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特開2024-3101窒化ケイ素及び/又は酸窒化ケイ素を含む保護コーティングを有するコーティングされた物品
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  • 特開-窒化ケイ素及び/又は酸窒化ケイ素を含む保護コーティングを有するコーティングされた物品 図1A
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024003101
(43)【公開日】2024-01-11
(54)【発明の名称】窒化ケイ素及び/又は酸窒化ケイ素を含む保護コーティングを有するコーティングされた物品
(51)【国際特許分類】
   C03C 17/36 20060101AFI20231228BHJP
   C03C 17/34 20060101ALI20231228BHJP
   B32B 9/00 20060101ALI20231228BHJP
   B32B 17/06 20060101ALI20231228BHJP
   B32B 7/027 20190101ALN20231228BHJP
【FI】
C03C17/36
C03C17/34 Z
B32B9/00 A
B32B17/06
B32B7/027
【審査請求】有
【請求項の数】20
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023188439
(22)【出願日】2023-11-02
(62)【分割の表示】P 2020543483の分割
【原出願日】2019-02-13
(31)【優先権主張番号】62/631,283
(32)【優先日】2018-02-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/734,656
(32)【優先日】2018-09-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】16/274,767
(32)【優先日】2019-02-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】518301590
【氏名又は名称】ビトロ フラット グラス エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】弁理士法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ガンジュ、アシュトシュ
(72)【発明者】
【氏名】ナラナヤン、スダルシャン
(72)【発明者】
【氏名】フィンリー、ジェイムズ、ジェイ.
(72)【発明者】
【氏名】メドウィック、ポール、エイ.
(57)【要約】
【課題】 コーティングスタックにおけるこれらの欠陥を低減又は回避することである。
【解決手段】 コーティングされた物品は、基材、基材の少なくとも一部の上に機能層、及び機能層の少なくとも一部の上に保護コーティングを含み、機能層の最上層は金属酸化物層であり、保護コーティングは、金属窒化物層及び機能層の金属窒化物層と金属酸化物層の間に配設されてその少なくとも一部と接触する金属酸窒化物層を含む。
【選択図】 なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材、前記基材の少なくとも一部の上に第1の機能層、及び前記機能層の少なくとも一部の上に保護コーティングを含むコーティングされた物品であって、
前記機能層の最上層が金属酸化物膜であり、
前記保護コーティングが、金属窒化物、金属酸窒化物、又はそれらの組合せの1つ以上の層を含む、コーティングされた物品。
【請求項2】
前記金属窒化物、前記金属酸窒化物、又はそれらの前記組合せが、窒化ケイ素、酸窒化ケイ素、又はそれらの組合せの少なくとも1つである、請求項1に記載のコーティングされた物品。
【請求項3】
前記保護コーティングが、前記第1の機能層の前記最上層の前記金属酸化物膜の少なくとも一部の上に接触する金属酸窒化物膜、及び
前記金属酸窒化物膜の少なくとも一部の上に接触する金属窒化物膜を含む、請求項1に記載のコーティングされた物品。
【請求項4】
前記保護コーティングが、前記第1の機能層の前記最上層の前記金属酸化物膜の少なくとも一部の上に接触する勾配金属酸窒化物膜を含み、前記金属酸窒化物膜中の酸素の量が、前記第1の機能層の前記最上層からの距離が増加するにつれて減少し、前記勾配層の前記金属酸窒化物が、任意に酸窒化ケイ素である、請求項1から3のいずれか一項に記載のコーティングされた物品。
【請求項5】
前記第1の機能層の前記最上部誘電体層の前記金属酸化物膜が、スズ酸亜鉛を含む、請求項1から4のいずれか一項に記載のコーティングされた物品。
【請求項6】
前記第1の機能層が、前記基材の少なくとも一部の上に誘電体層、前記誘電体層の少なくとも一部の上に金属層、及び前記金属層の少なくとも一部の上に最上層を含む、請求項1から5のいずれか一項に記載のコーティングされた物品。
【請求項7】
前記第1の機能層が、前記金属層の上及び前記最上層の少なくとも一部の下にプライマー層をさらに含む、請求項6に記載のコーティングされた物品。
【請求項8】
前記プライマー層がチタン又はチタン及びアルミニウムを含み、前記チタン又はチタン及びアルミニウムが前記金属層上に堆積された後、前記チタン又はチタン及びアルミニウムの少なくとも一部が任意に酸化される、請求項7に記載のコーティングされた物品。
【請求項9】
前記誘電体層が酸化亜鉛及び/又はスズ酸亜鉛を含み、前記金属層がAg、Cu、Au及び/又はPdを含み、及び/又は前記最上層がスズ酸亜鉛を含む、請求項6に記載のコーティングされた物品。
【請求項10】
前記最上層が酸化亜鉛を含まない、請求項1から9のいずれか一項に記載のコーティングされた物品。
【請求項11】
前記第1の機能層の少なくとも一部の下及び前記基材の少なくとも一部の上に第2の機能層をさらに含む、請求項1から9のいずれか一項に記載のコーティングされた物品。
【請求項12】
金属窒化物、金属酸窒化物、又はそれらの組合せの1つ以上の層の上に少なくとも部分的に配設された第2保護膜をさらに含み、
前記第2保護膜が、チタニア、アルミナ、シリカ、ジルコニア、これらのいずれか1つ以上の合金、又はこれらのいずれかの混合物の少なくとも1つを含む、請求項1から11のいずれか一項に記載のコーティングされた物品。
【請求項13】
ガラス基材、
前記ガラス基材の少なくとも一部の上にスズ酸亜鉛の第1の層、
スズ酸亜鉛の前記層の少なくとも一部の上に酸化亜鉛の層、
酸化亜鉛の前記層の少なくとも一部の上に銀の層、
銀の前記層の少なくとも一部の上にTi、TiAl及び/又はその酸化物を含むプライマー層、
前記プライマー層の少なくとも一部の上にスズ酸亜鉛又は酸化亜鉛の第2の層、
スズ酸亜鉛の前記第2の層の少なくとも一部の直上にSiONを含む金属酸窒化物層、
前記金属酸窒化物層の少なくとも一部の直上にケイ素を含む金属窒化物層、及び
前記金属窒化物層の少なくとも一部の上に、Ti、TiAl及び/又はこれらのいずれかの酸化物を含む第2の保護層を含む、
請求項1に記載のコーティングされた物品。
【請求項14】
ガラス基材、
前記ガラス基材の少なくとも一部の直上にスズ酸亜鉛の第1の層、
スズ酸亜鉛の前記層の少なくとも一部の直上に酸化亜鉛の層、
酸化亜鉛の前記層の少なくとも一部の直上に銀の層、
銀の前記層の少なくとも一部の直上にTi、TiAl及び/又はこれらのいずれかの酸化物を含むプライマー層、
前記プライマー層の少なくとも一部の直上にスズ酸亜鉛の第2の層、
スズ酸亜鉛の前記第2の層の少なくとも一部の直上にケイ素を含む金属酸窒化物層、
前記金属酸窒化物層の少なくとも一部の直上にケイ素を含む金属窒化物層、及び
前記金属窒化物層の少なくとも一部の直上にTiAlOを含む第2の保護層を含む機能層を含む、
請求項1に記載のコーティングされた物品。
【請求項15】
ガラス基材、
前記ガラス基材の少なくとも一部の上に、250Å~400Åの範囲の厚さを有するスズ酸亜鉛の第1の層、
スズ酸亜鉛の前記層の少なくとも一部の上に、70Å~90Åの範囲の厚さを有する酸化亜鉛の層、
酸化亜鉛の前記層の少なくとも一部の上に、70Å~90Åの範囲の厚さを有する銀の層、
銀の前記層の少なくとも一部の上に、10Å~30Åの範囲の厚さを有するTiを含むプライマー層、
前記プライマー層の少なくとも一部の上に、30Å~100Åの範囲の厚さを有するスズ酸亜鉛の第2の層、
スズ酸亜鉛の前記第2の層の少なくとも一部の直上にSiONを含み、70Å~400Åの範囲の厚さを有する金属酸窒化物層、
前記金属酸窒化物層の少なくとも一部の直上にSiNを含み、100Å~400Åの範囲の厚さを有する金属窒化物層、及び
前記金属窒化物層の上にTiAlOを含み、100Å~400Åの範囲の厚さを有する第2の保護層を含む機能層を含む、
請求項1に記載のコーティングされた物品。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
