(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024031006
(43)【公開日】2024-03-07
(54)【発明の名称】留具および装身具
(51)【国際特許分類】
A44C 25/00 20060101AFI20240229BHJP
F16B 7/20 20060101ALI20240229BHJP
F16B 7/04 20060101ALI20240229BHJP
F16B 21/06 20060101ALI20240229BHJP
A44B 99/00 20100101ALI20240229BHJP
【FI】
A44C25/00 B
F16B7/20 A
F16B7/04 302A
F16B21/06 A
A44B99/00 611N
A44B99/00 611D
【審査請求】有
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022134280
(22)【出願日】2022-08-25
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2023-01-20
(71)【出願人】
【識別番号】398044938
【氏名又は名称】株式会社コラントッテ
(74)【代理人】
【識別番号】110000280
【氏名又は名称】弁理士法人サンクレスト国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】原 武雄
【テーマコード(参考)】
3B114
3J037
3J039
【Fターム(参考)】
3B114AA11
3B114EB07
3J037AA02
3J037DA04
3J037DA12
3J037DB02
3J037DC01
3J039AA03
3J039BB01
3J039FA14
(57)【要約】
【課題】紐から留具が脱落することをより確実に抑制する。
【解決手段】紐の端部に設けられ、前記紐を身体に巻き付けた状態で保持する装身具の留具であって、前記端部の外周を覆う筒状のソケットと、前記ソケットを前記端部に固定するピンと、内部空間が形成され、前記内部空間に、前記端部、前記ピンおよび前記ピンにより前記端部に固定されている状態の前記ソケットを収容している保持部と、を備え、前記ソケットは、前記保持部の内周において径方向内側に突出する凸部に対して、前記紐を前記保持部から引き抜く方向に接触し、前記ピンは、前記紐を径方向に貫通する第1貫通孔と、前記ソケットを径方向に貫通し、前記第1貫通孔と連通している第2貫通孔とに挿入され、前記ピンの挿入方向の長さは、前記ソケットの内径よりも長い、留具。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
紐の端部に設けられ、前記紐を身体に巻き付けた状態で保持する装身具の留具であって、
前記端部の外周を覆う筒状のソケットと、
前記ソケットを前記端部に固定するピンと、
内部空間が形成され、前記内部空間に、前記端部、前記ピンおよび前記ピンにより前記端部に固定されている状態の前記ソケットを収容している保持部と、
を備え、
前記ソケットは、前記保持部の内周において径方向内側に突出する凸部に対して、前記紐を前記保持部から引き抜く方向に接触し、
前記ピンは、前記紐を径方向に貫通する第1貫通孔と、前記ソケットを径方向に貫通し、前記第1貫通孔と連通している第2貫通孔とに挿入され、
前記ピンの挿入方向の長さは、前記ソケットの内径よりも長い、
留具。
【請求項2】
前記ソケットの内径は、前記端部の外径よりも大きい、
請求項1に記載の留具。
【請求項3】
前記保持部の前記引き抜く方向の開口における内径は、前記凸部の内径以上であり、
前記ソケットは、
前記ソケットの外周において径方向外側に突出して前記凸部に接触する段部と、
前記段部よりも前記引き抜く方向に位置し、前記開口と前記紐との間の空間を埋める蓋部と、
を含む、
請求項2に記載の留具。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の留具と、
前記紐と、
を備える、装身具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、留具および装身具に関する。
【背景技術】
【0002】
ネックレスやブレスレット等の環状の装身具において、留具は、例えば紐の両端に設けられている。従来、紐から留具が脱落することを抑制するための各種の技術が提案されている。
【0003】
