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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024031022
(43)【公開日】2024-03-07
(54)【発明の名称】作業車両
(51)【国際特許分類】
   B60W 20/15 20160101AFI20240229BHJP
   A01C 11/02 20060101ALI20240229BHJP
   A01B 71/00 20060101ALI20240229BHJP
   B60K 6/48 20071001ALI20240229BHJP
   B60K 6/36 20071001ALI20240229BHJP
【FI】
B60W20/15
A01C11/02 313A
A01C11/02 313B
A01B71/00
B60K6/48 ZHV
B60K6/36
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022134305
(22)【出願日】2022-08-25
(71)【出願人】
【識別番号】000000125
【氏名又は名称】井関農機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】竹▲崎▼ 直人
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 礼
(72)【発明者】
【氏名】森本 宏
(72)【発明者】
【氏名】足立 憲司
(72)【発明者】
【氏名】大久保 真司
(72)【発明者】
【氏名】福山 尚尋
(72)【発明者】
【氏名】糸永 薫
(72)【発明者】
【氏名】江口 裕滋
(72)【発明者】
【氏名】東 靖之
【テーマコード(参考)】
2B041
2B062
3D202
【Fターム(参考)】
2B041AA20
2B041AB04
2B041AB05
2B041AC03
2B041AC13
2B041HA29
2B041HA30
2B062AA20
2B062AB01
2B062AB07
2B062BA07
2B062BA13
2B062BA32
2B062BA46
2B062BA51
3D202AA09
3D202EE08
(57)【要約】
【課題】自燃料の消費を低減し、排ガスの排出を抑制する作業車両を提供すること。
【解決手段】実施形態の一態様に係る作業車両は、エンジンと、伝達機構と、発電機と、バッテリーと、作業用モータと、作業機とを備える。伝達機構は、エンジンによって発生する動力を車輪に伝達する。発電機は、エンジンによって発生する動力によって発電する。バッテリーは、発電機によって発電された電力によって充電される。作業用モータは、バッテリーから電力が供給されて駆動する。作業機は、作業用モータによって発生する動力によって駆動する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンと、
前記エンジンによって発生する動力を車輪に伝達する伝達機構と、
前記エンジンによって発生する動力によって発電する発電機と、
前記発電機によって発電された電力によって充電されるバッテリーと、
前記バッテリーから電力が供給されて駆動する作業用モータと、
前記作業用モータによって発生する動力によって駆動する作業機と
を備える、作業車両。
【請求項2】
前記発電機は、後輪に動力を伝達する前記伝達機構から、動力が伝達されて発電する、請求項1に記載の作業車両。
【請求項3】
前記発電機は、モータジェネレータであり、
前記作業用モータは、前記作業機が駆動されない場合、駆動されず、
前記発電機は、前記作業機が駆動されない場合、後輪を駆動させるモータとして機能する、請求項1に記載の作業車両。
【請求項4】
前記作業用モータは、圃場における作業の旋回走行時に駆動されない、請求項3に記載の作業車両。
【請求項5】
前記発電機は、
左後輪を駆動可能な第1モータジェネレータと、
右後輪を駆動可能な第2モータジェネレータと
を含み、
前記第1モータジェネレータ、および、前記第2モータジェネレータのうち、旋回走行時に旋回内側のモータジェネレータは、発電を行い、旋回走行時に旋回外側のモータジェネレータは、旋回外側の後輪を駆動させる、請求項3に記載の作業車両。
【請求項6】
前記発電機は、前記後輪のスリップ量が所定スリップ量以上である場合、前記後輪を駆動させるモータとして機能する、請求項3に記載の作業車両。
【請求項7】
前記発電機が、前記後輪を駆動させるモータとして機能している状態で、前記バッテリーの残量が第1所定残量以下になると、前記発電機は、発電を行って前記バッテリーを充電し、前記後輪は、前記エンジンによって発生する動力によって駆動される、請求項3に記載の作業車両。
【請求項8】
前記バッテリーの残量が前記第1所定残量よりも大きい第2所定残量以上になると、前記発電機は、前記後輪を駆動させるモータとして機能する、請求項7に記載の作業車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、作業車両に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、圃場における作業を行う作業装置を揺する作業車両が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004-222604号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記作業車両は、エンジンによって発生する動力が、駆動輪、および、作業車両に伝達される。上記作業車両は、作業車両の電動化について改善の余地がある。
【0005】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、燃料の消費を低減し、排ガスの排出を抑制する作業車両を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記した課題を解決し、目的を達成するために、実施形態の一態様に係る作業車両(1)は、エンジン(30)と、エンジン(30)によって発生する動力を車輪(11)に伝達する伝達機構(11a、13、42)と、エンジン(30)によって発生する動力によって発電する発電機(115)と、発電機(115)によって発電された電力によって充電されるバッテリー(116)と、バッテリー(116)から電力が供給されて駆動する作業用モータ(117)と、作業用モータ(117)によって発生する動力によって駆動する作業機(4)とを備える。