この出願は、2018年2月15日に出願された米国仮特許出願番号62/631,283号、2018年2月16日に出願された米国仮特許出願番号62/631,588号、及び2018年9月21日に出願された米国仮特許出願番号62/734,656号の利益を主張し、それぞれの全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本開示による発明は、概して、金属酸化物層上に配設された金属窒化物層及び/又は金属酸窒化物を含むトップコートを有する太陽光制御コーティングに関する。
【背景技術】
【0003】
コーティングされた物品のコーティングスタック(coating stack(s))は、経時的に腐食し得る。これを防ぐために、コーティングスタックに保護コーティングを塗布することができる。例えば、米国特許第4,716,086号明細書及び米国特許第4,786,563号明細書に開示されている二酸化チタン膜は、コーティングに耐薬品性を提供する保護膜である。カナダ特許第2,156,571号に開示されている酸化ケイ素、米国特許第5,425,861号明細書、米国特許第5,344,718号明細書、米国特許第5,376,455号明細書、米国特許第5,584,902号明細書及び米国特許第5,532,180号明細書及びPCT国際特許公開第95/29883号に開示されている酸化アルミニウム及び窒化ケイ素も、コーティングに耐薬品性を提供する保護膜である。この技術は、より化学的及び/又は機械的に耐久性のあるコーティングによって進歩する可能性がある。
【0004】
保護コーティングを含むコーティングスタックに関する追加の既知の問題は、銀ベースのコーティングスタックで生じる。特定のコーティングされた物品において、機能性コーティングの上層は、酸化亜鉛層などの金属酸化物層を含み、機能性コーティングの終端金属-プライマー層の上に配置される。これは、結露した湿気のある環境に長時間さらされると、スタックに腐食又は光輝性欠陥を引き起こす可能性がある。したがって、コーティングスタックにおけるこれらの欠陥を低減又は回避するさらなる必要性が存在する。
【発明の概要】
【0005】
本発明の一態様によれば、コーティングされた物品が提供される。コーティングされた物品は、基材、基材の少なくとも一部の上に第1の機能層、及び機能層の少なくとも一部の上に保護コーティングを含み、機能層の最上層は金属酸化物膜であり、保護コーティングは、金属窒化物、金属酸窒化物、又はそれらの組合せの1つ以上の層を含む。
【0006】
一態様では、コーティングされた物品は、ガラス基材、ガラス基材の少なくとも一部の上に第1のスズ酸亜鉛の層、スズ酸亜鉛の層の少なくとも一部の上に酸化亜鉛の層、酸化亜鉛の層の少なくとも一部の上に銀の層、銀の層の少なくとも一部の上にTi、TiAl及び/又はその酸化物を含むプライマー層、プライマー層の少なくとも一部の上に第2のスズ酸亜鉛層、第2のスズ酸亜鉛層の少なくとも一部の直上に酸窒化ケイ素を含む金属酸窒化物層、金属酸窒化物層の少なくとも一部の直上にケイ素を含む金属窒化物層、金属窒化物層の少なくとも一部の上にTi、TiAl、及び/又は前述のいずれかの酸化物を含む第2の保護層を含む。
【0007】
別の態様では、コーティングされた物品が提供される。コーティングされた物品は、基材、基材の少なくとも一部の上に最上層を有する機能層、及び機能層の少なくとも一部の上に保護コーティングを含み、機能層の最上層は、少なくとも1.5及び2.1以下の屈折率を有する誘電体層である。
【0008】
別の態様では、基材、基材の少なくとも一部の上に機能層、及び機能層の少なくとも一部の上に保護コーティングを含むコーティングされた物品が提供され、機能層が、少なくとも1つの金属層及び少なくとも1つの金属層の少なくとも一部の上に接触して少なくとも部分的に配設されたプライマー層を含み、機能層の最上層が、プライマー層の少なくとも一部の上に接触して配設され、機能層の最上層が酸化亜鉛を含まない。
【0009】
本発明は、以下の図面を参照して記載され、同様の参照番号は全体を通して同様の部品を識別する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1A】本発明のコーティングを有する断熱ガラスユニット(「IGU」)の側面図(原寸に比例しない)である。
【0011】
図1B】本発明のコーティングを有する透明物の断面図である。
【0012】
図2A】本発明のコーティングの断面図(原寸に比例しない)である。
図2B】本発明のコーティングの断面図(原寸に比例しない)である。
【0013】
図3】本発明の一例によるコーティングの断面図(原寸に比例しない)である。
【0014】
図4A】本発明の一例によるコーティングの断面図(原寸に比例しない)である。
図4B】本発明の一例によるコーティングの断面図(原寸に比例しない)である。
【0015】
図5】本発明の例によるコーティングの断面図(原寸に比例しない)である。
【0016】
図6】本発明の例によるコーティングの断面図(原寸に比例しない)である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本明細書で使用される場合、「左」、「右」、「内側」、「外側」、「上」、「下」などの空間又は方向の用語は、図面に示されているように本発明に関連する。しかし、本発明は様々な代替の配向を想定することができ、したがって、そのような用語は限定と見なされるべきではないことが理解されるべきである。さらに、本明細書で使用される場合、明細書及び特許請求の範囲で使用される寸法、物理的特性、処理パラメータ、成分の量、反応条件などを表すすべての数字は、「約」という用語によってすべての場合に修飾されると理解されるべきである。したがって、反対のことが示されていない限り、以下の明細書及び特許請求の範囲に記載される数値は、本発明によって得られるべき所望の特性に応じて変化し得る。少なくとも、特許請求の範囲に対する均等論の適用を制限する試みとしてではなく、各数値は、報告された有効数字の数に照らして及び通常の丸め技術(ordinary rounding technique)を適用することによって少なくとも解釈されるべきである。さらに、本明細書に開示されるすべての範囲は、開始及び終了範囲値、並びにそこに含まれるありとあらゆる部分範囲を包含すると理解されるべきである。例えば、「1~10」の指定された範囲は、最小値1と最大値10との間(及びこれらを含む)のありとあらゆる部分範囲、すなわち、1以上の最小値で始まり、10以下の最大値で終わるすべての部分範囲、例えば1~3.3、4.7~7.5、5.5~10などを含むと見なされるべきである。「a」又は「an」は、1つ以上を指す。
【0018】
さらに、本明細書で使用される場合、「上に形成された(formed over)」、「上に堆積された(deposited over)」、又は「上に提供された(provided over)」という用語は、形成、堆積、又は提供されるが、必ずしも表面と接触していないことを意味する。例えば、基材「上に形成された」コーティング層は、形成されたコーティング層と基材との間に位置する同一又は異なる組成の1つ以上の他のコーティング層又は膜の存在を排除しない。さらに、発行された特許及び特許出願など、これらに限定されない、本明細書で言及されるすべての文書は、その全体が「参照により組み込まれる」と見なされるべきである。本明細書で使用する場合、「膜」という用語は、所望の又は選択されたコーティング組成物のコーティング領域を指す。「層」は1つ以上の「膜」を含むことができ、「コーティング」又は「コーティングスタック」は1つ以上の「層」を含むことができる。「非対称反射率(asymmetrical reflectivity)」という用語は、一方からのコーティングの可視光反射率が、反対側からのコーティングの可視光反射率とは異なること意味する。「臨界厚さ(critical thickness)」という用語は、その厚さを超えると、コーティング材料が連続した途切れのない層を形成し、その厚さ未満ではコーティング材料が連続層ではなくコーティング材料の不連続領域又は島を形成する厚さを意味する。「未臨界厚さ(subcritical thickness)」という用語は、コーティング材料がコーティング材料の分離された非接続領域を形成するような臨界厚さ未満の厚さを意味する。「島(islanded)」という用語は、コーティング材料が連続的な層ではなく、むしろ材料が堆積されて孤立した領域又は島を形成することを意味する。
【0019】