特許文献1には、紐の端部に取り付けられたリング状の抜け止め金具を周方向に加圧した状態で、筒状部の開口部から押し込んで紐および抜け止め金具を筒状部に取り付ける技術が開示されている。筒状部の開口部にはフランジ部が形成されているため、紐を引き抜こうとすると、抜け止め金具がフランジ部に係合することで紐の引き抜けが抑制される。
【0004】
特許文献2には、長尺体の両端に巻着される離脱防止部材が開示されている。離脱防止部材は、略C字状の断面を有する部材であり、長尺体の端部に突起を突き刺した状態で巻着される。離脱防止部材の側縁は、縁に向かって広がるように傾斜しており、この側縁が長尺体の一端を保持する保持部材の傾斜面と当接する。長尺体を引き抜く方向に引っ張ると、長尺体に加えられた力の一部は、傾斜面を経て長尺体の軸心に向かう方向に変換される。これにより、保持部材には長尺体の端部を締め付ける方向に力が加えられ、長尺体の離脱が抑制される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003-265211号公報
【特許文献2】特開2008-000209号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1,2は、ソケット(抜け止め金具又は離脱防止部材)を紐(紐又は長尺体)に装着した状態で、ソケットを保持部(筒状部又は保持部材)に取り付ける。このような構成の場合、ソケットを介して紐が保持部に取り付けられた後、紐からソケットが抜けることで、紐から留具が脱落するおそれがある。
【0007】
特許文献1,2では、紐からソケットが抜けることを抑制するために、ソケットを紐に周方向にくい込ませている。しかしながら、ソケットを紐にくい込ませていたとしても、ソケット又は紐がゴム等の弾性部材である場合、経年使用によりくい込みが弱くなるため、紐からソケットが抜けることを長期にわたって抑制することができないおそれがある。また、より強い力で引っ張ると、紐からソケットが抜けるおそれがある。さらに、ソケットの抜けを抑制すべく、ソケットをより強く紐にくい込ませると、それによって紐が損傷するおそれもある。
【0008】
本開示は、以上の課題を鑑みなされたものであり、紐から留具が脱落することをより確実に抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本開示の装身具の留具は、紐の端部に設けられ、前記紐を身体に巻き付けた状態で保持する装身具の留具であって、前記端部の外周を覆う筒状のソケットと、前記ソケットを前記端部に固定するピンと、内部空間が形成され、前記内部空間に、前記端部、前記ピンおよび前記ピンにより前記端部に固定されている状態の前記ソケットを収容している保持部と、を備え、前記ソケットは、前記保持部の内周において径方向内側に突出する凸部に対して、前記紐を前記保持部から引き抜く方向に接触し、前記ピンは、前記紐を径方向に貫通する第1貫通孔と、前記ソケットを径方向に貫通し、前記第1貫通孔と連通している第2貫通孔とに挿入され、前記ピンの挿入方向の長さは、前記ソケットの内径よりも長い、留具である。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図2】実施形態に係る留具およびその周辺の断面を例示する図である。
【
図3】実施形態に係るピンによる紐とソケットの固定を説明する図である。
【
図4】実施形態に係るソケットによる紐と保持部の固定を説明する図である。
【
図5】変形例に係る留具およびその周辺の断面を例示する図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照しつつ、本発明の実施形態の詳細を説明する。なお、以下に記載する実施形態および変形例は、適宜に組み合わせてもよい。
【0012】
[1.装身具の構成]
図1は、実施形態に係る装身具1を例示する図である。装身具1は、可撓性を有する紐2と、紐2の両方の端部21にそれぞれ設けられている2個の留具3とを含む。2個の留具3は、特に区別する場合、一方を留具3aと称し、他方を留具3bと称する。
【0013】
装身具1は、例えばネックレス、ブレスレット又はアンクレットであり、身体に巻き付けた状態で使用する。具体的には、装身具1は、紐2を身体に巻き付け、2個の留具3を留めることにより、紐2を環状に保持している状態で使用する。なお、身体のうち装身具1を巻き付ける位置は特に限定されず、首、手首又は足首以外に、腰等であってもよい。
【0014】
