の一例としてパウチを例示したが、容器本体の形態は特に限定されず、紙容器でも良い。
【0027】
また、本発明に係る開封構造は、注出口栓(スパウト)に適用することも可能である。例えば、円筒形の筒状部と、筒状部の内部を閉鎖し、上記の第1~第3の弱化線が形成された隔壁と、支柱を介して隔壁に接続されるプルリングとを備える注出口栓において、プルリングの内側に支柱と隣接するように板状の立壁を設けても良い。本発明に係る開封構造は、打栓により容器本体の口部に嵌合させる形態の注出口栓や中栓、ネジにより容器本体の口部に螺合させる形態の注出口栓や中栓にも適用可能である。容器本体の形態も特に限定されず、紙容器、パウチ、チューブ容器、プラスチックやガラスからなるボトル容器等に適用することも可能である。また、開封構造の容器本体への取り付け方法は、溶着の他に、打栓嵌合、螺合、接着等でも良く、容器本体の形態及び取り付け方法に応じて、平板部に設けられる容器取付部の構造を適宜選択すれば良い。また、容器本体がプラスチックにより形成される場合、容器本体に本発明に係る開封構造を設けることも可能である。
【実施例0028】
以下、本発明を具体的に実施した実施例を説明する。
【0029】
実施例1~3として、
図1に示した開封構造を作製した。立壁4の断面形状は、実施例1では台形状(
図5(a))とし、実施例2では楕円形状(
図5(b))とし、実施例3ではエッジ形状(
図5(c))とした。また、比較例として、
図1に示した開封構造において立壁4を省略したものを作製した。
【0030】
実施例1~3及び比較例1に係る開封構造を用い、支柱近傍を中心に支柱の捻れ方向に80°プルリングを回転させた状態で、プルリングを正面方向に引っ張って開封を行った。実施例1~3に係る開封構造は、プルリングを80°回転させて引っ張っても支柱が破断することなく弱化線を引き裂くことができたが、比較例1に係る開封構造は、支柱が破断してしまい、弱化線を引き裂くことができなかった。