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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024031020
(43)【公開日】2024-03-07
(54)【発明の名称】ガラス支持構造
(51)【国際特許分類】
   C03C 27/04 20060101AFI20240229BHJP
   E04B 2/56 20060101ALI20240229BHJP
【FI】
C03C27/04 Z
E04B2/56 652N
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022134298
(22)【出願日】2022-08-25
(71)【出願人】
【識別番号】000002299
【氏名又は名称】清水建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】松尾 隆士
【テーマコード(参考)】
2E002
4G061
【Fターム(参考)】
2E002FB09
2E002GA06
4G061AA01
4G061AA03
4G061BA01
4G061CA03
4G061CB04
4G061CD02
(57)【要約】
【課題】接着剤外縁部の接着面付近への応力集中を緩和することができるガラス支持構造を提供する。
【解決手段】ガラス10と、前記ガラス10の表面に対して所定厚さの接着剤12で固定された円形平板状の支持材14とを備えたガラス支持構造100であって、前記ガラス10の表面に対向する側における前記支持材14の外縁部16の少なくとも一部に、前記支持材14の中心部20の前記接着剤12の厚さdに比べて前記外縁部16の前記接着剤12の厚さd1を厚くするための断面欠損部22が形成されているようにする。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガラスと、前記ガラスの表面に対して所定厚さの接着剤で固定された円形平板状の支持材とを備えたガラス支持構造であって、
前記ガラスの表面に対向する側における前記支持材の外縁部の少なくとも一部に、前記支持材の中心部の前記接着剤の厚さに比べて前記外縁部の前記接着剤の厚さを厚くするための断面欠損部が形成されていることを特徴とするガラス支持構造。
【請求項2】
前記断面欠損部は、前記支持材の前記中心部の前記接着剤の厚さに比べて前記外縁部の前記接着剤の厚さが厚くなるように切り欠いた切り欠き部、または、前記外縁部側に行くほど前記接着剤の厚さが厚くなるように傾斜したテーパー部であることを特徴とする請求項1に記載のガラス支持構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガラス支持構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、建築外装におけるガラスの支持方法として、金属支持金物とガラスを接着剤で接合する点支持接着構法が知られている(例えば、特許文献1、2を参照)。金属支持金物は、一般的に円形をしており、ガラスに対して直接接着剤で固定される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特表2009-541564号公報
【特許文献2】特表2003-507320号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記の点支持接着構法に使用される接着剤の厚さは1~2mm程度と薄いため、ガラスに風荷重や地震慣性力が作用すると、接着剤外縁部の接着面付近に応力が集中してしまうという問題があった。特に地震慣性力は、接着面に対してせん断方向に作用するため、接着剤を引き剥がす力として作用し、強度設計上の弱点となることが多い。このため、接着剤外縁部の接着面付近への応力集中を緩和することができるガラス支持構造が求められていた。
【0005】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、接着剤外縁部の接着面付近への応力集中を緩和することができるガラス支持構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記した課題を解決し、目的を達成するために、本発明に係るガラス支持構造は、ガラスと、前記ガラスの表面に対して所定厚さの接着剤で固定された円形平板状の支持材とを備えたガラス支持構造であって、前記ガラスの表面に対向する側における前記支持材の外縁部の少なくとも一部に、前記支持材の中心部の前記接着剤の厚さに比べて前記外縁部の前記接着剤の厚さを厚くするための断面欠損部が形成されていることを特徴とする。