以下の議論の目的のために、本明細書に記載されるコーティングされた物品は、限定されないが、断熱ガラスユニット(IGU)などの建築上の透明物と共に使用することに関して議論され得る。本明細書で使用する場合、「建築上の透明物(architectural transparency)」という用語は、これらに限定されないが窓及び天窓などの建物に配置された任意の透明物を指す。しかしながら、本明細書に記載のコーティングされた物品は、そのような建築上の透明物と共に使用することに限定されず、ラミネート又は非ラミネート住宅用及び/又は商業用窓、断熱ガラスユニット、及び/又は陸上、空中、宇宙、水上及び水中車両のための透明物など、ただしこれらに限定されない任意の所望の分野で透明物を伴って実施できることが理解されるべきである。一態様又は実施形態では、本明細書に記載のコーティングされた物品は、窓又はサンルーフなどの車両で使用するための透明物である。したがって、具体的に開示された例示的な態様又は実施形態は、単に本発明の一般的な概念を説明するために提示され、本発明はこれらの特定の例示的な実施形態に限定されないことが理解されるべきである。さらに、典型的な「透明物」は十分な可視光透過率を有することができ、透明物を通して材料を見ることができるが、「透明物」は可視光に対して透明である必要はなく、半透明又は不透明であってもよい。すなわち、「透明」とは、0%を超えて100%までの可視光透過率を有することを意味する。
【0020】
本発明の特徴を組み込んだ非限定的な透明物10が図1Aに示されている。透明物10は、任意の所望の可視光、赤外線、又は紫外線の透過及び/又は反射を有することができる。
【0021】
図1Aの例示的な透明物10は、従来の断熱ガラスユニットの形態であり、第1の主面14(第1の表面)及び対向する第2の主面16(第2の表面)を有する第1のプライ12を含む。図示された非限定的な実施形態では、第1の主面14は建物の外部に面し、すなわち、外側主面であり、第2の主面16は建物の内部に面している。透明物10はまた、内側(第1の)主面20(第3の表面)及び外側(第2の)主面22(第4の表面)を有し、第1のプライ12から間隔を置いた第2のプライ18を含む。プライ表面のこの番号付けは、開窓術(fenestration art)における従来の慣例と一致している。第1及び第2のプライ12、18は、従来のスペーサーフレーム24に接着結合することによるなどの任意の適切な方法で接続することができる。2つのプライ12、18の間にギャップ又はチャンバ26が形成される。チャンバ26は、空気などの選択された雰囲気、又はアルゴン又はクリプトンガスなどの非反応性ガスで満たすことができる。太陽光制御コーティング30(又は以下に記載の他のコーティングのいずれか)は、プライ12、18のうちの1つの少なくとも一部、例えばこれらに限定されないが、第2の表面16の少なくとも一部又は第3の表面20の少なくとも一部の上に形成される。ただし、所望により、コーティングは第1の表面又は第4の表面にあることもできる。断熱ガラスユニットの例は、例えば、米国特許第4,193,236号明細書、米国特許第4,464,874号明細書、米国特許第5,088,258号明細書、及び米国特許第5,106,663号明細書に見出される。
【0022】
図1Bの例示的な透明物は、窓又はサンルーフなどの車両用の従来の透明物110の形態である。明確にするために、シール、コネクタ、及び開口部の機構は示されておらず、完全な車両も示されていない。透明物は、(部分的に示されている)車両118の車体に取り付けられた第1の主面114(第1の表面)及び対向する第2の主面116(第2の表面)を有する第1のプライ112を含む。図示された非限定的な実施形態では、第1の主面114は車両の外部に面し、すなわち、外側主面であり、第2の主面116は車両の内部に面している。車体の非限定的な例には、サンルーフの場合は自動車のルーフ、自動車の窓の場合は自動車のドア又はフレーム、又は飛行機の胴体が含まれる。透明物は、車両技術で広く知られているように、車の窓又はサンルーフなどの透明物を開閉することができる機構に取り付けてもよい。太陽光制御コーティング130、又は本明細書に記載されている他のコーティングのいずれかは、第1の表面114上に形成されるように示されているが、第2の表面116の少なくとも一部の上に形成されてもよい。
【0023】
本発明の広範な実施において、透明物10、110のプライ12、18、112は、同じ又は異なる材料であることができる。プライ12、18、112は、任意の所望の特性を有する任意の所望の材料を含むことができる。例えば、プライ12、18、112の1つ以上は、可視光に対して透明又は半透明であることができる。「透明」とは、0%を超えて100%までの可視光線透過率を有することを意味する。代替的に、プライ12、18、112の1つ以上が半透明であることができる。「半透明」とは、電磁エネルギー(例えば可視光)を通過させるが、このエネルギーを拡散させて、見る人と反対側の対象物がはっきり見えないようにすることを意味する。適切な材料の例には、プラスチック基材(例えばアクリルポリマー、例えばポリアクリラート;ポリアルキルメタクリラート、例えばポリメチルメタクリラート、ポリエチルメタクリラート、ポリプロピルメタクリラートなど;ポリウレタン;ポリカルボナート;ポリアルキルテレフタラート、例えばポリエチレンテレフタラート(PET)、ポリプロピレンテレフタラート、ポリブチレンテレフタラートなど;ポリシロキサン含有ポリマー;又はこれらを調製するための任意のモノマーのコポリマー、又はそれらの任意の混合物);セラミック基材;ガラス基材;或いは上記のいずれかの混合物又は組合せが含まれるが、これらに限定されない。例えば、プライ12、18、112の1つ以上は、従来のソーダ石灰ケイ酸ガラス、ホウケイ酸ガラス、又は鉛ガラスを含むことができる。ガラスはクリアガラスであることができる。「クリアガラス」とは、色合いのない(non-tinted)又は無着色(non-colored)ガラスを意味する。代替的に、ガラスはティント(tinted)又はそうでなければ着色ガラスであることができる。ガラスは、アニールされたガラス又は熱処理ガラスであることができる。本明細書で使用される場合、「熱処理」という用語は、焼き入れ又は少なくとも部分的な焼き入れを意味する。ガラスは、従来のフロートガラスなどの任意のタイプであることができ、任意の光学特性、例えば可視透過率、紫外線透過率、赤外線透過率、及び/又は全太陽エネルギー透過率の任意の値を有する任意の組成物であることができる。「フロートガラス」とは、溶融ガラスが溶融金属浴上に堆積され、制御可能に冷却されてフロートガラスリボンを形成する従来のフロートプロセスによって形成されたガラスを意味する。フロートガラスプロセスの例は、米国特許第4,466,562号明細書及び第4,671,155号明細書に開示されている。
【0024】
プライ12、18、112はそれぞれ、例えば、クリアフロートガラスを含むことができ、又はティント若しくは着色ガラスであることができ、一方のプライ12、18はクリアガラスであることができ、他方のプライ12、18は着色ガラスであることができる。限定的ではないが、第1のプライ12及び/又は第2のプライ18に適したガラスの例は、米国特許第4,746,347号明細書、米国特許第4,792,536号明細書、米国特許第5,030,593号明細書、米国特許第5,030,594号明細書、米国特許第5,240,886号明細書、米国特許第5,385,872号明細書、及び米国特許第5,393,593号明細書に記載されている。プライ12、18、112は、例えば長さ、幅、形状、又は厚さなど任意の所望の寸法であることができる。1つの例示的な自動車の透明物において、第1及び第2のプライはそれぞれ、1mm~10mmの厚さ、例えば1mm~8mmの厚さ、例えば2mm~8mm、例えば3mm~7mm、例えば5mm~7mm、例えば6mmの厚さであることができる。
【0025】
本明細書に記載のコーティングされた物品の非限定的な実施形態では、本発明の太陽光制御コーティング30、130は、ガラスプライ12、18、112の1つの少なくとも1つの主面の少なくとも一部の上に堆積される。図1Aによる例では、コーティング30は、外側ガラスプライ12、112の内面16の少なくとも一部の上に形成され、さらに、又は代替的に、本開示と一致する非限定的な例では、内側ガラスプライ18の内面20の少なくとも一部の上にコーティングが形成されてもよいことが理解されるべきである。本明細書で使用される場合、「太陽光制御コーティング(solar control coating)」という用語は、コーティングされた物品の太陽光特性、例えばこれらに限定されないが、コーティングされた物品から反射され、その物品により吸収され、又はその物品を通過する太陽放射、例えば可視、赤外線、又は紫外線の量、遮蔽係数、放射率などに影響する1つ以上の層又は膜で構成されるコーティングを指す。太陽光制御コーティング30は、IR、UV、及び/又は可視スペクトルなどであるがこれらに限定されない太陽光スペクトルの選択された部分をブロック、吸収、又はフィルタリングすることができる。
【0026】