【発明の効果】
【0007】
実施形態の一態様によれば、作業車両は、燃料の消費を低減し、排ガスの排出を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、作業車両を示す側面図である。
図2図2は、作業車両の動力(電力)伝達経路の概略を示す図である。
図3図3は、作業車両の動力(電力)伝達経路の詳細を示す図である。
図4図4は、苗移植機の制御装置を中心とした制御系を示すブロック図である。
図5図5は、実施形態に係る作業用モータの駆動処理を説明するフローチャートである。
図6図6は、変形例に係る苗移植機における動力伝達を説明する図である。
図7図7は、変形例に係る作業車両の発電機構を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
図1図3を参照して実施形態に係る作業車両1について説明する。図1は、作業車両1を示す側面図である。図2は、作業車両1の動力(電力)伝達経路の概略を示す図である。図3は、作業車両1の動力(電力)伝達経路の詳細を示す図である。
【0010】
なお、以下の説明では、前後方向とは、作業車両1の直進時における進行方向であり、進行方向の前方側を「前」、後方側を「後」と規定する。作業車両1の進行方向とは、直進時において、操縦席41からハンドル35(ステアリング装置)に向かう方向である(図1および図2参照)。
【0011】
左右方向とは、前後方向に対して水平に直交する方向であり、「前」側へ向けて左右を規定する。すなわち、操縦者(作業者ともいう。)が操縦席41に着席して前方を向いた状態で、左手側が「左」、右手側が「右」である。
【0012】
上下方向とは、鉛直方向である。前後方向、左右方向および上下方向は互いに直交する。各方向は説明の便宜上定義したものであり、これらの方向によって本発明が限定されるものではない。
【0013】
実施形態では、作業車両1を、圃場作業装置として苗植付部4(作業機)を備え、圃場に苗を受け付ける乗用型の苗移植機1として説明する。図1に示すように、苗移植機1は、走行車体2の後側に昇降リンク機構3を介して、圃場に苗を植え付ける昇降可能な苗植付部4を備える。
【0014】
走行車体2の後部上側には施肥装置5の本体部分が配置される。
【0015】
走行車体2は、車輪であり駆動輪である、左右の前輪10、および、後輪11を備える四輪駆動車両である。走行車体2の車体骨格を構成するメインフレーム15の前側には、前輪10、および、後輪11などに駆動力を伝達するミッションケース13(伝達機構)と、エンジン30から供給される駆動力、すなわち、エンジン30で発生した回転をミッションケース13に出力する油圧式の無段変速装置14とが設けられる。
【0016】
無段変速装置14は、いわゆるHST(Hydro Static Transmission)と呼ばれる静油圧式の無段変速機である。以下では、無段変速装置がHST14である場合を説明する。
【0017】
ミッションケース13内には、副変速機構16と、前輪デフ装置110と、後輪デフ装置111とが収容される。副変速機構16は、高速モードでの路上走行時や、低速モードでの苗の植え付け時などにおける走行車体2の走行モードを切り替える。
【0018】
ミッションケース13の左右側方には、前輪ギヤケース10aが設けられ、左右の前輪ギヤケース10aの操向方向を変更可能な前輪支持部からそれぞれ外向きに突出する左右の前輪車軸10bに前輪10が取り付けられる。ミッションケース13に伝達された動力は、副変速機構16、および、前輪デフ装置110を経由して、フロントアクスル113a、縦軸113b、回動横軸113c、前輪車軸10b、および、前輪10に伝達される。
【0019】
また、メインフレーム15の後部側には、横方向に設けられた後部フレームの左右両側に後輪ギヤケース11a(伝達機構)が取付けられ、後輪ギヤケース11aからそれぞれ外向きに突出する左右の後輪車軸11bに後輪11がそれぞれ取り付けられる。
【0020】
ミッションケース13の後部には、左右のドライブシャフト42(伝達機構)が設けられる。ミッションケース13に伝達された動力は、副変速機構16、後輪デフ装置111、および、ドライブシャフト42を経由して左右の後輪ギヤケース11aに伝達される。
【0021】
後輪ギヤケース11aは、左右の後輪入力軸114a、左右の後輪伝達軸114b、および、左右の後輪車軸11bなどを有する。左右の後輪入力軸114aには、対応する左右のドライブシャフト42からエンジン30の回転動力が伝達される。後輪ギヤケース11aに伝達された動力は、後輪入力軸114a、後輪伝達軸114b、後輪車軸11b、および、後輪11に伝達される。
【0022】
なお、左右のドライブシャフト42よりも伝動方向上手側には、左右のドライブシャフト42に対する動力伝達を入切するサイドクラッチ44が配置される。図1に示すように、操縦席41の前側下部であり、かつ、左右一側には、左右のサイドクラッチ44を入切操作するサイドクラッチペダル43aが設けられる。
【0023】
左右のサイドクラッチペダル43aのうち、旋回内側のサイドクラッチペダル43aを踏み込んでサイドクラッチ44を切状態にしてからハンドル35を操作して旋回走行すると、エンジン30から旋回内側の後輪11への駆動回転を完全に遮断することができる。
【0024】
後輪ギヤケース11aの近傍には、左右のモータジェネレータ115が設けられる。左右のモータジェネレータ115は、エンジン30によって発生する動力によって発電する。左右のモータジェネレータ115は、左右の後輪伝達軸114bを介してエンジン30によって発生する動力が伝達される。左方のモータジェネレータ115は、左方の後輪伝達軸114bを介して動力が伝達される。右方のモータジェネレータ115は、右方の後輪伝達軸114bを介して動力が伝達される。なお、モータジェネレータ115と、後輪伝達軸114bとの間には、モータジェネレータ115と後輪伝達軸114bとの動力伝達を切り替えるクラッチが設けられてもよい。モータジェネレータ115には、後輪伝達軸114bの回転が伝達されるため、モータジェネレータ115の回転軸に入力される回転の速度が比較的大きくなる。
【0025】
左右のモータジェネレータ115によって発電された電力は、バッテリー116に蓄えられる。すなわち、バッテリー116は、左右のモータジェネレータ115によって発電された電力によって充電される。バッテリー116は、たとえば、リチウムイオン電池である。