紐2は、例えば樹脂製(具体的には、シリコーン製、又はウレタン製)の中実の紐であるが、一部に金属製のチェーンを含んでもよい。紐2には、複数の(
図1では8個の)磁石7が埋め込まれている。装身具1を身体に装着した際に、これらの磁石7が身体に近接することで、磁力が身体に作用し、血行が促進されることで、凝りの改善など健康上良好な効果が期待される。この場合、装身具1は、磁気治療器具としても機能する。なお、紐2に磁石7が埋め込まれていなくてもよい。この場合、装身具1は、例えば身飾品として機能する。
【0015】
留具3aは、留具3bに対して着脱可能に設けられており、留具3aが凸形状を有し、留具3bが凹形状を有する。留具3aは、例えば磁力によって留具3bに取り付けられる。なお、留具3aを留具3bに取り付ける手法は特に限定されない。例えば、留具3aの凸形状が留具3bの凹形状に嵌合することによる摩擦力によって、留具3aが留具3bに取り付けられてもよい。
【0016】
[2.留具の構成]
図2は、実施形態に係る留具3およびその周辺の断面を例示する図である。
図2において断面として示す部分にはハッチングを付している。留具3は、ソケット4と、ピン5と、保持部6と、着脱部8と、リング9と、を備える。以下、特に区別する場合、留具3aに備えられる保持部6および着脱部8を保持部6aおよび着脱部8aとそれぞれ称し、留具3bに備えられる保持部6および着脱部8を保持部6bおよび着脱部8bとそれぞれ称する。
【0017】
ソケット4は、紐2の端部21の外周22を覆う筒状の部材である。ソケット4は、完全に閉じた環状の部材であってもよいし、周方向の一部が180°未満の角度で開放された(すなわち、略C字状の)部材であってもよい。これらのいずれの場合であっても、本開示では「筒状」と称する。ソケット4は、例えば樹脂製であるが、金属製であってもよい。樹脂製の場合、ソケット4は、例えば耐衝撃性および耐摩耗性が高く、比較的硬い熱可塑性樹脂により形成される。例えば、ソケット4は、PP(ポリプロピレン)、NY(ナイロン)又はPOM(ポリオキシメチレン)を含んでもよい。
【0018】
ピン5は、ソケット4を紐2に固定する円柱状の部材である。ピン5は、例えば金属製であるが、樹脂製であってもよい。樹脂製の場合、ピン5は、例えばソケット4と同様の材料により形成される。
【0019】
保持部6は、片側が閉塞されている円筒状の内部空間S1が形成されている部材である。保持部6は、内部空間S1に、紐2の端部21、ピン5およびピン5により紐2の端部21に固定されている状態のソケット4を収容している。保持部6は、さらに、その外周に設けられている凹部64にリング9を収容し、内部空間S1と反対側の端部に設けられている凹部65に着脱部8を収容している。保持部6は、例えば金属製であるが、樹脂製であってもよい。樹脂製の場合、保持部6は、例えばソケット4と同様の材料により形成される。
【0020】
着脱部8a,8bは、例えば磁石である。着脱部8a,8bは、いずれか一方が磁石で、他方が鉄等の磁石に吸着する金属であってもよい。この場合、着脱部8a,8bは互いに磁力により吸着することで、留具3aを留具3bに取り付ける。また、着脱部8a,8bは、いずれか一方が凸形状を有し、他方が当該凸形状に嵌合する凹形状を有していてもよい。この場合、着脱部8a,8bは互いに摩擦力により固定されることで、留具3aを留具3bに取り付ける。
【0021】
リング9は、樹脂製(より具体的には、ゴム製)の環状の部材である。リング9は、留具3を装飾する機能と、装身具1のユーザが留具3を留め外しする際の指の滑り止めとなる機能とを有する。
【0022】
[3.装身具の組立]
図3は、実施形態に係るピン5による紐2とソケット4の固定を説明する図である。
図3(a)は組立途中における紐2、ソケット4およびピン5の斜視図であり、
図3(b)は組立途中における紐2、ソケット4およびピン5の断面図である。装身具1の組立は、例えば、以下の(工程ST1)から(工程ST3)の順に実行される。これらの工程は、手作業で行われてもよいし、治具又は機械により行われてもよい。
【0023】
(工程ST1)
紐2の端部21にソケット4を取り付ける(
図3の矢印AR1)。ここで、紐2の端部21には、端部21を径方向に貫通するように、第1貫通孔23が形成されている。また、ソケット4には、ソケット4を径方向に貫通するように、径方向一方側および径方向他方側にそれぞれ第2貫通孔43が形成されている。端部21にソケット4を取り付けるとき、紐2とソケット4との周方向の位置決めをすることで、第1貫通孔23と2個の第2貫通孔43とを連通させる。
【0024】