【0007】
また、本発明に係る他のガラス支持構造は、上述した発明において、前記断面欠損部は、前記支持材の前記中心部の前記接着剤の厚さに比べて前記外縁部の前記接着剤の厚さが厚くなるように切り欠いた切り欠き部、または、前記外縁部側に行くほど前記接着剤の厚さが厚くなるように傾斜したテーパー部であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明に係るガラス支持構造によれば、ガラスと、前記ガラスの表面に対して所定厚さの接着剤で固定された円形平板状の支持材とを備えたガラス支持構造であって、前記ガラスの表面に対向する側における前記支持材の外縁部の少なくとも一部に、前記支持材の中心部の前記接着剤の厚さに比べて前記外縁部の前記接着剤の厚さを厚くするための断面欠損部が形成されているので、断面欠損部によって外縁部側の接着剤の厚さが厚くなる。これにより、外縁部の接着面付近への応力集中を緩和することができるという効果を奏する。
【0009】
また、本発明に係る他のガラス支持構造によれば、前記断面欠損部は、前記支持材の前記中心部の前記接着剤の厚さに比べて前記外縁部の前記接着剤の厚さが厚くなるように切り欠いた切り欠き部、または、前記外縁部側に行くほど前記接着剤の厚さが厚くなるように傾斜したテーパー部であるので、切り欠き部またはテーパー部によって外縁部側の接着剤の厚さが厚くなる。これにより、外縁部の接着面付近への応力集中を緩和することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、本発明に係るガラス支持構造の実施の形態1を示す図であり、(1)は概略斜視図、(2)は断面斜視図である。
図2図2は、本発明に係るガラス支持構造の実施の形態2を示す図であり、(1)は概略斜視図、(2)は断面斜視図である。
図3図3は、解析の加力方向の説明図である。
図4図4は、本発明の実施例1の解析結果を示す図である。
図5図5は、本発明の実施例2の解析結果を示す図である。
図6図6は、比較例の解析結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明は、ガラス支持材の外縁部を切り欠き部などに加工することによって、接着剤の外縁部を中心部よりもわずかに厚くし、それによって従来に比べて応力集中を大きく緩和できるガラス支持構造を提供するものである。
【0012】
以下に、本発明に係るガラス支持構造の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施の形態によりこの発明が限定されるものではない。
【0013】
(実施の形態1)
まず、本発明の実施の形態1について説明する。
図1に示すように、本実施の形態1に係るガラス支持構造100は、平板状のガラス10と、ガラス10の表面に対して接着剤12で接着固定された円形平板状の支持材14とを備える。
【0014】
ガラス10の表面に対向する支持材14の内面14Aは、外縁部16を除いて平坦となっており、ガラス10の表面に対して平行に配置される。支持材14の内面14Aとガラス10の表面の間には、接着剤12が充填されており、これにより接着剤層12Aを形成している。支持材14の外面14Bには、中央部分から、支持材14の円の中心を通る軸線Cに沿って円柱状の軸部18が外側に延出している。ガラス10は、この軸部18を介して図示しない建物躯体などに取付けられる。支持材14および軸部18は、金属製の一体型の支持金物で構成することができる。軸部18は、円柱状に限るものではなく、頭頂部18Aが陥没した凹部を有する形状であってもよい。
【0015】
支持材14の内面14A側の外縁部16には、支持材14の中心部20の接着剤層12Aの厚さdに比べて外縁部16の接着剤層12Aの厚さd1が厚くなるように、段差状の切り欠き部22(断面欠損部)が形成されている。この切り欠き部22は、支持材14の内面14A側の外縁部16の切り欠き加工によって形成してもよいし、支持材14の製作当初から設けてもよい。切り欠き部22は、支持材14の外縁部16の全周にわたって設けることが望ましい。また、切り欠き部22の軸心Cに沿った断面形状は、同一形状にすることが望ましい。
【0016】
例えば、支持材14の内面14Aの直径が36mmの場合、切り欠き部22の寸法は、厚さH1(軸心方向)を1mm程度、幅W1(半径方向の長さ)を2mm程度に設定してもよい。このようにしても、外縁部16の接着面付近への応力集中に対する緩和効果が十分に得られる。
【0017】
本実施の形態1によれば、切り欠き部22を設けることによって外縁部16側の接着剤層12Aの厚さd1が中心部20側の厚さdに比べて厚くなる。これにより、外縁部16の接着面付近への応力集中を緩和することができる。接着剤12に発生する応力集中を緩和することにより、ガラス10の供用時の安全性が向上する。また、ガラス10を安全に点接着支持できる接着構法を実現することができる。