【0026】
また、後部フレームの上部には、昇降リンク機構3を支持する左右のリンク支持フレーム23が上方に向けて突設される。左右のリンク支持フレーム23の下部側で、かつ、左右の間には、左右一対のロワリンクアーム24が設けられる。左右のロワリンクアーム24の左右の間に、油圧により作動する昇降シリンダ25が設けられる。
【0027】
昇降シリンダ25の上方には、アッパリンクアーム26が設けられ、平行リンク機構である昇降リンク機構3が構成される。なお、それぞれ一端が走行車体2側に連結された、左右のロワリンクアーム24と、昇降シリンダ25と、アッパリンクアーム26の他端側とは、苗植付部4の前部に装着される。
【0028】
また、メインフレーム15上には、エンジン30が搭載される。エンジン30の回転動力が、ベルト伝動装置21およびHST14を介してミッションケース13に伝達される。ミッションケース13に伝達された回転動力は、ミッションケース13内の副変速機構16により変速される。
【0029】
また、エンジン30の回転動力は、図示しない油圧ポンプに伝達される。油圧ポンプで発生した油圧は、HST14や、ハンドル35のパワーステアリング機構88(図4参照)や、昇降シリンダ25などに供給される。
【0030】
走行車体2の前側上部には、各部の操作を行う操縦パネル38を上部に配置されたボンネット39が設けられる。操縦パネル38には、モニタ86(図4参照)などが設けられる。
【0031】
また、ボンネット39には、走行車体2を操舵するハンドル35、HST14を操作する変速操作レバー36、副変速機構16を操作する副変速操作レバー37(図4参照)などが設けられる。
【0032】
また、ボンネット39の前側には、開閉可能なフロントカバー40が設けられる。フロントカバー40の内部には、燃料タンクやバッテリー116、ハンドル35の操舵に左右の前輪10および左右の前輪ギヤケース10aの下部側を回動させる連動機構が設けられる。前輪10は、例えば、ハンドル35の操舵に応じて転舵する操舵輪である。
【0033】
ボンネット39よりも後側で、かつ、エンジン30の上方位置には、エンジン30の上部および側部を覆うエンジンカバー30aが設けられ、エンジンカバー30aの上部には操縦者が着席する操縦席41が設けられる。
【0034】
操縦席41の後側であって、メインフレーム15の後端側には、施肥装置5が設けられる。施肥装置5の駆動力は、左右の後輪ギヤケース11aの左右一側から施肥装置5に臨むように設けられる、施肥伝動機構によって伝達される。
【0035】
エンジンカバー30aおよびボンネット39の下部における左右両側は、略水平なフロアステップ33が形成される。フロアステップ33は、一部格子状であり、たとえば、フロアステップ33を歩く操縦者の靴などについた泥が落ちても、落ちた泥などが圃場に落下する。
【0036】
また、フロアステップ33の後方には、リヤステップが連接される。リヤステップの表面には、作業時に足が滑りにくくなるように、たとえば、複数の突起パターンが形成された滑り止め加工が施されることが好ましい。
【0037】
また、走行車体2の前側であり、かつ、左右両側には、苗枠支柱51に複数の予備苗載せ台52を上下方向に間隔を空けて配置する予備苗枠50がそれぞれ設けられ、苗植付部4に補充される苗や肥料袋などの作業資材が載置可能となっている。
【0038】
また、昇降リンク機構3の後端部には、苗植付部4が設けられる。具体的には、昇降リンク機構3の後端部には、圃場に植え付ける苗を積載する苗タンク53が、左右方向に摺動させる摺動機構と共に装着されている。苗タンク53には、上下方向に長い苗仕切フェンスが左右方向に所定間隔を空けてそれぞれ配置される。苗タンク53の下方には、積載された苗を掻き取って圃場に植え付ける苗植付装置55が配置される。
【0039】
苗植付装置55は、苗仕切フェンスにより区切られた植付作業条数と同数、すなわち、8条同時に植え付けるものであり、植付伝動ケース56が苗タンク53の下方に間隔を空けて4つ配置され、植付伝動ケース56の左右両側に回転しながら植込杆58により苗を取って圃場に植え付ける植付ロータリ57がそれぞれ装着される。
【0040】
苗植付部4は、作業用モータ117によって駆動される。たとえば、植付ロータリ57は、作業用モータ117によって発生する動力によって駆動する。作業用モータ117は、バッテリー116から電力が供給される。作業用モータ117は、複数設けられる。作業用モータ117は、苗植付部4における駆動部位に応じて複数設けられる。
【0041】
施肥装置5は、肥料が貯留される施肥ホッパ70が、苗植付部4の作業条数と同数(図2に示す例では、8条分)に仕切られている。なお、8条分の施肥ホッパ70は、左右方向に長いため肥料の投入や着脱の利便性が低下するので、4条ずつに仕切られたものを左右にそれぞれ並べる、いわゆるサイド施肥構造であってもよい。
【0042】
施肥ホッパ70の下部には、肥料を設定量ずつ供給する繰出装置71が1条ごとに設けられる。繰出装置71の下方には、肥料を移動させる搬送風が通過する通風ダクト72が左右方向に設けられる。繰出装置71の下方には、苗植付部4の苗植付位置の近傍に肥料を案内する施肥ホース73が設けられる。また、通風ダクト72の一側端部には、ブロア用電動モータ76により作動して搬送風を発生するブロア74が設けられる。
【0043】
図1に示すように、苗植付部4の下方には、圃場面に接地して滑走するセンターフロート62Cと、左右2つずつのサイドフロート62L、62Rとが、軸まわりに回動自在に設けられる。なお、センターフロート62Cおよび左右のサイドフロート62L、62Rを総称してフロート62という場合がある。
【0044】
また、苗植付部4の下方において、フロート62よりも前側には、圃場面の凹凸を整地する整地ロータ63が設けられる。整地ロータ63には、左右他側の後輪ギヤケース11aからロータ伝動シャフト63aを介して駆動力が伝達される。
【0045】
また、図1に示すように、苗植付部4の左右両側には、左右いずれか一方が圃場面に接地して、次の作業条(次工程)における走行の目安とする溝を形成する線引きマーカ65がそれぞれ設けられる。左右の線引きマーカ65は、左右一側が接地すると他側が上方に離間し、旋回時に苗植付部4を上昇させたときには左右両側共に上方に離間し、旋回後に苗植付部4が下降すると、左右一側が上方に離間して他側が接地する。
【0046】