本明細書に記載されるコーティング、例えば太陽光制御コーティング30、130は、従来の化学蒸着(CVD)及び/又は物理蒸着(PVD)法などのこれらに限定されない任意の有用な方法によって堆積させることができる。CVDプロセスの例には、噴霧熱分解が含まれる。PVDプロセスの例には、電子ビーム蒸着及び真空スパッタリング(例えばマグネトロンスパッタ蒸着(MSVD)など)が含まれる。ゾルゲル堆積などであるが、これに限定されない他のコーティング方法も使用することができる。非限定的な一実施形態では、コーティング30、130は、MSVDによって堆積される。MSVDコーティングデバイス及び方法の例は、当業者にはよく理解されており、例えば米国特許第4,379,040号明細書、米国特許第4,861,669号明細書、米国特許第4,898,789号明細書、米国特許第4,898,790号明細書、米国特許第4,900,633号明細書、米国特許第4,920,006号明細書、米国特許第4,938,857号明細書、米国特許第5,328,768号明細書、及び米国特許第5,492,750号明細書に記載されている。
【0027】
図2は、本開示によるコーティングされた物品200の例を概略的に示す。コーティングされた物品は、基材210を含む。基材210は、任意の所望の特性を含み得、任意の所望の厚さであり得る。基材210は、例えば、これらに限定されないが、プライ12、18、及び112の文脈で上記で記載されているポリマー、ガラス、及び/又はセラミック基材などの任意の適切な透明材料を含んでいてもよい。非限定的な例では、基材210は、図1A又は図1Bに示されるように、プライ12、18、112を参照して上記で記載されるようなガラス基材を含み得る。しかし、本発明は、他の基材、例えば太陽電池で使用されるものにも同様に適用できることが理解されるべきである。
【0028】
機能層220は、基材210の少なくとも一部の上に配設される。図2図6で使用されるように、機能層220、320、420、520は、任意の機能性コーティングであることができる。例えば、それは1つ以上の誘電体膜及び/又は1つ以上の金属膜を含むことができる。代替的には、機能層220、320、420、520は、例えば米国特許出願番号15/669,414号に開示されているように、限定されないが、透明導電性酸化物(TCO)を含んでもよい。機能層220、320、420、520は、米国特許出願公開番号2017/0341977、米国特許出願公開番号2014/0272453、米国特許出願公開番号2011/0236715、及び/又は米国特許出願番号15/669,414のいずれか、又はそれらの任意の部分に記載されているスタックを含むことができる。以下で具体的に説明する場合を除いて、機能層のこれらの例示的なスタックは、図3図6の要素330、430、530で概略的に表され、スタック330及び530の態様の詳細は、それぞれ図3図6に示され、それらを参照して記載される。
【0029】
機能層は、1つ以上の金属層を含み得る。機能層220、320、420、520内の1つ以上の金属膜は、銀、金、パラジウム、銅、アルミニウム及び/又は前述のいずれかの混合物及び/又は合金で構成されてもよい。機能層220、320、420、520の任意の金属層は、連続であってもよく又は不連続であってもよい。
【0030】
1つ以上の金属層は、連続層であることができる。連続的な金属層は、50Å~200Å、好ましくは55Å~150Å、より好ましくは55Å~100Å、最も好ましくは60~80Åの範囲の厚さを有する。
【0031】
図3図4A、及び図4Bは、機能層320の最上層が、機能層320の最上膜として最上部誘電体層322と呼ばれる誘電体層を含む例を示す。機能層320の最上部誘電体層322の例は、50Å~750Å、好ましくは250Å~600Å、より好ましくは例えば300Å~550Å、最も好ましくは330Å~500Åの範囲の厚さを有することができる。
【0032】
図4Bに示すように、最上部誘電体層322は、任意のプライマー層328の上に示される第1の膜324と、第1の膜の上にあり、保護コーティング350と接触する第2の膜326とを含み得る。最上部誘電体層322の第1の膜324及び第2の膜326は、金属酸化物、金属窒化物又は金属酸窒化物膜であることができる。第1の膜324及び第2の膜326の金属は、チタン、ハフニウム、ジルコニウム、ニオブ、亜鉛、ビスマス、鉛、インジウム、スズ、アルミニウム、ケイ素及びそれらの混合物であることができる。
【0033】
非限定的な一実施形態では、最上部誘電体層322の第1の膜324は、亜鉛/スズ合金酸化物であることができる。「亜鉛/スズ合金酸化物」とは、真の合金及び酸化物の混合物の両方を意味する。酸化亜鉛は、カソードのスパッタリング特性を改善するために他の材料を含む亜鉛カソードから堆積させることができる。したがって、亜鉛/スズ合金酸化物は、亜鉛及びスズのカソードからのマグネトロンスパッタリング真空蒸着から得ることができる。例えば、亜鉛カソードは、少量(例えば、20重量%まで、15重量%まで、10重量%まで、又は5重量%まで)のスズを含み、スパッタリングを改善することができる。その場合、得られる酸化亜鉛膜は、例えば、最大10重量%までの酸化スズ、例えば、最大5重量%までの酸化スズなどの小さな割合の酸化スズを含む。(カソードの導電率を高めるために添加された)10重量%までのスズを有する亜鉛カソードから堆積されたコーティング層は、少量のスズが存在し得るとしても、本明細書では「酸化亜鉛膜」と呼ばれる。非限定的なカソードの1つは、亜鉛及びスズを5重量%~95重量%の亜鉛と95重量%~5重量%のスズ、例えば10重量%~90重量%の亜鉛、及び90重量%~10重量%のスズの割合で含むことができる。しかしながら、亜鉛とスズとの他の比も使用できる。
【0034】
第1の膜324又は第2の膜226に存在することができる1つの適切な金属合金酸化物は、スズ酸亜鉛である。「スズ酸亜鉛」とは、ZnSn1-X2-X(式1)の組成物を意味し、式中、「x」は0より大きく1未満の範囲で変動する。例えば、「x」は0より大きくでき、0より大きく1未満の任意の分数又は小数であることができる。例えば、x=2/3の場合、式1はZn2/3Sn1/34/3で、より一般的には「ZnSnO」と記載される。スズ酸亜鉛含有膜は、層中に主な量で式1の1つ以上の形態を有する。
【0035】
図4Aは、コーティングされた物品の一実施形態を開示し、基材310、本明細書に記載の任意の態様又は実施形態による機能層320、及び機能層320上に金属窒化物膜356を含む保護コーティング350、及び金属窒化物膜356上に第2の保護膜360を含む。機能層は、例えば、図3及び図4Bに示されるように、最上部誘電体層を含む。非限定的な一実施形態では、最上部誘電体層322は、スズ酸亜鉛などの金属酸化物からなっていてもよい。さらなる非限定的な実施形態では、最上部誘電体層322は、1.5以上2.1以下の屈折率を有し得る。さらなる非限定的な実施形態では、最上部誘電体層322は、1.7以上1.9以下、さらにより好ましくは1.8以上1.85以下の屈折率を有し得る。
【0036】
図4Bに示すように、基材310と、最上部誘電体層322を含む機能層320と、任意のプライマー層328と、スタック330、例えば図3を参照して記載したスタックとを含む別の非限定的な例において、機能層320の最上部誘電体層322は、任意のプライマー層328の少なくとも一部の上に堆積される酸化亜鉛などの金属酸化物で構成される又はそれからなる第1の膜324を含んでいてもよい。第1の膜324の少なくとも一部の上に配置される、機能層320の最上部誘電体層322の第2の膜326は、スズ酸亜鉛を含み得る。
【0037】
図3図4Bに示されるように、機能層320はまた、誘電体層322の下に配設された任意のプライマー層328を含み得る。任意のプライマー層328は、単一の膜又は複数の膜層であることができる。任意のプライマー層328は、スパッタリングプロセス又はその後の加熱プロセス中の金属層334の劣化又は酸化を防ぐために、堆積プロセス中に犠牲にすることができる酸素捕捉材料を含むことができる。任意のプライマー層328はまた、コーティング300を通過する可視光線などの電磁放射線の少なくとも一部も吸収することができる。任意のプライマー層328に有用な材料の例には、チタン、ケイ素、二酸化ケイ素、窒化ケイ素、酸窒化ケイ素、ニッケルクロム合金(例えばインコネル)、ジルコニウム、アルミニウム、ケイ素及びアルミニウムの合金、コバルト及びクロムを含む合金(例えば、Stellite(登録商標))、及び前述のいずれかの混合物が含まれる。非限定的な実施形態では、任意のプライマー層328は、金属として堆積されるチタン、又はチタン及びアルミニウムを含み得、チタン、又はチタン及びアルミニウムの少なくとも一部が続いて酸化される。任意のプライマー層328は、5Å~50Å、例えば、10Å~35Å、例えば15Å~35Å、例えば10Å~20Å、例えば10Å~30Å、例えば20Å~30Å、例えば30Å~40Åの範囲の厚さを有することができる。別の例では、任意のプライマー層328は、5Å~50Å、例えば10Å~25Å、例えば15Å~25Å、例えば15Å~22Å、例えば25Å~36Åの範囲の厚さを有することができる。示すように、任意のプライマー層328は、存在する場合、誘電体層322の第1の膜324の下に直接接触して配設される。図面に示されているが、本発明による例は必ずしも任意のプライマー層328を含まないことが理解されるべきである。
【0038】
