(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024031019
(43)【公開日】2024-03-07
(54)【発明の名称】ショベルの表示装置
(51)【国際特許分類】
E02F 9/26 20060101AFI20240229BHJP
E02F 3/43 20060101ALI20240229BHJP
【FI】
E02F9/26 B
E02F3/43 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022134296
(22)【出願日】2022-08-25
(71)【出願人】
【識別番号】000002107
【氏名又は名称】住友重機械工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】小野寺 将
(72)【発明者】
【氏名】佐野 裕介
(72)【発明者】
【氏名】本田 圭二
【テーマコード(参考)】
2D003
2D015
【Fターム(参考)】
2D003AA01
2D003AB03
2D003AB04
2D003AC06
2D003BA02
2D003BB09
2D003BB11
2D003CA02
2D003DA02
2D003DA04
2D003DB03
2D003DB04
2D003DB05
2D003FA02
2D015HA03
2D015HB03
2D015HB04
2D015HB05
(57)【要約】
【課題】制御の精度を把握させることを目的とする。
【解決手段】ショベルから取得した、前記ショベルの目標施工面に関する情報と、前記ショベルの姿勢情報と、に基づき、前記ショベルの制御の精度を示す指標値を算出する制御部と、前記ショベルの制御の精度を示す指標値を示す情報を表示装置に表示させる表示制御部と、を有する、ショベルの表示装置である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ショベルから取得した、前記ショベルの目標施工面に関する情報と、前記ショベルの姿勢情報と、に基づき、前記ショベルの制御の精度を示す指標値を算出する制御部と、
前記ショベルの制御の精度を示す指標値を示す情報を表示装置に表示させる表示制御部と、を有する、ショベルの表示装置。
【請求項2】
前記ショベルは、
下部走行体と、前記下部走行体に対して、旋回自在に搭載される上部旋回体と、前記上部旋回体に取り付けられた、ブーム、アーム及びバケットを含む複数のアタッチメントを有し、
前記ショベルの制御の精度を示す指標値は、
前記複数のアタッチメントの速度比、又は、角速度比を用いた値である、請求項1記載のショベルの表示装置。
【請求項3】
前記ショベルは、
下部走行体と、前記下部走行体に対して、旋回自在に搭載される上部旋回体と、前記上部旋回体に取り付けられた、ブーム、アーム及びバケットを含む複数のアタッチメントと、前記複数のアタッチメントを駆動させる複数のアクチュエータを有し、
前記ショベルの制御の精度を示す指標値は、
前記複数のアクチュエータの固有振動数を用いた値である、請求項1記載のショベルの表示装置。
【請求項4】
前記表示制御部は、
前記制御の精度を示す指標値を、前記目標施工面と対応付けて前記表示装置に表示させる、請求項1乃至3の何れか一項に記載のショベルの表示装置。
【請求項5】
前記制御部は、
前記目標施工面と、前記制御の精度を示す指標値と、に基づき、前記目標施工面において注意深い操作が要求される注意領域を特定し、
前記表示制御部は、
前記目標施工面と、前記注意領域とを対応付けた情報を前記表示装置に表示させる、請求項4記載のショベルの表示装置。
【請求項6】
前記制御部は、
前記注意領域において推奨される操作に関する情報を出力する、請求項5記載のショベルの表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ショベルの表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来では、アタッチメントを自律的に動作させたときにアタッチメントの所定部位が予め設定された軌道を正確に辿ることができるショベルが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述した従来の技術では、設計面やショベルの姿勢等の条件によって、制御の精度が変化してしまう。
【0005】
そこで、上記課題に鑑み、制御の精度を把握させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本開示の一実施形態に係るショベルの表示装置は、ショベルから取得した、前記ショベルの目標施工面に関する情報と、前記ショベルの姿勢情報と、に基づき、前記ショベルの制御の精度を示す指標値を算出する制御部と、前記ショベルの制御の精度を示す指標値を示す情報を表示装置に表示させる表示制御部と、を有する、ショベルの表示装置である。
【発明の効果】
【0007】
制御の精度を把握させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図3】ショベルに搭載される基本システムの構成例を示す図である。
【
図4】ショベルに搭載される油圧システムの構成例を示す図である。
【
図5A】アームシリンダの操作に関する油圧システム部分を抜き出した図である。
【
図5B】ブームシリンダの操作に関する油圧システム部分を抜き出した図である。
【
図5C】バケットシリンダの操作に関する油圧システム部分を抜き出した図である。
【
図5D】旋回油圧モータの操作に関する油圧システム部分を抜き出した図である。
【
図8】コントローラの処理を説明するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
最初に、
図1及び
図2を参照して、本発明の実施形態に係る掘削機としてのショベル100について説明する。
図1はショベルの側面図であり、
図2はショベルの上面図である。
【0010】
本実施形態では、ショベル100の下部走行体1は被駆動体としてのクローラ1Cを含む。クローラ1Cは、下部走行体1に搭載されている走行用油圧モータ2Mによって駆動される。但し、走行用油圧モータ2Mは、電動アクチュエータとしての走行用電動発電機であってもよい。具体的には、クローラ1Cは左クローラ1CL及び右クローラ1CRを含む。左クローラ1CLは左走行用油圧モータ2MLによって駆動され、右クローラ1CRは右走行用油圧モータ2MRによって駆動される。下部走行体1は、クローラ1Cによって駆動されるため、被駆動体として機能する。
【0011】
下部走行体1には旋回機構2を介して上部旋回体3が旋回可能に搭載されている。被駆動体としての旋回機構2は、上部旋回体3に搭載されている旋回用油圧モータ2Aによって駆動される。但し、旋回用油圧モータ2Aは、電動アクチュエータとしての旋回用電動発電機であってもよい。上部旋回体3は、旋回機構2によって駆動されるため、被駆動体として機能する。
【0012】
上部旋回体3には被駆動体としてのブーム4が取り付けられている。ブーム4の先端には被駆動体としてのアーム5が取り付けられ、アーム5の先端に被駆動体及びエンドアタッチメントとしてのバケット6が取り付けられている。ブーム4、アーム5及びバケット6は、アタッチメントの一例である掘削アタッチメントを構成する。ブーム4はブームシリンダ7で駆動され、アーム5はアームシリンダ8で駆動され、バケット6はバケットシリンダ9で駆動される。
【0013】
ブーム4にはブーム角度センサS1が取り付けられ、アーム5にはアーム角度センサS2が取り付けられ、バケット6にはバケット角度センサS3が取り付けられている。
【0014】
ブーム角度センサS1はブーム4の回動角度を検出する。本実施形態では、ブーム角度センサS1は加速度センサであり、上部旋回体3に対するブーム4の回動角度であるブーム角度を検出できる。ブーム角度は、例えば、ブーム4を最も下げたときに最小角度となり、ブーム4を上げるにつれて大きくなる。
【0015】
アーム角度センサS2はアーム5の回動角度を検出する。本実施形態では、アーム角度センサS2は加速度センサであり、ブーム4に対するアーム5の回動角度であるアーム角度を検出できる。アーム角度は、例えば、アーム5を最も閉じたときに最小角度となり、アーム5を開くにつれて大きくなる。
【0016】
バケット角度センサS3はバケット6の回動角度を検出する。本実施形態では、バケット角度センサS3は加速度センサであり、アーム5に対するバケット6の回動角度であるバケット角度を検出できる。バケット角度は、例えば、バケット6を最も閉じたときに最小角度となり、バケット6を開くにつれて大きくなる。
【0017】
ブーム角度センサS1、アーム角度センサS2及びバケット角度センサS3はそれぞれ、可変抵抗器を利用したポテンショメータ、対応する油圧シリンダのストローク量を検出するストロークセンサ、連結ピン回りの回動角度を検出するロータリエンコーダ、ジャイロセンサ、加速度センサとジャイロセンサの組み合わせ等であってもよい。
【0018】
上部旋回体3には、運転室としてのキャビン10が設けられ、且つ、エンジン11等の動力源が搭載されている。また、上部旋回体3には、コントローラ30、物体検知装置70、撮像装置80、向き検出装置85、機体傾斜センサS4、旋回角速度センサS5等が取り付けられている。キャビン10の内部には、操作装置26等が設けられている。なお、本書では、便宜上、上部旋回体3における、ブーム4が取り付けられている側を前方とし、カウンタウェイトが取り付けられている側を後方とする。
【0019】
コントローラ30は、ショベル100を制御するための制御装置である。本実施形態では、コントローラ30は、CPU、RAM、NVRAM、ROM等を備えたコンピュータで構成されている。そして、コントローラ30は、各機能要素に対応するプログラムをROMから読み出してRAMにロードし、対応する処理をCPUに実行させる。
【0020】
物体検知装置70は、ショベル100の周囲に存在する物体を検知するように構成されている。また、物体検知装置70は、物体検知装置70又はショベル100から認識された物体までの距離を算出するように構成されていてもよい。物体は、例えば、人、動物、車両、建設機械、建造物、穴等を含む。物体検知装置70は、例えば、超音波センサ、ミリ波レーダ、ステレオカメラ、LIDAR、距離画像センサ、赤外線センサ等を含む。本実施形態では、物体検知装置70は、キャビン10の上面前端に取り付けられた前方センサ70F、上部旋回体3の上面後端に取り付けられた後方センサ70B、上部旋回体3の上面左端に取り付けられた左方センサ70L、及び、上部旋回体3の上面右端に取り付けられた右方センサ70Rを含む。
【0021】
物体検知装置70は、ショベル100の周囲に設定された所定領域内の所定物体を検知するように構成されていてもよい。例えば、人と人以外の物体とを区別できるように構成されていてもよい。
【0022】
撮像装置80は、ショベル100の周囲を撮像するように構成されている。本実施形態では、撮像装置80は、上部旋回体3の上面後端に取り付けられた後方カメラ80B、上部旋回体3の上面左端に取り付けられた左方カメラ80L、及び、上部旋回体3の上面右端に取り付けられた右方カメラ80Rを含む。前方カメラを含んでいてもよい。
【0023】
後方カメラ80Bは後方センサ70Bに隣接して配置され、左方カメラ80Lは左方センサ70Lに隣接して配置され、且つ、右方カメラ80Rは右方センサ70Rに隣接して配置されている。前方カメラは、前方センサ70Fに隣接して配置されていてもよい。
【0024】
撮像装置80が撮像した画像は、キャビン10内に設置されている表示装置DSに表示される。撮像装置80は、俯瞰画像等の視点変換画像を表示装置DSに表示できるように構成されていてもよい。俯瞰画像は、例えば、後方カメラ80B、左方カメラ80L及び右方カメラ80Rのそれぞれが出力する画像を合成して生成される。
【0025】
撮像装置80は、物体検知装置として機能してもよい。この場合、物体検知装置70は省略されてもよい。