また、図1に示すように、走行車体2の左右中央部であり、かつ、ボンネット39の前方には、上下方向に長いセンターマスコット66が設けられる。センターマスコット66を左右の線引きマーカ65により圃場に形成された溝に合わせることにより、直前の作業条の作業位置に合わせた走行が可能になり、作業精度の向上や、非作業の発生防止を図ることができる。
【0047】
なお、圃場の土質によっては、左右の線引きマーカ65により形成されたガイド線がすぐに埋もれてしまい、直進の目安が消えてしまうことがある。このような場合には、左右の線引きマーカ65よりも前側に設けられた左右のサイドマーカ19を用いるとよい。すなわち、左右のサイドマーカ19を外側方向に移動させ、植え付けられた苗の上方にサイドマーカ19を位置させることで、前の作業条の苗の植え付けに合わせた植付作業が可能になる。
【0048】
また、図1に示すように、苗移植機1は、位置取得装置150を備える。位置取得装置150は、苗移植機1の現在の位置、および方位を取得する。位置取得装置150は、例えば、方位センサや、GPS(Global Positioning System)やGNSS(Global Navigation Satellite System)などの測位手段を含む。位置取得装置150は、複数の装置によって構成されてもよい。位置取得装置150は、カメラや、超音波センサを含んでもよく、圃場における旋回位置を取得し、旋回位置までの距離を検出してもよい。
【0049】
例えば、位置取得装置150は、測位手段から測位情報を受け取り、受け取った測位情報に基づいて走行車体2の現在の位置情報、および方位情報を作成し、現在の位置、および方位を取得する。位置取得装置150は、たとえば、取付ステー59に取り付けられ、走行車体2の上方に配置される。
【0050】
位置取得装置150による位置情報に基づいて作成される、直進制御用プログラムと、旋回制御用プログラムとは、互いに別の場所に格納される。直進制御用プログラムは、たとえば、位置取得装置150内の直進制御用ECU(Electronic Control Unit)100aに格納され、旋回制御用プログラムは、たとえば、ボンネット39に収容された旋回制御用ECU100bに格納される。なお、直進制御用ECU100aおよび旋回制御用ECU100bは、後述する制御装置100(図3参照)に含まれる。直進制御用ECU100aおよび旋回制御用ECU100bは、同一のECUに格納されてもよい。
【0051】
次に、図4を参照して苗移植機1の制御系について説明する。図4は、苗移植機1の制御装置100を中心とした制御系を示すブロック図である。苗移植機1は、電子制御によって各部を制御することが可能なものであり、各部を制御する制御装置(以下、コントローラという。)100を備える。
【0052】
コントローラ100は、コンピュータである。コントローラ100は、CPU(Central Processing Unit)などを有する処理部や、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)などの記憶部、さらには入出力部が設けられ、これらは、互いに接続されて互いに信号の受け渡しが可能である。記憶部には、苗移植機1を制御するコンピュータプログラムなどが格納される。コントローラ100は、記憶部に格納されたコンピュータプログラムなどを読み出すことで、各機能を発揮させる。
【0053】
コントローラ100には、たとえば、アクチュエータ類として、スロットルモータ80、油圧制御弁81、82、植付クラッチ作動ソレノイド83、サイドクラッチ作動ソレノイド84、HSTモータ85、線引きマーカ昇降モータ87、ステアリングモータ95、作業用モータ117などが接続される。
【0054】
スロットルモータ80は、エンジン30の吸気量を調節するスロットルを作動させることにより、エンジン30の出力軸の回転数を増減させる。油圧制御弁81は、昇降シリンダ25の伸縮動作を制御する。油圧制御弁82は、パワーステアリング機構88を制御する。植付クラッチ作動ソレノイド83は、植付クラッチ27aを作動させる。
【0055】
サイドクラッチ作動ソレノイド84は、後輪11(図1参照)への動力伝達状態を切り替えるサイドクラッチ44を作動させる。なお、サイドクラッチ44は、左右の後輪11にそれぞれ設けられ、サイドクラッチ作動ソレノイド84は、各サイドクラッチ44に対応して2つ設けられる。
【0056】
HSTモータ85は、HST14のトラニオンの回動角度を変更することで、HST14の斜板の傾斜角を変更する。ステアリングモータ95は、自動旋回制御が行われる場合に、前輪10(図1参照)の操舵量(舵角)を調整するステアリング装置であるハンドル35を駆動するモータである。ステアリングモータ95は、ハンドル35を回動させる。線引きマーカ昇降モータ87は、線引きマーカ65を昇降させる。
【0057】
コントローラ100には、検出装置である、回転数センサ90、操舵量センサ91、電圧センサ92などが接続される。回転数センサ90は、左右の後輪11に対応して2つ設けられ、左右の後輪11の回転数をそれぞれ検出する。なお、回転数センサ90は、左右の前輪10の回転数を検出してもよい。
【0058】
操舵量センサ91は、ステアリング装置であるハンドル35の操作量、すなわち、前輪10の操舵量(舵角)を検出する。操舵量センサ91は、例えば、ピットマンアームに連結する軸上に設けられる。なお、操舵量は、ハンドル35が予め設定された直進位置になった場合の値を基準値として、左右方向それぞれに検出される。
【0059】
電圧センサ92は、バッテリー116の残量を検出する。なお、バッテリー116の残量は、電流センサによって検出されてもよく、電圧センサ92、および、電流センサによって検出される値に基づいて算出されてもよい。
【0060】
また、コントローラ100には、操作信号として、変速操作レバー36、副変速操作レバー37、自律走行切替スイッチ46、植付部昇降スイッチ47、自動直進切替スイッチ45、自動旋回切替スイッチ48、線引きマーカ自動昇降スイッチ49などから信号が入力される。
【0061】
自律走行切替スイッチ46は、自律走行を実行するか否かを切り替えるスイッチである。具体的には、自律走行切替スイッチ46は、走行モードを自律走行モード、または手動走行モードに切り替えるスイッチである。例えば、自律走行切替スイッチ46が「ON」である場合、走行モードが自律走行モードに設定される。自律走行切替スイッチ46が「OFF」である場合、走行モードが手動走行モードに設定される。自律走行切替スイッチ46が「ON」にされると、自動直進切替スイッチ45、および自動旋回切替スイッチ48が「ON」になる。すなわち、走行モードが自律走行モードになると、なお、自動直進切替スイッチ45、および自動旋回切替スイッチ48は、いったん「ON」になった場合であっても、操縦者の操作によって「OFF」に変更可能である。