図2Aを参照すると、保護コーティング250は、機能層220の少なくとも一部の上に配設され、コーティングされた物品の最上層である。保護コーティング250は、機能層220及びその構成要素膜及び層のいずれかのような下にあるコーティング層を機械的及び/又は化学的攻撃から保護するのを助けることができる。図2Bは、図2Aに示されるコーティングされた物品と構造が類似しており、基材210及び保護コーティング250を示すが、図2Aの機能層220と同じ第1の機能層220、及び第1の機能層220の下及び基材210の上に配設された第2の機能層220’を含む。第1の機能層220は、第2の機能層220’と同じであっても異なっていてもよい。例えば、限定はしないが、第1の機能層220は、誘電体層、誘電体層上に金属層、及び任意に金属層上にプライマー層を含み、最上部誘電体層は、金属層上及びプライマー層が存在する場合はプライマー層上に金属酸化物膜を含む。第2の機能層220’は、基材210の上に第2の誘電体層、第2の誘電体層の上に第2の金属層、及び任意に第2の金属層の上に第2のプライマー層を含む。一例では、第1及び/又は第2の金属層のうちの1つが未臨界である。別の例では、どちらも未臨界ではない。さらに別の例では、コーティングされた物品は、第2の機能層220’の下及び基材210の上にあり、第1又は第2の機能層220、220’のいずれかと同じ又は異なる第3の機能層(図示せず)を含む。複数の小さな機能層を重ねて、より大きな機能層を製造してもよく、これは、任意に1つ以上の未臨界銀層を含む、例えば単一銀、二重銀及び三重銀コーティングを有するなどの小さな機能層の任意の特定の組合せに固有の特性を有していてもよく又は有していなくてもよいことに留意する。
【0039】
本発明の一実施形態では、図4Aを参照すると、保護層350は、酸化ケイ素、酸窒化ケイ素、窒化ケイ素、前述のいずれか2つ以上の混合物、及び/又は前述のいずれかの合金を含み得、機能層320の耐久性を向上させ得る。保護層350は、ケイ素のスパッタリングを改善するために優れた導電性を有する他の材料で堆積された酸化ケイ素、酸窒化ケイ素、及び/又は窒化ケイ素を含んでいてもよい。例えば、堆積中、ケイ素カソードは、少量(例えば、20重量%まで、15重量%まで、10重量%まで、又は5重量%まで)のアルミニウムを含み、スパッタリングを改善することができる。その場合、得られる保護層は、同様の割合のアルミニウム、例えば15重量%までのアルミニウム、例えば10重量%までのアルミニウム、例えば5重量%までのアルミニウムを含む。カソードの導電率を高めるために10重量%までのアルミニウムが添加されたケイ素カソードから堆積されたコーティング層は、少量のアルミニウムが存在し得る場合でも、本明細書では「酸化ケイ素」、「酸窒化ケイ素」、又は「窒化ケイ素」層又は膜と呼ばれる。カソード中の少量のアルミニウム(例えば、15重量%以下、例えば10重量%以下、例えば5重量%以下)は、主に窒化ケイ素保護層350中の窒化アルミニウムを形成すると考えられている。窒化ケイ素層の場合、保護層350は、窒素雰囲気中で形成され得るが、保護層350の堆積中に、酸素などの他のガスが大気中に存在し得ることが理解されるべきである。
【0040】
別の実施形態では、図4Bを参照すると、保護コーティング350は、機能層320の最上部誘電体層322の上に接触して配設された金属酸窒化物354、例えばSiONの膜の上に接触して配設された金属窒化物356、例えば窒化ケイ素の膜で構成され得る。金属酸窒化物膜354の例はまた、又は代替的に、2つ以上の金属窒化物及び/又は1つ以上の金属窒化物の合金を含み得る。金属窒化物膜356の例はまた、又は代替として、2つ以上の金属酸窒化物及び/又は1つ以上の金属酸窒化物の合金の混合物を含み得る。保護コーティング350は、機能層320の耐久性を向上させ得る。保護コーティング350は、金属のスパッタリングを改善するために優れた導電性を有する他の材料を用いて堆積されてもよい。
【0041】
保護コーティング250、350は、320Å~800Å、420Å~800Å、400Å~700Å、500Å~800Å、600Å~700Å、580Å~630Å、又は620Å~670Åの範囲の総厚さ(すなわち保護コーティング(250,350)内の層又は膜の厚さのすべての厚さの合計)を有する。
【0042】
金属酸窒化物中の酸素と窒素との原子比は0重量%~100重量%で変動でき、重量%は、金属酸窒化物の金属を除く組成物中のN又はOの質量とN+Oの総質量との比を指す。このように、図4Bを参照すると、金属酸窒化物膜354は、0重量%の窒素及び100重量%以下の窒素を含む。金属酸窒化物膜354は、0重量%を超える酸素及び15重量%以下の酸素、10重量%以下の酸素、5重量%以下の酸素を含む。金属酸窒化物層中の酸素と窒素との有用な原子比の非限定的な例には、例えば0.1%~99.9%のOと共に99.9%~0.1%のN、1%~99%のOと共に99%~1%のN、又は10%~90%のOと共に90%~10%のNが含まれるが、限定されない。
【0043】
一実施形態では、酸窒化物は、金属酸窒化物層354と接触する金属窒化物層356と同じ金属の酸窒化物である。別の実施形態では、金属酸窒化物層354は勾配層であり、ここで最上部誘電体層322に最も近い酸窒化物層の部分は、より多くの量の酸素を含み、金属酸窒化物層354の反対部分、例えば金属窒化物層356に最も近い部分は、例えば上記で記載の原子比で、より多くの量の窒素を含む。一実施形態では、金属酸窒化物層354及び金属窒化物層356は、連続した単一の勾配層を形成する。別の実施形態では、金属酸窒化物層354は、金属酸化物層の上及び/又は金属酸化物層と金属窒化物層との間に塗布される。別の実施形態では、金属窒化物層356は存在せず、金属酸窒化物膜354は勾配層であり、金属酸窒化物膜中の酸素の量は、最上部誘電体層からの距離が増加するにつれて減少する。例えば、最上部誘電体層322に最も近い酸窒化物層の部分は、より多くの量の酸素を含み、酸窒化物層354の反対の部分は、例えば、上記で記載の原子比、例えば、限定されないが、0.1%~99.9%のOと共に99.9%~0.1%のN、1%~99%のOと共に99%~1%のN、又は10%~90%のOと共に90%~10%のNの範囲で、より多くの量の窒素を含む。
【0044】
本開示による保護コーティング350では、酸窒化ケイ素で構成される膜などの金属酸窒化物膜354は、少なくとも1.4及び2.3以下の屈折率を有していてもよい。一実施形態では、金属酸窒化物膜354は、少なくとも1.45及び2.2以下の屈折率を有する。別の実施形態では、金属酸窒化物膜354は、少なくとも1.75及び2.1以下の屈折率を有する。さらに別の実施形態では、金属酸窒化物膜354は、少なくとも1.8及び2.1以下の屈折率を有する。金属酸窒化物膜354の屈折率は、少なくとも部分的に、金属酸窒化物膜354中に存在する窒素の重量百分率に依存することが理解されるべきである。保護コーティング350は、コーティングされた物品の最上層であり得る。
【0045】
金属酸窒化物膜354は、>0Å(0Å超)~400Å、例えば70Å~400Å、100Å~400Å、280Å~330Å、又は110Å~130Åの範囲の厚さを有することができる。金属酸窒化物膜354が、勾配層である、保護コーティング内の唯一の膜である、又は保護コーティング内に金属窒化物膜がない実施形態では、それは200Å~400Å、好ましくは225Å~375Å、より好ましくは250Å~350Å、最も好ましくは280Å~330Åの厚さを有し得る。
【0046】
金属窒化物膜356は、>0Å(0Å超)~400Å、例えば70Å~400Å、100Å~400Å、250Å~400Å、280Å~330Å、200Å~250Å、200Å~400Å、又は100Å~150Åの範囲の厚さを有することができる。金属酸窒化物層がない及び/又は第2の保護膜がない実施形態では、金属窒化物膜356は、100Å~400Å、好ましくは250Å~400Å、最も好ましくは280Å~330Åの範囲の厚さを有することができる。保護コーティングが金属酸窒化物膜354及び第2の保護層を有する実施形態では、金属窒化物膜356は、100Å~400Å、好ましくは150Å~330Å、より好ましくは175Å~300Å、最も好ましくは200Å~250Åの厚さを有することができる。保護コーティングが金属窒化物356膜と第2の保護膜360との両方を有する実施形態では、金属酸窒化物膜は、50Å~200Å、好ましくは75Å~175Å、より好ましくは100Å~150Å、最も好ましくは110Å~130Åの厚さを有することができる。
【0047】
特定の実施形態において、本発明は、金属酸窒化物膜354(存在する場合)及び/又は金属窒化物膜356(存在する場合)の合計厚さを有する。その組み合わされた厚さは、200Å~800Å、例えば、320Å~800Å、320Å~370Å、又は280Å~330Åであることができる。
【0048】
金属窒化物、金属酸窒化物、金属窒化物、及び/又は第2の保護膜、例えばTiAlOの合わせた層は、>0Å(0Å超)~1000Å、例えば170Å~800Å、320Å~370Å、280Å~330Å、320Å~800Å、310Å~360Å、130Å~430Å、320Å~800Å、又は350Å~400Åの範囲の厚さを有することができる。