【0026】
この構成により、ショベル100は、物体検知装置70が検知した物体の画像を表示装置DSに表示できる。そのため、ショベル100のオペレータは、被駆動体の動作が制限或いは禁止された場合、表示装置DSに表示されている画像を見ることで、その原因となった物体が何であるかをすぐに確認できる。
【0027】
向き検出装置85は、上部旋回体3の向きと下部走行体1の向きとの相対的な関係に関する情報(以下、「向きに関する情報」とする。)を検出するように構成されている。例えば、向き検出装置85は、下部走行体1に取り付けられた地磁気センサと上部旋回体3に取り付けられた地磁気センサの組み合わせで構成されていてもよい。或いは、向き検出装置85は、下部走行体1に取り付けられたGNSS受信機と上部旋回体3に取り付けられたGNSS受信機の組み合わせで構成されていてもよい。旋回用電動発電機で上部旋回体3が旋回駆動される構成では、向き検出装置85は、レゾルバで構成されていてもよい。向き検出装置85は、例えば、下部走行体1と上部旋回体3との間の相対回転を実現する旋回機構2に関連して設けられるセンタージョイントに配置されていてもよい。
【0028】
機体傾斜センサS4は、所定の平面に対するショベル100の傾斜を検出する。本実施形態では、機体傾斜センサS4は、水平面に関する上部旋回体3の前後軸の傾斜角及び左右軸の傾斜角を検出する加速度センサである。加速度センサとジャイロセンサの組み合わせで構成されていてもよい。上部旋回体3の前後軸及び左右軸は、例えば、互いに直交してショベル100の旋回軸上の一点であるショベル中心点を通る。
【0029】
旋回角速度センサS5は、上部旋回体3の旋回角速度を検出する。本実施形態では、ジャイロセンサである。レゾルバ、ロータリエンコーダ等であってもよい。旋回角速度センサS5は、旋回速度を検出してもよい。旋回速度は、旋回角速度から算出されてもよい。
【0030】
以下では、ブーム角度センサS1、アーム角度センサS2、バケット角度センサS3、機体傾斜センサS4及び旋回角速度センサS5の任意の組み合わせは、集合的に姿勢センサとも称される。
【0031】
次に、
図3を参照し、ショベル100に搭載される基本システムについて説明する。
図3は、ショベルに搭載される基本システムの構成例を示す図である。
図3において、機械的動力伝達ラインは二重線、作動油ラインは太実線、パイロットラインは破線、電力ラインは細実線、電気制御ラインは一点鎖線でそれぞれ示されている。
【0032】
基本システムは、主に、エンジン11、メインポンプ14、パイロットポンプ15、コントロールバルブ17、操作装置26、操作圧センサ29、コントローラ30、警報装置49、制御弁60、物体検知装置70、エンジンコントロールユニット(ECU74)、エンジン回転数調整ダイヤル79及び撮像装置80等を含む。
【0033】
エンジン11は、負荷の増減にかかわらずエンジン回転数を一定に維持するアイソクロナス制御を採用したディーゼルエンジンである。エンジン11における燃料噴射量、燃料噴射タイミング、ブースト圧等は、ECU74により制御される。エンジン11は油圧ポンプとしてのメインポンプ14及びパイロットポンプ15のそれぞれに接続されている。メインポンプ14は作動油ラインを介してコントロールバルブ17に接続されている。
【0034】
コントロールバルブ17は、ショベル100の油圧系の制御を行う油圧制御装置である。コントロールバルブ17は、左走行用油圧モータ2ML、右走行用油圧モータ2MR、ブームシリンダ7、アームシリンダ8、バケットシリンダ9、旋回用油圧モータ2A等の油圧アクチュエータに接続されている。具体的には、コントロールバルブ17は、各油圧アクチュエータに対応する複数のスプール弁を含む。各スプール弁は、PCポートの開口面積及びCTポートの開口面積を増減できるように、パイロット圧に応じて変位可能に構成されている。PCポートは、メインポンプ14と油圧アクチュエータとを連通させるポートである。CTポートは、油圧アクチュエータと作動油タンクとを連通させるポートである。
【0035】
操作装置26は、オペレータがアクチュエータの操作のために用いる装置である。アクチュエータは、油圧アクチュエータ及び電動アクチュエータの少なくとも一方を含む。本実施形態では、操作装置26は、油圧式操作装置であり、パイロットラインを介して、パイロットポンプ15が吐出する作動油を、コントロールバルブ17内の対応するスプール弁のパイロットポートに供給する。パイロットポートのそれぞれに供給される作動油の圧力(パイロット圧)は、油圧アクチュエータのそれぞれに対応する操作装置26の操作方向及び操作量に応じた圧力である。操作装置26は、例えば、左操作レバー、右操作レバー及び走行操作装置を含む。走行操作装置は、例えば、走行レバー及び走行ペダルを含む。操作装置26は、電気式操作装置であってもよい。
【0036】
吐出圧センサ28は、メインポンプ14の吐出圧を検出する。本実施形態では、吐出圧センサ28は、検出した値をコントローラ30に対して出力する。
【0037】
操作圧センサ29は、オペレータによる操作装置26の操作の内容を検出する。本実施形態では、操作圧センサ29は、アクチュエータのそれぞれに対応する操作装置26の操作方向及び操作量を圧力(操作圧)の形で検出し、検出した値をコントローラ30に対して出力する。操作装置26の操作内容は、操作圧センサ以外の他のセンサを用いて検出されてもよい。
【0038】
警報装置49は、ショベル100の作業に携わる人の注意を喚起できるように構成されている。警報装置49は、例えば、室内警報装置及び室外警報装置の組み合わせで構成されていてもよい。室内警報装置は、キャビン10内にいるショベル100のオペレータの注意を喚起できるように構成されている。室内警報装置は、例えば、キャビン10内に設けられた音声出力装置、振動発生装置及び発光装置の少なくとも1つを含む。室内警報装置は、表示装置DSであってもよい。室外警報装置は、ショベル100の周囲で作業する作業者の注意を喚起できるように構成されている。室外警報装置は、例えば、キャビン10の外に設けられた音声出力装置及び発光装置の少なくとも1つを含む。室外警報装置としての音声出力装置は、例えば、上部旋回体3の底面に取り付けられている走行アラーム装置であってもよい。室外警報装置は、上部旋回体3上に設けられる発光装置であってもよい。但し、室外警報装置は省略されてもよい。警報装置49は、例えば、物体検知装置70が物体を検知した場合に、ショベル100の作業に携わる人にその旨を報知してもよい。
【0039】
制御弁60は、操作装置26の有効状態と無効状態とを切り換えできるように構成されている。操作装置26の有効状態は、オペレータが操作装置26を用いて油圧アクチュエータを操作できる状態である。操作装置26の無効状態は、オペレータが操作装置26を用いて油圧アクチュエータを操作できない状態である。本実施形態では、制御弁60は、コントローラ30からの指令に応じて動作するように構成されているゲートロック弁である。具体的には、制御弁60は、パイロットポンプ15と操作装置26とを繋ぐパイロットラインに配置され、コントローラ30からの指令に応じてパイロットラインの遮断・連通を切り換えできるように構成されている。操作装置26は、例えば、不図示のゲートロックレバーが引き上げられてゲートロック弁が開かれたときに有効状態となり、ゲートロックレバーが押し下げられてゲートロック弁が閉じられたときに無効状態となる。
【0040】
ECU74は、冷却水温等、エンジン11の状態に関するデータをコントローラ30に向けて出力する。メインポンプ14のレギュレータ13は、斜板傾転角に関するデータをコントローラ30に向けて出力する。吐出圧センサ28は、メインポンプ14の吐出圧に関するデータをコントローラ30に向けて出力する。作動油タンクとメインポンプ14との間の管路に設けられた油温センサ14cは、その管路を流れる作動油の温度に関するデータをコントローラ30に向けて出力する。操作圧センサ29は、操作装置26が操作されたときに生成されるパイロット圧に関するデータをコントローラ30に向けて出力する。コントローラ30は一時記憶部(メモリ)にこれらのデータを蓄積しておき、必要なときに表示装置DSに向けて出力できる。
【0041】
エンジン回転数調整ダイヤル79は、エンジン11の回転数を調整するためのダイヤルである。エンジン回転数調整ダイヤル79は、エンジン回転数の設定状態に関するデータをコントローラ30に向けて出力する。エンジン回転数調整ダイヤル79は、SPモード、Hモード、Aモード及びアイドリングモードの4段階でエンジン回転数を切り換えできるように構成されている。SPモードは、作業量を優先したい場合に選択される回転数モードであり、最も高いエンジン回転数を利用する。Hモードは、作業量と燃費を両立させたい場合に選択される回転数モードであり、二番目に高いエンジン回転数を利用する。Aモードは、燃費を優先させながら低騒音でショベル100を稼働させたい場合に選択される回転数モードであり、三番目に高いエンジン回転数を利用する。アイドリングモードは、エンジン11をアイドリング状態にしたい場合に選択される回転数モードであり、最も低いエンジン回転数を利用する。エンジン11は、エンジン回転数調整ダイヤル79で設定された回転数モードに対応するエンジン回転数で一定となるように制御される。
【0042】
表示装置DSは、制御部DSa、画像表示部DS1、及び、入力部としてのスイッチパネルDS2を有する。制御部DSaは、画像表示部DS1に表示される画像を制御できるように構成されている。本実施形態では、制御部DSaは、CPU、RAM、NVRAM、ROM等を備えたコンピュータで構成されている。この場合、制御部DSaは、各機能要素に対応するプログラムをROMから読み出してRAMにロードし、対応する処理をCPUに実行させる。但し、各機能要素は、ハードウェアで構成されていてもよく、ソフトウェアとハードウェアの組み合わせで構成されていてもよい。また、画像表示部DS1に表示される画像は、コントローラ30又は撮像装置80によって制御されてもよい。
【0043】
スイッチパネルDS2は、ハードウェアスイッチを含むパネルである。スイッチパネルDS2は、タッチパネルであってもよい。表示装置DSは、蓄電池BTから電力の供給を受けて動作する。蓄電池BTは、例えば、オルタネータ11aで発電した電気で充電される。蓄電池BTの電力は、コントローラ30等に供給されてもよい。エンジン11のスタータ11bは、例えば、蓄電池BTからの電力で駆動され、エンジン11を始動する。
【0044】
レバーボタンLBは、操作装置26に設けられたボタンである。本実施形態では、レバーボタンLBは、操作装置26としての操作レバーの先端に設けられたボタンである。ショベル100のオペレータは、操作レバーを操作しながらレバーボタンLBを操作できる。オペレータは、例えば、操作レバーを手で握った状態でレバーボタンLBを親指で押すことができる。
【0045】
次に、
図4を参照し、ショベル100に搭載される油圧システムの構成例について説明する。
図4は、ショベルに搭載される油圧システムの構成例を示す図である。
図4は、機械的動力伝達系、作動油ライン、パイロットライン及び電気制御系を、それぞれ二重線、実線、破線及び点線で示している。
【0046】
ショベル100の油圧システムは、主に、エンジン11、レギュレータ13、メインポンプ14、パイロットポンプ15、コントロールバルブ17、操作装置26、吐出圧センサ28、操作圧センサ29、コントローラ30、制御弁60等を含む。
【0047】
図4において、油圧システムは、エンジン11によって駆動されるメインポンプ14から、センターバイパス管路40又はパラレル管路42を経て作動油タンクまで作動油を循環させている。
【0048】
エンジン11は、ショベル100の駆動源である。本実施形態では、エンジン11は、例えば、所定の回転数を維持するように動作するディーゼルエンジンである。エンジン11の出力軸は、メインポンプ14及びパイロットポンプ15のそれぞれの入力軸に連結されている。