【0062】
植付部昇降スイッチ47は、苗植付部4を昇降させるか否かを切り替えるスイッチである。植付部昇降スイッチ47は、「上昇」、および「降下」位置に変更される。
【0063】
植付部昇降スイッチ47が「上昇」位置にある場合には、苗植付部4は、所定の非作業位置まで上昇し、苗植付装置55が停止する非作業状態となる。植付部昇降スイッチ47が「降下」位置にある場合には、苗植付部4は、所定の作業位置まで降下し、苗植付装置55が作動する作業状態となる。すなわち、植付部昇降スイッチ47は、苗植付部4の作業状態を検知するスイッチである。なお、苗植付部4の作業状態を検知するスイッチが別途設けられてもよい。
【0064】
線引きマーカ自動昇降スイッチ49は、ハンドル35の操作量、すなわち、前輪10の操舵量に連動して線引きマーカ65を自動的に昇降させるか否かを切り替えるスイッチである。線引きマーカ自動昇降スイッチ49が「ON」の場合には、操舵量に連動して線引きマーカ65を自動的に昇降させる制御が実行される。一方、線引きマーカ自動昇降スイッチ49が「OFF」の場合には、操舵量に連動して線引きマーカ65を自動的に昇降させる制御は、実行されない。
【0065】
自動直進切替スイッチ45は、自動直進の実行を可能とするか否かを切り替えるスイッチである。自動直進切替スイッチ45が「ON」にされている場合には、走行アシスト機能が有効となり、自動直進を実行可能となる。自動直進切替スイッチ45が「OFF」にされている場合には、走行アシスト機能が無効となり、自動直進を実行不能となる。
【0066】
走行アシスト機能が有効となり、自動直進が実行される場合、苗植付部4によって圃場に苗を植え付けつつ、走行車体2が操縦者の操作によらず直進する。自動直進では、走行車体2が予め設定された直進経路に沿うように、ステアリングモータ95が制御され、走行車体2が直進する。
【0067】
自動旋回切替スイッチ48は、自動旋回の実行を可能とするか否かを切り替えるスイッチである。自動旋回切替スイッチ48が「ON」にされている場合には、旋回アシスト機能が有効となり、自動旋回を実行可能となる。自動旋回切替スイッチ48が「OFF」にされている場合には、旋回アシスト機能が無効となり、自動旋回を実行不能となる。
【0068】
旋回アシスト機能が有効となり、自動旋回が実行される場合、苗植付部4による苗の植え付けが停止され、走行車体2が予め設定された旋回経路に沿うように、ステアリングモータ95が制御され、走行車体2が旋回する。自動旋回が実行される場合、苗植付部4が上昇し、非作業状態となる。
【0069】
コントローラ100には、位置取得装置150から走行車体2の現在の位置情報などが入力される。
【0070】
なお、コントローラ100には、遠隔操作装置170(以下、「リモコン」と称する。)から各種情報が入力されてもよい。リモコン170は、苗移植機1を遠隔操作可能である。リモコン170は、スマートフォンなどの端末装置であってもよい。リモコン170は、作業者の操作に応じた制御信号を送信する。リモコン170は、Wi-fi(登録商標)や、BLE(Bluetooth(登録商標) Low Energy)などの近距離無線通信によってコントローラ100と通信可能に接続されるが、これに限られず、近距離無線通信に加えて、あるいは代えて通信ネットワークなどを介して通信可能に接続されてもよい。
【0071】
コントローラ100は、モータジェネレータ115を制御する。コントローラ100は、モータジェネレータ115を発電機として機能させて、エンジン30によって発生する動力によってモータジェネレータ115で発電を行わせて、バッテリー116を充電する。たとえば、作業用モータ117を駆動する場合、コントローラ100は、モータジェネレータ115を発電機として機能させて、バッテリー116を充電する。
【0072】
また、走行車体2が減速する場合、コントローラ100は、モータジェネレータ115を発電機として機能させてモータジェネレータ115で発電を行わせて、バッテリー116を充電する。すなわち、走行車体2が減速する場合、コントローラ100は、回生電力によってバッテリー116を充電する。
【0073】
また、コントローラ100は、モータジェネレータ115をモータとして機能させて、バッテリー116に蓄えられた電力を用いて後輪11を駆動させる。たとえば、作業用モータ117が駆動されない場合、コントローラ100は、バッテリー116から電力をモータジェネレータ115に供給し、モータジェネレータ115によって動力を発生させる。モータジェネレータ115によって発生した動力は、後輪伝達軸114b、および、後輪車軸11bを介して後輪11に伝達される。この場合、サイドクラッチ44は、切り状態(非締結状態)となり、エンジン30によって発生する動力は、後輪11には伝達されない。たとえば、圃場における作業において次工程に向けた走行車体2の旋回走行時に、コントローラ100は、作業用モータ117を駆動させず、モータジェネレータ115によって後輪11を駆動させる。
【0074】
コントローラ100は、苗植付装置55を駆動する場合、すなわち、苗植付部4を作業状態にする場合、作業用モータ117を駆動させる。コントローラ100は、バッテリー116から供給される電力によって作業用モータ117を駆動させる。たとえば、コントローラ100は、植付部昇降スイッチ47が「降下」位置にある場合、作業用モータ117を駆動させる。また、コントローラ100は、走行アシスト機能が有効であり、自動直進を実行する場合、作業用モータ117を駆動させる。
【0075】
コントローラ100は、苗植付装置55が駆動されない場合、すなわち、苗植付部4を非作業状態にする場合、作業用モータ117を停止させる。たとえば、コントローラ100は、植付部昇降スイッチ47が「上昇」位置にある場合、作業用モータ117を駆動させない。また、コントローラ100は、圃場における旋回走行時、たとえば、次工程に移動するための旋回走行時には作業用モータ117を停止させる。たとえば、コントローラ100は、旋回アシスト機能が有効であり、自動旋回を実行する場合、作業用モータ117を停止させる。
【0076】
次に、実施形態に係る作業用モータ117の駆動処理について図5を参照し説明する。図5は、実施形態に係る作業用モータ117の駆動処理を説明するフローチャートである。