ここで、ソケット4の内径D1は、紐2の端部21の外径D2よりも大きい(D1>D2)。例えば、内径D1は外径D2よりも0.1~0.2mm程度大きい。このため、ソケット4を容易に端部21へ取り付けることができる。
【0025】
また、紐2はソケット4により締め付けられないか、例えば公差や熱膨張によって紐2の外径D2が大きくなったとしても紐2はソケット4によりほとんど締め付けられない。このため、紐2を径方向内側に圧縮するような負荷がほとんど掛からないため、特許文献1,2のように紐を締め付けたり紐にくい込ませたりすることでソケットを紐に固定する場合と比べて、紐2にダメージが生じることを抑制することができる。これにより、紐2が切れる等の不具合を抑制することができる。
【0026】
(工程ST2)
ピン5を、ソケット4の径方向一方側に形成された第2貫通孔43(第2貫通孔43aとも称する。)、紐2の第1貫通孔23およびソケット4の径方向他方側に形成された第2貫通孔43(第2貫通孔43bとも称する。)へ、順に挿入する(
図3の矢印AR2)。
【0027】
ここで第1貫通孔23の内径W1と、第2貫通孔43の内径W2は、等しくても、いずれが大きくてもよい。また、ピン5の外径D3(挿入方向と直交する方向の直径)は、内径W1,W2のうち小さい方の内径と等しいか、わずかに小さい。例えば、外径D3は、内径W1,W2のうち小さい方の内径よりも0.06mm程度小さい。これにより、ピン5は第1貫通孔23および第2貫通孔43内にほとんど隙間なく収容されるため、紐2とソケット4との間のガタツキを抑制することができる。
【0028】
また、ピン5の挿入方向(矢印AR2の方向)の長さL1は、ソケット4の内径D1よりも長い(L1>D1)。このため、ピン5の一方側の端部5aを紐2から第2貫通孔43a内に突出させた状態で、ピン5の他方側の端部5bを紐2から第2貫通孔43b内に突出させることができる。
【0029】
これにより、紐2を引き抜く方向(矢印AR1の逆方向)に引っ張ったとしても、ピン5の端部5a,5bがソケット4の第2貫通孔43a,43bの内周面に掛かるため、紐2からソケット4が抜けることを抑制することができる。このように、ピン5は紐2の端部21にソケット4を固定する。
【0030】
(工程ST3)
図4は、実施形態に係るソケット4による紐2と保持部6の固定を説明する図である。
上記の工程ST2により、紐2の端部21には、ソケット4とピン5とが取り付けられている。これら端部21、ソケット4およびピン5の組合せ品を「アセンブリAS1」と称する。工程ST3では、アセンブリAS1を保持部6の内部空間S1に対して、矢印AR3方向に圧入する。以上により、留具3が組立てられる。
【0031】
ここで、保持部6の内部空間S1は、保持部6の内周61により形成されている。内周61は、径方向内側に突出する凸部62と、紐2を引き抜く方向(矢印AR3の逆方向)に開放されている開口63とを含む。
【0032】
内周61のうち凸部62よりも奥(紐2を差し込む方向であり、矢印AR3の方向)の内径を「内径D4」、凸部62のうち最も径方向に狭い内径を「内径D5」、開口63の内径を「内径D6」とそれぞれ称する。内径D5は、内径D4,D5,D6のうちで最も小さい(D5<D4,D5<D6)。すなわち、凸部62は、内周61において最も径方向内側に突出している。
【0033】
図4の例において、内径D6は、内径D5以上の径を有し、より具体的には内径D5よりも大きい(D6>D5)。また、凸部62から開口63に近づくにつれて、内径は内径D5から傾斜して徐々に広がりながら内径D6となる。内径D6をより大きく形成することで、アセンブリAS1を内部空間S1に入れやすくすることができる。また、内径D5から内径D6へ傾斜状の内周61とすることで、アセンブリAS1を内部空間S1に入れやすくすることができる。なお、内径D6は、内径D5と同じ径であってもよいし、内径D5よりも小さくてもよい。
【0034】
ここで、ソケット4は、段部41と、蓋部42とを含む。段部41は、ソケット4の外周において径方向外側に突出するように、周方向の全体にわたって形成されている突起状の部分である。なお、段部41は、例えば周方向に断続的に形成されていてもよい。蓋部42は、段部41よりも紐2を引き抜く方向に位置し、開口63と紐2(具体的には端部21の外周22)との間の空間を埋める部分である。第2貫通孔43は、段部41よりも奥側(紐2を差し込む方向)に形成されている。
【0035】