【0049】
メインポンプ14は、作動油ラインを介して作動油をコントロールバルブ17に供給する。本実施形態では、メインポンプ14は、斜板式可変容量型油圧ポンプである。
【0050】
レギュレータ13は、メインポンプ14の吐出量を制御する。本実施形態では、レギュレータ13は、コントローラ30からの制御指令に応じてメインポンプ14の斜板傾転角を調節することによってメインポンプ14の吐出量を制御する。
【0051】
パイロットポンプ15は、パイロットラインを介して操作装置26を含む油圧制御機器に作動油を供給する。本実施形態では、パイロットポンプ15は、固定容量型油圧ポンプである。
【0052】
コントロールバルブ17は、ショベル100における油圧システムを制御する油圧制御装置である。本実施形態では、コントロールバルブ17は、制御弁171~176を含む。制御弁175は制御弁175L及び制御弁175Rを含み、制御弁176は制御弁176L及び制御弁1756を含む。コントロールバルブ17は、制御弁171~176を通じ、メインポンプ14が吐出する作動油を1又は複数の油圧アクチュエータに選択的に供給できる。制御弁171~176は、メインポンプ14から油圧アクチュエータに流れる作動油の流量、及び、油圧アクチュエータから作動油タンクに流れる作動油の流量を制御する。油圧アクチュエータは、ブームシリンダ7、アームシリンダ8、バケットシリンダ9、左走行用油圧モータ2ML、右走行用油圧モータ2MR及び旋回用油圧モータ2Aを含む。
【0053】
メインポンプ14は、左メインポンプ14L及び右メインポンプ14Rを含む。そして、左メインポンプ14Lは、左センターバイパス管路40L又は左パラレル管路42Lを経て作動油タンクまで作動油を循環させ、右メインポンプ14Rは、右センターバイパス管路40R又は右パラレル管路42Rを経て作動油タンクまで作動油を循環させる。
【0054】
左センターバイパス管路40Lは、コントロールバルブ17内に配置された制御弁171、173、175L及び176Lを通る作動油ラインである。右センターバイパス管路40Rは、コントロールバルブ17内に配置された制御弁172、174、175R及び176Rを通る作動油ラインである。
【0055】
制御弁171は、左メインポンプ14Lが吐出する作動油を左走行用油圧モータ2MLへ供給し、且つ、左走行用油圧モータ2MLが吐出する作動油を作動油タンクへ排出するために作動油の流れを切り換えるスプール弁である。
【0056】
制御弁172は、右メインポンプ14Rが吐出する作動油を右走行用油圧モータ2MRへ供給し、且つ、右走行用油圧モータ2MRが吐出する作動油を作動油タンクへ排出するために作動油の流れを切り換えるスプール弁である。
【0057】
制御弁173は、左メインポンプ14Lが吐出する作動油を旋回用油圧モータ2Aへ供給し、且つ、旋回用油圧モータ2Aが吐出する作動油を作動油タンクへ排出するために作動油の流れを切り換えるスプール弁である。
【0058】
制御弁174は、右メインポンプ14Rが吐出する作動油をバケットシリンダ9へ供給し、且つ、バケットシリンダ9内の作動油を作動油タンクへ排出するために作動油の流れを切り換えるスプール弁である。
【0059】
制御弁175Lは、左メインポンプ14Lが吐出する作動油をブームシリンダ7へ供給するために作動油の流れを切り換えるスプール弁である。制御弁175Rは、右メインポンプ14Rが吐出する作動油をブームシリンダ7へ供給し、且つ、ブームシリンダ7内の作動油を作動油タンクへ排出するために作動油の流れを切り換えるスプール弁である。
【0060】
制御弁176Lは、左メインポンプ14Lが吐出する作動油をアームシリンダ8へ供給し、且つ、アームシリンダ8内の作動油を作動油タンクへ排出するために作動油の流れを切り換えるスプール弁である。
【0061】
制御弁176Rは、右メインポンプ14Rが吐出する作動油をアームシリンダ8へ供給し、且つ、アームシリンダ8内の作動油を作動油タンクへ排出するために作動油の流れを切り換えるスプール弁である。
【0062】
左パラレル管路42Lは、左センターバイパス管路40Lに並行する作動油ラインである。左パラレル管路42Lは、制御弁171、173、175Lの何れかによって左センターバイパス管路40Lを通る作動油の流れが制限或いは遮断された場合に、より下流の制御弁に作動油を供給できる。右パラレル管路42Rは、右センターバイパス管路40Rに並行する作動油ラインである。右パラレル管路42Rは、制御弁172、174、175Rの何れかによって右センターバイパス管路40Rを通る作動油の流れが制限或いは遮断された場合に、より下流の制御弁に作動油を供給できる。
【0063】
レギュレータ13は、左レギュレータ13L及び右レギュレータ13Rを含む。左レギュレータ13Lは、左メインポンプ14Lの吐出圧に応じて左メインポンプ14Lの斜板傾転角を調節することによって、左メインポンプ14Lの吐出量を制御する。具体的には、左レギュレータ13Lは、例えば、左メインポンプ14Lの吐出圧の増大に応じて左メインポンプ14Lの斜板傾転角を調節して吐出量を減少させる。右レギュレータ13Rについても同様である。吐出圧と吐出量との積で表されるメインポンプ14の吸収馬力がエンジン11の出力馬力を超えないようにするためである。
【0064】
操作装置26は、左操作レバー26L、右操作レバー26R及び走行レバー26Dを含む。走行レバー26Dは、左走行レバー26DL及び右走行レバー26DRを含む。
【0065】
左操作レバー26Lは、旋回操作とアーム5の操作に用いられる。左操作レバー26Lは、前後方向に操作されると、パイロットポンプ15が吐出する作動油を利用し、レバー操作量に応じた制御圧を制御弁176のパイロットポートに導入させる。また、左右方向に操作されると、パイロットポンプ15が吐出する作動油を利用し、レバー操作量に応じた制御圧を制御弁173のパイロットポートに導入させる。
【0066】
具体的には、左操作レバー26Lは、アーム閉じ方向に操作された場合に、制御弁176Lの右パイロットポートに作動油を導入させ、且つ、制御弁176Rの左パイロットポートに作動油を導入させる。また、左操作レバー26Lは、アーム開き方向に操作された場合には、制御弁176Lの左パイロットポートに作動油を導入させ、且つ、制御弁176Rの右パイロットポートに作動油を導入させる。また、左操作レバー26Lは、左旋回方向に操作された場合に、制御弁173の左パイロットポートに作動油を導入させ、右旋回方向に操作された場合に、制御弁173の右パイロットポートに作動油を導入させる。
【0067】
右操作レバー26Rは、ブーム4の操作とバケット6の操作に用いられる。右操作レバー26Rは、前後方向に操作されると、パイロットポンプ15が吐出する作動油を利用し、レバー操作量に応じた制御圧を制御弁175のパイロットポートに導入させる。また、左右方向に操作されると、パイロットポンプ15が吐出する作動油を利用し、レバー操作量に応じた制御圧を制御弁174のパイロットポートに導入させる。
【0068】
具体的には、右操作レバー26Rは、ブーム下げ方向に操作された場合に、制御弁175Rの左パイロットポートに作動油を導入させる。また、右操作レバー26Rは、ブーム上げ方向に操作された場合には、制御弁175Lの右パイロットポートに作動油を導入させ、且つ、制御弁175Rの左パイロットポートに作動油を導入させる。また、右操作レバー26Rは、バケット閉じ方向に操作された場合に、制御弁174の右パイロットポートに作動油を導入させ、バケット開き方向に操作された場合に、制御弁174の左パイロットポートに作動油を導入させる。
【0069】
走行レバー26Dは、クローラ1Cの操作に用いられる。具体的には、左走行レバー26DLは、左クローラ1CLの操作に用いられる。左走行ペダルと連動するように構成されていてもよい。左走行レバー26DLは、前後方向に操作されると、パイロットポンプ15が吐出する作動油を利用し、レバー操作量に応じた制御圧を制御弁171のパイロットポートに導入させる。右走行レバー26DRは、右クローラ1CRの操作に用いられる。右走行ペダルと連動するように構成されていてもよい。右走行レバー26DRは、前後方向に操作されると、パイロットポンプ15が吐出する作動油を利用し、レバー操作量に応じた制御圧を制御弁172のパイロットポートに導入させる。
【0070】
吐出圧センサ28は、吐出圧センサ28L及び吐出圧センサ28Rを含む。吐出圧センサ28Lは、左メインポンプ14Lの吐出圧を検出し、検出した値をコントローラ30に対して出力する。吐出圧センサ28Rについても同様である。
【0071】
操作圧センサ29は、操作圧センサ29LA、29LB、29RA、29RB、29DL、29DRを含む。操作圧センサ29LAは、オペレータによる左操作レバー26Lに対する前後方向への操作の内容を圧力の形で検出し、検出した値をコントローラ30に対して出力する。操作内容は、例えば、レバー操作方向、レバー操作量(レバー操作角度)等である。
【0072】
同様に、操作圧センサ29LBは、オペレータによる左操作レバー26Lに対する左右方向への操作の内容を圧力の形で検出し、検出した値をコントローラ30に対して出力する。操作圧センサ29RAは、オペレータによる右操作レバー26Rに対する前後方向への操作の内容を圧力の形で検出し、検出した値をコントローラ30に対して出力する。操作圧センサ29RBは、オペレータによる右操作レバー26Rに対する左右方向への操作の内容を圧力の形で検出し、検出した値をコントローラ30に対して出力する。操作圧センサ29DLは、オペレータによる左走行レバー26DLに対する前後方向への操作の内容を圧力の形で検出し、検出した値をコントローラ30に対して出力する。操作圧センサ29DRは、オペレータによる右走行レバー26DRに対する前後方向への操作の内容を圧力の形で検出し、検出した値をコントローラ30に対して出力する。
【0073】
コントローラ30は、操作圧センサ29の出力を受信し、必要に応じてレギュレータ13に対して制御指令を出力し、メインポンプ14の吐出量を変化させる。
【0074】
ここで、絞り18と制御圧センサ19を用いたネガティブコントロール制御について説明する。絞り18は左絞り18L及び右絞り18Rを含み、制御圧センサ19は左制御圧センサ19L及び右制御圧センサ19Rを含む。
【0075】
左センターバイパス管路40Lには、最も下流にある制御弁176Lと作動油タンクとの間に左絞り18Lが配置されている。そのため、左メインポンプ14Lが吐出した作動油の流れは、左絞り18Lで制限される。そして、左絞り18Lは、左レギュレータ13Lを制御するための制御圧を発生させる。左制御圧センサ19Lは、この制御圧を検出するためのセンサであり、検出した値をコントローラ30に対して出力する。コントローラ30は、この制御圧に応じて左メインポンプ14Lの斜板傾転角を調節することによって、左メインポンプ14Lの吐出量を制御する。コントローラ30は、この制御圧が大きいほど左メインポンプ14Lの吐出量を減少させ、この制御圧が小さいほど左メインポンプ14Lの吐出量を増大させる。右メインポンプ14Rの吐出量も同様に制御される。
【0076】
具体的には、
図4で示されるようにショベル100における油圧アクチュエータが何れも操作されていない待機状態の場合、左メインポンプ14Lが吐出する作動油は、左センターバイパス管路40Lを通って左絞り18Lに至る。そして、左メインポンプ14Lが吐出する作動油の流れは、左絞り18Lの上流で発生する制御圧を増大させる。その結果、コントローラ30は、左メインポンプ14Lの吐出量を許容最小吐出量まで減少させ、吐出した作動油が左センターバイパス管路40Lを通過する際の圧力損失(ポンピングロス)を抑制する。一方、何れかの油圧アクチュエータが操作された場合、左メインポンプ14Lが吐出する作動油は、操作対象の油圧アクチュエータに対応する制御弁を介して、操作対象の油圧アクチュエータに流れ込む。そして、左メインポンプ14Lが吐出する作動油の流れは、左絞り18Lに至る量を減少或いは消失させ、左絞り18Lの上流で発生する制御圧を低下させる。その結果、コントローラ30は、左メインポンプ14Lの吐出量を増大させ、操作対象の油圧アクチュエータに十分な作動油を循環させ、操作対象の油圧アクチュエータの駆動を確かなものとする。なお、コントローラ30は、右メインポンプ14Rの吐出量も同様に制御する。