【0077】
コントローラ100は、苗植付部4による作業を実行するか否かを判定する(S100)。コントローラ100は、苗植付部4による作業を実行する場合(S100:Yes)、作業用モータ117を駆動させる(S101)。コントローラ100は、バッテリー116から作業用モータ117に電力を供給し、作業用モータ117を駆動させる。
【0078】
コントローラ100は、苗植付部4による作業を実行しない場合(S100:No)、作業用モータ117を駆動させない(S102)。コントローラ100は、バッテリー116から作業用モータ117へ電力供給せず、作業用モータ117を駆動させない。
【0079】
苗移植機1は、エンジン30と、ミッションケース13、ドライブシャフト42、および、後輪ギヤケース11aと、モータジェネレータ115と、バッテリー116と、作業用モータ117と、苗植付部4とを備える。ミッションケース13、ドライブシャフト42、および、後輪ギヤケース11aは、エンジン30によって発生する動力を後輪11に伝達する。モータジェネレータ115は、エンジン30によって発生する動力によって発電する。バッテリー116は、モータジェネレータ115によって発電された電力によって充電される。作業用モータ117は、バッテリー116から電力が供給されて駆動する。苗植付部4は、作業用モータ117によって発生する動力によって駆動する。
【0080】
これにより、苗移植機1は、苗植付部4を作業用モータ117によって駆動させることで、エンジン30の出力を下げることができる。そのため、苗移植機1は、エンジン30の燃料消費を抑制し、排ガスの排出を抑制することができる。また、苗移植機1は、たとえば、苗植付部4の作業状態の変化に対して、エンジン30の回転数の変動を抑制することができる。そのため、たとえば、苗移植機1は、燃費がよい領域でエンジン30を駆動させて、バッテリー116を充電し、バッテリー116から供給される電力によって作業用モータ117を駆動させることができる。従って、苗移植機1は、エンジン30の燃料消費を抑制し、排ガスの排出を抑制することができる。
【0081】
モータジェネレータ115は、後輪11に動力を伝達する後輪ギヤケース11aから、動力が伝達されて発電する。
【0082】
これにより、苗移植機1は、苗植付部4に近い場所にモータジェネレータ115、バッテリー116、および、作業用モータ117を配置することができる。そのため、苗移植機1は、モータジェネレータ115、バッテリー116、および、作業用モータ117を接続する電力線を短くすることができる。
【0083】
作業用モータ117は、苗植付部4が駆動されない場合、駆動されない。また、作業用モータ117が駆動されない場合、モータジェネレータ115は、後輪11を駆動させるモータとして機能する。
【0084】
これにより、苗移植機1は、エンジン30の燃料消費を抑制し、排ガスの排出を抑制することができる。
【0085】
作業用モータ117は、圃場における作業の旋回走行時に駆動されない。
【0086】
これにより、苗移植機1は、たとえば、次工程に移動するために旋回走行する場合に、作業用モータ117によって消費される電力を抑制することができる。
【0087】
苗移植機1は、旋回走行時に、旋回内側のモータジェネレータ115を発電機として機能させて発電を行い、旋回外側のモータジェネレータ115をモータとして機能させて旋回外側の後輪11をモータジェネレータ115によって発生する動力によって駆動させてもよい。
【0088】
これにより、苗移植機1は、エンジン30の燃料消費を抑制しつつ、バッテリー116の残量の低下を抑制することができる。
【0089】
苗移植機1は、バッテリー116の残量が第1所定残量以下になると、モータジェネレータ115によって発電を行い、バッテリー116を充電する。第1所定残量は、予め設定された残量である。たとえば、モータジェネレータ115が後輪11を駆動させるモータとして機能している状態で、バッテリー116の残量が第1所定残量以下になると、コントローラ100は、モータジェネレータ115を発電機として機能させて発電を行い、バッテリー116を充電する。なお、この場合、後輪11は、エンジン30によって発生する動力によって駆動される。
【0090】
苗移植機1は、バッテリー116の残量が第2所定残量以上の場合、モータジェネレータ115をモータとして機能させて後輪11をモータジェネレータ115によって発生する動力によって駆動させてもよい。たとえば、苗移植機1は、バッテリー116の残量が第2所定残量以上の場合、バッテリー116から作業用モータ117、および、モータジェネレータ115に電力を供給する。
【0091】
これにより、苗移植機1は、バッテリー116の残量に応じて、モータジェネレータ115を、モータ、または、発電機として機能させることができ、バッテリー116の残量低下を抑制しつつ、モータジェネレータ115によって発生する動力によって後輪11を駆動させることができる。
【0092】
苗移植機1は、後輪11のスリップ量が所定スリップ量以上である場合、モータジェネレータ115をモータとして機能させて、モータジェネレータ115によって発生する動力によって後輪11を駆動させてもよい。モータジェネレータ115によって発生する動力は、後輪11のスリップを抑制するように制御される。所定スリップ量は、予め設定される。後輪11のスリップ量は、たとえば、回転数センサ90によって検出される回転数に基づく走行車体2の速度と、位置取得装置150によって計測される測位情報に基づく走行車体2の速度とのずれに応じて算出される。
【0093】
これにより、苗移植機1は、圃場におけるスリップを抑制することができる。
【0094】
苗移植機1は、図6に示すように、ミッションケース13を介さずに、エンジン30によって発生する動力が伝達機構120を介して入力される発電機121を備えてもよい。図6は、変形例に係る苗移植機1における動力伝達を説明する図である。
【0095】
苗移植機1は、後輪伝達軸114bとモータジェネレータ115との間にギヤ機構などの変速装置を設けてもよい。変速装置は、後輪伝達軸114bの回転速度を増速してモータジェネレータ115に伝達する。
【0096】
作業車両1は、以下の構成などを有してもよい。
【0097】
作業車両1は、バッテリー116を加熱するヒータを設けてもよい。作業車両1は、バッテリー116の温度が所定温度よりも低い冷間時には、回生電力をヒータに供給し、ヒータによってバッテリー116を加熱する。これにより、作業車両1は、バッテリー116を温めて、バッテリー116の効率を上げることができる。