【0049】
図3及び図4Bを参照すると、保護コーティング350の金属酸窒化物膜354は、金属窒化物膜356と、機能層320の最上部誘電体層322の第2の膜326の金属酸化物との間に強い結合を作り出す。この開示と一致する例には、スズ酸亜鉛最上部誘電体層322の少なくとも一部の上に接触して配設された酸窒化ケイ素膜354の少なくとも一部の上に接触して配設された窒化ケイ素膜356が含まれる。
【0050】
この開示と一致する例では、金属窒化物膜356及び/又は金属酸窒化物膜354内のケイ素は、少なくとも部分的に、他の金属の、それぞれ酸化物、酸窒化物、及び窒化物で置き換えられてもよいことが理解されるべきである。これらの他の金属は、膜354、356間で同じであっても異なっていてもよい。金属は、チタン、ハフニウム、ジルコニウム、ニオブ、亜鉛、ビスマス、鉛、インジウム、スズ、アルミニウム、ケイ素及びそれらの混合物であり得る。
【0051】
図4A及び図4Bを参照すると、本明細書に記載のコーティングされた物品の任意の態様又は実施形態によるコーティングされた物品は、第2の保護膜360を含み得る。第2の保護膜360は、金属窒化物膜356上に配設されて示され、例えば、金属酸化物又は金属窒化物層を含み得る。第2の保護膜360は、チタニア、アルミナ、シリカ、ジルコニア、酸化スズ、それらの混合物、又はそれらの合金であることができる。例えば、第2の保護膜360は、シリカとアルミナとの混合物、チタニアとアルミナとの混合物又はジルコニアを含んでいてもよい。第2の膜360の例は、TiAlOを含み得る。第2の保護膜360の非限定的な例は、10Å~80Å、例えば25~75Å、例えば35Å~55Åの範囲の厚さを有していてもよい。第2の保護膜360は、例えば最上層として、本開示と一致する最上部誘電体層、金属窒化物、及び金属酸窒化物膜の任意の他の構成に適用されてもよいことが理解されるべきである。代替的に、第2の保護膜360の上に追加の機能層又は保護層が適用されてもよい。同様に、コーティングされた物品は、第2の保護膜360を含む必要がないことが理解されるべきである。
【0052】
非限定的な例では、コーティングされた物品は、第2の保護膜360の上に配置された追加の保護層(図示せず)を含んでいてもよい。この追加の保護層は、保護コーティング350、又は第2の保護膜360を形成するために使用される任意の材料、又はトップコートとして使用され得る任意の材料であることができる。
【0053】
上記で記載の任意のプライマー328などのプライマーは、機能層320の金属層のいずれか若しくは連続層である任意の金属層の上に及び/又はそれらに直接接触して配置されてもよい。非限定的な一実施形態では、プライマーは、不連続(未臨界)金属層と直接接触していない。この実施形態では、プライマーは、不連続層の直上に又は直接接触して塗布されない。しかしながら、プライマー層は、連続する金属層のそれぞれの上に直接接触して配置されてもよい。さらに、プライマーは、チタン、又は限定されないがチタンアルミナイドなどのチタンとアルミニウムとの混合物又は合金であってもよい。
【0054】
図5を参照すると、透明物品400は、基材410、機能層420、及び保護コーティング450を含み得る。図示されていないが、いくつかの例は、本開示による第2の保護膜360(図4B)も含み得るが、第2の保護膜360はまた含まれなくてもよいことが理解されるべきである。図5に示す例では、保護コーティング450は、上に開示した第2の保護膜360と一致する第2の保護膜、又はこの開示と一致する当該技術分野で既知の任意の他の構成又はトップコートを含み得る。機能層420は、本開示と一致する金属層、誘電体層、及びプライマー層のスタックを含んでいてもよい。
【0055】
図5をさらに参照すると、機能層420は、最上部誘電体層422を含む。最上部誘電体層422は、本開示と一致して、少なくとも部分的にプライマー層428の上に配設されてもよい。非限定的な例では、最上部誘電体層422は、単一の層からなり、少なくとも1.5及び2.1以下、より好ましくは少なくとも1.9及び1.9以下、さらにより好ましくは少なくとも1.8及び1.85以下の屈折率を有していてもよい。本開示による例では、最上部誘電体層422は、スズ酸亜鉛からなってもよい。最上部誘電体層422の特徴は、最上部誘電体層322の特徴と一致してもよい。他の例では、最上部誘電体層322、422は、亜鉛90(90%の酸化亜鉛、10%の酸化スズを含む)を含まない。
【0056】
入念な試験により、スズ酸亜鉛を含む最上部誘電体層322が、そのような条件下でスタックの耐久性を改善し、腐食/光輝性欠陥を低減することが分かった。さらに、機能層320の最上部プライマー層328上に配設されたスズ酸亜鉛からなる最上部誘電体層322の使用は、色制御に影響を与えない。代替的に、酸化亜鉛又は亜鉛90が最上部誘電体層で使用されてもよい。代替的に、最上部誘電体層は2つの膜を有することができ、下部の膜は酸化亜鉛膜であり、上部の膜はスズ酸亜鉛膜である。
【0057】
図6を参照すると、コーティングされた物品500は、本明細書に記載される任意の実施形態又は態様による、基材510、基材510上に機能層520、機能層520上に保護コーティング550を含む。機能層520は、本明細書に記載の任意の実施形態又は態様による金属酸化物層531、及び本明細書に記載の任意の実施形態又は態様による金属酸化物層531上に金属層534を含む機能スタック530を含む。本明細書に記載の任意の実施形態又は態様による任意のプライマー層528は、金属層534の上に堆積される。本明細書に記載の任意の態様又は実施形態によれば、機能層520はまた、最上部誘電体層522を含む。保護コート550は、本明細書に記載の任意の態様又は実施形態による保護コーティングである。一実施形態では、基材510はガラスであり、金属酸化物層531は、誘電体層、例えば酸化亜鉛の層532とその酸化亜鉛の層の上にスズ酸亜鉛の第2の層533とを備えたものであり、金属層534は、Agを含むか、又はそれからなり、プライマー層528は、Ti又はTiAlを含むか又はそれらからなり、誘電体層522は、酸化亜鉛及び/又はスズ酸亜鉛を含むか又はそれらからなり、保護コーティング550は、金属酸化物層522上にSiON又はSiの1つ以上の層を含む金属窒化物層、及び金属窒化物層552上に第2の保護膜560を含む。一実施形態では、例えば、図6を参照すると、保護コーティング550の金属窒化物層552は、金属酸化物層522の上に接触して酸窒化ケイ素層554、及び酸窒化ケイ素層554の上に接触して窒化ケイ素層556を含む。
【0058】
表1~6は、厚さ、及び様々な層の好ましい厚さを含む、本開示による有用なコーティングされた物品の例を提供する。
【0059】
【表1】
【0060】
【表2】
【0061】
【表3】
【0062】
【表4】
【0063】
表5-TiAlO保護層を備えた誘電体膜上のSiON
【0064】
【表5】
【0065】
【表6】
【0066】
以下は、本開示によるコーティングされた物品の例を提供する。しかしながら、本発明はこれらの特定の実施形態に限定されないことが理解されるべきである。
【0067】

例1~6は、本発明によるコーティングされた物品の例である。この例は、機能層が2つの誘電体層及び1つの金属層を含む実施形態を示しているが、本発明によれば、追加の誘電体層及び/又は金属層が存在してもよい。さらに、例は、最上層が金属酸窒化物膜、金属窒化物膜、又は第2の保護膜のいずれかである実施形態を示しているが、追加の機能性コーティング及び/又は追加の保護層を、例に示される最上層の上に塗布し得ることが理解される。さらに、例ではガラスの1片の上のコーティングを示すが、このコーティングは合わせガラス、自動車用ガラス、断熱ガラスユニットなどに塗布できることが理解される。
【0068】
例1
基材は機能層でコーティングされる。基材はガラスであった。機能層は、基材の上に配設された第1の誘電体層、金属層、プライマー層、及び第2の誘電体層を含む。第1の誘電体層は、スズ酸亜鉛膜及び酸化亜鉛膜を含む。金属層は、第1の誘電体層の酸化亜鉛膜の上に配設される。金属層は連続した銀層である。プライマー層は金属層の上に配設され、第2の誘電体層はプライマー層の上に配設される。第2の誘電体層は、スズ酸亜鉛を含む。保護層は、機能層の第2の誘電体層の上に配設され、SiNと、SiN層の上に配設され、TiAlOを含む第2の保護層とを含む。すべての厚さは概算である。
【表7】
【0069】
例2
ガラス基材は機能層でコーティングされる。機能層は、第1の誘電体層、金属層、プライマー層、及び第2の誘電体層を含む。第1の誘電体層は、基材の上に配設され、スズ酸亜鉛膜と、そのスズ酸亜鉛膜の上に配置された酸化亜鉛膜とを含む。金属層は、第1の誘電体層の上に配設される。金属層は連続した銀層である。プライマー層は、金属層の上に配設される。第2の誘電体層がプライマー層の上に配設される。この例示的なコーティングされた物品の第2の誘電体層は、第1の酸化亜鉛膜と、第1の層の上に配設される第2のスズ酸亜鉛膜とを含む。保護コーティングが機能層の上に配設され、第2の誘電体層のスズ酸亜鉛膜と接触している。第1の保護層はSiNを含む。第2の保護層は、第1の保護層の上に配設され、TiAlOを含む。すべての厚さは概算である。