【0077】
上述のような構成により、
図4の油圧システムは、待機状態においては、メインポンプ14における無駄なエネルギ消費を抑制できる。無駄なエネルギ消費は、メインポンプ14が吐出する作動油がセンターバイパス管路40で発生させるポンピングロスを含む。また、
図4の油圧システムは、油圧アクチュエータを作動させる場合には、メインポンプ14から必要十分な作動油を作動対象の油圧アクチュエータに確実に供給できる。
【0078】
制御弁60は、操作装置26の有効状態と無効状態とを切り換えるように構成されている。本実施形態では、制御弁60は、スプール式電磁弁であり、コントローラ30からの電流指令に応じて動作するように構成されている。操作装置26の有効状態は、オペレータが操作装置26を操作することで関連する被駆動体を動かすことができる状態であり、操作装置26の無効状態は、オペレータが操作装置26を操作しても関連する被駆動体を動かすことができない状態である。
【0079】
本実施形態では、制御弁60は、パイロットポンプ15と操作装置26とを繋ぐパイロットラインCD1の連通状態と遮断状態とを切り換え可能な電磁弁である。具体的には、制御弁60は、コントローラ30からの指令に応じてパイロットラインCD1の連通状態と遮断状態とを切り換えるように構成されている。より具体的には、制御弁60は、第1弁位置になったときにパイロットラインCD1を連通状態とし、第2弁位置になったときにパイロットラインCD1を遮断状態とする。
図4は、制御弁60が第1弁位置となっていること、及び、パイロットラインCD1が連通状態となっていることを示している。
【0080】
制御弁60は、不図示のゲートロックレバーに連動するように構成されていてもよい。具体的には、ゲートロックレバーが押し下げられたときにパイロットラインCD1を遮断状態にし、ゲートロックレバーが引き上げられたときにパイロットラインCD1を連通状態にするように構成されていてもよい。また、制御弁60は、複数の操作装置26のそれぞれの有効状態と無効状態とを別々に切り換えできるように構成されていてもよい。
【0081】
上述の油圧システムを利用し、コントローラ30は、必要に応じてショベル100の駆動部の制動を自動的に実行できるように構成されていてもよい。駆動部の制動を自動的に実行することは、例えば、その駆動部に関する操作装置26が操作されている場合であっても、その駆動部の動きを強制的に減速させ或いは停止させることを含んでいてもよい。
【0082】
コントローラ30は、例えば、物体検知装置70が物体を検知した場合に、駆動部の制動を自動的に実行できるように構成されていてもよい。この場合、駆動部は、例えば、旋回用油圧モータ2A及び走行用油圧モータ2Mの少なくとも1つを含んでいてもよい。駆動部の制動は、例えば、操作装置26が操作されている状態で、制御弁60によってパイロットラインCD1を連通状態から遮断状態に切り換えることで実現される。操作されている状態の操作装置26に対応する制御弁が中立弁位置に戻るためである。なお、駆動部の制動は、駆動部の動作速度を低下させること、及び、駆動部の動きを停止させることの少なくとも1つを含んでいてもよい。
【0083】
コントローラ30は、駆動部の制動を実行している場合に、所定の条件が満たされたときに、駆動部の制動を解除できるように構成されていてもよい。
【0084】
「駆動部の制動を実行している場合」は、例えば、駆動部の動作速度を低下させている場合、駆動部の動きを停止させた場合、及び、駆動部の停止を維持している場合を含んでいてもよい。具体的には、「駆動部の制動を実行している場合」は、制御弁60が第1弁位置と第2弁位置の間に位置している場合、及び、制御弁60が第2弁位置に位置している場合を含んでいてもよい。但し、駆動部の動作速度を低下させている場合、すなわち、制御弁60が第1弁位置と第2弁位置の間に位置している場合は除かれてもよい。
【0085】
「所定の条件が満たされたとき」は、例えば、オペレータが操作継続の意思を有すると判定したときであってもよい。コントローラ30は、例えば、走行レバー26Dが後進方向に操作されているときに走行用油圧モータ2Mを制動させたケースでは、走行レバー26Dが後進方向に再操作されたときに、オペレータが操作継続の意思を有すると判定してもよい。この場合、「再操作」は、走行レバー26Dを中立位置に戻した後で再び後進方向に操作することであってもよく、中立位置を超えて走行レバー26Dを前進方向に操作した後で再び後進方向に操作することであってもよく、走行レバー26Dを中立位置の方向に操作した後で再び後進方向に操作することであってもよい。
【0086】
この場合、コントローラ30は、操作圧センサ29の出力に基づいて操作装置26の再操作が行われたか否かを判定してもよい。或いは、コントローラ30は、キャビン10内のオペレータを撮像する室内撮像装置等の操作圧センサ29以外の他の装置の出力に基づいて操作装置26の再操作が行われたか否かを判定してもよい。
【0087】
或いは、コントローラ30は、制動の対象となった駆動部に関する操作装置26が所定の操作方法で操作されたときに、オペレータが操作継続の意思を有すると判定してもよい。コントローラ30は、例えば、左操作レバー26Lが右旋回方向に操作されているときに旋回用油圧モータ2Aを制動させたケースでは、左操作レバー26Lを左右に2往復操作されたときに、オペレータが操作継続の意思を有すると判定してもよい。具体的には、左旋回方向、右旋回方向、左旋回方向及び右旋回方向の順で左操作レバー26Lが操作されたときに、左操作レバー26Lが所定の操作方法で操作されたとして、オペレータが操作継続の意思を有すると判定してもよい。
【0088】
或いは、コントローラ30は、制動の対象となった駆動部に関する操作装置26に設けられているレバーボタンLBが押された状態でその操作装置26が再操作されたときに、オペレータが操作継続の意思を有すると判定してもよい。コントローラ30は、例えば、右操作レバー26Rがブーム下げ方向に操作されているときにブームシリンダ7を制動させたケースでは、右操作レバー26Rに設けられたレバーボタンLBが押された状態で右操作レバー26Rがブーム下げ方向に再操作されたときに、オペレータが操作継続の意思を有すると判定してもよい。
【0089】
次に、
図5A~
図5Dを参照し、コントローラ30がマシンコントロール機能によってアクチュエータを動作させるための構成について説明する。
図5A~
図5Dは、油圧システムの一部を抜き出した図である。具体的には、
図5Aは、アームシリンダ8の操作に関する油圧システム部分を抜き出した図であり、
図5Bは、ブームシリンダ7の操作に関する油圧システム部分を抜き出した図である。
図5Cは、バケットシリンダ9の操作に関する油圧システム部分を抜き出した図であり、
図5Dは、旋回用油圧モータ2Aの操作に関する油圧システム部分を抜き出した図である。
【0090】
図5A~
図5Dに示すように、油圧システムは、比例弁31を含む。比例弁31は、比例弁31AL~31DL及び31AR~31DRを含む。また、
図5A~
図5Dでは、操作装置26が電気式である場合を示している。
【0091】
比例弁31は、マシンコントロール用制御弁として機能する。比例弁31は、パイロットポンプ15とコントロールバルブ17内の対応する制御弁のパイロットポートとを接続する管路に配置され、その管路の流路面積を変更できるように構成されている。本実施形態では、比例弁31は、コントローラ30が出力する制御指令に応じて動作する。そのため、コントローラ30は、オペレータによる操作装置26の操作とは無関係に、パイロットポンプ15が吐出する作動油を、比例弁31を介し、コントロールバルブ17内の対応する制御弁のパイロットポートに供給できる。そして、コントローラ30は、比例弁31が生成するパイロット圧を、対応する制御弁のパイロットポートに作用させることができる。
【0092】
この構成により、コントローラ30は、特定の操作装置26に対する操作が行われていない場合であっても、その特定の操作装置26に対応する油圧アクチュエータを動作させることができる。また、コントローラ30は、特定の操作装置26に対する操作が行われている場合であっても、その特定の操作装置26に対応する油圧アクチュエータの動作を強制的に停止させることができる。
【0093】
例えば、
図5Aに示すように、左操作レバー26Lは、アーム5を操作するために用いられる。具体的には、左操作レバー26Lは、パイロットポンプ15が吐出する作動油を利用し、前後方向への操作に応じたパイロット圧を制御弁176のパイロットポートに作用させる。より具体的には、左操作レバー26Lは、アーム閉じ方向(後方向)に操作された場合に、操作量に応じたパイロット圧を制御弁176Lの右側パイロットポートと制御弁176Rの左側パイロットポートに作用させる。また、左操作レバー26Lは、アーム開き方向(前方向)に操作された場合には、操作量に応じたパイロット圧を制御弁176Lの左側パイロットポートと制御弁176Rの右側パイロットポートに作用させる。
【0094】
操作装置26にはスイッチSWが設けられている。本実施形態では、スイッチSWは、スイッチSW1及びスイッチSW2を含む。
【0095】
スイッチSW1は、左操作レバー26Lの先端に設けられた押しボタンスイッチである。オペレータは、スイッチSW1を押しながら左操作レバー26Lを操作できる。スイッチSW1は、右操作レバー26Rに設けられていてもよく、キャビン10内の他の位置に設けられていてもよい。
【0096】
スイッチSW2は、左走行レバー26DLの先端に設けられた押しボタンスイッチである。オペレータは、スイッチSW2を押しながら左走行レバー26DLを操作できる。スイッチSW2は、右走行レバー26DRに設けられていてもよく、キャビン10内の他の位置に設けられていてもよい。
【0097】
操作センサ29LAは、オペレータによる左操作レバー26Lに対する前後方向への操作の内容を検出し、検出した値をコントローラ30に対して出力する。
【0098】
比例弁31ALは、コントローラ30が出力する制御指令(電流指令)に応じて動作する。そして、パイロットポンプ15から比例弁31ALを介して制御弁176Lの右側パイロットポート及び制御弁176Rの左側パイロットポートに導入される作動油によるパイロット圧を調整する。
【0099】
比例弁31ARは、コントローラ30が出力する制御指令(電流指令)に応じて動作する。そして、パイロットポンプ15から比例弁31ARを介して制御弁176Lの左側パイロットポート及び制御弁176Rの右側パイロットポートに導入される作動油によるパイロット圧を調整する。比例弁31ALは、制御弁176L及び制御弁176Rを任意の弁位置で停止できるようにパイロット圧を調整可能である。同様に、比例弁31ARは、制御弁176L及び制御弁176Rを任意の弁位置で停止できるようにパイロット圧を調整可能である。
【0100】
この構成により、コントローラ30は、オペレータによるアーム閉じ操作に応じ、パイロットポンプ15が吐出する作動油を、比例弁31ALを介し、制御弁176Lの右側パイロットポート及び制御弁176Rの左側パイロットポートに供給できる。また、コントローラ30は、オペレータによるアーム閉じ操作とは無関係に、パイロットポンプ15が吐出する作動油を、比例弁31ALを介し、制御弁176Lの右側パイロットポート及び制御弁176Rの左側パイロットポートに供給できる。すなわち、コントローラ30は、オペレータによるアーム閉じ操作に応じ、或いは、オペレータによるアーム閉じ操作とは無関係に、アーム5を閉じることができる。
【0101】