段部41のうち最も大きい外径D7は、内径D5よりも大きく、内径D4,D6以下である(D7>D5,D7≦D4,D7≦D6)。このため、アセンブリAS1を保持部6の内部空間S1に圧入すると、段部41が凸部62の開口63に近い側に接触して弾性変形しながら径方向内側に撓みながら矢印AR3の方向に進入し、段部41が凸部62を通過した後に、段部41の撓みがわずかに復帰することで、
図2に示すように段部41が凸部62の奥側に位置する。
【0036】
この状態において、外径D7は、内径D4以下であるため、圧入後において、段部41は内周61にほとんど接触しない。このため、ソケット4は径方向に常時の負荷を掛けられることがない。このため、ソケット4にダメージが生じることを抑制することができる。また、圧入後において、ソケット4が保持部6に対して周方向に回転可能とすることができる。すなわち、紐2に対して留具3を周方向に回転させることができる。例えば、留具3がペンダントトップとしての機能も有する場合、ユーザが装身具1の装着後に留具3を回転させて、留具3の周方向の位置を好適な位置に位置決めすることができる。
【0037】
なお、外径D7は内径D4よりも大きくてもよい。この場合、圧入後において、段部41は内周61に径方向に所定の締め代により接触する。例えば、外径D7は内径D4よりも0.1mm大きくてもよい。この場合、段部41は0.1mmの締め代により内周61に接触する。これにより、圧入後において、ソケット4が保持部6に対して周方向に回転することを抑制することができる。
【0038】
外径D7は内径D5よりも大きいため、紐2を引き抜く方向に引っ張ると、ソケット4(具体的には、段部41)が凸部62に対して紐2を引き抜く方向に接触することで、ソケット4が保持部6から抜けることが抑制される。
【0039】
また、ピン5が紐2およびソケット4を径方向に貫通しているため、紐2を引き抜く方向に引っ張ると、紐2がピン5を介してソケット4に掛かることで、紐2がソケット4から抜けることが抑制される。
【0040】
このように、留具3は、ソケット4が凸部62に掛かり、紐2がピン5を介してソケット4に掛かることで、紐2から留具3が脱落することを抑制している。特に、紐2はソケット4が径方向にくい込むことによって固定されるのではなく、径方向に挿入されるピン5によってソケット4に固定されているため、経年使用により紐2とソケット4との固定が緩くなりにくい。このため、紐2から留具3が脱落することをより確実に抑制することができる。
【0041】
さらに、ソケット4を紐2にくい込ませる場合、ソケット4と紐2との間の摩擦力をより大きくするために、矢印AR3方向において、ソケット4と紐2とが接触する面積を広く確保する必要がある。このため、くい込ませる方式では留具3の矢印AR3方向の長さが長くなりやすく、装身具1において留具3をコンパクト化できなかった。これに対し、ピン5により紐2をソケット4に固定する場合、ピン5が掛かる程度の留め代を確保すれば良いため、ソケット4を紐2にくい込ませる場合よりも留具3の矢印AR3方向の長さを短くすることができる。これにより、装身具1において留具3をコンパクト化することができ、装身具1の美観を向上させたり、装身具1を軽量化させたりすることができる。
【0042】
また、ピン5により紐2をソケット4に固定する場合、ピン5はソケット4に対して周方向にも掛かるため、紐2がソケット4に対して周方向に回転することを抑制することができる。
【0043】
ここで、ピン5の長さL1は、内径D5よりも短い(L1<D5)。このため、アセンブリAS1を内部空間S1に圧入する際、ソケット4は凸部62に接触して弾性変形する一方で、ピン5は凸部62を弾性変形なく通過することができる。これにより、ピン5が矢印AS3の方向に変形することによるピン5の破損を抑制することができる。
【0044】
また、ピン5は、例えば紐2およびソケット4よりも硬い材質により形成される。このように構成することで、紐2を引き抜く方向に引っ張った際に、ピン5の変形が抑制されるため、より確実に紐2がソケット4から抜けることを抑制することができる。そして、ピン5をより硬く形成している場合であっても、長さL1を内径D5よりも短くすることで、容易にアセンブリAS1を圧入することができる。
【0045】
アセンブリAS1の圧入により、ピン5は内部空間S1に収容される。このため、ピン5が径方向に動いても、ピン5は内周61に当接することで、保持部6から外に脱落しない。このため、ピン5が紐2およびソケット4から抜けることを抑制することができ、ピン5の脱落に伴う留具3の不良発生を抑制することができる。
【0046】