【表8】
【0070】
例3
基材は機能層でコーティングされる。基材は、ガラスなどの任意の適切な材料であってよい。機能層は、基材の上に配設された第1の誘電体層、金属層、プライマー層、及び第2の誘電体層を含む。第1の誘電体層は、スズ酸亜鉛膜及び酸化亜鉛膜を含む。金属層は、第1の誘電体層の酸化亜鉛膜の上に配設される。金属層は連続した銀層である。プライマー層は金属層の上に配設され、第2の誘電体層はプライマー層の上に配設される。第2の誘電体層は、スズ酸亜鉛からなる。保護コーティングは、機能層の第2の誘電体層の上に配設され、SiN層、及びSiN層と誘電体層との間に配設されたSiON層を含む。すべての厚さは概算である。
【表9】
【0071】
例4
ガラス基材は機能層でコーティングされる。機能層は、第1の誘電体層、金属層、プライマー層、及び機能層の最上層である第2の誘電体層を含む。第1の誘電体層は、基材の上に配設され、スズ酸亜鉛膜と、そのスズ酸亜鉛膜の上に配置された酸化亜鉛膜とを含む。金属層は、第1の誘電体層の上に配設される。金属層は連続した銀層である。プライマー層は、金属層の上に配設される。第2の誘電体層がプライマー層の上に配設される。この例示的なコーティングされた物品の第2の誘電体層は、スズ酸亜鉛膜からなる。保護コーティングが機能層の上に配設され、スズ酸亜鉛の第2の誘電体層と接触している。保護コーティングは、機能層の第2の誘電体層の上に配設され、SiN層と、SiN層と誘電体層との間に配設されたSiON層とを含む。すべての厚さは概算である。第2の保護層は、SiN層の上に配設され、TiAlOを含む。すべての厚さは概算である。
【表10】
【0072】
例5
ガラス基材は機能層でコーティングされる。機能層は、第1の誘電体層、金属層、プライマー層、及び第2の誘電体層を含む。第1の誘電体層は、基材の上に配設され、スズ酸亜鉛膜と、そのスズ酸亜鉛膜の上に配置された酸化亜鉛膜とを含む。金属層は、第1の誘電体層の上に配設される。金属層は連続した銀層である。プライマー層は、金属層の上に配設される。第2の誘電体層がプライマー層の上に配設される。この例示的なコーティングされた物品の第2の誘電体層は、スズ酸亜鉛膜を含む。保護コーティングが機能層の上に配設され、第2の誘電体層のスズ酸亜鉛膜と接触している。第1の保護層はSiONを含む。第2の保護層は、第1の保護層の上に配設され、TiAlOを含む。すべての厚さは概算である。
【表11】
【0073】
例6
ガラス基材は機能層でコーティングされる。機能層は、第1の誘電体層、金属層、プライマー層、及び第2の誘電体層を含む。第1の誘電体層は、基材の上に配設され、スズ酸亜鉛膜と、そのスズ酸亜鉛膜の上に配置された酸化亜鉛膜とを含む。金属層は、第1の誘電体層の上に配設される。金属層は連続した銀層である。プライマー層は、金属層の上に配設される。第2の誘電体層がプライマー層の上に配設される。この例示的なコーティングされた物品の第2の誘電体層は、スズ酸亜鉛膜を含む。保護コーティングが機能層の上に配設され、第2の誘電体層のスズ酸亜鉛膜と接触している。第1の保護層は勾配膜(gradient film)のSiONを含み、スズ酸亜鉛膜から第1の保護層上に配設され、TiAlOを含む第2の保護層に向かう方向に、N含有量は増加し、O含有量は減少する。すべての厚さは概算である。
【表12】
【0074】
以下の番号付きの項は、本発明の様々な態様を例示するものである。
【0075】
条項1.基材、基材の少なくとも一部の上に第1の機能層、及び機能層の少なくとも一部の上に保護コーティングを含むコーティングされた物品であって、機能層の最上層は金属酸化物膜であり、保護コーティングは、金属窒化物、金属酸窒化物、又はそれらの組合せの1つ以上の層を含む、コーティングされた物品。
【0076】
条項2.金属窒化物、金属酸窒化物、又はそれらの組合せが、窒化ケイ素、酸窒化ケイ素、又はそれらの組合せの少なくとも1つである、条項1のコーティングされた物品。
【0077】
条項3.保護コーティングが、第1の機能層の最上層の金属酸化物膜の少なくとも一部の上に接触する金属酸窒化物膜、及びこの金属酸窒化物膜の少なくとも一部の上に接触する金属窒化物膜を含む、条項1のコーティングされた物品。
【0078】
条項4.保護コーティングが窒化ケイ素膜を含む、条項1から3のいずれか一項のコーティングされた物品。
【0079】
条項5.保護コーティングが酸窒化ケイ素膜を含む、条項1から3のいずれか一項に記載のコーティングされた物品。
【0080】
条項6.金属酸窒化物膜が勾配層であり、ここで第1の機能層の最上層に最も近い金属酸窒化物膜の一部が金属窒化物膜に最も近い金属酸窒化物膜の一部よりも多くの量の酸素を含む、条項3のコーティングされた物品。
【0081】
条項7.保護コーティングが、第1の機能層の最上層の金属酸化物膜の少なくとも一部の上に接触する金属酸窒化物膜を含み、金属酸窒化物膜が、勾配層であり、ここで金属酸窒化物膜中の酸素の量が、第1の機能層の最上層からの距離が増加するにつれて減少し、又はここで第1の機能層の最上層に最も近い金属酸窒化物膜の一部は、第1の機能層の最上層から最も遠い金属酸窒化物膜の部分よりも多くの量の酸素を含む、条項1のコーティングされた物品。
【0082】
条項8.勾配層の金属酸窒化物が酸窒化ケイ素である、条項7のコーティングされた物品。
【0083】
条項9.第1の機能層の最上部誘電体層の金属酸化物膜がスズ酸亜鉛又は酸化亜鉛を含み、金属酸化物膜が保護コーティングの直下にあり、接触している、条項1から8のいずれか一項のコーティングされた物品。
【0084】
条項10.第1の機能層が、基材の少なくとも一部の上に誘電体層、誘電体層の少なくとも一部の上に金属層、及び金属層の少なくとも一部の上に最上層を含む、条項1から9のいずれか一項のコーティングされた物品。
【0085】
条項11.第1の機能層が、金属層の上及び最上層の少なくとも一部の下にプライマー層をさらに含む、条項10のコーティングされた物品。
【0086】
条項12.誘電体層が酸化亜鉛及び/又はスズ酸亜鉛を含む1つ以上の層を含み、金属層がAg、Cu、Au及び/又はPdを含み、及び/又は最上層が、酸化亜鉛及び/又はスズ酸亜鉛を含む、条項10又は11のコーティングされた物品。
【0087】
条項13.機能層の最上層が酸化亜鉛を含まない、条項12のコーティングされた物品。
【0088】
条項14.第1の機能層の少なくとも一部の下、及び基材の少なくとも一部の上に第2の機能層をさらに含む、条項1から13のいずれか一項のコーティングされた物品。
【0089】
条項15.第2の機能層が、第2の誘電体層、第2の誘電体層上に第2の金属層、及び任意に金属層上に第2のプライマー層を含む、条項14のコーティングされた物品。
【0090】
条項16.金属窒化物、金属酸窒化物、又はそれらの組合せの1つ以上の層の上に少なくとも部分的に配設された第2保護膜をさらに含み、第2保護膜は、チタニア、アルミナ、シリカ、ジルコニア、前述のいずれか2つ以上の混合物、又は前述のいずれか1つ以上の合金の少なくとも1つを含む、条項1から15のいずれか一項のコーティングされた物品。
【0091】
条項17.第2の保護膜がTiO及び/又はTiAlOを含む、条項16のコーティングされた物品。
【0092】
条項18.機能層が、金属層と、金属層の少なくとも一部の上にあるプライマー層とを含む、条項1から17のいずれか一項のコーティングされた物品。
【0093】
条項19.プライマー層がチタン又はチタン及びアルミニウムを含み、チタン又はチタン及びアルミニウムが金属層上に堆積された後、チタン又はチタン及びアルミニウムの少なくとも一部が任意に酸化される、条項18のコーティングされた物品。
【0094】
条項20.金属層が、銀、金、パラジウム、銅、又は前述のいずれかの混合物を含む、条項18のコーティングされた物品。
【0095】
条項21.金属層が連続金属膜である、条項18から20のいずれか一項のコーティングされた物品。
【0096】
条項22.金属層が銀、銅、又はそれらの混合物を含む、条項18から21のいずれか一項のコーティングされた物品。
【0097】
条項23.ガラス基材、ガラス基材の少なくとも一部の上にスズ酸亜鉛の第1の層、スズ酸亜鉛の層の少なくとも一部の上に酸化亜鉛の層、酸化亜鉛の層の少なくとも一部の上に銀の層、銀の層の少なくとも一部の上にTi、TiAl及び/又はその酸化物を含むプライマー層、プライマー層の少なくとも一部の上にスズ酸亜鉛又は酸化亜鉛の第2の層、スズ酸亜鉛の第2の層の少なくとも一部の直上に酸窒化ケイ素を含む金属酸窒化物層、金属酸窒化物層の少なくとも一部の直上にケイ素を含む金属窒化物層、及び金属窒化物層の少なくとも一部の上に、Ti、TiAl、及び/又は前述のいずれかの酸化物を含む第2の保護層を含む、条項1のコーティングされた物品。
【0098】