また、コントローラ30は、オペレータによるアーム開き操作に応じ、パイロットポンプ15が吐出する作動油を、比例弁31ARを介し、制御弁176Lの左側パイロットポート及び制御弁176Rの右側パイロットポートに供給できる。また、コントローラ30は、オペレータによるアーム開き操作とは無関係に、パイロットポンプ15が吐出する作動油を、比例弁31ARを介し、制御弁176Lの左側パイロットポート及び制御弁176Rの右側パイロットポートに供給できる。すなわち、コントローラ30は、オペレータによるアーム開き操作に応じ、或いは、オペレータによるアーム開き操作とは無関係に、アーム5を開くことができる。
【0102】
また、この構成により、コントローラ30は、オペレータによるアーム閉じ操作が行われている場合であっても、必要に応じて、制御弁176の閉じ側のパイロットポート(制御弁176Lの左側パイロットポート及び制御弁176Rの右側パイロットポート)に作用するパイロット圧を減圧し、アーム5の閉じ動作を強制的に停止させることができる。オペレータによるアーム開き操作が行われているときにアーム5の開き動作を強制的に停止させる場合についても同様である。
【0103】
或いは、コントローラ30は、オペレータによるアーム閉じ操作が行われている場合であっても、必要に応じて、比例弁31ARを制御し、制御弁176の閉じ側のパイロットポートの反対側にある、制御弁176の開き側のパイロットポート(制御弁176Lの右側パイロットポート及び制御弁176Rの左側パイロットポート)に作用するパイロット圧を増大させ、制御弁176を強制的に中立位置に戻すことで、アーム5の閉じ動作を強制的に停止させてもよい。オペレータによるアーム開き操作が行われている場合にアーム5の開き動作を強制的に停止させる場合についても同様である。
【0104】
また、以下の
図5B~
図5Dを参照しながらの説明を省略するが、オペレータによるブーム上げ操作又はブーム下げ操作が行われている場合にブーム4の動作を強制的に停止させる場合、オペレータによるバケット閉じ操作又はバケット開き操作が行われている場合にバケット6の動作を強制的に停止させる場合、及び、オペレータによる旋回操作が行われている場合に上部旋回体3の旋回動作を強制的に停止させる場合についても同様である。また、オペレータによる走行操作が行われている場合に下部走行体1の走行動作を強制的に停止させる場合についても同様である。
【0105】
また、
図5Bに示すように、右操作レバー26Rは、ブーム4を操作するために用いられる。具体的には、右操作レバー26Rは、パイロットポンプ15が吐出する作動油を利用し、前後方向への操作に応じたパイロット圧を制御弁175のパイロットポートに作用させる。より具体的には、右操作レバー26Rは、ブーム上げ方向(後方向)に操作された場合に、操作量に応じたパイロット圧を制御弁175Lの右側パイロットポートと制御弁175Rの左側パイロットポートに作用させる。また、右操作レバー26Rは、ブーム下げ方向(前方向)に操作された場合には、操作量に応じたパイロット圧を制御弁175Rの右側パイロットポートに作用させる。
【0106】
操作センサ29RAは、オペレータによる右操作レバー26Rに対する前後方向への操作の内容を検出し、検出した値をコントローラ30に対して出力する。
【0107】
比例弁31BLは、コントローラ30が出力する制御指令(電流指令)に応じて動作する。そして、パイロットポンプ15から比例弁31BLを介して制御弁175Lの右側パイロットポート及び制御弁175Rの左側パイロットポートに導入される作動油によるパイロット圧を調整する。比例弁31BRは、コントローラ30が出力する制御指令(電流指令)に応じて動作する。
【0108】
そして、パイロットポンプ15から比例弁31BRを介して制御弁175Rの右側パイロットポートに導入される作動油によるパイロット圧を調整する。比例弁31BLは、制御弁175L及び制御弁175Rを任意の弁位置で停止できるようにパイロット圧を調整可能である。また、比例弁31BRは、制御弁175Rを任意の弁位置で停止できるようにパイロット圧を調整可能である。
【0109】
この構成により、コントローラ30は、オペレータによるブーム上げ操作に応じ、パイロットポンプ15が吐出する作動油を、比例弁31BLを介し、制御弁175Lの右側パイロットポート及び制御弁175Rの左側パイロットポートに供給できる。また、コントローラ30は、オペレータによるブーム上げ操作とは無関係に、パイロットポンプ15が吐出する作動油を、比例弁31BLを介し、制御弁175Lの右側パイロットポート及び制御弁175Rの左側パイロットポートに供給できる。すなわち、コントローラ30は、オペレータによるブーム上げ操作に応じ、或いは、オペレータによるブーム上げ操作とは無関係に、ブーム4を上げることができる。
【0110】
また、コントローラ30は、オペレータによるブーム下げ操作に応じ、パイロットポンプ15が吐出する作動油を、比例弁31BRを介し、制御弁175Rの右側パイロットポートに供給できる。また、コントローラ30は、オペレータによるブーム下げ操作とは無関係に、パイロットポンプ15が吐出する作動油を、比例弁31BRを介し、制御弁175Rの右側パイロットポートに供給できる。すなわち、コントローラ30は、オペレータによるブーム下げ操作に応じ、或いは、オペレータによるブーム下げ操作とは無関係に、ブーム4を下げることができる。
【0111】
また、
図5Cに示すように、右操作レバー26Rは、バケット6を操作するためにも用いられる。具体的には、右操作レバー26Rは、パイロットポンプ15が吐出する作動油を利用し、左右方向への操作に応じたパイロット圧を制御弁174のパイロットポートに作用させる。
【0112】
より具体的には、右操作レバー26Rは、バケット閉じ方向(左方向)に操作された場合に、操作量に応じたパイロット圧を制御弁174の左側パイロットポートに作用させる。また、右操作レバー26Rは、バケット開き方向(右方向)に操作された場合には、操作量に応じたパイロット圧を制御弁174の右側パイロットポートに作用させる。
【0113】
操作センサ29RBは、オペレータによる右操作レバー26Rに対する左右方向への操作の内容を検出し、検出した値をコントローラ30に対して出力する。
【0114】
比例弁31CLは、コントローラ30が出力する制御指令(電流指令)に応じて動作する。そして、パイロットポンプ15から比例弁31CLを介して制御弁174の左側パイロットポートに導入される作動油によるパイロット圧を調整する。比例弁31CRは、コントローラ30が出力する制御指令(電流指令)に応じて動作する。
【0115】
そして、パイロットポンプ15から比例弁31CRを介して制御弁174の右側パイロットポートに導入される作動油によるパイロット圧を調整する。比例弁31CLは、制御弁174を任意の弁位置で停止できるようにパイロット圧を調整可能である。同様に、比例弁31CRは、制御弁174を任意の弁位置で停止できるようにパイロット圧を調整可能である。
【0116】
この構成により、コントローラ30は、オペレータによるバケット閉じ操作に応じ、パイロットポンプ15が吐出する作動油を、比例弁31CLを介し、制御弁174の左側パイロットポートに供給できる。また、コントローラ30は、オペレータによるバケット閉じ操作とは無関係に、パイロットポンプ15が吐出する作動油を、比例弁31CLを介し、制御弁174の左側パイロットポートに供給できる。すなわち、コントローラ30は、オペレータによるバケット閉じ操作に応じ、或いは、オペレータによるバケット閉じ操作とは無関係に、バケット6を閉じることができる。
【0117】
また、コントローラ30は、オペレータによるバケット開き操作に応じ、パイロットポンプ15が吐出する作動油を、比例弁31CRを介し、制御弁174の右側パイロットポートに供給できる。また、コントローラ30は、オペレータによるバケット開き操作とは無関係に、パイロットポンプ15が吐出する作動油を、比例弁31CRを介し、制御弁174の右側パイロットポートに供給できる。すなわち、コントローラ30は、オペレータによるバケット開き操作に応じ、或いは、オペレータによるバケット開き操作とは無関係に、バケット6を開くことができる。
【0118】
また、
図5Dに示すように、左操作レバー26Lは、旋回機構2を操作するためにも用いられる。具体的には、左操作レバー26Lは、パイロットポンプ15が吐出する作動油を利用し、左右方向への操作に応じたパイロット圧を制御弁173のパイロットポートに作用させる。
【0119】
より具体的には、左操作レバー26Lは、左旋回方向(左方向)に操作された場合に、操作量に応じたパイロット圧を制御弁173の左側パイロットポートに作用させる。また、左操作レバー26Lは、右旋回方向(右方向)に操作された場合には、操作量に応じたパイロット圧を制御弁173の右側パイロットポートに作用させる。
【0120】
操作センサ29LBは、オペレータによる左操作レバー26Lに対する左右方向への操作の内容を検出し、検出した値をコントローラ30に対して出力する。
【0121】
比例弁31DLは、コントローラ30が出力する制御指令(電流指令)に応じて動作する。そして、パイロットポンプ15から比例弁31DLを介して制御弁173の左側パイロットポートに導入される作動油によるパイロット圧を調整する。比例弁31DRは、コントローラ30が出力する制御指令(電流指令)に応じて動作する。
【0122】
そして、パイロットポンプ15から比例弁31DRを介して制御弁173の右側パイロットポートに導入される作動油によるパイロット圧を調整する。比例弁31DLは、制御弁173を任意の弁位置で停止できるようにパイロット圧を調整可能である。同様に、比例弁31DRは、制御弁173を任意の弁位置で停止できるようにパイロット圧を調整可能である。
【0123】
この構成により、コントローラ30は、オペレータによる左旋回操作に応じ、パイロットポンプ15が吐出する作動油を、比例弁31DLを介し、制御弁173の左側パイロットポートに供給できる。また、コントローラ30は、オペレータによる左旋回操作とは無関係に、パイロットポンプ15が吐出する作動油を、比例弁31DLを介し、制御弁173の左側パイロットポートに供給できる。すなわち、コントローラ30は、オペレータによる左旋回操作に応じ、或いは、オペレータによる左旋回操作とは無関係に、旋回機構2を左旋回させることができる。
【0124】
また、コントローラ30は、オペレータによる右旋回操作に応じ、パイロットポンプ15が吐出する作動油を、比例弁31DRを介し、制御弁173の右側パイロットポートに供給できる。また、コントローラ30は、オペレータによる右旋回操作とは無関係に、パイロットポンプ15が吐出する作動油を、比例弁31DRを介し、制御弁173の右側パイロットポートに供給できる。すなわち、コントローラ30は、オペレータによる右旋回操作に応じ、或いは、オペレータによる右旋回操作とは無関係に、旋回機構2を右旋回させることができる。
【0125】
次に、
図6を参照し、コントローラ30の機能について説明する。
図6は、コントローラの機能ブロック図である。
【0126】
図6の例では、コントローラ30は、姿勢検出装置、操作装置26、物体検知装置70、撮像装置80及びスイッチNS等の少なくとも1つが出力する信号を受け、様々な演算を実行し、比例弁31、表示装置DS及び音声出力装置D2等の少なくとも1つに制御指令を出力できるように構成されている。姿勢検出装置は、ブーム角度センサS1、アーム角度センサS2、バケット角度センサS3、機体傾斜センサS4及び旋回角速度センサS5を含む。
【0127】
コントローラ30は、位置算出部30A、軌道取得部30B、自律制御部30C及び較正部30D、制御精度算出部30E、表示制御部30Fを機能要素として有する。各機能要素は、ハードウェアで構成されていてもよく、ソフトウェアで構成されていてもよい。
【0128】
位置算出部30Aは、測位対象の位置を算出するように構成されている。本実施形態では、位置算出部30Aは、アタッチメントの所定部位の基準座標系における座標点を算出する。所定部位は、例えば、バケット6の爪先である。基準座標系の原点は、例えば、旋回軸とショベル100の接地面との交点である。