【0098】
作業車両1は、回生電力をシートヒータに供給してもよい。これにより、作業車両1は、シートを温めることができる。たとえば、作業車両1は、エンジン30の暖機が完了するまでシートヒータによって作業者を温めることができる。
【0099】
作業車両1は、エンジン30の冷却水を温めるヒータを設けてもよい。作業車両1は、エンジン30(エンジン30の冷却水)が低い冷間時には、回生電力を、エンジン30の冷却水を温めるヒータに供給してもよい。これにより、作業車両1は、エンジン30を早期に温めることができる。
【0100】
作業車両1は、油圧ポンプを駆動させるモータ(または、モータジェネレータ)を備えてもよい。これにより、作業車両1は、油圧ポンプを駆動させるためのベルト機構を用いずに、油圧ポンプを駆動させることができる。そのため、作業車両1は、たとえば、ベルトの劣化の影響をなくし、油圧ポンプを駆動させることができる。
【0101】
作業車両1は、エンジン30の冷却ファンを駆動させるモータ(または、モータジェネレータ)を備えてもよい。これにより、作業車両1は、モータによって冷却ファンを回転させて、エンジン30を冷却することができる。作業車両1は、エンジン30の負荷を低減することができる。
【0102】
たとえば、エンジン30の冷却ファンを駆動させるモータジェネレータは、遊星歯車機構を介して冷却ファンを駆動させる。遊星歯車機構の太陽歯車は、エンジン30に接続される。遊星歯車機構の遊星歯車は、冷却ファンに接続される。遊星歯車機構の内歯車は、モータジェネレータに接続される。エンジン30の温度が高い場合には、モータジェネレータによって冷却ファンが駆動される。エンジン30の温度が高くない場合には、エンジン30から動力が伝達され、モータジェネレータ115は発電を行う。
【0103】
作業車両1は、エンジン30のクランクプーリに電磁クラッチを介してモータジェネレータが設けられてもよい。モータジェネレータは、ギヤケースに固定されてもよい。
【0104】
作業車両1が苗移植機である場合に、苗移植機1は、ハンドアクセルの位置がエンジン30の回転数を大きくする所定位置であり、かつ、フットアクセルが踏み込まれた場合、モータジェネレータ115をモータとして機能させて、モータジェネレータ115によって発生した動力を後輪11に伝達する。なお、フットアクセルの踏み込み量、踏み込み速度によってモータジェネレータ115によって発生する動力が制御されてもよい。
【0105】
これにより、苗移植機1は、作業者によるアクセルの踏み込みに連動させる容易な方法によって、モータジェネレータ115によって発生する動力、すなわち後輪11の動力を調整することができる。
【0106】
苗移植機1は、ハンドル35付近に設けられるスイッチが操作(押し下げ操作)された場合、モータジェネレータ115をモータとして機能させて、モータジェネレータ115によって発生した動力を後輪11に伝達してもよい。
【0107】
作業車両1は、トラクタであってもよい。たとえば、作業機は耕耘作業機である。トラクタは、ハンドアクセルの位置がエンジンの回転数を大きくする所定位置であり、かつ、フットアクセルが踏み込まれた場合、モータジェネレータをモータとして機能させて、モータジェネレータによって発生した動力を後輪に伝達する。なお、フットアクセルの踏み込み量、踏み込み速度によってモータジェネレータによって発生する動力が制御されてもよい。
【0108】
トラクタは、操舵装置付近に設けられるスイッチが操作(押し下げ操作)された場合、モータジェネレータをモータとして機能させて、モータジェネレータによって発生した動力を後輪に伝達してもよい。
【0109】
トラクタは、変速レバーに設けられるスイッチが操作(押し下げ操作)された場合、モータジェネレータをモータとして機能させて、モータジェネレータによって発生した動力を後輪に伝達してもよい。
【0110】
作業車両1は、コンバインであってもよい。たとえば、作業機は刈り取り装置である。コンバインは、エンジンの回転数が予め設定された規定値以上であり、かつ、操舵装置付近に設けられるスイッチが操作(押し下げ操作)された場合、モータジェネレータをモータとして機能させて、モータジェネレータによって発生した動力を走行装置に伝達してもよい。
【0111】
コンバインは、操縦席の足元に設けられるスイッチが踏まれた場合、モータジェネレータをモータとして機能させて、モータジェネレータによって発生した動力を走行装置に伝達してもよい。なお、スイッチの踏み込み量、踏み込み速度によってモータジェネレータによって発生する動力が制御されてもよい。
【0112】
作業車両1は、歩行型の作業車両であってもよい。たとえば、作業機は耕耘作業機である。作業車両1は、ハンドアクセルの位置がエンジンの回転数を大きくする所定位置である場合、操舵装置を握る強さに応じてモータジェネレータによって発生する動力が制御してもよい。
【0113】
作業車両1は、図7に示すように、発電機構130を設け、発電機構130によって発電した電力によってバッテリー116を充電してもよい。図7は、変形例に係る作業車両1の発電機構130を説明する図である。発電機構130は、ローラ131と、シャフト132と、磁石133と、コイル134とを備える。ローラ131は、エンジン30のベルト140に接触するように設けられる。ローラ131にはシャフト132が接続され、シャフト132の端部に磁石133が設けられる。コイル134は、磁石133の外周を囲むように設けられる。コイル134には、バッテリー116を充電する充電回路が接続される。発電機構130では、ベルト140の振動が、ローラ131、シャフト132、および、磁石133に伝達されて、磁石133がシャフト132の軸方向に振動する。磁石133がコイル134内で、シャフト132の軸方向に振動することで、発電機構130は発電し、バッテリー116が充電される。
【0114】
これにより、作業車両1は、エンジン30の稼働中に発電機構130によってバッテリー116を充電することができる。
【0115】
発電機構130は、シャフト132の代わりに、または、シャフト132の一部にバネを設けてもよい。バネは、ベルト140の振動周波数と、バネの固有値とが一致するように設けられる。これにより、発電機構130は、ベルト140の振動を増幅させて、発電することができる。
【0116】
発電機構130は、シャフト132の代わりに、リンク機構によってローラ131と磁石133とを接続してもよい。リンク機構は、ベルト140の振動を増幅させるように設けられる。