条項24.ガラス基材、ガラス基材の少なくとも一部の直上にスズ酸亜鉛の第1の層、スズ酸亜鉛の層の少なくとも一部の直上に酸化亜鉛の層、酸化亜鉛の層の少なくとも一部の直上に銀の層、銀の層の少なくとも一部の直上にTi、TiAl及び/又は前述のいずれかの酸化物を含むプライマー層、プライマー層の少なくとも一部の直上にスズ酸亜鉛の第2の層、スズ酸亜鉛の第2の層の少なくとも部分の直上にケイ素を含む金属酸窒化物層、金属酸窒化物層の少なくとも一部の直上にケイ素を含む金属窒化物層、及び金属窒化物層の少なくとも一部の直上にTiAlOを含む第2の保護層を含む、条項1のコーティングされた物品。
【0099】
条項25.ガラス基材、ガラス基材の少なくとも一部の上に、250Å~400Åの範囲の厚さを有するスズ酸亜鉛の第1の層、スズ酸亜鉛の層の少なくとも一部の上に、70Å~90Åの範囲の厚さを有する酸化亜鉛の層、酸化亜鉛の層の少なくとも一部の上に、70Å~90Åの範囲の厚さを有する銀の層、銀の層の少なくとも一部の上に、10Å~30Åの範囲の厚さを有するTiを含むプライマー層、プライマー層の少なくとも一部の上に、30Å~100Åの範囲の厚さを有するスズ酸亜鉛の第2の層、スズ酸亜鉛の第2の層の少なくとも一部の直上にSiONを含み、70Å~400Åの範囲の厚さを有する金属酸窒化物層、金属酸窒化物層の少なくとも一部の直上にSiNを含み、100Å~400Åの範囲の厚さを有する金属窒化物層、並びに金属窒化物層の上にTiAlOを含み、100Å~400Åの範囲の厚さを有する第2の保護層を含む、条項1のコーティングされた物品。
【0100】
条項26.車両の車体に取り付けられた条項1から25のいずれか一項のコーティングされた物品。
【0101】
条項27.サンルーフとして自動車に取り付けられた、条項26のコーティングされた物品。
【0102】
条項28.断熱ガラスユニットに取り付けられた、条項1から25のいずれか一項のコーティングされた物品。
【0103】
条項29.基材、基材の少なくとも一部の上に最上層を有する機能層、及び機能層の少なくとも一部の上に保護コーティングを含み、機能層の最上層は、少なくとも1.5及び2.1以下の屈折率を有する誘電体層である、コーティングされた物品。
【0104】
条項30.機能層の最上層がスズ酸亜鉛からなる、条項29のコーティングされた物品。
【0105】
条項31.機能層の最上層が酸化亜鉛を含まない、条項29のコーティングされた物品。
【0106】
条項32.基材、基材の少なくとも一部の上に機能層、及び機能層の少なくとも一部の上に保護コーティングを含むコーティングされた物品であって、機能層は少なくとも1つの金属層及び少なくとも1つの金属層の少なくとも一部の上に接触して少なくとも部分的に配設されたプライマー層を含み、機能層の最上層がプライマー層の少なくとも一部の上に接触して配設され、機能層の最上層は酸化亜鉛を含まない、コーティングされた物品。
【0107】
条項33.第1の表面及び第2の表面を有する第1のプライ、第3の表面及び第4の表面を有する第2のプライ、及び条項1から31のいずれかに記載の機能層及び保護コーティングを含むコーティングを含む断熱ガラスユニットであって、コーティングが、第2の表面又は第3の表面の少なくとも一部の上に配置される、断熱ガラスユニット。
【0108】
条項34.コーティングが第2の表面上に配置される、条項33の断熱ガラスユニット。
【0109】
条項35.第1のプライの第2の表面と第2のプライの第3の表面との間にスペースをさらに含み、スペースがガスで満たされている、条項33又は34の断熱ガラスユニット。
【0110】
条項36.ガスがアルゴンである、条項35の断熱ガラスユニット。
【0111】
条項37.第1の表面及び第2の表面を有する第1のプライ、及び条項1から31のいずれかに記載の機能層及び保護コーティングを含むコーティングを含む自動車用のガラス物品であって、コーティングが、第1の表面又は第2の表面の少なくとも一部上に配置される、自動車用のガラス物品。
【0112】
条項38.コーティングが第2の表面上に配置される、条項34の自動車用のガラス物品。
【0113】
前述の説明に開示された概念から逸脱することなく、本発明に修正を加えることができることは、当業者によって容易に理解される。したがって、本明細書で詳細に記載する特定の実施形態は例示に過ぎず、本発明の範囲に限定されず、添付の特許請求の範囲及びそのありとあらゆる均等物の全範囲が与えられるべきである。

図1A
図1B
図2A
図2B
図3
図4A
図4B
図5
図6
【手続補正書】
【提出日】2023-11-07
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材
前記基材の少なくとも一部の上に第1の機能層であって、前記基材の少なくとも一部の上に銀の層を含む第1の機能層と
第1の機能層の少なくとも一部の上にケイ素を含む金属酸窒化物の層と、
前記金属酸窒化物の層の少なくとも一部の上に、Ti、TiAl、酸化ケイ素、酸窒化ケイ素、TiO 、TiAlO、又はそれらの組み合わせを含む保護層と、
を含む、コーティングされた物品。
【請求項2】
ケイ素を含む前記金属酸窒化物の層が、前記第1の機能層に最も近い前記金属酸窒化物の層の一部が前記保護層に最も近い前記金属酸窒化物の層の一部よりも多い酸素の量を含む勾配層である、請求項1に記載のコーティングされた物品。
【請求項3】
前記第1の機能層が、前記基材と直接接触しているスズ酸亜鉛を含む、請求項1に記載のコーティングされた物品。
【請求項4】
前記第1の機能層が、前記基材の少なくとも一部の上に誘電体層と前記誘電体層の少なくとも一部の上に前記銀の層を含む、請求項1に記載のコーティングされた物品。
【請求項5】
前記銀の層の少なくとも一部の上と前記保護層の少なくとも一部の下にプライマー層をさらに含む、請求項4に記載のコーティングされた物品。
【請求項6】
前記プライマー層が、チタン、ケイ素、二酸化ケイ素、窒化ケイ素、酸窒化ケイ素、ニッケルクロム合金、ジルコニウム、アルミニウム、コバルト及びクロムを含む合金、チタン及びアルミニウム、又はそれらの組み合わせを含む、請求項5に記載のコーティングされた物品。
【請求項7】
前記プライマー層の少なくとも一部が、前記プライマー層が前記銀の層上に配設されてから酸化される、請求項6に記載のコーティングされた物品。
【請求項8】
前記誘電体層が、酸化亜鉛又はスズ酸亜鉛を含む1つ以上の層を含む、請求項5に記載のコーティングされた物品。
【請求項9】
前記第1の機能層の少なくとも1部の下と前記基材の少なくとも1部の上に第2の機能層をさらに含む、請求項1に記載の物品。
【請求項10】
前記保護層が前記金属酸窒化物の層の真上にある、請求項1に記載の物品。
【請求項11】
ガラス基材と、
前記ガラス基材の少なくとも一部の真上にスズ酸亜鉛の第1の層と、
前記スズ酸亜鉛の第1の層の少なくとも一部の真上に酸化亜鉛の層と、
前記酸化亜鉛の層の少なくとも一部の真上に銀の層と、
前記銀の層の少なくとも一部の上にケイ素を含む金属酸窒化物の層と、
前記金属酸窒化物の層の少なくとも一部の真上に保護層と、
を含む、物品。
【請求項12】
前記銀の層の少なくとも一部の上にプライマー層をさらに含む、請求項11に記載の物品。
【請求項13】
前記プライマー層の少なくとも一部の真上に酸化亜鉛又はスズ酸亜鉛の第2の層をさらに含む、請求項11に記載の物品。
【請求項14】
前記保護層が、窒化ケイ素、酸化チタン、チタンアルミニウム酸化物、酸化ケイ素、酸窒化ケイ素、又はそれらの組み合わせを含む、請求項11に記載の物品。
【請求項15】
ガラス基材と、
前記ガラス基材の少なくとも一部の上にスズ酸亜鉛の第1の層であって、250Å~400Åの範囲の厚さを有する第1の層と、
前記スズ酸亜鉛の第1の層の少なくとも一部の上に酸化亜鉛の層であって、70Å~90Åの範囲の厚さを有する酸化亜鉛の層と、
前記酸化亜鉛の層の少なくとも一部の上に銀の層であって、70Å~90Åの範囲の厚さを有する銀の層と、
前記銀の層の少なくとも一部の上にケイ素を含む金属酸窒化物の層であって、70Å~400Åの範囲の厚さを有する金属酸窒化物の層と、
100Å~400Åの範囲の厚さを有する保護層と、
を含む、物品。
【請求項16】
前記銀の層の少なくとも一部の上にプライマー層であって、10Å~30Åの範囲の厚さを有するプライマー層をさらに含む、請求項15に記載の物品。
【請求項17】
前記プライマー層が、Ti、TiAl、Tiの酸化物又は亜酸化物、又は、TiAlの酸化物又は亜酸化物を含む、請求項16に記載の物品。
【請求項18】
前記銀の層の少なくとも一部の上にスズ酸亜鉛の第2の層であって、30Å~100Åの範囲の厚さを有するスズ酸亜鉛の第2の層をさらに含む、請求項15に記載の物品。
【請求項19】
前記保護層が、窒化ケイ素、酸化チタン、チタンアルミニウム酸化物、酸化ケイ素、酸窒化ケイ素、又はそれらの組み合わせを含む、請求項15に記載の物品。
【請求項20】
前記物品が、自動車用のガラス物品における第1のプライであって、前記第1のプライが第3の表面を有し、前記機能コーティングが、前記第3の表面上に配置され、前記自動車用のガラス物品はさらに前記第1のプライの前記第3の表面上に第2のプライを含む、請求項15に記載の物品。
【外国語明細書】