【0129】
位置算出部30Aは、例えば、ブーム4、アーム5及びバケット6のそれぞれの回動角度からバケット6の爪先の座標点を算出する。位置算出部30Aは、バケット6の爪先の中央の座標点だけでなく、バケット6の爪先の左端の座標点、及び、バケット6の爪先の右端の座標点を算出してもよい。この場合、位置算出部30Aは、機体傾斜センサS4の出力を利用してもよい。
【0130】
軌道取得部30Bは、ショベル100を自律的に動作させるときにアタッチメントの所定部位が辿る軌道である目標軌道を取得する。本実施形態では、軌道取得部30Bは、自律制御部30Cがショベル100を自律的に動作させるときに利用する目標軌道を取得する。
【0131】
軌道取得部30Bは、アタッチメントの所定部位の現在位置と目標施工面に関する情報とに基づいて目標軌道を導き出してもよい。後述の較正モードで用いる目標軌道は、ショベル100の設定の適否を評価し易くするために直線的に形成されていることが好ましい。
【0132】
自律制御部30Cは、ショベル100を自律的に動作させる。本実施形態では、所定の開始条件が満たされた場合に、軌道取得部30Bが取得した目標軌道に沿ってアタッチメントの所定部位を移動させる。具体的には、スイッチNSが押されている状態で操作装置26が操作されたときに、所定部位が目標軌道に沿って移動するように、ショベル100を自律的に動作させる。
【0133】
本実施形態では、自律制御部30Cは、アクチュエータを自律的に動作させることでオペレータによるショベルの手動操作を支援する。例えば、自律制御部30Cは、オペレータがスイッチNSを押しながら手動でアーム閉じ操作を行っている場合に、目標軌道とバケット6の爪先の位置とが一致するようにブームシリンダ7、アームシリンダ8及びバケットシリンダ9の少なくとも1つを自律的に伸縮させてもよい。
【0134】
この場合、オペレータは、例えば、左操作レバー26Lをアーム閉じ方向に操作するだけで、バケット6の爪先を目標軌道に一致させながら、アーム5を閉じることができる。この例では、主な操作対象であるアームシリンダ8は「主要アクチュエータ」と称される。また、主要アクチュエータの動きに応じて動く従動的な操作対象であるブームシリンダ7及びバケットシリンダ9は「従属アクチュエータ」と称される。
【0135】
本実施形態では、自律制御部30Cは、比例弁31に電流指令を与えて各アクチュエータに対応する制御弁に作用するパイロット圧を個別に調整することで各アクチュエータを自律的に動作させることができる。例えば、右操作レバー26Rが傾倒されたか否かにかかわらず、ブームシリンダ7及びバケットシリンダ9の少なくとも1つを動作させることができる。
【0136】
較正部30Dは、自律制御の実行に関する構成要素の較正を支援する。本実施形態では、較正部30Dは、自律制御部30Cが目標軌道に沿ってアタッチメントの所定部位を移動させたときの所定部位の位置の推移を表示装置DSに表示させるように構成されている。所定部位の実際の移動軌跡と目標軌道とのズレの大きさを、較正を行う作業者(以下、「較正者」とする。)に認識させることができるようにするためである。
【0137】
較正者は、例えば、スイッチパネルDS2に設けられた較正開始ボタンを押すことで、較正部30Dによる較正を開始させることができる。校正者は、例えば、ショベル100を操作するオペレータ(操作者)である。較正開始ボタンが押されると、較正部30Dは、軌道取得部30Bが取得した目標軌道に関する情報を含む較正画面を表示装置DSに表示させる。
【0138】
較正部30Dは、較正者により、複数の目標軌道から1つの目標軌道を選択させてもよい。この場合、目標軌道は、例えば、水平引き作業に関する較正用の目標軌道、法面作業に関する較正用の目標軌道、及び、深掘り作業に関する較正用の目標軌道等の少なくとも1つを含む。較正部30Dは、目標軌道を選択するための画面を表示装置DSに表示させてもよい。較正者は、例えば、表示装置DSに表示された複数の目標軌道のそれぞれに対応するアイコンの1つを選択することで、所望の目標軌道を選択できる。
【0139】
較正者は、例えば、較正画面が表示された状態で、スイッチNSを押しながら操作装置26を操作して自律制御を実行する。例えば、水平引き作業に関する較正用の目標軌道が選択されている場合、較正者は、スイッチNSを押しながら左操作レバー26Lをアーム閉じ方向に操作することで、バケット6の爪先を目標軌道に沿って移動させることができる。水平引き作業に関する較正は、典型的には、掘削アタッチメントを空中で動作させることで行われる。但し、バケット6の爪先を実際に土砂等の被掘削物に接触させた状態で 行われてもよい。
【0140】
位置算出部30Aは、所定の制御周期で繰り返しバケット6の爪先の座標点を算出する。較正部30Dは、較正画面において、目標軌道と共に、バケット6の爪先の座標点の推移を移動軌跡として表示させる。
【0141】
制御精度算出部30Eは、アタッチメントの所定部位の現在位置を示す位置情報と、目標施工面に関する情報とに基づき、目標施工面に対するショベル100の姿勢を示す姿勢情報を取得する。
【0142】
具体的には、制御精度算出部30Eは、アタッチメントの所定部位の現在位置を示す位置情報と、姿勢センサの出力とに基づき、目標施工面におけるショベル100の位置と、ショベル100の姿勢とを特定する。
【0143】
そして、制御精度算出部30Eは、ショベル100の姿勢情報と、目標施工面に関する情報とから、ショベル100に対する制御の精度に関連する指標値を算出する。以下の説明では、制御の精度に関連する指標値を、制御精度の指標値と表現する場合がある。本実施形態の制御精度の指標値の詳細は後述する。
【0144】
また、本実施形態の制御精度算出部30Eは、算出された制御精度の指標値に応じて、目標施工面上の領域における、注意深い操作が要求される領域を特定する。具体的には、制御精度算出部30Eは、例えば、制御精度の指標値が所定の値よりも低くなる領域を、注意深い操作が要求される領域に特定してもよい。以下の説明では、注意深い操作が要求される領域を注意領域と表現する場合がある。
【0145】
表示制御部30Fは、制御精度算出部30Eによって特定された注意領域を示す情報や、目標施工面上の領域と対応付けられた制御精度の指標値を、表示装置DSに表示させる。なお、表示制御部30Fは、これらの情報を、ショベル100の有する表示装置DS以外の表示装置に表示させてもよい。
【0146】
具体的には、表示制御部30Fは、注意領域を示す情報や、目標施工面上の領域と対応付けられた制御精度の指標値等を、ショベル100を管理する管理装置の表示装置や、ショベル100の操作を支援する支援装置の表示装置等に表示させてもよい。
【0147】
次に、
図7を参照して、本実施形態の制御精度の指標値について説明する。
図7は、制御精度の指標値を説明する図である。
【0148】
本実施形態では、複数のアタッチメントの速度比または角速度比を、制御精度の指標値に用いる。複数のアタッチメントの速度比とは、例えば、アーム5の動作速度に対して、目標施工面に追従するために必要なブーム4の動作速度、又は、バケット6動作速度のことであり、ブームシリンダ7の速度/アームシリンダ8の速度、バケットシリンダ9の速度/アームシリンダ8の速度等の値であってよい。
【0149】
また、複数のアタッチメントの角速度比は、速度比と同様であり、ブームシリンダ7の角速度/アームシリンダ8の角速度、バケットシリンダ9の角速度/アームシリンダ8の角速度等の値であってよい。
【0150】
本実施形態では、制御精度の指標値が大きくなるほど、制御の精度が低下することを示し、制御精度の指標値が小さくなるほど、制御の精度が向上することを示す。
【0151】
図7では、ブームシリンダ7の角速度/アームシリンダ8の角速度を制御精度の指標値とし、目標施工面を水平面として、制御精度の指標値の姿勢と制御精度の指標値との対応付けた場合を示している。
【0152】
図7に示す模式
図71は、ショベル100姿勢の変化を模式的に示しており、縦軸は
図1に示すZ軸方向の距離(高さ)を示し、横軸は
図1に示すX軸方向の距離を示す。また、
図7に示すグラフ72において、縦軸はブームシリンダ7の角速度/アームシリンダ8の角速度を示し、横軸は
図1に示すX軸方向の距離を示す。
【0153】
模式
図71において、点73は、ショベル100のブームフートピンの位置を示し、点74は、ショベル100のブームトップの位置を示し、点75はアームトップピンの位置を示し、点76はバケット6の爪先の先端の位置を示す。また、模式
図71において、直線77は、目標施工面を示す。
【0154】
図7のグラフ72は、模式
図71に示すようにショベル100の姿勢が変化した場合における、ブームシリンダ7の角速度/アームシリンダ8の角速度の変化を示している。
【0155】
グラフ72では、ブームフートピンからバケット6の爪先の先端までの距離がX1[m]となる姿勢において、制御精度の指標値がゼロとなり、制御の精度が最も高くなる。
【0156】
また、グラフ72では、ブームフートピンからバケット6の爪先の先端までの距離がX1よりも遠くなるほど、又は、距離がX1よりも近くなるほど、制御精度の指標値が大きくなり、制御の精度が低下する。
【0157】
本実施形態では、このように、ショベル100の姿勢と、ショベル100の制御精度の指標値とを対応付けた情報を予め用意しておく。そして、本実施形態では、ショベル100の姿勢に応じて、操作による制御精度の指標値を算出し、オペレータに制御の精度を把握させる。なお、本実施形態のコントローラ30は、制御精度の指標値とショベル100の姿勢を示す姿勢情報とを対応付けたテーブル等を予め保持していてよい。
【0158】
また、本実施形態では、ショベル100の姿勢に応じた制御精度の指標値に基づき、目標施工面における注意領域を特定してオペレータに通知する。
【0159】
図7の例では、ブームフートピンからバケット6の爪先の先端までの距離がX1よりも遠くなるほど、又は、距離がX1よりも近くなるほど、制御の精度が低下する。
【0160】
したがって、本実施形態では、例えば、直線(目標施工面)77における領域77aが、注意深い操作が要求される注意領域として特定されてもよい。
【0161】
なお、上述した例では、複数のアタッチメントの速度比または角速度比を制御精度の指標値とするものとしたが、これに限定されない。
【0162】
本実施形態では、制御精度の指標値を、各シリンダの固有振動数に基づく値としてもよい。ブームシリンダ7、アームシリンダ8、バケットシリンダ9の固有振動数は、アタッチメントの姿勢や、油圧シリンダ内の体積等により変化いる。
【0163】
本実施形態では、この点に着目し、例えば、固有振動数が高い場合に制御の精度が高くなるように、制御精度の指標値を定めてもよい。
【0164】
また、ショベル100の制御系において、ある特定の周波数において制御の精度が低下するような場合には、固有振動数がある特定の周波数に近づくほど、制御の程度が低下するように、制御精度の指標値を定めてもよい。
【0165】
次に、
図8を参照して、本実施形態のショベル100のコントローラ30の処理について説明する。
図8は、コントローラの処理を説明するフローチャートである。
【0166】
本実施形態のコントローラ30は、制御精度算出部30Eにより、目標施工面に関する情報を取得する(ステップS801)。続いて、コントローラ30は、制御精度算出部30Eにより、ショベル100の現在位置を示す位置情報を取得する(ステップS802)。
【0167】
続いて、制御精度算出部30Eは、目標施工面に関する情報と、位置情報とを用いて、目標施工面に対するショベル100の姿勢を示す姿勢情報を算出する(ステップS803)。
【0168】
次に、制御精度算出部30Eは、ショベル100の姿勢情報と、ショベル100の姿勢と制御精度の指標値とを対応付けた情報とに基づき、目標施工面に対する制御精度の指標値を算出する(ステップS804)。
【0169】