【0018】
(実施の形態2)
次に、本発明の実施の形態2について説明する。
図2に示すように、本実施の形態2に係るガラス支持構造200は、上記の実施の形態1において、切り欠き部22の代わりにテーパー部24を設けたものである。
【0019】
テーパー部24は、支持材14の内面14A側の外縁部16に設けられ、支持材14の外縁部16側に行くほど接着剤層12Aの厚さd2が厚くなるように傾斜した部分である。テーパー部24の接着剤層12Aの厚さd2は、支持材14の中心部20の接着剤層12Aの厚さdに比べて厚く、しかも支持材14の外縁部16側に行くほど厚くなっている。このテーパー部24は、支持材14の内面14A側の外縁部16のテーパー加工によって形成してもよいし、支持材14の製作当初から設けてもよい。テーパー部24は、支持材14の外縁部16の全周にわたって設けることが望ましい。また、テーパー部24の軸心Cに沿った断面形状は、同一形状にすることが望ましい。
【0020】
例えば、支持材14の内面14Aの直径が36mmの場合、テーパー部24の寸法は、最大厚さH2を1mm程度、幅W2(半径方向の長さ)を2mm程度に設定してもよい。このようにしても、外縁部16の接着面付近への応力集中に対する緩和効果が十分に得られる。
【0021】
本実施の形態2によれば、テーパー部24を設けることによって外縁部16側の接着剤層12Aの厚さd2が中心部20側の厚さdに比べて厚くなる。これにより、外縁部16の接着面付近への応力集中を緩和することができる。接着剤12に発生する応力集中を緩和することにより、ガラス10の供用時の安全性が向上する。また、ガラス10を安全に点接着支持できる接着構法を実現することができる。
【0022】
(本発明の効果の検証)
本発明の効果を検証するため、FEM解析を実施した。解析モデルは、ガラス板(厚さ8mm)に支持材14である金属支持金物(直径36mm)を接着剤(中心部の厚さが1mm)で取り付けたものとした。金属支持金物には、外縁部16を切り欠き加工したもの(実施例1)、外縁部16をテーパー加工したもの(実施例2)、外縁部16の加工を行わないもの(比較例)を用いた。そして、図3に示す通り、外力として風荷重を想定した引張力3000N、地震時の慣性力を想定したせん断力500Nを金属支持金物の軸部18の頭頂部に与え、接着剤に発生する応力をFEM解析により求めた。
【0023】
解析結果を図4図6に示す。図4図6の各コンター図において(1)は引張り方向、(2)はせん断方向である。これらの解析結果を整理したものを表1に示す。この表に示すように、接着面がフラットな金属支持金物(比較例)と比較して、本発明の実施例1、2の金属支持金物では30%程度の応力集中の緩和が期待できることがわかる。
【0024】
【表1】
【0025】
以上から、本発明によってガラス支持性能を維持しながら、外縁部16に発生する応力集中を大きく緩和することが可能であることがわかる。
【0026】
以上説明したように、本発明に係るガラス支持構造によれば、ガラスと、前記ガラスの表面に対して所定厚さの接着剤で固定された円形平板状の支持材とを備えたガラス支持構造であって、前記ガラスの表面に対向する側における前記支持材の外縁部の少なくとも一部に、前記支持材の中心部の前記接着剤の厚さに比べて前記外縁部の前記接着剤の厚さを厚くするための断面欠損部が形成されているので、断面欠損部によって外縁部側の接着剤の厚さが厚くなる。これにより、外縁部の接着面付近への応力集中を緩和することができる。
【0027】
また、本発明に係る他のガラス支持構造によれば、前記断面欠損部は、前記支持材の前記中心部の前記接着剤の厚さに比べて前記外縁部の前記接着剤の厚さが厚くなるように切り欠いた切り欠き部、または、前記外縁部側に行くほど前記接着剤の厚さが厚くなるように傾斜したテーパー部であるので、切り欠き部またはテーパー部によって外縁部側の接着剤の厚さが厚くなる。これにより、外縁部の接着面付近への応力集中を緩和することができる。
【産業上の利用可能性】
【0028】
以上のように、本発明に係るガラス支持構造は、建築外装などのガラスを支持する構造に有用であり、特に、接着剤外縁部の接着面付近への応力集中を緩和するのに適している。
【符号の説明】
【0029】
10 ガラス
12 接着剤
12A 接着剤層
14 支持材
14A 内面
14B 外面
16 外縁部
18 軸部
18A 頭頂部
20 中心部
22 切り欠き部(断面欠損部)
24 テーパー部(断面欠損部)
100,200 ガラス支持構造
C 軸線
d,d1,d2 厚さ
図1
図2
図3
図4
図5
図6