アセンブリAS1を圧入した状態において、蓋部42は開口63と紐2との間の空間(隙間)を埋めている。このため、開口63と紐2との隙間から内部空間S1にホコリ等の異物が侵入することを抑制することができる。
【0047】
[4.変形例]
以下、実施形態の変形例について説明する。変形例において、実施形態と同じ構成については同じ符号を付して説明を省略する。
【0048】
図5は、変形例に係る留具3cおよびその周辺の断面を例示する図である。上記の実施形態において、第2貫通孔43は段部41の奥側に形成されている。これに対し、変形例における第2貫通孔43は、段部41の手前側(紐2を引き抜く方向)に形成されている。例えば、第2貫通孔43は、蓋部42に形成されている。
【0049】
このように構成することで、段部41からソケット4の奥側の先端までの長さをより短くすることができる。これにより、留具3の矢印AR3方向の長さ(
図5の左右方向の長さ)を短くすることができるため、装身具1において留具3をコンパクト化することができる。
【0050】
また、この場合、ピン5は凸部62を通過する必要がないため、ピン5の長さL1を内径D5よりも長くすることができる(L1>D5)。これにより、紐2を引き抜く方向に引っ張った際に、ピン5がより確実にソケット4に掛かるため、紐2がソケット4から抜けることをより確実に抑制することができる。ピン5の長さL1は、例えば内径D6よりも小さい(L1<D6)ため、開口63との接触によりピン5が変形することを抑制することができる。
【0051】
[5.本発明のまとめ]
以下、本発明の一部をまとめる。
【0052】
(1)本発明に係る装身具1の留具3は、紐2の端部21に設けられ、紐2を身体に巻き付けた状態で保持する装身具1の留具3であって、端部21の外周22を覆う筒状のソケット4と、ソケット4を端部21に固定するピン5と、内部空間S1が形成され、内部空間S1に、端部21、ピン5およびピン5により端部21に固定されている状態のソケット4を収容している保持部6と、を備え、ソケット4は、保持部6の内周61において径方向内側に突出する凸部62に対して、紐2を保持部6から引き抜く方向に接触し、ピン5は、紐2を径方向に貫通する第1貫通孔23と、ソケット4を径方向に貫通し、第1貫通孔23と連通している第2貫通孔43とに挿入され、ピン5の挿入方向の長さL1は、ソケット4の内径D1よりも長い。
【0053】
このように構成することで、ソケット4が凸部62に掛かり、紐2がピン5を介してソケット4に掛かることで、紐2から留具3が脱落することを抑制することができる。特に、紐2はソケット4が径方向にくい込むことによって固定されるのではなく、径方向に挿入されるピン5によってソケット4に固定されているため、経年使用により紐2とソケット4との固定が緩くなりにくい。このため、紐2から留具3が脱落することをより確実に抑制することができる。
【0054】
(2)留具3において、ソケット4の内径D1は、端部21の外径D2よりも大きくてもよい。
【0055】
このように構成することで、紐2に負荷がほとんど掛からないため、紐2にダメージが生じることを抑制することができる。
【0056】
(3)留具3において、保持部6の引き抜く方向の開口63における内径D6は、凸部62の内径D5以上であり、ソケット4は、ソケット4の外周において径方向外側に突出して凸部62に接触する段部41と、段部41よりも前記引き抜く方向に位置し、開口63と紐2との間の空間を埋める蓋部42と、を含んでもよい。
【0057】
このように構成することで、ソケット4が保持部6から抜けることを抑制しつつ、開口63と紐2との隙間から内部空間S1にホコリ等の異物が侵入することを抑制することができる。
【0058】
(4)前記(1)から前記(3)のいずれかの留具3と、紐2と、を備える、装身具1。
【0059】
[6.補記]
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって、制限的ではない。本発明の権利範囲は、上述の実施形態および変形例ではなく特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及びその範囲内でのすべての変更が含まれる。
【符号の説明】
【0060】
1 装身具 2 紐 21 端部
22 外周 23 第1貫通孔 3 留具
4 ソケット 41 段部 42 蓋部
43 第2貫通孔 5 ピン 6 保持部
61 内周 62 凸部 63 開口
7 磁石 8 着脱部 9 リング
AS1 アセンブリ S1 内部空間