続いて、制御精度算出部30Eは、算出された制御精度の指標値に基づき、目標施工面における注意領域を特定し、表示制御部30Fにより、注意領域を示す情報を表示装置DSに表示させる(ステップS805)。
【0170】
具体的には、制御精度算出部30Eは、目標施工面において、算出された制御精度の指標値が所定の閾値以上となる領域を注意領域として特定してもよい。
【0171】
以下に、
図9を参照して、本実施形態の表示例について説明する。
図9は、表示例を示す第一の図である。
【0172】
図9では、ガイダンスモードの際に表示される出力画像の一例を示す。ガイダンスモードは、マシンガイダンス機能又はマシンコントロール機能を実行する際に選択される動作モードである。本実施形態では、ガイダンスモードボタン(図示せず)が押下された場合に開始する。ガイダンスモードは、例えば、ショベル100で法面整形を行う際に選択される。
図9の例では、目標施工面は既に設定されている。
【0173】
図9に示されるように、表示装置DSの画像表示部DS1に表示される出力画像Gxは、時刻表示部411、回転数モード表示部412、走行モード表示部413、エンジン制御状態表示部415、尿素水残量表示部416、燃料残量表示部417、冷却水温表示部418、エンジン稼働時間表示部419、カメラ画像表示部420、作業ガイダンス表示部430を有する。回転数モード表示部412、走行モード表示部413、及びエンジン制御状態表示部415は、ショベル100の設定状態に関する情報を表示する表示部である。
【0174】
尿素水残量表示部416、燃料残量表示部417、冷却水温表示部418、及びエンジン稼働時間表示部419は、ショベル100の運転状態に関する情報を表示する表示部である。各部に表示される画像は、表示装置DSの制御部DSaによって、コントローラ30又はマシンガイダンス装置から送信される各種データ及び撮像装置80から送信されるカメラ画像を用いて生成される。
【0175】
時刻表示部411は、現在の時刻を表示する。
図9の例では、デジタル表示が採用され、現在時刻(10時5分)が示されている。
【0176】
回転数モード表示部412は、エンジン回転数調整ダイヤル79によって設定されている回転数モードをショベル100の稼働情報として画像表示する。回転数モードは、例えば、上記したSPモード、Hモード、Aモード及びアイドリングモードの4つを含む。
図9の例では、SPモードを表す記号「SP」が表示されている。
【0177】
走行モード表示部413は、走行モードをショベル100の稼働情報として表示する。走行モードは、可変容量モータを用いた走行用油圧モータの設定状態を表す。例えば、走行モードは、低速モード及び高速モードを有し、低速モードでは「亀」を象ったマークが表示され、高速モードでは「兎」を象ったマークが表示される。
図4の例では、「亀」を象ったマークが表示されており、オペレータは低速モードが設定されていることを認識できる。
【0178】
エンジン制御状態表示部415は、エンジン11の制御状態をショベル100の稼働情報として表示する。
図9の例では、エンジン11の制御状態として「自動減速・自動停止モード」が選択されている。「自動減速・自動停止モード」は、非操作状態の継続時間に応じて、エンジン回転数を自動的に低減し、さらにはエンジン11を自動的に停止させる制御状態を意味する。その他、エンジン11の制御状態には、「自動減速モード」、「自動停止モード」、「手動減速モード」等がある。
【0179】
尿素水残量表示部416は、尿素水タンクに貯蔵されている尿素水の残量状態をショベル100の稼働情報として画像表示する。
図9の例では、現在の尿素水の残量状態を表すバーゲージが表示されている。尿素水の残量は、尿素水タンクに設けられている尿素水残量センサが出力するデータに基づいて表示される。
【0180】
燃料残量表示部417は、燃料タンクに貯蔵されている燃料の残量状態を稼働情報として表示する。
図9の例では、現在の燃料の残量状態を表すバーゲージが表示されている。燃料の残量は、燃料タンクに設けられている燃料残量センサが出力するデータに基づいて表示される。
【0181】
冷却水温表示部418は、エンジン冷却水の温度状態をショベル100の稼働情報として表示する。
図9の例では、エンジン冷却水の温度状態を表すバーゲージが表示されている。エンジン冷却水の温度は、エンジン11に設けられている水温センサ11cが出力するデータに基づいて表示される。
【0182】
エンジン稼働時間表示部419は、エンジン11の累積稼働時間をショベル100の稼働情報として表示する。
図9の例では、運転者によりカウントがリスタートされてからの稼働時間の累積が、単位「hr(時間)」と共に表示されている。エンジン稼働時間表示部419には、ショベル製造後の全期間の生涯稼働時間又はオペレータによりカウントがリスタートされてからの区間稼働時間が表示される。
【0183】
カメラ画像表示部420は、撮像装置80によって撮影された画像を表示する。
図9の例では、上部旋回体3の上面後端に取り付けられた後方カメラ80Bによって撮影された画像がカメラ画像表示部420に表示されている。カメラ画像表示部420には、上部旋回体3の上面左端に取り付けられた左方カメラ80L又は上面右端に取り付けられた右方カメラ80Rによって撮像されたカメラ画像が表示されてもよい。また、カメラ画像表示部420には、左方カメラ80L、右方カメラ80R及び後方カメラ80Bのうちの複数のカメラによって撮影された画像が並ぶように表示されてもよい。また、カメラ画像表示部420には、左方カメラ80L、右方カメラ80R及び後方カメラ80Bの少なくとも2つによって撮像された複数のカメラ画像の合成画像が表示されてもよい。合成画像は、例えば、俯瞰画像であってもよい。
【0184】
各カメラは上部旋回体3の一部がカメラ画像に含まれるように設置されている。表示される画像に上部旋回体3の一部が含まれることで、オペレータは、カメラ画像表示部420に表示される物体とショベル100との間の距離感を把握し易くなる。
【0185】
カメラ画像表示部420には、表示中のカメラ画像を撮影した撮像装置80の向きを表すカメラアイコン421が表示されている。カメラアイコン421は、ショベル100の形状を表すショベルアイコン421aと、表示中のカメラ画像を撮像した撮像装置80の向きを表す帯状の方向表示アイコン421bとで構成されている。カメラアイコン421は、ショベル100の設定状態に関する情報を表示する表示部である。
【0186】
図9の例では、ショベルアイコン421aの下側(アタッチメントの反対側)に方向表示アイコン421bが表示されている。これは、後方カメラ80Bによって撮影されたショベル100の後方の画像がカメラ画像表示部420に表示されていることを表す。例えば、カメラ画像表示部420に右方カメラ80Rによって撮影された画像が表示されている場合には、ショベルアイコン421aの右側に方向表示アイコン421bが表示される。また、例えばカメラ画像表示部420に左方カメラ80Lによって撮影された画像が表示されている場合には、ショベルアイコン421aの左側に方向表示アイコン421bが表示される。
【0187】
オペレータは、例えば、キャビン10内に設けられている画像切替スイッチを押下することで、カメラ画像表示部420に表示する画像を他のカメラにより撮影された画像等に切り替えることができる。
【0188】
ショベル100に撮像装置80が設けられていない場合には、カメラ画像表示部420の代わりに、異なる情報が表示されてもよい。
【0189】
作業ガイダンス表示部430は、各種作業のためのガイダンス情報を表示する。
図10Aは、表示例を示す第二の図であり、
図10Bは表示例を示す第三の図であり、
図10Cは表示例を示す第四の図である。
【0190】
図10Aの例では、作業ガイダンス表示部430は、作業部位ガイダンス情報の一例である爪先ガイダンス情報を表示する、位置表示画像431、第1目標施工面表示画像432、第2目標施工面表示画像433、バケット左端情報画像434、バケット右端情報画像435、側面視数値情報画像436、正面視数値情報画像437、アタッチメント画像438、距離形式画像439及び目標設定画像440を含む。
【0191】
位置表示画像431は、目標施工面の表示位置に対するバケット6の作業部位(先端)の表示位置の変化により、バケット6の作業部位(先端)から目標施工面までの相対距離の大きさの変化を、表示箇所を変化させることで表す第1画像の一例である。
図10Aの例では、位置表示画像431は、複数の図形(セグメント)が縦方向に配列されたバーゲージである。位置表示画像431は、目標セグメントG1と、複数のセグメントG2とを有する。
【0192】
目標セグメントG1は、目標施工面の位置を表す図形である。本実施形態では、バケット6の作業部位(先端)から目標施工面までの相対距離が所定範囲内であることを示す図形(直線)である。
【0193】
所定範囲は、適切な相対距離の範囲として予め設定された範囲である。相対距離が所定範囲内であることは、バケット6の作業部位が適切な位置にあることを意味する。目標セグメントG1は、第2画像と同じ高さに配置される。第2画像は、目標施工面に対するアタッチメントの作業部位の距離の大きさの変化を、同一箇所における表示形式を変化させることで表す。同一箇所における表示形式は、例えば、アイコン、背景色、数値等を含む。
【0194】
第2画像の表示形式の変化は、アイコン形状、色、及び、数値の少なくともいずれかの変化である。本実施形態では、第2画像は、バケット左端情報画像434とバケット右端情報画像435の組み合わせである。目標セグメントG1は、バケット左端情報画像434及びバケット右端情報画像435のそれぞれと同一の高さに配置されている。例えば、目標セグメントG1、バケット左端情報画像434及びバケット右端情報画像435は、上下方向の中央の高さが一致するように配置されている。
【0195】
セグメントG2は、それぞれ所定の相対距離に対応する図形である。対応する相対距離が小さいセグメントG2ほど、目標セグメントG1の近くに配置され、対応する相対距離が大きいセグメントG2ほど、目標セグメントG1から遠くに配置される。各セグメントG2は、相対距離と共に、バケット6の移動方向を示す。バケット6の移動方向は、バケット6の作業部位を目標施工面に近づける方向である。本実施形態では、セグメントG2Dは、バケット6を下方に移動させれば目標施工面に近づくことを表し、セグメントG2Uは、バケット6を上方に移動させれば目標施工面に近づくことを表す。
【0196】
位置表示画像431は、バケット6の作業部位(先端)から目標施工面までの実際の相対距離に対応するセグメントG2を、他のセグメントG2とは異なる所定の色で表示する。他のセグメントG2と異なる色で表示されるセグメントG2をセグメントG2Aという。位置表示画像431は、セグメントG2Aを所定の色で表示することにより、相対距離及び移動方向を示す。
【0197】
バケット6の作業部位(先端)から目標施工面までの相対距離が大きいほど、目標セグメントG1から遠いセグメントG2がセグメントG2Aとして所定の色で表示される。また、バケット6の作業部位(先端)から目標施工面までの相対距離が小さいほど、目標セグメントG1に近いセグメントG2がセグメントG2Aとして所定の色で表示される。このように、セグメントG2Aは、相対距離の変化に応じて、上下方向に位置が変化するように表示される。
【0198】
セグメントG2Aは、相対距離が所定範囲の最大値より大きい場合、第1色で表示される。第1色は、例えば、白や黄色などの目立たない色である。これは、相対距離が所定範囲の最大値より大きい場合、オペレータに注意喚起する必要性が低いためである。また、セグメントG2Aは、相対距離が所定範囲内の場合、第2色で表示される。第2色は、緑などの目立つ色である。
【0199】
これは、バケット6が適切な位置にあることをオペレータにわかりやすく知らせるためである。また、セグメントG2Aは、相対距離が所定範囲の最小値より小さい場合、第3色で表示される。第3色は、赤などの目立つ色である。これは、バケット6の作業部位により目標施工面が余計に削られる恐れがあることをオペレータに注意喚起するためである。