【0117】
作業車両1は、作業機における負荷に応じて、モータジェネレータ115における発電量を調整してもよい。
【0118】
たとえば、作業車両1が、芝刈り機である場合、芝刈り機のカッターの高さ、および、変速ギヤのポジションに応じてエンジンにかかる負荷が算出される。そして、エンジンの余力分が、モータジェネレータでの発電に割り振られる。たとえば、カッターの高さが高い場合、カッターを駆動させるためのエンジンの負荷が小さくなるため、エンジンの余力分が大きい。そのため、モータジェネレータにおける発電量が大きくなる。また、カッターの高さが低い場合、カッターを駆動させるためのエンジンの負荷が大きくなるため、エンジンの余力分が小さい。そのため、モータジェネレータにおける発電量が小さくなる。
【0119】
同様に、作業車両1が、トラクタである場合、耕耘機の高さ、および、変速ギヤのポジションに応じてエンジンにかかる負荷が算出されて、エンジンの余力分が、モータジェネレータでの発電に割り振られる。
【0120】
また、作業車両1が、トラクタである場合、シフトレバーの状態に応じてモータジェネレータにおける発電負荷が調整される。たとえば、シフトレバーが後進位置にある場合、トラクタは、モータジェネレータにおける発電負荷を最大にし、モータジェネレータにおける発電量を大きくし、バッテリーを充電する。
【0121】
作業車両1が、コンバインである場合、オーガの動作状態、および、車両の走行状態に応じてモータジェネレータにおける発電負荷が調整される。たとえば、オーガの動作状態が、穀粒を搬送(排出)している状態であり、かつ、車両が停止状態である場合、コンバインは、モータジェネレータにおける発電負荷を最大にし、モータジェネレータにおける発電量を大きくし、バッテリーを充電する。
【0122】
作業車両1は、燃料タンク内の燃料の残量に応じてモータジェネレータにおける発電を調整してもよい。たとえば、作業車両1は、燃料タンク内の燃料の残量が多い場合には、モータジェネレータがモータとして機能する機会を多く、または、モータジェネレータにおける発電量を大きくする。作業車両1は、燃料タンク内の燃料の残量が少ない場合には、モータジェネレータがモータとして機能する機会を少なく、または、モータジェネレータにおける発電量を小さくする。
【0123】
これにより、作業車両1は、燃料タンク内の燃料の残量が多い場合には、バッテリーの充電を優先し、燃料タンク内の燃料の残量が少ない場合には、燃料切れを抑制することができる。
【0124】
作業車両1は、モータジェネレータをモータとして機能させて後輪を駆動させる駆動アシストのモードとして、通常モード、および、高出力モードを有してもよい。通常モードは、エンジン出力の範囲内で駆動アシストを行う。高出力モードは、エンジン出力の範囲を超えて駆動アシストを行う。駆動アシストのモードは、作業者によるスイッチ操作などによって変更される。
【0125】
なお、駆動アシストは、エンジントルクに対するアシストであってもよい。作業車両1は、駆動アシストのモードとして、通常モード、および、高トルクモードを有する。通常モードは、エンジントルクの範囲内で駆動アシストを行う。高トルクモードは、エンジントルクの範囲を越えて駆動アシストを行う。
【0126】
作業車両1は、エンジンを発電専用に用いてもよい。すなわち、作業車両1は、エンジンによって駆動される発電機によって発電を行い、バッテリーを充電する。そして、作業車両1は、モータによって発生する動力を、たとえば、車輪に伝達する。
【0127】
作業車両1は、油圧ポンプが取り付けられている箇所に、モータを設けてもよい。モータは、エンジン始動時には、油圧ポンプのシャフトを回転させることで、エンジンを始動させる。モータの軸には、ベルトがかけられ、モータは、ベルトを介してウォータポンプのプーリ部を回転させてもよい。ウォータポンプの回転数は、モータによって制御される。また、モータは、遊星歯車機構、および、ベルトを介してファンに接続されてもよい。ファンは、遊星歯車機構によって回転数が変更され、または、回転方向が変更される。
【0128】
作業車両1は、発電機をクランクプーリに直接接続するように設けてもよい。作業車両1は、カムギヤ部にモータを設けてもよい。
【0129】
作業車両1は、出力軸をエンジン、および、モータによって回転可能とし、作業負荷が大きく、エンジン回転数が低下する場合に、エンジンに加えてモータによって出力軸を回転させて、自動的に出力アシストを行ってもよい。たとえば、作業車両1は、モータによるアシスト力を自動的に最適値とするオートモードと、ダイヤルなどにより手動で調整できる手動モードとを有する。オートモードではモータによるアシストを実行する感度(頻度)を自動的に最適値としてもよい。
【0130】
作業車両1は、作業負荷が小さく、排気ガスの温度が後処理装置の触媒が活性化する温度に満たない場合、後処理装置内、または、排気経路に設けた電気式ヒータによって排気ガスの温度を高くしてもよい。電気式ヒータによって排気ガスの温度を高くしている場合、電気式ヒータによって消費される電力は、発電機によって発電される。
【0131】
たとえば、後処理装置の酸化触媒の入口端面などに電気式ヒータが設けられる。酸化触媒の機能の低下が検知される場合、電気式ヒータが駆動されてもよい。また、後処理装置のDPF(Diesel Particulate Filter)の入口端面に電気式ヒータが設けられてもよい。DPFに規定量以上の煤の堆積が検知された場合、電気式ヒータが駆動されてもよい。なお、この場合、作業車両1は、吸気スロットルバルブや、排気バルブを設けなくてもよい。
【0132】
さらなる効果や変形例は、当業者によって容易に導き出すことができる。このため、本発明のより広範な態様は、以上のように表しかつ記述した特定の詳細および代表的な実施形態に限定されるものではない。したがって、添付の特許請求の範囲およびその均等物によって定義される総括的な発明の概念の精神または範囲から逸脱することなく、様々な変更が可能である。
【符号の説明】
【0133】
1 苗移植機(作業車両)
2 走行車体
4 苗植付部(作業機)
10 前輪
11 後輪
11a 後輪ギヤケース(伝達機構)
13 ミッションケース(伝達機構)
42 ドライブシャフト(伝達機構)
100 コントローラ
115 モータジェネレータ(発電機)
116 バッテリー
117 作業用モータ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7