【0200】
また、位置表示画像431は、バケット6の実際の相対距離が所定範囲内である場合、目標セグメントG1を、他のセグメントと異なる所定の色で表示する。すなわち、位置表示画像431は、目標セグメントG1を所定の色で表示することにより、相対距離が所定範囲内であることを示す。目標セグメントG1は、上述の第2色で表示されるのが好ましい。これは、バケット6が適切な位置にあることをオペレータにわかりやすく知らせるためである。
【0201】
なお、セグメントG2A及び目標セグメントG1が所定の色で表示されている間、他のセグメントG2は、目立たない色(背景色と同一又は類似する色など)で表示されてもよいし、表示されていなくてもよい。
【0202】
第1目標施工面表示画像432は、バケット6と目標施工面との関係を模式的に表示する。第1目標施工面表示画像432には、側面から見たときのバケット6と目標施工面とが、第1図形としてのバケットアイコンG3及び目標施工面画像G4で模式的に表示される。バケットアイコンG3は、バケット6の左側面を表す図形である。但し、バケットアイコンG3は、バケット6の右側面を表す図形であってもよく、バケット6を側面から見たときの形で表されていてもよい。
【0203】
目標施工面画像G4は、目標施工面としての地面を表す図形であり、目標施工面としての地面を側面から見たときの形で表されている。目標施工面画像G4は、バケット6を縦断する鉛直面における目標施工面を表す線分と水平線との間に形成される角度(目標法面角度θであり、以下、「縦傾斜角」とする。)と共に表示されてもよい。
【0204】
バケットアイコンG3と目標施工面画像G4との縦間隔は、実際のバケット6の先端と目標施工面との距離の変化に応じて変化するように表示される。バケットアイコンG3と目標施工面画像G4との相対傾斜角も同様に、実際のバケット6と目標施工面との相対傾斜角の変化に応じて変化するように表示される。
【0205】
本実施形態では、バケットアイコンG3が固定された状態で、目標施工面画像G4の表示高さ及び表示角度が変化する。但し、目標施工面画像G4が固定された状態で、バケットアイコンG3の表示高さ及び表示角度が変化するように構成されてもよく、バケットアイコンG3及び目標施工面画像G4のそれぞれの表示高さ及び表示角度が変化するように構成されてもよい。
【0206】
第1目標施工面表示画像432は、バケット6の実際の動きを模式的に表示する。第1目標施工面表示画像432には、側面から見たときのバケット6の前後方向の動作が、バケットアイコンG3と第2図形としてのアニメーションアイコンG21との相対的な位置で模式的に表示される。アニメーションアイコンG21は、目標施工面画像G4に対して予め定められた位置に設定される。アニメーションアイコンG21の位置は、実際のバケット6の前後方向の動作(例えば、移動距離、移動速度)に応じて変化するように構成されている。
【0207】
図10Aの例では、アニメーションアイコンG21は、目標施工面画像G4の下方に表示されており、2つの同一サイズのドット(点)で表される図形である。本実施形態では、バケット6がオペレータに近づく方向(後方向)に移動する場合、アニメーションアイコンG21は、バケット6の移動方向とは反対方向である前方向、例えば、目標施工面画像G4に沿って左下方へ移動するように構成されている。これにより、バケットアイコンG3のアニメーションアイコンG21に対する相対的な位置が後方向に移動する。
【0208】
そのため、オペレータは、バケット6がオペレータに近づく方向(後方向)に移動していることを容易に認識できる。また、バケット6がオペレータから遠ざかる方向(前方向)に移動する場合、アニメーションアイコンG21は、バケット6の移動方向とは反対方向である後方向、例えば、目標施工面画像G4に沿って右上方へ移動する。
【0209】
これにより、バケットアイコンG3のアニメーションアイコンG21に対する相対的な位置が前方向に移動する。そのため、オペレータは、バケット6がオペレータから遠ざかる方向(前方向)に移動していることを容易に認識できる。
【0210】
また、アニメーションアイコンG21は、目標施工面画像G4に対して予め定められた位置に設定されるため、バケットアイコンG3とアニメーションアイコンG21との相対的な関係は、バケット6と実際の地面における任意の点との相対的な関係と等しい関係になる。このため、バケット6が早く動くと、画面上におけるアニメーションアイコンG21も早く移動する。また、バケット6の動きに伴って、アニメーションアイコンG21が画面端部(例えば左端部)まで移動し、画面から消える際に、反対側の画面端部(例えば右端部)に次のアニメーションアイコンG21が現れる。但し、次のアニメーションアイコンG21が現れるタイミングは、任意のタイミングであってよく、例えばアニメーションアイコンG21が画面から消える前であってもよい。
【0211】
さらに、本実施形態では、第1目標施工面表示画像432に、ショベル100の姿勢と制御精度の指標値に基づき特定された注意領域を示す注意領域画像450が表示される。
図10Aの例では、目標施工面画像G4と対応付けて、注意領域画像450を表示させることで、バケット6がオペレータから遠ざかると、制御の精度が低下することを、オペレータに把握させることができる。したがって、本実施形態の注意領域画像450は、ショベル100の制御精度の指標値を示す情報と言える。
【0212】
図10Bは、作業ガイダンス表示部430の別の例を示す図である。
図10Bに示す作業ガイダンス表示部430は、表示領域451、452を有する。
【0213】
表示領域451は、バケットアイコンG3と、目標施工面画像G4と、注意領域画像450aとが表示される。
【0214】
表示領域452は、制御精度の指標値とショベル100の姿勢を示す姿勢情報とを対応付けたテーブル等から求められる、ショベル100の姿勢に応じた制御精度の指標値の変化を示すグラフが表示される。また、表示領域452は、ショベル100のアーム5の速度毎に、ショベル100の姿勢に応じた制御精度の指標値の変化を示すグラフが表示されてよい。
【0215】
図10Bでは、横軸が、ショベル100のブームフートピンからバケット6の爪先の先端までの距離を示し、縦軸が、制御精度の指標値を示す。また、
図10Bでは、アーム5の速度を、3段階の速度として、各速度について制御精度の指標値の変化を示す。以下の説明では、アーム5の3段階の速度を、高速、中速、低速と表現する。
【0216】
また、
図10Bに示すグラフ454は、アーム5の速度を低速とした場合の制御精度の指標値の変化を示し、グラフ455は、アーム5の速度を中速とした場合の制御精度の指標値の変化を示し、グラフ456は、アーム5の速度を高速とした場合の制御精度の指標値の変化を示す。
【0217】
なお、
図10B、
図10Cの例では、制御精度の指標値を、この値が大きいほど制御の精度が高くなる値としている。言い換えれば、
図10B、
図10Cの例では、制御精度の指標値が大きいほど、制御の精度が高くなる。
【0218】
表示領域452のグラフ454、455、456から、アーム5の速度が低速である場合のほうが、全体的に制御精度の指標値が大きくなり、アーム5の速度が高速である場合のほうが、全体的に制御精度の指標値が小さくなる。
【0219】
したがって、アーム5の速度が低速である場合のほうが、制御の精度が高くなり、アーム5の速度が高速である場合のほうが、制御の精度が低くなることを、オペレータに把握させることができる。
【0220】
さらに、
図10Bの例では、コントローラ30において、目標施工面と、バケット6の爪先の先端の位置との間で許容される誤差の範囲α1が設定されていたとする。
【0221】
この場合、制御精度算出部30Eは、誤差の範囲α1とするために必要な制御精度の指標値の目標値を設定してもよい。
【0222】
図10Bの例では、制御精度の指標値の目標値453が設定されている。この場合、コントローラ30は、制御精度の指標値が、目標値453未満となる可能性がある領域を注意領域に特定する。
【0223】
図10Bの例では、目標施工面において、制御精度の指標値が目標値453未満となる可能性がある注意領域を示す注意領域画像450aが表示されている。
【0224】
また、
図10Bの例では、グラフ456のみが、注意領域画像450aが示す注意領域において、目標値453未満となる。このことから、注意領域画像450aが示す注意領域では、アーム5の動作を中速又は低速とすることで、制御精度の指標値を目標値453以上に維持することができる。
【0225】
本実施形態のコントローラ30は、表示制御部30Fにより、この旨を示すメッセージを表示装置DSに表示させてもよい。具体的には、表示制御部30Fは、「注意領域の部分のみ、アームの速度を中速又は低速にしてください」等という主旨のメッセージを表示させてもよい。
【0226】
図10Cの例では、コントローラ30において、目標施工面と、バケット6の爪先の先端の位置との間で許容される誤差の範囲α2が設定されているものとする。また、誤差の範囲α2は、誤差の範囲α1よりも狭い範囲であるものとする。
【0227】
この場合、制御精度算出部30Eは、誤差の範囲α2とするために必要な制御精度の指標値の目標値453aを設定してもよい。
【0228】
この場合、制御精度の指標値の目標値453が設定されている。制御精度の指標値が、目標値453a未満となる可能性がある領域は、注意領域画像450a、450bが示す領域となる。
【0229】
さらに、
図10Cの例では、注意領域画像450a、450bが示す領域以外の領域であっても、常にアーム5の速度を低速とすることが推奨される旨を示すメッセージを表示装置DSに表示させてもよい。
【0230】
なお、本実施形態では、注意領域において推奨される操作を示す情報は、表示装置DSに表示されてもよいし、音声データとして出力されてもよく、注意領域において推奨される操作をオペレータに通知できればよい。
【0231】
また、本実施形態のショベル100は、外部装置(例えば、支援装置、管理装置、遠隔操作室)のオペレータによって遠隔操作が可能に構成されてもよい。この場合、上述した実施形態の表示形態は、ショベル100を遠隔操作するための外部装置に設けられた表示装置において表示される。
【0232】
この場合、ショベル100は、例えば、空間認識装置としての撮像装置80が出力する画像情報(撮影画像)を外部装置に送信する。また、ショベル100の表示装置DSに表示される各種の情報画像(例えば、各種設定画面等)は、同様に、外部装置に設けられる表示装置にも表示されてよい。
【0233】
これにより、オペレータは、例えば、外部装置に設けられる表示装置に表示される内容を確認しながら、ショベル100を遠隔操作することができる。そして、ショベル100は、外部装置から受信される、遠隔操作の内容を表す遠隔操作信号に応じて、アクチュエータを動作させ、下部走行体1、上部旋回体3、ブーム4、アーム5、及びバケット6等を駆動してよい。
【0234】
ショベル100が遠隔操作される場合、キャビン10の内部は、無人状態であってもよい。
【0235】
本実施形態では、このように、ショベル100を遠隔操作するための外部装置に設けられた表示装置においても、目標施工面における注意領域を表示させることでき、遠隔操作を行うオペレータや、支援装置、管理装置の利用者に対して、ショベル100の制御の精度を把握させることができる。
【0236】
以上、本発明を実施するための形態について説明したが、上記内容は、発明の内容を限定するものではなく、本発明の範囲内で種々の変形及び改良が可能である。
【符号の説明】
【0237】
1 下部走行体
2 旋回機構
3 上部旋回体
4 ブーム
5 アーム
6 バケット
7 ブームシリンダ
8 アームシリンダ
9 バケットシリンダ
26 操作装置
30 コントローラ
30A 位置算出部
30B 軌道取得部
30C 自律制御部
30D 較正部
30E 制御精度算出部
30F 表示制御部
100 ショベル